- 1二次元好きの匿名さん21/12/24(金) 21:44:15
クリスマス。前はカフェと外にディナーを食べに行った日。
それでは今年はどうかというと、二人でトレーナー室にいた。
人混みを嫌う彼女は、前のこともあって今年は出かけないことにしたらしい。
そして、今日の机の上にはたくさんの料理。
彼女が言うには、あの時食べたディナーを参考にして作ったのだそうだ。
「ありがとう。でも、ごめんな。言ってくれればカフェだけに準備はさせなかったのに」
「良いんです。……これは、日ごろの感謝の気持ちでもありますから」
「……そっか。分かった、じゃあ素直に頂くことにするよ」
「ええ、召し上がれ」
食卓は、暖かだった。
お手製の料理に舌鼓を打ち、彼女が淹れた少し特別な珈琲を飲めば、何だか心の底から熱が湧き上がってくる気がした。
「美味しかったよ。カフェ」
「良かったです。……ふふ」
「……じゃあ、俺からもお礼、しないとね」
そう言って、あらかじめ用意していたプレゼントを取り出した。 - 2二次元好きの匿名さん21/12/24(金) 21:44:31
「メリークリスマス、カフェ」
「───!」
ラッピングされた箱を見た瞬間、彼女の表情が変わった。
驚きと喜びが半分ずつ。
この顔が見られただけでも、用意した甲斐があったというものだ。
すぐ中身を確認してくれて構わない、と付け加えて渡す。
彼女は、礼を言って箱を開けた。
「これは……マフラー、ですか?」
「そう。手編みじゃないし、ありきたりだけど」
「……アナタに貰えることが嬉しいんです。ありがとうございます」
彼女は、取り出したそれの模様を眺めたり、触ったりして、最終的に首に巻こうとしたところで──やめた。
そして何かを思いついたのだろう。
「……今から散歩に行きませんか? トレーナーさん」
マフラーを見つめながら、そう言った。
「ああ、良いよ。……着心地、確かめないとね」
「……そう、確かめないといけませんから。行きましょう」
そう話すカフェはやけに嬉しそうだった。
理由は考えるまでもない。
方便に乗って、俺たちは外へ出た。 - 3二次元好きの匿名さん21/12/24(金) 21:44:50
「う……やっぱり寒いな。カフェ? 大丈夫?」
「ええ……大丈夫です。これのお陰で、とても暖かいですよ……」
外に出て、早速マフラーを巻いた彼女はくぐもった声でそう答えた。
「それは良かった。じゃあ行こうか」
頷く彼女を連れて、学園の外周を回り始める。
他の子たちは学園内でパーティーをしたり、既に街中に出て行ったのだろうか。
街灯に照らされた道を行く影は二つだけで、しかもやけに静かだった。
「カフェにとっては、こんな空気が丁度いいのかな」
「……そうですね。雑踏も喧噪も、あまり好きではありませんし……。あまり、人には見られたくありませんから」
「じゃあ、やっぱり遠出は……?」
「しないでしょうね…………あ」
不意に、彼女が立ち止まった。
どうやら何かを見つけたらしい。
その視線は、一点に集中していた。
「何かあった?」
「……お友だちがいます」
こちらに顔も向けずに彼女は言う。
視線の先には特に何かがあるようには見えない。
それでも彼女がそう言うのなら、きっとそこには“いる”のだろう。 - 4二次元好きの匿名さん21/12/24(金) 21:45:10
「お友だちはどうしてる?」
「ただ……立っています。本当にそれだけ……」
これまでのことを考えるに、お友だちが出てくることには何らかの意味があるはず。
考えて、考えてふと思い出す。
それは彼女のコトバ、「あの子はいつも私を幸せに導いてくれた」
「ひょっとして……お友だちはカフェを誘ってるんじゃないか?」
話すわけでもないのに、わざわざ姿を現す理由はそれしか考えられなかった。
「誘う……? どこにですか……?」
「着いて行ってみないと分からないかな」
逡巡の後、彼女は頷いた。
追う事にしたらしい。
「……行ってみましょう、トレーナーさん」
彼女に手を引かれて、俺たちは薄暗がりに足を踏み出した。
街灯だけが照らす暗い道、俺には、先も案内人も見えない。
頼りは手を引く彼女だけ。
しばらく歩いていると前方に光を感じた。
それはだんだん大きくなり、やがて暗がりが開けたとき───
目の前には、街道を彩るイルミネーションが広がっていた。 - 5二次元好きの匿名さん21/12/24(金) 21:45:33
「……お友だちに感謝しないとね」
突然開けた視界にやや呆然とするカフェに語り掛ける。
人はまばら。喧噪は遠く。
聖夜を二人占めできるこの場所は、彼女にとってはまさしく理想的な空間だった。
「……ええ、本当に」
「お友だちは、今どこに?」
「いなくなってしまいました……」
「……どうする? 戻る?」
そう聞くと、彼女は首を横に振った。そして、マフラーで口元を隠しながら言った。
「……このまま、アナタと歩いていきたい……です」
目元の肌を赤く染めながら弱く、彼女は俺を街道の方に引っ張る。
遠慮がちなその仕草と、マフラーが防寒具以外の役割を成していないことが何ともいじらしい。
俺は返事の代わりに強く、冷気さえ隙間に入れないほど固く手を握り直した。
「……寒いので、離さないでくださいね」
言葉の割に暖かい彼女の手にも力が入る。
大丈夫。これからは俺が案内する番だから。
「言われなくても離さないよ」
聖夜の散歩においても、俺たちは普段通りの静けさに包まれていた。
ただ、纏う空気はやけに甘かった気がする。
人影まばらな街道は、クリスマスの香り、すなわちシナモンの香りに包まれていた。
甘さは、果たしてそれに由来するものだったのだろうか。 - 6二次元好きの匿名さん21/12/24(金) 22:00:50
- 7二次元好きの匿名さん21/12/24(金) 22:01:19
天才いますね
- 8二次元好きの匿名さん21/12/24(金) 22:17:23
お友だちもカフェトレを信用しておる…
- 9二次元好きの匿名さん21/12/24(金) 23:30:52
age
- 10二次元好きの匿名さん21/12/25(土) 00:01:03
良い…
- 11二次元好きの匿名さん21/12/25(土) 01:01:35
トレカフェ助かる
- 12二次元好きの匿名さん21/12/25(土) 01:07:37
カフェ狂いのプレゼントはあたたかでいい…
- 13二次元好きの匿名さん21/12/25(土) 06:32:55
アリガトウ…アリガトウ…
- 14二次元好きの匿名さん21/12/25(土) 12:44:48
良いプレゼントだ…
- 15二次元好きの匿名さん21/12/25(土) 22:51:52
ありがとう…それしか言えない…
- 16二次元好きの匿名さん21/12/25(土) 22:53:46
ヒューッ!
- 17二次元好きの匿名さん21/12/25(土) 22:53:57
お前がサンタさんだったのか…
- 18二次元好きの匿名さん21/12/25(土) 23:00:21
お友達の粋な計らいに乾杯
- 19二次元好きの匿名さん21/12/25(土) 23:01:49
ドン!!!!
- 20二次元好きの匿名さん21/12/26(日) 00:13:47
好き…