- 1二次元好きの匿名さん21/12/24(金) 17:17:17
「シリウス、一つ賭けをしねえか」
同室のナカヤマフェスタが、愛用のキャンディを舐めながら、コインを一枚取り出した。表か裏か、などという単純な遊びではない。それは、ナカヤマフェスタが賭けを持ちかける時のクセのようなものだった。
「何を賭けようってんだ?」
「世間じゃ今日はクリスマスイヴだ。パーティなりなんなりでプレゼントを貰うこともあるだろう。お前のトレーナーからは貰えるかな」
「おいおい、そんなの賭けにならねえよ。私のトレーナーが貢ぐのを忘れるわけないからな」
「はン、そう言うだろうと思ったよ。お前もどうせ何か用意してるんだろ。だから賭けるのは、お前とそのトレーナー、どっちが先にプレゼントを渡すかだ」
「……それこそ賭けにならないんじゃねえか。私に主導権がある」
「分の悪い賭けは嫌いじゃないからな。どうする、乗るか?」
シリウスシンボリは考える。ナカヤマフェスタは生粋の勝負師だ。博打を打つことは多々あるが、勝ち目のない賭けはしない。それでも、シリウスが開口一番にプレゼントを渡せば終わりだ。やるつもりもないが、適当に嘘を吐いても良い。
「レートは?」
ナカヤマフェスタは三本指を立てる。にんじん三つとは、随分強気だ。
「分かった。乗ってやるよ」
賭けに勝つことそのものよりも、ナカヤマフェスタがどういうヴィジョンで賭けたのかを知りたかった。 - 2二次元好きの匿名さん21/12/24(金) 17:17:49
放課後、シリウスシンボリは様々なパーティに顔を出す。本当な自分のトレーナーを連れ回すつもりだったのだが、急な仕事が入ったと連絡があった。拉致しようかとも考えたが、それはどうにも余裕が無い。どうせ夜には空くだろうと好き勝手にパーティをはしごする。
美味そうなものを食べ、子猫たちからプレゼントを受け取り、そろそろ寮に戻るかトレーナー室に顔を出すかと悩んでいる頃に、トレーナーから連絡が届く。
『ようやく仕事が終わった。今どこに居る』
簡素な文面はいつも通りだ。今からトレーナー室に向かえば合流することが出来るだろう。そこでふと考える。
仕事で入れなかったトレーナー室、ナカヤマフェスタの謎の自信。十分にあった時間。
「サプライズ、って奴か?」
大方ナカヤマフェスタにプレゼント相談でもしたのだろう。バレるかどうかのスリルも、彼女の好むところだ。共謀していても全くおかしくない。
「今日はイヴだが、明日だってクリスマスだ。思い通りに動かされるのも癪だな」
連絡には、今日はもう遅いから寮に帰ると返信した。 - 3二次元好きの匿名さん21/12/24(金) 17:18:24
「よう、随分遅くまで遊んでたみてえだな。賭けはどうなった?」
「残念ながら、まだどっちも渡しちゃいねえよ。賭けは延長だな」
「ふーん、そうか」
ナカヤマフェスタがくつくつと笑いをこらえていることに、シリウスは違和感を覚える。サプライズが不発だったことを面白がっているのだろうか。
「アンタの負けだ、シリウスシンボリ」
そう言ってナカヤマフェスタが投げたのは、包装紙に包まれた小箱だった。
「アンタのトレーナーからのプレゼントだよ。ありがたく受け取りな」
「…………ここまでグルだったのか?」
手のひらで転がされたような気がして眉間にシワが寄る。自分のトレーナーに良いように動かされるのはプライドが許さない。
「いいや?」
ナカヤマフェスタは否定する。
「私はただ、アンタのトレーナーから『当日にプレゼントを渡せなさそうだから預かっといてくれ』って言われただけさ」
「そうか」
勝手にから回っていたのは自分の方だったらしい。もっとも、トレーナー室に向かったら向かったで、あのトレーナーは何かプレゼントを寄越しただろうが。
小箱を開けてみると、入っていたのは銀細工らしいネックレス。シンプルな装飾は、星の形をしていた。
明日の予定はキャンセルだな。シリウスシンボリはネックレスをポケットにしまい込んだ。 - 4二次元好きの匿名さん21/12/24(金) 17:22:04
終わり。続きを明日書くかは未定
- 5二次元好きの匿名さん21/12/24(金) 17:22:44
仕事中にいいもん見れた。ありがとうございます😊