【SS/トレウマ】先生、あのね

  • 1二次元好きの匿名さん23/10/01(日) 22:22:55
    拝啓 ナカヤマフェスタ様 スミレの花が咲いて、もうずいぶん経ちましたね|あにまん掲示板それはそれとしてトレーナーさんとの関係の進展はどうなっているのでしょうか?もうそろそろあなた達の進展しない距離感ゼロのイチャイチャ話を聞いてると糖分過多でブラックコーヒーすら甘く感じます。この間のデー…bbs.animanch.com

    こちらのスレッドにて11以降に辻らせて頂いたSSを元に大幅な加筆修正をしたSSです。

    SSスレではなかったのにも関わらず辻SSを落とさせていただきありがとうございました。


    ナカヤマとトレーナー(♂寄り)を気ぶりまくる

    奇跡の元、病を克服した『先生』が出てくるお話です。

  • 2二次元好きの匿名さん23/10/01(日) 22:23:31

     押入れの奥の奥、しばらく光にさらされていなかっただろう暗がりから、A4サイズのダンボールを引きずり出した。
     多く見積もっても五年のあいだ蓄積されていた塵や埃がむしょうに鼻をむずつかせて、ダンボールの底と剥き出しの床板が摩擦してざりりと音を立てれば、いかなコントロールの効く私の耳といえど無意識にぐるんと絞られるってもんだ。

    『ほら、宝探しみたいなもんだと思ってさ! 探してやってくれないかい?』

     それはつい三十分ほど前──夏の長期休暇に実家へ戻りひさびさに目覚まし時計に邪魔をされない惰眠をむさぼっていた私を目覚めさせた母親の一言だった。母親の声ってのは不思議なもんだよな。中等部入学とともに寮生活をはじめてかれこれ三年以上、実家に戻るとしたらゴールデンウィークや年末年始のそれぞれ数日間くらいでさ、電話で近況報告なんてもんもほぼしないっつうのに。驚くらいに『ちょうどいい塩梅』で私を眠りから引き上げちまうんだから。
     宝探しなんて響きだけは浪漫にあふれちゃいるが、現実はそう甘かない。ダンボール箱をとじる布ガムテをべりべり剥がしてフラップを開くと、うっすら層をなしていた埃が舞い上がる。

    「……ッ、クシュン!!」

     とっさに押入れの外に顔をそむけたが、時既に遅し。鼻先をくすぐられるみたく盛大にくしゃみをぶっ放せば、ドタバタと騒がしい足音がふたつ。勢いよく自室──実家を離れて暮らす今は実質物置のようなもんだが──の扉が開かれた。

    「姉ちゃんお宝あった?!」
    「希少品あった??」

  • 3二次元好きの匿名さん23/10/01(日) 22:23:47

     んなもんあるか。
     顔をのぞかせたのは遊び盛りの弟妹(チビ)たちだ。小6と小5だしそろそろチビなんて言えなくなってはきてるかもな。私がこのくらいの年齢だったころはもっと落ち着いてたハズだが……なんて思うが、それを口に出せば両親には笑われちまうかもしれない。
     さておき。暑すぎず寒すぎずちょうどいい塩梅で効かせていた冷気が逃げるだろうがと扉を閉めるよう視線をやれば、弟妹たちはそそくさと扉をしめて、押入れのそばで開かれたダンボールに興味津々といったていで寄ってくる。
     まだチビだったころからネットオークションを見るのが好きな弟妹たちだったが、いまでもそれは変わらない。宝探しだのなんだのと母親が吹いていたからか珍品逸品希少品みたいな期待をしてるみたいだがな、もう一度言うぜ? んなもんあるか、だ。なぜなら私がダンボールから取り出すのは、古びた教科書類なんだから。
     配布されたころのぴんしゃんとした風情はどこへやら、すっかり表紙がヘタった算数の教科書。世間の流行が見て取れる社会科の教科書。べったりと墨をつけたままの書写の教科書に、……他よりは若干ではあるが丁寧に取り扱われた形跡のある国語の教科書。さらにその奥、数冊のノートを取り出した先、目的の『お宝』が見える。

    「ほら。どうせもう使うことはねぇし好きにしろ」
    「ほかのも持ってっていい?」
    「……国語と音楽以外なら」

  • 4二次元好きの匿名さん23/10/01(日) 22:24:00

     やったぁ! なんて歓声を上げた弟妹たちは、目的だった小学5年生理科の教科書だけじゃなく、算数社会科図画工作、家庭科とあるだけ抱え勝鬨をあげる山賊みたいに去っていく。
     どういうことかっつうと、いわゆる夏休みの自由研究ってやつさ。弟妹共同で小学5年生理科の教科書の変遷を研究してるらしい。詳しいことは聞いてないが、学習内容だって記述だって年代によって変わってくるだろ? 近所を回って版違いの教科書を集めて……なんて面倒なことよくやるよとは思うが、オークションを好んで見てるからかどうなのか年代モノへの興味はそこそこあるみたいでな。
     果たして教科書を年代モノと言えるかはどうかは審議が必要だとは思うが──おそらく切り貼りするだろう理科の教科書はともかくそれ以外の教科書については戻ってくる可能性を考えて、ダンボールは出したままにしておく。読み返すわけでもないのに手元に残すことを選択しちまった国語と音楽の教科書、それから何冊かのノートをまとめたところで、ページの隙間からひらりと藁半紙が滑り落ちた。

  • 5二次元好きの匿名さん23/10/01(日) 22:24:12

    ──はいけい 親愛なる先生

     まだクセらしいクセのない、丁寧に書こうとしているのが伝わってくる筆跡。挨拶語と宛名まで書いて、鉛筆の文字がミミズのようにのたうちまわっていた。あからさまな書き損じ。畳敷きの床からつまみ上げて記憶を探る。が、まぁ、小5の頃のことなんて、覚えてないほうが多いもの。
     親愛なる、先生。それは──危ない遊びを楽しんでいたあの頃、私を『あきらめないでくれた』ひとのことだろう。べつに小1や小3のころの担任が嫌いだったみたいなことはなかったが、私が『親愛なる』なんてこっ恥ずかしい口走り方をしながら手紙を綴る相手なんてあの人しかいない。授業の一環でちょくちょく手紙の送り合いもしていたしな。
     ただ大体の場合は飾り気のない白の便箋を使っていたんだよ。……まるで適当に手に取ったプリントの裏紙のような藁半紙を使った覚えはない。
     この書き損じは過去のどのタイミングから姿を現したんだろう。眼下、片手で抱えるのは中央に花の写真が据えられた濃緑の表紙のノートだ。ほどこされていたはずのツヤのある加工はすっかり擦り切れて掠れの跡が目立つ、良く言えば使い込まれた、悪く言えば雑に扱った『絵日記』帳。戯れに開いてみれば──なんてことない、夏休みの宿題。

    『フェスタは絵日記を書きたくないの?』
    『だってなんのために書くのかわかんねーじゃん。夏休みって言ったって毎日どっか出かけるわけじゃねーし。夏休みたのしかったってよみかえすワケでもないしさ』
    『……それなら、先生宛にお手紙を書く気持ちで、絵日記、書いてみない? なにもなかったらなかったでいいの。先生あのね、からはじめて、その日にあったこと、聞かせてほしいな』

     意図も理由も意味も理解しないまま納得できないまま『やらされる』のがいただけないのは今も昔も変わらない。自分を押しつけてこようとする相手だったらなおさらだ。
     でも、あのひとは。『先生』は違った。評判のよくない年上たちと心臓が高鳴る遊びに手を出す私を危ないからとよく追いかけ回してはいたけれど、けしてそこに否定はなかった。『じゃあその遊び、先生も一緒にさせてくれる?』なんて真顔で言い出してきたときはさすがに呆気に取られはしたが。

  • 6二次元好きの匿名さん23/10/01(日) 22:24:25

    「先生、あのね、ねぇ」

     絵日記帳の表紙をめくる。小5の私はそれなりに律儀だったらしいぜ。どのページもボリュームの違いはあれど先生、あのね、から始まる手紙で満ちている。

     先生、あのね。
     けさラジオ体操に行くときにカブトムシを見つけました。虫かごを持っていなかったのでつかまえられませんでした。

     先生、あのね。
     花札でいい勝ち方をしました。たくさんほめてもらえて、あめをいっぱいもらいました。

     先生、あのね。
     海に行くってお父さんと約束してたのに行けなくなりました。弟が泣いてしまったので泣きやむまでいっしょにあそんであげました。

     先生、あのね。
     妹がかぜを引きました。顔がまっかでくるしそうです。わたしがかわってあげられたらいいのに。

  • 7二次元好きの匿名さん23/10/01(日) 22:24:51

     何やらむずがゆくなって絵日記帳をとじて勢いそのままにダンボールに突っ込んだ。覚えちゃねぇさ、書いた内容なんて。筆跡だって今と違う。さっさとフラップをとじて布ガムテでとじなおそうとして、粘着面に埃がべったりついていることに気づいてゴミ箱に放る。クソ、この小っ恥ずかしさもろとも爆発霧散してくんねぇかな。ダンボールを足で押しのけさらに視界から遠ざけて、そのまま畳の床に身体を投げ出した。
     清潔なカバーがかけられた、少しだけ寸足らずになったベッド。私が寮住まいを始めてから誰も使ってないだろう学習机もクモの巣ひとつ張っちゃない。その向こう、開かれたカーテンとぴかぴかの窓から真っ青な夏空が見える。

     先生、あのさ。
     この夏から、私は恐らく生涯最大で最高の勝負をするよ。か細く頼りない蜘蛛の糸を手繰り寄せて期待や希望、それから貴方の生命と私のすべてを賭けた、サイアクで最高で最後の賭場に、私は足を踏み入れる。ただひたすらに勝ち筋だけを磨き続けて、誰も手に入れたことのない宝を得るために、私はロンシャンのターフを踏みしめるんだ。
     だから、先生──

     感傷をかき消すみたくポケットの中でスマホが震える。ただの通知じゃなくて、一回、二回、三回、四回。取り出したディスプレイに表示されたその名前に息が解けた。画面に指をすべらせれば、私が一言目を発するより先に、芯がもどりはじめた声音がスピーカーを揺らす。

    『フェスタ、貴方の言ってた教科書だけど、知り合いが良かったらって譲ってくれたわ!』
    「もしもし、くらいは言わせろよ、──先生」

     凱旋門賞へ向けた私の勝負。この賭けに勝つ条件には親愛なる『先生』の生存が不可欠だった。一度は死の淵に立ち、生命の火が消え心臓の鼓動を失いかけた貴方が気力を希望を取り戻し、強く強く強くその胸が脈打つこと。
     か細くかき消えんばかりの声音はいったいどこへやら。茶目っ気たっぷりに『もしもし?』なんてやり直そうとする先生にはオウム返しで応えて、私はふたたび窓の向こうに視線を向ける。

     そこにあるのは、雲ひとつ浮かぶことのない、目にも眩い夏の空だ。

  • 8二次元好きの匿名さん23/10/01(日) 22:25:38

    ***

     先生、あのさ。
     私はどんな勝負でもヒリつけるわけじゃないんだよ。刺激のある勝負ができなきゃどうでもいいとすら思っちまうこともある。そんな時は負けた悔しさすら欠片もない。どうしようもないヒリつき狂い。心臓が鳴んなきゃ生きてる感じ、しないだろ。
     ガキのころ先生に出会わなきゃ私はきっと裏路地で落ちるとこまで落ちてたかもしれない。いまですらどうしようもない──貴方の生命をも賭けなきゃ力の限り駆け抜けられない悪童だってのに。
     ガラじゃないのはわかってる。自分の正気を疑いすらする。最近の私はおかしいんだ。賭場じゃねぇってのに心臓が騒いでる。病気かなにかか? あぁ、ある意味それは間違っちゃない。

     先生、あのさ。
     私に人生を賭けると言ったバカがいるんだ。老い先短いわけじゃねぇのにさ。酸いも甘いも噛み分けられねぇどうしようもないガキなんかと違って、人生これから。未来のあるヤツだ。
     こんな小娘に言っていい言葉じゃねぇだろ?
      私なんかが受け取っていい言葉じゃあ、ねぇだろ?

     けれど私は。
     私の薄い胸は、バカみたいに高鳴るんだ。高鳴っちまうんだ。危ない橋をずっと共に渡り続けてた弊害かもしれないな。
     ヒリつく勝負でもないのに、生きてるって感じがする。
     先生、貴方が好む言い方をするなら、それは──

  • 9二次元好きの匿名さん23/10/01(日) 22:25:50

    ***

     「フェスタ、いいことを考えたのだけれど」
    「……嫌な予感しかしねぇ……」
    「トレーナーさんに恋の歌を送りましょう!」
    「何をどうしたらそんな妙案名案最適解みたいな言い方できんだよ……」
    「あら。思いのほか奥手な貴方にはぴったりな手法じゃない。ことばで表現するよりも文章に出力した方が素直になれるくせして」
    「んなことねぇし。つか素直とか素直じゃないとか関係ねーだろ」
    「『はいけい。先生、メリークリスマス。わたしのところにはもうサンタクロースはこないようですが、妹と弟のもとにはちゃんとやってくるみたいです。』」
    「――!? アンタそれ、おい」
    「『だから先生がクリスマスプレゼントをくれてとてもうれしかったです。先生ありがとう。大好きです。けいぐ ナカヤマフェスタ』――お礼が言いたかったのに言葉にうまくだせなくてもじもじしたあげく、目の前で何枚も何枚もお手紙書いたのはどこの誰だったかしら……」
    「なんでソラで言えんだよクソ」
    「サンタクロースの正体が明かされただけでプレゼントはちゃんと用意してあったのよね。あの時の喜ぶフェスタ、とても可愛かったわね……」
    「忘れてたのに思い出させんなよ……」
    「いいじゃない。大切で愛おしい思い出だわ。……で、恋の歌よ!」
    「……」
    「せっかく誤魔化せる話題だったのに利用できなかった貴方の負けよ、フェスタ。さて、万葉集、古今集、新古今和歌集といった歌集にはたくさんの恋のうたが採録されているのは知っているわよね?」
    「先生の授業で耳タコなほど聞いたよ」
    「けして言葉にしてはいけない想いも、言葉ではあふれてしまう想いも、うたとして残しておかなければ儚く消え散ってしまう想いも──ひともウマ娘たちも、幾多の想いをうたにのせて遺してきたわ。そしてそれらのうたに宿る想いや美しい情景は、現代に生きるわたしたちに勇気やきっかけをくれるの。自分の想いに素直になれない誰かさんみたいに、力を借りることも、ね?」
    「だから別に借りてどうこうしようとか……んなつもり、ねぇし」

  • 10二次元好きの匿名さん23/10/01(日) 22:26:04

    「……ねぇ知ってる? フェスタ」
    「なんだよ唐突に神妙な面持ちで」
    「貴方と貴方のトレーナーさんが病院にお見舞いにきてくれたとき。……ナースステーションがすこし華やぐのですって」
    「……は?」
    「先生あまり詳しくないのだけれど、今は肉食系よりもやさしげな草食系なるほうが注目を集めやすいと聞いたわ」
    「は。あいつはそこらにいる牙の抜かれたヘタレじや」
    「そうね、フェスタはどちらかというと肉食系だものね?」
    「……。肉食系草食系はしらねーけど……私にかもしんねぇだろうが。別に有名人を気取るワケじゃねぇけどさ、この病院に限りゃアンタのもとに足繁く通ってた素行の悪げなウマ娘が、いまや期待や希望を背負いパリに乗り込み悲願叶えんとするウマ娘だぜ?」
    「ふふ、そうね。担当の先生にも看護師さんにも患者さんにも声、かけてもらうことも増えたわね。……でもフェスタ、貴方自身は理解してるはずよ。そうじゃない、って」
    「何が言いたい」
    「貴方のトレーナーさんは素敵な方だわ。教え子である貴方ならともかく、わたしなんてただの赤の他人なのにとてもよくしてくださるでしょう?」
    「先生が元気なら私のモチベーションも上がるからだろ?」
    「フェスタのために利用出来るから、わたしを利用する……あの方は、そんなひと?」
    「……ネジのぶっとんだどーしようもないお人好し」
    「でしょう? だからね、うかうかしてたら誰かに掻っ攫われてしまうかもしれないわよ? 貴方、それでいいの?」
    「なぁ先生」
    「なぁに?」
    「それ、曲がりなりにも教職についてたアンタが言うことか……?」
    「今、わたしを先生と呼ぶのは貴方だけよ、フェスタ。何も籠絡しろとまでは言わないし、言えないわ。貴方のトレーナーさんが良識のある方だってわたしも信じているし。でも。──貴方が勝負に出るか出ないかは、話がまた別じゃあない? 貴方の知らない誰かに手を付けられてしまう前に、外堀は埋めておく。勝利のための準備は怠らないのが、貴方という勝負師でしょう?」
    「じゃなきゃわざわざ検査入院してるアンタを見舞いにゃ来ねぇよ。ったく、心配の必要がないくらい元気だな」
    「誰かさんのおかげでね? どうせ渡欧するのならお医者様からの太鼓判が欲しいもの。──で」

  • 11二次元好きの匿名さん23/10/01(日) 22:26:18

    「恋の歌だろ。……生憎私は先生ほど造詣が深くねぇんだ。聞くだけなら聞いてやる」
    「そうこなくっちゃ。そうね。……こういうのはどうかしら。
    ──足引きの 山鳥の尾の しだり尾の ながながし夜を ひとりかもねむ。
    はい、誰がうたったか覚えてる?」
    「柿本人麻呂。百人一首」
    「よくできました。ひとりさみしく眠れない夜長、貴方がそばにいてくれたらいいのに。ロマンチックでしょう? これを送ってごらんなさい? まずはジャブを打つ感覚で。シュッシュッシュッ!!」
    「聞くだけっつったろ。だいたいジャブにしちゃ明け透けすぎる……送らねぇからな。……おい。そんな目で見るな。こんなの送れっかよ。……だから、送らねぇって──」

  • 12二次元好きの匿名さん23/10/01(日) 22:26:28

    ──ピロン♪──

    「フェスタ、通知がきたわ。トレーナーさんからのお返事かしら」
    「……」
    「ほら、不貞寝してないで起きて。最終的には貴方が送るって選択をしたのよ?」
    「……一度選択しちまったら戻れねぇのは知ってるよ。後悔なんてしたところでどうしようもないってこともな。グダグダ愚痴んのは私らしくない」
    「そうね。それがわたしの知るナカヤマフェスタだわ」
    「だが、先生、アンタこんな……押しが強かったか……?」
    「フェスタ、ひとは変わるものよ? 今はスマートフォンでメッセージを簡単に送ることができるようになったけれど、……フェスタ、貴方の手紙の筆跡も、少しずつ変わってきているじゃない」
    「は。じゃあ先生は厚かましくなったんだな?」
    「そうね。そうかも。……貴方の、貴方たちのおかげで生き永らえた命だもの。どうせなら図太く生き抜きたいわ。ね、お返事、どうだった?」
    「……」
    「フェスタ? あ、見せてくれるのね。……、……ぬいぐるみの、画像がたくさん……」
    「『確かにフランスでホームシックになってしまうかもしれないね。抱き枕になるぬいぐるみを経費で落とそうか。とりあえずいくつか良さそうなものをピックアップしてみたけど、君の好みがあったら教えて欲しいな』……だとよ。まぁ随分と手厚いことで」
    「そうね、ぬいぐるみは選ぶとして……」
    「小学生のガキじゃねぇんだぞ……」
    「あら、折角だから布石は打っておかなくちゃ。それはそれとして──もう少し直接的な恋の歌、送ってみる?」
    「だから! 送らねぇっつうの!」

  • 13二次元好きの匿名さん23/10/01(日) 22:26:38

    ***

     先生、あのさ。
     なんにせよ本当に、元気になってくれてなによりだよ。担当医に告げずに私のメイクデビューを見に来たみたいな無理もせず、検査入院してきっちり病院からの後ろ盾も得てさ。去年の今頃は──私が宝塚記念を勝ったころは、まだ声だってか細くて、まだいくつかのチューブに繋がれていて、……それでも菊花賞のあとよりは病に打ち勝ちつつあるって実感はあったけど。あの頃の私たちに今の先生の姿を見せてやりたいぜ。恋だのなんだのってダル絡みしてくる日が来るなんて、想像すらできなかったから。

    「空港までお見送りできなくてごめんね」
    「いや、いいさ。凱旋門賞ウィークエンドまでにゃ、また向こうで会えるだろ?」
    「ええ。そのつもりでしっかり体調を整えていくわ」

     何年も何年も世話になった総合病院の入り口には来訪者を癒やすためか季節の花が咲き誇る。うら寂しくなる秋冬と違い、夏真っ盛りとなればそりゃあ目にも鮮やかだ。ヒマワリ、クチナシ、クレマチス。ブーゲンビリアにハイビスカス。癒やすというか、賑やかすというか。
     その花々に負けないくらい、先生の顔色も良くなった。まだ罹患前には戻せてないとはいえ痩せこけていた頬にもふくらみが戻っている。去年の秋口に退院したときよりも、ずっと、ずっと。

     奇跡だ、と。

     担当医は言っていたらしい。あの秋、一命をとりとめたもののいつまた悪化するかもわからない。行きつ戻りつの闘病は、いつしか前だけを見据えられるようになったのだと。
     どれだけ生きたいと願ったとしても、尽くせる手を尽くしたとしても、あきらめはしないと希望を抱いていたとしても、現実は無情で、望むエンディングなんて夢のまた夢。現実なんてそれが常だ。
     だからこそ、奇跡なのだと。私たちは、噛みしめる。

  • 14二次元好きの匿名さん23/10/01(日) 22:26:49

    「フェスタ?」

     やさしい声だ。ヤマアラシみたいだむた私の心に丁寧にふれようとする、やわらかな響き。いい加減感慨に耽るのもやめちまいたいのにな、まだまだやめられないのはどうにかしなきゃなと思うもんだが。
     かぶりを振って手にしていた紙袋を持ち上げる。ずしりと重量のあるその中に──小学5年生の、理科の教科書。

    「これ、助かった。弟妹どもにお礼の手紙書くように言っとく」
    「どういたしまして。よかったら完成した自由研究、見せてちょうだいね?」

     手を振って踵を返す。早足でバス停に向かうのは、貴方がいつまでも私を見送ろうとするのがわかるから。

    「また、パリで!」

     先生の声が背中を押す。
     前哨戦にも出走するし遠征先の環境に慣れるため、私は一足先に現地入りだ。振り返らないまま片手を上げてひらひら振って、ことばのない「またな」を返す。

     先生、あのさ。
     貴方に「また」と応えられるのが、──私は嬉しくて、嬉しくて、……仕方がないんだ。

  • 15二次元好きの匿名さん23/10/01(日) 22:27:01

    ***

     トゥインクル・シリーズのレースは、全国各地で行われる。
     北は北海道、南は九州、ターフを走る私にゃ縁がないが所謂『地方』と呼ばれるレース・シリーズのダート交流戦とかな。
     それから海外。正確に言えばトゥインクル・シリーズの範疇じゃあないが、ドバイにサウジ、香港、イギリス、アメリカ──日本だけに留まらず、世界の強豪たちに挑戦する、そんなウマ娘たちも少なくはない。
     そんな海外遠征の中でも、フランス──凱旋門賞は、日本のウマ娘や応援するファンにとっちゃ特別なもんだった。
     今年こそ優勝を、とか。誰それが叶えられなかった悲願を、だとか。私の背中に貼り付けられる期待や希望はさまざまだ。そこにプレッシャーだとか重さを感じねぇとは言わないが、託したいヤツは思いの丈を託せばいい。
     私はただ、己の勝負を果たすだけ。
     いつかの野良レースで相対したフランスのウマ娘との因縁を。それから、奇跡が起きなきゃ本来舞台にすら立てなかった賭けに勝つために、走るだけ。

     前哨戦を程よくこなし、フランスでの生活にも慣れてきた頃、私のもとに一通のメッセージが届いた。

    『渡欧許可を掴み取りました。体調も万全です』

     またひとつ奇跡が厚みを増す。
     私が私の力を出し切るための舞台が、今、調おうとしている。

     ──だがしかし、だ。

     先生、あのさ。
     こちとら想定外に心を乱されるなんて夢にも思っちゃなかったんだぜ?

  • 16二次元好きの匿名さん23/10/01(日) 22:27:33

    ***

    「ということでフランスね。フェスタ」
    「フランスだな。先生、アンタの大好きなパリだぜ。ったく……あの頃を考えりゃ勝ち目のない賭けだったっていうのに。こんなところまで漕ぎ着けやがって」
    「まだ本当の勝ちには一歩足りないけれど、ここまで来ることができたのは、貴方がわたしを信じてくれたから。ずうっとわたしに信じてと願い続けてくれていたから。貴方に希望を見出して、貴方を信じた私を、貴方が信じてくれたから。私が病を討ち倒すって、貴方が信じてくれたから。……そうでしょう?」
    「……結果論だろ。結果論」
    「照れなくたっていいのに。……ところでフェスタ」
    「何だい?」
    「フランスといえば、パリね」
    「いきなり主語がでけぇな。が、まあ、そうだな。……カジノバリエール・アンギャン・レ・バン、行ってみたかったんだよなァ。18から入れるらしいが」
    「パリといえば」
    「スルーかよ。……凱旋門? オペラ座? エッフェル塔?」
    「ジュテームの壁よ。フェスタ」
    「……」
    「ジュテームの壁よ、フェスタ」
    「……二回も言いやがった。そうだな。ジュテームの壁だな。それはさておきトレーニング行ってくるわ。あーいそがしいいそがしい。凱旋門賞まで時間がねぇんだよなぁ。先生も好きに観光してろよ。でもあんまりハシャギすぎてレース当日にぶっ倒れるとか――おい。なんだこの手は」

  • 17二次元好きの匿名さん23/10/01(日) 22:27:45

    「本番まであと一週間、毎日トレーニング漬けというわけではないのでしょう?」
    「そりゃな。レース本番にピークがくるように調整してあるさ。最高のコンディションを発揮できるように──」
    「リフレッシュ休養日はあるということよね?」
    「えらく食い気味じゃねぇか……あるにはあるが、そんなあからさまな地雷原にわざわざ飛び込めるかよ。ほら。手離せって」
    「あら。怖じ気づいているの? 勝負師さん。見もせず聞きもせず勝負から背を向けるのが貴方の流儀? それに、手を離してほしければ振り払えばいいじゃない」
    「……出来ねーの知ってるくせによく言うよ。……で? そのジュテームの壁がなんだって? それを勝負にするかしないかの一考くらいはしてやるさ」
    「ジュテームの壁というのはね、世界中の『愛してる』のことばが綴られた壁なの。その数、300以上」
    「……ただの文字が書かれた壁だろ?」
    「愛の国フランスを舐めてはいけないわ。フェスタ、休養日にトレーナーさんと行ってきなさい」
    「行ってどうすんだよ。壁を背にツーショでも撮れってか?」
    「読みあう勝負をするのよ」
    「……は?」
    「多言語版愛してるゲームのようなものね。スマホの翻訳アプリを使えば読めない単語だって読めるでしょう? 照れたり恥ずかしくなった方が負け」
    「勝ったとして私になんの得があるんだよ」
    「あら。わからない? ……異国の観光地、ある意味雑学勝負っていう大義名分のもと、愛してるって言われるのよ。……貴方の大好きなトレーナーさんに。さっさといいムードになってしまいなさい。顔が赤いのはパリの夕焼けのせいだとか言い訳しちゃ駄目よ! ほら、なんならいまから行ってくるのはどう? わたしの到着出迎えのために一日空けてくれたんでしょう? あっ、ちょうどいいところにトレーナーさんが! すみませんトレーナーさん、今日これからご用事ありますか? もしお時間空いてるようなら、フェスタが一緒に行きたいところがあるって――」
    「オイ待て、マジで勘弁しろ……先生……」

  • 18二次元好きの匿名さん23/10/01(日) 22:27:56

    ***

     それは言わば枯れ枝のような手指だった。儚く手折れ、打ち捨てられて、後はただ朽ち果てるのみ。痩せ切った手には温もりなどなく、まるで窓の外、肌をさす冬の空気のような手指を取って静かに擦る。体温を分け与えるみたいにさ。
     手を離せばあっという間に冷えきるもんだから……いっそ分け与えられればよかったのに。何度、そう思ったか。
     貴方の裡に夜明けが来るのはいつだろう。夜に包まれ凍える心臓が眩い朝日に温められて強く脈打ち出すのは、一体、いつの日のことだろう。他愛のない話を振りつつも、いつだって願っていたのにさ。

     先生、あのさ。
     あの頃、私の手を握り返す貴方の手は、あんなにも弱々しかったのに。
     さっき私の腕を掴んだその手はどうだい? 呆気にとられるほど力強かったじゃねぇか。元気になってくれて本当になによりだ。なによりなんだが……。
     なんでそう……私と私のトレーナーの距離を、縮めようとしてくんだよ。なぁ……?

  • 19二次元好きの匿名さん23/10/01(日) 22:28:06

     さておき、ジュテームの壁だ。
     滞在しているホテルからはメトロを乗り継ぎ大体一時間弱といったところ。まあざっくり言えば凱旋門から少し北。芸術の街・モンマルトルにある広場に配置された……壁だ。

    「壁だね……」
    「まァ、壁だからな……」

     地下鉄独特の排気臭さを振り払うように地上に出て、パリの秋空の眩しさに目が慣れ切らないまま徒歩一分ほど。
     マリンブルーのタイルが並べられたその壁はだいたい5メートル弱ほどの高さがあるんじゃないか? 横幅は10メートルほどだから、思ったよりも幅がない。

    「ちょうど賑わう時間帯だったみたいだね」

     やさしげな笑みを浮かべながら肩をすくめたトレーナーが見遣るのは壁を前に列をなす観光客たちだ。近くにあった煉瓦造りの教会の鐘がついさっき二回鳴り響いたところだから、ゆっくりランチを終えたあとのルートとしては順当ってところだったんだろう。何組もの連れ合いが、白い文字で綴られた幾多の愛の告白の前でささやかに言葉を交わす。観光地らしくたくさんの言語が飛び交っているが、私がわかるのはせいぜいフランス語くらいだよ。
     Je t’aime.
     Je t’aime à la folie.
     Je ne peux pas vivre sans toi.
     Je t’aime à en mourrir.
     ……いやさすがに複雑な表現まではカバーしてねぇけどさ。狂っちまうほど、だとか、死ぬほど、だとか大げさすぎやしないか? 私同様にフランス語のレッスンを受けていたトレーナーもどこかこそばゆそうな表情だ。
     まあおそらくはこの壁に群がってる奴らは性別種族問わず恋人同士というやつで、各々好きなことばの前で語り合い情景を写真に残すために自然と列ができている。
     つまりは、だ。制服だとかスーツだとかじゃなく普段着で、なんとなしにその列に並ぶ私たちも──

  • 20二次元好きの匿名さん23/10/01(日) 22:28:38

    「ナカヤマ?」
    「……ッ?!」

     耳元で名前を呼ばれて思いっきり尻尾が跳ねた。尻尾に少しかぶさっていた上着まで道連れにするくらいの勢いだったけど見られちまったか?! 無意識に距離を取ろうとしたが足許が覚束なくなりそうで既のところでこらえる。頭に血がのぼるみたく顔が熱くなって、心臓がバクバクと暴れ出した。ヤバイ。マズイだろこれ。あからさまに顔が赤い。耳も尻尾もコントロールできなくて、この瞬間、私はただの恋する小娘に成り果てていた。
     よろけそうになったところでこらえられたように感じたのは、私自身の鍛えられた体幹の賜物だけじゃない。伊達男か何かかよ。トレーナーの大きな手が、私の腰元に添えられていたんだから。

    「ぼーっとしてたみたいだったけど、大丈夫? 先生の到着までずっと緊張してたし、疲れたんじゃないかって」

     愛の言葉、それからハグ、感情が溢れんばかりの奴らはキスまで交わして、ジュテームの壁に連なる列はゆっくりと進む。
     この熱量にあてられたんだよなんて信憑性もない言い訳を口にして、列を詰めるついでにそれとなく距離を取った。わざとらしすぎやしなかったかと頭を過るもこのまま近くにいるだけで、まるで私が私じゃなくなっちまいそうだったから。

  • 21二次元好きの匿名さん23/10/01(日) 22:29:12

     I Love You.
     我爱你。
     Saya chinta padamu.
     Ti amo……
     ジュテームの壁に綴られた愛の言葉を、スマホの翻訳アプリと見比べながら、一つずつ口にする。何のためにわざわざこんな場所に連れ立ってきたのかって、多言語版愛してるゲームをするためだ。……冷静に考えるとまったくイカれた勝負だとは思うがな。
     私たちの後ろにも列は出来ていて、壁前じゃゆっくりゲームも出来ない。だから、順番がめぐってくるまで目についた言葉を調べて声に出す。
     といっても慣れ親しんでいない言語で『愛してる』と言おうが言われようが、思ったよりはピンとこない。まあ今の状況じゃピンとこないほうが助かるわけなんだが。

    「ナカヤマ、あれはどう?」
    「……Ich liebe dich」
    「すごい。知ってたの?」

     翻訳アプリを通さずに答えてやると素直な賞賛が耳元に落ちてくる。ドイツ語はフラッシュがよく口にしてるだろ。愛してる、なんて言ってるのは聞いたことねぇけどさ。
     そうこうしているうちに列はどんどん進んで、とうとう私たちの前にマリンブルーの壁が立ちはだかった。
     先生が私に命じてきたのは多言語版愛してるゲームだけじゃない。壁を背にしてのツーショット。

    「あそこにしようか。日本語で『愛してる』って書かれてるところ」
    「仰せのままに、ムシュー」

  • 22二次元好きの匿名さん23/10/01(日) 22:29:23

     投げ遣りとまではいかねぇけどさ、最早気分はやけっぱち。緊張ってやつはさ、一周回ると開き直りに変わるだろ。もうどうにでもなれ、とかじゃないけどよ。
     日本語で書かれた『愛してる』が画角に入るようにして、トレーナーが私のスマホを掲げる。縦長のディスプレイにおさまるように身を寄せて。一枚、二枚、三枚。
     ──躊躇うことなく肩を抱かれて。滞在中にアンタもフランス男かぶれになっちまったのか? なんだかそれが無性に腹立たしくなっちまったもんだから。

    「トレーナー」
    「うん? 別のポーズでも撮る?」
    「いや──折角ここまできたんだ。お遊びじゃない勝負をしないか?」

     縁のない言葉じゃ意味がない。正真正銘、正々堂々、互いの羞恥心を突く真剣勝負。
     集う観光客のおかげである意味見世物になっているこの状況で、本気の『愛してる』ゲーム。ヒリつくだろ? ヒリつかないわけがねェ!

     もちろん、アンタは乗ってくれるだろ?
     相棒?

  • 23二次元好きの匿名さん23/10/01(日) 22:29:34

     なんて。
     この時の私は一体どうしちまったんだろうな?
     先生、あのさ。一言言わせてくれないか。

     全部全部、アンタのせいだぜ?

  • 24二次元好きの匿名さん23/10/01(日) 22:29:47

    ***

    「……あ~……先生」
    「あらフェスタ、おはよう。ジュテームの壁だけ巡って帰ってくると思っていたけど、そのままデート、してきたのよね? 花の都パリの夜景はどうだった? ロマンチックだったでしょう?」
    「デートとかじゃねぇし……ほら。LANEで送っといた。受け取れ」
    「画像ファイル……? ……あら、あらあら……! トレーナーさんとのツーショット、撮ってきてくれたのね?」
    「アンタがどうしても欲しいって言うからだ。他意はねぇよ他意は。トレーナーも先生のことは気にしてるし。しょうがなくだ。しょうがなく」
    「はいはい、しょうがなくね。……しょうがなくのわりにはしょうがなくない距離感な気もするけれど、しょうがないということにしておいてあげましょう。それにしたって……距離感ゼロね。他意なくこの距離感でツーショット、撮影するの?」
    「それは……ジョーダンの奴が、ツーショってこーいうもんでしょ? とかいっつも言うんだよ」
    「グッジョブねジョーダンさん。……それにしても……ふふ……」
    「んだよニヤニヤして」
    「写真の中のフェスタ、お耳がとっても嬉しそう」
    「――ッ、それは、……演技に決まってんだろうが。これ、トレーナーの端末にも送ったし、見返した時にあからさま耳絞ってたりするの、嫌だろ」

  • 25二次元好きの匿名さん23/10/01(日) 22:30:00

    「何が嫌なの?」
    「は?」
    「トレーナーさんに不機嫌だったって思われるのが嫌?」
    「……っ!」
    「フェスタ、貴方は自分を奮い立たせるために大口を叩くことが多いけれど、狭くて小さな世界においては、思ってもないことを口にするものではないわ。ウソなんてつかなくてもいいじゃない。意地を張ってどうするの。……本音を言えないまま明日離ればなれになってしまってもおかしくはないのよ? ……貴方は知っているでしょう?」
    「先生」
    「なぁに?」
    「そういう言い方すんの、狡いよ」
    「誰かさんが可愛らしい恋をしているのだもの。からかいたくなってしまうの」
    「勘弁してくれ……」
    「ところでジュテームの壁の愛してるゲームはどうだった?」
    「……。は。この私が負けるとでも? ちょっと壁に追い詰めて囁いてやったら簡単に落ちやがったぜ?」
    「あら。そうなの? ……さっきね、エルコンドルパサーさんからLANEで動画を送ってもらったの」
    「……は?」
    「ほら。トレーナーさんに壁ドンされて平気そうなそぶりをしてる反面、尻尾が大騒ぎしてる、フェスタ」
    「――!!! エルあの野郎、なにしてくれやがるクソが……ッ!」

  • 26二次元好きの匿名さん23/10/01(日) 22:30:11

    ***

     ジュテームの壁でのトチ狂った勝負の結果は引き分けという形で落ち着いた。壁際に追い詰められたトレーナーもあからさまに動揺していたし、私はというと……エルのせいで先生には筒抜けになっていたし。
     昨年のジャパンカップで私の前に立ち塞がったエルコンドルパサー、そして宝塚記念で胸を借りたスペシャルウィークもまた、私のサポートとして同じタイミングに現地入りしている。年齢は下だが大先輩たちだ。トレーニングではびしばしとしごかれ、休養日には観光だのグルメだのに連れ回される。メトロで行ける範囲にゃあらかた足を運んだんじゃないか? だからこそ、まだ未踏だったジュテームの壁でニアミスしちまったことは仕方がないこととも言える。……まさか先生が仕向けたわけじゃねぇよな?
     朝方、先生にジュテームの壁でのことを報告し、午前中はトレーニング。午後からはロンシャンレース場のターフのスクーリング。VRで何度か走りはしたが、あんなのは気休めにしかならないのを実感する。散水して重く仕立てた学園の芝なんて毒にも薬にもなりゃしなかった。前哨戦で一度は走っているし、その前にもスクーリングはしちゃいたが──来たる凱旋門賞ウィークエンドを前にして蹄鉄シューズから伝わる芝の感触は、いまだ未知で満ちている。
     コースを歩き、軽く駆け、走りのかたちを整える。それをぎりぎり閉門まで。夕闇に追いかけられるみたくレース場を後にすれば、いまや常連になりつつあるビストロでレモネードを呷って夕飯に舌鼓。細胞はすっかりフランス仕様になっていそうだが、部屋に戻ってベッドに身体を預ければどっと疲れが押し寄せる。

  • 27二次元好きの匿名さん23/10/01(日) 22:30:25

    『今日も一日おつかれさま、フェスタ』

     灯りをつけるのも億劫でかろうじてベッドサイドライトだけを点けた視界の端、スマホがLANEの通知を伝える。体調は? 指を滑らせ尋ねれば、可愛らしいスタンプが返ってきた。続いて『いつかと立場が逆ね?』とディスプレイに綴られる。
     ぼんやりした頭でしばらく考えて、朝の出欠確認だと腑に落ちた。小学生の時ってさ、朝の出欠確認で元気ですだとか風邪気味ですだとか、報告してたもんな。
     明日の予定を確認しておやすみと告げれば、私と先生の遣り取りは終了だ。完全に日は暮れているものの街が眠るにはまだ早いが、夜が更けるのなんてあっという間だからな。スマホを充電器に差し込んで、後ろ手でベッドを探る。手にするのは、現地入りと同タイミングで私のチームに加わったよくわかんねぇキャラクターのぬいぐるみ。つまるところ、いつかの抱き枕。いつかの布石。
     抱き枕と同衾するなんて正直言って柄じゃねぇだろ? そんな年齢でもないし。だが……存外肌触りは悪くない。縋るように抱きしめはしねぇけど腕おきみたく抱えて、私は深く息を吐き出した。
     通りに面した滞在先は夜が深まってもなお往来の音が絶えることはない。それこそ丑三つ時にもなりゃ静まり返るだろうけど、その時分にゃ寝こけてるからな。ぴんと糸が張るような静寂のむこう、クルマの走行音やひとびとの喋り声、歌声、笑い声──気に触らない程度に、さまざまな音が聞こえる。ぬいぐるみを両腕で抱きこめば、どくん、どくんと心臓が鼓動を伝えてくる。

  • 28二次元好きの匿名さん23/10/01(日) 22:30:36

     先生、あのさ。
     心臓が高鳴れば、私は生を実感できる。血が沸騰して体温がどんどん上がっていって、わざわざ胸に手を当てなくったって、生きてるってことが理解るんだ。平々凡々、安寧の日々じゃあけして与えられない、生きてる実感。
     私はそれが欲しくて、貴方に教えられた日からずっと、走り続けている。
     ギリギリの瀬戸際、ヒリついた勝負じゃなきゃ得られない。私みたいな悪童が生きる実感を得るためにゃ、それぐらいしかないんだって。

     ……そう、思っていたんだ。

     恋だの愛だのと舞台で奏であげるには荷が重い。私はルイ14世でもマリー・アントワネットでもナポレオンでもないからな。生を歌い愛を語るなんてとてもじゃないけどできる器じゃないんだって──そう、思っていたんだ。

     先生、あのさ。

     誰かを恋い慕うことがこんなに心臓を脈打たせるなんて。

     私は知らなかったんだ。

  • 29二次元好きの匿名さん23/10/01(日) 22:30:48

    ***

    「フェスタ! ほら、なにをゆっくりしているの。早く行きましょう?」
    「いや先生こそ忙しねぇな。んな焦んなくてもドレス売り場は逃げやしないだろ? ったく……制服か勝負服でも問題ねぇって話だってのによ。勝負服はともかく制服は冠婚葬祭持ってこいの正装じゃねぇか」
    「それはそうだけれど、日本での記念パーティーだってドレスを着ている子がほとんどだったじゃない。それに由緒ある凱旋門賞の懇親会なのだからドレスコードは規定の一段階引き上げておくべきだわ」
    「つかこれから戦う相手と仲良しこよしの懇親会なんざ甘ったるくてやってられねぇな……ま、得られる情報はあるにこしたことはないが」
    「貴方たちにターフでの勝負服があるように、パーティーだって戦場なの。だったら当然……対戦相手になめられるわけにはいかないでしょう?」
    「……」
    「どうしたの? フェスタ」
    「いや。先生も随分と好戦的になったなって思っただけさ。……ったく。誰に似たんだか」
    「そうね、きっと、なにがあっても諦めずに戦い続けた誰かさんに似たんだと思うわ」
    「もとをただせばガキのころの私に食らいつきつづけた誰かさんのしつこさも根底にある気がするがね?」

  • 30二次元好きの匿名さん23/10/01(日) 22:31:01

    「ということでやってきたわよ、プランタン・オスマン。パリでも随一の老舗百貨店。今日はここで! フェスタに似合うドレスを探して探して探すことにします」
    「っても別に貸衣装でもよくねぇか? 手持ちは問題ねぇけどさ」
    「貸衣装だと色々気を遣わないといけないから面倒だって貴方なら思うと踏んでいたのだけれど。それに、帰国後にも何かと使えるし……使えないような結果、出すつもりじゃないでしょう?」
    「まぁな。それじゃ覚悟を決めて今日はアンタのマネキンになるよ。なんで女子ってのは他人を着飾らせるのが好きなんだろうな?」
    「あら、私みたいな年齢でも女子だなんて言ってくれるの? 随分と口達者なんだから――あ、見てフェスタ、あのドレス、とってもすてき。こっくりした臙脂色」
    「へぇ。返り血を浴びても平気そうな色だな」
    「もう。不穏なこと言わないの。……フェスタの勝負服にも使われている色ね。臙脂色、ガーネット……目が覚めるような赤ではないけれど、かといって渋すぎることもない。貴方の肌にも映えそうね」
    「……」
    「お気に召さない?」
    「いや……あんま首元が出るのはな……」
    「……貴方、勝負服のインナーをあれだけビリビリにしておいて、まさかデコルテラインの露出を気にしているの?」

  • 31二次元好きの匿名さん23/10/01(日) 22:31:17

    「気にするっつうか……自分の貧相さは自覚してるつもりだぜ? ゴルシやエルじゃあるまいし。敢えて見せびらかして行くもんじゃねぇだろうがよ」
    「それじゃあホルターネックのドレスでも探してみる? ……でも、ホルターネックだと甘くなりすぎてしまうと思うの。フェスタはどちらかというとぴりっとしたニュアンスの方が好きでしょう?」
    「ま、甘めはガラじゃねぇな」
    「ちなみにトレーナーさんの好みはどうなのフェスタ」
    「……アイツの好みとか関係ねぇだろうが」
    「でも折角ドレスを選ぶんだもの。……より好みだって思われるものを選びたいじゃない?」
    「……アイツ、多分、何でも似合うって言うし」
    「……あら。あらあら……」
    「ニヤつくなっつうの。そのアラで出汁取るぞ出汁」
    「スープ・ド・ポワソンでも作ってくれるの? フェスタがお料理作ってくれるなんてめずらしい! ぜひお願いしたいところね。……そういえばエッフェル塔にロマンチックな夜景が見られるレストランがあると聞いたわ。予約、いまから取れるかしら。トレーナーさんをお誘いして行ってきなさい。今夜にでも!」
    「あ~~~! ドレス選ぶんだろドレス! すぐそっちに方面に持ってくのはやめろって。大体レース前だぜ? フルコースなんて食ってられっか!」

  • 32二次元好きの匿名さん23/10/01(日) 22:31:31

    「先生、待たせたな。買ってきたぜ。……、……先生?」
    「……」
    「ウェディングドレスか」
    「……! び、びっくりした。心臓が止まってしまうかと思ったわ。普通に声、かけてくれたらいいのに」
    「アンタの心臓にはまだ動いてもらってねぇと困るんだ。これくらい耐えてくれ。……ドレス、着てぇの?」
    「いいえ。日本から一張羅を持ってきているのだもの。とっておきの色留袖。貴方を応援する私のための勝負服。なにも不足はないわ」
    「ふぅん。あのさ、……ウェディングドレスってのはさ、女の子のあこがれ、みたいなこと言うだろ」
    「フェスタは?」
    「私? ……。あのな、カマかけようったってそうは」
    「……あのね。フェスタのウェディングドレス姿、見たいなぁって、思ったの。どんなドレスが似合うかしら、って。やっぱりAラインかしら。ガラじゃないかもしれないけれど、プリンセスラインだってきっと似合うと思うわ。ヴェールの種類は? ヴァージンロードいっぱいに広がるヴェールなんて素敵よね。……貴方は、うっとうしいって、思ってしまうかもしれないけれど」
    「……」
    「貴方の妹さんや弟さんがフラワーガールやフラワーボーイをやるのかもしれないわね。ああでも中学生だと大きすぎるかしら。ふふ。お友だちもたくさん呼んで……きっと、幸せな結婚式になるわ。女の子のあこがれ、って言われていたとしても、フェスタがそうだとは限らないけれど」
    「先生」
    「なぁに?」
    「今日アンタがドレスを選んでくれたみたいにさ。……ウェディングドレス選び、付き合わないとは言わせねぇからな。……何件でも、何十件でも、ドレスショップに付き合わせてやる。だから」
    「……ねぇフェスタ、でもそれは本来、トレーナーさんの役目じゃない?」
    「そんなの私が言って聞かせ――」
    「……ふふ!」
    「あのなぁ……ほんっと……」
    「信じてるわ。フェスタ。私、いまよりもっと元気になって、体力もつけて、一日でも、一時間でも、一分でも、一秒でも長く、心臓を打ち鳴らし続けるから」
    「……うん」
    「だからちゃんとトレーナーさんのこと、落としなさい?」
    「……敵わねぇなぁ、アンタには」

  • 33二次元好きの匿名さん23/10/01(日) 22:31:54

    「つうか私のことはいいんだよ。私のことは。大体アレだ……私には結婚だとか……ウェディングドレスとか……ガラじゃねぇし」
    「今更取り繕っても遅い気もするけれど」
    「ほっとけ。……私が言いたかったのは、先生、アンタのことだ」
    「わたし?」
    「アンタの可愛い教え子の花嫁姿に思いを馳せるより先に、アンタ自身が着たいって思ったんじゃねえのかって」
    「……そうね……病院暮らしが長かったし、大きな病に罹ってしまったし……私にはとてもじゃないけど手が届かないかもしれない、とは思っているわね。あ、でもそれに対して拗ねたりだとか悲しんだりとか、そういうのじゃないの。私は、充分、奇跡のもとに生きている。貴方が見せてくれた希望を追いかけて、ここに立っている。だからね、これでいいの。そういう縁があれば私だって――貴方からサムシングボローを委ねてもらえる日が来るかもしれないし」
    「……」
    「ねえフェスタ、もしも、もしもよ?」
    「……ん」
    「もしもわたしが花婿さんを連れてきたら、貴方、どうする? この人と結婚することにしました、って」
    「……阪神レース場に連れてく」
    「あら」
    「芝2200メートルで私に勝ってもらう……ここ(ロンシャン)じゃないだけ温情だろ?」
    「ふふ、……そうね。フェスタ、貴方は、ここで勝ち鬨を上げるのだものね」
    「まだ日本の芝の方が走りやすいしな。それに――」
    「それに?」
    「……何としても勝ってもらうさ。どんな手段を使っても。……先生が選んだ相手なんだから」

  • 34二次元好きの匿名さん23/10/01(日) 22:32:39

    ***

     それは私の旅の終着点だった。
     幾千幾万と鼓動を鳴らし、吊橋を渡るような賭けをした。遠きフランス、パリの地で勝鬨をあげるただそのために、大切なひとたちの命を、人生を、さして広くもない腕に抱え込む。培ってきた力を、情を、想いを、それからちっぽけな祈りも、この身のすべて全身全霊を賭して──私はロンシャンのターフへと、一歩、脚をすすめる。

     先生、あのさ。
     このレースが終わった後のことなんて、正直考えたことはなかったんだ。
     貴方の生命も相棒の人生も私の生きた証も、すべてをここに懸けて、駆け抜ける。ただそれだけしか考えてなかったし、考える必要なんてないって思ってた。

     私が描く奇跡の物語はここでおしまい。ハッピーエンド。あとは野となれ山となれ。ヒリつきたがりの勝負師は、生を求めて荒野を彷徨うことになるんだって。

     先生、あのさ。
     恋だの愛だの似合わない私でも、もう少しだけ、未来を夢見ていいだろうか。

     スタンドから歓声が湧いている。
     一歩、二歩、三歩。ターフを踏みしめる。
     
     見上げた空はただ目映くて、私は、奇跡の向こうに走り出す。

  • 35いち◆xn7VzWEhyM23/10/01(日) 22:36:22

    おしまい。長い。


    >>16にて挿入したイラストは

    【クイズ】SS読んでる?UG|あにまん掲示板ここの掲示板に投稿されたSS・怪文書のファンアートを貼りますので、どの作品に宛てて描いたものか当ててみてください。前回https://bbs.animanch.com/board/2365682/bbs.animanch.com

    上記クイズにて描いていただいたものを使用させていただきました。

    顔が良すぎて貼るときに動揺しました。ここのために膨らませたといっても過言ではない


    本当はもう少しゆっくり書くつもりだったのに凱旋門賞に間に合わせなくてどうするよってなりました

    ここまで読んでくださった方がいらしたら感謝

    よい凱旋門賞ウィークエンドをお過ごしください!

  • 36二次元好きの匿名さん23/10/01(日) 22:37:25

    ウワーーーーーーーーーーッ!!!!!!!!!!!!
    可愛い!!!!!!!!!!!!!!!!!!!すごい!!!!!!!!!!!!!!!!!

  • 37二次元好きの匿名さん23/10/01(日) 22:37:47

    30レス以上にも及ぶSS・・・本当に素敵な物語をありがとう!

  • 38二次元好きの匿名さん23/10/01(日) 22:53:31

    素晴らしいSSをありがとうございました……!
    トレーナーへの初恋に初めての感情を知って心臓の鼓動を高鳴らせるナカヤマと、そんなナカヤマのことを大切に想っている先生の気の置けない仲だからこその軽快な話ぶりがとても心に刺さりました……!
    特にナカヤマがトレーナーにも先生にもクソデカ感情抱いていてとてもいい……!いいってなる……!!とてもいい……!ナカヤマのトレーナーと先生に対する独白が何回読んでもグッと来ます!
    また、ナカヤマのキャラエミュの精度の高さに感服いたします!これを読んでいる自分の頭の中でナカヤマが実際に動いていました……!
    語彙力のない長文失礼しました。本当に素晴らしかったです!ありがとうございました!

  • 39二次元好きの匿名さん23/10/01(日) 23:52:50

    キャラの精度も構成力も読みやすさもガチの一級品で本当にすごい……スルスルと入ってきて面白い……

    今回も素敵なssでした。とても可愛かったです。

  • 40二次元好きの匿名さん23/10/02(月) 00:24:42

    とても優しくて温かくて、希望に満ち溢れた素敵な物語をありがとうございました…!!!

  • 41二次元好きの匿名さん23/10/02(月) 01:24:26

    気ぶり先生概念、前スレからすごい好きで落ちたの少し残念に思ってたのでこうしてブラッシュアップされて更に甘酸っぱいSSになって再び読めたの本当に嬉しかったです。
    先生、あのさ。で始まる独白が随所に挟まれててフェスタの心情がより詳細に描写されてるの凄く凄い好きです。
    とても良いSSをありがとうございました!

  • 42二次元好きの匿名さん23/10/02(月) 02:39:32

    このレスは削除されています

  • 43二次元好きの匿名さん23/10/02(月) 07:31:20

    ワーッたくさん反応ありがとうございます……!
    また夕方以降確認させていただきます……感謝

  • 44二次元好きの匿名さん23/10/02(月) 19:01:51

    このレスは削除されています

  • 45いち◆xn7VzWEhyM23/10/02(月) 19:38:49

    >>36

    ウワーーーーーーーーーーーッ!!!

    長かったのに読んでくださりありがとうございました!


    >>37

    1000字以内30行以内……と呟きながら完成したSSを分割していく最中、あまりのレス数の多さに冷や汗が出ていました……読んでくださってありがとうございました!


    >>38

    語彙力がないなんてとんでもない!

    たくさん良いと思ってくださったところを書いていただけてとても嬉しいです……ナカヤマは基本的に懐の中に入れた相手にはクソデカ感情を抱くと確信してるので……

    エミュ練度高かったですか……? いつもちょっと甘くなりがちなのでそう言っていただけると大変嬉しいです! ありがとうございました!


    >>39

    ワーッすごくすごい嬉しいコメント、ありがとうございます……!

    読みやすさについては本当に……基本絨毯って読みづらいと思うのですが、読んだときに言葉が入ってきやすいようなリズムを心がけているので、それが生きてきていたらいいなと思ってます。

    ありがとうございました!


    >>40

    あばば、こちらこそ読んでいただきありがとうございました……!

    ああいうはぐれ者の吹きだまりにいたナカヤマだからこそ優しく暖かな世界にいてほしくて、あの世界で奇跡が起きたからこそ先生にもずっと生きていてほしい、そんな気持ちで書いてます!


    >>41

    あわっあのスレから見ていてくださったのですね……!

    本来SSスレではなかったのに書きはじめてしまって、場合が場合なら怒られても仕方がなかったと思うのに受け入れてくださったスレの方々には本当に感謝しております。

    カワイイナカヤマ、書けていたらいいなって思います。

    こちらこそありがとうございました!


    >>42

    その一言だけでもとってもとっても嬉しいです!

    長いし読みづらいしだったと思うのですが、読んでくださりありがとうございました!

  • 46いち◆xn7VzWEhyM23/10/03(火) 07:32:56
    【SS/トレウマ】自分で着付けが出来るナカヤマの話|あにまん掲示板ナカヤマとトレーナー(性別不問)が夏祭りに行く話です。bbs.animanch.com

    前回


    そういえばふらっと寄ったとあるスレで名指しこそされてはおりませんでしたが褒めていただいた気がします。

    勘違いかもしれませんが!

    ナカヤマのシナリオ、楽しまれていますように!


    次回はそろそろSSまとめをしたいところ。

    こたびもお読みいただきありがとうございました!

オススメ

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