(SS注意)えっちなことをしないと出れない部屋の話

  • 1二次元好きの匿名さん23/09/25(月) 22:48:44
  • 2二次元好きの匿名さん23/09/25(月) 22:48:59

    「えっち! えっち! フラッシュえっち!」

     それは2023年、トレセン学園での出来事だった。
     『えっちなことをしないと出られない部屋』という仕事を命じられた僕は、あるウマ娘とそのトレーナーを自分の中に閉じ込めていた。
     閉じ込めたウマ娘はエイシンフラッシュというウマ娘だった。艶やかな黒髪、凛とした佇まい、そして女性らしい豊満さも兼ね揃えた、いかにも生真面目そうなその姿は、なんでも器用にそつなくこなすようなタイプに感じられた(ただ、彼女を良く知る人物は割と不器用な面もあると口を揃えて言うので、もしかしたら僕が勝手にそう感じているということなのかもしれない)。
     そして傍らの男性に関しては、眉目秀麗なウマ娘と比較すると、なんとも凡庸な外見だった。しかし、それはあくまで彼女と比較した場合の話であり、仮に彼一人を見た場合は、十分ハンサムと呼べる顔立ちなのだと思える。
     彼ら二人を閉じ込めて、この部屋がどのような部屋でどうすれば出られるのかを説明した後、二人は困惑したように話し合いを始めた。その間、僕は部屋に備え付けられているダイキン製のエアコンの様子を確認していた。フィルター清掃の予定を考えながら、彼女達の次なる行動を、ただ待っていた。
     やがて、意を決したようにエイシンフラッシュは一歩前にゆっくりと踏み出して、視線を揺れ動かしながら、素人の操り人形のようにぎくしゃくとした様子で投げキッスを放った。
     「えっち! えっち!」これはえっちなことに違いないと思った僕は、扉を開けながら彼女達に伝えた。「フラッシュえっち!」
     やれやれ、これで仕事も終わりか。そう思っていたのだが、彼女達は何故か部屋から出ようとせず、少しばかり拍子抜けした様子で、呆れたような視線を開放されたスチール製のドアに突き刺している。
     突然の停電で全ての機械が止まってしまった工場のような静寂に、僕は恥ずかしくなってしまい、インパクト・ドライバーでビス留めした直後の螺子のように、壁面を熱くさせてしまった。「うん、ひょっとして────何か、おかしいのかな」「おかしいのかな」

  • 3二次元好きの匿名さん23/09/25(月) 22:49:17

     僕からの言葉に、彼女達は困ったように口を閉ざしてしまう。僕は、彼女達から言葉が発せられるのをじっと待った、工事現場で使われるまでその場に置かれている建材のように。
     やがて、トレーナーの方が口を開いた。「君のエロスは、少しばかり狭いね」
     狭い、聞いたことのない表現だ。疑問のあまり扉のヒンジを傾げていると、彼は僕に質問を投げかけた。
     「君はさっきのフラッシュの行動の、どこにエロスを感じたんだい?」その質問に何の意味があるのだろうと思いながらも、僕に答えた。「キスという行為は本来、親しい人物に向けられる行為だ、それを不特定の相手に対して行うのだから、それははしたない、いやらしい行為に違いないだろう」「つまりそれは行為そのものではなく、行為が持つ意味に注目したということかな」「ああ」少しだけ赤面するエイシンフラッシュを窓目に見ながら僕は頷いた。「その通りだ」
     彼はオーギュスト・ロダンの考える人のように顎に手を当てながら口を開いた。「なるほど、良い着眼点だ。けれど、少し遠い、かな」
     「遠い?」またもや聞いたことのない表現。「遠いとはどういうことなんだい」
     「彼女に対して身体つきだけを見ながらやれえっちだえっちだと騒ぎ立てる輩がいるけれど、君はそこからは脱している。けれど、真のエロスにはまだ距離がある、いいかい、真のエロスとは見た目や、様式や、状況なんかじゃない────心、なんだ」「心なんだ」そう彼は言った。彼の言っていることは良く分からない。けれど決して、無視などは出来ない説得力が、そこにはあった。
     「例えばさっきの投げキッス、君はフラッシュのどこに注目した?」彼からの疑問に、機能として備え付けられている監視カメラの映像を確認しながら、正直に答える。瑞々しい柔らかそうな唇、キスを運ぶよう出された手のひら、星が瞬くようなウインク、それが僕が見ていたところだった。しかし、彼にとって、この答えは不服だったようで、出来の悪い生徒を見るような渋面を浮かべていた。

  • 4二次元好きの匿名さん23/09/25(月) 22:49:31

     「そこだよ」「そこが狭いんだ、君はエロスに対する視野が狭いんだ」その言葉に、僕は扉の枠に脚立をぶつけられたような衝撃を覚えて、思わず聞き返してしまう。「視野が、狭い?」
     彼は言う。「そうだ、もう一度良く彼女の姿を思い浮かべてみるんだ」
     言われるがままに先ほどのエイシンフラッシュの投げキッスの映像を再生する、すると彼は寝ようとする子どもに寝物語でも語るような口調で、見えてはいないはずの映像の解説を始めた。
     「まずは投げキッスをする前、少し迷いながらバタついているのがわかるだろう。フラッシュは投げキッスなんて同室のスマートファルコンがファンサでやっているところ見たことがあるだけで、やったことのない行為なんだ。そして『えっちなことをしないと出られない部屋』に対して行ったということは、えっちな行為かもしれない、くらいには認識している。つまりこの時彼女は、初体験のえっちな行為をしようとしていたんだ」
     それは一筋の光明、仕事を待っていた大工が初めて図面を渡された時にする瞳のような輝き。
     流石はトレセン学園のトレーナーということなのだろう、彼の説明は、部屋の換気扇が外の空気を取り入れるように、するりと流れ込んでくる。
     「ここでフラッシュの耳にも注目するべきして欲しい、迷子の子供のようにぴこぴこと動いでいるだろう、これは俺達の前で本当にやるべきだろうかと迷っている証拠だ。そして、意を決して投げキッスをしようとするのだけれど、緊張のあまり必要以上のオーバーアクションになってしまい、若干ではあるが、胸が揺れてしまっている」
     彼に言われるがままに、エイシンフラッシュの胸に注目する。確かに彼女の胸がウレタンフォームのように柔らかさと、確かな弾力を感じさせる揺れを見せていた。「すごい」僕は思わず呟いてしまう。「本当に、すごい」

  • 5二次元好きの匿名さん23/09/25(月) 22:50:04

     「そのことには本人も気づいていたけれど、気づかない振りをして継続した。そのため、ここで少し頬に赤みが差している。そして、少しヤケクソ気味に投げキッスを決めた。纏めればこういうことだ」「フラッシュは自分でもえっちだと思っている行為を、初体験に戸惑いながら実行しようとして、不意に揺らしてしまった自分の胸に気づいて、羞恥心に顔を染めながら、投げキッスをやり遂げたんだ」
     ────その言葉を聞いた瞬間、ついてないはずの床下暖房がオーバーヒートしそうになった。
     いまだ体験したことのない熱風に、僕の窓ガラスがカタカタと震えてしまう。
     「そうか」「そうだったのか」僕は彼を見た。凡庸な外見といったが、それは大きな間違いだった。今や僕にとっては初めて見た自動ドアのように輝いて、彼の姿が見えていた。憧れ、尊敬、羨望、そんな感情が部屋の上の方で熱だまりとなっていく。
     僕の様子を見て彼は満足そうに頷いた。「わかる、だろ?」「真のエロスとは心なんだ、その時、相手が心の中で何を考え、何を想い、何を感じていたのか、これらのファクターを組み立てていった先に、真のエロスは存在するんだ」彼の言う通りだった、僕の今までのエロスに対する認識は、四畳半よりもはるかに狭量なものであった。
     「ありがとう」「ありがとう、貴方に出会えてよかった」感謝の念を伝えると、彼は優しく微笑みを浮かべながら解放された扉のノブを掴む。ごつごつとした固い手なのに、ふわふわのノブカバーで包まれたような安心感がそこにはあった。
     そして、彼は扉を優しく締めると、ゴミと埃とカビと害虫を見るような目つきでこちらを見るエイシンフラッシュに近づいて、そっと囁いた。

  • 6二次元好きの匿名さん23/09/25(月) 22:50:27

     「……君の可愛い投げキッスが、もう一度見たいな」
     「……っ」
     エイシンフラッシュは一歩前に出て、片手で口元を隠した。
     二度目なので先ほどよりも淀みない動きではあったが、顔の赤みは隠しきれず、また耳も忙しなく動き、尻尾を落ち着きのない様子を見せていた。そしてもう片方の腕は、胸が揺れないようにぎゅっと支えていた。しかし、その支える力が強すぎて逆効果であった。彼女の胸は寄せ上げるように強く自己主張をしてしまい、より刺激の強い状態となってしまっていた。彼女はちらりと視線を下に移して、更に顔を朱色に染めてしまう。
     けれどどうすることも出来ず、一回目よりもはるかに縮こまった動きで、彼女は投げキッスをした。
     僕は自信を持って、堂々と宣言した。

     「えっち! えっち! フラッシュえっち!」

  • 7二次元好きの匿名さん23/09/25(月) 22:50:48

    お わ り
    読みづらくて申し訳ない

  • 8二次元好きの匿名さん23/09/25(月) 22:51:06

    おは村上春樹

  • 9二次元好きの匿名さん23/09/25(月) 22:51:43

    小論文かな?いいぞもっとやれ

  • 10二次元好きの匿名さん23/09/25(月) 22:56:46

    すごくスムーズに読めた
    扉くんかわいいね

  • 11二次元好きの匿名さん23/09/25(月) 23:00:07

    とりあえず2人ともフラッシュさんに怒られなさい

  • 12123/09/26(火) 00:04:59

    感想ありがとうございます

    >>8

    とりあえずそれっぽく書けてはいたようで一安心

    >>9

    この形式だとどうしてもつめつめになりますねえ

    >>10

    そう言っていただけると安心します

    >>11

    まあフラッシュさんも「……っ」してるから……

  • 13二次元好きの匿名さん23/09/26(火) 00:15:34

    そつなくこなす様に見えて不器用で、それでも精一杯やり遂げる彼女の姿に俺は惚れ込んだんだ

  • 14123/09/26(火) 00:58:54

    >>13

    ……っ

  • 15二次元好きの匿名さん23/09/26(火) 01:39:49

    いきなりとはいえ寒くなったから海鮮物の活きが良くなったね

  • 16二次元好きの匿名さん23/09/26(火) 01:47:39

    >>12

    騙されんぞ!途中まで害虫を見るような目で見てたやんけ!


    まぁたどたどしい投げキッスの一連の動きからエロスに関する一家言設けられればそうなるが

  • 17123/09/26(火) 07:28:20

    感想ありがとうございます

    >>15

    うん……うん?

    >>16

    あの時の君は本当に綺麗だったから仕方ないね

  • 18二次元好きの匿名さん23/09/26(火) 07:57:03

    ゴミと埃とカビと害虫を見るような目つきをしようがフラッシュがやってる時点で可愛いくって見惚れるほど美しいに決まってるんだよね

  • 19二次元好きの匿名さん23/09/26(火) 08:00:37

    このレスは削除されています

  • 20二次元好きの匿名さん23/09/26(火) 08:01:36

    めちゃくちゃ誤字っちゃったから消しました
    1ごめん

    ゴミをみる目してるけどそういうプレイの一環だと思ってるよ間違いない

  • 21123/09/26(火) 12:17:07

    >>18

    もはや嫌な顔がご褒美にしかならないよね

    >>20

    お気になさらずにー

    この二人だと普段からやってそうですね

  • 22二次元好きの匿名さん23/09/26(火) 12:33:58

    フラッシュは投げキッスなんて同室のスマートファルコンがファンサでやっているところ見たことがあるだけで、やったことのない行為なんだ。そして『えっちなことをしないと出られない部屋』に対して行ったということは、えっちな行為かもしれない、くらいには認識している。


    これってフラッシュはファル子はいつもえっちなことしてるって認識してるってこと…?

  • 23123/09/26(火) 13:17:58

    >>22

    答え:✕


    ファルコンさんは常にえっちなため

  • 24二次元好きの匿名さん23/09/26(火) 13:49:54

    >>23

    フラッシュさん。

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