- 1二次元好きの匿名さん23/10/09(月) 12:46:50
え? これを、私に?
……ありがとうございます。大切にしますね。
見てください、マスター。
先程、村の子ども達から本を読んだお礼として花の冠を貰ったんです。
少し歪な仕上がりですが、一生懸命に作ってくれたというのがわかりますね。
大きさも……ほら。ちゃんと私の頭に合わせてくれたようで。
……どうでしょうか? 似合いますか?
なんて、冗談です。こういうの私に合いませんよね。……でも、嬉しかったのでついはしゃいでしまった。そんなトネリコでした。
……え? 似合っている? 可愛い……?
――――――ッ。
…………本当に、裏も思惑もなく、すぐそんなことを口にするのですから、貴方は……。
でも、ありがとうございます。そう言われてとても嬉しいです。
……うん、本当に嬉しいよ。
貴方にも評価されたことですし、このままでは枯れてしまうだけに勿体ないですね。魔術を使って保存するとしましょう。
想いが詰まったものが崩れるのは悲しくなってしまいますから……。 - 2二次元好きの匿名さん23/10/09(月) 12:47:38
どうしましたか、マスター?
感謝の品が珍しいのか、ですか。
そうですね、雨の国でのことを抜かすのなら、救世の旅をしている時に感謝の言葉を受けたことがないと言えば嘘になります。
……『彼女』は感謝の言葉をちゃんと言ってくれましたし、その証を残そうともしてくれました。ただ、あまりに忍びなかったのでそっちの方は断りましたが。
……あ、すみません。これはこちらの話です。
コホン。ともかく、そういう訳でこういう形での贈り物というのは久しぶりなのです。
うん? どうしましたか、マスター?
ここで待っているように? 何故……て、もう行っちゃった。
ああ言われた以上、待つしかないですね。幸い、村の中は安全なようですし、マスターも村の外に行く気配はないようす。
…………本当に一体どうしたのでしょう。 - 3二次元好きの匿名さん23/10/09(月) 12:48:40
…………ようやく戻って来ましたね。
かれこれ一時間くらい待たされたのですが?
いえ、本を読んだり、子ども達と談笑したりしていたので退屈ではありませんでしたが、いきなり放り出された身になってください。
寂しかったのか? そんなことは……いえ、濁すのはダメですね。特に貴方は鈍感ですから、キッチリと言いましょう。
はい、寂しかったです。そんな思いを私にさせる程の要件とは何だったのですか?
説明を求めます。
……はあ? 『花冠を見てたらちょっと思い浮かんだ。魔術で保管するならついでにと思って急いで作ってきた』と。
なんのことでしょう……手を出すように? はい。
これは…………花の指輪、ですか……。
器用に作りましたね。サイズ? あ、ちゃんと合いますね、中指には特に。花で作られているから多少の緩さはありますが、私の指には合います。
……えーと……何故これを作ってきたのですか?
『花冠が似合っていたから、王様なら指輪も欲しいと思って』
王冠はわかりますが何故指輪が王を象徴すると――ああ、なるほど。
話を聞いただけですが、貴方にとって最も印象の残ってる王とは、やはり『彼』なのですね……。ですから、その象徴たる指輪を思い出して私に……。
……突発的にしては重くない? - 4二次元好きの匿名さん23/10/09(月) 12:50:26
信頼の証? ……そうですか。それなら、まあ、無碍にするのもあれですし……はい、確かに受け取りました。
ふふ、花の王冠と指輪だと威厳はないね。
うん? でも、親しみはある? なら、よかった……のかな?
それと、『冬の冠よりは似合っている』って。
……確かに、同じ王冠なら冷たいのより、人の温かさを感じれる方がいいかな。
さながら『春の冠』とも言うべきかもしれませんね。
王位なんて厳かなものはなく、権力を振り翳すことはせず、でも陽だまりのような温かさを与えるような……そんな優しい王様の冠。
そう考えたら、私には勿体ないかな……。
『そういった意味でも似合っていると思う』
そう……なのかなぁ。
自信はないけど、貴方が言うのならそうなのでしょう。
……もう、普段は猪だなんだって揶揄するくせに、こういう時だけはしないんだから。
改めて、ありがとうございます、マスター。花冠同様、こちらも大切にしますね。 - 5二次元好きの匿名さん23/10/09(月) 12:52:16
蛇足
さて、枯れる前なのは確かにそうなのですが、できる限り早く保存した方がいいですよね。
しかし、本当に久しぶりだな……こういうの……。
それにしても……指輪、ですか。
中指用と言ってましたけど…………あ、やっぱり薬指とかにも入りますね、当たり前ですけど。
――――っ!?
……うわー……何してるんだろう、私。
こういう感性はあの頃のままなのかなぁ……。もっと成長したら変わるんでしょうか……?
知りたいような、知りたくないような……。
と、とにかく今一人でよかった。こんなところ他の人には流石に見られ――
「ビビッときたんだわ!!」
え!? トトロット!?
「あれ? トネリコ? なーんか今ボクの花嫁センサーに反応があったような気がしたんだけど」
き、気の所為じゃないかな……。 - 6二次元好きの匿名さん23/10/09(月) 12:53:36
「んー……確かに感じたと思ったんだけどなあ……ん? トネリコ、その手にあるのって?」
ああ、はい。花の冠と指輪ですよ。今日貰ってきたんです。
「おー、いいじゃんいいじゃん! ねぇねぇ、被って、指にはめて。絶対トネリコに似合うって!」
ふふ……。
「? どうしたの?」
いえ、似たようなこと今日言われたので、それを思い出して。
「へー、見る目あるじゃん。あ、それ、もしかしてマスター?」
あはは、それは秘密ということで。
「えー……。でも、ま、いっか。トネリコ嬉しそうだし」
え……そう見える?
「うんうん、見てるこっちもつられて嬉しくなる程にね」
…………そうですね。今日の一件もそうですが、貴女とまたこうして会話ができるのも嬉しいと感じる要因の一つなのでしょう。
違った在り方とはいえ、こうしてまた言葉を交わせるのは素直に嬉しく、喜ばしい。
「なんだよ〜いきなり〜。よくわからないけど、ボクもトネリコと話すのは好きだぜ。あ、そうだ、時間あるならこれから一緒にアフタヌーンキメようぜ。それで、今日何があったか話して欲しいんだわ」
はい、喜んで。
ではまず、お茶の用意から――。 - 7二次元好きの匿名さん23/10/09(月) 13:06:42
毎度のことながらトネリコめっちゃ可愛い!!
ありがとうございました!! - 8二次元好きの匿名さん23/10/09(月) 13:12:37
またあなた様か
尊い