【SS】シャリシャリ

  • 1二次元好きの匿名さん23/10/03(火) 22:25:30

    「おっ、奇遇だね、トレーナー。トレーナーも散歩?」
     
    「いや、買い物の帰り。シービーは散歩の帰りかい」
     
    「うん。山の野花を見に行った帰り」

     9月も後半に入り、真っ青な青空と盛り上がった入道雲から、澄んだ水色の空に小さな雲たちの集まりである鰯雲が空に広がるようになってきた。
     まだまだ日中は日差しが強いが、ひんやりとした冷たい風が拭き始めたこの頃。
     冷蔵庫が空っぽになりそうだったのと夕食のための買い物をした途中に、自分が担当するウマ娘ミスターシービーとばったりと遭遇した所だった。
     
     「野花か……。この時期だと彼岸花とかススキとか?」

     花に余り詳しい知識がない頭から捻り出した名前を出してみる。

    「うん、そんな所。他にも萩とか桔梗とかね」

    「へぇ~萩と桔梗も秋の花なのか」

     すらすらと花の名前を答えるシービーに素直に関心する。
     そういえば、以前、彼女に付いていったキャンプでも山に詳しそうな様子だったなと思い出す。

    「それで、キミは何を買い物したの?」

    「まぁ、普通に夕食の買い物だけど…。シービー、夕食は?」

     前にシービーに夕食を作ったことがある。それ以来、夕食を作ってほしいとせがまれ、作った夕食を何回か一緒に食べている現状である。その為、彼女に夕食のことを聞いてみた。

    「ん~今日は作りたい気分じゃないんだよね……。ねぇ、トレーナー、夕食を作ってもらっていいかな」
     
    「うん、いいよ。シービーは何が食べたい?和食?洋食?」

  • 2二次元好きの匿名さん23/10/03(火) 22:26:36

    夕食を頼む時、大抵シービーは片手で謝りながら頼んでくる。その姿はいつも自由奔放としている彼女とは違い、何だかんだか可愛らしい。

    「そうだな……。今日の気分は和食かな。トレーナー、和食がいいな」

    「分かった。ちょっと、食材が足りないから足りないものを買い物してから、行こうか」

    「ありがとう、トレーナー。今日楽しみが一つ増えたかな。それじゃあ、行こう」
     
     茜色に染まる空を背景に二人は肩を並べて、途中で食材を買いつつ、シービーの今日の散歩風景を様子を聞きながら、彼女の家へと向かっていった。




    「ごちそうさま。ふぅ……美味しかった。今日の料理はほっこりする味だったね」

    「喜んでもらったなら、なりよりだ。」
     
     シービーの舌に合ったようで、夕食は好評だった。和食を食べたいと言ったので、豚肉と里芋の甘辛炒め、水菜ときのこのサラダを作ったのだが、どれも美味しそうに食べてくれていた。
     1人の夕食は気楽でいいが、こうも眼の前で美味しく食べてくれて、なおをかつ味も褒めてもらえるから、作り甲斐があるというものだ。

  • 3二次元好きの匿名さん23/10/03(火) 22:27:22

    「それじゃあ、片付けようか」

    「トレーナー、片付け私がやるから、キミは座って待てって」

    「いや、俺もやるが……」

    「いいって、私がやるからさ。キミには夕食を作ってもらったし……ね?」
     
     そう言ってこちらに優しく微笑むシービー。彼女がこう言ってくるのは珍しい。

    「……分かった。それじゃあ、お言葉に甘えて」

    「うん、そうして」
     
     そう言うとシービーは二人分食器を片付け始めた。
     食器を片付けた後、しばらくキッチンでごそごそと動いたのかシービーはすぐに戻らず、何かした後、戻ってくる。

  • 4二次元好きの匿名さん23/10/03(火) 22:28:25

    「おまたせ」

     そう言って、キッチンから戻って来たシービーは手に持ったお皿とフォークを机に置く。
     お皿のうえには綺麗に皮が剥かれた、くし形のナシがのっていた。

    「梨?」

    「そっ、梨。今日、夕食を作ってくれたお礼。デザートに食べよう」

     シービーはフォークをこちらに渡してくて、それを受け取りながら、眼の前の梨について聞く。
     
    「梨が旬の季節とはいえ、よく買ってたな」

    「うーん、この前、散歩していたときに見つけてさ。美味しそうだから、買ったけど、帰った時には食べたい気分じゃなく
    なくなってさ。で、今はキミと一緒に食ようかなって気分」

     「そっか」

     今日の夕食でも、そうだけど、シービーは結構気分で何を食するか決める事が多い。
     彼女の気分の変わりようは猫のようなもので、気分が変わると、食べたいものがコロコロ変わる。
     その日その時に気になったものを食べたいと思うタイプなのだ。
     今出されている、梨もそんな感じで買ったらしい。

  • 5二次元好きの匿名さん23/10/03(火) 22:29:34

    「きれいに剥いているね」
     
     皿に入ったナシはどれも皮をきれいに剥いて、種もきちんと抜かれていた。

     「エースにさ、教えてもらったんだ」

     どうやら、シービーは彼女にナシの剝き方を教えてもらって食べたらしい。道理で、綺麗に剥けているわけだ。

    「じゃあ、トレーナー、食べよっか」
     
    「それじゃあ、ありがたく頂くよ」
     
     そう言って、二人そろってフォークを手に持って、梨の切り身を口に運ぶ。
     梨を噛むとシャリシャリと音とともに口の中にみずみずしい果肉が広がり、サッパリとした酸味と甘さもある果汁が溢て……。程よい冷たさが口の中で広がる。 

     「美味しい」

     旬なだけあって美味しい。

  • 6二次元好きの匿名さん23/10/03(火) 22:30:38

    「うーん、美味しいね。ナシは甘酸っぱくて爽やかでいいね」
     
     シービーも先程の夕食同様、満足そうな笑みを浮かべながら美味しいそうにナシを食べる。
     
    「トレーナー、改めて、今日はありがとう。キミと食事が出来て嬉しかった」

    「こちらこそ、梨をありがとう。シービーと夕食が取れて楽しかったよ」

     二人してお礼を言い合って、気恥ずかしさから少し笑ってしまう。

     こうやって何気ない時間を一緒に過ごせる相手がいると嬉しいものだと思いながら、残りのナシを口に放り込む。

     梨の果汁でほんのり甘さを含んだ口の中に広がる酸味は先程よりも美味しいような気がした。

  • 7二次元好きの匿名さん23/10/03(火) 22:35:38

    終わりです。シービーと秋の一幕を意識して、書きました。

  • 8二次元好きの匿名さん23/10/03(火) 22:38:12

    旬警察だ!梨の旬はもう過ぎているぞ!

    それはそれとしてとてもいいssだ!素晴らしい!

  • 9二次元好きの匿名さん23/10/03(火) 22:38:52

    梨を食べたくなってきた
    良きSS感謝する

  • 10二次元好きの匿名さん23/10/03(火) 22:42:08

    梨のように爽やかな甘さの良いSS
    ありがとう、よく寝れそう

  • 11二次元好きの匿名さん23/10/03(火) 22:45:18

    シビトレありがとう
    感謝 ただただ感謝

  • 12二次元好きの匿名さん23/10/03(火) 22:46:27

    CBとトレの日常の一幕が見れるの良い…良い…

  • 13二次元好きの匿名さん23/10/04(水) 00:56:13

    こういうのが良いんだこういうのが
    週末に梨買おう

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