【閲覧注意🎲⚓SS】ロー中心ハートの海賊団をホラーな目に遭わせる Part6

[1 ◆Pxx1Kifjy2 23/09/29(金) 21:56:53]

お盆だけどきせいするばしょがないので、ローやハートのひとたちにちょっかいを出そうと思うPart6（9月が終わるとかやめてくれよ～～～ん♡）

※諸注意は前スレを参考にしてくれ
※怪異に遭遇すると正気度ダイス→出目により行動・結果が変化する（1d6で6を引く→混乱　1を引く→冷静に対処　など）
※怪奇現象は1d3前後、大切な人やモノに関わることなら1d6前後


・感想、ツッコミ、考察、関連する雑談も大歓迎だ　いつもありがとな！あんまハートの海賊団語れる場所ないしヒートアップしない程度に好きに使ってくれ
・ただし言葉遣い＆過度な否定になっていないか気を付けてほしい
・意見が違っても「みんな違ってみんないい」精神でいこうぜ



【現状とSAN値メモ】

＝現実世界組＝
シャチ39 （発狂・恐慌まであと14）…鬼哭ゲット／ペンギンを取りにシャワー室へ
ベポ 30（発狂・恐慌まであと20）…食堂であたたかいもの準備中／ロー（パンイチ大判タオル包み）は消えた

＝精神世界組＝
ペンギン 24（発狂・恐慌まであと4）…ローの記憶と比例して透明度が上がる系男子
ロー26（廃人まであと26）…E:鬼哭／苦しんだのちｽﾔｧ中

[2 ◆Pxx1Kifjy2 23/09/29(金) 21:57:20]

【前スレ】

【閲覧注意🎲／参加型の物語】ロー中心にホラーな目に遭わせる｜あにまん掲示板

【閲覧注意🎲⚓SS】ロー中心ハートの海賊団をホラーな目に遭わせる Part2｜あにまん掲示板

【閲覧注意🎲⚓SS】ロー中心ハートの海賊団をホラーな目に遭わせる Part3｜あにまん掲示板

【閲覧注意🎲⚓SS】ロー中心ハートの海賊団をホラーな目に遭わせる Part4｜あにまん掲示板

【閲覧注意🎲⚓SS】ロー中心ハートの海賊団をホラーな目に遭わせる Part5｜あにまん掲示板

【スレ主による箸休め】

ハートの海賊団日常

[3 ◆Pxx1Kifjy2 23/09/29(金) 21:57:50]

【戴いたイラストや小説】

Part4 196（見てくれこの狂気の表情を）

○○する３秒前

Part5 141（ベポSS／兄弟を思うと切なくて胸にクるが旗揚げほんと最高だ）

走る子ども

Part5 169（この絶句してる表情も掴みかかられてるのも良すぎる）

５－１４５のあたり

Part5 196（前パートでスレ主が事故って感想打てなかったすまん）

5－180

幼ローの狂気！！！！！！珀鉛に侵され自暴自棄かつ異質な感じが空恐ろしくてウワーーー！！！！"違い"を許さない笑みｺﾜｽｷﾞｨ！！！ロー視点やべーなそらSAN値削れるわ（他人事）

オマケもマジで気付いてなさそうな顔に吹いた　トリカゴ（偽）破壊したあたりで帽子回収したあとにやってたかもしれん

[4 ◆Pxx1Kifjy2 23/09/29(金) 22:05:32]

狂気が最高なんだが！？！？マジで有難い…拝むわ…神格化できそうだ
ちなみにタイミングは何も悪くないんだすべては親指が悪い　バタバタして悪かった

いやマジで改めて噛み締めてるんだがこの幼ローの表情といい不気味さといい良すぎるな
無事生還したらローにフラッシュバックさせてみたい
いっそ栞にして医学書に挟みたい

[5 二次元好きの匿名さん 23/09/29(金) 22:06:04]

スレ主もスレ民も全員楽しそうだし最高だぜ

[6 二次元好きの匿名さん 23/09/29(金) 22:09:58]

>>4

ごめんドタバタ笑ったわ

栞にして医学書に挟むのはドSですな

経緯を知ってるならペンギンに流れ弾する可能性もある…

[7 ◆Pxx1Kifjy2 23/09/29(金) 22:16:42]

すまんがペットたちの世話に行く！！！

結局深夜規制続いてたし不安だが安価ちょっと遠めにやり直しさせてくれ

>>11　ペンギンはローをどうする？（そのまま連れていくor起こす）

[8 二次元好きの匿名さん 23/09/29(金) 23:26:11]

連れて行く

[9 前スレ196 23/09/30(土) 00:01:20]

本当に本当に本当にすみませんでした…
安価は起こしてみるで

[10 二次元好きの匿名さん 23/09/30(土) 02:00:01]

念のため保守
つれて行く

[11 二次元好きの匿名さん 23/09/30(土) 04:53:13]

このドタバタ感はハート感ある…！

[12 二次元好きの匿名さん 23/09/30(土) 07:51:23]

>>11

すまんです１１です！安価します

起こさないで連れていく

[13 二次元好きの匿名さん 23/09/30(土) 17:41:52]

スレ主狂喜乱舞のドタバタにめっちゃ笑ったわ
いいですなー

[14 ◆Pxx1Kifjy2 23/09/30(土) 18:40:20]

ごべーーーん保守ありがとう！！！！

何を混乱したのか前スレのリンク間違えてるし（ある意味合ってるが）、安価も別に遠くしなくてよかったな…

そしてもうスレ民すらバタバタで笑った　みんなで混乱しようぜ

>>9

と思ったら詫びファルガーまで居るが！！！？？？

やめてくれキャプテンあんなスレ主のためにキャプテンが正座することないって！！！あいつ勝手にヘマしただけなんだぜ！！！それなのにこんな正座もサマになるカッコイイ追いファルガーまでもらっちまって申し訳ねえ！！！

[15 ◆Pxx1Kifjy2 23/09/30(土) 18:41:45]

という訳で各方面に詫びとしてお蔵入りにしようとしてたブツを晒す

気分転換にでもしてくれると嬉しい

ハートの海賊団日常（お月見の話）

[16 二次元好きの匿名さん 23/09/30(土) 21:25:18]

スレ主もスレ民も混乱した結果またSSが読めるならいくらでも混乱するわありがとう

[17 ◆Pxx1Kifjy2 23/09/30(土) 22:19:06]

「（やっぱりこのまま起こさないほうがいい）」

あれほど苦しんでいたのだから、ペンギンが"視た"痛みのほかに不調を抱えていてもおかしくはない。起こして不調を質そうにも、押し問答になれば時間も食ってしまう。それなら自分が抱えて行ったほうが合理的だ。
そう判断したペンギンは、以前ダメ出しを喰らった言葉を思い出し苦笑しながらローを肩の上に担ぎ上げる。すでに手首近くまで消えかかっており手こずるものの、持ち上げてしまえば腕一本でローの身体を固定できるため歩行には問題ない。あとはこれ以上全身が消えないよう、つまりローが"思い出さないよう"にするだけだ。

鬼哭を拾い上げ、ゆるりと歩き出す。本当なら駆け出したいところだが、足が消えバランスが取りづらいうえにいつまた襲われるか分からない。シャチとは違い慎重派なペンギンが気を抜くことはなかった。

「（あいつなら真っ先に走ってそうだな。ベポだったら…いやベポも走ってそうだ）」

幼馴染たちを思い出して喉の奥で笑う。それは余裕ではなく、日常へ意識を向けて心の平静を保つためだった。そうでもしないと、この果てしない暗闇に意識が呑まれそうになる。

―此処は本当に"おれ"の現実か？

―自分は本当に"ペンギン"か？

―全てが夢で、妄想で、やはり自分はあの納屋にいるのではなかろうか。

じわじわと身を侵す疑念を吐き出すように息をつき、きつく唇を噛み締めローの腕をぎゅうと掴む。

「大丈夫……この船長は本物だ、船長を連れて帰れば、おれ達の勝ちなんだ。やっと、やっと見つけたんだ」

一歩、また一歩進むたびに言葉が口から転がり落ちてゆく。

「大丈夫……ベポも、シャチも待ってる。だいじょうぶですからね、船長。……いたくないですか。くるしくないですか。眠っててください、ちゃんとおれがはこびますからね……は、ははっ……おれ、船長より弱くて、頼りにならないかもしれないけど、おれは……ちゃんと、やれるから、」

自分の全てが情けなかった。シャチやベポにもいい顔をして、このザマだ。ペンギンは自嘲を吐き散らす。乾いた半笑いが漏れてゆくのを他人事のように感じながら歩みを進めてゆく。

「（あぁ、でも、本当に要らないって言われたらどうしようかなァ）」

異変に呑まれ、有り得た世界線の惨めな自分を知り、ローの奮闘を知り、打ちひしがれた思考はどんどん落ちていた。

[18 ◆Pxx1Kifjy2 23/09/30(土) 22:20:59]

悪い今日これだけだ　また明日！
何気にローとペンギンがSAN値チキンレースしてるしペンギンはもうすぐ発狂＆恐慌なんだな　楽しみだ

[19 二次元好きの匿名さん 23/10/01(日) 00:57:06]

クラちゃんはベポとパンイチキャプテンのところへ行ったのかな

[20 二次元好きの匿名さん 23/10/01(日) 07:34:43]

ペンギンが不穏だ　心を強くもたんと付け入れられるぞ…おれらに

[21 二次元好きの匿名さん 23/10/01(日) 09:11:17]

おれらには草

Part4の冒頭合流あたり読み返してたんだがローが「連れて帰れなかったらどうするんだ」→ペンギン「考えさせないでください」って言ってローがあっさり引き下がったのは自分も思い出したくない気持ちが分かるからなのかと改めて思った
お互いぎりぎりを渡ってる

[22 ◆Pxx1Kifjy2 23/10/01(日) 18:05:26]

「（いや…船長は冗談でもおれ達のこと要らないなんて言う訳がない…はは……。ゾウの件は、あれは、ローが最初から一人で決めてたことで。それに、おれ達が弱かったから。弱い……よわいから。おれが…だから強い麦わらたちと……）」

常日頃から痛感していたことだったが、ワノ国で人質になるという最悪のかたちで思い知らされたことが脳裏に過ぎる。もしも自分が麦わらや海賊狩りくらいに強かったなら、きっと船長は身を挺して人質交換などしなかっただろう。どんと構えて待っていてくれたかもしれない。これまで厳重に蓋をし、見て見ぬふりをしてきたいた思いが闇に誘われ溢れ出る。

しかし思考の合間にふと顔を上げれば遠くに白い点が見えて、ペンギンは目を見開いた。それが船長室の扉にある丸窓だと気付くまで時間はかからない。

「……！　船長、せんちょう、なァ、ロー！　見えた、あそこだ、灯りがある……！」

これまで心身ともに"自分"の境界を失い、また、目的としていたローの存在すら不明瞭という何もかもが手探りの道程だった。それでも使命感を動力にしてようやく辿り着いた明確な道標に希望の灯がともる。

「ここまで来れば、」

言葉は最後まで出なかった。肩に担ぎ上げたローの身動ぎ、そして息を呑む引き攣った喉の音。間髪入れずにどん、と背中からの衝撃を受けたペンギンは受け身を取ることもできず前のめりになって崩れ落ちる。

「ぐっ……あ、船長？」

なんとか肘を使って体を起こし振り返れば、驚愕の表情で目を見開いたローがこちらを凝視していた。肩から落ちた体勢のまま、確保したらしい鬼哭を握り締めたローの身体は先刻と同じようにがたがたと震えて呼吸が荒い。

「ああ起きたんですね、黙って運んですいません、でも」

「寄るんじゃねェ！！！」

それは明確な拒絶だった。おぞましいものでも見るように、金色の瞳がペンギンを射抜く。倒れたローへ伸ばしていた手が凍ったように固まった。

「おれを、騙してやがったのか。…………消えろ。向かってくるなら、斬る」

ぞっとするほど冷たい、突き放す声だった。存在を否定し抹消を望む言葉が、他でもない"本物の"ロー自身の口から放たれている。その事実に支配されたペンギンはざっと全身の血の気が引くのを感じていた。

ペンギンSAN値チェック

dice1d3=2 (2)

[23 ◆Pxx1Kifjy2 23/10/01(日) 18:11:00]

？？？SAN値チェック

dice1d4=4 (4)

[24 二次元好きの匿名さん 23/10/01(日) 18:32:48]

しっかりSAN値削られてる

[25 二次元好きの匿名さん 23/10/01(日) 18:46:05]

未だ本物確定はしてないってことか…じらされるなぁ
どうなるのかすげぇ気になる

[26 ◆Pxx1Kifjy2 23/10/01(日) 22:11:54]

すまんSAN値チェックは先に数字が欲しかったのとあとで視点変えたかったから「？」にしただけなんだ

[27 ◆Pxx1Kifjy2 23/10/01(日) 22:12:30]

（ペンギン　SAN値24-2=22）（発狂・恐慌まであと2）

「な、なんで…なにを、」

声が震えてまともな言葉にならなかった。息ができなくなってゆく。
救いを欲して喘ぐように手を伸ばせばローの表情は引き攣り、嫌悪に染まっていった。

「だま、だましてなんて、おれは、おれは……助けに……たすけに……？」

本当にそうなのかと心の中の自分が疑問を呈す。
助けに来たと言えるのか。こんなみっともない姿で、船長に迷惑までかけて。きっと"あの悪夢"でみた新聞のように、自分がいなくてもこの人は海を渡って行けるのに。

「おれは……おれは、」

―船長にとって要らない人間なんですか。

そう問おうとした瞬間、思いもよらない言葉が耳に届く。

「もしくは、お前が、……ペンギンを……殺った、てのか…？」

「……え」

それは脈絡のない内容だった。
続けるはずだった言葉を失うペンギンをよそに、荒い息を押し殺しながら要領を得ないローの呟きは続いてゆく。

「だい、大丈夫……父様、こんな化け物、すぐ、…ああ、ラミ、お兄様が守ってやるから、…母様、も、心配しなくて、いいから……」

「せ、せん、…？」

[28 ◆Pxx1Kifjy2 23/10/01(日) 22:13:27]

「ペンギンを、あいつ、あいつをどこにやりやがった……いや、ちがう、化けてたってのか、油断させておいて。最初から。そうか、そうだ、偽物はみんな斬れば、っうぐ…………」

うわ言に似た呟きを零し、身体を抑えながら、ローの唇の端が歪に持ち上がる。焦点の合わない瞳は"ペンギン"を見てはいなかった。

その違和感は電流のようにペンギンの身体を駆け巡る。嚙み合わない会話と視線、様子のおかしい相手。どう考えても正常じゃない。思考が沈む深淵のふちで踏み止まったペンギンは、ゆっくり口を開き改めて問う。

「せ、船長、おれが…おれが、わかりますか」

声が震える。

「（そうだ、いまはおれのことなんてどうでもいい）」

ちらと一筋の光が見える方向へ視線を向ける。

船長室まで、"戻る"まであと少し。

>>30　ペンギンはどうする？

[29 二次元好きの匿名さん 23/10/01(日) 22:33:40]

（力尽くは多分無理よな～）本物のペンギンはあそこで死にかけてる
と光の方へ誘導する

[30 二次元好きの匿名さん 23/10/01(日) 22:35:56]

とりあえず体力回復する

[31 二次元好きの匿名さん 23/10/01(日) 22:40:39]

なにが見えてるのか訊く

[32 二次元好きの匿名さん 23/10/01(日) 22:48:26]

自分を斬ってもいいから光に向かえと言う

[33 二次元好きの匿名さん 23/10/01(日) 23:51:47]

あえて光の方に逃げることで誘導する
とか考えたけど安価過ぎてた

[34 二次元好きの匿名さん 23/10/02(月) 09:08:05]

2人とも耐えてくれ
もう少しなんだ

[35 ◆Pxx1Kifjy2 23/10/02(月) 10:13:40]

近くて遠い船長室にもどかしい思いを抱えながら、ペンギンは口を開く。

「ねえ、せん」

「くそっ……この、音……ッ、」

ローはペンギンへ応えようとしなかった。そればかりかペンギンの声をさも不快そうに、さきほどから何度も耳に手をあてている。言葉すらも通じていないのか、もしくは他に何かが妨げているのかは分からない。
これ以上刺激することも敵対の意志を見せる訳にもいかず、ペンギンは緊張に唾を嚥下する。

力尽くではおそらく無理だろう。
一度は結果オーライとなったが、今回はどういう訳かペンギンそのものを視認していない。手足の透明化、そして力量差を考えれば世界がひっくり返っても強制連行は叶いそうにない。そもそも"強制"を何より嫌がる相手だ。ペンギンは落ち着け、と自身に言い聞かせながら続けて思案する。

船長室へ向かえばついてきてくれるだろうか、それとも背中を見せれば斬り捨てるだろうか。斬り捨ててでも"部屋"に向かってくれればそれでいい。しかし警戒してまた何処かへ行ってしまう可能性のほうが高いだろう。
もしもそうなったら今度こそ二度と会えなくなるのでは。予感に似た不安が胸中を支配する。

慎重にならざるを得なかった。
しかし混乱しきっているようすのローがどういう行動に出るか、さっぱり分からない。

「（……ああ、それなら……！）」

ペンギンは意を決した。いま自分にできることはひとつだけ。そうしてばたん、と勢いよく床へ寝そべり手足を投げ出した。



いわゆる仰向けの"大の字"というものである。

ローの呆気に取られる気配が、ペンギンに伝わった。

[36 二次元好きの匿名さん 23/10/02(月) 10:41:57]

前もそうだがペンギン思い切ったことするなあトドメ差しにきたらどうすんだ
（保守しにきたら更新あってびっくりした）

[37 二次元好きの匿名さん 23/10/02(月) 12:40:14]

ホントだ更新きてる
これはガンギマリゆえか発狂寸前ﾄﾞｳﾆﾃﾞﾓﾅﾚｰなのか　どのみち大の字は草生える

[38 二次元好きの匿名さん 23/10/02(月) 15:58:28]

危害加えない行動強制しない命取るならお好きにどうぞなのかな
ロー視点ペンギンが化物に見えてるなら良い行動かも
それでもおれの行動で事態動かせねえ疲れた寝るするのはクソ度胸

[39 二次元好きの匿名さん 23/10/02(月) 20:22:53]

大の字ってそりゃロー呆気に取られるよ…

[40 二次元好きの匿名さん 23/10/02(月) 21:12:33]

死んだふりか？と鬼哭でつんつんされないといいな！

[41 ◆Pxx1Kifjy2 23/10/02(月) 21:58:07]

ふ、と息を吐く。

今更だが、精神体とはいえ身体の感覚は普段の肉体と変わらない。これまでの精神的な苦痛が疲れとなってどっと押し寄せる。ペンギンはそのまま脱力し、目を閉じた。

「（もしこれでも斬られちまうなら、それはそれでいいけどさ）」

肉体に戻れる保証はないが、最期に何としてでも"船長室"を指し示すことができれば、そしてローの精神を身体に戻すことができれば上々だろう。それくらいの覚悟は持っている。

とはいえ今は、互いに落ち着く時間が必要だった。

そして十数年来の幼馴染であるペンギンは、トラファルガー・ローという幼馴染が性格か職業柄か完璧主義な面があり想定外の出来事に弱いということを知っている。日頃なら聡明な頭脳で"想定外"すら計算の内に入れて対処をするが、今の精神状態ではどうなるか分からない。

しかしいまだに斬られていないことが賭けの結果を物語っている。

「（そうだよな。船長は戦意のない奴に対して刃を振るったことがない）」

それだけでなく、緊急時以外はクルーに対しても"メス"を使うことはない。

以前麦わらの一味との宴の最中、長鼻の狙撃手に「やっぱ悪いことしたら生首にされたりするのか？」と聞かれたことがあるが、物騒なイメージが先行しすぎていると笑い飛ばした記憶がある。生粋の医者である船長がクルーを、しかも鬼哭という仲間に斬らせる訳がない。

つい最近の出来事を懐かしむペンギン。早くローと共に"現実"へ戻りたい、あと少しで帰れるはずだとゴールを再認識し、努めて呼吸を落ち着けた。

ペンギンSAN値チェック（回復）

dice1d2=1 (1)

[42 ◆Pxx1Kifjy2 23/10/02(月) 21:58:36]

どうやらローによる"敵"認定は保留となったらしく、刀を抜く音は一向に聞こえない。

「こいつは……なんだ……？」

そればかりかぽつりと漏らされた困惑しきりの呟きに、思わず吹き出しそうになった。緊張の糸が伸びきったのかもしれない。常では有り得ないシチュエーションに不思議と笑いが込み上げてくる。
　
「死んだ……？　……おい、」

はい、と応えれば息を呑む声で返される。それ以上語り掛けてこないことを考えると、やはり"船長にとって自分が妙なものに見えている"、"声は届いていない"ことは確定かと考える。ローが正常で自分が化け物に成り果てたという可能性も捨てきれないが、置かれている状況に変わりはない。

一旦は窮地を脱したようだが、ここからが正念場だと腹を括る。
"船長室"へ向かうためどうすべきか、果てしなく続く闇色を見上げながら思案するペンギンだった。

[43 ◆Pxx1Kifjy2 23/10/02(月) 21:59:07]

（ペンギン　SAN値22+1=23）（発狂・恐慌まであと3）

今日書けなくなるかもと思って午前に投下したがそんなことはなかった
SAN値が上がったり下がったりして楽しそうだなペンギン


あと今更だがロー＆クルー観はあくまでこのスレ限定であって他の二次創作等を否定する意図は一切ないからよろしく頼む

[44 二次元好きの匿名さん 23/10/02(月) 23:00:21]

余裕無さそうで余裕あるペンギンだな
好き

[45 二次元好きの匿名さん 23/10/02(月) 23:07:39]

根性あるな……

[46 二次元好きの匿名さん 23/10/02(月) 23:23:42]

突然すまん
カッとなって描いたものがあるんだが供養してもいいだろうか

[47 二次元好きの匿名さん 23/10/03(火) 07:54:20]

人間追い込まれたら一周まわって冷静になるということか...

[48 ◆Pxx1Kifjy2 23/10/03(火) 10:34:18]

ド根性ペンギン

初登場ヒューマンショップで仁王立ちしてたのを見てコイツがキラーやゾロの立ち位置かと思ってた時期があったな…

>>46

むしろここで大丈夫か！？供養といわず額縁に入れて飾らせてくれ！！！！！

いやそういう事を言うとハードルが上がるのかもしれんが嘘は吐けない　ぜひ飾らせてほしい

[49 ◆Pxx1Kifjy2 23/10/03(火) 10:39:20]

そういえば前スレに書いたこれ置くの忘れてた↓


※万が一というか億に一、このスレの三次創作（って言っていいのか？）してもらえるなら直接でもテレグラフでも貼り付けてくれると嬉しい！！
※このスレに限らないSSや絵なら専用のスレとか？もっと沢山の人に見てもらえる所に貼ってもらったほうがwin-win-winだと思う　作品が勿体ない！！！そしてこのスレにも「ハートの創作したよ」的な報告もらえると見に行けるからスレ主が喜ぶ

[50 二次元好きの匿名さん 23/10/03(火) 12:27:55]

>>48

ありがとう

吐き出したいからありがたく貼り付ける

ベポの絵+α

[51 ◆Pxx1Kifjy2 23/10/03(火) 20:08:01]

>>50

Part3の141あたりのベポだな！！？？？

感想が長く煩くなっちまったからテレグラフへぶっこませてもらった

有難うしか言えない

ｱｧｰｰｰｰｰｰｯ!!!!!!

[52 ◆Pxx1Kifjy2 23/10/03(火) 20:09:19]

まじで安価の参加や「草」とかの感想一言でもめちゃくそ嬉しいんだ　中身読んでもらってるってことだし
なのにPart1からこんなに沢山のものをもらってしまって僥倖が過ぎる
あにまんってこんな優しくておそろしい場所だったのか…まじでこのスレの住民みんなすげーわいつも構ってくれて有難う

遺言おわり
今日もし書けたら後で投下しに来る　時間できたときにでもまた読んでやってくれ

[53 二次元好きの匿名さん 23/10/03(火) 20:59:22]

スレ主の反応わろた
感想貰えたりすんの嬉しいよな
こちらこそいつも楽しませてもらってるしほんとにありがとう

[55 ◆Pxx1Kifjy2 23/10/03(火) 22:23:16]

（ロー視点）

誰かに呼ばれた気がして、ふと目が覚める。一定のリズムでゆらゆらと全身が揺さぶられる感覚。

"運ばれている"と認識した時にはもう体が動いていた。相手の身体に回されていた肘を引き抜き、思いきり"そいつ"を打ち付ける。重力に任せ落ちてゆく視界の端に鬼哭の鞘を捉え、手を伸ばして引き寄せた。慣性の法則でそのまま数度床を転がり、痛みを重ねる身体に思わず呻く。

意識を失う前後のことはあまり覚えていないが、まるで低体温症に似た筋硬直や痛みに似た寒さに襲われた覚えがある。ただそれも瞬間的で、苦痛が続く間もなく意識が落ちていた。何かの声、あるいは音が耳に届いた気もするがそれより今は目の前のことだ、と体を起こす。

―そして、見てしまった。

『 縺ゅ?∬飴髟ｷ? 』

それは、かろうじて人のかたちに近い"なにか"。

例えるならば、崩れかけの蝋。すべてが病的なほど真白く染まった全身。

人を人と認識するための凹凸はゆがみ、欠け落ち、足と呼ぶべき部位は溶けて固まったようなかたちを成している。

その物体がぎこちなく揺れ動くと同時に、体表面がぼろぼろと剥がれ落ちてゆく。

　人と呼べない、

崩れる、

　　　しろい、もの。

"なにか"が、こちらへてをのばす。

「――――ッ」

ロー　SAN値チェック（レス番号23にて計測済み）

dice1d4=4

[56 ◆Pxx1Kifjy2 23/10/03(火) 22:24:40]

>>54

（文字修正削除）

[57 二次元好きの匿名さん 23/10/04(水) 00:46:55]

>>50

上手すぎ

[58 二次元好きの匿名さん 23/10/04(水) 06:42:04]

ド根性ペンギンもそうだが　この”化け物”においって声掛けてる船長もたいがいだなあ

[59 二次元好きの匿名さん 23/10/04(水) 07:41:12]

こんな怪物がいきなり五体投地するんだからそら困惑するわな

[60 二次元好きの匿名さん 23/10/04(水) 08:12:33]

死んだか確認の声かけたら認識は出来ないものの返事らしきものがこんなバケモノから発せられたら息呑むわ
ド根性ペンギンが笑わなくて良かったよ…これに笑われたら怖すぎる

[61 二次元好きの匿名さん 23/10/04(水) 08:20:54]

脳内BGMが旧支配者のキャロルで再生余裕だわ

[62 二次元好きの匿名さん 23/10/04(水) 12:45:50]

絵師さんも文字書きさんも色々見れて眼福
最近疲れる出来事が多いからこのスレに癒されてるよ有難う
ハートたちにとっては災難だろうけど楽しい

[63 二次元好きの匿名さん 23/10/04(水) 13:21:55]

正直>>30見た時はこれどうなるんだ…！？と思ったんだ

結果的にある意味最善手になってそうなの本当に凄い

[64 二次元好きの匿名さん 23/10/04(水) 18:41:16]

今更ながら

>>1の「透明度が上がる系男子」に気づいて吹きました

主のセンス最高です

そういや明後日がキャプテンの誕生日だ

ハートはにぎやかにお祝いしそうなイメージがある　旗揚げ組は10代前半からの付き合いだし幼少期可愛がられた人が多いしな

自分はホワイトソース系のお料理してお祝いするよ

SS書けたら書きたい！

[65 ◆Pxx1Kifjy2 23/10/04(水) 21:56:07]

悪いが明日来れるかどうか分からないから今日は長めだ

本当は誕生日の小説も書きたかった

でないとこのスレではシャチがペンギン回収できてない＆ベポもキャプテンが見えてない＆ペンギンが寝そべったまま＆それが化け物に見えたままのローという誰も得してない図でロー誕を迎えてしまう

>>64

お祝いいいな！

SSもしどこか別スレにアップしたらスレタイヒントだけでも教えてくれ読みに行きたい

[66 ◆Pxx1Kifjy2 23/10/04(水) 21:57:15]

（ロー　SAN値26-4=22）

『 縺ゅ≠襍ｷ縺阪繧薙〒縺吶?縲 』

「寄るんじゃねェ！！！」

硝子を引っ掻くような、ぐにゃぐにゃと囁くような、形容しがたい"音"を発しながら近寄ってくるそれを牽制すれば、化け物はぴたりと動きを止める。
おぞましいその物体は敵としての強さ弱さをはかる域になく、ただひたすらローの本能的な恐怖を呼び起こす。知らず強く握りしめていた鬼哭で、遠退きそうになる意識を繋ぎとめていた。

「（あいつは、"ペンギン"は……、）」

化け物の"音"に引き摺られるようにして、ひどい耳鳴りが頭の中を駆け巡る。
先程まで隣にいたはずの、あの人好きのする男の姿はどこにもない。脳内で化け物と"ペンギン"の姿が重なり愕然とする。

「おれを、騙してやがったのか」

言葉が通じているのかどうかは分からない。それでもローは警告せずにはいられなかった。

「消えろ。向かってくるなら、斬る」

そう口にしつつも、"なぜ"という気持ちと"やっぱり"という気持ちが錯綜して、鬼哭の柄へ伸ばそうとする手が動かない。
化け物は油が切れた機械じみた身動ぎをして、やはりぼろぼろと表皮らしきものを落としていた。

『 縺ｪ縲√↑繧薙〒窶ｦ縺ｪ縺ｫ繧偵? 』

目前の物体から発せられる"音"へ共鳴するかのように、ローの耳鳴りはひどく、激しくなってゆく。背筋がぞわぞわと寒くなる感覚に思わず身を竦ませると、引き攣れるように体の痛みも主張した。

『縺翫ｌ縺ｯ縲√♀繧後?窶ｦ窶ｦ蜉ｩ縺代 』

「（うる……せぇ……ッ）」

[67 ◆Pxx1Kifjy2 23/10/04(水) 21:58:11]

音も、痛みも、なにもかもが煩わしい。ふと消えかかる意識に唇を噛み締める。
高く、低く、身の内でがなり立てる耳鳴りは段々と人の声に成ってゆく。

『ロー』
　　　『お兄さま』

『そいつは危険だ』

　『ついて行ってはいけないわ』

『危ない』
　　『逃げなさい、ロー』

ぐわんぐわんと揺さぶられる頭のなかで、懐かしい家族の声がする。
ローは気を抜けば落ちそうになる意識のなかで大丈夫だ、と相槌を打ちながらもうひとつの可能性を考える。

「もしくは、お前が、……ペンギンを……殺った、てのか…？」

あの男は、"ペンギン"は確かに「命に代えても」と言っていた。あの瞳は嘘をつく人間のそれではない。そう考えるのは願望だろうか、都合の良い妄想だろうか。しかし気を失っている間にこの化け物が"ペンギン"を殺した可能性はゼロではない。とにかく今はあの男の無事な姿が無性に見たかった。

『危ない』
　　『早く逃げなさい』

意識へ直接吹き込まれる声。
ひたすらこちらを心配する声になんとか応えようと、安心させようと、ゆっくりと呟いた。

「父さま、こんな化け物、すぐ、…ああ、ラミ、お兄さまが守ってやるから、…母さま、も、心配しなくて、いいから……」

しかし家族の声は落ち着かせようとすればするほど激しくなってゆく。化け物に対しても言葉が通じているのかどうか分からず、応えがないことがもどかしい。

[68 ◆Pxx1Kifjy2 23/10/04(水) 21:58:52]

「ペンギンを、あいつ、あいつをどこにやりやがった……いや、ちがう、化けてたってのか、油断させておいて。最初から。そうか、そうだ、偽物はみんな斬れば、」

　　　『ロー！もういい！』
『もういいのよ、早く逃げなさい』
　『お兄さま、そいつから離れて！』

『 縺ｭ縺医?√○繧薙繧?≧ 』

「くそっ……この、音……ッ、」

もう何が耳鳴りで何が誰の声なのか、境界が分からない。悲痛に叫ぶ家族の声は、次第に別の言葉が入り交じる。

『ねえはやく、』
　『そこにいたらダメだ！』

『逃げないの？お兄さま』

　　　『それなら、先に』


　『殺してしまいなさい』


心臓が凍るようだった。

「（ころす……。おれが、"これ"を？）」

白い化け物はこちらへ向かってくることも逃げる事もなく、ただその場で蠢いている。がなり立てるような耳鳴りは、"声"は続いている。

―この声が、"家族"が安心するならそれもいい。

[69 ◆Pxx1Kifjy2 23/10/04(水) 22:00:07]

「（こいつを斬って、"ペンギン"をさがしに、父さまも、母さまも、ラミも。それがいいって、）」

"自分"のなかに意識はあまり残っていなかった。ただ、"家族"のために。
そうしてローが鬼哭へ手をかけようとしたそのときだった。

これまで動きのなかった化け物がゆるりと緩慢に動きだし、そして。



―床に、寝そべった。


「（…………あ？）」

奇行に思わず目を瞬いた。
その拍子に霞んでいた視界が鮮明になってゆく。何度確認しても、白い化け物は四肢らしきものを投げ出し倒れていた。床の黒色とのコントラストが目に痛い。

「（どういう、ことだ）」

もちろんローに抜刀した覚えはなく、他所から攻撃されたようすもない。自滅あるいは自壊のようだが、一瞬だけ鳴り止んでいた"声"が再び脳内で騒ぎ出して観察どころではなくなった。

　　『さあ今の内よ』
『にげなさい』
　　　　『殺しなさい』
　『お兄さま、はやく、はやく』
『殺したほうがいい』
　　　『殺せ！』

荒波のように押し寄せるいくつもの激しい声。命を奪え、殺せと命令されるたびに反比例してローの医者としての矜持が首をもたげてゆく。

[70 ◆Pxx1Kifjy2 23/10/04(水) 22:00:51]

白く崩れゆく皮膚。

顔も体もなく言葉も通じない。

それでも、その"白い化け物"が倒れている姿は、あの日救えなかった患者のようだった。


「（……おれは、医者だ）」

家族の叫びを遮った。

「（襲ってもこねェ。……もし治してほしいって奴なら、治すのが医者だ。そうだろ、父さま？）」

ただし未だ罠の可能性も捨てきれない。近寄って錯乱した患者に攻撃されることもある。警告かのように音量を上げてゆく脳内の声を意識の外へ追い出して、ローは相手を知るために改めて"そいつ"を注視する。

遠目に見て、白い皮膚はやはり蝋や石膏に似ている。が、よくよく見ればぼろりと崩れた皮膚は黒い床へ溶け、すぐ煙のように消えていた。
珀鉛病に似ているが違う。悪魔の実でもなさそうだ。頭のなかに記憶してある図録を引っ張り出して症例等をさらうが、思い当たる節は無い。
しばしの時間が流れ、ローは没頭していた意識をふと持ち上げる。集中していて気付かなかったが、倒れた"そいつ"はいつの間にか音を発することがなくなっていた。意識を乗っ取りそうなほど強く脳を揺さぶっていた家族の声もない。人を殺せなどと命じるあれは、思い返せば家族の声などではなかったように感じる。が、今となっては定かではない。
霧がかかった意識が少しだけ晴れたよう感覚だった。もやもやとした部分は残っているが、耳鳴りが落ち着いているだけマシだ。今のうちに、と落ち着いて相手を検分するが視覚情報以外は何も得られそうにない。

「こいつは……なんだ……？」

襲ってくることはおろか動くこともなく、地面に寝そべる"それ"。人に近いかたちをしておいて肺呼吸をする生物ではないのか、胸や腹のあたりが上下するようすはみられない。

「死んだ……？　……おい、」

『 縺ｯ縺 』

話しかければ即座に返され、その歪な耳障りのする高音へ反射的に身が竦む。
"ペンギン"に化けていたのなら意識あっての行動だろうが、もし別個体であれば"こいつ"に自我があるかどうかは怪しい。単なる声に対する原始反応かもしれない。能力が使えればスキャンをしたのに、とローは歯噛みした。

[71 二次元好きの匿名さん 23/10/05(木) 00:04:50]

ローは根っからの医者だな

[72 二次元好きの匿名さん 23/10/05(木) 07:36:03]

この状況で医者モードになれるのか…

[73 二次元好きの匿名さん 23/10/05(木) 09:40:48]

戦争に乗り込んで「俺は医者だ！」してる奴だ面構えが違う

[74 二次元好きの匿名さん 23/10/05(木) 14:48:18]

船長もペンギンも急にモードが変わるところが良いな

[76 二次元好きの匿名さん 23/10/05(木) 21:22:03]

>>75

>>49にもあるけどこのスレの三次創作（？）でないならSS投下スレに載せてきたら？

三次創作なら水さしてごべーん！！！

[78 ◆Pxx1Kifjy2 23/10/05(木) 22:36:12]

対応してもらってすまん！そしてSSもありがとう！！SSスレって前にあった気がするが落ちたのか…？
マジでこんな辺鄙な怪異愉悦ﾆﾁｬスレよりピクシブとかのほうがいいのではと思うが此処で良ければ乗っけてくれ　もちろん別のところが見つかってればそっちでも大丈夫だ！

折角だしみんなで一緒に楽しくロー誕を祝おうぜ！！

まあ今日は結局こんな内容になったんだが…

[79 ◆Pxx1Kifjy2 23/10/05(木) 22:36:32]

とにかく"患者"との意思疎通を試みるのが先決だ。周囲を見渡しても此処には診察するための器具はおろかカルテを作る紙やペンすらないが、あの日無力だった"子供"ではない。やれる事はある筈だと鬼哭をついて立ち上がる。

「（そういえば、此処はどこだ…おれはなんでこんな場所に、いや、今はそんなことはいい、"患者"がいる）」

ぼんやりと浮いて出た思考と身体中の痛みを無視し、意を決して白いそれへ話しかける。

「おれの言うことが分かるなら、右手…手…？をあげてみせろ」

寝そべったままの"患者"は、すぐにゆったりとした動作で右の手をあげる。偶然や生体反応を疑って数度他の部位で試すが、どれも正しい反応をする。つまり相手にはきちんとした意志があるということだ。

「それならいくつか質問をする。肯定なら右手をあげろ、否定なら左手を振れ。分からないときは両手をあげろ」

控えめに右手があげられた。やはりぼろぼろと表皮が崩れ、床の黒へ溶けるように消えてゆく。

「身体は、痛むか」

ワンテンポ遅れて左手が振られた。
痛覚すらなくなっているのかと眉を顰める。

「五感はあるのか」

肯定の右手があげられる。"五感"という単語も通じるらしい。言語能力に不備は見当たらない。

「……お前はずっと、この場所にいるのか」

否定。言い分を信じるとしたら、ここの住民ではないらしい。連れ出せるかどうかは分からないし治療をどう進めるかも考えものだが、先に状況を整理したほうがいいだろうとローはひとまず気がかりを尋ねることにした。

「おれは気を失う前に、ある男と一緒だった。そいつのことを知っているか」

[80 ◆Pxx1Kifjy2 23/10/05(木) 22:37:33]

肯定の意を示され、ローの言葉に勢いが増す。

「そいつをどうした、いや、今どこにいるか分かるのか！？」

またしてもあげられる右手。そしてそのまま化け物は、手先を自分自身に向けてみせた。
それがどういうことを意味するのか分からないローではない。
が、思わず言葉に詰まる。

可能性は考えていた。それでも人と形容しづらい姿を前にして自然と"別の生体だ"という思考へ導かれていたローは、未だ疑念を拭いきれずにいる。姿かたちが変容したことにして"成り代わっている"ということも考えられる。

「お前が"ペンギン"だという証拠はあるのか」

意地の悪い質問という自覚はあった。それでもどう反応するのかという好奇心も後押しして尋ねれば、その"患者"はゆっくりと上半身を起こしてみせる。座ったままだったローは咄嗟に納刀したままの鬼哭を前に戦闘態勢を取るが、相手はだらりと足を投げ出したまま両手をあげた。
"わからない"の体勢かと訝しんでいると、その両腕はゆっくりと頭上で小さな丸を描くように動いてゆく。人間であれば手指に該当する部分は無く手先は溶けたように丸い。そんな腕で丸を描き、次いで両の耳の傍へ降ろしてゆく。何らかのジェスチャーらしいと気が付くまで時間はかからない。

「……耳…うさぎ…？」

振られる左手。

「頭……、いや、そうだな、あいつは帽子を被ってた」

帽子に書いてある単語からペンギンと名付けたのは紛れもなくロー自身だ。それでもそんなものはあの男の姿を一目でも見ていれば分かることで、"容姿を知っていること"が証拠には成り得ない。

「小さなペンギンのついた帽子……それから白いツナギと、ジョリーロジャーが…ジョリー、ロジャー……」

ペンギンの姿を思い返せば、ふと意識に留まる海賊の印。あのツナギを、ジョリーロジャーを、ローは知っていた。
海賊の象徴。"誰か"が服をつくりたいと言っていた。"誰か"がそれにマークを入れたいと。"誰か"が、嬉しそうにして。
断片的に浮かんでは消える"思い出"にローの頭が割れるように激しく痛み始めた。

「ぐ、ぁっ……、だめだ、ちがう、……考える、な……！」

[81 ◆Pxx1Kifjy2 23/10/05(木) 22:40:11]

すまんがペットらの世話にいくあとよろしく頼む（？）
くそマジで自分もロー誕何かしたかった
とりあえず明日も遅いor来れないかもしれないから先にフライングで言っておこう誕生日おめでとうキャプテン！！！頑張って生きてくれもしくは廃人も期待してるぞ！！！！じゃあの

[82 二次元好きの匿名さん 23/10/05(木) 23:27:03]

ワンピのSS投下スレはここかな

SSのゆりかご9台目｜あにまん掲示板

多分明日はロー誕スレが立つと思うからそっちで祝うのもありだと思うぞ！キャプテンの誕生日盛り上がっていきたいよね

[83 二次元好きの匿名さん 23/10/05(木) 23:27:56]

うおおおお今回も読み応えある！！

ローもペンギンも根性あるし根気強くて脱帽
でも一緒に１０年以上海賊であり友人仲間やってるんだもんな、簡単には折れないわな

[84 二次元好きの匿名さん 23/10/05(木) 23:33:01]

この土壇場での図太さが良い意味でハートらしい
今ロー視点だし本物のペンギンがどれくらい消えちゃってるのか分からんのがジワジワ怖い…

[87 二次元好きの匿名さん 23/10/06(金) 02:26:36]

追いついた最高かよ

[90 二次元好きの匿名さん 23/10/06(金) 12:33:07]

自分もここでお祝いさせてほしい

ローさん誕生日おめでとう！！
本誌でもこのスレでも活躍楽しみにしてるよ
今日のランチはちょっといい店の天むすにするからね
あと服着れるといいね…でもそのまま戻った反応を見たい気持ちもある…

[91 二次元好きの匿名さん 23/10/06(金) 13:35:17]

ロー誕のめでたい雰囲気の中で申し訳ないが
ここはハートファンが多いと思うけどこのスレはハートファンスレではないし、Xやpixivみたいに作品を投稿し合って交流する場でもないのだ
スレ主主導作品投下SSスレで自作SSを載せようとすること、しかもスレの作品内容に関係ないものを投稿しようとするのは非常識だって理解して欲しい
もしこの投稿がスレ主の意に沿わなければ削除してくれ

今夜もペンギンと船長のSUN値チキンレースが続きそうでとても楽しみだ！

[92 二次元好きの匿名さん 23/10/06(金) 13:58:25]

>>85

お絵描きスレはともかくsageスレのそこはオススメはやめた方がいいんじゃないかな

何でもOKというよりどこにも出せない内容の吐き出し場所だし

【化物】の皮膚ボロボロ消えてるところが消失部分だったりしたら結構消えてそうだな

[93 二次元好きの匿名さん 23/10/06(金) 15:13:37]

ローおたおめ！
化け物相手に診察に固執するのは発狂してるように見えて怖い怖い
でもいの一番に体の痛みを聞くのはやっぱり根っからの医者なんだ　ここのペンギン視点も見たくなる

[94 二次元好きの匿名さん 23/10/06(金) 17:24:35]

>>92

指摘有難う！

スレ主へ

>>85 は場違いスレを誘導をしてしまったから消したものなんだ　レス消費してごべーーーん！！！

[95 ◆Pxx1Kifjy2 23/10/06(金) 21:12:40]

ちょっとビビったが荒らしではない？
もしや作品投下してくれてたのか遅れてすまん＆SSスレ誘導ありがとう！
自分が明言をしてなかった（というか中途半端な態度をしていた）から混乱させてしまった…投下してくれたであろう人も注意してくれた人もごめん！　各方面に不安＆不快な思いをさせて申し訳ない！

以後改めて、「スレ主の小説に対する三次創作のみ」という方針にさせてもらうな
こう書くとめちゃくちゃ高慢な感じがしてそれも不安だがまたみんなのイラストとかSSとか感想とか見せてくれると嬉しいんだ　時折ぜんぶ見返してﾆﾔﾆﾔさせてもらってる


そして今回のことについてはレス無しで水に流してもらえると有難い
という訳で続き書いてくる　夕飯は自分もオニギリ買ってきたからおたおめするぞー！　具は梅干しだ

[96 二次元好きの匿名さん 23/10/06(金) 21:31:53]

>具は梅干しだ

最後の最後で船長に謀反起こしてるの草

今日投稿あるのか！続き楽しみだ！！！

[97 ◆Pxx1Kifjy2 23/10/06(金) 21:55:31]

思い出すことへの恐怖。そして思い出したそばから煙のように消えてゆく記憶。

朝起きて覚えていた夢をすぐ失くしてしまう感覚に近いそれは、記憶と共に"ロー自身"をも持ち去ってゆく。後に残るのは臓腑や四肢を抉られる痛みと脳を揺さぶる頭痛のみ。

自分が"自分"でなくなってしまう。そんな予感にローはゾッと身を震わせた。

ローSAN値チェック

dice1d2=1 (1)

『 せん縺ょ繧≧ ！！ 』

そこに加えて甲高い硝子音のような叫びが耳に飛び込み、ローはそのあまりの音量と痛みに咳き込んだ。鼓膜か脳が変になりそうで気持ち悪さすらせり上がる。

が、その叫びのなかには微かに人の声が混じっていた。

幻聴かもしれない。ぐっと顔を持ち上げれば、そこには手足を崩しながらこちらへ這い寄ろうとする"患者"がいた。手足の先端が、腹や頭が、表皮というより肉片のように大きく崩れ落ちてゆく。

その姿を見て心臓が跳ねる。

動くなと押さえつけに行きたくとも身体はいう事をききそうにない。

咄嗟に紡ごうとした制止の声。

―刹那、"患者"の姿が"ペンギン"に重なった。

「……ッ！」

しかしそれは瞬きの間に、すぐ白い姿へと戻ってしまう。

それでもローは迷う事なく男の名を呼んだ。

「"ペンギン"、動くなッ！！」

[98 ◆Pxx1Kifjy2 23/10/06(金) 21:55:56]

透明化進行によりペンギンSAN値チェック（計測用）

dice1d2=2 (2)

[99 ◆Pxx1Kifjy2 23/10/06(金) 22:00:15]

（ロー　SAN値22-1=21）
（ペンギン　SAN値23-2=21）（発狂・恐慌まであと1）

遂に並んだか
ペンギンはｽﾔｧで回復してなかったら発狂してたなこれ
続きは明日！　そろそろベポとシャチにも移るぞ

[100 前スレの158 23/10/06(金) 22:40:51]

連日の更新おつです

前スレで許可いただいてたSSの漫画化が完成したので投稿させてくれーー

【三次創作】ハートの海賊団SSの漫画化

[101 二次元好きの匿名さん 23/10/06(金) 23:57:31]

この状態で発狂は色々不味いことになってたろうから回復してて良かった...

[102 二次元好きの匿名さん 23/10/07(土) 07:08:12]

あと1！あと1かぁ
がんばれ持ちこたえろという気持ちと発狂同士のカオス見てぇ～という気持ちで自分が割れる

[103 二次元好きの匿名さん 23/10/07(土) 08:06:07]

シンプルに面白～て感情と、生き残ってくれ皆～て感情と、オラッ！もっと発狂しろっ！て感情がスクロールする度沸いてくる。ありがとうスレ主

[104 二次元好きの匿名さん 23/10/07(土) 19:15:13]

そういや現実世界の方も大変そうだったな
クラさん飛んでってどうなったんだろ

[105 ◆Pxx1Kifjy2 23/10/07(土) 22:01:49]

>>100

ありがとう　本当に有難う

例によってテレグラフで感想とさせていただく

ただし今回（も）マジでうざくなった　先に謝っておくごめん

URL開いた瞬間崩れ落ちた

[106 ◆Pxx1Kifjy2 23/10/07(土) 22:03:37]

多分これ以降もこういう感想の書き方しかできないと思う　嫌だったらすまん
どのイラストも見るたびに新たな感想が無限湧きしてくる

というかこのスレ始めてから沢山貰いすぎて盆と正月と誕生日と命日がいっぺんにきてるんだが
なんだこれ大丈夫か？？寿命と交換とかになってないか？？？あにまんおそろしい


本当は感想にも全レスしたい勢いなんだ　そのくらい嬉しく思ってるありがとう
という訳で今日の更新だ短くてごめん

[107 ◆Pxx1Kifjy2 23/10/07(土) 22:04:26]

ローの命令に"患者"もとい"ペンギン"はぴたりと動きを止める。忠実ともいえるそれは身に沁みついたコマンドのように迷いのない動きだった。制止に合わせて身体の崩壊も止まる。ばくばくと鳴る心臓を抑えるように胸へ手を置き、ローはほっと息を吐いた。

「わかった……もういい、お前は動くんじゃねェ」

足が崩れて立ち上がることもできないのだろう。四つん這いのまま固まっている"ペンギン"へ躊躇なく歩み寄ったローは片膝をつき、一声かけてから腕らしき部位へ触れる。
質感は、よく分からなかった。暖かさも冷たさもない。煙に触れたように一部を透けるが、その途中で確かに何かを掴んでいる感覚もある。反発する磁石を無理に掴むそれに近い。どういう理屈かは分からないが視覚と触覚が一致しなかった。痛みが無いというのは本当だろうかと訝しむが、今は自己申告しか頼りになりそうにない。
医学的に考えれば有り得ない構造。しかしすでに攻撃的な幻をいくつも体験しているローがその点において心を揺らすことはない。

「……もう一度聞く。お前は本当にあの男…"ペンギン"なんだな？」

言外に信じていいんだなと問いかけると"ペンギン"はゆったりとした動作で短くなった右手をあげた。
首を縦に振るでもなく、こんな状況でも"指示"を守る姿にローは呆れ半分で肩の力を抜けた。

これまで"ペンギン"も、この"白い姿"でも、ローの不利益になることは一切してこなかった。男の姿だったときは何かと喧しかったが不思議と煩わしくはなく、心のどこかで安心を覚えたほどである。
すでにローのなかには今ふたたび一人になるという選択肢はなかった。

「（そうだ、おれは……おれには、何も無い訳じゃねェ）」

なのに、奪われてゆく感覚が止まらない。

痛みや凍るような寒さはじわじわと侵食し、記憶と共に自我を削る。

嫌だやめろとがむしゃらに暴れ拒絶したくなるが、何を相手に戦えばいいのかすら分からず叫び出しそうになる唇をぐっと噛み締めた。



今はただ、この男と行くべきだ。
何も分からなくていい。信じると決めたのだから信じろと己に言い聞かせたローは敢えて思考を遮断し、しゃがんだ体勢のまま"ペンギン"へ背を向ける。

「乗れ、行くぞ」

[108 二次元好きの匿名さん 23/10/07(土) 23:49:12]

キャプテンかっこいい…

[109 二次元好きの匿名さん 23/10/08(日) 09:29:22]

キャプテン…！

[110 二次元好きの匿名さん 23/10/08(日) 16:29:14]

ほんとすごいメンタルだな

[111 ◆Pxx1Kifjy2 23/10/08(日) 21:43:42]

（ペンギン視点／時系列少し戻る）

「お前が"ペンギン"だという証拠はあるのか」

問われ、どうしたものかと眉を寄せた。自分が自分である証明なんてこっちが欲しいくらいだと考えれば、ふと"有り得た世界"で襤褸切れのように生きていた感覚と感情が押し寄せる。あまりに生々しい人生の追体験を思い出し、身が竦んだ。

「（……大丈夫。だい、丈夫、だいじょうぶ、……だいじょうぶ、だ。いい。別にいいんだ。おれは、"おれ"であっても、なくても、問題ない）」

仰向けの体勢のまま意識して力を抜けば、目的だけが鮮明に見えてくる。

―今は、ローを船長室へ導くことだけを考えろ。

ペンギンは襲い来る怖気を奥深くへ押し込めて、まずは信じてもらうためにどうすればと思案する。
おそらくいま、ローには自分が異質でおぞましい姿に見えているはずだ。そしてそれを気にかけている節がある。

「（合流したときも、この消えかかった手足を気にしてたよな…）」

いつの間にか手首の先、そして足首の先まで触覚がない。既に消えているのだろうと他人事のように思うペンギンだったが、ふとこの透明化を利用すればいいと思いつく。
ローは"ペンギン"が徐々に透過していることを知っている。つまり"ペンギン"を思い出してもらえば"透過"が進み、認識してもらえるのではないか。思い至った案にペンギンはゆったりと上半身を起こす。

「（"思い出す"ことを恐れている船長には申し訳ないけど、今はこれくらいしか思いつかない…！）」

ペンギンは出来る限りローの負担にならないように、そして意図が伝わるように祈りながら、棒のようになった腕で己の特徴的な帽子を描いた。

[112 ◆Pxx1Kifjy2 23/10/08(日) 21:43:56]

「ぐ、ぁっ……、だめだ、ちがう、……考える、な……！」

多少の行き違いはあったがローは"ペンギン"を思い描こうとしたらしい。しかしあまりの苦しみように冷や汗が出る。慌てて駆け寄ろうとしたペンギンは勢いのままべしゃりとその場に崩れ落ちた。

「（足が……！）」

自身の脚は膝の関節程度しか残っておらず、腕もまた同じくらいとなっていた。急いで体勢を立て直すべく見下ろした全身でさえ薄っすらと床の黒が透けて見える。

これまでにないスピードで姿を失ってゆく自分。ここで消えてしまえば、ローの信頼を得られない。そればかりか連れ戻すことも叶わないまま現実へ戻される、あるいは消滅してしまう。そうなればきっとローは手遅れになるだろう。最悪の予感がペンギンのなかでひたひたと足音を立てて忍び寄っていた。

ペンギン　SAN値チェック（レス番号98にて計測済み）

dice1d2=2（SAN値23-2=21／発狂・恐慌まであと1）

―このままでは、ダメだ。

「せ、船長！！！」

途端に頭が真っ白になったペンギンはがむしゃらに手足を動かした。

これ以上ローが苦しむ様子を見ていられない。そして消える前に船長室へ入ってほしいということだけでも伝えたい。その思いだけがペンギンを突き動かす。

しかし動けば動くほど、手足は短くなってゆく。伸ばした手はいつだって届かない。

不意にペンギンの脳裏へ、鬼哭を自身の首にあてがうローの姿が蘇る。風呂場で見た血を流しきった亡骸。海に沈む姿。

「（船長が居なくなっちまう、ダメだ、せめて皆のところに帰すんだ……ッ！）」

溺れる心地を初めて知った。とにかく前へと力の籠りきらない手足を動かした、その時だった。

「"ペンギン"、動くなッ！！」

[113 ◆Pxx1Kifjy2 23/10/08(日) 21:44:15]

放たれた命令はペンギンを撃ち抜いた。本能的に動きが止まる。獣に対するコマンドのようなそれは長年にわたる信頼と経験で身体に沁みついており、ペンギンの意志を介さなかった。

思考さえ止まる。

呼吸を忘れるほどの静寂。

ローの口元から、溜息が落とされる。

「わかった……もういい、お前は動くんじゃねェ」

改められた命令にペンギンははっと息を呑んだ。真っ白に飛んでいた頭がようやく自分の状況を思い出してゆく。
怪しまれたかも、狂暴だと思われたかも、と血の気が引いてゆく。
が、そんな様子をよそにローは重い身体を引き摺りながらゆっくりと歩み寄る。「触るぞ」と声を掛けて残っている二の腕へ触れるローは医者の顔で何事かを考えこんでいた。

「……もう一度聞く。お前は本当にあの男…"ペンギン"なんだな？」

かけられた言葉へ縋るように右腕をあげれば、少し呆れた顔を返された。その表情の意味が読めないでいると、ローはおもむろにしゃがんだ体勢のまま"ペンギン"へ背を向ける。

「乗れ、行くぞ」

「……！」

置いて行くべきではと思った。
もし言葉が通じたのなら一刻も早くローだけでもあの光の元へ向かってほしいと口にしていたことだろう。それでも、ローにとっては初対面に等しい人間だというのに当然のように"ペンギン"を連れて行く気らしい。
記憶を削られていても、何をされていようと、どこまでも自分達の船長なのだ。

「（そうだ、だから……だからおれも、この人のクルーの"ペンギン"で居続けるんだ）」

ローさえ現実へ戻せるのなら自分などどうなろうと関係ない、もしも本来の姿が異形でも襤褸切れの肉体でも何でもいい、そう覚悟を決めていた。弱い自分は船長のためになるなら切り捨ててしまっても良いとすら思っていた。しかし自分は思っていたよりも強欲らしい。
込み上げてくる言い知れない感情と涙をこらえつつ、ペンギンはローの背中へ身体を預けるのであった。

[114 ◆Pxx1Kifjy2 23/10/08(日) 21:45:01]

さて精神世界組の最後の安価だ（多分）

このあとは現実組に移るが構成を考えたいから先に決めさせてくれ

２人に対して「船長室へ戻る前」もしくは「船長室へ入ったあと」に何か起こす？

【注意】

※船長室内に"誰かを模した怪異"が入るためには"中の人間"の許可あるいは"扉を開けさせる"必要がある

※怪奇現象レベルはOK

>>119

精神世界ラストシーンだから使わせてもらうのはピンポイントで安価のみになると思う（多分）

おやすみ！

[115 二次元好きの匿名さん 23/10/08(日) 22:22:29]

"誰かを模す"の選択肢はあんまり残ってないよなー
ここに居てもおかしくなくて疑いなく扉を開きそうなのは　クラちゃんくらいか？

[116 二次元好きの匿名さん 23/10/08(日) 22:25:25]

ここまで来ると2人のガンギマリメンタル揺らせる自信が無いな…

安価なら船長室に入ったらペンギンの姿が消える
ロー視点のみかどうかはスレ主に任せる

[117 二次元好きの匿名さん 23/10/08(日) 22:49:04]

白い姿の化物の群れが船長室までの道を物理的に塞いでる

[118 二次元好きの匿名さん 23/10/08(日) 22:53:23]

初心に戻ってコラさんが呼びかける　部屋は外でも中でも
ペンギンも姿を見てるし
ローは記憶ないけど何か引っかからないかな

[119 二次元好きの匿名さん 23/10/08(日) 22:53:32]

ポーラータング轟沈時（Part5-20/21）の音・音声・クルーの断末魔等が伝声管から流れてくる

[120 二次元好きの匿名さん 23/10/08(日) 22:57:39]

怪異側としてももはやペンギンの偽物が本物のおれはこっちですとか言うくらいしか選択肢残ってなさそう
それくらい二人はよく頑張った

[121 二次元好きの匿名さん 23/10/09(月) 06:54:21]

2人とも頑張ったな

[122 二次元好きの匿名さん 23/10/09(月) 12:41:55]

2人とも精神強靭だわ
現実世界が今どうなっているのやら...

[123 ◆Pxx1Kifjy2 23/10/09(月) 16:57:04]

どれも削る気満々で容赦なくて笑った　回復系の安価が一切ない
どの安価も楽しそうで勿体ないがここで轟沈時のアレコレがくるのは非常に美しい流れ　二人の反応もダイスも楽しみだ

[124 ◆Pxx1Kifjy2 23/10/09(月) 16:57:47]

（side シャチ）（SAN値39／発狂・恐慌まであと14）

浴室までの道のりは今までの怪奇現象が嘘のように静かだった。普段通りの場所に繋がる通路、目玉が出てこない壁、船長をこの手で殺すなどという幻覚を見させられることもない。

"当たり前"の有難みを噛み締めつつシャチは足早に進む。

「（倉庫の確認と鬼哭のあれこれで時間食っちまったな…）」

焦る気持ちのまま、辿り着いた洗面室の扉へ手を掛ける。

灯りを付けて確認すれば出たときと同じく中に異変はない。荒らされた形跡も異形もなく、最悪の想像が霧散する。それでもまだ相棒の姿を見ないことには安心できない。数歩の距離をもどかしくお思いながらシャワーブースへ手を掛け勢いよく開く。

暗がりのなか、光源を得て浮かび上がった光景にシャチは絶句した。

壁へ凭れさせていたはずのペンギンが、床へ倒れ伏している。

そしてそのツナギに、周囲に、黒々としたものが血飛沫のようにあちこちへ飛び散っていた。

しかし、血のにおいは一切ない。

すぐに我に返ったシャチは一も二もなく駆け寄りペンギンの身体を抱え起こす。口元に手を当てれば呼気が確認できるもの、の元々意識が無いため詳しい容態は分からない。

黒い汚れを確認しようと視線を落とせば、視界に割れた塩の壺が目に飛び込んだ。破片の合間に見えるはずの白は、黒くべったりとしたコールタールのような汚れとなって床へ張り付いている。ここを出る前に塩や酒を振りかけたことを考えると、おそらくペンギンへ付着している汚れも同じものだろう。

異質な状況と有り得ない塩の変質にシャチは全身に鳥肌が立つ。

シャチ　SAN値チェック

dice1d2=2 (2)

「畜生……ッ！」

自分が遭遇した幻覚を考えると、置いていく事が間違いだったかどうかは分からない。それでも意識のない相棒を危険に晒してしまったと臍を噛む。と同時に、ペンギンの口内へ塩を放り込んだことを思い出したシャチは慌てて顎を掴み無理矢理口を開かせた。変質したモノで窒息するかもしれないと危惧したが、口内に黒い汚れは見当たらない。

[125 ◆Pxx1Kifjy2 23/10/09(月) 17:00:07]

（シャチ　SAN値39-2=37／発狂・恐慌まであと12）

「（どういうことだ？）」

何らかの反応で塩や酒が変質したというのなら、体内は無事ということだろうか。シャチは首を傾げるが、考えはまとまらない。

手短に見分したところ、ペンギンに外傷はなく呼吸にも問題はなさそうだ。それなら今は疑問を捨て置き早急にベポと合流すべきだろう。そう判断し意識のない身体を肩に担ぎ上げ―……ようとしたところで、動きを止める。

「そういやこれ、大丈夫か？」

衣服全体へ墨を飛ばしたように付着する黒い汚れへおそるおそる指を近づける。ちょいちょいと触れても特に刺激はなく、触覚は半渇きの絵具に近かった。運ぶ最中に滴り落ちることはなさそうだ。

「（毒とかでもねェならいいか）」

拭っても取りきれないであろう汚れより、今は移動が最優先だと言わんばかりに乱暴な手つきで改めてペンギンを担ぎ、そのまま横に置いていた鬼哭を掴む。

「（大丈夫とは言ってたけどベポのほうも気がかりだしな）」

艦が破壊されるというおぞましい光景を思い出したシャチは、ベポも同じものをみてなきゃいいけどと胸中で不安を募らせながら浴室を出る。

しかしそこで、ふと手持ちの違和感に気付いて足を止めた。

「そういや酒も塩も持ってねェ……！」

目玉が湧いた酒瓶は割り捨て、塩の壺も粉々になり中身は腐り落ちた。

この状態で再度調達に行くべきか、それとも先刻ローの口にも塩を放り込んだから良しとしてベポと合流しに船長室へ向かうべきか。シャチは二択を迫られる。

>>127 シャチはどうする？（再調達しに行くor船長室に行く）（他にしたいこともあれば一緒に）

[126 二次元好きの匿名さん 23/10/09(月) 17:42:52]

酒はともかく塩瓶は代わりのやつあるのか...？
と思うので船長室へ
酒は途中で調達できそうならしよう

[127 二次元好きの匿名さん 23/10/09(月) 17:44:36]

船長室へ行く
あと発令室のハクガンに連絡して様子をうかがう

[128 ◆Pxx1Kifjy2 23/10/09(月) 21:36:53]

安価サンキュー！
すげーどうでもいいけど操縦桿握ると性格変わるハクガンとかも面白いよなと思ってた
オリジ色強すぎて今回は見送ったけどこち亀の本田みたいな一転して強気になるやつ
面はあれひとつなんだろうか色々気になるキャラだ　ファンブックとかでクルーの詳細をくれ頼む

[129 ◆Pxx1Kifjy2 23/10/09(月) 21:37:12]

塩を食べさせていたおかげかどうかは分からないが、ペンギンは無事だった。となれば今は合流の方が先だろう。それにペンギンが"あちら"に向かってからそこそこ時間も経っている。戻るための身体をふらふら出歩かせても良い事はなさそうだ。
ひとまず船長室で、ベポと合流を。
そう決めてシャチは船長室へと足を向けた。




が、駆け込んだ船長室はもぬけの殻だった。

「なんでだよ！」

急ぎ足の勢いのまま虚空へツッコミ、崩れ落ちそうになる膝を叱咤したシャチはペンギンをベッド脇へ降ろす。
部屋のなかを見渡しても荒らされた形跡はなく、襲撃にあったとは考えづらい。浴室で別れ、ベポは一直線に船長室へ向かったはずだ。部屋におらず、尚且つシャチが来た通路で出会わないというのは有り得ない。

またしても怪奇現象に遭遇したか、トラブルが発生して此処に居られなくなったのか。
思わず部屋の外へ向かいそうになるが、このままペンギンを置き去りにするのもまずいだろう。なにせ前例を目の当たりにしたばかりである。

どうすべきかと悩ませた頭は一人の男のことを思い出す。発令室にいるであろうハクガンだ。
一度目にベポを探しに行くとき伝声管での捜索を依頼していたが、あれから浴室の諸々や悪夢のような幻、そして鬼哭の捜索と慌ただしくしていたため連絡を怠っていた。
一度状況確認も兼ねてと伝声管へ歩み寄れば、ちょうど思い描いた男の声が室内に響く。

『伝令室ハクガンより連絡、誰かそこ居るか？』

「シャチ居るぜ、ちょうどいま戻ってきた」

『本物か？』

「オネショの話した本物だよ！」

訝し気な声を一蹴すれば管の向こうでくくと籠った笑い声がする。

[130 ◆Pxx1Kifjy2 23/10/09(月) 21:37:41]

『海王類の餌にする約束は生きてるってことな。……まァいい、さっきから何回か繋いでたが誰もいなくてよ。心配してたんだ、良かったぜ』

ハクガンの言葉にシャチは内心首を捻る。何回かということは、ベポは一度も戻ってきてないのだろうか。しかしそれを今伝えてもハクガンを混乱させるだけだろう。シャチはあえて「ベポは？」と端的に目的を問う。

『そっちも色々掛けて回ったんだが応答なし、それに動力室以外の奴は起きてるクルーもいなかったぜ』

報告を受け、シャチは迷う。結局見て回った方が早そうだが、そうも言っていられない。行き違いの可能性も考え、一旦再度ハクガンに依頼したほうがいいだろう。

「悪い、時間も経ってるからもう一回各所へ一巡繋いでくれ。ベポはキャプテン持って移動してる。まずは捕まえねぇと。おれのほうはペンギンは確保してっから一旦ここに留まるぜ」

『アイアイ、何が起きてるかあとで全部説明してもらうからな』

状況は不透明。聞きたいことは山ほどあるだろうに、ハクガンはそう言うが否や声を切る。物わかりのいい仲間に有難みを感じながら、シャチは落ち着かない心地で時間を潰すこととなった。




「……あ、そういやベポ戻ってきてねーならキャプテンあのままか？」

何かしら動いていたほうが気が紛れると考えたシャチは、ふとローの状況へ思い至る。もしかしたら一度ここに寄りベポが着替えさせてから部屋を出た可能性もあるが、用意しておいても問題はないだろう。待ち時間を有効活用すべく勝手知ったる洋服棚へと手を掛けた。

[131 二次元好きの匿名さん 23/10/09(月) 23:03:33]

お　脱衣船長脱却の予感？(まだわからんか)

[132 二次元好きの匿名さん 23/10/10(火) 06:40:38]

ここまでパンイチなのおもしろすぎる

[133 二次元好きの匿名さん 23/10/10(火) 13:15:39]

怪異じゃない他船員が久しぶりに出てきてホッとしてる

[134 ◆Pxx1Kifjy2 23/10/10(火) 21:52:28]

（side ベポ）（SAN値30／発狂・恐慌まであと20）

ベポはコンロの前で目前のケトルを睨みつけていた。
並んだ２つのそれは未だ沸騰の音をたてることなく火に炙られている。食堂で確保できた湯たんぽは２つだけだが、無いよりましだろう。本格的な傷病用や冬島用に確保してある保温容器は倉庫まで取りにに行かなければならないが、この場を離れる気持ちにはなれなかった。

「（もし、このままキャプテンが見つからなかったら……ううん、ぜったい俺が見つけるんだ）」

沸騰を待つ間の手持無沙汰な時間がベポの不安を煽る。
ぶんぶんと首を振って物理的に払拭を試みるが、粘着質なそれは離れそうにない。なんとか希望を持つ方向へ思考を捻じ曲げる。

「身体が冷えたときは『三つの首を暖めるといい』ってキャプテン言ってたよな。ええと、手首と…足首と……あとどこだ？　まあいいか、湯たんぽつくって、タオルで巻いて。そうだ飲み物もつくろうな。キャプテン起きたら珈琲飲んでもらおう！　白湯とかミルクのほうがいいかな。ペンギンにも飲ませなきゃ。大きな水筒がいいな……」

あえて声を出し、場を紛らわせながら布巾や水筒などの準備で手持無沙汰を解消してゆく。しかしそれもすぐ終わり、食堂に再び静寂が訪れるまでそう時間はかからなかった。

さきほどまでは"きっとキャプテンはここにいる"と直感めいた希望を抱いたものの、時間が経つにつれて"本当にそうだろうか"という疑念がベポの心を侵してゆく。
湯たんぽを作ったからといってローが戻ってくる確証はない。
それと同時に、この部屋にいるという確証も。

―もしかしたら、既に"あいつら"の手にわたっている可能性もある。

「だ、ダメだそんなの！！」

焦慮に駆られ、ベポはじたばたと足踏みをする。
その時だった。ベポの耳に、ぱたぱたと廊下を駆ける軽い足音が届いた。足音は食堂へ近付いているようで、身構える暇もなく扉が開かれる。
転がるように食堂へ入ってきたのは布を被った格好の幼い"子供"。それはベポがいま一番切望している姿だった。
が、常に弧を描いていた口元の笑みはどこにもない。

無だけがそこにある。

「ろーはどこ」

[135 ◆Pxx1Kifjy2 23/10/10(火) 21:53:13]

柔らかさも温度もない響きの"音"だった。焦りとも怒りとも形容できない異質なようすはうっすらとした恐怖を呼び、ベポはぎくりと身を強張らせる。

「あ、えっと…！」

呼べる名がなく、また、状況を説明しようにも言葉が渋滞を起こして喉に詰まり出てこない。しかしそんなベポをよそに"子供"は辺りを見回し、ある床の一点を見詰めて動きをとめる。
その瞬間、雲が晴れるような、花が咲くような笑顔が広がった。

「いたあ」

そこは扉のすぐ近く、さきほどベポがローを見失った場所である。"子供"は数歩でその場所へ駆け寄り、ベポもまた火元を離れて慌てて"子供"のもとへと駆け寄った。

「キャプテン、そこにいるのか！？」

ひとつの空間の前でしゃがみ込んだ"子供"は、にこにこと上機嫌で頷いた。

「いるよ、よかったね、まにあったねえ」

「あの、あのな、おれ……！」

「だいじょうぶ。わかってる」

"子供"は抑揚に頷きながら、何もない空間へ手を伸ばす。

「もうすぐ、たぶん、ぺんぎんももどってくるよ。ろーをつれて。こえをかけてあげて。きっととどくから」

「あ、」

言うが否や、ベポが言葉を発する前に"子供"の姿がすっと空気へ溶けるように消えてゆく。入れ替わるようにして何もなかった床のうえへローの姿が浮かび上がった。見失ったときと同じく大きなタオルに包まれたままの姿だが、より血色が悪くなっている気がしてベポは慌てて持ち上げる。

「キャプテン！！！」

[136 ◆Pxx1Kifjy2 23/10/10(火) 21:53:46]

身体は冷えきっているうえに乱れた呼吸だが、きちんと心臓は脈打っている。"存在が此処にある"という一見当たり前のことが嬉しくて仕方ない。ぎゅうと抱きしめ、頬擦りをし、ベポはべったりと全身へ張り付いていた不安が溶けだしてゆくのを感じていた。

「よかった、おれずっと不安で……！　なあ、まだ"お前"はそこにいるのか？　ありがとな！！　本当に、本当にありがとな！！」

シャチのようになっているのでは、というのは根拠のない直観でしかなかった。もしも違っていたら。あの"子供"が来てくれなかったら。ひとつボタンを掛け違えていたら、あの"夢"が現実となり"持っていかれて"いたかもしれない。
ローの低体温は一刻を争うのだろう。端的な言葉で用を済ませてさっさと消えてしまった"子供"へ何度も礼を伝え、ベポは急いで立ち上がる。

キッチンの向こうではしゅんしゅんと湯が沸点に近付く音が鳴り始めていた。

[137 二次元好きの匿名さん 23/10/10(火) 22:06:43]

ベポ良かったねぇクラちゃんと視認できる出来ないの性質入れ替えられてたんかな

[138 二次元好きの匿名さん 23/10/11(水) 07:45:36]

不安だったベポかわいいね

[139 二次元好きの匿名さん 23/10/11(水) 07:51:32]

クラさんもちょっと怖いなあ
なんというか善意ばかりでもない何らかの意図がありそうというか…

[140 二次元好きの匿名さん 23/10/11(水) 18:13:22]

無事に戻ってこれるといいねキャプテン

[141 ◆Pxx1Kifjy2 23/10/11(水) 20:44:40]

『こちら伝令室ハクガン、ベポ居るか？』

湯たんぽの口を締めた瞬間、部屋へ響き渡った声にベポは慌てて伝声管へ駆け寄った。もちろんローは片腕で抱えたままである。

「おれ居るよ！　あ、じゃなくてえーと"ヤマ"！」

『ああ、"カワ"だな。お前はどっかのグラサンと違って余計なことは言わない良い奴だよ』

「シャチのこと？　何かあったのか！？」

合言葉で安心したのも束の間、ハクガンの言葉を聞いたベポが話を先走る。が、中身のある話ではないらしく適当に濁された。オネショがどうとかの余談など時間の無駄だと切り捨てられた結果である。

『あいつはまぁ大丈夫だよ。それよかお前がつかまらなくてシャチが困ってたぜ。トラブルか？』

聞かれてベポは自分がシャチと別れてから一度も船長室へ戻っていない事実に気付く。おそらくシャチのほうが先に到着したのだろう、大丈夫と胸を叩いたばかりだというのに心配をかけさせてしまったと内心肩を落とす。

「色々あったけど平気だよ」

『キャプテンは？　シャチの奴は意識のねェペンギンと一緒だとか言ってたが』

「大丈夫、キャプテンも一緒！」

数分前であれば取り乱していたかもしれないが、今時分は問題ない。ローを抱える腕にぎゅっと力を込めて背筋を伸ばす。

「シャチに伝えて。おれ、もうちょっとしたら今度こそキャプテンの部屋に戻るって」

『アイアイ、無理すんなよ！　何かあったらこっち駆け込んでこい』

心配そうな声に礼を返して切り上げる。発令室は船長室と逆方向だが、ハクガンの優しさに自然と笑顔になるベポだった。

[142 ◆Pxx1Kifjy2 23/10/11(水) 20:45:03]

（side　ハクガン）

ベポとの話を終えたハクガンは急ぎシャチへと折り返す。

「発令室ハクガン、シャチいるか？　ベポいたぞ、食堂だ！」

応答を待つまでもなく矢次早に告げれば、管の向こうからばたばたと賑やかな足音と声が寄せられる。

『おうシャチだ！　よかった、無事か？　キャプテンは？』

「色々あったみてーだけど二人とも無事だとよ。もう少ししたら食堂を出るらしい」

ベポの言葉をありのまま伝える。

すると一拍置いたのち、あっと何事か思いついたような感嘆符が返された。

『まだベポいるか！？　酒と塩を持ってきてくれって伝えてほしい、今すぐ！』

慌てた声にハクガンは酒と塩だなと復唱と共に了を返し、おざなりに会話を切った。そのまま食堂へ繋がる管へと顔を寄せる。

「発令室ハクガン、ベポいるか？」

dice1d2=2 (2)

1.まだ食堂にベポが居る

2.すでに食堂を出たあとだろう、ベポは居ない

[143 二次元好きの匿名さん 23/10/11(水) 20:58:06]

あらら、タイミングズレちゃったか

[144 ◆Pxx1Kifjy2 23/10/11(水) 21:17:19]

声をかけたが既に食堂を出てしまったらしく応えはない。ベポに繋がった段階で一度待ってもらえばよかった、あるいは先にシャチへ要るものを聞いておけばよかったとハクガンは仮面の下で眉を寄せる。

しかし後悔していても始まらない。シャチへ折り返し声を飛ばし既に出たあとだったことを伝えれば、同じように後悔の言葉を漏らす。

『あー……おれも先に言っておけば……いや、今言ってても仕方ねえ。多分大丈夫だ、ありがとな！』

「どうする、おれがそっちに持って行ってもいいが」

『いや、お前はそこを離れないほうがいい。多分これから船長室に居るから何かあったらすぐ連絡くれ』

アイアイ、と返事をして会話を終えたハクガンは一息ついて腕を組む。ソナーや計器類に異常はない。船長の命令さえあればすぐ望みの場所へ移動を始めることもできるだろう。

ただ、とハクガンは背後の扉へちらりと意識を向けてみせる。

『蜈･繧後※!!』

　『縺ゅ?菴薙′縺ｻ縺励＞』

『縺｡繧?≧縺?縺!』

　　『縺ゅ￠繧搾ｼ?!!』

通路のほうから重なる金切り声。

明らかに人間のものと思えぬそれは何事かを必死で叫んでいるようだった。

「……ま、海底にゃ怨嗟の声なんぞありきたりだァな」

ベポが発令室を出てから徐々に増えつつある声だが物理的な力はないらしい。扉を破る気配のないそれらにハクガンは知らん顔をする。

意識がないらしいローのことが最優先であり、余力のあるうちはシャチやベポをこちらの面倒事へ巻き込む訳にはいかなかった。もしかしたら狙いは戦力の分散なのかもしれない。

「（それに、これくらいの声なら普段から聞いてるしなァ）」

ハクガンは優雅に伸びをしつつ、再度操縦席へと座り直すのであった。

[145 二次元好きの匿名さん 23/10/11(水) 21:18:39]

まあすぐ戻るって言ってたからなぁ
仕方なし

[146 ◆Pxx1Kifjy2 23/10/11(水) 21:19:14]

一応ハクガンも削っとくか！

dice1d3=1 (1)

そんで現実組の最後の安価だ

・船長室にいるシャチ（withペンギン）

・船長室へ戻ろうと急ぐベポ（withロー）

・もしくは船長室で合流した二人

上記のどれかひとつに対して何か起こせるぞ！

【注意】

※身体の乗っ取りは出来ない

※船長室内に"誰かを模した怪異"が入るためには"中の人間"の許可あるいは"扉を開けさせる"必要がある

※怪奇現象レベルはOK

>>151

[147 二次元好きの匿名さん 23/10/11(水) 21:25:57]

普段から怨嗟の声聞いてるハクガン何者
病院は怪奇現象起きやすいって聞くしポラタンで日常茶飯でもおかしくはないのか

[148 二次元好きの匿名さん 23/10/11(水) 21:37:46]

シャチ
船長室の洋服棚の中が全部トンチキ衣装に変わっている（最後なので笑いに走る）

[149 二次元好きの匿名さん 23/10/11(水) 22:23:10]

ハクガンに云われて塩と酒を持ってきたとイッカクが扉を叩く（真か偽か／味方か敵かはおまかせします）

[150 二次元好きの匿名さん 23/10/11(水) 23:01:04]

怨嗟の声に動じない図太いハクガンいいぞ笑　たしかに海の底を行く潜水艇の操舵手なら何度も声くらいは聞いてそう笑

うーん船長室に合流した二人で、互いの言葉があべこべに聞こえるとか（例えば実際には褒めてるのに罵ってる言葉に聞こえる）

[151 二次元好きの匿名さん 23/10/11(水) 23:02:25]

>>149

[152 二次元好きの匿名さん 23/10/11(水) 23:06:33]

ペンギンのツナギの黒い染みが拡がって光を通さない真っ暗闇になる

[153 二次元好きの匿名さん 23/10/11(水) 23:16:18]

>>146

ダイス的にも削れてないの草

確かに怪談とか強そう

[154 二次元好きの匿名さん 23/10/11(水) 23:19:55]

>>148

それを船長に着せるところを超見たいw　こんなのか

[155 二次元好きの匿名さん 23/10/11(水) 23:29:01]

>>148

くまちゃん服とかオムシャツとかあるはず…！

[156 二次元好きの匿名さん 23/10/11(水) 23:54:24]

意識が戻ったらトンチキ衣装のローは申し訳ないがめっちゃ見たい

[157 二次元好きの匿名さん 23/10/12(木) 07:52:07]

安価めっちゃワクワクするやつで楽しみ

[158 二次元好きの匿名さん 23/10/12(木) 08:04:04]

目が覚めたら若気の至りでうっかりあつらえてしまった黒歴史ウェアを着ていた船長…
意外とSAN値が削れていいかもしれん

[159 ◆Pxx1Kifjy2 23/10/12(木) 18:42:44]

>>149

酒と塩のリカバリ（になるかどうか分からんが）だなサンキュー！

あとトンチキ服っていうのか？　なんだこれ初めて見たが視覚情報が渋滞するな……？

顔と服、両方の主張が激しすぎるし大阪にいそう

大人しくパンクハザードのコート着ておけ

オムシャツも調べたらREDの衣装のことなんだな

じゃあローを刺して赤く染まったらチキンライス扱いができるな！ヨシ！

[160 二次元好きの匿名さん 23/10/12(木) 18:58:57]

ほんにPHの頃はこんなカッコカワイイキャラをワンピで見るなんてと感動したものなのになあ…
船長はオシャレに引き算の概念を入れるべき（刺青の過剰っぷりから期待できないが）

ところであの…刺すご予定でもおありで？

[161 ◆Pxx1Kifjy2 23/10/12(木) 21:50:29]

（sideシャチ）（SAN値37／発狂・恐慌まであと12）

ハクガンとの話を終えたシャチは酒と塩の調達をどうしようかと考えながら洋服棚へ向き直る。
本人のキャラクター的にモノトーンの服が多いが、柄物や色モノもある。夏島の町へ溶け込むため鮮やかなものもあるが、これは似合ってなかったなと手に取り苦笑した。服のひとつひとつにこれまでの航海で得たさまざまな思い出が湧いてくるが、今は油を売っている暇はないと慌てて我に返る。

「（えーと体温が下がってるってことは厚手のコート…？　いや身体そのものが冷えてんだから上着は意味ねェか。締め付けるのも苦しいだろうから普通にシャツとカーゴパンツくらいで、）」

吊り下げられているコート類はそのままに下段の棚を漁っていると、通路のほうからどたどたと重い足音が近付いてくる。おそらくベポだろうとあたりをつけるが、念のためシャチは手を止めてペンギンの前に立つ。
ほどなくノックもなしに勢いよく扉が開かれ、必死の形相をしたベポが駆け込んできた。

「シャチ、会いたかったーー！！」

「そりゃこっちの台詞だ！」

感動の再会に突進のようなガルチューを受けたシャチは頬が緩む。しかし間に挟まったベポの腕の中、ローの容態に気付き慌ててベッドのほうへ引っ張った。

「色々聞きてェが先にキャプテンだな！　問題はないのか？」

「うん、色々あったけど……それで湯たんぽ作ってきたんだ」

「おし、じゃあお前と湯たんぽでサンドだ」

ベッドのうえ、壁を背に凭れたベポが改めてローを抱え直す。作ってきたという湯たんぽの包みを腹や足に設置し羽毛布団を被せれば完全防備が出来上がった。あとは、とシャチは扉近くに立てかけていた鬼哭を手に取った。「戻ってこれてよかったな」と声を掛ければベポが不思議そうに首を傾げたため端的に経緯を話してみせる。

「なんだそれ、なんで鬼哭が倉庫に？」

「おれも知らねェよ。偽物かとも思ったけど、やっぱここに鬼哭はこいつだけだし……」

散開前、部屋に鬼哭があったかどうか思い出せない二人は首を捻るが真実は見えてこなかった。ひとまず手元の鬼哭は本物だろうとローの隣に寄り添わせる。当然ながら鬼哭からの言葉はないが、あるべき物があるべき場所に収まったような安心感を得てシャチもベポも満足気に微笑んだ。

[162 ◆Pxx1Kifjy2 23/10/12(木) 21:51:00]

「うぅ、キャプテン冷たいな～……はやく温まってくれ～……」

ベポのぼやきとローの体調に関する焦りはあるが、誰一人欠けることなく再集合できたことにシャチは安堵の息を吐く。そうして念のためペンギンにも毛布を被せながら、つい先ほどまで衣類を引っ張り出していたことを思い出す。

「そうだベポ、キャプテンに服着せなきゃいけねェんだ。あと悪いけど酒と塩がダメになっちまって、」

取りに行くかどうかの相談をしようとした、その時。

ごんごんごん、

突如、重いノックの音がシャチの台詞に割り入った。
咄嗟にベポとシャチが顔を見合わせ口を噤む。
二人の間に緊張した空気が走る。

しかし、直後に聞こえてきたのは場にそぐわないほどのんびりとした声だった。

『おーいシャチ、いるんでしょ？』

ハートの海賊団の紅一点、イッカクそのものの強気で柔らかな高い声。普段であれば何の警戒もなく開けていただろう。しかしシャチはキッチンで偽物と邂逅した出来事を、ベポは食堂で見たおぞましい食事会をそれぞれ思い出して身を固くする。

二人の視線は交差したままだった。
が、いつまでもそうしてはいられない。もし相手が"あいつら"の仲間であれば返事をすること自体、危険な行為かもしれない。とはいえ本物という可能性もあるうちはきちんと話をするべきだろう。シャチは意を決して口を開く。

「おう、いるぜ」

『良かった、ハクガンに言われてさ。酒と塩持ってきたんだよ。手ェ塞がってるから開けてくんない？』

掛けられた言葉に、シャチはすぐに動くことができなかった。
今下手に動けば、ローもペンギンも危険に晒す。とはいえ、酒も塩も自分の過失なのだから本当に持ってきてくれたのであれば有難い。

[163 ◆Pxx1Kifjy2 23/10/12(木) 21:52:52]

―ただし、ハクガンは先ほどの通話で"誰も起きていなかった"と言ってなかったか。

もしかしたらその直後にイッカクと顔を合わせた、あるいは伝声管でやりとりをしていた可能性はある。そして気のきくハクガンのことだから酒や塩を依頼したというのもあり得る話だろう。

―本当に？

シャチのなかで納得と疑惑が渦巻いてゆく。今から起こる出来事は全て自分の責任となる。自分一人ならともかく、今は守る仲間がいるのだから無理は禁物だ。慎重に対処すべくハクガンへ連絡を入れようかと足を動かした瞬間、しびれを切らした声がした。

『ちょっと早く！　いつまでか弱い女子を待たせんのよ！』

>>166 シャチはどうする？

[164 二次元好きの匿名さん 23/10/12(木) 21:56:43]

ちょっと手が離せないから扉の横に置いておいてくれと伝える

[165 二次元好きの匿名さん 23/10/12(木) 22:22:08]

扉の丸窓から覗いてみる

[166 二次元好きの匿名さん 23/10/12(木) 22:25:04]

>>164

[167 二次元好きの匿名さん 23/10/12(木) 22:36:42]

鬼哭パイセンの反応をうかがってみる

[168 二次元好きの匿名さん 23/10/13(金) 06:50:31]

大丈夫かな

[169 二次元好きの匿名さん 23/10/13(金) 07:27:57]

いやーここでも安価！（安価スレだからあたりまえだけど）
プレッシャーがすごい笑

[170 二次元好きの匿名さん 23/10/13(金) 13:14:44]

鬼哭持ってたら大丈夫...だといいなぁ
ロー曰く「留守」らしいということは本体はこっちにいるんだろうし

[171 ◆Pxx1Kifjy2 23/10/13(金) 22:36:38]

>>152

この塗料の名前なんだっけと思って考えてたがペンタブラックか

あの光吸収するやつクトゥルフぽくて好きだ

悪いが今日は１レスぶんだけだ！

近々ラストの精神世界組に移るからよろしくな

[172 ◆Pxx1Kifjy2 23/10/13(金) 22:37:16]

「あー……っと悪い！　いまちょっとコッチも手が離せねェんだ！　そこ置いといてくんね！？」

少しわざとらしかったかもしれないが、シャチが声を張り上げると扉の外からの声はぴたりと止まった。再び訪れた静寂のなか、小さな金属音が耳を掠める。

ちりちり、
　ちりちりちり、

それは計器の針が振れるような、緩んだネジが振動で音をたてるような、話し声や衣擦れでいとも簡単に掻き消されるほど微細な音だった。船長室で耳にするには違和感のある音の正体を探ろうと、シャチは扉の外への警戒をそのままにして辺りを見回した。
が、目当てのものはすぐに検討がつく。ベポが、目を丸くして自身のすぐ傍にある鬼哭を見詰めていたからだ。

ちりちりちりちりちりちりちりち

唾鳴りなどではなく刀身そのものが発する超音波のようなそれに二人して息を呑む。
この緊迫した状況のなか、音の意味するところは明白だった。

『ったく、じゃあここ置いておくから取りに来なさいよね！』

扉の外から呆れた声と同時に何らかの"荷物"が床に置かれる音がした。どこか焦りを滲ませた言動に聞こえるのは、鬼哭から発せられる音のせいだろうか。
相手を刺激しないよう、そして本物である可能性を残してシャチが扉へ向けて謝罪と礼を併せて伝えるものの応えはない。

それどころか、遠ざかる足音もない。

ベポを振り返れば、彼は丸い耳をぴくぴくと動かして――そして、口を一文字に引き結んで首を振った。やはり足音も、おそらく気配すらない。

"イッカク"は"何"を置いて行ったのか。

そもそも、本当に"去った"のか。

身動ぎひとつすら出来ず固まるシャチと、そっと羽毛布団を引き上げてローの頭ごとすっぽりと覆い隠すベポ。
耳が痛くなるほどの無音にふと気が付けば、鬼哭は静けさを取り戻していた。

[173 二次元好きの匿名さん 23/10/13(金) 23:11:20]

鬼哭先輩...！

[174 二次元好きの匿名さん 23/10/13(金) 23:33:38]

鬼哭せんぱーい！！！！

[175 二次元好きの匿名さん 23/10/14(土) 09:39:16]

さすが妖刀

[176 二次元好きの匿名さん 23/10/14(土) 14:58:34]

マジで好きー！！！

[177 二次元好きの匿名さん 23/10/14(土) 21:32:24]

妖刀の鬼哭と聴力持ちのベポがこういう時には強い

[178 ◆Pxx1Kifjy2 23/10/14(土) 22:36:03]

しかし、いつまでも息を潜めてはいられない。
シャチはベポからの心配そうな視線を背に受けながら、忍び足で扉の丸窓へと歩み寄る。"置いていったもの"はさておき先ずはクリアリングだ、と扉の真横へ張り付いた。手鏡のひとつでもあれば顔を出さずとも外の様子を見ることができるが、生憎忍ばせているのは暗器のみ。
"何"が居ても驚くなよ、と自分に言い聞かせてそっと顔を出す。

そこには、なにも居なかった。

点々と常夜灯が奥へ続く暗い廊下のみだった。ホラー小説などにありがちな、安心した直後に脅かすという古典的な方法をも警戒して丸窓から見える上下左右も探ってみるが、やはり人も化け物も、あるいは目玉のひとつもない。
それなら、あの"イッカク"は本物だったのだろうか。

「……ベポ、誰もいねぇわ」

「えっ？　じゃあさっきの……」

「待て、なんかある」

顔を引っ付けて床付近を覗き込んでいると、扉の真ん前、死角ぎりぎりの位置に紙箱らしき物体が見えてシャチは眉を寄せた。上から見た限りでは手の平大程度で、そう大きいものではない。

「箱……だな。取ってみるか」

「大丈夫か？　爆発しないか、それ……？」

「って言ってもこのままにしとく訳にはいかないだろ？　なんなら廊下で開封するぜ」

「だ、だめだめ！　シャチが廊下で襲われたらどうするんだよ！　パッと取ってサッと入ってきて！」

慌ててぶんぶんと首を振るベポに思わず頬が緩む。自分より緊張している奴がいると逆に冷静になれるもんだな、と肩の力を抜いた。単なる直感だが悪意が見えてこないこと、そして鬼哭の反応がおさまっていることから考えて問題ないだろうとあたりをつける。

「（もしおれに何かあっても、ベポがいる）」

心の中でベポに対して任せたぞと声を掛け、シャチは静かに扉へ手を伸ばす。

[179 ◆Pxx1Kifjy2 23/10/14(土) 22:36:31]

結論から言えば、廊下に置かれていたのは縦長の真白い箱と、手のひらサイズの茶色い壺だった。

目玉や生首が落ちている訳でも、誰かの遺体といった幻覚をみさせられる訳でもなく、ただそこにある"荷物"へシャチは数度瞬いた。何もなければそれに越したことはないが、盛大に心構えした身としては拍子抜けである。

ひょいとその２つを手に取っても、やはり誰かや何かが襲い掛かってくることはない。

ふと暗がりの続く廊下の先へ視線を投げる。

"イッカク"が本物かどうかなど、後でわかることだろう。まあいいか、と独り言ちて、シャチはゆっくり扉を閉めた。

その寸前に聞こえた誰とも知れない女性の軽やかな笑い声は、きっと気のせいだと思いながら。

シャチSAN値チェック

dice1d2=1 (1)

[180 ◆Pxx1Kifjy2 23/10/14(土) 22:40:08]

（シャチ　SAN値37-1=36／発狂・恐慌まであと11）

（side ベポ）（SAN値30／発狂・恐慌まであと10）

扉を閉めたシャチが振り返る。その片腕には細長い白い箱と、小さな茶色い壺がおさまっている。しかしその表情は何事かを秘めている気配がする。黒いサングラスに阻まれて分からないが、意識は扉の外へと向けているようだった。

「シャチ……？」

「ん、ああ、悪い。この２つがあっただけだ」

声を掛ければ、パッと表情を変えたシャチが唇を尖らせ床に座り込む。自分やローのいるベッドの上ではなくそこで開封する気らしい。扉の外で何か見たのか、聞いてもはぐらかされるであろう空気にベポは大人しく口を閉ざした。シャチは軽薄そうに見えるが頑固な面もある。言わないと決めたならきっと船長命令でもない限り聞き出すのは難しいだろう。

「箱のほうは、ワノ国の酒か……？　街で見たことねェな」

がぽ、と紙箱の上蓋がはずされる音。ベポはそっと首を伸ばして様子を伺った。持ち上げられたのは緑色の半透明の瓶。うっすらと見える中身はちゃぷりと液体が揺れている。

「とすると、こっちは……」

紙の封が切られる音、そしてカチャと陶器が触れ合う音。ベポの耳は、さり、と中身が揺れる音までもを拾う。

「おお……塩だ」

感嘆の声をあげるシャチ。爆発物やグロテスクな幻覚の類は無いらしい。ほっと息を吐いたベポはそっとローを隠すように被せていた羽毛布団を引き下げる。苦しくないようにしていたつもりだが、安定しない呼吸は相変わらずだった。ただ、湯たんぽや体温を分け与えたおかげか食堂で見たときよりも血色はよくなっている。

「うん、やっぱ塩だ」

容体を確認している間に、シャチは早くも毒見をしたらしい。本当に毒だったらどうするんだと窘めたいところだが、この思いきりの良さに救われている事もあるベポは呆れた視線を送ることしかできなかった。

「じゃあ、本物のイッカクだったのかなァ」

[181 二次元好きの匿名さん 23/10/14(土) 22:40:42]

良いものの幽霊がどうにかしてくれたのかもな……

[182 ◆Pxx1Kifjy2 23/10/14(土) 22:41:01]

悪い事しちゃったなと罪悪感を漏らせば、酒瓶を開封しつつシャチが首を傾げてみせる。

「どうだろうな、不可解な点は多いし。……こっちもちゃんとした酒っぽい」

瓶の蓋をワノ国の伝統酒器である"オチョコ"のようにして味を確かめるシャチ。一応、酒も塩も本物らしい。

確かにシャチの言う通り、イッカクにしては生きている音が無かったり、扉があけられないほどの荷物を持っていたという言葉だったり、何より鬼哭の反応だったりと妙な点ばかりである。それでも"モノ"は本物という事実だけが部屋に残された。あべこべな状況に思わずベポの口がへの字に曲がる。

「一旦ハクガンに連絡してみるか。ちゃんとお前と合流できたことも伝えときてェし」

シャチも似たような気持ちだったのだろう。言うが否や立ち上がり、伝声管の前に歩を進めた。



『イッカクに連絡？　してねェよ』

しかしハクガンから返ってきたのは予想通りの言葉だった。あぁそう、とシャチから疲れきった声が漏れる。

『来た？』

「来た。……が、鬼哭が警告してくれてな。それに害は無さそうだったぜ」

端的に状況を話すシャチに対してふぅん、と思案の声で相槌を打つハクガン。
いつペンギンが"戻って"くるか分からずのんびりと話をしてもいられない。シャチはハクガンの身の安全を確認し、同時に廊下へ警戒するよう伝えてそのまま通話を終える。

「ハクガンも大丈夫そうでよかったね」

「だな、とりあえずこっちの問題に集中できるのは有難ェけど……」

二人の視線が床に置かれた酒と塩に注がれる。あとに残されたのは、本当にこの酒と塩を使うかどうかという問題だけだった。

[183 二次元好きの匿名さん 23/10/14(土) 22:47:03]

良いやつが持ってきてくれた本物の酒と塩でありますように

[184 二次元好きの匿名さん 23/10/14(土) 22:48:48]

いくら怪奇現象でも魔除けの類いのものまで偽造出来るとは思えないから一応塩は本物かな？
酒は中身がまだ罠である可能性はあるけど

[185 二次元好きの匿名さん 23/10/14(土) 22:50:37]

使うのちょい怖いけど本当に酒と塩持ってきてくれたんだ
最初の方読みながら白い箱にパン茶色い壺に梅干し入ってたらどうしようって思ってた

[186 二次元好きの匿名さん 23/10/15(日) 00:12:13]

食堂で会った子かな...だったら大丈夫と思いたいけど

[187 二次元好きの匿名さん 23/10/15(日) 01:12:10]

>>185

そのパターンは全く想定してなかったがめっちゃおもろいな

よりによってその二つとは悪戯好きにも程がある

[188 二次元好きの匿名さん 23/10/15(日) 11:08:20]

毒だったらどうしようなんて思ったけど、どっちの方ももうシャチが味確かめてるから大丈夫そうだな

[189 二次元好きの匿名さん 23/10/15(日) 21:33:21]

ハクガンは偽物じゃないクルーだから安心する

[190 ◆Pxx1Kifjy2 23/10/15(日) 22:42:54]

>>185

こんな面白い展開を思いつくなんて…嫉妬しちまうじゃねェかよ…フッフッフ！！

安価すればよかったクソッ！！

トンチキ服も安価しようと思ったけどシャチは選ばないだろうなと思ってやめたんだ…ベポやペンギンだったらやってた

特にペンギンの私服は休日のお父さんみたいなイメージがある　格好いい服あるとシャチが選んでやったやつ、みたいな

あくまでスレ主のイメージな！ごめん

新スレは明日以降どっかのタイミングで建てさせてもらう

残りは落としても大丈夫だいつも保守兼感想ありがとう！

[191 ◆Pxx1Kifjy2 23/10/15(日) 22:43:42]

（side 精神世界組）
（ロー　SAN値21）
（ペンギン　SAN値21／発狂・恐慌まであと1）

闇のなか、光の漏れる扉を目指して不確かな足取りで進むロー。その背には手足が消え失せ、身体全体も透け始めているペンギンが乗せられている。体力、あるいは蓄積されたダメージのせいでローががくりと膝をつきそうになるたびペンギンは「もういい」「置いて行ってほしい」という言葉を飲み込んだ。その言葉はローを信じていない、そして自分自身の心を裏切るものだと理解しているからである。

それだけではない。未だペンギンの姿はローから見て、白く人が溶けたような化け物に見えているのだろう、そして声はきっと煩わしいものなのだろう。意志疎通すら難しい今は、これ以上足を引っ張る訳にはいかなかった。

「あと、少しだ……本当に、あそこで、いいんだなっ……！」

絶え絶えの呼吸の合間に問われ、ペンギンはローに分かるよう右の腕を動かした。先刻決めた合図をそのまま生かせば、ローの口元から笑みのような吐息が漏れた。

ついに、扉の色形を視認できるところまで戻ってきた。ペンギンの胸中には言葉にできない思いが込み上げる。長い長い悪夢を見ているようだった。それもようやく終わる、と瞳に水の膜が張ってゆく。

対してローは、その"どこか見覚えのある"扉に強い忌避感を覚えて思わず視線をそらしていた。ペンギンがいなければ近付こうともしていなかった、と思うほどである。嫌悪からではない。懐かしさや郷愁といった感情が発露する事に対しての恐怖だった。
それでも、ペンギンの言う事を信じると決めたローは歩みを止めなかった。

厚みのある、硬質な扉の前に立つ。
闇ばかりのなかを歩いてきたせいか、丸窓から漏れる光は周囲に反するコントラストで二人の姿を照らし出している。ペンギンにとっては歓迎の、そしてローにとっては標的捕捉のスポットライト。抱く印象は真逆の二人だが、目的は同じだった。

「……開けるぞ」

残り少ない、右の二の腕をあげるペンギン。
一拍分の呼吸を置いて、ローは扉のハンドルへ手を掛けた。


中はペンギンが出たときと何も変わらない、いつもの船長室である。ローの私室ではあるが、クルーの誰もが見慣れた家の一部。当然ペンギンも、我が家に帰ってきた安堵感に身を包まれる。しかし、ローはそうはいかなかった。

「こ、こは……、」

[192 ◆Pxx1Kifjy2 23/10/15(日) 22:48:32]

数歩あるき、部屋を見渡すローの声は震えている。腕の、全身の力がふと緩む気配にペンギンは慌てて背中から滑り降りた。同時に、その場へがくりと膝をつくロー。肌身離さず抱えていた鬼哭ががらんと落ちる音がした。

「だ、だめだ、やめろ……おれから奪うんじゃねェ……！！」

"思い出し"、"消される"記憶たち。せめてもの抵抗か、反射か、強く目を閉じ頭を抱えるローは真っ青な顔で震えている。
慌てて這うように寄るペンギンは無力な自分に苛立ちを抑えきれなかった。どうして自分はこんな状態なのか。ついていくと決めたのに、おんぶにだっこで嬉しい訳がない、と自分で自分を"拒絶"する。

途端、雷撃のごとくペンギンへ衝撃が走った。
それは刹那の間に全身を駆け巡り、感覚の途切れていた手足に血を巡らせる。

「――ッ！？」

何が起きたのか、ペンギン自身も分からなかった。ただ、消えたと思った手足が"ある"。全身の透明はより"薄く"、もうほとんど目に見えないと言っても過言ではない状態だ。ただ、薄いとはいえ感覚も視覚も、手足が戻っているのはペンギンにとって僥倖だった。
この部屋の効果だろうか、知らないところで何かが起きたのか。思考は、ローの苦しむ声を前にしてかなぐり捨てる。

手足が戻ったのなら、できることはある。ペンギンは慌ててベッドから毛布を引っぺがしてローに被せ、その視界を遮った。

「船長、もう大丈夫だ！　ここまで来たからには……もう少しだ、何も見ないでくれ、思い出さなくていい！！」

叫べば、毛布のなかから小さくペンギンを呼ぶ声が漏れ聞こえる。憔悴と混乱を綯い交ぜにした声は限界を迎えている。
ペンギンは何かできることはと周囲を見渡すが、そこには普段の船長室があるだけだった。部屋に来いと言われただけで何をすればいいのか、シャチやベポを待っていればいいだけなのか、何も分からなかった。
"子供"の姿すらもここにない。

「くそッ……とにかくはやく、はやく戻らねェと！！」

部屋に辿り着いたという安堵も束の間、襲い来る焦燥感にペンギンがいてもたってもいられなくなったその時だった。甲高い音が耳を掠め、顔をあげる。それはぴし、と何かが張り詰めた、か細い悲鳴のような音だった。
多少くぐもった、反響する音。

不審な音の出所を探るペンギンが目を向けた先は、伝声管だった。

[193 二次元好きの匿名さん 23/10/16(月) 01:28:38]

さてどうなるら

[194 二次元好きの匿名さん 23/10/16(月) 08:02:50]

これこの状態でペンギン発狂したらヤバいな
まあもう後1しか猶予ないんですけど

[195 二次元好きの匿名さん 23/10/16(月) 17:17:08]

ワクワク

[196 二次元好きの匿名さん 23/10/16(月) 17:18:10]

ペンギンの手足が元に戻ったのが現実世界の影響なのかな

[197 二次元好きの匿名さん 23/10/16(月) 18:13:07]

佳境だなあ　最後の方なら流れ切らずに済むと思うので返信させてほしい

>>105

感謝感激雨あられ

こんな凝った感想貰えるなんて思ってもみなくてビックリしたしすっごく嬉しい！！

ハートくれたスレ民もありがとやで

[198 二次元好きの匿名さん 23/10/16(月) 20:14:46]

無理矢理発狂させる必要はない
あくまでダイスの女神様次第で頼む

[199 二次元好きの匿名さん 23/10/16(月) 20:33:12]

>>196

自分は偽コラさんを撃退してた拒絶の意志みたいなのじゃないかと思った

途中の安価だと効いてなかったみたいだからこの部屋特有なのかと

[200 二次元好きの匿名さん 23/10/16(月) 23:16:12]

新スレ今晩はこないかな…と思ったので

すいませんこんなんが最後で

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