【♂トレ】【SS】ファインとトレーナーがデートの約束を取り付ける

  • 1二次元好きの匿名さん21/12/26(日) 18:55:09

    ダイレクトイチャイチャ&尻切れとんぼ

  • 2二次元好きの匿名さん21/12/26(日) 18:55:20

    「トレーナー、私を水族館に連れて行って!」

    トレーナーが部屋に入るなり、ファインがじゃれつく子猫のように飛びついてきた。しなやかな肢体を抱き止め、腕の中の少女を見下ろす。楔石を嵌め込んだ様な双眸に光をいっぱいに取り込んで、甘えるように瞬きを繰り返しながら、ちょこんと首を傾げてトレーナーを見ていた。
    ゆらゆらと忙しなく尻尾を揺らす彼女の背をあやす様に叩いてやりながら、トレーナーも首を傾げる。唇の端に穏やかな苦笑を浮かべ、どうしたのかと尋ねる前に、再び彼女が言葉を紡ぐ。

    「シャカールがね、トレーナーさんと行ってきたんですって!写真も見せてもらったんだよ♪」

    そうして体を離したファインが差し出したスマートフォンの画面には、頭からサメに食われるシャカールのトレーナーが映っていたものだから、トレーナーは思わずギョッとして顔を寄せた。しかし、何ら深刻なことは無く、ただサメのぬいぐるみを頭から被っているだけであった。悠々と沢山のぬいぐるみに囲まれ、サメに捕食をされたままあぐらをかいている様はなんとも珍妙で滑稽である。それでも尚この画には一抹の哀愁が漂っているものだから不思議なもので、微笑ましくて可笑しくて、笑い出してしまった。

    「これ、シャカールが撮ったのか?」
    「うん。シャカールね、あんな風だけどトレーナーさんのこと大好きなんだよ。写真もいっぱい撮ってるもん♪」
    「あはは、そっか。……あの子こんな感じなんだ……。」

    トレーナーはふむ、と考え込み、少し時間をおいてまた笑う。身近な人間の知らぬ一面というものは、どれだけ平凡であっても愉快なものである。

    「お魚の写真も見せてくれたんだよ♪見て、ウミガメが泳いでるの。珊瑚礁の海をそのまま持ってきたみたいでしょう?それに、ほら!イルカも!」

  • 3二次元好きの匿名さん21/12/26(日) 18:55:56

    ファインがシャカールから分け与えられた思い出は、静止しているものに留まらなかった。万華鏡の森で生を営む極彩色の魚の群れ、優美な姿態で水を裂き笑うイルカ達。彼等は正しく、母なる海の生き証人であった。

    「ね、素敵でしょう?行こうよ~、トレーナ~。水族館行こうよ~。」

    ひとしきりプレゼンテーションを終えたファインは、再びトレーナーにひしと抱き付いた。その細腕からは想像もつかないような強さでトレーナーの胴をギュウと抱きしめると、背伸びをしてぐりぐりと頬を肩口に押し付ける。そうして弾んだ声で何度も行こう行こうと言い募った。齢よりも幾分幼く感じる声色と仕草はまた一段と愛らしい。そんなふうに甘えられては否やはない。可愛くて仕方がないのだ。

    「いいよ。行こうか。」

    丸っこい頭を撫ぜて答えると、パッと花開く様に頬を染めた。そのままピョンとうさぎの様に跳ねて、クルリと回り、目一杯の笑顔を顔中に溢れさせながら振り返る。なびく髪と広がるスカートが一瞬間静止したかのように感ぜられ、ふとルノワールの絵画が、繊細な冬の陽光を浴びて輝くファインの姿に重なる。その足取りは軽やかで、彼女の周囲に春のそよ風が吹き渡るようであった。

    「やったあ♪ねえ、いつにしよう?私はいつでも大丈夫だよっ。明日でも、明後日でも……。」

    口元で指を合わせ、双眸に星屑を散らしながら期待を隠しきれないといった様子でうずうずと体を揺らしているファインの姿に、トレーナーもまた心を躍らせていた。彼女と共に過ごせる時間が増えることを喜びこそすれ、厭う理由などある筈もない。ただ一つ懸念があるとするのならば、彼女を取り巻く環境であろう。アイルランドの殿下という立場である以上、常に護衛が同行している。勿論ある程度のプライバシーや自立性を尊重し、四六時中、というわけでは無いにしろ、万一の事態に備えて近くに控えてもらう必要があるのだ。

  • 4二次元好きの匿名さん21/12/26(日) 18:56:29

    「その前にSPさん達にも尋ねておかないと。色々と段取りが必要になってくるだろうし……」
    「それなら大丈夫だよっ。私から隊長にお願いしておいたから♪」
    「え。」
    「実は、以前から行きたいというお話はしていたの。だけど、最近スケジュールに余裕が無かったでしょう?だからトレーナーには中々言い出せなくって。お出かけは隊長も快く承諾してくださったから、安心して♪」

    思い立ったが吉日、ということであろう。しかし、トレーナーはどうもその物言いに引っ掛かるところがあった。それでは、まるで。

    「ファイン。」
    「はい。」
    「最初から俺が断らない、ということが分かっていたみたいだけど。」
    「あら。トレーナーが今まで私のお願いを聞いてくださらなかったことがあったかしら?」

    ファインは頬に指を当て、覗き込む様に身を屈めた。その瞳に可憐な艶めきがちらついているのを見ながら、トレーナーは敵わないなあとはにかんだ。彼女は室に咲いた白百合の様に無垢でありながら、時折こうして聡明な獣の眼差しを宿らせるのである。ファインの笑みは天使の羽にでも包まれているかのような心地よさを抱かせると同時に、よく研ぎ澄まされた硝子のナイフの切っ先で擽られる様にチクリと痛みを与える。不快ではない苦しさというのは、彼女に出会って初めて味わった感覚であった。

    「ファインは全部お見通しなんだね。」
    「それはお互いさまでしょう?トレーナーはいつも、私が何も言わなくたってお願いを叶えてくれるもの。」
    「そうかなぁ。」
    「そうなのっ。私の日常を、トレーナーがもっともっと素敵なものにしてくれるんだから……、」

  • 5二次元好きの匿名さん21/12/26(日) 18:57:05

    ファインは目を閉じて両手を胸に当てると、祈るように微笑んだ。どこまでも清らかで、この世の穢れを微塵も知らぬ純真な乙女の様であった。しかし、その内に秘められた情熱が火花の如き熱と眩しさに溢れている事を、トレーナーは知っている。だからこそ、彼女を愛し、憧れて止まないのである。
    トレーナーはファインの頭に手を乗せ、その帯の様な髪をゆっくりと撫ぜた。よく手入れを施された髪を結わえている様は、目も綾な緯錦を思わせる。頬の横で揺れる髪を梳かすと、ファインは目を細めてその手のひらに擦り寄り、自らの華奢な手を重ね合わせる。そのまま、少しだけ背伸びをして、トレーナーの頬に口づけた。

    「ファイン。」
    「ごめんなさい。怒らないで。」
    「怒りはしないよ。ただ、困っているだけだ。」
    「私にキスされるのは嫌?」
    「……。」

    答えられなかった。頷くのも、首を振るのも、いずれも正解ではないような気がして、瞳をうろつかせた。
    重ね合わせた肌と肌を通して、互いの心臓の音が聞こえるようであった。ファインの頬はほんのりと桜色に染まり、次第に愁いを帯びた薔薇色へと移り変わっていく。彼女の唇が小さく震える度に、その息遣いがこちらにまで伝わってくるようであった。
    暫しの沈黙。ファインはもう一度瞼を伏せる。控えめなアイシャドウがキラキラと光り、トレーナーの眼前で星が瞬くかのようであった。そうして鼻先を首筋に埋めて、息を揺らす。

    「……ふふ。いい匂い。」
    「……。」
    「ねえ、トレーナー。もっと強く抱きしめて。私達、これ以上深くは繋がれない。」

  • 6二次元好きの匿名さん21/12/26(日) 18:57:57

    桜の花弁に飾られた細い指先がトレーナーの背に食い込み、シャツに皺を作った。呼吸が、鼓動が、血の流れる音でさえもが鼓膜を揺らしているような気さえした。トレーナーは彼女の肩に手を回してそっと抱き寄せた。水の精霊を抱いているような気分だった。ウマ娘と言えど、腕の中で小刻みに震える身体は、やはり柔らかく脆い少女のものであった。トレーナーはファインの背中をさすった。何度も、何度も。ありったけのぬくもりを確かめるように。
    ファインの髪が、首筋をくすぐった。直後、痛みが脳天に抜けた。呻きを上げる間もなく、少女の肉体が離れていった。ファインの唇はさくらんぼのように赤く、みずみずしく彩られている。むき出しの首筋がいやに熱く、じくじくと痛み、トレーナーはその箇所に手を這わせた。ぬるりと肌の上を滑った手には、水を含んだ絵の具を掠れた筆で擦り付けたような血の跡があった。

    「ファイン。」
    「ごめんなさい。」
    「……。」
    「……ごめんなさい。」
    「誰かに教えてもらったのか。」
    「……ううん。私にも、わからないの。」
    「……そうか。」

    言いつつ、トレーナーは汚れていない方の手でファインの唇を拭った。しっとりと潤んだ唇は、少し爪を立てただけでぷつりと穴が開いてしまいそうなほど柔らかい。この美しい少女の唇が、己の血に汚されているのは耐えられなかった。

  • 7二次元好きの匿名さん21/12/26(日) 18:58:21

    「トレーナー。」
    「ん?」
    「私、悪い子になってしまったみたい。」
    「そうだね。」
    「どうしたらいいかしら?」
    「悪い子で居てくれて構わないよ。」
    「……。」
    「でも、痛いのは嫌かな。」
    「ご、ごめんなさい。もうしません。」
    「怒ってないよ。」

    トレーナーは宥める様にファインの腕を擦り、こつ、と額を突き合わせた。互いの吐息が混じり合い、瞳の奥底までもが見通せそうであった。蕩けた玻璃の煌めきを湛える彼女の目の淵を、指の背で拭ってやりながら

    「水族館、楽しみだね。」

    と囁いた。ファインは口元を綻ばせて、こくりと小さく頷いた。

  • 8二次元好きの匿名さん21/12/26(日) 18:59:11
  • 9二次元好きの匿名さん21/12/26(日) 19:00:24

    悪い子ファイン良い…

  • 10二次元好きの匿名さん21/12/26(日) 19:02:16

    おおう、湿度が高い

    シャカールのトレーナー相変わらず面白いヤツ…

  • 11二次元好きの匿名さん21/12/26(日) 19:03:40

    殿下〜

  • 12二次元好きの匿名さん21/12/26(日) 19:07:12

    官能小説やんけ〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜!!、!!!、!

  • 13二次元好きの匿名さん21/12/26(日) 19:10:32

    首筋噛みつきファインネタ妄想はしてたけどこんな高純度のぶつけられたらナニモイウコトハナイ
    あんた本当にすげぇよ

  • 14二次元好きの匿名さん21/12/26(日) 19:14:56

    エロくないけどエロい なんて言ったらいいんだ

  • 15二次元好きの匿名さん21/12/26(日) 19:16:51

    凄まじい文章力だ…圧倒されましたわ…

  • 16二次元好きの匿名さん21/12/26(日) 19:51:39

    >「ねえ、トレーナー。もっと強く抱きしめて。私達、これ以上深くは繋がれない。」


    えっち

  • 17二次元好きの匿名さん21/12/26(日) 19:54:03

    エ゛ェッア゛ァ…コォゥッ…フン゛ッ……

  • 18二次元好きの匿名さん21/12/26(日) 19:56:09

    うっわ……重力波生まれてるじゃん……

  • 19二次元好きの匿名さん21/12/26(日) 20:00:40

    なんだこいつ、文豪か?

  • 20二次元好きの匿名さん21/12/26(日) 20:09:46

    自分のものだというマーキングはかかり過ぎではないでしょうか

  • 21二次元好きの匿名さん21/12/26(日) 21:39:14

    距離が近いよお

  • 22二次元好きの匿名さん21/12/26(日) 22:28:38

    オネダリはしてみるけど最初から断られるつもりは毛頭ない殿下…良い…

  • 23二次元好きの匿名さん21/12/26(日) 22:45:09

    エッッッッッッッッ!!!!!!

  • 24二次元好きの匿名さん21/12/26(日) 23:07:11

    最高すぎる…

  • 25二次元好きの匿名さん21/12/27(月) 08:39:04

    湿度たかーい

    ごちそうさまでした。ありがとうございます。

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