黄金千界樹の未来を背負い挑む聖杯戦争第4.5局

  • 1二次元好きの匿名さん23/09/26(火) 21:53:35

    あ、ありのまま起こったことを話すぜ
    突然スマホが異常を吐くわ仕事で変なところに飛ばされるわで更新が途絶えてしまいました
    突然の事で俺も何がなんだかわからなかったが申し訳ない
    漸く更新出来るようになった様なので再開していきます

  • 2二次元好きの匿名さん23/09/26(火) 21:54:26

    おかえりー!!!待ってたー!!!!保守出来なくてゴメーン!!!!

  • 3二次元好きの匿名さん23/09/26(火) 21:55:24

    保守

  • 4二次元好きの匿名さん23/09/26(火) 21:55:34

    そんなことがあったのか……
    気づいたら落ちてて次スレもなかったからエタっちゃったのかと思ってた……
    待ってたよ

  • 5二次元好きの匿名さん23/09/26(火) 21:55:52

    建て乙

  • 6二次元好きの匿名さん23/09/26(火) 21:56:50

    取り敢えず過去スレ達を


    【悲報】どうして……|あにまん掲示板俺は幸運にも最優のセイバーを引き当てた。さらに幸運な事にとても強力なサーヴァントだ。けれど聖杯戦争で油断は出来ない。まずは他のサーヴァントと戦って各陣営の戦力を測った。真名迄は把握し切れていないけど戦…bbs.animanch.com
    千年樹を継いで挑む聖杯戦争代2局|あにまん掲示板俺はユグドミレニア再興を賭けて聖杯戦争に挑んだが、特に悪いことをして……して……ないのにいきなりアーチャー、ランサー、ライダー、キャスター、バーサーカーの5陣営に同盟を組まれてしまい、一気に四面楚歌に…bbs.animanch.com
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    黄金千界樹の未来を背負い挑む聖杯戦争第4局|あにまん掲示板キャスターのマスターが仕掛けたイレギュラー。屍神ゴルゴーンをアーチャー、ライダー陣営と手を結び何とか退けたセイバーのマスターだしかし、聖杯戦争なら訪れた脅威を排除したところで俺達なら置かれた状況は変わ…bbs.animanch.com
  • 7スレ主23/09/26(火) 21:58:40

    いやー申し訳なかった
    状況も落ち着いてきましたのでぼちぼちまたやっていこうと思います
    待っててくれた人たちには感謝してます!!

  • 8二次元好きの匿名さん23/09/26(火) 21:59:07

    お帰りなさい待ってましたー!!保守出来なくてすいません!! FGOしかやったことのない初心者だったけど、このスレ見てからシグルドが好きになったしApocrypha履修したくなったよ〜!!

  • 9二次元好きの匿名さん23/09/26(火) 22:01:44

    お、復活してるじゃまいか
    仕事との両立も大変でしょうけど再開してくれて嬉しいです!
    無理のない範囲で毎秒更新して(はあと)

  • 10二次元好きの匿名さん23/09/26(火) 22:03:08

    確かストーリー的にはランサー陣営に乗り込んで言って主人公君ピンチだったっけ?

  • 11二次元好きの匿名さん23/09/26(火) 22:03:15

    取り敢えず10まで埋めてしまえ

  • 12二次元好きの匿名さん23/09/26(火) 22:05:38

    >>10

    そうだね

    ランサーのマスターにセイバーと分断されて剣主がボコされたところ

  • 13千界樹の記録23/09/26(火) 22:13:12

    平和に価値を見出せるこの男が、この様な個人的な爭い事に召喚された身といえども此処まで真剣にセイバーと戦う事、ましてや令呪による命令といえどマスターの勝利の為に身を此処まで削る事など、余程のことだろう
    その点を指摘されたランサーは一瞬、困惑した様な表情を浮かべたが、直ぐに調子を取り戻した
    「いやいや、そんなこと言ったらあんたの方が聖杯なんて興味ないって顔してると思いますけどね?」
    あれだけの悲劇の中心にいたのにーーーと言外に語るランサーだが、当のセイバーは何一つ変わった風なく即答する
    「当方はマスターの勝利の為に呼ばれた。そしてマスターは悪ではない。故に全身全霊で勝利を捧げるのみ」
    「うわ強いなあんた」
    マジでブレが無さすぎて怖いわ。逆に尊敬できるくらいにな。ランサーは心中でごちる
    ただまあ、実際俺がここまでして勝ちを狙いに行くほどの戦いではないし、聖杯に掛けるような願いもない。誉だとか栄光だとかそんなものに拘る心を持ち合わせてたらトロイアなんて守れない
    なのに何故?俺自身こうまでして格上の大英雄様相手に戦っているのか、マスターを勝利させる為に動いているのかーーー
    「ま、別に大層な理由なんて無いんだけどな」
    本当に、こんなものはただの、気の迷いでしか無い
    それは、聖杯戦争が始まったばかり、セイバー達がアサシンを堕とした直後の事だ。俺はマスターの目的は聞いたし、別に無意味に逆らう意味もないから、とりあえずできる範囲で協力しましょうかねーと、思っていた時だーーー

    使い魔を通して確認できた映像では、セイバーが不意打ちから一方的かつ圧倒的に、アサシンに文字通り何もさせずにその霊核を斬り裂いた一部始終が映し出されていた
    『セイバーの奴、とんでも無い英雄ですねアレ』
    『ふむ。よもやあれ程のサーヴァントを喚べるほどの力があの小僧にあったとは驚きだ。直ぐに情報を他のマスターに回し、最低でも不可侵条約は結ばなくては勝ちの目はないな』
    『流石のオジサンも、あんな奴を相手にしちゃたまんないですねー』
    正直な感想としては、あの英雄はアキレウスとも渡り合えるだろう化け物だ。あんな英雄を相手にするなど、自分はどうもツイてない。そう言う星の下に生まれたのかねと勘繰ってしまう

  • 14二次元好きの匿名さん23/09/26(火) 22:16:03

    おじさんの独白が入った…、ヘクトールにアキレウスと渡り合えると言わせるシグルドやべぇな

  • 15二次元好きの匿名さん23/09/26(火) 22:43:07

    >>14

    アキレウスが

    筋力:B+

    耐久:A

    敏捷:A+

    魔力:C

    幸運:D

    に対してシグルドが

    筋力:A+

    耐久:A+

    敏捷:B

    魔力:C

    幸運:E

    とステータス面でも引けを取ってないし、神性B持ちだからアキレウスの不死生抜けるからマジで五分の勝負が出来る可能性高いからね

    お互いガッツあるし

  • 16二次元好きの匿名さん23/09/27(水) 00:08:31

    おぉ!スレ主が復活されてる!!
    体調崩したんじゃないかと、心配していたんですが元気そうでよかった!

  • 17千界樹の記録23/09/27(水) 08:06:29

    『しかし、最悪はあれを相手に勝たねばならん。その時に備え力は蓄えんとなあ?ランサー』
    『ま、やれるだけのことはやって見ますよ?』
    『カカッそうじゃなあ。やれるだけのことをやって勝たねばな』
    『……』
    『どうした?ランサー』
    『いや、マスターがそこまで勝つことにこだわる理由が見えないっていいますかーーー』
    『いくら時計塔の依頼でも、本気で勝ちに行く人間には見えないと?』
    『無礼を承知で言わせて貰えば、そんな風に見えますけどね』
    自分でも本当に無礼なことを言ってる自覚はあった。けど、マスターの人となりは召喚されてから数度のやり取りで概ね把握している。この程度の軽口で気を害するような人間では無いからこそ、こう言った事も言えるのだ
    『確かに……昔は兎も角、今の私はどちらかと言うと確実な勝負以外はしない堅実な老骨よ』
    しかし……と目の前の初老の男は一度言葉を切った。まるで、自身の過去を振り返るように窓の外へ視線を向ける。鏡写しに映る自らの姿を眺めながら、彼はカカと笑った
    『裏切り、裏切られは日常茶飯事の時計塔での権謀術数の日々にも飽いた。魔術師の本分は自らの魔術を研鑽し、根源への道を求めて苦悩すること……』
    『はあ』
    『今の時計塔は手段と目的が入れ替わり、権力に憑かれた亡者共の巣窟よ。いい加減にうんざりじゃて』
    マスターは苛立ちを隠せない様子で杖で床を強く突いた
    『どうせ地位や権力を手に入れるならば、シンプルな筋道のほうが分かりやすいし愉しくて良い。そう思ったのよ』
    これでも昔は武闘派だった故な?と男は語る
    『それで聖杯戦争なんてものに?』
    『どちらにせよ既に家は孫が継いでおる。時計塔の一級講師も老後のスローライフの一貫、何も失うものは無いからの』
    さいですか。詰まるところ自分はこの目の前の男の趣味に付き合わされているようなものだ。別にそれ自体は構わないが……どうにも気乗りがしないというのも事実であった
    『それにの?ランサー』
    ニヤリ、と男はシワを深く刻むように口角を釣り上げた
    『自らの積み上げた物を憂なく振るえると言うのは、得難い娯しみがある。戦士として興味はないか?』
    等と、実に楽しそうに笑って言うものだ
    『いやーオジサンはそういうのはちょっと』

  • 18二次元好きの匿名さん23/09/27(水) 13:12:53

    槍主自分がいつ死んでも何とかなるようになってるから亜種聖杯戦争とかにもホイホイ出て来れるのか

  • 19千界樹の記録23/09/27(水) 22:04:30

    『なあに大したことはない。生前できなかった事をやって見るのも良いんじゃないか?
    此処は聖杯戦争。過去の因縁もしがらみも、護る国も人も名誉も、戦争を仕向ける神さえもいない。英雄ヘクトールとしてでなく唯の1人の男として振る舞えるのだ』
    『ーーー』
    そこ言葉は驚く程ストンと心の中に落ちた。英雄としてではなく、1人の男として振る舞う。ギリシャの地、神々によって運命を定められる事がたり前の世界において、己を縛るモノが何も無いーーー。そんな少し考えれば至極当たり前の事実に、ヘクトールは一瞬だけ呆然とした
    『ーーーって、俺をその気にさせて自分勝率を上げるのが目的でしょアンタ』
    『バレおったか。カカッーーー』
    しかし、確かに今の自分は生前からは考えられない程に身軽な身である事も事実。英雄としてでなく、個人として振る舞える自由があった
    である以上、確かに生前では考えもつかなかった私闘ーーー自分の思うがまま、自分の為に鍛えた技と力を振るう。そんな贅沢を味わっても良いのかもしれない
    生前の自分では絶対にあり得なかった新しい価値観、成程これは……
    『……で、少しはやる気になれたかね?ランサーよ』
    『ま、あんたの口車に乗ってみようと思うくらいにはね。マスター?』
    このひと時、偶然に恵まれた第2の仮初の生。かつてのような英雄として振る舞うことを辞めて、一個人の戦士として生きるのも悪くは無いーーー

    「……ま、何処まで言っても唯の気まぐれ、気の迷いって奴さ!」
    ランサーはそう答えると同時に、これまでのどの突きよりも疾く、鋭い刺突を放つ。セイバーはその一撃を真っ向から迎撃する
    「!」
    今までに無い疾さ、そして重さ。その威力はセイバーの防御がわずかに間に合わず、右の二の腕に微かな擦り傷を作る。その力はセイバーの予測をほんの僅か、上回った証明でもあった
    「改めてーーーやろうぜ、大英雄」
    「……フッ」
    柄にもなく挑戦的な啖呵を切るランサー。その姿を前に、セイバーは微かな笑みを漏らした。一体どんな心境か、セイバーはその面を解除する。複雑なギミックを以て画面を構成する部品は綺麗にセイバーの叡智の結晶。そのフレームとして収まる。そして、顕になったセイバーの顔と叡智の結晶ーーー眼鏡の奥にあるセイバーの瞳が戦意の火が灯っていいた
    「ーーー参る!」

  • 20二次元好きの匿名さん23/09/28(木) 00:29:07

    気まぐれか……
    生前とは違う生き方、価値観を見出すのもFateの醍醐味だよね
    今回は召喚者に引っ張られてるのもあるだろうけど

  • 21千界樹の記録23/09/28(木) 07:04:31

    「ーーーハッ……ハッ……ハッ……」
    魔力反応を撹乱する水煙を複数炊いて遁走を図った凌我は、一番最初に落ちてきた広間の近くへと戻ってきていた。出入り口の所で廊下の壁に背をもたれ掛かるように座り込む。先程の受けた傷は塞がりつつあるが出血が思ったよりも酷く、更にあの植物、荊に毒でも仕込んでいた様で、傷口から痛みと浮かされるような熱が身体を苛んでいる。植物由来の出血毒かーーー完全な解毒にはまだ少し時間がいるが、それを気長に待ってくれるほどあの講師は緩くはない。もう間も無く此方へトドメを刺しにやってくるだろう
    その前に、仕込みを整えなければ々……!
    「って、そんな時間もないかな!」
    嫌な予感と共にその場から飛び退く。すぐにもたれかかっていた壁面を覆っていた蔓が生き物の様に此方を捕縛しに掛かるが、なんとか回避するそしてその植物が今度は廊下を塞ぐように絡み合い、バリケードを形成してゆく。逃がさないと言う意思表示なのだろう。広間は密室となってしまった
    「いやはや。私のガーデンの中でよく逃げるものだ」
    塞がれた廊下の一つがザワザワと開いて、モーティマーが現れる。彼がこのホールに入ったところで再び蔦の壁は元通りに戻ってしまった。密室に自身諸共閉じ込めるとは、自信か、油断かーーー
    「この手の欺瞞、攪拌は水、と言うより霧の特性でな?水は器用なんだよ」
    「全く以てその通り。君の実力は色位の魔術師にも早々引けを取るまいよ」
    モーティマーは植物の鎧姿のまま、此方へ近寄ってくる。だが、此方の魔術を警戒しているのか、飛び込むつもりなら一足で飛び込める距離に入ったところで歩を止めた
    チッ、もう少し近寄ってくれれば話は簡単なんだがな
    「思惑は見えておる。後一歩でも近づけば水の刃で切り刻むつもりであろう?」
    「さあな」
    矢張り見破られていたか。ここへ逃げ込んだ時に用意した術式はあっさりと見破られてたので即座に機能を停止。別の術式へ変換するーーー
    「さて、君との決着も近づいてきたわけだが、一つ聞いてもいいかね?」
    「何が目的だ?」
    このタイミングで問答とは何が目的なのか
    俺を相手に時間を与えることの意味は理解しているはずだがーーー向こうも何かしらの準備を整えるために時間を稼ごうと言う腹か
    「いや何。これから我々はどちらかが斃れる戦いに身を投じることになる。なら、これが言葉を交わす最後の機会だと思ってね」

  • 22二次元好きの匿名さん23/09/28(木) 08:23:49

    水って本当に器用なんやな

  • 23二次元好きの匿名さん23/09/28(木) 19:01:37

    保守

  • 24千界樹の記録23/09/28(木) 20:23:09

    「確かにな」
    「君は、この戦いに何を望むのかね?」
    「望み、だと?」
    唐突な問い。この戦いに掛ける願い。それはこの戦いの聖杯に託す願いと言っても良い
    「私の様に老い先短い魔術師が最後の華、箔付けに参加するわけでも無い。願いを叶えるのならば、他の亜種聖杯の方が容易の筈だ」
    「その通りだな」
    実際に、望む願いを叶えられるかはともかく、亜種聖杯戦争が多発する昨今。態々危険を冒してまでこの聖杯戦争に参加する意義は正直言って薄い。特にこの戦争に於ける聖杯は、かの大聖杯に最も近い力を持つ模造の聖杯。魔術教会にとっても聖堂教会にとっても無視できるものでは無い
    だがーーー
    「特にこの聖杯を狙う時計塔と聖堂教会のことを考えればリスクが大きすぎるだろうな」
    凌我は笑い飛ばす様に言い放つ
    現に時計塔では誰が確保に向かうかで議論になり、第八秘跡会から不確定ながら『銀狼』が出ると言う情報もあり、その存在を恐れた多くの魔術師が参加を拒んだ
    さらに聖杯そのものの現実性を疑う声も挙がったが、この手の聖遺物の匂いに敏感な第八秘跡会が動く以上、真贋は明らかだった。故に時計塔からは降霊科、及び植物科において確たる地位と実績を持つブライエン家に白羽の矢が立ち、これまで2度に渡り亜種聖杯戦争に参戦を果たしたモーティマーを立てることとなった
    これらの情報は、ユグドミレニアに属する凌我が掴んでいない筈がない。『銀狼』のことは把握出来ずともモーティマーの事は確実に知っていただろうし、聖杯の性質から聖堂教会が動くことも予想していただろう。幾ら彼に実力と準備する期間があったとしても余りにもリスクが大きすぎる
    だが、そんな事は初めから知っていた
    「俺が求めるものはユグドミレニアの復権。それだけだ。別に聖杯に望むものは無い」
    元より、全てを承知の上でこの聖杯戦争の根底を仕込んだのだのだから
    「ユグドミレニア復権の花火は派手な程良い。時計塔の重鎮に、聖堂教会の刺客が参加したと言う事実こそが俺にとっては必要だったからな」
    「カカッ。流石の覚悟、流石の胆力よ。痛いところを突いたつもりだが狼狽えるどころか動揺すらせんか」

  • 25二次元好きの匿名さん23/09/29(金) 08:00:42

    保守

  • 26千界樹の記録23/09/29(金) 12:51:42

    生憎な。こっちは10年前に覚悟を決めているんだ。揺さぶりを掛けようったってそうはいかない
    俺は欲に駆られた弁えない奴や道楽、物見遊山で参戦する連中とは違う
    「逆に聞くがアンタは何で参加してるんだ?」
    時計塔からの依頼で来たのはわかる。だが、亜種聖杯戦争に於いて優秀な魔術師の多くが命を落としている。亜種聖杯の出来次第では願いを叶える事も可能とはいえそれで死んでは元も子もないだろうに
    「カカッそんなものは決まっておろう」
    凌我の問いにモーティマーは笑う。それが当然であるかの様に彼は口を開いた
    「魔術師たる者。己の魔術を高める機会があるならば踏み込まない道理は無い」
    「ーーー」
    その言葉に、思わず言葉を失った
    奴の言ったことはなんて事はない。要はそこに戦いがあるから戦いに行く。そんな事を平然と宣ったのだから
    「……ハッ。貴族主義の重鎮とはとても思えない野蛮さだな」
    「それは違う。上に立つに足るものならば率先して戦場に立つ者だ。陥れるだけが貴族の嗜みではないのだよ」
    更に言うなれば、私が死した後の引き継ぎは万全。憂なく死地に赴けるというものーーーそう言うモーティマーの笑顔の奥には戦いへの覚悟の灯を宿す光があった
    凌我のそれとは別のベクトル、しかし同じ程の熱量を持った意思を見せつける初老の男に、凌我は改めて厄介な老人だと認識する
    「さて、そろそろどちらかが死のうか……!」
    纏っていた植物の鎧に残っていたダメージが全て消えていく。恐らく植物の成長を応用した再生能力なのだろう。これで奴の鎧は新品同然の力を取り戻した
    だが、同時にこの時間で此方の仕掛けも万端。奴に勝つ為の方程式が間も無く完成を迎えようとしていた
    「勝手に決めるなよ……!」
    懐から青い霊筒を出して中の霊薬を服用する。術式の込められた魔力が魔術回路に浸透して、その力を一時的にブーストさせ、魔力の精製量を増大させた
    自身の体からスパークする様に迸る余剰魔力。歓喜するように脈動する魔術回路を高速で回転させていく。今の俺ならば霊筒を使わずとも神水流の秘術の、全てを振るえるだろう
    「ここで終わらせる。勝つのは俺だ!」
    「否、私だ!!」
    セイバーとランサー、そのマスター同士の戦いも、正に佳境に至らんとしていた

  • 27二次元好きの匿名さん23/09/29(金) 20:57:41

    hosyu

  • 28千界樹の記録23/09/29(金) 22:37:33

    先に仕掛けたのは、凌我からだ
    「『水流 山を削げ』」
    モーティマーが来るまでに仕込んだ水溜りの水がうねり、凄まじい速度で槍の様に初老の魔術師へ向けて発射される
    モーティマーはその水の槍を屈む様にして躱す。標的を見失った水の槍はホテルの壁面を、それを覆う植物を諸共に貫通する
    この水の槍は、水に圧力をかけて噴き出される水圧カッターと原理は同じだ。そして、当然それだけでは無い
    「『河流れ 山を降れ』」
    ホテルフロア内の向こう、個室内の水道管を破壊し、流れた水が宙を漂い流れて扉からフロアホールへ流れてくる。あっという間にホール全体に水が満ちる
    「ーーーむ!」
    「『土を運び、岩を割れ!』」
    水は流れを加速させ、砕け散らばった天井の破片の瓦礫を巻き込んで渦を巻く
    瓦礫は水流で細かく砕かれ、無数のコンクリート片の石を含んだ濁流となりモーティマーへ襲いかかる
    「ーーーしかし!」
    モーティマーは即座に動く。腕に巻き付く植物の鎧がザワザワと蠢き、一振りの刃物の様な形状を取る
    そして同時にホテルを覆う無数の蔦が簡易的なダムの様に組み上がり、濁流を防ぐ
    「は!ならなあーーー」
    指をパチンと鳴らす。その瞬間に全てが瞬く間に凍りついて行く
    「見事な発想と精密性だがーーー」
    フロアに満ちた水が全て急速に冷凍され、それは同時にフロアを覆う植物の半分が凍結すると言うことになった。これで足元を掬われることはなくなった。鬱陶しいことこの上ない植物が減るのは良いことだ
    しかし、同時に凍死させようとしたあの男の姿は無い。つまりはーーー
    「上か!?」
    叫ぶと同時に後ろへ飛ぶ。直後にいつかと同じ様に凍結した床面を拳で砕き割る深緑の鎧
    更に今度は背中から触手の様に強靭な蔓を伸ばし鞭の様に此方に追撃を仕掛ける。あの蔓の速度は先端部分はもはや音速に近い。そして人間の腕ほどもありそうな太さの蔓の鞭、喰らえば骨ごと砕け散るのは明白だろうこの閉鎖空間において、中距離を攻撃できるあの鞭は厄介極まりない。魔術師の癖に魔術そのものよりも魔術で強化した自身の体を武器とする様は成程、昔は武闘派として名を馳せたと言うブライエン家に相応しい
    だがーーー!

  • 29二次元好きの匿名さん23/09/30(土) 06:49:48

    保守

  • 30二次元好きの匿名さん23/09/30(土) 17:00:37

    保守

  • 31千界樹の記録23/09/30(土) 17:48:28

    水の渦で壁を作る。これにより鞭の攻撃を弾き飛ばした。それを確認したモーティマーは鎧姿に見合わない速さで此方へ殴り掛かる。その一撃を躱し、追撃の至近距離で薙ぎ払われた鞭を強化した左腕を盾に防ぐが、フロアの壁面近くへ吹き飛ばされた
    「ガッーーー」
    激痛と共に痺れる左腕を強引に動かして前へ突き出す。直ぐにモーティマーの頭上に氷柱針が形成され射出。大理石に穴を開ける威力の氷柱を嘲笑うかの様に鞭を縦横無尽に振り回して叩き落としていくモーティマー。だが、この数瞬を稼げるのなら俺の勝ちだ!
    懐から取り出す赤い霊筒。それを床に叩きつけ、中の赤く発光する霊薬が飛び散る。魔術刻印に魔力が通り、刻まれた腕から首元までが光り出す
    「『水雲渦巻き、青嵐荒べ!』」
    周囲の魔力を操作し、気圧を一気に低下させ極小規模の嵐を作る魔術による物でもホール内程度の規模でしかなくても、嵐は嵐
    そのエネルギー量は船を沈め、航空機を墜落させる力
    気流操作に水を手繰る魔術を組み合わせ、更には自身の血を混ぜた霊薬を触媒に物理現象として乱気流を生み出す呪術を組み込んだ嵐の壁が作り上げられた
    「これはーーー!」
    「決着術式『凶ツ夜』悪いが工房はもう役には立たんぞ」
    ただでさえ立つのもやっとの暴風雨の中、嵐を形成する外周は破壊の渦。フロア内に張り巡らせた草花は全て削り取られ、形を保っているものすらもない。この破壊力はまるで鑿岩機か廃材用の破砕機だ触れれば最後、人体は愚か装甲車すらも粉々に粉砕するだろう
    「カカッーーー天晴れな術式だ。この嵐の魔力流で工房との繋がりも切断されておる」
    「回りくどい事は趣味じゃない。俺に仕込みの時間を与えたアンタのミスだ」
    恐らく其方も俺を落ち込む為に何かしらの仕込みをしていたんだろうが、此方の術式が勝ったらしいなと勝ち誇ってやる
    流石に多少お喋りの時間があったとはいえ、まさかこれ程の術式をこの短期間に使われるとは思わなかっただろうがな
    「ま、この術を維持できるのも精々が2分半。悪いがこのままケリと行こうか」
    「さてそう上手くいくかの?」
    工房と言う要塞、地の利を失ったモーティマーではあるが、彼は驚きを表したもののそれ以上はない。焦る様子も特には見せてはいない
    「見事な魔術だ。が、見事であるが故に君にも余力はあるまい?決着をつけるにも大掛かりな魔術を使う余裕は無いだろう」
    「……まあな」

  • 32千界樹の記録23/09/30(土) 22:57:59

    しかし、俺とモーティマーではこの状況で分があるのは奴の方だった
    植物の鎧。アレを抜くのは簡単では無い。更にこの空間内に逃げ場はなくお互いの距離もそう離れてはいない白兵戦では向こうにアドバンテージがある事は間違いないがーーー
    「どちらにせよ、アンタの工房内でこれ以上の長期戦は負けしかないからな」
    ここ迄の戦いは予定調和。あわよくば通常の魔術戦で斃せたら御の字だったが、この状況自体はこちらの思惑通りなのだ。問題は奴がこちらの想定を上回る直接戦闘能力を持っていた事だがーーー実戦において想定を超えられる事は当然のことだ
    「それに、一撃で蹴りをつければ何も問題はない」
    「カカッーーーでは勝負は分かり易くなったの?」
    互いに嗤う両者。モーティマーは植物を成長させて鎧の前面を強化。特に両腕は分厚いニードルを擁する装甲の様なアーマーが作り出される
    対する凌我の横を水の塊が槍の様に収束されていく
    その数は6本。そのどれもがモーティマーの纏う深緑の鎧を貫くに十分な威力をしている。これは彼が保有する小魔力ーーーオドの残存量のほぼ全てを使っている。大魔力ーーーマナの使用をお互いに封じられている以上はこれが彼の用意できる最大の攻撃方法である
    モーティマーの方はまだ魔力に余裕はあるが、これ以上の小細工に意味は無かった。何故なら勝負は至極単純。凌我の槍がモーティマーを貫くか、その前に彼の拳が凌我に届くかどうか
    モーティマーは姿勢を低くし、突進の態勢をとる。凌我は水の槍の鋒をモーティマーへ向けて6本の槍を整列させた
    「ーーー」
    「………」
    攻撃の姿勢を整え、互いを睨み合う。そしてその時間はほんの数秒足らず出会ったが、彼らにはかなりの時間が経った様に感じられた。だが、その静寂は破られる
    鎧を構成する植物。その足の部分が柔軟に撓み、伸縮する事で爆発的な初速を生み出し突貫するモーティマー。同時に凌我の槍が発射される。その速度はライフル弾にも迫り、およそこの至近距離で躱す事は魔術師である彼らでも不可能に近い。モーティマーは左腕を前に植物の盾を形成する。その盾は小口径の銃弾ならばあっさりと弾き、たとえ7.62×51mm弾さえも多少は耐えられる強度を誇るが、凌我の水の槍はより強力な8..6×70mm弾をも越える破壊力を有する。凡そライフル弾として最高峰の威力を持つ槍の前に盾は砕かれ、その下の鎧部分へ傷を作る

  • 33千界樹の記録23/09/30(土) 23:17:19

    (重いなーーーしかし!)
    恐らくこの鎧でも直撃を貰えば死は免れまい。幸い左腕に刺さった槍はそこまで深くはないが、次は耐えられないだろうと悟る。
    例え前面の装甲を厚くしたとはいえ2発も喰らえば貫徹してしまうだろう1発でも直撃ならば鎧の下の肉体に到達するやもしれない
    ならばどうする?回避に徹するかーーー?
    ーーー否
    「ここが勝負の際か!」
    ここを越えれば勝利、越えられなければ敗北。実に簡明に、かつ文句のつけようもない決着をつけるに相応しい時。それは戦いに於いて最も昂る瞬間である
    「おおおおおお!!」
    「はああああ!」
    腕をクロスさせ急所を守る様にして突撃を続ける。繰り出された3本目の槍は遂に胴体部分へ届き、鎧へ深々と突き刺さり回転する水の槍が厚く強化した装甲を砕き割る。生身への到達こそなかったものの、この攻撃で鎧の防御力は大きく下がってしまった。最早耐える事はできないだろう
    「それがどうした!」
    そして続いて放たれた4ほ本目の槍は前に突き出した左腕の部分を大きく抉り、生身の部分も小さくない傷を生む。激痛と共に多量の血が噴き出すがそんな痛は脳内から溢れ出るアドレナリンが消滅させてしまった。当然盾にした左腕は使い物にならなくなっただろうがそれすらも無視して突撃を続ける
    5本目の槍は背後から蔓を伸ばして迎撃するものの、蔓など始めから無かった物であるかの様な力で突き破られ鎧の脇腹部分を大きく抉り取る。そのダメージは生身の肉体にも届き、小さくない傷を生むが当然無視
    今の破壊により、身を守る術はもはや無いも同然だ
    次に同じところへ攻撃を受ければそれが自分の最期となるだろう。それだけがモーティマー野良頭の片隅にあった
    互いの距離は最早幾許もなく、後数歩程もない。彼は槍の発射のタイミングを測っている。ギリギリの瀬戸際までこちらを引きつけているのは明白だったが、此方も突撃しか選択肢はない
    後そして最後の槍。それが発射されるか否かの瀬戸際に、鎧の脚を壊す程の勢いでバネ仕掛けの様に植物が唸りをあげる。それはおよそ最後の一歩。その一歩だけの加速
    それは凌我も予想だにしなかった彼の計算の、前提から崩壊させる速さを生んだーーーとうとう己の足が彼の眼前へと到達する
    そしてこの距離、このタイミングはもはや少年にも防ぐ術も交わす術も無ければ余力もない
    「私の勝ちだ少年ーーー!!」

  • 34二次元好きの匿名さん23/09/30(土) 23:53:56

    めっちゃいいところで終わってる〜!!続きが楽しみ

  • 35二次元好きの匿名さん23/10/01(日) 09:40:10

    うおお熱い、熱いよ
    食えないお爺ちゃんが実は戦闘滅茶強とか俺得すぐる

  • 36二次元好きの匿名さん23/10/01(日) 20:19:29

    「ハッ。その様で何を言ってやがる」
    ーーー振り抜いた拳は、届いてはいなかった
    彼の言葉に我に帰ると、口の中に血の味が充満しており、視線を落とせば足元に赤い水跡が落ちている。十中八九、己のら口元から溢れた血が滴ってできたものだろう
    そして、我に帰ると同時に登ってくる身体を貫くような激痛、その正体は見えないがもはや見ずとも理解できる
    「……戦いの最中に、幻を見たか……届いたと、思ったのだがなあ」
    「紙一重だったさ。勝ちを拾えたのは運が良かっただけだ」
    実際、水槍では射角の内側に入られて、射出が間に合わずに致死の一撃を喰らわされただろう
    あの刹那。一瞬の判断で、槍から刃に変化させて横方向へ振り抜いたお陰だろう。咄嗟の反射で変化させた魔術で精度も満足のいくものではなかった。モーティマーの鎧を切り裂けたのは運が良かっただけに他ならないだろう。実際鎧を切り裂けたものの、奴の身体を切り裂くまでには至らず、急所に届いただけら儲け物だった
    「……カカッーーーいやはや、実に良い……」
    勝敗の全てに納得した様子で崩れ落ちるモーティマー。実に満足そうな笑顔を浮かべて天井を仰ぐ
    決着はついた。緊張の糸がブツリと切れて膝が崩れるように座り込んでしまう。全身を切り刻まれ、強烈な一撃をもらい、挙句に毒に侵された身体は闘に限界を迎えていた。更には魔術回路を強引に向上させた反動が返ってくるーーー
    「ゴプッーーーッッハア!!」
    口から込み上げた溜まり血が口から溢れでる。どうやら反動で内臓に相当なダメージが入ったらしい
    「カカーーーお互いボロボロのようだな」
    「アホ抜かせ……俺はまだ……グッ!?」
    「休むが良い……無理に動けば先に死ぬぞ?」
    膝が震えて立ち上がることも出来なかった所へモーティマーから声が届く。魔術刻印が強制的に傷を癒すが、確かに立ち上がる事も儘ならないが、ぶっ倒れてる人間には言われたくはない
    「どっちにしろ、アンタまだ死なないだろうが」
    そう、俺が魔術刻印によって意識を保つ事ができる事ができるようにこの狸ジジイも身体に刻まれた魔術刻印が強制的に生かし続ける
    恐らく大部分は継承されただろうが、まだ一部は残っている筈だ

  • 37二次元好きの匿名さん23/10/01(日) 23:12:43

    最後の蹴りはアッサリと……
    スレ主分かってるじゃないか
    剣主も年齢にしてはかなり強いな
    決着術式が強制サドンデスフィールドっぽいのも実に好みだあ……

  • 38千界樹の記録23/10/02(月) 10:21:06

    つまり、ほとんど相打ちに近い勝利と言える。まあ向こうは完全に戦闘不能だろうし、如何に魔術刻印があろうとも長時間あのまま放置されればいずれ力尽きるだろう。その点こちらは少し休めば動ける様にはなる
    尤も、魔力は底をついてこれっぽっちの魔術も出せないから奴にトドメを刺すことも出来ない
    なんとも締まらない結末である
    「さて、マスター同士の戦いには……ゴフッ、負けたが……」
    そう、重要なのはマスターの戦いよりも、サーヴァントの戦いの行方。マスター同士がお互いにトドメを刺せない以上はこの戦いの行方は互いのサーヴァント、セイバーとランサーの決着に託された
    「サーヴァント同士ならセイバーが勝つさ」
    「いいや、ランサーも負けてはおらん」
    凌我とモーティマーは互いに子供の様に言い合うが、身動きができない身の上では互いに格好はつかない
    「ま、後は向こうに託すのみ……ならば」
    モーティマーはそう呟くと、暫しの間沈黙する。凌我は訝しげにそれを見ていたが、やがて徐々に体力が戻ってきてどうにか立ち上がることは出来た
    「じゃあな一級講師。俺は行く」
    未だ魔力までは戻っておらず、魔術回路も霊薬の反動で未だ暫く動かないが、結界にセイバーとのつながりの一部が遮断されている。ここを動かなければ状況把握もままならない
    「ーーーふむ。であれば……」
    モーティマーの呟きは聞き取れたが、構っている余裕はなかった。老人の戯言に付き合う気は無い
    「ランサー。宝具を開張せよ」
    「ーーーしまっ」
    横たわるモーティマーの右手が真紅に輝く。同時に解き放たれる膨大な魔力は間違いなく、令呪のそれだ
    ーーー油断
    その致命的な失態に気づいた時にはもう遅かった。尤も、油断しておらずとも結果は変わらなかっただろう。どの道、まともに動けず魔術も使えない状態では、彼の令呪使用を妨害する手立てはなかったのだから
    「……っ……野郎!」
    「カカッ。最後の勝ちはいただいてゆくぞ?」
    ランサーのマスターは血が滴る口元に、底意地の悪い笑みを浮かべていた。睨み付けるも、そんな行為は威嚇どころか逆効果でしか無い
    「セイバー……!」
    土壇場の土壇場でしてやられた逆襲に、凌我は手も足も出すことは出来ない。か細い魔力パス以外の繋がり以外を断たれている以上、精々が自身のサーヴァントの力を信じることだけであった

  • 39二次元好きの匿名さん23/10/02(月) 13:27:56

    勝負に勝って試合に負けさせる形に持っていく…油断ならんなこの爺ちゃん

  • 40二次元好きの匿名さん23/10/02(月) 13:44:06

    舐めたらいけないよなぁ、時計塔の1級講師でしかも年齢での引退まで行けるぐらいのお人ぞ?戦闘能力、権謀術数、人生経験。全てにおいて剣マスターを凌駕してると言っても過言じゃねーぞ、ZEROでのケイネス枠(油断なし)ぞ?

  • 41二次元好きの匿名さん23/10/02(月) 22:37:38

    ほしゅ

  • 42千界樹の記録23/10/02(月) 22:38:17

    セイバーの斬撃は高速を超えて神速の領域に達し、令呪の後押しを受けているランサーを以てしても、その軌道を光の線の様にしか捉えることができないでいる
    しかしその攻撃の全てをランサーは、細かい擦り傷や切り傷を作りながらも巧みに捌き続ける
    それは生前に於いて圧倒的な力を誇った大英雄との戦いを経た経験値があればこそ出来ている事だ
    それは嵐の夜に小舟が1隻、己のの握る舵のみを頼りに培った経験と勘を総動員してその嵐を凌ぎ切る様なものだった
    「ーーーッッ!」
    魔剣の斬撃から槍の防御をすり抜ける様に繰り出された短剣の刺突を右手の鉄甲で受け流し、槍で薙ぎ払うがそれは魔剣によって防がれ、そればかりか速攻で短剣で反撃され、それを後ろに跳ぶ事で躱し次の攻撃に備える
    現状、攻めと守りの割合は8:2の割合でセイバーが攻めランサーが守る。この構図は変わらない
    下手に崩せば基本能力で劣るランサーはセイバーの圧倒的な力に圧し潰されるだろう
    それは嘗ての戦争で、最速の大英雄との戦いでも変わらないランサーの戦術であり、彼が培った経験値の積み重ねである
    「ぬぅん!!」
    「ーーーックゥ」
    セイバーの膂力は戦いが加速する程に更に増していき、圧力も増大していく。ランサーも自身の技の全てを利用しセイバーの攻撃を防ぎ、躱し、流していく
    その中で、ランサーは不思議な気分になっていた
    (……まさか、自分の力を気負わずに振るえる事が、これ程楽しいと感じるとはね)
    相手は遥かに格上の、一つの神話における頂点の英雄。荷が勝つ事はあっても相手にとって不足があると言う事は決して無い
    マスターの言った通り、生前とは違いなんの気負いもなく自身の持つ力を思う存分に振るえる事に、確かな歓びを感じている自分に驚いていた
    剣と槍を交える度に傷つく身体。自身とセイバーの受ける傷の割合はセイバーが勝り、やはりその度に根源的な力の差を明確にされていくが、その差を埋めるべく力に技、知識を振るう
    生前の自分ではあり得なかったと断言出来るこの感情は、恐らくは召喚者であるマスターに精神がある程度引っ張られた影響もあるのだろうが……
    (ま、悪くは無いですがね)

  • 43千界樹の記録23/10/03(火) 08:28:51

    これもただの気まぐれかな
    思考の片隅で考えながら視線は意識は目の前の強敵に集中する。一挙手一投足、こっして見逃してはならず一手しくじればそこで終わりという極限の緊張感の中、積み木細工を倒さずにパーツを抜き取っていく様な戦い
    セイバーの攻撃を掻い潜り、暴風雨の様な攻撃の中、ほんの僅かな間隙を縫う反撃。その一撃をセイバーは自身の纏う装甲でしっかりと受ける。あの大英雄の纏う代物だ
    装甲自体の防御力も当然高いのだろうがランサーの槍の前には薄紙も同然、受け切るつもりならば装甲ごと身体を貫くは必定。だが、セイバーは超絶的な技巧で穂先を装甲表面で流す様にして装甲部分に傷を付けるのみに留めている
    (攻撃一辺倒の脳筋じゃ無いって、やっぱキツイねえ)
    負けるつもりは毛頭無いが、だからと言って勝てる気もしないと言うのが今の正直な感想だった
    もしセイバーがその能力にあかせた脳筋ならばどうとでも対応ができるし、そんな単純な考え方をしてるなら付け入る隙もあっただろう。が、このセイバーは驚異的な膂力を持ち得ながら戦士として絶技とも言える技量とルーン魔術を持ち得た戦士の王と来たものだ
    どうやってあの大英雄を崩すべきかーーー
    (ランサー)
    (マスター?どうかしました?)
    セイバーと打ち合っている中、マスターからの念話が届く。剣戟に意識は割いたまま応答する
    (いや何。セイバーのマスターにしてやられたわ)
    (おっと、負けましたかい?)
    (マシター同士の対決、はな)
    どうやらマスターの方は芳しく無い様だ。あのセイバーのマスター。見た風はだいぶ若かったが、うちのマスターを下すとは
    己ののマスターもただではやられなかった様だが、さてどうするべきか
    (そこでだ。マスター戦は譲ったが、聖杯戦争の勝ちまです酢必要もあるまいよ)
    (て事はつまりーーー)
    マスターの考えが読めた。確かにまだ少しだがそれの余裕はある。今後のことを考えると苦しくなる事に変わりはないが、ここを勝ち抜くならば至極当然の手段だろう
    (頼むぞランサー。令呪を持って命ずるーーー)
    マスターからの念話が途切れたと同時、自信を膨大な魔力が満たしていった
    自身とセイバーにあったアドバンテージ差。それはサーヴァントとマスターの連携だ
    これはマスターの工房に張られた結界によって分断された向こう側とその影響を受けないこちら側の明確な優位性と言えるだろう

  • 44二次元好きの匿名さん23/10/03(火) 16:29:26

    ほしゅ

  • 45二次元好きの匿名さん23/10/03(火) 19:49:57

    槍主の狡猾さもさることながら、剣主の手腕と魔術も凄え
    でも家の中だと2番手の才能だったのか……

  • 46二次元好きの匿名さん23/10/03(火) 23:53:11

  • 47千界樹の記録23/10/04(水) 07:37:24

    「ーーーぬう!?」
    令呪の後押しを二重に受け、ランサーはセイバーを瞬間的に押し返す力を発揮した。此方を圧し斬ろうとする魔剣を逆に弾き返し、開いた腹に蹴りを叩き込む。セイバーは開いた腕で防御するが、ダメージは殺せても威力そのものと衝撃は殺せずに大きくランサーから距離を取る形になる。その意味するところを理解していないセイバーでは無い。直前の魔力の氾濫。膨大なそれがランサーへ流入ーーー間違いなく令呪によるものだ
    このタイミングで切られる令呪の命令など決まっている
    宝具の使用
    ランサーの宝具は恐らく手にした金色の槍の投擲ーーー
    あの時、屍神との戦いの最後で奴の頭を吹き飛ばした一撃だろう
    ヘクトールの逸話と言えば特に有名なのが大アイアスとの戦いだろう。ヘクトールはアイアスへ目掛け槍を投擲した。アイアスはその槍を青銅の上に牛革を7枚貼り重ねた盾で受け止め、その槍は7枚の革を貫くものの、盾そのものを貫く事はできなかったと言う逸話からくる宝具のはず
    「ーーーっ」
    ランサーはセイバーと距離を離した直後に、宝具発動の体勢を取る。右手に持つ槍を投擲の姿勢で構え、左手を反動制御と標準の為に前へ突き出す
    「標的確認、包囲角固定ーーー」
    右肘の装甲が展開き、ノズルが顔を出す。放出される豪炎は以前の時の比では無い
    「ふぅーーー」
    莫大な魔力が槍を中心に放たれる。セイバーは決断した。今から宝具の発動は間に合わない。ならば、全身全霊を持って迎撃するまでのことーーー
    魔剣を構え、更に彼の最愛の戦乙女から受け継いだ原初のルーンを総動員し堅固な障壁を展開する。勝利のルーンを起点に作り上げられた防壁は7つ
    丁度アイアスの盾と同じたが、原初のルーンと言えども所詮は魔術。ランサーの宝具の前には大した意味はないだろう
    更に、離されたとは言え距離は近い。セイバーは後手に回ったーーー否回された以上は令呪を使用して発動する宝具の真名解放を妨害しうる手段はない。中途半端な手では、宝具を止める事は決して叶わない夢物語だ
    「それは歪まず、折れず、曲がらず、毀れすず全てを射抜くーーー」
    ランサーの標準はセイバーただ1人。マスターとサーヴァントの、連携が絶たれたセイバーにら此方の先手を奪う手段は残されていない
    「来い……!」
    だが、そんなもの、この槍の前では無意味であると知るがいい
    「ーーー貫け 『不毀の極槍』!!」

  • 48二次元好きの匿名さん23/10/04(水) 16:05:16

    逸話の再現となるかそれとも超えるか…

  • 49二次元好きの匿名さん23/10/04(水) 17:06:15

    凌我君も凄いけどなーんでこうもホイホイ対抗策がポンポン出てくるのかなあこの大英雄?

  • 50千界樹の記録23/10/04(水) 22:40:33

    投げ撃たれた槍は正に閃光。黄金の槍は真っ直ぐにセイバーへ向かって翔ぶ。その槍こそは後に絶世の名剣と云われるデュランダル。それはシャルルマーニュ伝説、ローランの唄なら語られる聖剣。その原型となるものであり、柄に埋められた聖遺物こそ存在しないものの、その特性に翳りはない
    決して壊れず、歪まないその刃の矢ーーー否、砲撃と呼べる一撃を止める事は困難を極めるだろう
    それはセイバーにとっても変わらない現実として重くのしかかる。その圧力は凄まじく、背筋に寒気が走るのを止められない
    対抗する様にセイバーの作り上げた、勝利のルーンを宿した魔力防壁。その防御力は極めて高く、下手な宝具の攻撃では傷一つつける事はできないだろう
    その防壁が7枚。咄嗟に作り上げた数は奇しくも生前ののランサーが大アイアスとの戦いの時と同じ数の盾と同じであった
    しかしーーー
    「そんなもので俺の槍を止められると思うなよ大英雄!!」
    黄金の槍は、ルーンの盾を容易く貫いた
    「ーーー!!」
    セイバーは思わず目を剥いた。相手は彼のヘクトール。その槍の凄まじさは当然把握しているしセイバーの中に油断は無い。故にこの瞬間に用意できた最大の護りを敷いた。完全には防げずとも多少なりとも防御を期待して作り上げたルーンの護り。それがこうも容易く破壊されていくーーー
    一瞬にして破壊される3枚の障壁。その後に構える4枚目5枚目も間も無く貫かれ、6枚目すらも既に亀裂が入る
    ランサーの宣言も納得の破壊力で、想定を大きく超える宝具威力
    「悪いが、俺の槍はアイアスのやつ以外に止められねえ。覚悟しろセイバー」
    「笑止」
    ランサーの宝具は確かに素晴らしい。槍の力もさることながら、驚嘆すべきはランサー技巧。あの右腕の機構により投擲の力を高めているのだろう。その力を使い熟す技量に加えて投擲其の物の技も凄まじい。この投擲の技術は自身の業と通じるものがある
    だが、それに関心してる暇はない。6枚目も突破され、最後の7枚目に到達する。しかし、恐らくその7枚目すらも保たないだろう。セイバーは魔剣を構える。そして、ランサーの槍はついに最後の障壁を破るその時ーーー

    「ーーー魔剣解放!」

    7枚目が硝子の様に砕け散る瞬間、黄金の槍に込められた魔力が爆ぜる
    その魔力の奔流はフロア全域に渡る程の爆風と魔力流を伴いホテルの一角、ワンフロア部分を粉々に吹き飛ばすーーー

  • 51二次元好きの匿名さん23/10/04(水) 22:49:05

    このスレはサーヴァントや宝具の解像度が高くて落ち着くわホント

  • 52千界樹の記録23/10/05(木) 08:39:57

    「ふぅーーー」
    爆炎がフロア内を駆け巡り、その衝撃と爆風を至近距離で浴びるランサー。腕で顔を防御して自身の宝具の着弾地点を見据えている
    ホテル内という閉鎖空間、しかもそれ故の至近距離での宝具発動だ。当然ホテルは無事じゃ済まなく、バクハウの指向性を多少なりとも調整して撃った為、下の階ーーーマスターの所には最小限の被害で留めたが、このフロアと受けの階層は確実に吹き飛んだ
    辛うじて基礎構造そのものを粉砕したわけでは無いので倒壊する事はないだろうが……このホテルのオーナーや従業員の人達には申し訳ないことをしたなと頭の片隅で謝っておく
    兎も角、『不毀の極槍』はAランクの対軍宝具、先んじて発動させた宝具を前にセイバーはあの魔剣を使う時間は無かったはずだ。その為に令呪を使ってまで発動させたのだから
    セイバーの作った防壁は全て破壊され、槍はセイバーへ到達した。その直前、セイバーも魔剣を振るい対抗しようとした様だが、その程度の抵抗でどうにかなる様な宝具では無い
    手応えもしっかりとあった
    至近距離での対軍宝具。防御宝具を持たないセイバーでは躱す術はないだろう。あの嘗てキャスターの宝具を防いだあのルーンの結界もこの宝具の前には意味を持たない
    その前にあの防壁7枚をも越えた槍だ
    如何に怪物じみた大英雄だろうともーーー
    「と、思うんだけどねえ……」
    爆風とそれに飛ばされるホテルの残骸たちから顔を守りながら呟くランサー
    これで勝負アリ。並のサーヴァントなら消滅は必至。Aランク級サーヴァントでも確実に致命傷を負って戦闘続行は不可能。
    それはあのセイバーでも例外になくーーー
    「……は?」
    ーーー故に、この光景はありえない物だった
    燃え盛る着弾点。セイバーのいた場所から燃え上がる炎を切り裂いて現れたのは、セイバーだ
    左手に短剣を握り、これまでと何等変わるない力強さ、速さを以てランサーへと突撃する。それは余りにもありえない事だった
    セイバーは一体どんなカラクリで自身の宝具を防いだのかーーーそんなことを考える暇もなく体は動くが、初めから宝具を越えることを目指した彼方と、この宝具で決め切るつもりだった此方では、初動の動きに多少の差は必然でありーーー
    「……あっちゃあー」
    ーーー致命的な差になる事は、云わなくてもわかるだろう

  • 53二次元好きの匿名さん23/10/05(木) 09:11:46

    うーん、シグルド化け物すぎる…なんで生存してるんですかねぇ

  • 54二次元好きの匿名さん23/10/05(木) 10:05:21

    当方、ガッツが無ければ即死であった

  • 55二次元好きの匿名さん23/10/05(木) 20:01:52

    保守

  • 56二次元好きの匿名さん23/10/05(木) 21:31:11

    セイバーの短剣は確実にランサーの胸を、霊核を貫いた
    「ーーーカハッ」
    引き抜かれる短剣と同時に膝から崩れ落ちるランサー
    そのまま仰向けに倒れ込み、天井を仰ぐ
    ランサーは敗北し、セイバーは勝利する。この戦いの結末として、その事実だけがここに残る。しかしランサーは心臓を貫かれた痛みも忘れて、呆然と思考が回っていた
    一体どうやってーーー自分が敗北したという事実よりも、奴が己の宝具を凌いだ事への疑問が先に来るランサー。そして、その答えはセイバーの身体を見た瞬間に全て解決した
    「……ハッふざけんなよテメー」
    セイバーは何と、右腕が無かったのだ。そればかりではなく、右半身の半ばが砕け散り、辛うじて足だけが原型をを保っている。顔の右側にも大きな傷や火傷を負い、その特徴的な眼鏡も右のツルが無くなり、レンズにもヒビが入っている
    総じて、決して無事とは言えない風体だが、それでもこうして奴は立っているのだ
    「まさか……躊躇無く右腕捨てたっ、……てのかい」
    遠くにセイバーの魔剣が床に突き刺さっているが、恐らくはあの魔剣で正面から迎撃して槍の矛先を僅かに逸らしたのだろう。魔剣の力の反動か、それとも極槍の破壊力から自身を庇ったのか右腕を犠牲にしたのだ
    流石に右腕だけとはいかなかった様で右半身全体に決して小さくないダメージを負っているはずだが、宝具の直撃を受けるよりは遥かに小さいダメージに抑え込んで見せた
    しかし、だからといって正気の沙汰ではない
    魔剣から引き出す力、迎撃するタイミング、魔剣の角度、速さ、炸裂する魔力から威力を流す事も含めて全てが全て完璧なタイミングと加減が必要な絶技の中の絶技
    どれか一つでも僅かにズレれば宝具の直撃を受ける以上のダメージとなって帰ってきていたはずだ
    幾ら何でも無茶苦茶がすぎる芸当である
    同じ条件での迎撃ーーー恐らくはあの韋駄天の小僧ですら可能かどうか怪しいものだろう
    セイバーの圧倒的な膂力と技量、そして何より叡智の結晶による竜の智慧、情報収集力と演算能力があって初めて可能となるモノ
    その許される時間すらもほんの一瞬、1秒にも満たない時間の中で全てを計算し、出力し間に合わせる
    もはや言葉にすら出来はしない。絶技の言葉すらも生温い技に、戦慄どころか尊敬の念さえ覚えてしまう

  • 57二次元好きの匿名さん23/10/06(金) 07:47:50

    保守

  • 58二次元好きの匿名さん23/10/06(金) 08:38:39

    同様に、右腕を捨てる決断も凄まじい。仮初の肉体、エーテルによって構成された身体を持つサーヴァントの身であれば、魔力と時間をかければ多少の傷は勿論、体の欠損すらもいずれは快復するだろう
    しかし、それでも理屈と感情では隔たりが存在する。一部とは言え、身体を失うと言うことは想像を超える恐怖と忌避感を覚えるはずだ。それが技を磨き、武力を誇る英雄ならば尚更にその技や力を失うのは恐怖以外の何者でもない
    理屈では有効だとわかっていても、どうしても感情の面で忌避感が出てしまうのは必然であろう
    それでも英雄たるもの、必要ならばその決断も出来るだろう。しかし、それをこの一瞬で、何の躊躇いもなく出来ると言うのは、元よりしている覚悟の桁が重すぎた
    ーーーこれが、北欧最大最強の大英雄……!
    「貴殿に勝利する為ならば、腕の一本など惜しくはない。快い戦いであった」
    そんな神業と呼ぶことさえも憚れる様な芸当をやってのけたセイバーは、至極当然といった様子でその極まった意思の程を言ってのけた
    ランサーに対して勝利を掴むのならば、この程度の傷を貰うのは当然の事である。そうしなければ勝てない相手だと言う事を
    「そして感謝しよう。貴公との戦い、愉しかったぞ」
    「……ハッ」
    こんな四面四角を地でいくような男が戦いに愉しみを持ち出すと言う事実に何だかおかしくなってしまい、僅かな血と共に笑い声が出てしまう
    「全く……敵わねえな」
    身体の末端から既に崩壊を始めている。間も無くこの身は消滅するだろう……マスターには悪いが、何処か充足したような心持ちになっている
    「じゃあなセイバー。精々頑張れよ」
    「無論。当方は勝利するために此処にいるのだから」
    やり取りはそれだけで良い。長々と話す趣味もない
    後は意識が遠のくまで、目を閉じたーーー

    「まさか……ランサーの宝具を凌ぐとはの」
    「セイバー……」
    そして、階下では見えないながら、魔力の増減により2騎のサーヴァントの最後の攻防、その結果を感じ取るマスター達。このフロアを覆っていた結界は、ランサーの宝具によって消し飛んだ。その結果、凌我とセイバーを隔てていた壁が消え、その決着の瞬間を捉えることが出来たのだ
    「……残念だったな。俺のセイバーは強いんで、な」
    「いやはや、これは一本取られたわい」

  • 59二次元好きの匿名さん23/10/06(金) 13:17:48

    ガッツと叡智の結晶、勝利への貪欲さ…とても良い!

  • 60二次元好きの匿名さん23/10/06(金) 22:42:14

    ほしゅ

  • 61千界樹の記録23/10/07(土) 09:08:12

    モーティマーは今度こそ観念したように乾いた笑い声を漏らす。だが、そんなものにか一瞥もくれずに、凌我は立ち上がる
    魔力も体力も多少は戻った。ならばこの場にとどまる理由は既に彼の中にはない
    「……何だ。トドメは刺さんのか?」
    「ボケた事吐かしてる暇があるならとっとと治療する事だな」
    モーティマーは既に敗北した。この聖杯戦争のルールに於いて、サーヴァントを喪い敗退したマスターに、他のマスターを害する事は禁じられている。例外としてキャスターのマスター、ミレイユ・レオノールがいたが、アレは屍神ゴルゴーンをキャスターの枠に捩じ込んでサーヴァントとしての体裁を取っていた為に「まだ敗退してはいない」と言う状態にしていたのだ
    敗者に情けを掛ける必要はないが、これは情けではない。単に敗北者を甚振る趣味がないだけだ
    「ーーーカカ……まいった……」
    今度こそ、観念したと言うふうな乾いた笑いと共にモーティマーは目を閉じた。凌我は振り向く事なく霧散した結界の外、非常階段の扉を開ける
    最後まで、彼はモーティマーへ視線を向ける事はなかったーーー

    セイバーは、消滅したランサーの残滓を無言のまま見つめていた。既に治癒のルーンを使用し、受けた傷の回復を試みている。爆炎による火傷や爆風、瓦礫の破片による切り傷裂傷はすぐに治せるだろうが、流石にまるまる一本喪失した右腕は早々には治せないだろう。一朝一夕とはいかないのは確実だ
    幸い、残された陣営ーーーアーチャーとライダー達が攻めてくる気配はない
    アーチャー辺りは偵察しているかもしれないが、この様子では茶々を入れる事もないだろう
    「セイバー!」
    聞き慣れた呼び声に振り向く。当然ながら声の主は己の召喚者、マスターの神水流凌我だ
    身に纏う黒革のコートが無残にボロボロにされており、それだけでかなりの激戦があったと予想できる
    「マスター。無事でよかった」
    「セイバーもな」
    凌我はお互いの身体を交互に見渡して、堪え切れない様子で苦笑をこぼした
    「それにしても、お互いボロボロだな」
    凌我の視線は、当然セイバーの右腕に向けられていた。セイバーもまた精悍とした表情を崩して笑みを浮かべる
    「ランサーは強敵だった。アレ程の使い手は生前にも会うことは無かった程の戦士だろう」

  • 62千界樹の記録23/10/07(土) 20:21:22

    彼がこれまでの生涯で縁のあった、槍を武器とする者たちは、やはりかの戦乙女達ーーーセイバーの愛したかの乙女もそうだが、彼女とヘクトールはまるで違うタイプの戦士だった。あれ程までに防戦に長けた技巧は、戦乙女ーーーワルキューレ達には無かった
    伝承にあるトロイア戦争に於いて、ランサー、ヘクトールは属したトロイア側の中では最大の英雄。対するアカイアは最速の英雄と名高いアキレウスに大アイアス、オデュッセウスにディオデメスと名高い英雄が揃う勢力。この戦略差で戦況を保たせていた手腕を鑑みれば、あの凄まじい技量と守りの硬さがなければ到底対応できないのだろう
    「こっちもこっちだ。勝てたのは運が良かった」
    正直な話をすると、あの決戦術式『凶ツ夜』を発動できなければ負けていたし、発動できたあの時点でも敗北は濃厚だった
    『凶ツ夜』は嵐の壁と内部の暴風雨による二重の防壁から構成される大術式だ。魔術刻印に刻まれた術式により構築される嵐の壁は「壁」「嵐」の属性からなる力で外界と内界を完全遮断空間を作る。この壁の前には例え工房と本人を繋ぐラインがあろうとも遮断することができる
    その気になればサーヴァントとの繋がりも遮断することができるが、強力な術式である為、その力は俺自陣にも向けられる。故に今回はサーヴァントとのラインは切れないようにしていた。その防御力はAランク級の魔術を以てしても力技で破ることは難しい筈。攻略には激しく乱れる気流に対して精密に干渉、操作を行う必要がある
    さらに結界内は立つことも難しい暴風雨が吹き荒れ、内部の大魔力ーーーマナを凄まじい速度で消費し続ける。この為にマナをつがって魔力を生成することは困難になり、殆どを小魔力ーーーオドのみを用いなければならなくなる
    暴風雨による体力の消耗と魔力制限状態でのデスマッチ空間。それが『凶ツ夜』の力だ
    しかし、これを使っても、モーティマーの鎧を前にすれば肉弾戦での勝ち目はない
    故に残った魔力で勝負に出たのだ
    結果は、見ての通り
    「兎も角、ランサー陣営に勝ったんだ。とっとと撤収しよう。この状態で奇襲でもされたらそれこそお終いだ」
    「肯定。まだこちらの動きに対してアクションを取る様子はない。速やかな撤退を望む」
    体力も魔力も消耗しきり、セイバーも片腕を損失。この状態ではいくらセイバーでもアーチャー、ライダーからの攻撃を受ければ堪ったものでは無いだろう

  • 63二次元好きの匿名さん23/10/07(土) 23:14:06

    想像の倍エグい決戦術式で震える

  • 64二次元好きの匿名さん23/10/08(日) 09:10:50

  • 65千界樹の記録23/10/08(日) 18:40:40

    俺自身この状態だとルーナは愚かマルグリットにも負ける自信があった。特にルーナが相手では万全の状態でも勝てる気がしない化け物シスターだ。アイツの相手は極力避けなければ勝ち目はないだろう
    「『朝霧、迷いを此処に。惑わしの夢をあれ』」
    懐から霊筒を取り出し術式を起動。セイバーと凌我の周囲を濃霧が覆い尽くしていく。しばらくすると霧が晴れていくが、同時に2人の姿も消えていた
    「成程、光学、魔力を欺瞞する霧ということか」
    セイバーはその叡智の結晶で術を分析したようで、感心したように頷く。その通り、これは肉眼による可視光を散乱させ、同時に魔力による探知を欺瞞する霧の幻覚だ
    とっとと拠点に戻って休息を取らなければならない。このまま一目散に撤退といこう

    ランサー陣営の拠点である高級ホテル。セイバーとランサーの戦いを遠巻きに偵察していたアーチャーは、戦いの一部始終を見ていた
    「……ふむ」
    戦いの結果はセイバー陣営の勝利。ランサー陣営も強敵だったが、セイバーには及ばなかった様だ
    つまり、残されたのは自信を除けばセイバーとライダー。このままではセイバーの勝利がほぼ確定するだろう。私自身やライダーがそれぞれ単騎で挑んだ所で返り討ちに逢うのは必定。ライダーも同様、セイバーに挑むには力不足だろう。あの守護の宝具は強力だがセイバーも相応の対策を講じるだろう。2度も同じように防御できるとは思えない
    『アーチャー、どう?』
    『セイバーの勝ちだ。だがかなり消耗しているが、どうする?』
    アーチャーは狩人。例え相手の探知を掻い潜る為にかなりの距離が開いていても、例え夜間の暗い中でも正確に標的を見分ける眼を持っている。故にセイバーの状態もはっきりと見ていた
    言外に、仕掛けるのは今の内が良いとアーチャーは己のマスターに伝える。マスター、マルグリットは、少し考えるような息遣いを念話越しにし、間も無く返答が返ってきた

  • 66二次元好きの匿名さん23/10/08(日) 23:10:57

    狩るか狩られるか…聖杯戦争ってのはそういうもんだが……情ってやつはこういう時に邪魔をしてきそうかね…心に贅肉あったらだけど

  • 67千界樹の記録23/10/09(月) 10:20:41

    『ーーーダメ。先輩が引く気なら既に仕掛けてないと間に合わない』
    あの人はその手の事に関しては凄いから。と、アーチャーを制止する。アーチャーも何となくマスターはそう判断するだろうと、これまでの付き合いで感じていた
    戦術的にマスターの判断は正しい。今回、自身はセイバーとそのマスターの探知範囲外から偵察に来ていた為、此処から仕掛けるにはあまりにも遠すぎる。そして今から距離を詰めたところで彼らの探知に掛かり、どの道射程に入る前に逃げられる
    ならば令呪を使って一気に飛べば奇襲をかけられるだろうが、初撃でマスターを仕留められなければ幾ら消耗しているとはいえ、セイバーの反撃を受ければひとたまりも無い
    アーチャーも生涯に様々な英雄を見てきたからわかる
    あの手の奴は手傷を負っている時追い込まれた時こそ真価を発揮する
    ておいの獅子に対して闇雲に突っかかるのは危険極まりないと、狩人としての直感が告げてきていた
    そうこうしているうちに、マスターの言った通り、セイバー陣営は撤収の為の術を行使して、こちらの視界から消えてしまった
    セイバーの力も当然脅威だが、セイバーのマスターもまた実に用意周到だ。戦闘力もさることながら此処ぞと言う時に天運を引き寄せる。これらも備えを怠らない実直さが招くのだろう
    マスターが執着するのも理解できる。時代が時代ならば、彼奴もまた英雄たりうる素質があるやもしれん
    『マスターの言う通りのようだ。ああなっては最早追跡もできまい』
    『なら帰ってきてアーチャー。此処まできた以上、後は先輩との決戦になる』
    『了解だ』
    アーチャーも戦場跡となったホテルから踵を返し、夜の街へ消えていく。
    両者にとって、この後の展開は決定路線となるだろう
    最後の夜は近い

    「マスター。セイバーは勝ったようだな」
    住宅街の中、大きめのマンションの一室のベランダから望遠鏡を覗き込むライダーは、後ろを振り返り、リビングで寛ぐマスターに声をかけた。流石にアーチャーのような視力は無い為、詳細は分からないがセイバーの勝利は確かだろう
    ルーナは紅茶を啜り、ライダーの報告に頷く
    「そうでなきゃ困るわ。あのお爺ちゃんに残られてたら面倒だったし」
    逆に、凌我君なら私1人でも対処できるしね?と雑誌を読みながら笑うルーナ

  • 68二次元好きの匿名さん23/10/09(月) 20:11:39

    保守

  • 69千界樹の記録23/10/09(月) 22:25:39

    それにーーーと、ルーナは楽しそうにライダーの報告を聞いている。修道服の身でソファに寛ぐのはどうかとは思うが、其処を咎める程ライダーは堅くはない
    「凌我君なら勝ってくれるって信じてたし」
    ライダーはルーナの言葉を聞きながら室内に入る。現代風の黒いスーツ姿が実に様になっている。ライダーは微笑みを浮かべながらルーナの後ろに立つ
    「彼を信頼しているようだね」
    「魔術師らしからぬ誠実な人なんだもの。誠実な人を嫌う人はいないでしょ?」
    確かにーーーライダーは彼女の言葉に同意する。しかし、知人とはいえ敵対している人物に入れ込むのはどうかと思っだが、その辺りのことを突く程彼は野暮では無かった
    「ではこの後は……」
    「凌我君のことだから緊急用のセーフゾーンは確保してるはず。多分拠点の方に奇襲をかけても意味はないかしら?」
    その辺の抜かりは無いわよ?と彼女は語る。ライダーは何故と問うたがその疑問は当然だろう。ランサーのマスターさえ大掛かりな拠点を一つ持って、そこに籠っていたくらいだ
    地元でも、ないこの地でどうやってそれ程の拠点の確保を?尋ねるライダーに、ルーナは楽しそうに笑顔で告げた
    「彼がこの聖杯戦争を仕組んだのよ?場所も時期も把握していて当然。いくらでも下準備はできるわ」
    成程、道理である。彼女の言葉に頷くライダー。疑問も解消されたところで次の議題に移る
    「ならば、セイバーは万全に整えてて来ると言う認識で間違いないかな?」
    「ええ。間違いないわ」
    ならば、次にセイバーと当たる時は覚悟をしておくべきだろうと、ライダーは心中で決意を新たにする
    先の戦い、ランサー側に介入しても良かったが、ライダーの受けたダメージは大きく、一晩ではとても治療が間に合わなかった。現に今もライダーは表面上は見えずとも内側にかなりのダメージが残っている。この状態でランサーに加勢したとしても、セイバーの勝利は揺るがなかったどころか、下手をすればライダーを失う羽目になっていた。それを避けて敢えてランサーには肩入れをしなかったのだ
    (あと、彼以外の魔術師に協力とか、個人的に嫌だし)
    だからと言って、ライダー単騎ではセイバーを相手に勝ち目は少ない。やはり、アーチャーと共同する他はないだろう。あの子も魔術師だけど、まだ未熟ではあるし、何より同じ想いを持っている女の子だ。魔術師であることを差し引いても応援したい思いがあった

  • 70二次元好きの匿名さん23/10/10(火) 09:04:15

    このレスは削除されています

  • 71千界樹の記録23/10/10(火) 09:22:47

    ライダーも彼女の方針に頷く
    単騎ではセイバーを相手に勝ち目は少ない。やはり、アーチャーと共同する他はないだろう
    「流石に凌我君も、私と真正面から対峙して勝てるなんて思ってはないでしょうし、サーヴァント同士の戦いを主にするべく動くでしょう。でも……」
    「それを踏まえて、勝ちへの算段を立てている、だろう?」
    「正解⭐︎」
    ルーナはソファから立ち上がるとマルグリットに貸した別室の下へ向かう。そろそろ向こうも偵察が終わった頃だ。彼女の得た情報も踏まえてセイバー陣営を打倒する策を講じなければ
    ルーナは鼻歌まじりにドアをノックしたーーー

    凌我とセイバーは万が一の時を想定して用意していたセーフゾーン。もとい緊急避難先に用意していた廃屋へ訪れていた。外観は廃屋だが、緊急避難先としてそれなりの用意はしてある。工房としての機能は皆無だが、予め治療用の薬や保存の効く食料なども用意しておいた
    「マスターも用意が良いな」
    「俺は周りよりもスタートが早かったからな。開催地も時期も把握しているんだ。これくらいは当然だよ」
    そう言いながら手当たり次第に霊薬や薬草などを持ち出してきており、治療の準備を始めている
    今回此方が受けた損害は大きい。このまま追撃を受けたり奇襲でも受けようものならもはや後がない状況だ
    幸いにも、撤退時に使用した霧の魔術で此方の行方は途絶えているはず。キャスター辺りが居れば魔術を見破られていただろうが、そのキャスターはとうに脱落している。遠巻きに見物していたであろう他の連中にはあの欺瞞を破る術ば無いだろう
    此処が直ぐに破られる心配は薄いだろうが、一応探知用の結界は張っておく。何かが侵入してくればそれを知らせる類の物で相手からすれば非常にわかり辛い代物だ
    取り合えじ夜明けまでは此処で治療に専念する
    ともわれ、当面の脅威であったランサー陣営は賭けに勝った事で退けた。残るはアーチャーとライダー。2騎のサーヴァントとそのマスターに絞られた
    「おそらく、次が最後の戦いになる」
    「アーチャーとライダー。最後迄手を組んでくるか」
    「出なきゃ向こうに勝ち目はないからな」
    ライダー陣営に関しては、マスターがマスターだから微妙だが、それでも組んだほうが勝率は高いだろうし、アーチャーのマスターら言わずもがなだ。さらに向こうには令呪の有利もある

  • 72二次元好きの匿名さん23/10/10(火) 17:41:34

    保守

  • 73千界樹の記録23/10/10(火) 20:52:46

    令呪とは言わずもがな。使い方次第でサーヴァントへの強力な援護となる。その数で俺は現状2人に負けている
    「こっちは残り2画。向こうは合計すれば残り7画ときた。ランサー戦以上の強敵になるのは間違いないだろうな」
    「無論、当方に負ける気は一切無いが……」
    そう。サーヴァントとしての力はセイバーは決して負けてはいない。寧ろ悠に勝っているが、戦力としての質の差を気勢や令呪ので後押しがあれば押し返す事もできるかもしれない。その程度の奇跡等、起こしてこその英雄、サーヴァントだろう。油断どころか一瞬の隙が敗北に繋がりがねない
    「あいつらもあの化け物との戦いのダメージが残っていたはずだ。ランサー戦にちょっかいをかけて来なかったのがその証拠」
    「つまり、回復の猶予はまだあると?」
    「時間は少ししか無いがな」
    その少ない時間で可能な限り傷の治癒を含む回復を行うには手段が限られる
    ……使うしか、無いのか
    「……はあ……コイツは使いたくは無かったんだけど、なあ」
    凌我は廃屋の隅に置いてある大きいアタッシュケースを、取り出して鍵を開ける。その手はだいぶ重く、気持ち的にかなり沈んでいるのが見てとれた
    「ふむ。それは霊草の類か」
    セイバーはケースを開けた瞬間に広がった匂いに、ケースの中身を察知した。そう、このアタッシュケースの中には様々な薬草霊草が薬効、種類別に分けて収められている
    その薬草の中から傷の治癒や魔力回復の補助となる薬効に特化した霊薬を作る
    ああ……憂鬱だ
    「フッ。マスターは随分用意が良いな」
    「コイツだけは使いたくは無いんだけどな……。匂いで解るだろ?」
    薬草をすりつぶし、霊水を滴らせ調合していく。この匂いは……青臭いし苦々しいし。これを服用しなければならないというのが本当に辛いんだーーー
    霊薬の調合を終え、完成した薬を飲み干す。クソ不味い事この上ないが、良薬は口に苦し。我慢するべきだ
    セイバーにも渡して飲んでもらう。流石にセイバーも少々顔を顰めているが、効果は高い。魔力の循環効率を向上させ、治癒の効果を高める
    後は一晩寝ておけば大抵の傷やダメージは回復する。流石に生身の人間は欠損した部位を元に戻すほどの力はないが、サーヴァントならば一晩もあればなんとかなるだろう

  • 74千界樹の記録23/10/11(水) 08:43:25

    「取り敢えず、一度休んで起きたら作戦会議と行こうーーーああダメだやっぱ不味すぎる」
    口に苦しにも程がある。効能は高いからまだ良いんだが……しかもこいつには副作用がある
    「ど畜生……」
    そのまま死ぬように壁にもたれ掛かり、意識が沈む。これだからこの手の霊薬は嫌なんだ
    副作用によって、回復の為に暫く意識が落ちる。サーヴァントには効果は薄いだろうが、俺にはバッチリ効いてしまうーーー

    ーーーシグルドは、気がつくと吹雪の中に立っていた。何処かの森の様だが、随分と魔の気配に満ちている
    およそ常人が足を踏み入れて良い場所では無い。しかし、この景色は己の記憶に無い。そもそも、己はマスターの用意したセーフゾーンにいたのだから目の前に広がる景色はあり得ないことだ
    サーヴァントは通常、夢を見ることはない
    となれば選択肢は一つ
    「マスターの夢、か」
    聖杯戦争において、マスターがサーヴァントの生前の出来事を夢に見るという事はままあったという事は聞き及んでいるが……よもやその逆転現象に遭遇するとは。恐らくはマスターが見ている夢の中に、自身の意識だけがなんらかの要因で入り込んどしまっているのだろう
    しかし、一体これは……
    「ーーーっ!?」
    視界の端から迸った閃光、そして続くのは爆音、衝撃、爆風の三拍子。この森そのものを吹き飛ばそうとする勢いのそれに、その方向を振り向くと文字通りバクシンらしき箇所を中心に森の大部分が吹き飛ばされた様相を呈している。その中にいる人物は、ああ……やはりマスターが居た
    マスターの他に、あのライダーのマスターの少女が彼の隣に立っている。そしてーーー
    「ハァッ……ハァッ……凌我ぁ!!」
    「ザマァねえな……これで霊脈と森との繋がりは破壊した。もうこれで貴様の不死性は発揮できないだろ?」
    彼らの前に立つ存在は、人ではない怪物の類だろうかーーー否、間違いなく人間ではあった。その枠を、飛び越えかけてはいるが
    背中から複数のパイプの様な管を伸ばし、体の色もチグハグに変化し、欠損した筈の腕が歪な再生を繰り返した痕跡が残っている
    先程の爆発をモロに浴びたのだろう。背中の管も焼き焦げた跡と、明らかに人為的に破壊されたらしき破壊痕、体の方も火傷や代償様々な傷が刻まれている
    「なぜ……何故お前が俺の邪魔をする!?」
    「そりゃ……こっちのセリフだ……」

  • 75二次元好きの匿名さん23/10/11(水) 12:15:55

    いつもの奴の逆パターンか

  • 76二次元好きの匿名さん23/10/11(水) 21:56:14

    けっこう重い訳アリそうだったけど遂にきたか

  • 77二次元好きの匿名さん23/10/11(水) 23:37:45

    息を切らしながらも叫ぶ男に、静かに応えるマスター
    彼も満身創痍と言った様子。精神的には敵対している何者かよりは幾分有利ではあるが、身体的にはたいして変わらない程に傷を負っていた
    「あいつは死んだんだ。死者が動き回るなんて馬鹿げた事はあっちゃいけないんだよ……」
    「そうね。それが法理、この世の道理というものよ」
    ライダーのマスターは見た目に大きな傷は無いが、それなりに消耗しているのは見て取れた
    2人の見た目から察するに、自身が召喚される少し前、少なくとも何年も経っては居ないだろう
    「もう一度言う。お前の願いは叶わない……!」
    「凌我……っ!!」
    「死者は蘇らないーーーそれは他でもないお前自身が知った筈だ。思い知らされたはずだ。幾数の死体を積み重ね、解体し、何度調べようともその結末は変わらない。その現実だけを積み重ねていったはずだ……!」
    剣の鋒を男へ向け、歯を食いしばる様に言葉を紡ぐ。その2人のやり取りを凌我の隣で悲しそうに見つめるルーナ。彼女はこの場においては部外者。目の前の異端となった死徒の擬きを抹殺するのが任務ではあるが、嘗ては友誼を結んだと言うあの2人の応酬に割って入る事は心情的に出来ないでいた
    「だとしても……お前にとっても、アイツはたった1人の妹なんじゃないのか!?」
    死徒に成り果てても、妹である事実に変わりは無かったんじゃないのか!?
    弾劾する男に、凌我はまっすぐに男を見据えている。決してその眼を逸らさずにーーー
    「だから……俺の手で殺した」
    大切な妹だっから、この手でその無様を終わらせた。凌我の答えは何処までも無常で、だからこそ家族への情が強く込められていた。家族だからこそ、そんな姿を晒させたくは無かったのだと
    「死徒に成り果てるのは蘇生なんかじゃない……。死徒になった時……アイツは、凪では無くなったんだよ……」
    「凌我……」
    「凌我君……」
    その手に剣を握りしめ、柄が砕けん程に力の限りに握り込む右腕。己が愛した家族、幾ら頭で否定してもその姿は間違いなく本人のものだ。それを己の手で壊す
    その苦しみ、悲嘆は彼にしか理解する事はできないものだった。こればかりは、男も言い返す事はしなかった
    その上で、神水流凌我は親友だった男へ殺意を向けた
    「お前も同じだ。ダチだからこそ、俺の手でその無様を終わらせる……!凪にあの世で謝ってこい……顕景!」

  • 78二次元好きの匿名さん23/10/11(水) 23:56:44

    過去回想に登場した妹と凌我の距離感好きだな🎶とか考えてたから想定外のところから刺されてダメージを負った キャスターのマスターにブチ切れてたのも納得だわ…

  • 79千界樹の記録23/10/12(木) 08:39:26

    吹き荒ぶ吹雪の中、剣を構える凌我。黒いコートが風に靡き、その周囲をこの寒さの中でも凍り付くことのない水が螺旋を描いて集う。此処で全て終わらせるその覚悟を纏い、彼は今此処にいるのだがら
    「私も、手伝うわよ?」
    そして、その隣に並び立つルーナ。彼女もまた自身の切り札を此処に開帳した。自身の周りにら縁を描く様に戦鎚を滑らせる。そうして描き上げた円は空間を越える『門』となって向こう側に存在するモノを呼び寄せる
    彼女の足元から順に装着されていくのは白銀の甲冑。狼を模したその鎧は『守護』の概念武装。死徒の属性を色濃く保有するこの森の枝程度は、触れただけで灰となるだろう
    親友と代行者、2人の死神を前にして、男は吼える
    「いいや、俺の望みは終わっていない!」
    凌我とルーナの前に立つ男ーーー御神火顕景であったモノは諦めない。此処で諦める様な男なら、初めからこんな馬鹿げた事はやっていない
    「百度失敗したのなら千度、千度失敗したならば万度と手段を探る!諦めるものか……諦めて、なるものか!」
    顕景の身体に火が灯る。小さな火はやがて男の全身に広がり大きな篝火となる
    男を覆う……いや、この焔は男の体そのものを置き換えて作られた火だ。自己を炎に変性させる魔術。御神火が誇る術式は未だ此処に健在である
    「そうだ!諦めなければ、必ず叶うに能う筈だろう!!」
    全身を炎に変性させた火炎の魔人。炎は生命を象徴し命の熱と、周囲の存在を喰らう本質を体現する
    「いいや、お前の旅路は此処で終わる」
    「残念だけれど、その願いと一緒に灰になりなさい」
    激突する炎と水と狼。神水流凌我は、この過去の果てに何を見たのだろうかーーー彼等の最後の時が訪れる前に、視界は白く反転した

    意識が浮上する。またしても面白くもない過去の出来事を夢に見るとは、1年も経っていないあの時の事など、性質の悪い悪夢よりも酷い
    「ーーー憂鬱になるな、全く」
    だが、そんな目覚めとは違い、身体の方は大分復調した様だ。傷は殆ど癒え、魔術回路も全快とまではいかないものの、霊筒でブーストした反動の直後にしては大分調子も戻っている。この後の相手を考えると不安は多分にあるがこれ以上は望めないだろう
    「起きたか、マスター」
    声のした方へ振り向くとセイバーが立っていた。そっちの方も傷は塞がっている様子で、右腕もまた、見た目の上では元通りに戻っている

  • 80二次元好きの匿名さん23/10/12(木) 20:06:39

    保守

  • 81千界樹の記録23/10/12(木) 21:36:50

    「ああ。セイバーも大方回復できた様だな。腕の方はどうだ?」
    「機能そのものに支障は無い。全快には足りないが……戦闘には何とか耐えうるだろう」
    やはり、流石に一晩で全快とはいかないか。あのゲロマズな霊薬を待ってしても、流石に腕一本や重度の火傷、その他傷の全てを完全に治すのは無理筋だった
    アーチャーとライダーはどうかは知らないが、全快していると思った方がいい。ダメージが残っている分ハンデを負うことになるが、最悪令呪で補強できる
    時刻は……12時を回ったところか。まあ此処まで回復できれば上出来か。さて、後はーーー
    「マスター。一つ謝罪しておきたいことがある」
    「?」
    改まってどうした?尋ねるとセイバーはやけに神妙な表情をして口を開いた
    「昨夜、マスターが見ていた夢を当方も見ていた」
    「……!」
    突然の言葉に、少なからず驚きがあったの間違いない。サーヴァントとマスターの契約を結んでいる最中、マスターがサーヴァントの過去を夢を通して見る事があると言う。しかし、マスターの過去を夢を通してサーヴァントが見ると言う事は前代未聞であった
    理屈の上では、おかしくは無いことではある。サーヴァントとマスターが同じレイラインで結ばれている以上はマスターに起こりうる現象はサーヴァントにも起こり得ても不思議では無い。しかし、これまでにそう言った事例は聞いたことがない。亜種聖杯戦争の多くは粗製の聖杯である為、まともな聖杯戦争が行えない事も多いと聞くが、それでも多少なりともサーヴァントの過去を夢見たと言うか事例は複数に渡って上がっているが、その逆またはそれに近い現象の報告はこれまで上がって来ていない
    一体何故なのか興味は尽きないが、それを解明する時間はない
    それに、まあーーー
    「構わないさ。特別恥じる様な過去手間もない。身内の恥ではあるけどな」
    御神火顕景。神水流と同じ日本有数の魔術大家、御神火の宗家の出身の魔術師。俺と凪とは昔馴染みの間柄だった 
    昔から勝手知ったる仲。俺達の事は誰よりも俺たち自身が理解していた
    その上、あいつと凪は婚約関係にあった。当然魔術師同士の婚約なのだから政略結婚なのは間違いない。世界中で亜種聖杯戦争が行われ、その過程で多くの魔術師同士が争い、その血を絶やしていく中、同じ日本の魔術師としてその繋がりを確かなものとする意味があったのだろう

  • 82千界樹の記録23/10/13(金) 08:54:07

    それに、数少ない時計塔と繋がりを持てた神水流は、逆に繋がり話も立てずにいた御神火にとっても決して捨て置くことのできない家系だったのは言うまでもない
    けれど、昔からの仲だったあいつらはまあ……政略結婚の中、半分は恋愛婚でもあったのは幸福だったたろうが
    その幸福は、無情にも崩れ去ることになった
    俺が時計塔に留学している間に、実力も才も無い癖にプライドだけは一人前の全当主……俺の父親の弟である叔父が何をトチ狂ったか結納の前夜に凶行に走り、凪を……
    叔父は即刻始末されたが、それで終わりになるはずもなく、顕景はそれ以降『死者の蘇生』に没頭しだす。俺は急遽帰国し神水流の魔術刻印全てを継承、神水流家当主となった
    「その結末はセイバーも見た通りだ。俺の妹は顕景が何処から仕入れたのかわからないが『人を死徒に変える魔術』で死徒に成り果て、俺がその様を終わらせた。そして、あいつ自身もな……」
    それが聖杯戦争の直前、9ヶ月前に起きたロンドンでの話だ。あれ以降、俺はあの忌々しい魔術をあいつに授けた何者かを追っている
    ふざけた事をしてくれた落とし前を、必ずつけさせる為に
    「……そうか」
    セイバーは俺の話を聴いて、何を思ったのから分からないが、遠くを見つめる様な表情を浮かべている
    ま、基本的に聖杯そのものにかける願いは俺にはないが……その手掛かりを探す為に使うのも悪くはないか
    「マスター。君も不器用だな」
    「ほっとけ」
    言われなくてもそんな事は分かっている。本来は今すぐにでもアイツらの仇を取ってやりたいし取るために聖杯を求める所だが、その前にやるべき事がある。ユグドミレニアの復権は、俺だけの願いでは無いのだからーーー
    「さて、昔話は此処までだ。一度拠点に戻るぞ」
    「フ……承知した」
    此処にこもってもう1日回復を待っても良いのだが、それを許す様な2人ではない。今夜動かなければ、俺を狩り出すに決まっている。そうなればアーチャーの狙撃が厳しすぎる特にあの機動性と狙撃技能を両立させたアーチャー、アタランテが遠方から通り魔的に狙撃されればこちらはひとたまりもないだろう

  • 83二次元好きの匿名さん23/10/13(金) 19:57:45

    ロンドンでの一件が重すぎる…

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