- 1二次元好きの匿名さん23/10/05(木) 18:56:00
東西新聞社の栗田ゆう子です!
文化部で究極のメニュー作りを担当する私と山岡さんは、最近人気の「ニューウェイブラーメン」の特集記事を作ることになり、
都内でも屈指の人気店「らあめん清流房」にお邪魔しました!
栗田「うわぁ、すごい行列ですね山岡さん!」
山岡「ああ、近年この手のラーメンは凄い人気だからね。日本人が行列好きってのもあるけど、ラーメン屋は回転率も早いから並ぶのもそれほど苦じゃないんだろう」
栗田「でも、ラーメンは今や日本の国民食ですし、究極のメニューとはちょっと違うような……?」
山岡「そうでもないさ。塩ラーメンで有名な塩匠堂を知ってるかい? あそこは化学調味料とか一切の夾雑物を廃して、本物の素材だけを使った塩ラーメンが食べられるお店だ」
栗田「雑誌の記事で読んだことあります! 店主の永友さんは和食の道で修行されたことがあるとかで」
山岡「今までのラーメンはきみの言う通り戦後に広まった大衆料理で、お世辞にも素材は良いものを使ってないし、化学調味料をたっぷりと使った酷いものが多かった。けど、近年はそうした風潮から脱却しようと、本物の食材を使った店が増え始めてるんだ」
栗田「このらあめん清流房もそうですよね。なんでも鮎の煮干しで出汁を取っているそうですよ」
山岡「鮎はそのまま焼いたり天ぷらにして食うのも旨いが、出汁を取って野菜なんかを炊くと豊かな風味が溢れるんだ。けれど、ラーメンのスープに毎日使うとなるとかなりの量が必要だし、なんとも贅沢なラーメンだな」
栗田「ええ、食べるのが今から楽しみですね!」 - 2二次元好きの匿名さん23/10/05(木) 18:59:25
イラッシャイマセー!
栗田「メニューは……濃口と淡口があるみたいですね。お客さんはみんな、濃口を食べてるからそっちが人気なのかしら?」
山岡「折角二人で来たんだから、両方頼んでみようか? きみはどっちにする?」
栗田「それじゃあ、私は淡口で! どんなものなのか見てみたいわ」
山岡「よし、俺は濃口にしよう」
山岡「しかし……」
客 「うーん、鮎の香が素晴らしいなぁ」
客 「この鮎の煮干しの風味がたっぷり効いた濃口らあめんは最高だね!」
栗田「山岡さん、どうしたんですか?」
山岡「いや……」
店員「ラーメン二丁! 濃口と淡口おまちどうさまぁ!」
栗田「うわぁ! これがニューウェイブラーメンなのね!」
山岡「………」
栗田「いただきます!」
- 3二次元好きの匿名さん23/10/05(木) 19:02:50
栗田「凄いわぁ! 鮎の煮干しから来る清涼風味がスープの軸になって、そこに鶏や豚、野菜の旨味も感じる」
山岡「きっと鶏ガラの鶏や豚骨の豚もかなり良い物を使ってるんだろう。野菜もきっと有機野菜だ」
山岡「……しかし、こいつは。すまないが、きみの方のスープも一口くれないか?」
栗田「じゃあ、私も濃口のスープを……」
栗田「…………山岡さん、これ」
山岡「…………」
店員「いかがですか? 当店自慢の濃口らあめんは? 鮎の煮干しの風味と、牛脂のコッテリ感が絶妙に調和した――」
山岡「鮎の風味だって? このラーメンのどこにそんな物があるっていうんだ!」
店員「え? え?(アセアセ)」
山岡「折角、鮎の煮干しを使っているのに淡口と違って濃口は牛脂で上げたにんにくの香りが鮎の風味を吹き飛ばしてる! これのどこが鮎を使ったラーメンなんだ!」
芹沢「…………」
店員「あ、社長!」
- 4二次元好きの匿名さん23/10/05(木) 19:15:25
芹沢「東西新聞社の方ですね? てっきり取材は昼営業が終わってからと思ってましたが……」
栗田「あ、はい。すみません、実際に並んで食べた方が生の感想を書けるんじゃないかって」
芹沢「なるほど……しかし、今はまだ営業中で他のお客様もいらっしゃいます。申し訳ありませんが、ラーメンについての論評は事務所のほうで」
栗田「わ、分かりました」
山岡「…………フンッ」
ガラガラガラ
イラッシャイマセー!
海原「ぬぅ……!?」
山岡「なっ……」
栗田「か、海原雄山……!」
芹沢「これは海原先生! ご来店ありがとうございます」
海原「午後からの対談企画の前に、らあめんを一杯食べようと思ってな。淡口を頼む」
栗田「あの海原雄山がラーメン屋さんに来るだなんて……」
- 5二次元好きの匿名さん23/10/05(木) 19:28:55
事務所
芹沢「さて……東西新聞社の方々は何やら濃口らあめんがお気に召さなかったご様子で?」
山岡「その前に、なんでこの男も同席してるんだ」
栗田「や、山岡さん!」
芹沢「この男……? ああ、海原先生とは帝都新聞社さんの企画で対談を行うことになっていましてね。私も多忙の身、東西新聞社さんの取材はそう長いものではないだろうと思って同じ日に設定したのですが、なにか問題ございましたか?」
栗田「い、いえ、そんなことは……」
芹沢「では、取材の方に移りましょうか。いかがでしたか? 当店自慢のラーメンは」
栗田「えっと……淡口の方は鮎の煮干しの風味が豊かで、あの清涼な味わいは素晴らしかったと思います。でも……」
山岡「濃口は、牛脂で揚げたニンニクの香りが強すぎて折角の鮎の煮干しが台無しになっている! あれじゃあ、只の牛脂ニンニクラーメンじゃないか!」
芹沢「なるほど」
山岡「ありもしない鮎の煮干しの風味をアピールして客を騙すなんて、フェアなやり方じゃないぜ」
芹沢「騙す……? 滅相もない! 濃口のほうだって鮎の煮干しは使用していますよ」
山岡「だが、現にあのラーメンじゃ鮎の風味は」
芹沢「消し飛ぶでしょうね。鮎の煮干しの繊細な香りなど、欠片もしないでしょう」
栗田「それを分かって提供されてるんですか……!?」
- 6二次元好きの匿名さん23/10/05(木) 19:44:36
芹沢「ええ、してますよ。濃口にも鮎の煮干しを使っているのは事実ですし、お客様は『鮎の煮干しの風味が美味しい』と仰っていますからね」
栗田「そ、そう言えば……」
客 『うーん、鮎の香が素晴らしいなぁ』
客 『この鮎の煮干しの風味がたっぷり効いた濃口らあめんは最高だね!』
山岡「だからといって、そんな嘘っぱちのラーメンを出さなくても淡口らあめん一杯で勝負てきたはずだ」
芹沢「……と、言いますと?」
山岡「あんたの作る淡口らあめん、スープしか飲んでないがあれは素晴らしいものだった。鮎の煮干しが鶏ガラや豚骨、有機野菜と調和し、見事な味を引き出している」
山岡「あれだけの味を生み出せるのに、どうしてまがい物の濃口なんかを見せに出すんだ!」
芹沢「売れなかったからですよ」
栗田「えっ……?」
芹沢「淡口らあめんをお褒めいただき感謝します。あれは確かに私の理想のラーメン。本物の食材だけを使った最高の一杯です」
芹沢「でも、売れなかった。近所の低レベルなチェーン店には行列ができているのに、うちのラーメンは不味いと言われました」
栗田「そんなこと……きっと、たまたま酷いお客が続いただけで」
山岡「そうだ、本物の味を出し続ければ今よりもずっと繁盛したはずだ」
- 7二次元好きの匿名さん23/10/05(木) 19:47:09
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- 8二次元好きの匿名さん23/10/05(木) 19:47:59
海原「フッ……フハハハハハハハッ!」
芹沢「か、海原先生?」
海原「いや、これは失敬。この男があまりに『商売』を分かっていないので、馬鹿馬鹿しくなりましてな」
山岡「なんだと! どういう意味だ!?」
海原「士郎、お前の言うことは料理の上では正しいがそれは正しいだけの戯言に過ぎないということだ」
山岡「なにっ!?」
海原「たとえば私や遠山先生の焼き物を見て、『これはとてもいいものだ』と即座に判断できる人間がどれだけいると思う?」
山岡「そ、それは……それがなんの関係があるって言うんだ!」
海原「料理もそれと同じだということだ。世の中にハンバーガーや、このらあめん清流房よりもずっと低俗なチェーン店が溢れているように」
海原「日本人と言えど、『本物の味』を分かっている者などほんの一握りしかいないということだ!」
山岡「!?!?」
栗田「そんな! いくらなんでもそれはおかしいと思います。いいものと悪いものの区別ぐらい、誰だって」
芹沢「しかし、現にチェーン店は繁盛している。化学調味料のたっぷり入ったラーメンや餃子を美味しいといって、満足できる人は沢山いるんですよ」
海原「士郎、お前は京都の料亭の多くが何故『一見さんお断り』なのか考えたことがあるか?」
山岡「えっ……?」
- 9二次元好きの匿名さん23/10/05(木) 19:54:08
海原「私の美食倶楽部が会員制であるように、美味しいものを分かる人間というのは極めて限られている。だからこそ厳しい基準を設けて、味の分かる人だけに美食を提供しているのだ」
海原「しかし、料亭ならまだしも市井のラーメン屋ではそういうわけにもいかない。商売を考えたとき、『味の分からん人間』にも提供する商品は必要だ」
栗田「そのための濃口らあめん……」
芹沢「ええ、勿論本物をご理解いただけない方々への商品と言っても手を抜くつもりはありません。濃口にも化学調味料を使っていませんし、鮎の風味はせずとも十分に美味しいラーメンだと自負しております」
山岡「それは……確かに」
海原「驕るな士郎! お前は少し料理ができる程度で、店を構えたこともないのに店や店主のことを分かった気になっていた」
山岡「ぐっ……!」
海原「濃口らあめんを非難する暇があったら、屋台でも引いてラーメン屋の苦労を味わってみろ!」
芹沢「どうやら、取材はまたの機会の方が良さそうですね。海原先生、少し早いですが対談場所のホテルに移動しましょうか?」
海原「ええ、芹沢さん。私の車でお送りしますよ」
バタン!
栗田「山岡さん……」
山岡「……あの男の言うとおりだ。俺は本物の食材を使えば、誰だって旨いと言うはずだと思いこんでいた」
山岡「けど、決していい食材を使っているわけではない駅の立ち食いそば屋が繁盛しているように、世の中、食材や味がすべてではないと分かっていたはずなのに」
- 10二次元好きの匿名さん23/10/05(木) 20:10:27
濃口らぁめんのややこしいところはこれなんだよな
鮎の香りがしないだけで決して手を抜いてるわけでもマズイ訳でもない - 11二次元好きの匿名さん23/10/05(木) 20:19:43
- 12二次元好きの匿名さん23/10/05(木) 20:28:27
雄山も全然売れない時期があって大衆に迎合しようとした。
でも奥さんがそうなったら貧乏暮らしでいいじゃないですかで突き抜けた。
雄山も自分が売れないままで終わってしまう事は覚悟したことあるだろうしな。 - 13二次元好きの匿名さん23/10/05(木) 20:29:58
山岡なんだかんだでお坊っちゃんで貧乏暮らしした事ないだろうし。
雄山の家をでたあとの学生の貧乏暮らしとガチの貧困は別だろうし - 14二次元好きの匿名さん23/10/05(木) 20:49:33
海原家を飛び出したあとは唐山陶人の家に住み着いてたしなぁ
- 15二次元好きの匿名さん23/10/05(木) 21:56:42
そして舌がいい人の濃口の評価は大抵『鮎の香りが消し飛んでるor微かにしか香らない』っていう
- 16二次元好きの匿名さん23/10/05(木) 22:13:31
ラーメン対決やハンバーガーの話を見るに改善案を作ってそれがウケて解決になるのかな?作者が美味しんぼの人なら
- 17二次元好きの匿名さん23/10/05(木) 22:53:22
- 18二次元好きの匿名さん23/10/05(木) 22:58:48
- 19二次元好きの匿名さん23/10/05(木) 23:03:56
- 20二次元好きの匿名さん23/10/05(木) 23:05:39
①こってり感だすための牛脂をネギ油に変えて鮎の風味を活かす。
②醤油ダレに鮎をたっぷり使ってこってり感と鮎を使う意味を際立たせる。
①は期間限定メニュー
②は売り出す戦略とかを考えて効果的なタイミングにした
- 21二次元好きの匿名さん23/10/06(金) 03:41:18
濃口らーめん解は淡口を理解できる人が増えてきた土壌もあって作り出せたものだから
たぶん当時だと理解されなくてダメだったと思うわ - 22二次元好きの匿名さん23/10/06(金) 13:18:11
この店が流行らないのは本物の味を出してないからだ! が美味しんぼの世界だけど、
本物を出したら大衆に理解されませんでしたがらーめん発見伝の世界 - 23二次元好きの匿名さん23/10/06(金) 13:20:53
対決してる時期の雄山が言うかなあ…?
- 24二次元好きの匿名さん23/10/06(金) 13:24:46
山岡もここまで喧嘩腰にならんぞ
店を出てからぶつくさ文句を言うくらいで
このレベルなら店員に直接文句は言わない - 25二次元好きの匿名さん23/10/06(金) 13:25:43
取材相手だからね
- 26二次元好きの匿名さん23/10/06(金) 13:35:10
雄山とか山岡が濃口認める論の人は
今の熟成乾麺でもほぼ同じことをやってるわけだけど(崇高な目的のために詐欺ギリギリの意図的な誤認)
それを認めると思ってるのかなあ? - 27二次元好きの匿名さん23/10/06(金) 13:36:24
- 28二次元好きの匿名さん23/10/06(金) 13:38:37
雄山が本物が認められないからって姑息なフェイクを褒めるわけないだろ。それも『本物のラーメン屋』なんて名乗ってる相手に対して。
「本物のラーメンなどと名乗っておいて実態は題目と中身の釣り合わない偽物で客を騙すとは!所詮は戦争の後の代用品……フェイクとして生まれた大衆食、偽物であることこそが本質ということか!」 - 29二次元好きの匿名さん23/10/06(金) 13:39:36
- 30二次元好きの匿名さん23/10/06(金) 14:47:37
- 31二次元好きの匿名さん23/10/06(金) 14:58:10
- 32二次元好きの匿名さん23/10/06(金) 15:06:53
- 33二次元好きの匿名さん23/10/06(金) 15:14:19
そこまで一方的に断言できる根拠やソースあるんか……?
- 34二次元好きの匿名さん23/10/06(金) 15:18:53
どうせないぞ あるやつは真っ先にあげるもんだからな
- 35二次元好きの匿名さん23/10/06(金) 20:12:30
それが上記の悪い客が続いただけなのか時代の発展なのかわからんのがまたややこしい