- 1二次元好きの匿名さん23/09/20(水) 19:52:03
- 2二次元好きの匿名さん23/09/20(水) 19:52:35
裸で寝る人だっているぞ
- 3二次元好きの匿名さん23/09/20(水) 19:55:24
このレスは削除されています
- 4二次元好きの匿名さん23/09/20(水) 19:55:55
全裸で寝るの気持ちいいからな
- 5二次元好きの匿名さん23/09/20(水) 19:58:21
お前が選んだ展開だお
- 6二次元好きの匿名さん23/09/20(水) 20:02:06
問題はアクアがパンツ履いてるかだ
- 7二次元好きの匿名さん23/09/20(水) 20:07:31
- 8二次元好きの匿名さん23/09/20(水) 20:08:14
責任取らなきゃだね!
- 9二次元好きの匿名さん23/09/20(水) 20:10:24
- 10二次元好きの匿名さん23/09/20(水) 20:11:16
- 11二次元好きの匿名さん23/09/20(水) 20:13:34
- 12二次元好きの匿名さん23/09/20(水) 20:16:09
- 13二次元好きの匿名さん23/09/20(水) 20:16:34
- 14二次元好きの匿名さん23/09/20(水) 20:17:12
昨夜は皆さんとお楽しみだったじゃないですか!!
- 15二次元好きの匿名さん23/09/20(水) 20:20:18
そもそも未成年の芸能人が記憶失くすほど飲んでんじゃねえ
- 16二次元好きの匿名さん23/09/20(水) 20:21:02
認めちゃったね?
- 17二次元好きの匿名さん23/09/20(水) 20:23:04
まだ大丈夫
お互い裸でも何も起きなかったパターンを信じろ - 18二次元好きの匿名さん23/09/20(水) 20:32:14
飲み会参加者を当たって昨日何があったのか聞き出すんだ
- 19二次元好きの匿名さん23/09/20(水) 20:35:09
- 20二次元好きの匿名さん23/09/20(水) 20:40:29
監督「お前ら双子の成人祝いで飲み会になっただろ?そんで早速飲み始めたわけだが、お前酒弱いんだな。乾杯のビール半分でグロッキーになってた。見かねた黒川がトイレに連れてって、10分くらいでお前が泣きながら帰ってきた。そっから1時間泣いて、流石におかしいってお前の妹が介抱に立って、やっぱり10分後にお前だけ泣いて帰ってきた。そこからはグラドル、Memちょ、フリル、女社長と入れ替わり立ち替わり。最後に朝日が昇り始めた新宿駅前を有馬かなに肩借りながら帰っていったな」
- 21二次元好きの匿名さん23/09/20(水) 20:41:08
- 22二次元好きの匿名さん23/09/20(水) 20:41:10
これは王下七武海展開
- 23二次元好きの匿名さん23/09/20(水) 20:41:30
- 24二次元好きの匿名さん23/09/20(水) 20:42:26
穴が空いてないといつから錯覚していた?
- 25二次元好きの匿名さん23/09/20(水) 20:53:06
- 26二次元好きの匿名さん23/09/20(水) 20:58:13
- 27二次元好きの匿名さん23/09/20(水) 21:30:44
推し(アイ)の子(アクア)の推し(有馬)の子(アイ)
- 28二次元好きの匿名さん23/09/20(水) 22:02:52
- 29二次元好きの匿名さん23/09/20(水) 22:04:21
最強で無敵のアイドルだからな
- 30二次元好きの暦名さん23/09/20(水) 22:04:32
- 31二次元好きの匿名さん23/09/20(水) 22:08:10
プレデター❓
- 32二次元好きの匿名さん23/09/20(水) 22:09:33
これ銀魂みたいに全員と抜け出した時間があるやつでは?
お労しや… - 33二次元好きの匿名さん23/09/20(水) 22:14:43
- 34二次元好きの匿名さん23/09/20(水) 22:19:41
- 35二次元好きの匿名さん23/09/20(水) 22:42:22
- 36二次元好きの匿名さん23/09/20(水) 22:55:00
かなちゃん大勝利は既成事実ルートか、輝きで惚れさせるルートだからな
つまり脳を焼いてアルコールで既成事実に持ち込むコンボならこうなるという訳だ - 37二次元好きの匿名さん23/09/20(水) 22:59:10
アクかなで子ども(アイ)を育てる、子育て奮闘記が始まるのか
- 38二次元好きの匿名さん23/09/20(水) 23:04:51
- 39二次元好きの匿名さん23/09/20(水) 23:27:30
そりゃ、一生養ってねとかやろ
- 40二次元好きの匿名さん23/09/20(水) 23:37:03
シンプルな「おはよう」もいいかも
- 41二次元好きの匿名さん23/09/20(水) 23:55:59
思わずSSを書いてみた
「う、うん…」
とうとう有馬が目を覚ました。
なんだかぼうっとこっちを見ている。有馬になんと声をかけて良いかわからず、思わず見つめかえす。
「……えー?」
有馬が困惑したような声をだす。
「……おー」
こっちを見て。
有馬自身の体を見下ろして。
またこっちを見て
「……はい!?」
あー、起きた。
「え……あっ…ちょ…」
なんかめちゃくちゃ赤くなってる。慌ててる。何か声を出そうとくちをパクパクして……。また、自分の体をみて、こっちを見て……ってやってたが。……あ、なんか落ち着いたな。とりあえず挨拶しよう……。
「お、おはよう…」
「え、ええ、おはよう……」
何だこの間は。気まずい。有馬は凄く恥ずかしそうにシーツを引き寄せ、もぞもぞしていた。こっちもうまくいえず、何だかそのまま時間が過ぎる。すると…、そのうち有馬は言った。
「あー、そのね? あーくん? 昨日は……そのね? 私もなんというか、油断したと思うから……気にしなくても、いいのよ?」
えっ。
「その……事故みたいなものだしね?」
えっ、えっ。
有馬は目を伏せて、なんだかそんなことを言い始めた……。
「ほら……私だってね? こういう業界に居れば、色々あったりするから……」
ちょっと状況的にそのセリフには無理があると思われます……。
「その、さ……説明難しいんだけど、こういうので、アンタを縛りたくないのよ……アンタだって、内心の気持ちというものはあるでしょう。だからお互いの事故で済ませて、全然良いのよ? 忘れても良いのよ? アンタがそう望むなら」
そう言いながら、有馬はこっちを、ちょっと伏し目がちに見てくる。
何か凄く返答が大事な瞬間になってる気がするんだが……。
「あー、その、だな……」
俺は意味の無い言葉で何となく時間の間を取ってから、言った。 - 42二次元好きの匿名さん23/09/21(木) 00:21:52
「とりあえず……忘れるのは、無しで」
「えっ………………はあっ!?」
今度は有馬が驚いている。とりあえずおあいこなのは良いことだ……。うまいセリフが出てこない……。
「白状すれば本当に昨日の記憶は無い、無いんだが……。別に、その……状況は、このままでも良いっていうか」
有馬が、ぽかんとこっちを見ている。
ええ、ままよ。
「お前を傷つけてしまって悪かった。でも、その上で……できたら、お前がそれでいいのなら、その……」
言ってしまえ。
「いっそこのまま付き合ってくれ」
正直こういうタイミングでも無いと、なかなか言い出せない話でもあるし。有馬は複雑そうな、ちょっと疑いのこもった、でもなんだか不安そうな顔でこっちを見ている。
「……それ、本心から言ってる……? 本当に良いのよ? 私は、その」
いい加減しつこいぞ。とりあえず俺は無理やりループを打ち切ることにした。
「本心なんだ。お前が…欲しい。頼む」
そう言って、とりあえず頭を下げた。有馬の声が聞こえない。顔を上げると。
有馬はなんだか、ふるふる震えていた。
そのうち顔を赤くして。
「……うん……うん……」
伏し目がちに、泣きながら、
「うぇぇん……」
あ、ガチ泣きしてる……。
「あーくん……本当はね……私は……」
そしてしばらくして、落ち着いた有馬は、やっと笑って言ったのだ。
「じゃあ、もう忘れてあげないから」
その後話し合って、ひとまず付き合っているのあ二人だけの秘密にすることにした。俺が希望した。さすがにこの状況でなりゆきで、というのは、なんだか有馬に悪い気がしたのだ。それに……気分的にも、そういう大事な事は、今はあまりオープンにしたくもなかった。
かくして、対外的には何も変化の無いまま。有馬との関係だけが。一つの「事故」で、大きく、別の形になったのだった。皆に気づかれず、このまま行けるのかは、まだ分からなかった。
- 43二次元好きの匿名さん23/09/21(木) 00:26:08
つい書き込んでしまった。急に申し訳ない…。ひとまずこんな感じの流れになるかなぁって。どうもです…。
いや、このシチュエーションは良いね…。
いくらでも続きが書けそうですね…。 - 44二次元好きの匿名さん23/09/21(木) 00:28:23
良質なアクかなSSに目が潤いました。ありがとうございます。続きあるなら見たいです!
- 45二次元好きの匿名さん23/09/21(木) 02:00:35
重曹「うぅん……頭痛い…しかも裸じゃん。あー昨日お酒飲んだんだった。バレたらスキャンダルよね」
「というかここどこ?なんか見覚えある…ま、まさかアクアの部屋!?」
??「んんぅ」
重曹「う、嘘!嘘ぉ!お酒の勢いでやっちゃったの!?さ、最悪!マジ最悪!でもアクアと…か。ふふ」
「起きてアクア。お互いお酒の勢いだと思うけど、私もアイドル引退することだしお試しってことで付き合……」ガバッ
小峠「なんて日だ!」
重曹「なんでよ!!」 - 46二次元好きの匿名さん23/09/21(木) 02:11:40
助かる
- 47二次元好きの匿名さん23/09/21(木) 03:57:26
重曹ちゃんお持ち帰りしたのかそれともされたのか
- 48二次元好きの匿名さん23/09/21(木) 07:40:45
飲ませたのはかなちゃんだけどお持ち帰りしたのはアクアとか
- 49二次元好きの匿名さん23/09/21(木) 12:31:26
有馬かなの良スレ最近多くて良き
- 50二次元好きの匿名さん23/09/21(木) 14:40:55
アクアが潰れるほど飲むとかよっぽど忘れたいことがあったんだろうか……
そしてその傷心を体で慰めてもらったと…… - 51二次元好きの匿名さん23/09/21(木) 19:27:04
- 52二次元好きの匿名さん23/09/21(木) 21:29:50
- 53二次元好きの匿名さん23/09/22(金) 00:12:06
「ルビーとMEMちょはねぇもうホント自由なのよ〜。好きなものに一直線というかー、振り回させるわらしのこともちょっとは考えてほしいのよ〜。でもあの元気さと明るさに毎度助けられてるわ。ダンスも立ち回りも苦手だった歌も上手くなってきて努力家でー、自慢の仲間達なのろー。
あかねはねぇ間違いがあればすぐ正そうとしてきてねー。素直と言うか愚直と言うか柔軟さが足りないわ。でもねーこんなひねくれたわらしのことも毎回気にかけてくれてとても良い子だわー。あかねはどう思ってるかしらないけろここだけの話、わらしはあかねのことライバルだと思ってるわ~。
アクアはねぇ…うんとねぇ…大好きなろよ…でも素直になれないから…グズッ…なかなか言えなくて…グズッ…つい強気な態度をしてしまう自分が憎い…zzz」
- 54二次元好きの匿名さん23/09/22(金) 00:47:04
反応ありがとう、何となくもう少し続けてみる
>>42 続き
その翌日。気分は最悪だった。冷静に考えてみれば、有馬を取り返しのつかない形で傷つけてしまった、という事実だけが俺の手元に残っていた。昨日は、有馬の調子もあんな感じだったし、あまり放ってもおけず、ああいう流れになってしまったが。
いや、有馬に話した内容に嘘は一つもないのだけれども。でも、やはり申し訳無さだけが先に立つ。それに何より、本当に何も覚えていないのだ。どんな酷いことをしてしまったのか、何も。
事務所で有馬は、MEMと何事かの打ち合わせをしていた。
いきなり目が合う。
「お…あ”っ」
挨拶しようとして思わず挙動不審になる。
「おはよう」
有馬はごく普通に、あっさりと朝の挨拶をこっちにしてくる。あれ。こういうとき、なんというか、もう少しぎこちなさとか、そういうのを出してきそうな気がしたが…。とにかく俺の方が、MEMに、アクたん寝不足? とかいじられた。いや、寝不足は事実だが…。
挨拶もそこそこに、MEMとの打ち合わせに有馬は戻る。
かえってそっけなさすぎる、って突っ込みも入れられなくはないけれど、でもやっぱ本当に普通だなこいつ……。
その日はなんだかんだと忙しく、話しかけるきっかけも掴めず、そのまま有馬とはろくに話せず夜になってしまった。俺も有馬も、事務所にずっと居たというのに……。なんだかこちらだけ意識してしまっているような気がする。
……いや、さすがにまずい。これはまずい。
夜、帰ろうとしている有馬に、とにかく声をかける。
「なぁ……、すこし、いいか」
「いつでもいいわよ?」
有馬は何故か少し苦笑している。
「今日は放っておいてあげようと思ったんだけどね……」
何だそれは。
「……あっちで話そ?」
- 55二次元好きの匿名さん23/09/22(金) 02:14:17
促されるままにソファーに座る。幸い他には誰も居ない。
「今日もお疲れ様。頑張ってたわね」
「お、おう……」あまり今日は頑張れてる感じはなかった。
「それでだな……その」
俺は有馬を、その小柄な体を何となく眺める。そして昨日の姿を、重ねて想像してしまう。その瞬間何かの宜しくない感情と、罪悪感が同時に湧き上がる。
「何よ」有馬がジト目でこちらを見る。ちょっと恥ずかしそうに、両腕で胸を隠すようなしぐさをする。色々とバレている。
「あー、その。その……体とか、大丈夫か」
「……うわっ」有馬が笑う。
「言うに事欠いてまずそれ?」
「いや……真面目な話だぞ」
「切り出し方ってモンもあるでしょうに…アンタ、随分と女遊びには慣れてる風だったのに、なんか今は全然そんな風に見えない」
「俺にだって、気分も、事情もあるんだよ…」
「事情って?」
「色々」言えるか、有馬を無理やり傷つけてしまったこと、などとストレートには。
「……アンタに言いたいのは、まず、その、自責ムーヴをやめろってこと」有馬は突如そう言った。
「だから今日は放っておいたのよ。アンタ、何を言ってもどうせ自分を責めるだけじゃない」そしていきなりとんでもないことを言う。
「アンタさ…その…ね? 私を無理矢理押し倒してきた時に…さ。アンタ、その最中、さ。ずっと泣いてたのよ」
頭がフリーズする。
「泣いてたのよ。泣いてずっとこっちに謝ってた。こっちもわけわかんなくなるわよ、あんなの……」
思考が追い付かない。
確かに俺は、ずっと自分を責めていた。特にあの日は責めていた。でも、そんな時にまで。そして、そんなことを、俺は。
「アンタがこっちを気遣うのは良いんだけど。私はアンタが壊れないか、心配になるわよ……朝までそれに付き合ったんだもの」少し恥じらったように言う。
「これ言ったらアンタまた自分を責めそうなのに、なんでオープンにしたか分かる? もう隠し事は無し、ということよ。お互いに、ね。だから、アンタの話も、ちゃんと聞かせてもらうから。そのつもりで。アンタさ……。言ったでしょう? もう忘れてあげないって」
「そうか……」
「そうよ」
そして、有馬は少しはにかんで言ったのだった。
「アンタがさ…私が欲しいって言ったのも、もう忘れてあげないからね?」
- 56二次元好きの匿名さん23/09/22(金) 08:32:05
- 57二次元好きの匿名さん23/09/22(金) 14:53:04
あーくん、ヤってる最中も謝ってたのか…
- 58二次元好きの匿名さん23/09/22(金) 14:54:05
高校生が酒を飲むなよ
- 59二次元好きの匿名さん23/09/22(金) 20:39:06
これ実際成年後なのか未成年飲酒なのか
- 60二次元好きの匿名さん23/09/22(金) 21:02:45
前世が医者だから酒飲むのは成人してからだと思う
- 61二次元好きの匿名さん23/09/23(土) 00:09:28
映画編やら復讐やら諸々片付いたら20まであと少しって感じだろうし普通に成人後だろうな
- 62二次元好きの匿名さん23/09/23(土) 00:13:00
その相手じゃケツが汚い重曹ちゃんになっちゃう!
- 63二次元好きの匿名さん23/09/23(土) 10:40:28
復讐終わって、数年たってるのに押し倒した時に謝りながら泣いてるのマジで人生無理してきてる感ある。
そりゃ重曹ちゃんも世話焼きモード全開になる。 - 64二次元好きの匿名さん23/09/23(土) 10:45:46
- 65二次元好きの匿名さん23/09/23(土) 10:53:54
流石にもう厳しいんじゃないかな…
- 66二次元好きの匿名さん23/09/23(土) 11:45:42
なんでルビーが出てくんねん
- 67二次元好きの匿名さん23/09/23(土) 11:50:43
産婦人科医だから出しても中の洗浄の仕方くらい知ってると思う
- 68二次元好きの匿名さん23/09/23(土) 11:58:06
アクルビにもっていこうとするな
- 69二次元好きの匿名さん23/09/23(土) 16:52:43
こういうときかなちゃんの方がしっかりしてそうだよな。アクアが泣いてたならなおさら。
- 70二次元好きの匿名さん23/09/23(土) 17:25:28
重曹ちゃんはアクアがちゃんと弱みを見せれば気遣ってくれる感じある。B小町でも面倒見良かったし
- 71二次元好きの匿名さん23/09/23(土) 18:07:12
勝手な予想だけどアクアが酒で酔ったらゴローの人格が表に出てきそう
- 72二次元好きの匿名さん23/09/23(土) 20:21:56
- 73二次元好きの匿名さん23/09/23(土) 22:37:28
このレスは削除されています
- 74二次元好きの匿名さん23/09/23(土) 22:38:53
>>55 続
ぱすっ。
有馬がふわりと投げたボールをなんとか受け取る。
「懐かしいわねー、これ。何年ぶりかしらね?」
有馬が楽し気に言う。本当に何年振りだろうか。とりあえず、あの時の公園がそのまま残ってて良かったと言うべきなんだろうか。
有馬から、「忘れてあげない」の再宣言を受けてから、もう一週間程が経過していた。特に大きな変化は無し。多分、ルビーやMEMやミヤコさんに何かを感づかれることもなく。そんな中で、普通に日々を過ごしていた。普通過ぎて……というか、本当に何もなさ過ぎた、のかもだが。正直、「確か、有馬と『付き合う』ことになったんだよな……?」と自分が自信を持てなくなるレベルだったのだが…。
ただ、思い返してみると、その毎日は、前より、ほんのちょっと落ち着いた気持ちで日々を過ごすことが出来ていた。理由は何となく分かる。有馬が…そのように、接してくれていたのだ。毎日何かがある訳でもない。ただ、以前に比べて、有馬はそれとなく、俺の近くにいてくれていた。あからさまに近づいてくるとか、接触してくるとか、そういうのじゃない。ただ、事務所では、それとなく、近くに有馬が居た。……多分それも正確じゃない。多分有馬は……事務所で、なるべくその視界に、俺を入れるようにしていた。こちらをはっきり見つめてくるようなことはしない。ただ、いつも…それとなく、俺を、眺めている。
その、こちらに何か求める訳でもない、積極的に何かをしてくる訳でもない距離感に、少し、安らぎを覚えていた。
そんな奇妙な毎日を過ごしていたら、今日、急に連れ出された、という訳だった。
「時間ある? あるわよね? じゃあ、行きましょ?」
そう、有無を言わさずに。一体何事だ、と言う俺に、有馬は、どこかからか調達してきたらしいグローブとボールを見せ、にやりと笑ったのだった。
「数年たっても、感覚は残ってるもんだな、色々と」
俺はそう言いながら、スナップを聞かせてボールを投げる。
「ボールの感触とか、という話かしら」
有馬は両手を掲げるようにして、うまくそのボールを受け取る。
「もしくは…もっと、エモーショナルな、何か、かしら…ねっ」
声とともに、少しスピードのついたボールが返ってくる。
受け取る。ぱすっ。音が気持ちよい。しばらく無言で投げ合う。ぱすっ。ぱすっ。ぱすっ。
- 75二次元好きの匿名さん23/09/23(土) 22:57:23
あ、有馬の投げたボールの軌道がずれた。追いかける。ごめーん、という有馬の声が聞こえる。いや、これくらいの方が楽しい。
「……相変わらず上手いじゃないか。あれから練習でもしてたのか?」ぱすっ。
その問いに、有馬は妙に嬉しそうに笑う。
「何も。今日が二度目よ」ぱすっ。
「二度目」ぱすっ。
「そう、二度目。二度目もアクア。……初めてもアクア」
その言葉に、俺の投げたボールは大きく軌道がそれる。
有馬は何とか追いかけ、受け取る。
「何よー」
「あ…いや…すまない」
「何に謝ってるのかしら?」
有馬はボールを投げず、にやにやこちらを見る。
「いや……」
自責をやめろ、とは言われては居たけれども。
有馬は、ボールを放らずに、こちらにてくてくと歩いてくる。俺の目の前まで来ると、ぽん、とボールを持ったグローブで、俺の体を軽く叩いてくる。
「疲れたわね」
「ああ……」
少しだけ、汗をかいた。
それとなく、ベンチに並んで座る。
しばらく、そのまま二人とも無言だった。有馬は、両足をぶらぶらさせて、地面をじっと見ていた。
それから、どれだけの時間が過ぎただろうか。汗もすっかりひいていた。空気がひんやりと冷たい。
「あのさ。ちょっと……、ううん、すごく、子供っぽい話をするね? 本当に子供っぽい話」有馬は、突如、とても明るく、そう言った。
- 76二次元好きの匿名さん23/09/24(日) 00:56:46
「芸能界に長年居てさ。それで本当に馬鹿馬鹿しいんだけどさ。私……さ。初めて、をなんか、凄く大事にしちゃっててさ」
「……そうか」
「本当に子供っぽいと思うんだけどね。でもまぁ、さ。でも、そういう気分で居た訳よ」
有馬は、少しだけ懐かしそうにも、そう言う。
「……だけど、ね」
そこで、有馬はしばらく沈黙する。
彼女自身が何かを逡巡しているようでもあったし、それよりも単純に、彼女自身が、その先を言うことに、抵抗しているようにも思えた。
「なんていうか……さ。私が自暴自棄になってた時に。本当に、自暴自棄になってた時に。私……そういう子供っぽい気持ちで大事にしてたものまで、適当になんとかしてしまい掛けたことがあって、ね」
有馬が何を言おうとしているのか、分かった。あれは、きっと、みんな、時期が悪かった。……それに、多分、その引き金は……俺が。
「その……さ。迫られちゃった」
具体的な言及を避けたその言い方。それが、かえって、聞いていてとても辛いものに感じられた。もしくは、言いようのない、焦燥感。
「はっきり言うとね。私、本当に何とかしなきゃいけないと思ってたから。女優としてて、やっていくために。その為に、全てをなげうたないといけないんだって、思ってて」
再び、沈黙。
辺りの空気はすっかり冷え切っていた。少し、寒い。
有馬に目をやる。
有馬は……顔を伏せ、震えていた。
「だからさ……、私、その為に。何とかしなきゃいけないと、思っていたから、……その為に」
そして、有馬は、絞り出すような声で、その先を言った。
「受け入れかけた」
悲しかった。そのことが、ではなく、そのことが、有馬を、こんなに苦しませていることが、悲しかった。
俺が……やっていたのは、そういうことだった。
俺は、無言で、有馬を抱き寄せた。
有馬は、俺の胸にしがみついて。そして、しばらく泣いていた。
……それから、どれほどの、時間がたっただろうか。
- 77二次元好きの匿名さん23/09/24(日) 01:05:25
このレスは削除されています
- 78二次元好きの匿名さん23/09/24(日) 01:21:12
有馬は、朗らかに言った。
「でも……踏みとどまってね。本当にギリギリだったけど。でも、踏みとどまれて、ね。その、子供っぽい気持ちが勝っちゃったのよ、私自身の」
「……そうか」
その時内心に湧き上がったのは、とにかく、安堵感。随分と昔の話なのに、今聞かされると、妙に心を乱された。
「私さ……本当に子供だったから。叫んじゃったのよね。『できません、好きな人が居るんです』って」
何なんだろう、この気持ちは。持って行きようのない、この気持ちは。
「……それで大泣きしちゃった」
有馬は、とても明るく言った。それが無理やりの明るさというのは、非常に分かりやすかった。何も隠せていない。
「……ごめん」
「やらかしたのは私なのに、なんで、あーくんがあやまるのかしら」
「……ごめん」
「本当にみんなに迷惑かけちゃった。アンタにも、ルビーにも。ミヤコさんにも。MEMちょにも。最悪中の最悪よね。それが、アンタがあのタイミングで、ああいう行動に出た理由だろうし……。ルビーとのことも、そういうことだったのよ、ね」
「……さぁな」
「……だから、そのことは、本当に、ごめんなさい」
有馬は、静かに言った。
「今更、そんな辛い話をしなくたって、いいんだ」
多分それは、思い出すことすら、どこまでも、どこまでも、有馬にとって辛い話で。たとえそのことが、仮に、本当に、有馬の責任と言える部分があったとしても。それで、有馬自身を傷つけて欲しくはなかった。
「ダメよ」
有馬は首を振った。
「言ったでしょう。隠し事は無し。お互いに。アンタには、隠して欲しくない。アンタには、壊れて欲しくないから。……だから、私もちゃんと、隠さない」
- 79二次元好きの匿名さん23/09/24(日) 08:15:36
- 80二次元好きの匿名さん23/09/24(日) 15:20:27
あの話ちゃんと組み込んでss作れるの本当に凄いな…
- 81二次元好きの匿名さん23/09/24(日) 22:06:26
- 82二次元好きの匿名さん23/09/24(日) 22:06:37
高品質アクかなSS最近増えていて嬉しいな~
やっぱりアクかな両方とも弱み曝け出した方が色々上手く行きそう。 - 83二次元好きの匿名さん23/09/24(日) 22:48:56
まぁやっぱ言わないと伝わらないよな…この2人は特に
- 84二次元好きの匿名さん23/09/25(月) 07:30:51
覚悟決めたかなちゃんはさらっとしてるのも分かるしアクアの方がぎこちないのも分かる
- 85二次元好きの匿名さん23/09/25(月) 15:37:23
対ルビー筆頭に弱ってる相手は全力サポートする面倒見の良さだからね。
アクアが泣いて押し倒した時点で永久サポートが決定してしまう。 - 86二次元好きの匿名さん23/09/25(月) 21:35:02
SS挑戦しようと思ったがこのしっとり感難しいな…
- 87二次元好きの匿名さん23/09/25(月) 21:38:09
- 88二次元好きの匿名さん23/09/25(月) 22:02:14
- 89二次元好きの匿名さん23/09/25(月) 22:33:19
- 90二次元好きの匿名さん23/09/25(月) 23:01:37
>>78 続
まっすぐにこちらを見て、有馬はそう言った。
決意表明、というのは大げさだろうか。有馬らしい言い方ではある。俺にそれを求める代わりに、それを彼女自身にも求める。それが、彼女自身を傷つける話であったとしても。
とにかく、有馬は、そう高らかに宣言した。
「アンタがこの事をどう思おうと、私は、それを受け入れる。もし、アンタが、終わらせたい、というのなら、それも受け入れる」
「そんな訳ないだろ」
思わずそう言う。
「……ありがとう」
有馬は、凄く申し訳なさそうに、そう言った。
「ごめんね。これはこれで、ちょっとあーくんに酷いことを言ったかしら」
「隠し事は無し、なんだろう? なら、そういう方針の説明だって、ちゃんと言いたいということもあるんだろうさ」
「……そうね」
有馬はうなずいた。
「……なんだかんだ言ってるけどね。アンタを縛りたくないってのは本当なのよ。アンタには壊れて欲しくない。それに……、こういう時間を過ごせてるだけで、私は、嬉しい。でも、だからといって、アンタが何かこちらにしたことで、もしくは、私が何かやらかしたことで、義務的に感じるものがあったとしたら。それは……正しいものではないと思うから」
- 91二次元好きの匿名さん23/09/25(月) 23:20:36
「正直こだわり過ぎにも思える」
それは、あまりにもまっすぐで。そんなに、そのように、しなければいけないことなのか。俺には分からない。
「……そこに、歪なものを残したくない、のよ。…今のアンタに、これ以上の無理はかけたくない」
多分、有馬は。その歪なもの、が俺の心に、何か良くない影響を及ぼすことを、恐れているのだろう。壊れて欲しくない、だから、と。
俺は今……、こんなにも救われているのに。
有馬は、俺を見て、少し笑った。何かが伝わったのかもしれない。
「そしてね……これも、隠さずに言う訳だけれども。結局踏みとどまれたのは、『大好きな人』が思い浮かんだからよ」
有馬は、そう言った。
とても、嬉しそうに。
「そのときに、ね。私は……その人を、裏切れないと思った。その人を裏切ったら、私ではなくなると思った」
そう言いながら、有馬は、笑って。
「だから、その時、私を助けたのは、あなたなのよ、あーくん」
ああ、くそ。このタイミングでそれは卑怯だ。
- 92二次元好きの匿名さん23/09/25(月) 23:59:16
「……本当に、ね。あの、私が、私でなくなりかけた時に。本当に、ごく自然に、アンタの顔が思い浮かんだ。ああ、と思ったわ」
俺の与り知らないところで。有馬は、そんな戦いを一人でしていて。なのに、有馬は、そのように俺を想ってくれていて。
「多分……ね、そこで私が間違えていたら。私は、本当に、私を失っていた。だって、そうでしょう? それは、何よりも私自身を裏切ることでもあったから。本当の意味で、ダメになってたと思うのよ。あとは、抜け殻。ただ、消えるだけ。そもそも、その日の私は……アンタのおかげで、夢を失わず、光があることを信じて、やってこれていたというのに」
「やめてくれ。だとしたら、それは有馬自身の選択で、有馬がやってきただけ、だろう」
「過度の謙遜って嫌味にしかならないって知ってる? 過度の買いかぶりも」
そう言って、有馬は、苦笑いをした。
「救われたのよ、私は。だから……ありがとう」
多分俺は、酷い顔をしている。情けない顔をしている。
- 93二次元好きの匿名さん23/09/26(火) 00:13:24
「それに……さ。アンタは、辛い話はしなくていい、って言うけれども。これは言いたい話でもあるのよ。だからこそ」
有馬は言った。今度は、多分、本心から、明るく。
「ちゃんと好きな人に……、はじめてを、ね?」
顔を赤らめて。でもちょっとだけ、嬉しそうに。
「いい歳して本当にガキだわー、私も。少女漫画じゃないんだからさ……」
やたらふざける。うつむきがちにくすくす笑いながら、両足をぶんぶん揺らす。照れ隠しでもあるんだろう。
「……とにかくさ、だからね、子供そのものの私は、本当に嬉しかった。ちゃんと、初めてを、捧げられた、という訳よ」
多分、有馬は、それは良い事なのだ、と言いたくて、これを言っているのだ。だとしても、有馬がそのように大切にしていた何かを、俺が、欲望のままに貪った、という事実は変わらないのに。
むしろ、かえって、俺が何をやったのか、その意味を、俺は再認識する。
「よっ、と」
有馬はすたっ、とベンチから降りて、立つ。空を見上げて、両手でうん、と背伸びをする。それから、くるりとこちらに振り向き、俺を見る。
「そんな顔をするな、って言ってるのよ」
有馬は苦笑する。
- 94二次元好きの匿名さん23/09/26(火) 00:40:42
このレスは削除されています
- 95二次元好きの匿名さん23/09/26(火) 00:41:59
ひとまず今日はここまでで…。
ここまでお読み頂き有難う御座いましたー。
続きはまた後日…。 - 96二次元好きの匿名さん23/09/26(火) 07:16:34
- 97二次元好きの匿名さん23/09/26(火) 12:44:21
また素晴らしい文章を…ありがとうございます!
- 98二次元好きの匿名さん23/09/26(火) 21:33:52
しかしこのスレタイと画像からこんな良質アクかなが生まれるとは…
- 99二次元好きの匿名さん23/09/26(火) 22:24:36
最近野生の最良アクかなss作家があちこちに出没してて嬉し涙出る
- 100二次元好きの匿名さん23/09/27(水) 03:01:37
最初銀魂だった
- 101二次元好きの匿名さん23/09/27(水) 08:02:30
- 102二次元好きの匿名さん23/09/27(水) 12:31:16
かなちゃん助ける側に回ると本当に頼もしい
- 103二次元好きの匿名さん23/09/27(水) 22:01:10
このしっとりアクかなマジで好きなんだよな…
- 104二次元好きの匿名さん23/09/28(木) 06:41:14
どっちか一方がお持ち帰りした感じではなくお互いが相手を想い合った結果こうなったのかなと
- 105二次元好きの匿名さん23/09/28(木) 13:50:59
- 106二次元好きの匿名さん23/09/28(木) 21:42:37
良い作品をみた
- 107二次元好きの匿名さん23/09/29(金) 06:50:20
- 108二次元好きの匿名さん23/09/29(金) 16:12:02
最高
- 109二次元好きの匿名さん23/09/29(金) 21:24:08
もしかしたらまた間違えるかもしれないし迷うかもしれない、でも2人だから、1人じゃないから乗り越えられるね
- 110二次元好きの匿名さん23/09/30(土) 02:52:31
age
- 111二次元好きの匿名さん23/09/30(土) 11:12:28
かな「言いたくなければ言わなくてもいい、でも一人で抱えこんじゃダメよ。前の私みたいになる。私ができることなんてたかが知れてるけどそばにいることぐらいはできるから。」
アクア「…」
かな「後、アンタが寂しいそうだからそばにいるってわけじゃないの。私があーくんといっしょにいたいからそばにいるの。」
アクア「…ありがとう、有馬。」
かな「ふふ、やっと苦しそうな顔以外見せてくれたわね。」 - 112二次元好きの匿名さん23/09/30(土) 11:15:11
なかなか難しいな…このしっとり感…でも大好きなんだ…
- 113二次元好きの匿名さん23/09/30(土) 20:01:03
進むのは遅いかもしれない、でもちょっとずつちょっとずつ2人で確実に前に進む感じがいいね…
- 114二次元好きの匿名さん23/10/01(日) 00:35:42
このレスは削除されています
- 115二次元好きの匿名さん23/10/01(日) 00:49:06
>>93 続
「私は幸せよ? なんか……凄くこっぱずかしい言い方だけどさ、ちゃんと、望みがひとつ叶ったんだからね?」
「ひどい幸せもあったものだ」
「まーだそういうことを言う……」
有馬は、はぁ、と、大げさにがっくりしたように、だらりと腕を落とす。
そして、かがみこみ、俺の顔を下から覗き込んできた。
「物事は、とらえよう、でしょう? 少なくとも……これは、アンタと私との間のこと。だとしたら、私の見解も考慮に入れて欲しいものだけど?」
「……結局、無理矢理、有馬を傷つけたのは変わらない」
「無理矢理、泣きながら、ね」
それは何の留保にもならない。
「まぁ、あれよ。私も油断したから、さ」
それは何の言い訳にもならない。
そして、何よりも最悪なのは。
「俺は……有馬に、酷なことをした。なのに……そのことを、覚えてすらいない」
こんな惨い話も無い。
「……そりゃあ、さ。具体的に説明するのは全く構わない訳だけど」
有馬は、にぃ、と笑った。指で俺の頬を、軽く突きながら、どこかからかい気味に聞いてくる。
「聞きたい? 聞きたい?」
「そういう話じゃない……」
「そうかしら」
有馬は静かに言った。
「結局アンタは自分を責める、その材料が欲しいってだけじゃない」
とても、悲しそうに。
- 116二次元好きの匿名さん23/10/01(日) 01:21:03
「このことだけじゃないわ。アンタ、ずっとそう。結局いつも、そういう感じよね。……それこそ、何年も、ね」
何年も。それは、随分と気の長い話だ。そうなんだろうか。流石に、そんなことは、ないとは思ったが。
ただ、正直なところ、有馬にそのように見られているとは思ってもいなかった。
「……それは…初耳だ」
「アンタさぁ、ここのところはカンペキなお兄ちゃんやってたし、カンペキな息子さんやってたじゃない。っていうか誰に対してもカンペキ。まー、カンペキだったわよねぇ」
「まるでそれが悪い事のように言うな……」
「悪い事よ?」
有馬はあきれたように言った。
「それでアンタが壊れちゃ意味ないじゃない」
ストレートに、こちらを思いやった言葉。
俺は少し動揺した。
情けないことに……少しばかり、素直に嬉しかった。
照れ隠し、という訳ではないが、いくらか誤魔化したくて、質問を投げかける。
「完璧だったというのなら、何でお前は気になるんだよ」
「そりゃあ……」
有馬は楽しそうに笑う。
「ノリが悪かったから」
なんだそれは……。
「これ以上分かりこと、アンタには無いわよ。多分誰にもでも分かる。見てれば」
「それを『分かりやすい』と表現するのは、せいぜい有馬ぐらいのものだろう」
「あら光栄」
有馬はくすくすと笑った。
「結局普段の調子と違うってのは大きいと思うけどね。いい加減長すぎて、もうその普段が、いつかも忘れたけれども」
- 117二次元好きの匿名さん23/10/01(日) 01:45:35
大分前に、ルビーに、有馬とやりあっている時のことを『昔のお兄ちゃんみたい』などと言われたことがあったらしい。後でMEMに聞いた話だったか。MEMは……それが、俺をからかうネタになると思ったようだった。
その『昔』、というのが、その時の俺、というのがどういうものなのかは、分からないけれども。ただ、そういうものが有馬には見えていた、ということなんだろうか。
そもそもそんな昔の俺、など居なかったようにも思えるのだけれども。
「まぁ、色々気になってたからさ。だから…私も結構、アンタを駄弁りに誘ったりしてたんだけどさ」
確かに、有馬と飲みに行く機会は増えていた。
有馬が……俺に、声をかけてくるようになったのは、いつの頃からだったか。
話すのは、本当に他愛もない話。
俺の仕事のこと。有馬の仕事のこと。事務所のこと。みんなのこと。配信企画のこと。業界の噂話。昔話。俺の……あの頃の事。そんな、色々。
有馬と話せるのは、嬉しいことではあった。
気を置かずに、ただ、話せる。
有馬は……多分、俺の話に時々出てくる、危なっかしい部分に、踏み込むこともしなかった。
それよりも、ただ、話すことを優先させていた。今にして思えば、そう感じる。
- 118二次元好きの匿名さん23/10/01(日) 08:56:14
SSだ!ありがとうございます!
- 119二次元好きの匿名さん23/10/01(日) 12:00:28
たまに、色々と目敏いMEMに、「アクたんデートぉ?」とかからかわれたりもしたが。
そういう……浮ついたものは、何もなかった。本当に何も無かった。
勿論……店とかで、そういう扱いをされたことはあった。それは、こそばゆさこそありこそすれ、不快なものではなかったけれども。
「お二人様、こちらのカップル割りとかどうです? 結構お得なんですよ」
「いや、そういうのでは……」
「へー、お得なんですか? どれくらいお得なんですか?」
微妙に反応に困る俺を横目に、有馬は、ごく自然体に、楽しそうに対応する。
「……なるほどなるほど。まぁまぁね。じゃあそれも頼も?」
店員が去った後、有馬はニヤニヤ笑う。
「あーくん、何挙動不審になってるの。得ならそうすりゃいいのよ。利用出来るものは利用しよ?」
「利用、か……」
「そーよ。色々と細かいことにこだわってたら、疲れちゃうだけだもの」
有馬は、疲れる、という言葉にアクセントを強めてそう言った。
「いやまぁ、お前にも悪いっていうか、な……」
「殊勝ねー」
有馬は苦笑した。
「そんなもんでいいのよ。利用させて貰うだけだもの。……っていうかさ。そもそも、こうやってアンタと話していることも、そう。私は、楽しくなりたくて、アンタを連れ出している。アンタもそうだと嬉しいけど」
- 120二次元好きの匿名さん23/10/01(日) 12:58:00
「……そうだな」
「反応が悪いわね」
有馬はくすくすと笑った。
「まぁいいわ。だからお互い利用しましょ?」
「そう……だな」
「やっぱり反応が悪いわね」
「いや……難しいだろ、これはこれで」
「何がどう難しいのよ」
「そこが難しいんだろうが」
「禅問答にでもハマってる?」
「そりゃなかなか高尚な趣味だな……」
「カッコつけのあーくんには中々向いてるわよ」
「さりげなく人をdisるな」
「ねぇ」
有馬は、何か意味ありげに笑いながら、グラスをこちらに向けてきた。
「乾杯ね」
「ああ……」
俺はグラスを合わせた。グラスが軽くぶつかり、かちんと音がした。
有馬はグラスの液体を一口飲む。
「美味しー!」
俺も倣って口をつけた。
喉を潤す少し甘めの液体。それもまた、疲れ切っていた、俺の心に沁みるような、何かで。多分、有馬が居るからこそ、そういうものに感じられて。
「二つのグラスで乾杯するとこんな音が鳴る。じゃあ片方のグラスだけでは、どんな音かしら」
- 121二次元好きの匿名さん23/10/01(日) 13:11:52
「禅問答、続いてたのかよ?」
「隻手の声ならぬ隻グラスの声」
「そこはグラスのままかよ」
「ちなみに公案その1」
「ナンバリングするな」
「……どうかしら?」
「どんな音かは分からないが、きっと寂しい音だろうな」
「良い感じの回答をするじゃない」
「そりゃどうも」
「まぁ、こうしてる方が楽しいものね」
「ああ……」
一人より、二人の方が。それは、確かにその通りのことであって。
「まー、でも、あれよね。アンタの反応は色々良い肴になるわね。安心して。MEMちょ辺りにバラしたりはしないわ」
「楽しそうだな……」
「楽しいわよ?」
そう、笑って。
思えば、ああいう時も、有馬の方が店との対応とか、よっぽど自然に流せていた。
それこそ、有馬が言ったように、昔は、俺の方が、随分とこういうことには慣れていた、筈だったのだが。
そういえば、昔有馬を連れだした時の、有馬の反応はとても愛らしかった。それを楽しむ余裕も俺にはあった、と思う。その時とは、えらい変わりようだ。
それもまた、俺が、……あるいは、『僕』が、変わってしまった、ということになるのだろうか。そういう意味でも、俺は、本当に情けない人間になっていたのだろう。
- 122二次元好きの匿名さん23/10/01(日) 13:24:17
そういう時間が、何かの価値を感じられるものであったことは確かで。
もはや消えることすらできず、かといって別の何かに踏み出すこともできず、ただ、勇気もなくそこに居るだけになっていた俺にとっては。
時々、どうしようもなく辛くなる俺にとっては。
それはとても貴重な時間で。
ただ、それはもっと……あっさりしたものでなければならない筈で。
そういうものだからこそ、それは、俺にも許される何かだと、俺自身が信じられたものの筈で。
……とにかく、俺は、そういうものではないと思っていた。……というよりも、そいういうものではない、と『思わなければいけない』、と考えていた。俺は…そういう気持ちになる、権利はないと思っていた。そうでなければ、俺自身が、俺を許せない。
……有馬は、どう感じていたんだろうか。
とにかく、そういうもの、だったのだ。
そういう、いつも何もない、ただの駄弁りだけのサシの飲み。そういうものだった。
この間の『事故』までは。
- 123二次元好きの匿名さん23/10/01(日) 13:27:55
- 124二次元好きの匿名さん23/10/01(日) 13:46:55
ひとまず今回の投稿はここまでで。
今日の夜か、明日以降かに、また続きを投稿します。
お読み頂き有難う御座いました……。
というか、いつもなんか色々反応ありがとうございます……!
なんか突発的に投稿を開始したネタでしたのに、大変励みになってます……。
というか本当に反応有難う……。参考にもなっています……。
なんかシチュエーションに反応してしまったんだ…。話が色々組み上がってしまったんです、というか…。
思わず投稿を開始してしまってすまない、というか…。
ありがとう……この二人のイメージ、自分としてはこういう部分が強いんです……。
折角書いているのでどこかに投稿しても、と思っています。
このシリーズをどこかに投稿するとしたら渋ですかね、と。
- 125二次元好きの匿名さん23/10/01(日) 13:50:54
ありがとう!良かった!
ゆっくりで良いので今後も続き書いてください。 - 126二次元好きの匿名さん23/10/01(日) 13:51:51
あれ、アクアが孕まさせられるの?
- 127二次元好きの匿名さん23/10/01(日) 14:22:07
素晴らしいssをありがとう……
- 128二次元好きの匿名さん23/10/01(日) 21:18:22
- 129二次元好きの匿名さん23/10/02(月) 07:22:25
かなちゃん良い子過ぎる。
- 130二次元好きの匿名さん23/10/02(月) 12:27:22
これほんと生きがい
- 131二次元好きの匿名さん23/10/02(月) 23:13:36
多分このスレの最初の頃からこのしっとり感あふれるスレになると想像出来た奴0人
本当にスキ…… - 132二次元好きの匿名さん23/10/03(火) 08:01:59
結末を見届けたい
- 133二次元好きの匿名さん23/10/03(火) 12:40:15
- 134二次元好きの匿名さん23/10/03(火) 22:11:42
相手の強さに縋った弱い2人だからこその空気感だと思う
- 135二次元好きの匿名さん23/10/04(水) 00:14:10
このレスは削除されています
- 136二次元好きの匿名さん23/10/04(水) 00:18:15
>>123 続
有馬は、ただそんな思いに耽っていた俺を、じっと見下ろしていた。
「結局は、シンプルな話よ」
有馬は静かに言った。
「私はまぁ、そういうタイミング、とは思わなかった」
タイミング。そんな言葉の選び方も、あえて状況を軽く見せようという意図があってのことなのだろうか。
「……でも」
そこで言葉を切る。少しだけ、迷っているようでもあった。
やがて、続ける。
どこか、こちらに同情するような、優しい声で。
「アンタは止まらなかった。いや、止まれなかった」
「……」
何も言えない。
その、言い直しの裏にある思いやりが、痛いほど分かった。
でも、有馬がどう言い繕ってくれようとも。
やはり、そこにあるのは、そういうことで。
- 137二次元好きの匿名さん23/10/04(水) 07:54:49
この距離感やっぱいいよね…
- 138二次元好きの匿名さん23/10/04(水) 17:35:03
- 139二次元好きの匿名さん23/10/04(水) 20:05:28
このレスは削除されています
- 140二次元好きの匿名さん23/10/04(水) 20:15:54
彼女は、彼女自身を子供だと笑っていた。
子供らしい感性で、彼女自身が守っていたものを、そのように大事に思っていたのだ、と。
そして、それは、滑稽なことなのだ、と。
でも、仮に、どれほど児戯的に思えるものであっても。どれほど他者からは嘲笑されるように見えるものであっても。
そうであっても、それは、それほど彼女にとっては今も尚、純粋なもの、価値のあるものであった、ということでもあり。
そして、そのようにして、彼女自身を守っていた、有馬かなという女性を、俺がただ、欲望のままに貪ったということであり。
「それ以上のことは……興味ありありだったら、追々にでも話してあげるわ」
「別に興味とかいう話じゃない」
「そ、残念」
有馬は、本当に残念そうに、そう言う。
「また、あーくんの反応を楽しめるネタが出来たかと思ったのに」
「ただの罰ゲームじゃないか」
「罰なら大歓迎でしょう?」
「いや……」
「それともやっぱり、嫌なんだ?」
「それは……」
「ハッキリしないわねー」
有馬は小さく笑った。
俺は戸惑う。
彼女の言葉の裏にあるもの。
結局はそこから踏み出せない俺への、せめてもの、抗議。
俺は有馬を見た。
「何よぅ」
有馬がどこか怪訝そうに聞いてくる。
俺の視線に何かを感じたのか。
- 141二次元好きの匿名さん23/10/04(水) 20:18:35
このレスは削除されています
- 142二次元好きの匿名さん23/10/04(水) 22:03:02
- 143二次元好きの匿名さん23/10/04(水) 22:31:16
そして、全てが終わり、いわば多くの人が言う『めでたしめでたし』になったからこそ、あらゆる関係を、平和なものへと初期化すらしようとしていた、いや、多分その試みは、ほぼ成功していたであろう俺を。
そうだ、俺は、「やるべきこと」はきっとやっていた。
多くの親しき人達、大事な人達、恩ある人達。みんなに対して、決して不義を働くことなく。彼女ら、彼らを失望させることもなく。恩には礼を。あらゆる愛にも礼を。罪には謝罪を。無礼にも謝罪を。ありがとう、ごめんなさい、ありがとう。ほんとうにありがとう。
そして、皆に信じてもらう。
あくまで、星野愛久愛海という存在は、健全な自立した存在として歩み始めていると。
そして、多分それは、実際に成功していた筈で。
何故なら……、それは、本当の事だから。
本当に俺は、健全に、自立した存在として、きちんと歩み始めていたから。
ただ……、その内心に、いくらか、けりがついていない部分が残っていただけで。
価値がないものが、価値があるかのように演じるという、そこの部分の葛藤が残っていただけで。
そして……、俺自身の、度し難い何かの部分への、恐れが残っていただけで。
……有馬は、そんな健全な俺の、内心の何かを気にしていて。
だから、俺を見ていて。
しかも......、あくまで俺には気づかれないような、同僚、友人としての有り様で済むような、そんな、控えめなかたちで。
そういう、あくまでも、そこに何かの重みを、意味合いを、あるいは、受益者が負い目と感じるような、分かりやすい何かを、重視しなければならないと思ってしまうような関係性を、……要は、恩義、もしくは責任という名の負担を発生させないような程度で。
- 144二次元好きの匿名さん23/10/04(水) 23:02:06
そういえば。
有馬は、『事故』の後、言っていた。『アンタを縛りたくない』と。
あの『事故』のような目に見える出来事から、もし、義務的な関係性が生じることがあったら、きっとそれは、有馬にとっては失敗だった、ということだったのだろう。
何故なら……、そうなってしまえば、それは、その日まで、彼女が必死に積み上げてきた、あくまで浮ついた何かの関係性ではない、親しき者としての密かな行いを、全て無駄にしてしまいかねないののであったから。
もし。
もし、俺が。
このまま……、次に、次の何かに進む事ができていたら。
このとらわれから離れて、綺麗さっぱり何かに進むことになっていたとしたら。
この、彼女のしめやかな行為は。
誰にも知られぬまま。
何より俺の気づかぬまま。
ただ、無かったことになっていた筈で。
そして……。有馬とは、ただ、そのままになっていたかもしれなかったもので。
俺は、そのような……最悪の人間のまま、彼女とそのままになっていたかもしれないもので。
言いようのない感情にとらわれる。
- 145二次元好きの匿名さん23/10/04(水) 23:15:25
- 146二次元好きの匿名さん23/10/04(水) 23:23:10
- 147二次元好きの匿名さん23/10/05(木) 08:09:15
また素晴らしいSSがきてた…!落ち着いたらまた読む!
- 148二次元好きの匿名さん23/10/05(木) 18:12:10
いい方向に向かいそうだ…!
- 149二次元好きの匿名さん23/10/05(木) 23:26:29
>>145 続
臆病。
有馬の言う、臆病。その意味は、何となくは、分かる。
有馬の来歴。その意味は色々と聞いてきた。そこにある恐れ。
親しきひとが、皆、離れて行ってしまうという恐れ。
ただ、拒絶され。
ただ、皆離れ。
ただ、孤独になる。
だからこそ、彼女は臆病であり。
だからこそ、彼女はしばしば、人間関係において、素直になれず、また、しばしば悪化させてきた、そういうものであり。
そして、あのお互い高校生だった頃、彼女なりに俺に何かの感情を抱いてくれつつも、彼女は踏み出さなかった、というのは、勿論色々な状況、めぐりあわせがあってのことだとしても、それが背景としての理由として、あるかもしれないもので。
だから……また、踏み出せなかった。有馬はそう言いたいのだろう。
ただ、俺には別の気づきもある。
- 150二次元好きの匿名さん23/10/05(木) 23:48:07
有馬が言った、『臆病』。
それは、何かに対する恐れ、ということであり。
その恐れは……、何よりも、俺が壊れてしまうことへの恐れ。
このようなありようになってしまった、俺が。
ちょっとのバランスの歪みで、崩れてしまうのかもしれない、という恐れ。
例えば、有馬自身の感情を優先させ、踏み出した時に、それこそ、それを切っ掛けとして、俺が本当に壊れてしまうのかもしれない、という恐れ。
だとしたら……それよりも、ただ、見守り、たとえそのまま俺が離れていくことになったとしても、俺が維持されることを優先した、というその姿勢。
ただそこに留まろうとしていた俺は、得体の知れない何かだったから。
その、心が、精神が、中身が見えなかったから。
そして、ただ、彼女としては、その不自然さしか分からかったのなら。
あるいは……、その、不自然さだけは、分かってしまったのなら。
それだけで、彼女は、何をするか、考えなければならなかったから。
だから、ただ、見る。
心が伺い知れないのなら、ただ、見守るしかなかったから。
だから、ひたすら、臆病に、見守り続けた。
近づかず、遠ざからず。
ただ、見続けた。
そこまで……、俺を、思いやってくれていた、という意味。
- 151二次元好きの匿名さん23/10/05(木) 23:55:14
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- 152二次元好きの匿名さん23/10/05(木) 23:57:24
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- 153二次元好きの匿名さん23/10/05(木) 23:58:57
- 154二次元好きの匿名さん23/10/06(金) 09:50:15
続きが気になる…
- 155二次元好きの匿名さん23/10/06(金) 21:03:41
覚悟決めた重曹ちゃんは強いな〜
- 156二次元好きの匿名さん23/10/06(金) 23:10:52
>>153 続
負い目に思うな、と有馬は言うんだろう。
また、負い目に思うことは有馬への侮辱になるんだろう。
ただ……やはり、その果てにあった行為は、本当に最悪で。
そして。
どこかで、自分はそういう行為をしてしまうのかもしれない、という、一種の、自身の本性、自身の欲望への恐れ、その自認が俺にあるのも、事実で。
そうだ、俺は、そういう人間だったのだ、という。
アルコールによる判断低下など、ただの言い訳に過ぎず、ただ、俺はやりたいようにやっただけなのだ、という。
ただ、暴力的に、有馬をわが物にしたかっただけなのだ、という。
そんな、自分への恐れがあるのも、事実で。
「ほら、行こ?」
有馬は俺の肩を優しくゆらゆらと揺らして、促す。気落ちしている俺は、すぐに立ち上がる気になれなかった。
ただ、彼女を見上げる。
- 157二次元好きの匿名さん23/10/07(土) 01:06:15
そんな俺を見て、有馬はくすくすと笑った。
「キャッチボール、楽しかったわよ。二度目のキャッチボール」
「……ああ」
ただ、相槌を打つだけの俺を見て、有馬は何故か悪戯っぽい笑みを浮かべる。
「……ねぇ」
突然、有馬が抱き着いてきた。その両腕を俺の体に回してくる。ごく、自然に。
驚きの中、有馬の温もりが、俺を包みこむ。その瞬間、俺の心に、形容し難い衝動があふれる。
その温もりを嬉しく思う気持ちと、より強く求めたいという、欲望と。
それらが、ない交ぜになったような、何か。
鼓動が高まるのを感じる。彼女の温もりが、直接触れた体を通して、俺の心に伝わってくる。
俺の心の凍り付いたどこかが、溶かされるような感触を覚える。
ただ、それは同時に、より彼女を強く求める気持ちと、そのことが引き起こした事実への罪悪感と恐れが、呼び起こされるようなものでもあった。
- 158二次元好きの匿名さん23/10/07(土) 08:13:50
目の保養になる…
- 159二次元好きの匿名さん23/10/07(土) 18:33:58
すごい好き
- 160二次元好きの匿名さん23/10/07(土) 23:10:23
>>157 続
「……有馬」
俺は、感情の持って行きようが分からず、混乱する中で、ただ、彼女の名前呼んだ。俺の声に応えるかのように、彼女の抱擁が強まる。彼女の温もりと、柔らかさを、感じる。密着した彼女から伝わるその感触に、思わず、ただ単純に彼女を求めたいという衝動が湧き上がる。そして、直後に感じる、欲望のままにそうすることなど許されないという恐れ。それらの気持ちが交互にやってきて、訳が分からなくなる。
「ねぇ、あーくん」
耳元で、ささやく。
有馬の、柔らかな息を首元に感じる。
有馬の、汗のにおいが鼻腔を刺激する。
それは……俺の、何かの想像力を刺激してしまうような。
俺の中の、暴力的な、汚らわしい何かにも届くような。
この愛しい人を、ただ貪りたいという、あってはならない想いを抱かせるような、そういうもので。
- 161二次元好きの匿名さん23/10/07(土) 23:38:25
このレスは削除されています
- 162二次元好きの匿名さん23/10/07(土) 23:48:43
- 163二次元好きの匿名さん23/10/08(日) 10:48:43
めちゃくちゃドキドキする…良き…
- 164二次元好きの匿名さん23/10/08(日) 21:47:20
出だしからは考えられないしっとり感良い
- 165二次元好きの匿名さん23/10/08(日) 21:48:17
今度はしっかりお互いを確かめながらするのいいね…
- 166二次元好きの匿名さん23/10/09(月) 09:25:08
今度は謝るんじゃなくて感謝出来ればいね……
- 167二次元好きの匿名さん23/10/09(月) 20:13:13
ここで自罰思考から脱却できるか
- 168二次元好きの匿名さん23/10/10(火) 07:05:04
少なくともワイがアクアのパンツの心配してた頃にこうなるとは一切予想してなかった
- 169二次元好きの匿名さん23/10/10(火) 12:57:52
アクアの曇りを晴らしてくれ…!
- 170二次元好きの匿名さん23/10/10(火) 22:42:32
かなちゃんの「しよっか」いいなぁ
- 171二次元好きの匿名さん23/10/11(水) 07:37:10
続き見たい…
- 172二次元好きの匿名さん23/10/11(水) 17:31:20
保守
- 173二次元好きの匿名さん23/10/11(水) 23:06:48
そろそろ裸待機に辛い季節になってきた……
- 174二次元好きの匿名さん23/10/11(水) 23:38:54
- 175二次元好きの匿名さん23/10/12(木) 02:22:13
>>162 続
有馬が「集合場所」として指定したのは、シティホテルの一室だった。都内の、いわば、特に目立たない、中堅クラス程度という辺り。
部屋はこっちでとっておくから、そこで待ってて。比較的『安全』なところらしいわ。色々聞く話だと、ね。有馬はその時、そう言って笑った。
ミヤコさんからも『昔』色々とアドバイス貰ったし。そこはちゃんと気を付けないと。
少しだけ苦笑いしながらそう付け足した、その言い方には、どこか彼女自身の滑稽さを嘲笑しているような雰囲気を感じた。
結局のところ……有馬は、今日、ある程度、初めからそういう想定だった、ということらしかった。
俺は、どこまでも任せっぱなし。ひたすら受け身。情けない話だ。
部屋はかなり広かった。リビングエリアの、ソファやテーブルといった調度品も小ぎれいに整えられている。「そういう」用途の宿泊施設ではないのだから、それはそうあるべき、なのかもしれないが。
俺は、そのまま特に何もせず、ただ、ベッドルームに入り、ベッドに腰かける。
どうにも、考えが整理できていなかった。
あの日の、そして、今日の有馬との会話を思い起こす。
よくわからないまま、今日にたどり着いてしまった、彼女との関係。
結局、俺はまだ、有馬とどう向き合えばよいのか、ちゃんと考えることが出来ていなかった。
まがりなりにも、『付き合う』ことになった筈の今になって、本当に今更の話とは思うのだけれども。
かつて、俺は思っていた。俺には、あのまっすぐな視線を向けられる資格なんてないと。俺には、彼女と向き合う資格なんてないと。
だから、ただ。俺とは、関わりの無い遠くで、輝いてくれれば、と。
だけど、その選択が、有馬を苦しめていて。
有馬に、孤独な、戦いを強いていて。
過去のことなのに、有馬から聞いたその真実を思い起こす度に、持って行きようのない焦燥感のような気持ちにとらわれる、その出来事。
有馬は、それほどまでに俺を想ってくれていて。
……本当に、俺には、そんな資格なんて、なかったのに。
彼女の輝きを、穢すような、資格など。
ここまで考えを巡らせて、皮肉を感じる。
何を言っているんだか。資格も何も、結局無理矢理有馬を汚したのが、俺だというのに。
- 176二次元好きの匿名さん23/10/12(木) 02:53:40
有馬の、声を思い出す。
『二度目……、しよっか』
どこか楽し気な、誘いの言葉。
その声に……自身の心のどこかが刺激されたのは、確かに本当のことで。
ただ、同時に、己自身への、恐怖もそこにあって。
俺は……ちゃんと、彼女を悲しませずに、彼女に向き合えるのだろうか、という。
電子キーが開錠する音。そちらに目をやる。
ドアを開け、有馬が入ってくる。
「あーくん? いるんでしょ」
俺は彼女の方に目をやる。
「いるじゃない。声くらい出しなさいよ…」
そう言いながら彼女は廊下をぱたぱたと歩く。
上着を脱いでハンガーにかける。控えめな衣服ながらも、首や肩から覗いた素肌に俺は一瞬視線を奪われた。
有馬はそのままこちらにやってきて、丁度、俺の座っているベッドからは向かい合わせのようになっている、ソファにどかっと座る。
「あー、緊張した!」
そして、彼女はふぅ、と息をつく。
「なんかアレよね。やっぱこういうの緊張するわよね…別にいけないことをしてる訳じゃないんだけれども」
そこまで話してから、彼女は悪戯っぽく笑う。
「あー、そっか、これっていイケナイコトなのかしらね?」
- 177二次元好きの匿名さん23/10/12(木) 08:10:35
ありがたい…希望に答えていただきありがとうございます…!
- 178二次元好きの匿名さん23/10/12(木) 17:29:58
いよいよって感じだな…
- 179二次元好きの匿名さん23/10/12(木) 22:23:42
かなちゃん余裕そうに見えて心臓の鼓動は、アクアよりヤバそう
- 180二次元好きの匿名さん23/10/13(金) 07:55:31
どっちもドキドキしてるのがいいんだぁ
- 181二次元好きの匿名さん23/10/13(金) 12:32:48
お互い緊張ほぐしてからしそうだよね
- 182二次元好きの匿名さん23/10/13(金) 12:34:41
う
- 183二次元好きの匿名さん23/10/13(金) 22:31:11
ここから結構喋ったり映画見たりしそう
- 184二次元好きの匿名さん23/10/14(土) 01:01:27
>>176 続
「さぁな……」
「やっと喋ったわね。というか、何その気の無い返事」
有馬はいったん立ち上がり、ミニバーの方に向かった。中をみて、おー、と声を出す。
「品ぞろえはいいけど、どれも良い感じにマージン載せてるんでしょうね。いい商売だこと……」
そう言いながら、テーブルに置かれていたミネラルウォーターのペットボトルに目をやる。
「とりあえずこっちでいいわ」
そう言ってミネラルウォーターを手に取り、ごくごくと飲む。
「あー、美味しい」
有馬は笑う。
「なんかこう、色々生き返るわ」
俺は、水で濡れた彼女の唇を見やり、そして何かを考えてしまった己を恥じる。
有馬は、こちらを見た。
「あーくん、なんだかさっきから反応悪くない?」
「そうかもな…」
「やっぱり反応悪いわね」
そう言って、有馬は笑う。
有馬は、普段以上に明るく振舞っているようにも見えた。
有馬なりに、どこか緊張している部分もあるのかもしれない。
一方、俺は。
緊張、というよりは。
自分の感情を、もしくは、その置き所を、扱いかねていた。
- 185二次元好きの匿名さん23/10/14(土) 04:06:36
彼女は魅力的であり、愛おしいとも思う。
だからこそ、一応……、これからの『予定』、そこへの気持ち、欲求が無いといえば大嘘になる。
ただ、それとは別に。
俺は、俺の内心に、昏い欲望が湧き上がるのを感じていた。
有馬を滅茶苦茶にしてしまいたい。無理矢理に、滅茶苦茶にしてしまいたい。
辱めてしまいたい。
ただ、それだけの欲望。
欲望のままに彼女を犯してしまったら。
彼女を、苦しめてしまったら。
どうなるのか。
どんなふうに、有馬は泣くのか。
そうすれば、価値を感じることはできるのか。
命の価値、重みの感じ方は色々。
価値ある彼女を。ただ、犯し、ただ、苦しめて。
欲望を、刻み付ければ、きっと、自身の価値も、感じることができる。
この、価値の無い俺も。彼女の視線を向けられる資格の無い俺も。
彼女を苦しめ、彼女に俺自身を刻み付ければ、その、価値を。
……俺は今、何を考えていた?
急に湧き上がった妄念を、必死に振り払う。
何故、そんなことを。
何故、そんな恐ろしいことを。
「あーくん?」
- 186二次元好きの匿名さん23/10/14(土) 04:34:16
有馬の声に、現実に引き戻された。
「本当に大丈夫?」
そう言いながら、有馬は、俺の隣に座ってきた。
軽くベッドが揺れる。
こちらを覗き込む。
「いや……まぁ、ほら、色々考えるだろ」
誤魔化しに、それっぽい事を言う。
「何それ」
有馬はくすりと笑う。
「あーくん、緊張してる?」
その声は、とても明るく。
多分、有馬のいう『緊張』は。
それは、きっと微笑ましい意味で言っていて。
確かに、本来なら、この状況は。そういう微笑ましい会話が合う状況の筈で。
そういう、微笑ましい状況の筈で。
「……さぁな。お前は?」
俺のその言葉も、本来はそういう微笑ましい流れの言葉の筈、なのに。俺はそれを、その場凌ぎの言葉として発していて。
「まぁ、ねぇー」
有馬はそんな風にはにかんで笑う。
そこで、しばらく会話が途切れる。
「ま、まぁ、ずっと、こうしてても、ね……」
しばらくしてから、有馬が、下を向いたまま、すこしだけ、ぎこちなく、そう言う。
どこか照れた、彼女の仕草。
そんな有馬が、とても愛らしく、かわいらしく見えて。
思わず抱きすくめたくなる、愛らしさで。
犯してしまいたくなるほどの、愛らしさで。
そう、手の届くところ。すぐ隣に有馬が居て。
そう、手を伸ばせば。
伸ばしてしまえば。 - 187二次元好きの匿名さん23/10/14(土) 05:37:17
俺は、内心に浮かび上がった何かの感情を振り払おうと、思わず立ち上がった。一旦、有馬から、少しだけ、離れようと。そのまま、ゆっくりと窓の方に向かう。ひたすら、気持ちを落ち着けようと、窓の外を見る。高層階から望む、窓の外は、夕焼けだった。真っ赤な夕焼け。血のような赤い夕焼け。都会の白い市街を、ビルの林立している市街を、夕焼けが覆っていた。赤く。ひたすら、赤く。
「何外見てるのさ。黄昏ちゃって」
有馬もこちらにやってくる。暴力的な妄念に囚われている俺のことなどつゆ知らず。ごく普通に俺に近づき。俺の隣に立って、窓の外を覗く。
「流石に良い景色よねー、これだけ高いと。……色んな意味で。ふふっ」
「まぁ、な」
有馬のうなじが見えた。
フローラルの香りと、おそらく緊張からきた、彼女の汗の匂いが混ざったものが、俺の鼻腔を刺激した。
それは、俺の中の、暴力的な劣情も、一気に刺激するもので。落ち着かなければいけない。
俺は、有馬を見た。夕焼けに照らされて、赤く染まった彼女。それは、とても魅力的に見えて。彼女は、こちらを見返す。
「どうしたの?」
有馬は、少しだけ顔を赤らめて、照れたようにそう言った。
「ああ、いや…」
「そ」
そして彼女は、照れながら言った。
「じゃ、じゃあ、さ……、その、何? えっと……、シャワー……、浴びてくるね」
そんな有馬は、やはり魅力的で。とても愛らしくて。すぐにでも、辱めてしまいたくなる程に。
有馬は俺から離れて、シャワールームに向かおうとする。
刹那、俺は、思わず、有馬の肩を掴み、引き留めていた。
「え……」
有馬が、こちらを振り向く。
俺たちは、しばし、言葉もなく、向き合う。
「どうか……した?」
有馬の優しい声。その瞬間、俺の中で、何かが制御できなくなった。
俺は、そのまま、強引に有馬を、ベッドの上に押し倒していた。
「あっ……」
ベッドが激しく軋んだ。
俺たちの体が、激しく揺れた。
覆いかぶさった俺の下で、有馬が、少しだけ驚いたように、戸惑ったように、こちらを見上げていた。
「……あーくん?」
- 188二次元好きの匿名さん23/10/14(土) 05:42:52
(次回に続く)
今回はここまでとなります。ここまでお読みいただき、有難う御座いました。
いつも反応本当に有難う御座います。大変励みになっています。また次回をお楽しみに…。 - 189二次元好きの匿名さん23/10/14(土) 10:43:08
素晴らしいSSだ…!ありがとうございます!
これ2スレ目いくかな? - 190二次元好きの匿名さん23/10/14(土) 19:50:38
もっと続き長いことやって欲しいから2スレ目行ってほしいな……
- 191スレ主23/10/14(土) 19:59:45
- 192二次元好きの匿名さん23/10/14(土) 20:42:15
- 193二次元好きの匿名さん23/10/15(日) 01:36:01
続けてくれるのありがたいです…!
- 194二次元好きの匿名さん23/10/15(日) 07:42:39
埋めておくか
- 195二次元好きの匿名さん23/10/15(日) 07:42:59
うめ
- 196二次元好きの匿名さん23/10/15(日) 10:15:29
スレ立て乙
続きが気になって仕方がない - 197二次元好きの匿名さん23/10/15(日) 12:38:23
CP要素のあるスレは閲覧注意を付けておいた方が後々展開しやすいかもね
- 198二次元好きの匿名さん23/10/15(日) 22:45:20
梅
- 199二次元好きの匿名さん23/10/15(日) 22:45:30
うめ
- 200二次元好きの匿名さん23/10/15(日) 22:45:43
200