- 1二次元好きの匿名さん23/10/12(木) 18:08:41
- 2123/10/12(木) 18:15:33
幻想文学やホラーが結構好きなので、『日本怪奇小説傑作集1~3』までをまずは紹介していく。
第1巻
「茶碗の中」小泉八雲
お茶碗の中に知らん男の顔が映ったけど呑み込んだら、後でそれと同じ顔をした男が家にやって来た…って話
八雲先生が「こういう不思議なお話があったから紹介するよ!でも途中で終わってるよ!自分でオチを付けてもいいけどこれもこれで面白かったからそのまま載せるね!」っていうなかなか豪快なお話
雰囲気を楽しむなら確かに面白い作品。でもとにかくオチがないので物足りない人は物足りないだろうし「だから何?」ってなる話 - 3123/10/12(木) 18:20:24
「海異記」泉鏡花
漁師の夫の帰りを待つ奥さんの家に、怪しいお坊さんがやって来る。ご飯を恵んでもらいに来たのかと思った奥さんがおにぎりをあげようとするけど、お坊さんが「くれ」と言ったのは自分の産んだばかりの娘で……という話
これも短いお話で、しかも怪談なだけあって後味の悲しい話。お坊さんの正体が何かもいまいち分からないし、もしかすると全ては不安のあまりおかしくなった奥さんの幻覚だったのかもしれない
泉鏡花先生らしい、綺麗だけど現代だとかなり読みにくい文章。しんみりとさせるお話 - 4123/10/12(木) 18:25:08
「蛇」夏目漱石
叔父さんが川の中に降りて行って捕まえたのは蛇だった。それを叔父さんが向こう岸に投げると、蛇が叔父さんの声で「覚えていろ」と言って消えて行った…というだけのお話
なんと3ページしかない。でも短いながらちゃんと不気味で良い雰囲気のお話 - 5123/10/12(木) 18:35:29
「蛇」森鴎外
森鴎外の文章=読みにくい、っていうイメージだったけどこれは割と読める話だった。「己」が立ち寄った家の主人から聞いた、彼の奇妙な奥さんの話
その奥さんは「道徳」というものの存在を一切認めない人で、「この世に真の善人などいない」と主張して譲らず、遂に気がおかしくなってしまった…というだけではあるけど、「もうこれからの人間には(特に女)今まで当たり前に思ってきた道徳は通じなくなるかも」っていう予感を描いたちょっと独特な話 - 6123/10/12(木) 18:41:49
「悪魔の舌」村山槐多
若くしてなくなった画家の描いた小説。谷崎潤一郎的な耽美なお話
何を食べても美味しいと思えない男が悪食を極めた結果、本当に食欲をそそるのは「人肉」だけだった。遂に男は美少年を襲ってその肉を食べてしまうが、美少年の正体は…という話
どうも村山さんには美少年好みがあったらしく、作者の性癖が滲んでる。 - 7123/10/12(木) 18:49:13
「人面疽」谷崎潤一郎
THE・谷崎潤一郎っていう話
百合枝という女優が、自分が出演した覚えのない映画が自分の作品として出回っているという話を聞く。フィルムを確認すると、それは遊女に扮した自分の膝に、むごい振り方をした乞食の男の顔が浮かんできて苦しめるという内容で……
執着した女に酷い振られ方をした男が痣となってその女の体を蝕む…までは怪談として他の作者も書きそうだけど、痣が濃くなればなるほどその遊女の淫蕩ぶりが増していく…と言うふうに描いたのは流石谷崎先生っていう感じ - 8123/10/12(木) 19:03:35
「黄夫人の手」大泉黒石
正直よく分からん……。どんなものも盗まずにはいられない女の手が、女の死後も動いて盗みを働こうとする話
キャラクターは今読んでも面白いけど、ちょっと冗長に感じた - 9123/10/12(木) 19:07:22
「妙な話」芥川龍之介
赤い帽子をかぶった男が、出征した夫の帰りを待つ妻に向かって夫の予言をして消えてしまう…と言う話
ぶっちゃけそれだけの話だけど、芥川先生らしいお洒落な文章 - 10二次元好きの匿名さん23/10/12(木) 19:18:27
保守
- 11123/10/13(金) 00:49:57
「尽頭子」内田百閒
なんともシュールで、でもじわじわ不気味な話
まず主人公が「誰かの妾だと分かってる」女の所に通うと、よりにもよってそこの主人が帰って来る。「皿鉢小鉢てんりしんり」ってわけのわからない言葉を呟きながら、主人公を新しい弟子だと嘘をついて「尽頭子」という名前をその旦那から貰う…っていう高熱の日に見る夢みたいな内容
内田さんの短編は全体的にこういう「よく分からないしふんわりしながら不気味」っていうのが多い - 12二次元好きの匿名さん23/10/13(金) 10:48:44
保守
- 13二次元好きの匿名さん23/10/13(金) 11:28:50
いいね 自分は紹介された作家の中だと漱石の幻想、怪奇譚が好きだな 海外編も楽しみ
ホラー系なら久生十蘭の「骨仏」とかブラッドベリの「十月のゲーム」、「つぎの番」とかどうだろう ブラッドベリは幻想と怪奇に満ちてるから大体全部おすすめです!既読だったらごめん! - 14二次元好きの匿名さん23/10/13(金) 11:34:25
読書の秋っすね
- 15二次元好きの匿名さん23/10/13(金) 18:26:36
感想が面白い
自分も読んでみようかな - 16二次元好きの匿名さん23/10/13(金) 22:05:50
「蟇の血」田中貢太郎
作者の田中さんは「怪談全集」を作るほどの怪談マニアだったらしい
主人公の三島青年は儚げな美女と深い仲になっていくが、その女の家に連れて行かれると、そこには女の「姉」という女がいて、彼女を奥様と呼ぶ女に「奥さまの物になれ」と迫られる……
どうも他にもこの家に捕らえられている少年がいるらしく、この女たちがどういう存在なのか、捕まえた男をどうしているのかもよく分からない(でも五体満足では済まない気がする)。昔懐かしい怪談のようで、深読みするとなかなか淫靡な匂いがしてくるところも面白かった - 17123/10/13(金) 22:06:28
名前つけるの忘れてました。焦るとこうなる…
- 18123/10/13(金) 22:15:43
「後の日の童子」室生犀星
夕方になると、まだ幼い息子が家に帰って来る。でも息子はもう亡くなっている……。死んだ息子の訪れを心待ちにする夫婦の話
日に日に朧げになっていく息子をどうしても諦めきれない母親や、むしろどうしても諦念に囚われてしまう父親の姿が、子を喪ったリアルな親の姿として心に迫る、怖いよりも悲しくて美しい物語だった
実際に室生さんも幼い息子を喪っている。魂だけでも会いに来て欲しいという思いはきっとあったんだと思う - 19二次元好きの匿名さん23/10/13(金) 22:19:06
どんまい
小泉八雲はわりと半端に終わったりする話とか分かりづらいかな?という概念に対して本人なりのこうなんじゃない?って文が添えてあること多いんだけど
その添えてある文が好き - 20123/10/13(金) 22:22:51
「木曾の旅人」岡本綺堂
軽井沢に住む猟師の家に旅人が泊めて欲しいとやって来た。猟師は旅人を丁重にもてなすが、何故か幼い息子は旅人をひどく恐れ、犬も吠え始める。この男は一体なんなのか……
これぞ怪談、といった落ち着いた作風。しかし男の子と犬が怯えたのは「男」だったのか、あるいは男が背負う「ナニカ」だったのか……という余韻が好きだった - 21123/10/13(金) 22:29:35
「鏡地獄」江戸川乱歩
鏡やレンズが映す世界に魅せられ、遂に狂ってしまった男の話
いかにも乱歩さんらしい「覗き趣味」や「偏執狂」の要素を持った男の狂気が淡々と書かれていく。外の世界に出るよりも自分の世界に籠り切ってしまう姿はいかにも乱歩さんが好きそうな展開。一体男が鏡の中で最後に見たのはどんな景色だったんだろう…… - 22二次元好きの匿名さん23/10/13(金) 22:45:37
近代文学のエッセイを中心に読んでたから怪しげのあるお話あんま知らなかったけどこのスレの感想で面白そうと興味出たよ
その手の作家なら小川未明がおすすめ 日本児童文学の父と呼ばれる作家だけど作風が暗くてバッドエンド多め - 23123/10/13(金) 22:56:48
「銀簪」大佛次郎
怖かった。まっすぐ怖かった。
江戸時代、相場でしくじって江戸に夜逃げしようとする貞蔵という男に、その愛人のお村という女が一緒について行こうとするが貞蔵はお村を邪魔に思って殺してしまう。1人江戸に辿り着いた貞蔵は真面目に商売をするようになり、妻子にも恵まれどんどん裕福になっていく。しかし、急に近所で「女の幽霊が出てくる」という噂が……
文章はあっさりしてて読みやすいのに、ねっとりと恐ろしさが迫って来る。オチがこの本の中では一番怖いし救いがないと思った。怖い話を読みたい人にはお勧め - 24123/10/13(金) 23:11:05
「慰霊歌」川端康成
霊媒師の鈴子という女に恋をしてる男が、鈴子に乗り移った女の幽霊と対話をする話
幽霊譚ではあるけど、怪談と言うよりは随分エロティックな話。流石川端さん。女の幽霊が裸体を晒して「私はこの通り女ですわ」という辺りとか、一歩間違えれば安っぽいポルノなのに川端さんの文章だと詩的なシーンに見えるのが凄い
かなり性癖が滲んでるけど、やっぱり文章は綺麗だった - 25123/10/13(金) 23:15:16
- 26123/10/13(金) 23:27:15
「難船小僧」夢野久作
ある商船に1人の美少年が乗り込んでくる。しかしその少年は「難船小僧」という渾名があり、乗った船は必ず沈んでこの少年だけが助かるという。船員たちはこの少年の乗りこみに反対するが、艦長は何故かこの少年を傍に置いていて……
エロ・グロ・ナンセンスの雰囲気が漂ってくるお話。自分はこの正体不明の美少年より、過酷な環境で安い賃金でこき使われて心の荒んだ船乗りたちの心境や言葉の方が怖かった - 27二次元好きの匿名さん23/10/14(土) 08:31:38
保守
- 28二次元好きの匿名さん23/10/14(土) 08:34:05
知ってる作家の知らない作品が多い
青空文庫で読めるのもあって助かる - 29二次元好きの匿名さん23/10/14(土) 08:35:44
紹介しよう ハンス・ヘニーヤーン『十三の無気味な物語』だ
もちろんめちゃくちゃ種村季弘 - 30123/10/14(土) 13:12:05
「化物屋敷」佐藤春夫
いわゆる実話怪談。例の「細君譲渡事件」の後、本人も精神的にボロボロなうえに同居してた弟夫婦まで離婚したため仕方なく家を探す佐藤さん。弟子の石垣君(どうやら稲垣足穂のことらしい)に紹介された下宿を借りることに決めたが、どうやらそこは事故物件のようで、次第に一緒に住んでいた門下生の様子がおかしくなっていく……
ぶっちゃけ内容としてはありふれてるし、派手な事件が起きるわけでもない。でも「この家は駄目だ」という、鳥肌が立つ感覚はすごくリアル - 31123/10/14(土) 15:20:03
「人花」城昌幸
美しい花に魅せられ、遂に自ら望んで花の養分になった男の物語。男が友人に遺した手紙も古文調で、どこまでも現実離れしたお話
城さんは元々詩人だったらしく、書いてる話のほとんどがロマンティックな短編。結末はゾッとするようでいて、どこか美しい余韻がある - 32123/10/14(土) 15:25:46
「かいやぐら物語」横溝正史
ミステリー小説の人という印象が強かったので、怪談も書いていたのかと驚いた
夜中の砂浜を散歩していた男に、笛を吹いていた美しい女性がおもむろに自身の「思い出話」を語り始める。それは『心中しようとしたものの、自分だけが助かってしまい、恋人の亡骸を永遠に自分の許に留めておこうとした青年の話』で……
「かいやぐら」って何だろうと思って調べたら「蜃気楼」のことらしい。まさに、一瞬蜃気楼の美しい幻を垣間見たような気持にさせてくれるお話 - 33二次元好きの匿名さん23/10/14(土) 15:27:16
>>30 これ面白そうだな 読んでみる
- 34123/10/14(土) 15:32:58
「海蛇」西尾正
精神を患った作家の男がいる保養地から、妻宛てに手紙が届く。その内容は「出会った女の正体は海蛇で、自分はそいつを退治しなくてはならない」という狂った内容。心配した妻がそこを訪れると、明らかに衰弱しきっている夫が目だけを爛々とさせて「海蛇」を待ち構えていた……
不気味で陰惨な話。怪異の正体以上に、男の精神の荒み方や、それでもそんな男を見捨てきれない奥さんの辛さの方が印象に残った - 35123/10/14(土) 15:49:26
「逗子物語」橘外男
「私」が逗子のお寺に行くと、お墓参りをする男の子とその子守らしきお爺さんと女中がいた。どうやらそのお墓は男の子の母親のものらしい。気の毒に思った「私」も一緒にその墓に花を供えてやる。しかし、宿の主人にその話をするとその家族は子供もお手伝いも含めて、全員とっくに亡くなっていると言われて……
悲しいのに心温まる幽霊譚。「私」の幽霊に対する純粋な同情と共感にホロリとさせられた - 36123/10/14(土) 18:51:26
「鬼啾」角田喜久夫
岡っ引きの清十郎の家を、謎の男が訪れる。その男は杏子の花の匂いをさせていた。一体その男は何故清十郎一家に付きまとうのか?
夢枕獏さんを思い出すような独特の文体。なかなか血生臭く、でも悲しい復讐譚 - 37123/10/14(土) 19:37:46
「幻談」幸田露伴
釣りにまつわるウンチクが山ほど書き連ねられたかと思いきや、釣竿を決して話さない水死体と、その釣竿が欲しくて堪らない釣り人の奇妙な話。実際に幸田さんは釣りが好きだったらしい
正直釣りに興味が少ない自分には、奇怪な出来事以上に釣りにここまでの執念を燃やせる人たちの方が怖かった…。釣りが好きな人にこの話の感想を聞きたい - 38123/10/14(土) 20:03:54
「妖翳記」久生十蘭
タイトルは「ようえいき」と読むらしい。妖しい影、くらいの意味だろうか
「私」を家庭教師として雇ったのは、不二という美貌のご令嬢。しかしこのお嬢様は残酷な趣味があって、虫をいじめ殺すくらいは日常茶飯事で、兎を殺してその血でスープを作ったり、「かまきり遊び」とかいう色んな残酷で奇怪なことをやってのける。「私」はこの冷酷で美しい不二に惹かれていくが、この屋敷で雇われた男はもう2人も死んでいるらしい……
不二が男を死なせているのか、男たちが勝手に不二を甘美な「死神」に仕立て上げているのか……。綺麗で残酷な、グランギニョルのような雰囲気の話 - 39123/10/14(土) 20:40:15
「怪談宋公館」火野葦平
これも実話(?)怪談。火野さんが兵士として中国に滞在中、ある屋敷を宿舎として利用することになったが、急に雇っていた現地の中国人家族たちが「この屋敷にはいたくない」と言い始める。ここには幽霊がいると言うのだ。兵士たちは相手にしないが、次第に全員が奇妙な体験をすることになる。実はこの宋公館、元は宋という裕福な男の妾宅だったらしく……。
佐藤春夫さんの話に構造は似てるけど、こっちはゾッとする後日談付き。舞台が中国なのも時代を感じるし、戦争の影もこの話の独特さになっていると思う - 40123/10/14(土) 20:47:04
「夢」三橋一夫
穏やかで幸せな家庭を営んでいた男に、赤紙が渡される。家族に見送られて男は勇ましく戦地に赴く。あっという間の、戦場のお話
語り口は呑気で飄々としているのに、あまりにも哀しい話。幻想的な話なのに、こんなふうに戦場に立たされた人が何万人もいたという事実に気づかされる
もう終わってしまったけど、終戦の日に読みたくなる話 - 41123/10/14(土) 20:59:24
「木乃伊」中島敦
古代オリエントが舞台の珍しい怪談。ペルシヤの武将パリスカスは、エジプト進軍中にミイラを発見する。パリスカスは何故か、そのミイラが自分の前世の姿であると確信する。彼が垣間見た輪廻転生の話
中島さんらしい、重々しくて真面目な文章。短いのだけどちょっと読むのが大変だった。怪談よりは哲学を小説にしたような雰囲気 - 42123/10/14(土) 21:17:46
「人間華」山田風太郎
「私」は、友人の科学者・天麻にある実験を見届けて欲しいと頼まれる。その実験とは、病で死にかけている自分の恋人と自分の命を花に転移させ、『死後も生きる愛』を文字通り形に遺そうというものだった……
荒唐無稽な展開ではあるけど、「人間の愛はただ子孫を繋いでいくためのものだけではないはずだ。死さえ超越する愛もこの世にあるはずだ」と信じる科学者の言葉は痛切で美しかった - 43二次元好きの匿名さん23/10/14(土) 21:54:06
「復讐」三島由紀夫
避暑地の一軒家に暮らす5人家族の近藤家。貧しいわけでもなさそうなのに、家庭はどこか荒んでいて暗い。5人全員が何かを恐れるように、外から物音が聞こえる度にじっと外を見つめている。実はこの家族は玄武という男に恨まれており、その男からの復讐に怯えながら生きている……
でもこの家族はたとえ復讐されなくても幸せにはなれなさそう。みんな自分のことで精いっぱいで、それぞれの抱える不安でお互いの首を絞めていく。むしろ何もしないことが、玄武にとってのこの一家への最大の復讐なのかもしれない - 44123/10/14(土) 22:37:24
「黒髪変化」円地文子
この話は「結婚の夜」というタイトルで映画化されてるらしい
水島敦夫という鼻持ちならない遊び人が、母の勧めもあってようやく良家のお嬢さんと身を固めることにする。今までズルズル付き合ってきた女たちとの関係を清算していくが、黒髪の美しい蓮子だけには少し未練があって曖昧なままにしてしまう。ところがとうとう婚礼の日、神前式の巫女として自分の目の前に現れたのはよりにもよって蓮子で……
実はこの話、尻切れ蜻蛉なところで終わってしまう(映画はもっと分かりやすいオチがついてるらしいけど)でも分からないからこそ、敦夫とその何も知らない妻がどうなってしまうのか、想像すると恐ろしい - 45123/10/14(土) 23:08:20
「その木戸を通って」山本周五郎
神隠しが題材の時代小説。縁談を控えていた平松正四郎の屋敷に、突然奇妙な娘が迷い込む。娘は自分の家も名前さえも記憶にないのに、正四郎を訪ねたいと思ってここまで来たと言う。最初正四郎は縁談の邪魔になると思って邪険に扱うが、次第にこの娘とを愛しく思い、遂には縁談を断って「ふさ」と名付けたこの娘と結婚することに
子供も生まれて、幸せなまま添い遂げられる……そう思った矢先に、次第にふさが自分の過去を思い出したような素振りを見せ始め……
自分がこの話に一番惹かれたのは、自分の祖母が認知症に罹って亡くなったからかもしれない。大好きな人から日に日に自分との記憶が消えていく。大好きな人が、自分が知らない「あの頃」に帰って行ってしまう。その記憶があるから正四郎の哀しみに共感できたのかもしれないし、この一行に救われた気がした。
「いつかは必ず思いだして帰るだろう この木戸を通って」
帰ってこないのはもう分かっている。それでも、その人を思い続けてもいいんだ。待ち続けてもいいんだと言われたように思った - 46二次元好きの匿名さん23/10/15(日) 02:21:26
アンドロイドは電気羊の夢を見るか? フィリップ・K・ディック(朝倉久志訳)
結構有名なSF。第三次世界大戦のあと、死の灰で埋め尽くされた地球で、電気羊を飼ってる主人公が生きた動物を飼うために火星から逃げてきたアンドロイドを殺していく中でアンドロイドについて苦悩したりする話。途中から、マルトクで落ちこぼれなもう一方の主人公?が逃走中のアンドロイドに出会って勝手に恋して匿うことになって、物語に絡んでくる。
人間とアンドロイドの違いが「親切であるか否か」で一貫してて良かった。イジドアとアンドロイドたちがテレビを見てるとき、色々あって一人のアンドロイドが蜘蛛の手足切るところがあるんだけど、マルトクの静止を耳にもとめないで冷静に切ってて、感情はある程度あるけど同情ができない捕食者っぽい感じのわかりあえない不親切さを感じてよかった。
あと、終盤の展開がめちゃくちゃ好き。マーサー教が偽物だと示されたあとでも、ちゃんと宗教として役割を果たしてたのがなんか良かった。マルトクはそこそこ可哀想だったけど。
他にも、主人公がアンドロイドを殺しきったあと、ようやく買えてた生きてる羊が殺しに協力してくれたアンドロイドの子に殺されて、無気力になって家を出たけど、最後ちゃんと家に帰って妻にちょっとした親切を受けたあとに安心して眠るのが好き。今まで葛藤したり戦闘でピンチになったり口喧嘩してたりしてて、全然休まらなかったから、この優しい終わりがよく効いた。
めちゃくちゃ面白かった。 - 47二次元好きの匿名さん23/10/15(日) 09:40:00
保守
- 48二次元好きの匿名さん23/10/15(日) 19:54:08
保守
- 49123/10/15(日) 21:57:42
「蜘蛛」遠藤周作
虫嫌いな人は絶対に読まない方がいい。「私」がタクシーで相乗りすることになった青年が突然語り始める。「一緒に乗った女性の顔には奇妙な痣があった。その痣の正体は…」という話
「虫が嫌いな人は読まないで」と書いてしまったのでかなりネタバレだろうけど、怖いよりも気持ち悪いが勝つ話。でも読みやすくて面白かった - 50二次元好きの匿名さん23/10/15(日) 22:47:30
なお原作はもっと短い上に衆道ネタが入ってくるんだけど八雲がそれをカットした上で色々脚色した模様
どうも衆道文化が理解できなかったのかそういう話は省く傾向にある。菊花の契とか。
小泉八雲は怪談もいいけど個人的に随筆も好きだな。って事で一番好きな随筆の感想をば。
「草ひばり」
小泉八雲が飼っている草雲雀(こおろぎ)について淡々と書いただけの文章。
生まれた時から誰に教えられたわけでもないのに番を求めて歌う草雲雀と自分を重ね合わせ、
その音色をロマンティックに描写する流れから一転、草雲雀は急に歌うのをやめてしまう。
気になった八雲はカゴの中を覗くが…まぁ隠さずに書くと死んでたんだよね。
ただ、そこから続くラスト一段落の内容が、すごく、ぞっとした。
おまっ、そういう感想持つって事はお前お前お前~~~!?!?!?
お、俺は、小泉八雲が、分からない。
小泉八雲の内面というか作家としての宿業?が垣間見える、かもしれない。そんな作品。
そのくせ執筆作業については凄くストイックで自己管理を徹底してた人らしいから
「そりゃ他の文豪みたいに病んだり失敗したりしたエピソード見つからない訳だ」と思った。
- 51二次元好きの匿名さん23/10/16(月) 10:34:48
保守
- 52二次元好きの匿名さん23/10/16(月) 22:06:03
保守
- 53二次元好きの匿名さん23/10/17(火) 09:21:03
ほ
- 54二次元好きの匿名さん23/10/17(火) 20:57:14
保守
- 55123/10/17(火) 21:10:53
「猫の泉」日影丈吉
フランスの、おびただしい数の猫がいる街で、留学生の主人公は何故かお告げを聞いてくれと頼まれる。しかしそのお告げとは、街が水に沈んでしまうという恐ろしいもので…
御伽噺みたいな話だけど、そこに大人の苦い人生観を混ぜたような、不思議な話だった - 56二次元好きの匿名さん23/10/18(水) 04:10:56
ほしゅ