(SS注意)ジャングルポケットから聞いた遊びを実践するマンハッタンカフェ

  • 1二次元好きの匿名さん23/09/24(日) 02:26:14

    『トレーナーにも頼むんだけどやってくれねーんだよなあ……』

     ポッケさんが不満を隠さずにぼやいたことがあった。
     小さい頃から気に入っているある“遊び”を、トレーナーがしてくれない、と。
     その遊びが何かを知っている私にとってみれば、当然だと思う。
     彼女のトレーナーは男性、異性からしてみればあの遊びはなかなかにハードルが高い。
     いえ、仮に同性であったとしても、ハードルは高いだろう。
     
     ────けれど、どうしても好奇心が騒めいてしまう。

     楽しいというのは、どういうことなのだろう。
     あんなところを信頼する人に触られたら、どんな感覚が走るのだろう。
     ヤラセレバイイ、と“お友だち”は気軽に言うけれど、そんな勇気は出ない。
     だから、この好奇心はずっと心の奥底にしまっておこう。
     そう思っていたはずなのに。

    「あつ……っ!」
    「カフェ大丈夫!? ごめん、ちょっと熱すぎたか!?」

     ある日のトレーナー室、その日はトレーナーさんに珈琲を淹れてもらっていた。
     普段は私が淹れるのだけど、彼が淹れ方を学びたいというので月に数回はこういう日を作っている。
     まだまだ技術的には拙いけれど、素朴で優しい味がする、ような気がした。
     ただ、今日は少しお湯の温度を誤ったみたい。
     舌先が熱く、ヒリヒリする。とはいえこの程度、放っておけば、大丈夫だろう。
     心配しなくて大丈夫ですよ、トレーナーさん。
     微笑んで、そう一言告げれば良い、それだけのはずだった。

  • 2二次元好きの匿名さん23/09/24(日) 02:26:29

     ふと、魔が差した。

     蠢くは、心の奥底にしまっていたはずの好奇心。
     まるで地獄の扉を開かんとする悪魔のように、その衝動は心の蓋を激しく叩く。
     荒々しいノックは胸へと伝わり、鼓動となって心臓を大いに震えさせる。
     ああ……ダメ……我慢……しないと……。
     私の最後の抵抗を嘲笑うかのように、ポンと背中を押される。
     ────イケ。
     “お友だち”はそっと呟いた。

    「…………火傷……したかもしれません」
    「じゃあ氷か何をもらって……!」
    「いえ……そこまでは…………ただ少し気になるので……」
    「うん、何でも言ってくれ」
    「では……触診をお願いできますか…………?」
    「任せ……触診?」

     勢いよく頷いた直後、目を丸くするトレーナーさん。

     そんな彼の前で私はぺろりと、自分の舌を晒した。

     ポッケさんの小さい頃からのお気に入り、それは『舌遊び』。
     大きく出した自分の舌を、他の人に引っ張ったり、捻じってもらうという遊び。
     彼女がトレーナーにしてもらえないというのも、当然だ。
     私だって、普段であるならば、やってもらえないだろう。
     でも、この流れならば、押し通せるかもしれない。
     一瞬の硬直の後、トレーナーさんは困惑の表情を浮かべた。

  • 3二次元好きの匿名さん23/09/24(日) 02:26:45

    「カッ、カフェ? 触診といわれても、俺じゃ分からないと思うけど」
    「れっ」
    「いや、れっ、じゃなくて、流石に舌を触るのは衛生面とかでも」
    「……れっ」
    「やっぱ氷を持ってきて、なんなら保健室に行った方が」
    「……れっ!」
    「……コレやらなきゃダメなやつ、ってうわ!?」

     ついに痺れを切らしたのか、“お友だち”がトレーナーさんの背中を蹴り飛ばした。
     私の方に向けてよろける彼の身体を支えて、そして、その顔の前に舌を差し出す。

    「…………れっ」
    「……わかったよ、とりあえず、触れば良いんだね?」

     一切退く様子を見せない私に、トレーナーは諦めたようにがっくり肩を落として問いかけた。
     私はその質問にこくりと頷いて、じっと舌を出したまま彼を見つめ続ける。
     恐る恐るといった様子でゆっくりと、彼は人差し指を、私に向けて近づけていった。
     その速度はスローモーションのようにゆっくりで、焦らされるようなもどかしさを感じる。
     やがて、私の舌と、トレーナーさんの指先の距離はゼロになって。

     彼の人差し指がつぅっと、私の舌を撫でるように触れた。

     ぞわりと、背筋が走って、尻尾と耳が逆立ってしまう。
     感触は良く分からない。
     ただ、触れられてはいけないところを触れられたという背徳感に、心が高ぶってしまう。
     トレーナーさんの、少し硬い指先が、私の舌を蹂躙していく。
     私のざらざらとした舌が、トレーナーさんの指先を、なぶっていく。
     気持ち良くもないし、気持ち悪くもない。
     だけど、とにかくやめて欲しくはないと、心の底から思った。

  • 4二次元好きの匿名さん23/09/24(日) 02:27:03

    「たっ、多分大丈夫みたいだから、もう良いよねカフェ」

     トレーナーさんの焦ったような声。
     とんでもない、やめるなんて、ゆるされない。

    「……だえ…………れす」
    「……マジ?」
    「つあんで……ひっはっはり…………ねひっはり……」
    「……摘まんで、引っ張って、捻じるの?」
    「はひ……」
    「…………わかった、ただ、やめて欲しくなったら、すぐ言ってね」

     トレーナーさんは少し低い声でそう言うと、人差し指と親指で、私の舌を挟んだ。
     きゅっと、ちょっとだけ強く摘ままれる、私の舌先。
     それは口の中のほんの一部でしかないはずなのに、全身を掴まれたような感覚に陥る。  
     身体中に妙な力が入ってしまい、思わず固まってしまった。

    「……引っ張るよ」
    「はっ、はひ…………ひはっ!」

     トレーナーさんの指が、小さな力で、ちょっとだけ、私の舌をぐいっと引っ張る。
     本来であるならば、精々顔の向きを変える程度の、微かな力。
     けれど、私は釣り上げられた魚のように、腰を浮かせてしまう。
     そんな無様な様子の私を、彼は無表情で眺めながら、口を開いた。

  • 5二次元好きの匿名さん23/09/24(日) 02:27:18

    「…………ねじるよ」
    「へう……! はへ…………ひゃっ……!?」

     ねじる、というよりはちょっとだけひねるといった行為。
     それだけに過ぎないのにもかかわらず、私はひねられた方向に身体を捩らせてしまう。
     右へ左へ、トレーナーさんのされるがままに、身体が勝手に反応してしまう。
     トレーナーさんの指先二つで、私の全てを、支配されてしまう。
     危機感からなのか、胸からはドクドクと音が鳴り響き、顔はマグマのように煮え立つ。

     怖い。
     生殺与奪の権を、全て奪われてしまったような感覚が。
     怖い。
     口の端から川が流れる、情けない顔を晒してしまっていることが。
     怖い。
     抵抗しようとする気力の一切が、全く湧き出て来ないことが。

     それを悪いことだと思えないことが────なによりも怖かった。

    「…………はっ!? おしまい! カフェおしまい! おしまいです!」

     突然、トレーナーさんは我に返ったように慌てだして、私の舌から指を放そうとする。
     待って、まだもう少し、もっと、逃げないで、逃がさない……!
     私は反射的に、彼の手首を掴んだ。
     ほっと息を吐くが、それでも離れてしまわないか、不安で胸がいっぱい。
     ああ、じゃあ、離れることのないように、こうすれば良いんだ。

  • 6二次元好きの匿名さん23/09/24(日) 02:27:39

    「……あむっ」
    「カッ、カフェ!?」

     私は、トレーナーの二つの指を、ぱくりと咥えた。
     その時、親指はぬるりと逃れてしまったけれど、この人差し指だけは逃がさない。
     唇できゅっと抑え込んで、傷つけないように甘噛みして、舌で包む。
     そして、彼に訴えかけるように、じっと視線を送って。

     この状態が、すごく安心することに、気づいてしまった。

     先ほどまでの、ドキドキが止まらない、恐怖心とは全くの反対。
     彼の指を咥えているだけで、鼓動はゆっくりとしたものに変わり、穏やかな心地になっていく。
     味なんてしないはずなのに、甘いお菓子を食べてるみたいに、口の中に幸福感が広がっていく。

    「…………んっ……ちゅっ…………れう」
    「ちょっ……!?」

     ストローで爽やかなフルーツジュースを飲むように、ちゅうちゅうと吸い付いて。
     カラフルな飴玉を転がすように、コロコロと舌先で弄んで。
     それを何度も繰り返していると、頭がふわふわと夢見心地になっていく。
     
    「……ちゅう………んんっ………………すぅ…………くぅ……」
    「えっ、待って、寝るのは良いけど、指を放して……!」

     トレーナーさんの慌てふためく声を、寝物語にして。
     私の意識は、夢の世界へと旅立った。

  • 7二次元好きの匿名さん23/09/24(日) 02:27:55

     その後、目覚めた私はすっかりふやけたトレーナーさんの指を見て、頭が真っ白になった。
     血の気の引いた頭は、冷静な思考を強制させ、知りたくなかった現実を否応なしに見せつけて来る。

     トレーナーさんに舌をいじられながら、全く抵抗の素振りを見せない私。
     トレーナーさんの指をしゃぶり、舐め回しながら、眠りについてしまう私。
     その間、きっとあられもない顔をトレーナーさんに晒していた、私。

     顔が、灼熱に包まれる。
     きっと、今の私の顔は、秋の紅葉よりも真っ赤に違いない。

     明日から、トレーナーさんとどんな顔で会えば良いのか。
     今日のことを、なんてトレーナーさんに言い訳すれば良いだろう。
     もう一度、トレーナーさんにしてもらうにはどうすれば良いのか。

     尽きることのない悩みが、頭の中でメリーゴーランドようにくるくると回ってしまう。 

     『舌遊び』とは、なんて危険な遊びなのだろう。
     私は、思いもしなかった。

     まさか、あのポッケさんが────こんないやらしい遊びを、好んでいたなんて。

  • 8二次元好きの匿名さん23/09/24(日) 02:28:47

    お わ り
    良いですよね舌遊び

  • 9二次元好きの匿名さん23/09/24(日) 02:33:06

    すごく……えっちな雰囲気です……
    牛の話しか出てこないけどもしかして実在する……?

  • 10二次元好きの匿名さん23/09/24(日) 06:14:45

    なんで夜中にSSを……?

    カフェってなんでこんなにインモラルな雰囲気が合うんだろうね

  • 11二次元好きの匿名さん23/09/24(日) 06:40:54

    >>10

    元々ダウナーな子はエロ同人だとそういうシナリオになりがちだから。なんでダウナーな子がそういう雰囲気になりがちなのかはわからぬ……

    あとは相方の倫理観が無いからかな

  • 12二次元好きの匿名さん23/09/24(日) 06:43:49

    >>9

    多分元ネタ(を題材にした漫画)はこれ。

  • 13二次元好きの匿名さん23/09/24(日) 07:14:12

    引っ張るだけでなく押し合いとかやらないかな…

  • 14二次元好きの匿名さん23/09/24(日) 07:21:18

    ポ「知らん……何それ……怖……」

  • 15二次元好きの匿名さん23/09/24(日) 08:28:48

    わぁ……雰囲気が……凄く……すごい……

  • 16二次元好きの匿名さん23/09/24(日) 09:45:09

    上げざるを得ない
    しっとりが似合うねぇ、カフェは

  • 17二次元好きの匿名さん23/09/24(日) 10:06:52

    「あれ、あそこにあるのマンハッタンカフェじゃない?」
    「あ、ホントだ。なんかめっちゃ楽しそう!」
    「しかも2人っきり!少しいい雰囲気じゃない?」
    「もしかして舌遊びかな?」
    「うわー、なんか顔真っ赤」
    「照れちゃって、カワイイ…!ますますファンになりそ〜!」

  • 18二次元好きの匿名さん23/09/24(日) 10:38:23

    >>17

    え…もしかしてメジャーな遊びなの?

  • 19二次元好きの匿名さん23/09/24(日) 10:51:03

    一切健全なはずなのに
    どうしてだろう、こんなに官能的なのは

  • 20二次元好きの匿名さん23/09/24(日) 14:55:34

    そういう行為は何もしてない筈なのに、何故だろう…えっち、えっちです!!

  • 21123/09/24(日) 18:49:21

    感想ありがとうございました

    >>9

    元ネタに関しては>>12の通りですね、併記しておくべきだったかな

    そういう雰囲気が出せてれば幸いです

    >>10

    書き終わったのが深夜だったからね仕方ないね

    カフェはなんかこういう感じが良く似合う気がしますね

    >>13

    舌の押し合いは別のSSでやったんで……

    >>14

    お前が始めた物語だろ

    >>15

    そういう空気感が出ていれば良かったです

    >>16

    カフェのこういう魅力は一体なんなんでしょうねえ

    >>17

    やっぱこいつら怪異だよ

    >>19

    元ネタの絵面は多分ほのぼのした感じのはずなんですけどねえ

    >>20

    何もしなくともカフェは叡智だから仕方ないね

  • 22二次元好きの匿名さん23/09/24(日) 20:02:21

    すっごいね……

  • 23123/09/24(日) 21:04:21

    >>22

    カフェはすごくすごいんです

  • 24二次元好きの匿名さん23/09/24(日) 22:02:54

    どうしてこの子はなんかちょっとMっぽいんだろうか

  • 25123/09/24(日) 22:44:26

    >>24

    受け身っぽい感じなのがそう思わせるのでしょうかね

  • 26123/09/25(月) 06:59:08

    『最近、あの子からお願いされるんだけどさ』

     ジャングルポケットの担当トレーナーは、近頃、良くそうぼやいていた。
     彼女が気に入っているある遊びに付き合って欲しいと、頼まれているそうだ。
     遊びくらいなら付き合ってあげれば良いのに、そう思うかもしれないが内容が内容である。
     異性で、しかも年下の女の子に、あんな“遊び”は出来るわけがない。
     彼が拒否するのも、仕方ない話だろう。
     
     ────けれど、どうしても好奇心が騒めいてしまう。

     その“遊び”は、本当に楽しいのだろうか。
     信頼する担当ウマ娘の、あんなところに触れてしまったらどうなってしまうのか。
     あの子だったら、頼み込めば、もしかしたら。そんなことを一瞬でも考えてしまう自分が、嫌になる。
     この好奇心は、一生、心の奥底に仕舞い込まなければいけない。
     そう思っていたはずなのだが。

    「あつ……っ!」
    「カフェ大丈夫!? ごめん、ちょっと熱すぎたか!?」

     その日、俺はトレーナー室で担当ウマ娘のマンハッタンカフェに珈琲を淹れていた。
     彼女のことをもっと理解したい、そう考えて、月に数回は珈琲の入れ方を教わっている。
     ただ、最近は純粋に珈琲を彼女のために淹れるのが楽しくなってきていた。
     そんな慣れが、油断に繋がったのだろう。
     今日は注ぐお湯の温度を間違えてしまったようで、カフェは口元を両手で押さえていた。
     口の中で火傷をさせてしまった可能性が、頭を過ぎる。
     脳内で様々な行動と対応をシミュレーションさせながら、彼女の言葉を待った。

  • 27123/09/25(月) 06:59:22

    「…………火傷……したかもしれません」
    「じゃあ氷か何をもらって……!」
    「いえ……そこまでは…………ただ少し気になるので……」
    「うん、何でも言ってくれ」
    「では……触診をお願いできますか…………?」
    「任せ……触診?」

     しょくしん?
     聞き慣れない単語に、思わず聞き返してしまう。
     言葉を発した直後、それが単語が“触診”であるということを正しく認識した。
     触って確かめろ、ということだろうか?
     いや、まさか、それこそジャングルポケットじゃあるまいし、そんなことをカフェが求めるわけがない。
     そう、俺は自分自身に言い聞かせるように、その可能性を必死で否定した。
     その努力は、他ならぬカフェによって、打ち砕かれる。

     ぺろりと、真っ赤で、少しだけ長い舌を、彼女は晒した。

     ジャングルポケットが好んだ“遊び”────“舌遊び”。
     自分には絶対に訪れないと思っていた、その“遊び”に興ずる機会が突然、目の前に現れたのだった。
     胸の奥に秘めていたはずの好奇心が、暴れるように心臓を強く揺さぶる。
     待て、落ち着け、ただのトレーナーでしかない俺が触診してどうなるというのか。
     努めて平静を装いつつ、俺は言葉を返す。

    「カッ、カフェ? 触診といわれても、俺じゃ分からないと思うけど」
    「れっ」
    「いや、れっ、じゃなくて、流石に舌を触るのは衛生面とかでも」
    「……れっ」
    「やっぱ氷を持ってきて、なんなら保健室に行った方が」
    「……れっ!」
    「……コレやらなきゃダメなやつ、ってうわ!?」

  • 28123/09/25(月) 06:59:39

     舌を出したまま、一切の御託は聞かないと言わんばかりのカフェ。
     そして突然、強く背中が叩かれて、彼女にぶつかるように身体がよろけてしまう。
     覆いかぶさりそうになる俺の身体を彼女は支えてくれて、直後、俺の眼前に舌を差し出した。
     じっと、射貫くように見つめる、金色の瞳。
     ああダメだ、これでは彼女の舌に触れることを、避けることは出来ない。
     それを直感して、俺はほっと、胸をなでおろした。

     待て────何故、俺は、安心しているのだろう?

     触診をしなくてはいけないのに、彼女の舌に触れなくてはいけないのに。
     これじゃあまるで、触れない理由がなくなったことを、喜んでいるみたいじゃないか。

    「…………れっ」
    「……わかったよ、とりあえず、触れば良いんだね?」

     自分の本心に気が付いてしまい、俺は肩をがっくりと落としながら、カフェへ言葉を送る。
     その言葉に、彼女は舌を出したまま頷いて、じっとこちらを見続けていた。
     そうだ、これはあくまで、彼女の火傷を確認するための行為。
     邪な意図など、一切ないのだ。
     心の中で、まるで祈りを捧げるように言い訳を唱えながら、人差し指を彼女の舌に近づける。
     傷一つつければ罪に問われそうな、貴重な宝石に触れるように。
     ゆっくり、慎重に、恐る恐る、じわじわと彼女の舌先に指先を近づけて。
     
     つぅっと、カフェの舌を撫でるように、触れた。

  • 29123/09/25(月) 06:59:55

     しっとりとした湿り気、ざらざらとした感触。
     カフェの身体が一瞬だけぴくりと震えて、その後は落ち着かないようにで耳がぴょこぴょこを動く。
     その様子を見ているだけで、心の奥底で得体の知れない感覚が、ぞわぞわと蠢いてしまう。
     指先をは、彼女の舌の上で滑るごとに、彼女の唾液で塗れていく。
     なんだろうこれは、とてもいけない気がする。
     刹那、理性が激しくアラートを鳴り響かせて、俺は慌てて言葉を紡いだ。

    「たっ、多分大丈夫みたいだから、もう良いよねカフェ」

     その言葉を聞いた瞬間、カフェはじろりとこちらを睨む。
     絶対に逃がさないという目で、もっと欲しいと求める目で。
     獲物を前にして荒ぶるような呼吸で、餌を前にして興奮するような呼吸で。
     怒りを露にしたような顔で、蕩けてしまったような顔で。

     静かで、穏やかで、落ち着いて、理性的な、マンハッタンカフェというウマ娘。
     そんな彼女が、複雑な感情全てを剥き出しにしたような、そんな顔を見せている。
     それを見てしまった瞬間、俺の中で────何かが壊れた。

    「……だえ…………れす」
    「……マジ?」
    「つあんで……ひっはっはり…………ねひっはり……」
    「……摘まんで、引っ張って、捻じるの?」
    「はひ……」
    「…………わかった、ただ、やめて欲しくなったら、すぐ言ってね」

     驚くほど、トーンの低い声が出た。。
     カフェの言われるがままに、俺は人差し指と親指で、彼女の舌を挟む。
     そしてきゅっと、力を込めた。
     彼女はびくびくと先ほどよりも大きく震えた後、今度は石のように身体を硬直させる。
     心の奥底の騒めきが、より強く、よりはっきりと、その存在を主張していく。

  • 30123/09/25(月) 07:00:09

    「……引っ張るよ」
    「はっ、はひ…………ひはっ!」

     気づけば、主導権が逆転していた。
     俺は自らの意思で、言われるまでもなく、彼女の舌をくいっと引っ張る。
     大した力は入れていない、ほんの数センチだけ、引っ張っただけ。
     それなのに、カフェは釣り上げられた魚のように、腰を浮かせてしまっていた。

    「…………ねじるよ」
    「へう……! はへ…………ひゃっ……!?」

     左右に彼女の舌をひねってあげると、彼女はそれに合わせて踊るようにくねくねと身を捩らせた。
     漆黒の勝負服で身を包み、こと長距離おいては鋭く、誰よりも強い走りを見せるカフェ。
     そんな彼女が、俺の指先二つで、されるがままに弄ばれている。
     心の奥底の騒めきが、ついにその姿を現した。

     それは、支配欲。
     
     格好良くて、美しくて、凛々しくて、可愛らしい。
     そんな魅力にあふれた彼女を支配して、征服して、滅茶苦茶にしたいという欲望。
     今、指先で摘まんで、引っ張ったり、捻じったりした彼女の顔は、どうなっているのか。

     風にたなびく格好良い漆黒の髪は、大いに乱れている。
     透き通るような美しさを持つ肌は、火が出そうなほどに真っ赤に染まっている。
     現世も幽世も見つめる凛々しい瞳は、とろんと蕩け切ってしまっている。
     小さな可愛らしい口元は、甘い声を出しながら涎を垂らし、熱い息を吐き出している。

     情けなくて、無様で、卑しくて、世界中の何よりも、綺麗だと思った。

  • 31123/09/25(月) 07:00:24

     ────イイカゲンニシロ────

  • 32123/09/25(月) 07:00:38

     地獄の底から、響き割るような、“お友だち”の声。
     首に一瞬だけ圧迫感が起きて、息が詰まる。
     さあっと血の気が引いて、脳に直接に氷水をぶっかけられたかのような錯覚を覚えた。

     今、俺は、何を考えていたんだ?
     
     トレーナーとしては最低ともいえる思考を、俺は持っていた。
     今までこんなこと、欠片も考えたこと、なかったはずなのに。
     危険だ、この“舌遊び”は隠れてた欲望を引きずり出してしまう、危険な遊びだ。
     ……って、何時までカフェの舌に触っているんだ俺は。

    「…………はっ!? おしまい! カフェおしまい! おしまいです!」

     終了を告げる言葉と共に、手を離そうとする。
     刹那、まるで逃げる獲物を発見した猟犬のように、カフェはぎらりと瞳を輝かせた。
     離れようとする俺の手首は、瞬時に両手で捕まえられてて、固定される。
     そして、舌を掴んだままの二本の指を────ぱくりと咥えた。

    「……あむっ」
    「カッ、カフェ!?」

     何とか親指だけは逃したものの、彼女の口は人差し指を放さない。
     全身に緊張が走り、身動きが取れなくなってしまう。
     さっきまでとは、まるで反対。
     カフェの小さな口に、俺の全てが支配されてしまったみたいだった。

    「…………んっ……ちゅっ…………れう」
    「ちょっ……!?」

  • 33123/09/25(月) 07:00:54

     赤ん坊のように、カフェは俺の指先をちゅうちゅうと吸い付いて。
     おもちゃを口に入れた子どものように、ぺろぺろと舌で指先を舐め回して。
     それを繰り返す彼女の顔が、楽しそうで、幸せそうで、俺は何も言えなくなってしまう。
     ……なるほど、親というのは子どもに支配されているようなものかもしれない。

    「……ちゅう………んんっ………………すぅ…………くぅ……」
    「えっ、待って、寝るのは良いけど、指を放して……!」

     やがてカフェの口の動きは小さく、ゆっくりとなり、同時に瞼も落ちていく。
     しかし、小さな寝息を立てる彼女の口は、俺の指を咥えて、離してはくれない。
     手首もがっちりと抑えられていて、俺の身体はここに完全制圧されてしまった。
     ため息一つ。
     これも暴走してしまった報いだと思って受け入れるしかない。
     指、大丈夫かなと一抹の不安を覚えながら、あどけない顔で眠る彼女を見守るのであった。

     ……それにしても、あのジャングルポケットがこんな過激な遊びを好んでいるだなんて。

  • 34123/09/25(月) 07:01:18

    お わ り
    逆視点版でした

  • 35二次元好きの匿名さん23/09/25(月) 09:08:57

    すごく…すごいえっちです!

  • 36123/09/25(月) 19:31:19

    >>35

    感想ありがとうございます

    健全、健全です

  • 37二次元好きの匿名さん23/09/26(火) 06:29:23

    最高だな

  • 38123/09/26(火) 07:43:09

    >>37

    ありがとうございます

    そう言っていただけると嬉しいです

  • 39二次元好きの匿名さん23/09/26(火) 08:20:03

    子猫の首をつまんだ時に逆らえなくなるような、信頼に基づく愛情の枷と、たった一点の拘束に全てを握られてしまう背徳を甘受する劣情の鎖。
    ソフトSMの魅力が十全に込められていて助かる。

  • 40123/09/26(火) 12:13:57

    >>39

    愛情の枷と劣情の鎖というのは素晴らしい表現ですね

    ありがとうございます

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