- 1二次元好きの匿名さん21/12/25(土) 01:41:25
「わあ……。綺麗っスね、クリスマスツリー」
聳え立つ巨大なクリスマスツリーを、アタシはため息を吐きながら見上げた。
ライトアップされたツリーの放つ輝きは幻想的で、この駅前広場は本当に昼間と同じ場所なのか疑いたくなってしまう。
「ああ、そうだな」
隣でトレーナーさん——アタシの想い人——が同じようにツリーを見上げて頷いた。
「本当に、すっごく綺麗っス」
それは多分、飾りや照明だけのせいじゃない。
今日のクリスマスデートでトレーナーさんと沢山の楽しい思い出を作れたから、こんなにキラキラして見えるんだと思う。
「トレーナーさん」
「どうした?」
「あの……トレーナーさんの家、行ってもいいっスか?」
消え入りそうな声で、アタシは恐る恐る聞いてみる。
こういう事は多少強引なくらいがちょうどいいとシチーは言っていたけれど、いざ実行するとなると難しい。
「……ダメっスか?」
トレーナーさんの目を見て、アタシはもう一度聞いた。
彼はアタシより背が高いから、必然的に上目遣いになる。
トレーナーさんは赤くなった顔を逸らそうとするが、アタシが頬を押さえて制止した。
しばらく見つめ合った末、観念したようにトレーナーさんが言う。 - 2121/12/25(土) 01:42:30
「ああ、いいぞ」
「ありがとうございますっス! そうと決まれば急ぐっスよ!」
アタシは喜びと安堵のガッツポーズをすると、トレーナーさんの腕を引いて改札を潜った。
ふと電車の窓を覗くと、黒い夜空から純白の雪が降っているのが見える。
フェードアウトしていく街並みを横目で眺めながら、アタシは隣に座るトレーナーさんに身を預けた。
「お、おい、ちょっと近くないか?」
「気のせいっスよ」
当然わざとだ。他の子の事なんか考えられないくらい、トレーナーさんの頭の中をアタシでいっぱいにする。
風紀委員のくせに風紀を乱すな、と咎める者もいるだろう。
でもそれは違う。
トレーナーさんはちゃんと責任を取ってくれるし、振るにしたってアタシの事を真剣に考えた上での結論だろうから、これは不純異性交友ではない。断じてないのだ。
……言い訳に過ぎないのはわかっている。
でもやっぱり好きなものは好きなのだ。レースも勉強も疎かにしないからこの恋だけは許してくれと、母親におもちゃをねだる子供のように泣き喚きたくなる。
そんな事を考えているうちに、次の停車駅を知らせるアナウンスが鳴り響いた。
- 3121/12/25(土) 01:43:17
「ここで降りるぞ。ちょっと歩けば俺ん家だ」
「はいっス!」
すぐに電車は止まり、アタシたちは他の乗客と一団になって降車する。
混雑の中、トレーナーさんがアタシの腕を掴んだ。
「と、トレーナーさん!?」
「はぐれるなよ」
鈍感で初心なくせに、たまにこういう事をやらかすからトレーナーさんはずるい。
それ、他の子にやったら校則違反っスよ。
でもやるんだろう。だってこれは『バンブーメモリー』じゃなくて、『担当ウマ娘』を守るための行動なのだから。
嬉しさ半分虚しさ半分で駅を出ると、再び寒さがアタシたちを襲った。
雪の勢いはさらに強くなり、おまけに風まで吹いている。
- 4121/12/25(土) 01:43:34
続きは明日書きます
- 5二次元好きの匿名さん21/12/25(土) 01:45:25
保守