- 1二次元好きの匿名さん23/10/12(木) 22:58:15三女神像の前に行ったらウマ娘になっちゃった…|あにまん掲示板……困惑と同時に昏い喜びが湧き上がってくる。俺はずっとウマ娘に憧れていた。頑強な身体、美しい容姿。俺に無い物ばかりを持つ彼女達の姿は、いつだって痛いほど眩しかった。けれど生まれという壁はどうしようもな…bbs.animanch.com
前回までのあらすじ
某女神の力でウマ娘になったトレーナー。
しかし彼は両親のしがらみから「ウマ娘になりたい」と願い続けてきた異常者だった……。
ウマ娘として、そしてトレーナーとして、担当であるサンフォールと共に成長する元トレーナーこと現サンライクガベージ。
メイクデビューを快勝した彼らだったが、続くオープン戦で自分達を上回る怪物に出会ってしまう。
果たして彼らの次なる戦いは……?
- 2二次元好きの匿名さん23/10/12(木) 23:18:26
キャラ紹介
・トレーナー(現:サンライクガベージ)
女神の導きによりウマ娘となってしまった男。
両親の浪費癖ゆえに貧乏な幼少期を過ごし、「ウマ娘ならもっと稼げたのに」と言われて育つ。そのため、ウマ娘になった事について戸惑うどころかむしろ喜んでいる。
適正距離は短距離。トレーナーとしての力量はまだまだだが、ウマ娘としての才能は抜群。ウマ娘の身体を活かしてトレーニング理論の実証を行い、担当であるサンフォールの練習にフィードバックするのが彼のやり方。
・担当(サンフォール)
ウマ娘になったトレーナーの担当ウマ娘。
奇しくもウマ娘となった彼と同じ脚質、同じ才能、同じ体格を持っており、彼の体験をそのまま活かす事ができる稀有なウマ娘の一人。
気怠げな性格で、トレーナーを選んだ理由さえ「目が合ったから」という良く分からない物だが、行動の端々に能力の高さを見せる。
適正はダート。夢はトレーナーとレースの場で競い合うこと。
・モチモチトッポギ
突如としてオープン戦に現れた謎のウマ娘。その高い能力でトレーナーを差し切り、勝利を飾った。
脚質は先行。なぜか同日にサンフォールを破ったムーンライクジュエルと同じ体格、同じ脚質だが……?
・ムーンライクジュエル
メイクデビューで全く注目されなかったにも関わらず、なぜかサンフォールに勝利した謎のウマ娘。
同日にトレーナーを倒したモチモチトッポギと同じ体格、同じ脚質……なのだが、実はモチモチトッポギの方がデカいらしい。 - 3二次元好きの匿名さん23/10/12(木) 23:22:32
新スレ乙
>サンライクガベージのヒミツ③
>実は、書類上のトレーナーは先輩トレーナー。
これフォールのレースに行ってもらった影武者さんだよね
自分で自分を担当する人って書類上はこういう対応になるのか……
- 4二次元好きの匿名さん23/10/12(木) 23:30:20
待 っ て た
- 5123/10/12(木) 23:30:43
- 6二次元好きの匿名さん23/10/12(木) 23:30:54
あと勝手にやって申し訳ないですが
前スレ200で誘導置かせてもらいました
とりあえず10まで進めた方がいいでしょうかね - 7123/10/12(木) 23:34:30
- 8二次元好きの匿名さん23/10/12(木) 23:35:00
ほしゅ
- 9二次元好きの匿名さん23/10/12(木) 23:37:47
- 10二次元好きの匿名さん23/10/12(木) 23:39:40
- 11二次元好きの匿名さん23/10/12(木) 23:42:29
- 12123/10/12(木) 23:54:23
- 13二次元好きの匿名さん23/10/12(木) 23:59:49
ごちゃついた問いに整理と回答をしていただいてありがとうございます
外聞が悪いどころかトレーナー資格を引っ提げて編入した天才児と話題になりそうだけど、
フォルスや自身のトレーニングに無用の大騒ぎで支障が出るといけないからってことかな
流石に中央トレーナー、影武者も含めてよく考えて動いてるんだなあ
- 14123/10/13(金) 01:31:29
新しいスレ立てて何だけど今日疲れたんで明日書きます
眠い… - 15二次元好きの匿名さん23/10/13(金) 01:31:57
お疲れ様でした
また明日楽しみ - 16二次元好きの匿名さん23/10/13(金) 06:34:06
誘導があって助かった
- 17123/10/13(金) 13:51:16
「それじゃ、私はこれで」
「わざわざ付き合わせて悪かったな。服選んでくれて助かったよ」
「まぁ、いつもお世話になってるトレーナーさんの為ですから。気にしないで下さい」
いつもと変わらず無感情な様子で感謝を述べるフォール。本当に感謝してくれているかは分からなかったが、少なくとも一緒に出掛けるくらいの好感度はある様で少し安心した。
「………」
ショーウィンドウに映る自分の姿を見る。そこには、ウマ耳と尻尾の生えた立派なウマ娘が居た。
……フォールが俺の事を意識している、というのは以前から知っていた。元々そういう事は明け透けに言うタイプの子だったし、最近自主練で芝のコースを走る様になったのもその表れだったのだろう。
気持ちは分からないでもない。いきなり知らないウマ娘が現れて、自分の鼻っ柱を叩き折る様な真似をしてきたら、そりゃ誰だって意識するという物だ。
俺はトレーナーという立場からあまり意識しない様にしていたのだが……自分の苦手な適正まで進出してくるほど入れ込むというならば、それを受け止めてあげるのもまたトレーナーの仕事だろう。
「問題山積み、だな」
俺は苦笑しながらひとりごちる。何一つ改善はしていないが、何か一つに取り組むだけの気概が胸に蘇ってくるのを感じた。
トレーナーの力量
dice1d10=10 (10) +38
- 18二次元好きの匿名さん23/10/13(金) 14:00:04
気分転換がめっちゃ成功しておる
- 19二次元好きの匿名さん23/10/13(金) 14:04:21
ここで最大引くのそふ閃みがあるな……
- 20二次元好きの匿名さん23/10/13(金) 14:48:28
絆のパワーだ!
- 21123/10/13(金) 18:38:35
気分転換のおかげか、このところの不調を完全に吹っ切ってまたバリバリ知識を吸収する事が出来る様になった。フォールには足を向けて寝れないな。
……さて、そろそろ次のレースについて考えるべきだろう。
メイクデビューとオープンで俺達は酸いも甘いも味わった。となれば、次は重賞に挑戦したくなる。
しかし俺は短距離、フォールはダートとあまり主流でない路線を行く事になる。それはつまり、開催されるレースの絶対数が少ない事を示していた。
特に厳しいのはフォールの方だ。ダートの重賞で、なおかつジュニア級の実力で挑めるレースといえば一つしかない。年末のGⅠ、全日本ジュニア優駿だ。
いきなりGⅠというのは些か不安だが、これに関してはフォールと相談しながら決めていくしかないだろう。
逆に、俺が出走するレースについてはいくつか当てがある。GⅢのファンタジーステークスとGⅡの京王杯ジュニアステークスだ。
どちらもジュニア級の相手しか出てこないので出走者の差は小さいが、やはりGⅡの方が敷居は高いだろう。
さて、どちらに出るべきか……。
dice1d2=1 (1)
1.ファンタジーステークス 2.京王杯ジュニアステークス
- 22二次元好きの匿名さん23/10/13(金) 18:41:21
いよいよもって男だったのが何かの間違いだった感ある
レベルEに出てきた男の遺伝子なのに女性になってしまった人みたいな感じで
トレーナーさんも実はウマ娘になる要素が一部機能してなくて男に生まれた可能性は……さすがにないか - 23123/10/13(金) 19:07:15
「……決めた」
俺が出るのはGⅢ、ファンタジーステークスだ。
これからGⅠに向けて戦っていくのなら、ここは確実に実績を積み重ねていった方がいいだろう。確実に勝てるとまでは言わずとも、好走すればGⅠへの足掛かりにはなる。
自分の成すべき事は決まった。後はこれからについてフォールと話し合おうと思ったのだが……。
「いきなりGⅠ、ですか」
「無理にとは言わない。もう一度オープンに出て堅実に地盤を固めてもいいし、今年を全てトレーニングに回して来年に備えてもいい。今の状況で出られる重賞はこれだけという話で──」
「出ます」
フォールはバッサリと言い切った。
「いいのか?」
「ええ。今の私に出られる重賞という条件は、きっと私を負かしたあの子にも当てはまってる筈です。もし運良く鉢合う事があれば……次こそ倒してみせる」
なるほど。単に功を急いでいる訳ではなさそうだし、GⅠへの出場は彼女にとっても大きな経験になる。出来る限りの事をして送り出すのも悪くないかもしれない。
こうして、彼女もまた自らの進むべき道を決めた。俺も自分のレースに向けて集中しなければ。
トレーナーの体調 dice1d5=4 (4)
1.絶好調 2.好調 3.普通 4.不調 5.絶不調
モチモチトッポギは dice1d2=1 (1)
1.出た 2.出なかった
- 24二次元好きの匿名さん23/10/13(金) 19:10:11
なんかよく不調になるなこのトレーナーさん
そしてそんな時に限ってきちゃうか、地力でどこまでやれるかな - 25二次元好きの匿名さん23/10/13(金) 20:03:02
不調防止の効果は1回だけ?
まあ永続は強すぎるか - 26123/10/13(金) 20:19:46
「またですか」
「面目ない……」
フォールが呆れ気味に俺を見下ろす。またもや俺がレース直前に不調になってしまったのだ。メイクデビューで失敗してからというもの、体調には気を付けていたのだが……何が原因なんだろうか?
しかも間の悪い事に、今日のレースにはあのモチモチトッポギも出ている。不調になる前は「リベンジできる良いチャンス」と喜んでいたのだが、まさかこんな事になってしまうとは。
「……はぁ」
「本番に溜息なんて吐かないで下さいよ。私まで沈んできます」
「そうは言ってもなぁ……」
ああもう、とフォールが苛立ち紛れに立ち上がる。と同時に、俺の目を覗き込んで言った。
「トレーナーさんはもっと自覚を持ってください。あなたはウマ娘の中でも上澄みの方で、本来なら溜息を吐かれるのはあなたの方なんですよ? 壁が一つあるくらいでこの世の終わりみたいな顔しないで下さい」
「フォール……」
「少なくとも、私にとってあなたは高い壁の一つなんですからね。壁が別の壁に向かって『高すぎて越えられないよ』なんて言わないでください」
……そうだ、誰にだって壁はある。だがそれを嘆いていても前には進めない。せっかく貰ったチャンス、死力を尽くしてやってみようじゃないか。
「……そうだな。ごめん」
「いいから行ってきて下さい。もう愚痴を聞くのは嫌ですからね」
フォールの言葉に背中を押された俺は、ターフへと向かう。これは俺だけの勝負じゃない。フォールの為にも……全力で戦わなければ。
dice1d100=83 (83) +(85+48)÷3 60以上で勝利
モチモチトッポギ dice1d35=24 (24) +40
- 27123/10/13(金) 20:21:35
−5するの忘れちゃった…
まぁしても圧勝だしいっか - 28二次元好きの匿名さん23/10/13(金) 20:23:04
短距離3桁はヤバい(ヤバい)
むしろトッポギのダイステーブルが気になるな
トレーナーとフォールの計算式からすると
おそらく地力(+指導)は120のバケモンっぽいんだけど - 29123/10/13(金) 20:47:05
- 30二次元好きの匿名さん23/10/13(金) 20:50:15
あ、なんらかの秘密があってあのテーブルだったわけではないのね
どう対応するのか楽しみ - 31二次元好きの匿名さん23/10/13(金) 21:36:56
やっぱりなんかフォールと深い交流したあといい結果出てる気がするな
- 32123/10/13(金) 23:38:01
「ハァッ……ハァッ……!!」
目眩。痛み。倦怠感。脳に酸素が行ってないと感覚で分かる。世界の全てが遠くなり、何もかも分からなくなる。
それでも、たった一つの事実だけは確かに理解していた。
「……ッ、しゃああッ!!」
勝利。前回の敗北が信じられないほどの圧勝。
自然と気分が高揚し、疲労が気持ちよく昇華されていく。
「やりましたね、トレーナーさん」
「ああ!」
出迎えたフォールとがっしりと握手を交わす。普段は気怠げな彼女もどこか嬉しそうに見え、身体に一層幸福感がみなぎるのを感じた。
「………」
一方、モチモチトッポギは敗北に応えた様子もなく、自身の身体の感触を確かめる様にクールダウンを行っていた。
……彼女も不調だったのだろうか? もしそうなら幸運だったとしか言いようがない。いずれにせよ、今日はぐっすりと眠れそうだ。
夢の中で…
dice1d100=74 (74)
79以下で何もなし、80以上で女神の祝福
- 33二次元好きの匿名さん23/10/13(金) 23:39:56
うーむ惜しい
しかし一味違うスパートのシャウトいいね - 34123/10/14(土) 00:54:29
ファンタジーステークスの翌日、良い目覚めで起きた俺はいつもより早めに学園に向かうことにした。
学園内にある芝のコースに行くと人影が一つ。真剣な表情でサンフォールが走っていた。
彼女はどちらかと言えば天才肌だ。どんな事に対しても飲み込みが速く、それをすぐにアウトプット出来る能力も持っている。
だが、それは彼女が努力しない事を意味する訳ではない。むしろ今のように人並み以上に努力する事もあるし、どんな些細な事に対しても腐らず取り組み続ける根性もある。
要は他人と同じ労力で同等以上の結果を出せるタイプの天才というだけであって、決して苦労知らずのウマ娘という訳ではないのだ。
俺は朝練をしているフォールに近付きながら、心の中で静かに祈った。
彼女の努力が報われますように。彼女が勝利を手にする事が出来ますように、と。
フォールの体調 dice1d5=5 (5)
1.絶好調 2.好調 3.普通 4.不調 5.絶不調
- 35二次元好きの匿名さん23/10/14(土) 00:56:17
こっちも逆境か
果たして勝てるのか - 36123/10/14(土) 01:47:49
今日は寝ます
1日やっても全然進んでねえや - 37二次元好きの匿名さん23/10/14(土) 02:22:02
お疲れ様でした
自分のペースでいきましょ - 38二次元好きの匿名さん23/10/14(土) 11:26:34
保守
- 39123/10/14(土) 18:07:12
今日は全日本ジュニア優駿。フォールのレースの日……なのだが。
「………」
フォールが直前になって熱を出してしまったらしく、完全にレースをする体調ではなくなってしまった。
控室の椅子に座り俯くフォール。その姿はいつものフォールからは考えられないほど覇気を無くしていた。
「大丈夫か?」
「………」
ゆっくりと首を振るフォール。無理もない。GⅠの緊張、体調不良、ライバルとの再戦。これでいつも通りで居ろというのも酷な話だ。せめて彼女の気分を和らげてあげたいが……。
と思っていると、急にドアをノックする音が聞こえた。
「どうぞ」
しかし、ドアを開けた先に居たのは……フォールを負かしたウマ娘、ムーンライクジュエルだった。
ムーンライクジュエルの性格 dice1d4=3 (3)
1.お淑やか 2.おおらか 3.攻撃的 4.臆病
- 40二次元好きの匿名さん23/10/14(土) 20:59:58
怖い……
- 41二次元好きの匿名さん23/10/14(土) 21:10:10
弱り目に祟り目…
- 42二次元好きの匿名さん23/10/14(土) 21:11:06
ウマソウルはさぞやルナティックなやつだったんだろうな……
彼女の攻撃性はどんな感じなのやら - 43123/10/14(土) 21:14:31
「お邪魔しまーす」
「あの……君は?」
「あ? 誰? この子の友達?」
明らかに興味の無い視線をこちらに向けるムーンライクジュエル。どうやら単に挨拶をしに来たという訳ではないらしい。
それにしても……友達、友達か。なるほど、その設定はいいかもしれない。
「お……私はこの子の友達だ。今はレース前で緊張しててナーバスになってるから、話したい事があればレースの後にしてほしい」
「あっそ。まぁ大した用事じゃないから。ただウチのトレーナーに『GⅠなんだから出走者全員に挨拶しろ』って言われただけだし」
そう言いながらツカツカとフォールに歩み寄り、舐め回すように見始めた。
「ちょっと、何してるんだ?」
ムーンライクジュエルはサンフォールをdice1d2=1 (1)
1.覚えていた 2.覚えていなかった
- 44123/10/14(土) 21:37:24
「あー思い出した! アンタ前にあたしと戦った奴じゃん!」
ムーンライクジュエルが手を叩く。
「覚えてる覚えてる、ラストであたしが抜かして何バ身差で勝ったよね? ずっと前を走ってたから印象に残ってたんだけど、名前までは知らなかったんだよね。へー、アンタも来てたんだ」
ムーンライクジュエルは口元に嬉しそうな笑みを浮かべて語ると、さらに近付いて見下ろす様に続けた。
「それにしてもまぁゲッソリしちゃって。減量にでも失敗した? 前走はあんなに元気に走って負けたのに、これで本当に勝負できんのかな? ま、そうなったらあたしが勝つだけだからいいけど」
「おい……もういいだろ! 喧嘩したいなら出てってくれないか!」
これ以上は危険だと思った俺は、ムーンライクジュエルを強引に引き離す。
「じゃ、レースで。始まる前にライバルが一人減ってくれて良かったわ」
俺はムーンライクジュエルを部屋から押し出した瞬間、有無を言わさず扉を閉めた。
……振り向くと、後ろでフォールの肩が揺れている。
「……その、気にしなくていいからな! ああいう事言う奴は自分が不安だから言って──」
「……ふっ」
刹那、フォールが堰を切った様に笑い出した。
「あー、おもしろ! いいですね彼女。あれくらい嫌味な方が倒す快感もあるって物です」
「フォ……フォール?」
「すみません。まだ全然キツイですけど……空元気ができるくらいには回復しました。行ってきます」
俺は困惑しながら「ああ」と背中を押す。いずれにせよ、彼女が元気を取り戻してくれたなら幸いだ。 - 45二次元好きの匿名さん23/10/14(土) 21:49:56
いっそ清々しいくらいのやつだな
ライバルとして不足なし - 46123/10/14(土) 22:18:21
『さぁやって参りました全日本ジュニア優駿。ジュニア最速の栄冠を勝ち取るのは誰か? 各バ続々とゲートに入って行きます』
「どうも、さっきぶり。顔色の割には元気そうじゃん?」
ゲートに入ろうとすると、誰かが後ろから私に声を掛けてきた。忘れもしないその声。いけすかないウマ娘のムーンライトジュエルだった。
「その節はどうも。もし心配を掛けさせたのであれば申し訳ありません。色白なのでよく体調が悪いと間違われるんです」
「強がんなくていいよ。アンタはあたしの風除けなんだから、元気が無くたって気にする事じゃない」
彼女が私の肩に馴れ馴れしく腕を回そうとする。間近で見る彼女の身体はとても鋭く鍛えられていて、美しささえ感じるほどだった。
……ああ、これは強い。私は心から彼女の積み重ねてきた物に敬意を抱いた。まぁ、彼女の性格は微塵も尊敬できないけれど。
「おっと……ノリ悪いね。避けなくたっていいじゃん」
「あなた、『ズルい』って思った事あります? 相手が持ってる才能や能力や生まれに『反則だ』と思った事は?」
「……何の話? まぁ、何回か感じた事はあるような無いようなって感じだけど」
「そうですか」
それさえ聞ければ満足だ。そう言わんばかりに私はくるりと背を向け、ゲートに入る。彼女は何か言いたそうだったが、私がゲートに入ったのを見て渋々自分も入った。
『さぁ各バゲートイン完了』
身体が重い。どこかふわふわしている様で、しかし吐き気だけが重くのしかかる。正直立っているのさえ辛い体調だ。でも──。
『スタート!』
私の心は、穏やかだ。
dice1d100=63 (63) +(85+48)÷4
65以上で勝利
ムーンライクジュエルdice1d100=11 (11) +160÷4
- 47二次元好きの匿名さん23/10/14(土) 22:46:38
やったぜ
絶不調は描写的に解除されたっぽい?そうでなくても勝ってるけど
トッポギは÷3のレースで40だったからこっちはトレーナーさんとフォールの関係ではなさそうかな?
単に資質が40差くらいついてるのかもしれないが - 48123/10/14(土) 23:46:11
『フォールちゃんって、何でも出来るよね』
小学生の頃、体操教室に通っていた子にバク宙のコツを教えた時にそう言われた。当時の私はそれを褒め言葉として受け取ったが、その数年後にその言葉の本当の意味を知った。
『ズルい……っ! フォールちゃんばっかり! あたしより走ってるのに何であたしみたいに怪我しないの!? 入った頃から先にやってたあたしよりずーっと速かったし!! 何でも出来るんだから、レースくらいあたしに勝たせてよ……っ!!』
レースクラブに所属していた頃、練習しすぎて脚を壊した友達のお見舞いに行った時の事だった。
それを言われた時、私は本当にショックで。言いたい事はいっぱいあったのに、どれもこれも「言うべきじゃない」と脳が警鐘を鳴らしていて。ただ「ゴメン」としか言えなかった。
その時、私は自分が「ズルい存在」なのだと知った。私は壁に挑戦する側ではなく、誰かの壁として理不尽に存在する側なのだと。
もちろん私だって負けたり不運に悩まされる事もある。でも私が遭遇する「理不尽」は他人と比べてずっと少なく、その分だけ人生は平坦で楽な物になる。
だから多分、私の人生はそういう風に進んでいくのだろうと思っていた。知らない内にへし折ってしまった誰かに恨まれ、恵まれていると陰口を叩かれながら、実際理不尽に遭うこともなく楽に日々が過ぎていくのだろうと、そう思っていた。
『俺だ、トレーナーだ。その……服を貸してくれないか?』
『……とりあえず制服着ます?』
私の「理不尽」に逢うまでは。 - 49123/10/14(土) 23:48:16
- 50二次元好きの匿名さん23/10/14(土) 23:50:32
- 51123/10/15(日) 00:12:23
ウマ娘初日のトレーナーさんに負けた時、私はかつてない程のムカつきを覚えた。
ウマ娘になりたての奴にいきなり負けるなんて、そんな馬鹿な話があってたまるか。そう思った時、私は初めて「理不尽」を知った。
オープン戦でムーンライクジュエルに負けた時、私は泣いた。
あのトレーナーさんと同じくらい強い奴が同時期に二人も出てくるなんてやってられるか。そう思った時、私は初めて他人に「ズルい」と言った。
そして今、私はここに立っている。
普段なら信じられないほどの絶不調という「理不尽」。トレーナーさん以上の難敵であるムーンライクジュエルという「ズルさ」。その全てを乗り越えてここに居る。
そうだ、私は誰かの壁なんかじゃない。
「──勝ちましたよ、トレーナーさん」
「やったな、おめでとう!」
私も皆と同じ、壁を乗り越える一人なんだ。
その日、トレーナーは夢を…
dice1d2=1 (1)
1.見た 2.見なかった
- 52二次元好きの匿名さん23/10/15(日) 00:16:23
どんな夢かな
- 53123/10/15(日) 00:29:37
夢の内容は……
dice1d3=2 (2)
1.青い人の夢
2.実家の夢
3.ゴルシがただひたすら「ドーナツの穴ってさ……どこに繋がってると思う?」とか言いながら新幹線でスイカ割りしてる夢
- 54二次元好きの匿名さん23/10/15(日) 00:30:48
一番あかんやつ!
でもルーツ的には結構気になるから困る
3が一番気になるけど - 55123/10/15(日) 01:27:06
夢を見た。父さんと母さんに、ひたすら罵倒される夢だ。夢の中で俺は人間に戻っていて、「出来損ない」だの「生まなきゃ良かった」だのと言われ続けていた。
俺はもうどうしようもなくて、この現実を認めたくなくて、ただどこかへ逃げたくて、二人の顔をただひたすら殴って、殴って、殴って──。
「……ッ! ハァッ……ハァッ……!」
……最悪の目覚めだった。もう眠りたくないと思ってしまうほどの恐怖と後悔。
しばらくはこの感覚がこびりついて、眠る事が出来ないかもしれない。俺は自己嫌悪しながら寝床から立ち上がった。
フォールの反応 dice1d100=53 (53)
80以上で成功
- 56123/10/15(日) 01:27:40
今日はここまで
お疲れ様でした - 57二次元好きの匿名さん23/10/15(日) 01:31:43
よくここまでマトモに育ったな……
- 58二次元好きの匿名さん23/10/15(日) 01:44:41
なかなか夢ダイス成功しないねえ
いや初回でバイアスかかってるだけでそういうラインではあるが - 59二次元好きの匿名さん23/10/15(日) 04:31:02
保守
- 60二次元好きの匿名さん23/10/15(日) 10:59:06
ウマ娘に過剰に憧れてたのはまともに育ったと言えるのだろうか
それくらいで済んだのはだいぶいい気もするが……
3の夢でも判定あったのかな? - 61二次元好きの匿名さん23/10/15(日) 11:02:25
ボーッとした頭で学園に向かう。昨晩はほとんど眠れず、かなり酷い状態で出勤する事になった。
トレーナー室に行くと、朝練帰りのフォールがソファに座って何事か調べていた。時期的にはもう冬休み、フォールもやる事がなく手持ち無沙汰なのだろう。
「あ、おはようございます。……大丈夫ですか? 調子悪そうですけど」
「大丈夫、気にしないでくれ……」
フォールは俺の体調を気にしながらも、それ以上踏み込んでくる事は無かった。
GⅠを取った直後に気の早い話なのだが、次のレースについて……ひいてはクラシックでの身の振り方について話しておかなければならないだろう。
ダートと短距離、王道路線を完全に外れた適正を持つウマ娘は、その選択肢も自動的に狭まる。クラシックで出られるGⅠと言えば、フォールならジャパンダートダービー、俺ならスプリンターズステークスくらいだろう。
フォールの方はまだいくつか候補があるが、問題は俺の方だ。このまま短距離のみで進めていくと選択肢が狭まるのは避けられないだろう。つまり、多少無理をしてでもマイルに挑戦すべきかという話になるのだが……。
トレーナーはマイルに挑戦 dice1d2=1 (1)
1.する 2.しない
フォールの目標レース dice1d2=1 (1)
1.ジャパンダートダービー 2.JBCクラシック
- 62二次元好きの匿名さん23/10/15(日) 12:10:26
完全に一つに特化した想定の適性ダイスだったのね
(フォールに勝ったあたりダート短も走れそうだが)
トレーナーはNHKかなこりゃ
フォールの資質ならUAEダービー→米遠征もあったかもしれないが一緒に走るとなるとね - 63二次元好きの匿名さん23/10/15(日) 19:55:54
保守保守
- 64二次元好きの匿名さん23/10/15(日) 20:12:06
俺がマイルを走るにあたって懸念されるのはスタミナだ。
前走、前々走と1200m程度の短距離を走ったが、それですら青息吐息の有り様だった。1600m以上のマイルをレースになるレベルで走れる様になるのは、それなりの訓練が必要だろう。
……とはいえ、走れる様になればリターンは果てしなく大きい。将来的な事を考えても、ここは挑戦すべきだ。
「そうなると……NHKマイルがいいな」
安田記念という手もあるが、シニア級の猛者を相手に戦うのはまだ先の話だろう。NHK、スプリンターズステークス、結果が良ければマイルチャンピオンシップを視野に入れるくらいの気持ちでいいか。
「……という訳でジャパンダートダービーに出てもらおうと思ってるんだが、どうだろう?」
「問題ないと思います。そこら辺はトレーナーさんの方が詳しいでしょうし」
フォールも異論なく頷く。
よし、今後の方針も決まった所で……俺はプールトレーニングでもしてこようか。
スタミナ練習 dice1d10=4 (4)
累計50以上でマイル克服
- 65123/10/15(日) 20:23:50
「明けましておめでとうございますトレーナーさん。初詣行きましょう」
「展開が速いな。まぁいいけどさ」
今日は元旦。新しい年の始まりに皆が浮き足立っている様で、神社は盛況な様子を見せていた。
もちろん俺もその一人だ。ウマ娘としても、トレーナーとしても、今年は飛躍の年にしたいな。
「そういえば、スタミナトレーニングはどうなりました?」
「ぼちぼち、かな」
……正直言ってあまり上手く行ってはいない。もちろん一朝一夕で身に付く物ではないのだが、そうと分かっていても焦ったい。まぁ、そこは地道に改善していこう。
「じゃ、次はおみくじですね」
「流れ作業のように行くな……。この後用事でもあるのか?」
「早めに起きて準備したのでまだ日課の走り込みが終わってないんですよ。友達に着物着せてもらったんですけど、どうでしょうか?」
トレーナーの反応 dice1d100=49 (49)
フォールのおみくじ dice1d5=3 (3)
1.大吉 2.中吉 3.吉 4.凶 5.大凶
- 66二次元好きの匿名さん23/10/15(日) 20:46:47
「……その。似合ってるよ」
「何ですかその反応? やる気あります?」
「いや、着物の良し悪しなんて分からないって。ウチ貧乏だったから」
いや、本当に綺麗ではあるのだ。着物は細い方が似合うと言うし、良し悪しが分からないまでも模様が美しいのは分かる。ただ、悲しいほど俺の審美眼が養われていないせいで、それ以上の感想が出てこないのだ。
「そういえば、トレーナーさんのご実家の話って聞いた事ありませんね。どんなご家庭だったんですか?」
「どんな、って……」
……正直に言ってもいい物だろうか。
「どうしたんですか?」
「……ウチは、その──」
……それから、少しだけ俺の家の事を話した。家が貧乏だったこと。両親に浪費癖があったこと。そこから猛勉強してトレーナーになったこと。
「ウマ娘になれば良かったのに」と言われた事や、そのせいでウマ娘になって良かったと思う様になった事は話さなかったが。
「……ふーん」
話が終わった後、フォールはその一言だけ言っておみくじの方に行ってしまった。
……気分を害してしまっただろうか?
その後、フォールは吉のおみくじを引いて何事もなく帰った。
その背中はどこか不機嫌になっているような、しょんぼりとしているような、そんな雰囲気を感じた。
トレーナーの力量 dice1d10=2 (2) +48
スタミナ練習 dice1d20=18 (18) +4
- 67二次元好きの匿名さん23/10/15(日) 20:52:54
一気に進んだな
力量はあまり伸びてないが50の大台に乗ったか - 68二次元好きの匿名さん23/10/16(月) 00:52:22
それから一月が過ぎた。
俺は指導の傍らスタミナを付ける練習を重点的に行う様になったのだが、いかんせんトレーナーとしての研究とウマ娘としての練習のバランスが取れず、少々歪な時間配分になってしまった。
おかげでスタミナはそこそこ付いたものの知識の吸収が疎かになり、フォールから若干非難の目で見られるようになってしまった。……反省だな。
フォールの方は特に変わりなく鍛錬を積んでいる。おみくじで吉と出た通り、良くもなく悪くもない日々が続いているらしい。まぁ、悪い事が起きるよりはマシだろう。
さて、そろそろ次走について考えていこう。俺の目標はNHKマイル、フォールの目標はジャパンダートダービーだ。
まず俺は本番前に一度マイルの重賞レースに出ようと思う。本番前の肩慣らしはもちろん、未知の距離に対する感触も測っておきたい。
一方フォールは前回と同じような条件だし、レースには出ずに練習に打ち込むのも良いだろう。その分力を付ければより勝ちやすくなるかもしれない。
さて、どうしようか……。
トレーナーの針路 dice1d2=2 (2)
1.ニュージーランドトロフィー(GⅡ) 2.アーリントンカップ(GⅢ)
フォールの針路 dice1d2=1 (1)
1.レースに出る 2.レースに出ない
- 69二次元好きの匿名さん23/10/16(月) 01:42:32
お、フォールの次走は何になるかな
- 70二次元好きの匿名さん23/10/16(月) 09:28:03
保守
- 71二次元好きの匿名さん23/10/16(月) 15:18:42
よし、とりあえず俺はアーリントンカップに出るとしよう。ここで勝てば優先出走権も手に入るし、試走にはもってこいのレースだ。
その流れで行くと、フォールの方はユニコーンステークスが妥当だろうか。こちらは6月開催、アーリントンカップは4月開催だから、俺の方が早いな。
「あれ? トレーナーさんまだ居たんですか」
「ああ、丁度良かった。フォールにも聞いてほしいんだが──」
「あの、その前にこれどうぞ」
そう言われて差し出されたのは可愛らしい小包。何だろう、特に誕生日という訳ではないのだが。
「もうすぐバレンタインでしょう? 友達にも渡したのですが、一応トレーナーさんにもあげようと思いまして」
そういう事か。仕事にかかりきりですっかり忘れていたので、フォールからのチョコは嬉しい誤算だった。
「じゃあ、早速頂こうかな」
dice1d100=49 (49)
- 72二次元好きの匿名さん23/10/16(月) 15:30:49
可もなく不可もなく
- 73123/10/16(月) 17:07:37
箱を開けると、ハート型や星型のチョコが一つずつ入っていた。その中の一つを無造作に口に入れ、コリコリと味わう。
……美味しい。チョコの甘さがほんのりと口に広がる。疲れた頭には丁度いい糖分だ。
「どうですか?」
「うん、美味しいよ。やっぱり手作りだと味わいが違うな」
「そうですか。湯煎して型に流し込んだだけですがそう言われると嬉しいですね」
……つまり市販品と味は変わらないということか。それでも手間を掛けてくれただけ嬉しいが。
「その……お正月の時はすみませんでした」
「お正月?」
……正月に何かあっただろうか? 確かにフォールに連れられて初詣に行った記憶はあるが、そこまで酷い事をされた覚えはないが。
「……覚えてないならいいんですけど」
「何か悪いな、気を遣わせちゃって」
「いいんです、悪いのは私なので。それよりさっき何か言おうとしてましたけど、何か用でしょうか?」
そういえば言い忘れていた。俺はフォールにこれからの予定について話す。フォールは特に異論なく受け入れてくれた。
……フォールは何を言おうとしたんだろう? 俺は彼女の言葉の意味を考えながら、またこれからについて思索を始めた。
スタミナ練習 dice1d20=17 (17) +22
- 74二次元好きの匿名さん23/10/16(月) 17:20:23
ガンガン伸びてる!
- 75123/10/16(月) 21:19:31
そんなこんなでもう4月。フォールの許しを得てスタミナ練習に打ち込んだ結果、短距離以上でもだいぶ走れるようになってきた。
だが、勝てるレースをするまでには今一歩足りないといったところ。最悪この状態でも勝負できるかは把握しておきたい。
という訳で、アーリントンカップの日になったのだが……。
「……あの、本当に大丈夫ですか?」
「……すまん、少し寝れてない」
レースが始まる前だというのに、俺の体調は全く良くない。いつか見た悪夢の影響であまり寝付けなかったのだ。
……自分でもバカな話だと思うが、未だに眠るのが怖くなる時がある。またあの夢を見たらと思うと、目を閉じられなくなる……。
トレーナーの調子 dice1d3=3 (3)
1.普通 2.不調 3.絶不調
モチモチトッポギは dice1d2=2 (2)
1.出た 2.出なかった
- 76二次元好きの匿名さん23/10/16(月) 21:21:36
そういう影響かー
不調勝ちに定評が出てきた気がするが果たして今回は勝てるのか - 77123/10/16(月) 21:37:10
正直、何もしていないと瞼が下がってくるほどに辛い。数ヶ月もまともに眠れていないのだから、当然と言えば当然なのだが……。
視界が歪むほどの眠気を堪えながら、それでも立ち上がろうと踏ん張ってみる。……よし、辛うじて走れはするな。
「トレーナーさん」
「うん……?」
「その、悩んでる事があったら遠慮なく相談してください。トレーナーさんが最近眠れてないの、分かってますから」
……流石にバレてたか。その配慮はとても嬉しいが……。
「ありがとうフォール。でも俺は大丈夫。君は俺のレースを見て、自分に活かせる部分を見つける事に集中してくれ」
「でも……」
「さぁ行って。いつまでもここに居ると不正を疑われちゃうから」
俺はトレーナーだ。担当を心配するトレーナーは居ても、その逆はあってはならない。
安心してくれ。せめて君の不安を吹き飛ばせるよう、精一杯走ってみせるから。
dice1d100=79 (79) +(85+50)÷3-10-5
60以上で勝利
- 78二次元好きの匿名さん23/10/16(月) 21:39:14
絶不調&適性未完成で100オーバーはなんというか本物みがある
- 79二次元好きの匿名さん23/10/16(月) 21:41:38
これ誰が見ても不調なのわかるレベルで勝ったらそこがもう伝説になりそう
- 80二次元好きの匿名さん23/10/16(月) 22:01:34
勝った。自分でも空恐ろしくなるほどの大差での勝利。恐らく見る者の目に焼き付けるほどの圧倒的なレースだった。
だが。
「……っ! う、ぷ……っ!」
ゴールイン直後に迫り上がってくる吐き気。
俺は耐えきれず、その場で嘔吐してしまった。
「トレーナーさん!?」
警備員の制止を振り切ってフォールが向かってくる。
ダメだ、来るな。そう言いたかったのに喉からはヒュウヒュウと息が漏れるだけだった。
「大丈夫ですか!? トレーナーさん!!」
「君! 大丈夫か!? 立てるか!?」
フォールを止めようとした警備員までもが俺に寄ってきた。「大丈夫だ」と伝えたいのに喉が枯れて何も出て来ない。口の中に酸っぱい粘液がへばり付いて気持ち悪い。早く口を濯ぎたい。
「行きましょう、これ以上は見てられません」
「さぁ大丈夫だよ。保健室はあっちだ」
フォールと警備員に肩を貸してもらい、何とか保健室まで歩く。降着などにならなければいいが、と妙に冷静な事を思いながら俺は運ばれていった。 - 81二次元好きの匿名さん23/10/16(月) 22:04:32
精神的に危険な状態なだけでも大変なのにまだ適性が未完成だからスタミナが空っけつを越えたんだろうな
そりゃグロッキーにもなる - 82123/10/16(月) 22:27:59
「検査の結果ですけど、どこも異常はありませんでした。マイル戦は今日が初めてらしいし、寝不足で激しい運動をしたのが原因ですかね」
常駐の医師はあっけらかんと言う。水道を使わせてもらったおかげでスッキリした気分にはなったが、身体の不調はまるで抜け切らない。
「とりあえずここのベッドで二、三時間くらい寝ててもらっていいから、今日は安静にしててくださいね。お友達も隣に居て彼女を看ててください」
「……ありがとうございます」
「じゃ、私はちょっと用事があるので少し外します。動かないようにね」
そう言うと、医師はどこかへ行ってしまった。大方俺の容体を運営の方へ伝えに行ったのだろう。
「すまなかったな、フォール。心配掛けるつもりは無かったんだけど」
「………」
「最近個人的な不安で眠れなくなってたんだ。君のせいじゃないから安心してくれ」
「……いいからさっさと寝てください。私は何も喋らないので」
ぶっきらぼうにフォールは言う。俺はその言葉に甘えてゆっくりと瞼を下ろす。
心地よい静寂の中、ふとフォールの声が聞こえた。
「……ごめんなさい。トレーナーさんのご家庭の話、聞いちゃって。もしかしたらそのせいでご両親のこと思い出させちゃったのかって、ずっと思ってたのに……私、言えなくて……っ!」
「………」
「ごめんなさい……っ! トレーナーさんが苦しんでるのに、気付いてたのに……っ! 何も出来なくて……っ! ごめんなさい……っ!」
「………」
ああ、違う。違うんだ。君のせいじゃないのに。悪いのは全部俺のせいなのに。違うんだ。違……。
「……君の……せいじゃ、ない……」
「……!」
……薄れゆく意識の中、確かにそう口を動かして、俺は静かに意識を手放した。 - 83123/10/16(月) 22:32:10
その日、俺は……
dice1d4=1 (1)
1.青い人の夢を見た。
2.実家の夢を見た。
3.理事長とFF17をしながらカレーうどんを食って自分が来てるフリフリのドレスに飛び散らないか気が気でない夢を見た。
4.夢も見ないくらいぐっすりと眠った。
- 84二次元好きの匿名さん23/10/16(月) 22:36:13
よかった何かもらえそうだ
しかしいっつも3が気になるんだよなあ - 85123/10/16(月) 23:52:08
「こんにちは。また会ったわね」
「あ、お久しぶりです」
どこだか分からない原っぱで、またしても青い人に出会った。確か名前は──ゴドルフィンバルブ? ……ゴドルフィンバルブ!?
「いや、どう見てもあの像と……」
「ふふっ、そうよ。あの像とあんまり似てないゴドルフィンバルブ。どちらも本物の姿だし、どちらも偽物の姿だけどね」
青い人……もといゴドルフィンバルブは俺の思考を見透かした様に言う。しかしその顔はとても穏やかで、神聖な雰囲気を醸し出していた。
「それにしても……あなた随分深く眠ってるのね。ここまでハッキリ意識をこちらに持って来れるのは相当疲れてないと難しいわ。まぁ、確かにあの様子じゃ無理もないかしらね」
「あの、ここは一体……? 多分夢の中だというのは分かるんですけど……」
「ここは三女神の領域。極度に疲労したり健康的な問題を抱えるウマ娘が訪れる、いわば魂が安らぐ場所。以前のあなたはそこまで疲れてなかったからぼんやりとしか覚えてなかったのね」
ゴドルフィンバルブは優しい口調で俺にそう説明する。しかし、一体何の用で……?
「それはもちろん、あなたを褒める為よ。今まで良く頑張ったわね」
「えっと、ありがとうございます」
「さて、そんなあなたに贈り物。この中の三つなら何が欲しいかしら?」
そう言ってゴドルフィンバルブは三つの贈り物を差し出す。俺はその中から──。
dice1d3=2 (2)
1.トレーナー指南書 2.不調にかからなくなるおまじない 3.フォールの好きなお菓子
- 86二次元好きの匿名さん23/10/16(月) 23:54:38
話の筋的にそれらしいもの引いたな
不調に良くなってるから実利的にも助かる - 87123/10/17(火) 00:26:34
「それじゃ、不調にかからなくなるおまじないで。あまりフォールにも心配かけられませんから」
「なるほど……いいわ。あなたにやり方は教えられないけど、特別に私が掛けてあげましょう。さ、目を閉じて……」
俺はゴドルフィンバルブの言う通り、軽く目を閉じる。彼女の指がおでこに触ると、俺の身体がたちまち軽くなっていった。
「あの……どうして俺をウマ娘にしたんです? というかなぜ人をウマ娘に?」
「え? えっと、そうね……一言では言えないのだけれど……簡潔に言えば『そうなる事で助かる者がいるから』、かしら?」
「ウマ娘になる事で助かる人が……?」
まぁ、確かに助かってはいるが……。ところでなぜゴドルフィンバルブの方がちょっと照れているんだ……?
「……そろそろ時間みたいね。さ、もう戻りなさい。困ったらいつでも呼んでね。いつでもは無理だけど、応えられる時は必ず応えるわ……」
ゴドルフィンバルブはそう言って消えていく。それと同時に俺の意識も薄れていった……。
ぱちり、と目が覚める。清々しい目覚めではあるが、時計を見るともう夜の7時になっていた。横を見るとフォールが涙の跡を残しながら寝息を立てている。
……彼女には感謝してもしきれない。この不甲斐ないトレーナーの為にどれだけ頑張ってくれただろう。俺は申し訳なさを感じつつ、ここまで心を砕いてくれた彼女の優しさに嬉しさを覚えた。
きっともうあんな悪夢は見ないだろう。何の根拠もない確信だったが、フォールの姿を見ていると何故かそう思えて仕方なかった。
トレーナーの力量 dice1d10=2 (2) +50
- 88二次元好きの匿名さん23/10/17(火) 00:27:47
G1では÷4されると考えると大きな一歩だ
- 89123/10/17(火) 09:55:30
翌朝、学園に行くといつも通り芝のコースを走るフォールが居た。俺は出来るだけ目に留まるよう真正面から歩いていく。
「……おはようございます」
「おはよう。今日も頑張ってるな」
フォールが微妙そうな顔で挨拶する。昨日あれだけ目の前で取り乱したら、確かに気まずいだろうな。とはいえ俺も挨拶しただけでここからどう話を始めようか考えている所だが。
とりあえず何か世間話でもして場を持たせようかと考えていると、先に口を開いたのはフォールだった。
「……ごめんなさい」
「えっ?」
「私、本当は気付いてました。トレーナーさんが日に日にやつれていくの。でも私のせいでご両親のことを思い出させてしまったのかと思ったら……声を掛ける勇気が出なくて……」
……彼女も辛かっただろう。目に見えて元気が無くなっていく人間を見ながら、それでも何も出来ないというのは。ましてその原因が自分のせいなんじゃないかと思っていたなら尚更だ。まずはきちんと弁明するべきだろうと思い、俺はフォールにこれまでの事をきちんと伝えた。
「……つまり、トレーナーさんが眠れなくなったのは自分のせいで、私は関係ないと?」
「まぁ、そういう事だ。変に時期が被っただけで君は何も悪くない。誤解させてしまってすまなかった」
「あの、今はもう見てないんですよね? その……ご実家の夢は」
「ああ。もう見る気配も無さそうだし、今日からは安心して寝られるよ」
そう言うとフォールも少しホッとしたようで、またいつもの無表情に戻ってしまった。
「……トレーナーさんの事情はよく分かりました。すみません、取り乱してしまって」
「いやいいんだよ。悪いのは何も伝えなかった俺の方だ。さ、朝練を再開しよう」
俺がそう言うと、フォールは何も言わずに頷いてまた走り出す。
……俺が走るNHKマイルは5月。本番はもうすぐそこまで近付いていた。
トレーナーの調子 dice1d3=3 (3)
1.絶好調 2.好調 3.普通
スタミナ練習 dice1d20=7 (7) +39
- 90二次元好きの匿名さん23/10/17(火) 10:03:09
惜しい
間に合わなかった上調子も下振れとは - 91123/10/17(火) 10:52:25
そしてNHKマイルの日がやってきた。
一月という日数は数ヶ月続いた不調の分を取り戻すにはいかんせん短く、そのせいでスタミナ練習も上手くいかない所はあったものの、それでもアーリントンカップの頃よりは遥かにマシな体調になった。
それもこれもゴドルフィンバルブが掛けてくれたおまじないのおかげだろう。あの人にはいつか礼を言わなければ。
「そういえば今日でGⅠ初挑戦でしたっけ。ただでさえトレーナーさんは体調を崩しやすいんですから、プレッシャーに呑まれないで下さいよ」
「大丈夫だよ。俺には女神が付いてるからな」
「お、トレーナーさんも口が上手くなりましたね。そんなに褒めても何も出ませんよ」
……君の事ではないのだけれど、まぁ否定するのも野暮だ。ゴドルフィンバルブの事は胸にしまっておこう。
しかし……GⅠ初挑戦か。そういえば勝負服を見せるのも初めてだな。せっかくフォールも居ることだし、一応感想を聞いておこうか。
「ところで、この勝負服どうかな? 似合ってるか?」
フォールの反応 dice1d100=92 (92)
モチモチトッポギは… dice1d2=1 (1)
1.出る 2.出ない
- 92二次元好きの匿名さん23/10/17(火) 10:55:07
この反応はスポーティ路線かな、格好良さそう
そしてトッポギも出るとはますます難しい状況だなあ
頑張れ…… - 93123/10/17(火) 11:16:57
「君が前に言ってた事を反映してデザインを起こしてみたんだが、どうかな? 似合ってる?」
そうですね……と言いながら俺の周りを一周するフォール。
「うん、素晴らしいと思います。レースで走る事を加味してもほぼ満点に近いんじゃないでしょうか。流石中央のトレーナーは能力が高いですね」
「そ、そうか? ちょっと照れるな……」
などと言っていると、不意に扉を叩く音がした。
「はい?」
「失礼、入っても良いだろうか?」
明らかにレースの係員ではない声。思わず先のムーンライクジュエルが頭に浮かび、身体に少し緊張が走る。
「……どうぞ」
「ありがとう。忙しいのにすまないな」
そう言いながら入ってきたのは──あのモチモチトッポギだった。
「こんにちは。君と同じNHKマイルに出走するモチモチトッポギという者だ。出走前の挨拶に来ただけだからすぐに邪魔するよ」
モチモチトッポギはトレーナーを dice1d2=2 (2)
1.覚えてる 2.覚えてない
- 94123/10/17(火) 11:42:07
……モチモチトッポギ。いつかのオープン戦でほぼ全力の俺を破った怪物。その後俺も一度彼女に勝ったが、未だ底知れない雰囲気を醸し出す謎のウマ娘だ。
「あの、なぜここへ……?」
「ん? ああ……ただの願掛けだよ。レース前は礼儀正しくしていた方がより遺憾なく実力を発揮できるからね、こうして出走者全員に挨拶しに行ってるのさ」
なるほどそういう事か。もしかしたら俺が敵視し過ぎているだけで本当はとてもいい子なのかもしれないな。
「ところで君……前にどこかで会ったかな?」
「え?」
「いや、失礼な事を言って申し訳ないのだが、どうも思い出せないんだ。いつだったか会ったような……どこだったかな……」
……何故だろう。別に悪い事ではないのだがすごくショックだ。視界の端でフォールがニヤついているのが分かる。やめろ、君も似たような物だっただろ。
まぁ、冷静に考えてみれば最後にモチモチトッポギとレースしたのなんてもう半年くらい前な訳だし、覚えてないのも致し方ないということか。うん、そういう事にしておこう。
「大丈夫ですよ、無理に思い出そうとしなくても。もしかしたら他人の空似で本当は会ってないのかもしれないですし」
「うーん、そうだな……。思えば会話した記憶もないし、もしかしたら知り合いに似ていただけかもしれない。変な事を言い出してすまなかった。今日はお互いに頑張ろう!」
「はい!」
……絶対に思い出させてやる。
dice1d100=54 (54) +(85+52)÷5-5
70以上で勝利
dice1d100=7 (7) +200÷5
- 95二次元好きの匿名さん23/10/17(火) 11:52:44
相変わらず逆境に強いなトレーナーさん
そしてこの人と戦うとなんかいつも調子が悪いトッポギさんである - 96123/10/17(火) 18:29:12
「ハァッ、ハァッ、ハァッ……!」
危なかった。ガス欠ギリギリのスタミナ、半バ身差まで追い詰められる接戦。あと少し条件が悪ければ負けていたかもしれない。
「……ッ! よッ……しゃああッ!!」
……だが、それでも1着は俺だ。
「おめでとう、サンライクガベージ君」
フォールの下へ駆け寄ろうとすると、穏やかな声で呼び止められた。この声は……モチモチトッポギか。
「やっと思い出せたよ。そう、確かあれは……オープン戦だったかな?」
やっと思い出したか、今更気付いても遅いぜと思いながら振り返る。だが、そこにあったのは敗北の屈辱に塗れた顔ではなく──。
「……そうか、君だったのか。君が……」
厳しさを湛えながらどこか悲しさを秘めた、苦しそうな顔だった。
「……これから私はスプリンターズステークスに出ようと思っている。もし今後の予定が無いなら出てくるといい。私は君を待っているから」
「あの、何を……?」
「また会おう。次は私ももっと力を付けて出るとするよ」
そう言うとモチモチトッポギは地下バ道へと帰っていってしまった。あの反応、まさか……。
何にしても俺の上半期はこれで終わり。次は6月、ユニコーンステークス。フォールの出番だ。
フォールの体調 dice1d5=2 (2)
1.絶好調 2.好調 3.普通 4.不調 5.絶不調
スタミナ練習 dice1d20=8 (8) +46
- 97二次元好きの匿名さん23/10/17(火) 18:34:03
疑惑がどんどん深まっていく
- 98二次元好きの匿名さん23/10/17(火) 18:34:21
G1勝利とてもめでたい
そしてこれでマイルCSへの不安はなくなったかな?
フォールも好調そうで何より - 99123/10/18(水) 00:37:34
「調子良さそうだな、フォール」
「ええ。トレーナーさんが自分の練習にかまけてくれたお陰で、時間はたっぷりありましたから。調整も楽でした」
「手厳しいこと言うなぁ……」
しかし彼女の言う通り、年が明けてからここまで随分とフォールに負担をかけてしまった気がする。
アーリントンカップでは要らぬ心配をさせてしまったし、これからは彼女の為にも時間を割いていかないとな。
「……それにしても、あの子は出てないんでしょうか」
「あの子?」
「ムーンライクジュエルさんですよ。立ち居振る舞いはともかく、私は結構好きな子だったんですが……」
……フォールの彼女に対する評価はともかく、確かにムーンライクジュエルの動向は気になる。一体彼女は何をしているのか……。
ムーンライクジュエルはレースに dice1d2=2 (2)
1.出た 2.出なかった
- 100123/10/18(水) 01:11:29
出走者一覧には名前が無かったので、手元のウマホで検索してみる。
そこで最初にヒットしたのは……『ムーンライクジュエル、GⅡ制覇』『ジャパンダートダービーに出場する意思を見せている』といった内容の記事だった。
「ふーん、彼女もジャパンダートダービーに出るんですか。なるほどね……」
そう言ってフォールは黙ってしまった。まぁ、意識できるライバルが居るのはいい傾向だ。
そうこうしている内にもう出走する時間だ。フォールが立ち上がり、ぐぐっと伸びをする。
「さて、今日も頑張っていきましょうか。彼女にも伝わるような走りをしてきますよ」
「ああ、行ってこい!」
そうやって送り出したフォールの顔は、まるで獲物を前にした野獣のようにギラギラとしていた。
dice1d100=87 (87) +(88+52)÷3+5
60以上で勝利
- 101123/10/18(水) 01:53:52
「よしっ!」
有無を言わさぬ圧巻の勝利に、俺も思わずガッツポーズをしてしまう。
フォール自身まだまだ余裕といった感じの表情で、誰が見ても強いレースなのは明らかだった。
「かなり良い調子で走れました。本番もこんな風に走っていきたいですね」
勝利後のインタビューもだいぶ板に付いてきた。
これまでフォールに強者の貫禄を感じる場面はいくつかあったが、最近はそれがより分かりやすくなってきた様に思う。このまま行けば名実ともにスターウマ娘として歴史に名を刻むのは明白だろう。
それだけじゃない。俺自身トレーナーとしてもウマ娘としても成長を感じる場面が多くなってきた。GⅠにも勝って実績は十分、トレーナーとしても成功しつつある。
「……そろそろかな」
そろそろ報告してもいいかもしれない。父さんや母さんともう一度話をしたい。今度は電話のような不確実な物ではなく、学園を通してきちんと顔を合わせて話し合おう。
……そして、認めてもらうんだ。俺を産んで間違いじゃなかったと。俺はあなた達の子供なんだと。
dice1d2=1 (1)
1.話す 2.話さない
- 102二次元好きの匿名さん23/10/18(水) 02:52:47
やめておけよ……
- 103二次元好きの匿名さん23/10/18(水) 12:08:35
前は顔が見えないからイタズラと思われたところもあるしな
あえて縁を切りたくない理由も含めて気になるところではあるが
果たして鬼が出るか蛇が出るか - 104二次元好きの匿名さん23/10/18(水) 12:40:05
「……お待ちしていました、トレーナーさん。お二人はこちらのお部屋でお待ちして頂いているので、準備が出来たらどうぞお入り下さい」
たづなさんの先導で学園内の一室に案内される。普段はトレーナー同士のミーティングなどに使われる空き会議室だが、今日だけは別の人間が中に入っている。
「し……失礼します」
冷たい指先を必死に動かし、いつもより重い扉を開けると──。
「……お前」
そこには、俺の両親が居た。
「……それで、こっちがDNA鑑定の結果。こっちが学園がやった身辺調査とかの結果。これらを総合して人間だった頃の俺と今ここに居るサンライクガベージが同一人物だっていう風に認定された」
一応ある程度のデータを見せながら俺が俺である説明を行う。だが、父さんも母さんも俺のことが気になって目が滑っているようだった。
「で、今は理事長から許可をもらってトレーナー業をやりながらウマ娘としてレースにも出てる。この前GⅠにも勝ったし、多少は有名になったんだ。だから、その……」
俺は、その先の言葉を継ぐ事が出来なかった。ここから先は俺が言い出すのではなく、2人に言ってほしい。よく頑張ったなと、流石俺達の子だと、そう言ってほしかった。
……10秒か、20秒か。口を開いたのは父さんだった。
dice1d3=3 (3)
1.……信じられる訳ないだろう。
2.それで、俺達の金はどうなるんだ?
3.俺達をコケにしやがって……。
- 105二次元好きの匿名さん23/10/18(水) 12:45:16
科学的証拠と社会的権威に裏付けられてそれが言えるあたり
もう自分が威張るとか支配とかして俺って素晴らしいと思い込みたいだけのやつらなのではこの親…
いや続きが出てみれば案外違うのかもしれないし待ってみよう - 106二次元好きの匿名さん23/10/18(水) 20:49:36
「……俺達をコケにしやがって……」
「えっ……」
「GⅠなんぞ勝って有名人になって……さぞ気分が良いだろうなぁ? えぇ!? こんな所にまで呼び付けやがって、親より偉くなったつもりか!!」
「ちがっ、そんなつもりじゃ!」
俺は必死に弁明しようとするが、2人の怒りは収まらない。
「どうせ私達のこと見下してるんでしょ? 金の無心ばっかりで何もしてくれない、最低な親だとでも思ってんでしょ!?」
「何がウマ娘になっただ、ふざけんなよ!! 誰に育ててもらったと思ってんだ!! 舐めやがって!!」
違う、違う、違う。こんな事を言われる為に今まで頑張ってきたんじゃない。
思考が俺の頭を駆け巡る。この状況を打破するには? どうして2人は俺を認めてくれない? 今までの努力は全部無駄だったのか?
頼む、もうやめてくれ。俺はただ、ただ……。
dice1d2=2 (2)
1.サンフォール
2.モチモチトッポギ
- 107二次元好きの匿名さん23/10/18(水) 20:56:25
このレスは削除されています
- 108二次元好きの匿名さん23/10/18(水) 20:59:07
頼れるのはライバル兼ご同輩(疑惑)か
なんというかこの親は一周して哀れだな
自分たちがろくでなしの自覚があったってことは本当は子供がどうして欲しいかもわかってそうなんだよな
分かった上でそんなことをしたらこいつが自分より幸せになるじゃん許せん
…みたいな頭の終わり方を感じるがさて実際のところはどうなのか - 109二次元好きの匿名さん23/10/19(木) 01:29:15
「失礼します」
突然、鈴の様な音の声が扉の向こうから聞こえた。そこから出てきたのは……俺と何度も刃を交えたウマ娘、モチモチトッポギだった。
「……誰よアンタ」
「申し遅れました。私、モチモチトッポギと申します。お初にお目にかかれて光栄──」
「そんな事は聞いてない!! 部外者は出てけって言ってんの!!」
母さんの怒りがモチモチトッポギに飛ぶ。しかし彼女は優雅な立ち振る舞いを崩すことなく答えた。
「いいえ、彼の身に起こった事は私にも関係あります。なぜなら私も彼と同じ、元人間のウマ娘ですから」
……え?
「それから……大変申し訳ないのですが、あまり大声で会話なされるのはお控え下さるようお願い致します。お二人の声が廊下まで聞こえてきましたので」
「あ……」
「最近はどこから情報が漏れるか分かりませんので、ご配慮の方お願い致します。特にサンライクガベージ君は"出自不明のGⅠウマ娘"として注目されやすく、ちょっとしたスキャンダルでもすぐ火が点いてしまいますから。例えば……彼女が親類から金を無心されていた、とかね」
モチモチトッポギは静かに、しかし有無を言わせぬ口調で父さんと母さんを牽制した。
「お……俺達を脅すのか!?」
「まさか。彼が誰にお金を渡そうと私に口出しする権利はありません。ですが、このような金の流れがあればいずれお二人も厄介な目に遭うと忠告しているのです。ですが、もし金が足りないと言うのであれば──」
モチモチトッポギが2人の前に小切手を差し出す。金額欄には20,000,000と書いてあった。
「手切金です。お二人が暮らしていくのに当分困らない額をご用意しました。これを受け取ったらもう彼には連絡しないように」
「アンタ、いきなり何言って──」
「受け取らないのですか?」
……モチモチトッポギの声が鋭く響く。父さんと母さんは突然の選択に戸惑い、躊躇い、悩んだ末……ポツリと「わかった、もう連絡はしない」と言葉を漏らした。 - 110二次元好きの匿名さん23/10/19(木) 01:35:57
ほぼほぼわかってたがやはりそうだったのか
しかし2000万とはまた太っ腹な……
確かNHK2着賞金が5200万らしいがそこからなのだろうか
あるいはこれでベテラントレーナーだったりするのかな - 111123/10/19(木) 02:09:13
「すまなかったな。勝手に話を進めたりして」
「いえ、俺の方こそすみませんでした。お金の方は近い内に──」
「構わないよ。元はレースで稼いだ賞金なんだ。元々金には困ってないから返さなくていい」
2人が帰った後、モチモチトッポギに学園外の喫茶店に誘われたので付いて行く事にした。理由はもちろん……さっき彼女(?)が言ったあの言葉についてだ。
「あの、俺と同じって……本当ですか? 元人間のウマ娘って……」
「ああ。私も君と同じ、人間からウマ娘になった者の一人だ。正確には『トレーナーからウマ娘になった者の一人』だがね」
平然と答えるモチモチトッポギ。だが俺の心は未だ騒ついたままだ。
「もう一つ質問なんですけど……どうして俺が元人間だと気付いたんですか? あなたと話したことないですよね?」
……瞬間、モチモチトッポギの眉間に皺が寄る。数秒の逡巡を挟んで、彼女は口を開いた。
「それについてはまだ答えられない。私が拒否しているから答えたくないのではなく、確証がないから答えられないと理解してほしい。もう少ししたら君にも話すから、それまで待っていてくれ」
どういう事だ? 意味が分からないが、とにかく今はやむを得ない事情で答えられないという事は分かった。じゃあ、最後の質問だ。
「どうして俺にあそこまでしてくれたんですか? 俺にはあなたに良くされる理由が分からない。なぜ俺に……」
そう聞いた時、モチモチトッポギは懐かしそうな顔で答えた。
「……知り合いに似てるんだよ、ウマ娘の姿の君がね。だから君には幸せで居てほしいんだ……」
そう言った後、彼女が俺の質問に答える事は無かった。窓の外は梅雨が降っていて、暗い雲だけが空を包んでいた。
フォールの体調 dice1d5=4 (4)
1.絶好調 2.好調 3.普通 4.不調 5.絶不調
- 112二次元好きの匿名さん23/10/19(木) 02:17:07
うーん?
もしかしてウマ娘になった方がいい人物と男になった方がいいウマ娘の体が取り替えられているのか? - 113二次元好きの匿名さん23/10/19(木) 11:07:54
保守
- 114二次元好きの匿名さん23/10/19(木) 18:36:20
──控室の中、ムーンライクジュエルは手元の資料をめくっていた。
脚質、適正、体格、性格、得意なコース、勝ちやすい形、怪我や病気の履歴など、出走者全員の情報が書いてある。ムーンライクジュエルは一枚一枚注意深くめくりながら、もはや全て頭に叩き込んだはずの情報を念入りに確認していく。
ふと、手が止まる。そのページに書いてあるのは出走者の1人である『サンフォール』の情報。今回のレースでも有力候補として名前の上がる、近年のダートレースでも屈指の実力者だ。
少し情報を眺め、ムーンライクジュエルはまた何事も無かったかの様にページをめくり始める。
情報は良い。知れば知るほど余計な畏れや尊敬が削ぎ落とされ、『怪物』から『ただのウマ娘』へと成り下がる。あたしと何も変わらない、『ただのウマ娘』へと引きずり降ろせる。
そう、例えあたしを負かしたあの子でさえも。あたしにとっては出走者の1人に過ぎないんだ。
「ジュエル、他の出走者の方々に挨拶は終わったかね?」
……またノックもなしにトレーナーが入ってくる。集中の切れたムーンライクジュエルは心の中で舌打ちしながらそちらに向き直った。
「終わってなきゃのんびり資料なんか読んでないでしょ。見て分かんない? あと毎回入る時はノックしてって言ってるよね」
「ああ、忘れていたよ。すまなかったね」
悪びれる様子もなくトレーナーは謝る。デリカシーも無ければ反省もない、最悪のトレーナーだ。
……だが、信頼はできる。ムーンライクジュエルに情報の素晴らしさを教え、挑発の仕方を教え、走り方を教えたのは間違いなくトレーナーだ。間抜けでも、デリカシーが無くても、ムーンライクジュエルが師と仰ぐのはただ1人だった。
「さぁ、やれる事は全てやった。後は──死ぬ気で走りなさい」
……トレーナーの名はモチモチトッポギ。ムーンライクジュエルが、たった1人『怪物』と呼ぶウマ娘。
dice1d100=41 (41) +(88+52)÷5−5
70以上で勝利
dice1d100=26 (26) +200÷5
- 115二次元好きの匿名さん23/10/19(木) 18:48:49
接戦してたところをまとめて誰かにちぎられただと
- 116123/10/20(金) 00:57:49
「はぁっ……はぁっ……」
……理論は間違っていなかった。終盤にあの子を抜かす所までは予想通りだったし、展開的には他の奴らが突っ込んできても十分対応できるはずだった。はずだったのに。
「お疲れ様。レースは──」
ガンッ、と地下バ道の壁を叩く。トレーナーは少し驚いて、言葉を失う。
「……くそっ」
理論は間違ってなかった。予想は間違ってなかった。正着手を打ち続ける事は出来た。だが、それでも。
「……間違ってないだけじゃ、足りないんだよ……!!」
……足りなかったのは、才能だ。
それを認めたくないからずっと努力してきたのに。才能なんてひっくり返せると信じてきたから頑張ってきたのに。結局はその結論に帰結してしまった。
なら、あたしのしてきた努力とは何だったのだろう? 才能という穴を塞ぐ為にそれ以外の全てを固めた結果、結局は才能という穴が余計目立つだけだったと言うのなら、いっそ最初から──。
「ジュエル」
「……なに」
「コーナリングのせいか、最終コーナーで少し減速していたね。もしあそこで加速できていれば、君が差し切っていたはずだ」
「え……?」
「安心しなさい。君はまだまだ速くなれる。自分の限界に見切りを付けるのはそれからでも遅くない筈だ」
さあ帰ろう、とトレーナーが背を向ける。あたしはトレーナーの背中を追いかけながら、少しだけ涙を流した。 - 117123/10/20(金) 00:59:04
今日はマジで眠いんで寝ます
次回、スプリンターズステークスで全ての謎が明かされる…? - 118123/10/20(金) 11:12:08
七月。学園のウマ娘達が夏合宿と称して海へと繰り出す季節。
ジャパンダートダービーに出るため俺達は少し遅れての到着となったが、それでも夏の活気はバチバチと感じていた。
「それじゃ荷物も下ろしましたし、トレーニングしましょうか。トレーナーさんも着替えてきて下さい」
フォールも今年の夏はかなりやる気らしい。直前のジャパンダートダービーで惜敗したのもあるだろう。彼女の為にもトレーナーとして頑張らなくては。
「そういえば、トレーナーさんは水着って買ってきたんですか? スク水の方じゃなくて、遊ぶ用の」
「え? えーっと、どこに置いたかな……」
トレーナーの恥じらい dice1d100=53 (53)
フォールの反応 dice1d100=18 (18)
- 119二次元好きの匿名さん23/10/20(金) 11:44:59
なんかこれまでの傾向からすると男の頃から人に肌見せるの恥じらってるだけかもしれない気がする
- 120123/10/20(金) 17:24:24
「……一応買っては来たけど、結構恥ずかしいぞコレ」
「んー、スク水よりはマシって感じですね。というか下着は恥ずかしがらないのに何で水着は恥ずかしがるんですか」
「下着は他人に見られないけど水着は見られるだろ? それが嫌なんだよ……」
しかしフォールは「ふーん」とだけ言ってまた興味無さそうに外へ出て行ってしまった。フォールが言うからわざわざ買って着たのに……。
それにしても……潮風が気持ちいい。東京の海は何度も見たが、こういう観光地然とした海に来たのは初めてだ。中高は修学旅行になんて行かせてもらえなかったし、家族で出かけるなんて事も無かったから。
窓の外ではフォールが俺に手を振っていて、さらにその向こうに見える砂浜では学園のウマ娘達が思い思いのトレーニングをしている。揺らめく蜃気楼の中で、空と海と砂のグラデーションだけが確かに輝いていた。
……今年は、忘れられない夏になりそうだ。
トレーナーの力量dice1d30=28 (28) +52
- 121二次元好きの匿名さん23/10/20(金) 17:30:47
ここにきて大爆発でビビる
シンプルに見られるのが嫌ってあたりやはり性別問わず感ある気がしないでもない - 122123/10/21(土) 00:25:17
「ど……どう、ですか……?」
「……頑張ったな! またタイム更新だ!」
夕暮れの砂浜でフォールと声を上げて喜ぶ。上手く練習に集中できたおかげか、今年の夏は大きく実力を伸ばす事が出来た。
まぁ、少し心残りはあるが……。
「何考えてるんですか? トレーナーさん」
「えっ!? ああいや、その……結局夏らしい事できなかったなって思ってさ」
「そうですか? 確かにこの夏はずっとトレーニングばかりで、あんまり遊んだ思い出はありませんけど……」
それはそれでいいじゃないですか、と首を傾げるフォール。いやいや、そういう事じゃなくて……。
「そこまで言うなら今日は夏祭りにでも行きますか? ちょうど今日が開催日ですから」
「いいのか?」
「良いも何も、元々私一人でも冷やかしに行こうと思ってましたので構いませんよ。友達は皆ヘトヘトで一緒に行く人も居ませんし」
ならお言葉に甘えて、という事で俺達は祭りの会場で待ち合わせる事にした。「せっかくなら」という事でフォールは浴衣を着付けてもらう事にしたらしく、到着が少し遅れるのだとか。
そんな訳で先に俺一人で会場までやってきたのだが……。
「キミ可愛いね〜、どこの学校の子? ウマ娘って事はトレセン学園? え、待ってめっちゃ良いとこの子じゃん! ちょサイン貰っていい? 一緒に写真とか撮ろうよ!」
……質の悪いナンパ男に絡まれてしまった。思えば休日はひたすら勉強、たまに出かける時もフォールと一緒だったから、こんな風に絡まれる事は無かったな。
しかしウマ娘の膂力で強引に突破するというのも色々と良くない気がする。さて、どうしようか……。
助けに来てくれたのは dice1d3=3 (3)
1.サンフォール 2.ムーンライクジュエル 3.モチモチトッポギ
- 123123/10/21(土) 01:08:09
「やあ、サンライク君。どうしたのかね?」
そう言って近付いてきたのは、モチモチトッポギだった。
「あれ、キミも友達? いいじゃんいいじゃん、一緒に遊ぼうよ! あ、オレも友達呼んでいいかな? どうせなら大人数で──」
「すまない、通るよ」
ナンパ男を全く意に介さないような動きで俺の手を引くモチモチトッポギ。だがナンパ男も食い下がる。
「えー? いいじゃんちょっとくらいさぁ! あ、そうだ! 飲み物とか奢るから一緒に回らない? ね? 一生のお願いっ!」
しかしモチモチトッポギは無視してそのまま歩き続ける。すると男も脈無しと思ったのか、舌打ちしてまた別の誰かを狙いに行った。
「君もこの手の輩は軽く捌けるようにならないとね。今の時代、どこから醜聞が漏れるか分からないから」
「……ありがとうございます。この前の事といい、何から何までやってもらって」
そう言うと、モチモチトッポギは笑いながら手を振る。
「私が勝手にやった事だ、気にしないでくれ。それよりご両親の方はどうなったかね? あの後何かされたりはしてないかな?」
「はい。あれから特に音沙汰ないですし、仕送りを止めても何も言われませんでした。これで少しは貯蓄に回せそうです」
そうか、と優しく目を細めるモチモチトッポギ。すると向こうから浴衣姿のフォールが歩いてきた。
「それじゃあ私はこれで。2人とも仲良く励みなさい」
「お待たせしました。……あれ、モチモチトッポギさん? 一緒だったんですか?」
不思議そうにモチモチトッポギの方を見るフォール。どう説明しようか迷っていると、フォールの方が口を開いた。
「まぁいいでしょう。ところで……この浴衣どうでしょうか? 似合ってますか?」
dice1d100=67 (67)
- 124二次元好きの匿名さん23/10/21(土) 01:33:11
いい感じに似合ってる
流石にファッションリーダーだ - 125二次元好きの匿名さん23/10/21(土) 10:58:50
保守
- 126二次元好きの匿名さん23/10/21(土) 19:13:08
保守
- 127二次元好きの匿名さん23/10/21(土) 23:03:12
ቺቻቺቻトッポギの名前かわいいですよね(ቺቻቺቻ)
- 128123/10/22(日) 00:13:05
「うん、よく似合ってるよ。夜の暗さに白地の柄が映えて凄く綺麗だ」
「……もしかしてトレーナーさん、ちょっと調べてきました? 何か妙に的を射た発言ですけど」
痛い所を突かれる。そう、実は前々から少し勉強してきたのだ。正月では気の効いた言葉を返せなかったし、ちょっとは教養を付けようと頑張ったのだが……流石に付け焼き刃では嬉しくないか。
「ごめん、でも本当に似合ってると思うよ。やっぱりフォールはセンス良いな」
「……選んでくれたのは友達ですけど、まぁいいでしょう。トレーナーさんの努力だけでも嬉しいです」
少し呆れながら、悪戯っぽく笑うフォール。どうやら俺の言葉はギリギリ合格したらしい。フォールが喜んでくれて俺も嬉しい限りだ。
一通りお祭りを楽しみ会場の奥の方にある神社へ向かうと、モチモチトッポギとムーンライクジュエルが居た。
「あ、あたしに負けたサンフォールだ。おめかししちゃって、呑気にトレーナーとデート?」
「こら、レースの外でそういう物言いは止めなさい。挑発とは自分に利益がある時だけするものだよ」
モチモチトッポギがムーンライクジュエルを嗜める。その姿はまるで、トレーナーと担当の様だ。
「……今、トレーナーさんのこと『トレーナー』って認識してましたね。前は『友達』って言ってたのに。という事は……」
「ああすまない、紹介するのが遅れたね。この子は私の担当、ムーンライクジュエル。折角だ、一緒に回ろう」
……そんな偶然があり得るのか? 俺とフォールは顔を合わせて驚愕した。 - 129123/10/22(日) 00:19:54
モチモチトッポギの年齢 dice1d30=4 (4) +30
元の性別 dice1d2=2 (2) 1.男性 2.女性
モチモチトッポギは
ウマ娘の①dice1d4=3 (3) を
②dice1d4=3 (3) で
失っている
①1.幼馴染 2.姉 3.妹 4.恋人
②
1.突発的な怪我
2.不治の病
3.精神的ストレスによる自殺
4.自身のミスによる事故
- 130二次元好きの匿名さん23/10/22(日) 00:23:56
このレスは削除されています
- 131二次元好きの匿名さん23/10/22(日) 00:24:53
一回り上の女性、年下の家族に問題が起きた
見事にトレーナーさんと反対だな
そして妹さんもまたヒトミミ男として生きるのが合っていなかったトレーナーさんと反対にウマ娘として生きるのが合ってなかったぽいという……
もしかしたら墓の下から元のトレーナーさんの姿をした妹さんが出てきてたりしないよね……?
トッポギいわく今のトレーナーさんは妹みたいな容姿らしいけど - 132123/10/22(日) 05:25:52
色々な事情があり一週間ほど意図的に更新速度を下げようと思います
早めに書き込めなくてごめんね…
モチモチトッポギのヒミツ①
実は、「サンライク君」か「ガベージ君」かでいつも迷っている。
ムーンライクジュエルのヒミツ①
実は、何日かに一回はトレーナーと挑発の練習をしている。 - 133二次元好きの匿名さん23/10/22(日) 13:28:25
お疲れ様です
頻度が低下しても更新を続けてくれることに感謝 - 134二次元好きの匿名さん23/10/22(日) 23:31:10
保守
- 135123/10/23(月) 00:35:40
「あ……そういえばもうすぐ花火の時間ですね。トレーナーさん、私だけ向こうへ行っても良いでしょうか?」
トレーニングやレースの事を話しながら4人で回っていると、フォールが徐に切り出した。
「花火?」
俺は誰に言うでもなく疑問を口にする。去年来た時は何も無かったような気もするが、そんなイベントあっただろうか?
「ああ、君は知らないか。ここのお祭りでは何年かに一度花火をする事になってるんだよ。確か今年は丁度その年じゃなかったかな?」
なるほど、そういう事か。俺が1人得心していると、ジュエルがマイペースに話し出す。
「あたしはもう少し遊んでいこうかな。まだまだ面白そうな屋台はいっぱいあるし、今日は全力で遊びたい気分なんだよね」
確かに俺達が回ったのは歩きながら食べられる食品の屋台だけで、射的や金魚掬いなどガッツリ遊べるタイプの屋台には顔を出していない。俺も少しはやってみようかと思っていた所だ。
「ふむ、サンライク君はどうする? 私は疲れたしこの辺りでお暇しようかと思うんだが……」
……何だか妙な選択肢になってしまったな。さて、どうしようか……。
dice1d3=1 (1)
1.フォールと花火 2.ジュエルと遊ぶ 3.トッポギと帰る
- 136二次元好きの匿名さん23/10/23(月) 00:37:05
こういうところで担当を引くのがなんか縁だよな
- 137二次元好きの匿名さん23/10/23(月) 12:24:37
「……それで、トレーナーさんは私と花火を見に行く事にしたんですか」
「まぁ、フォールを置いて他の2人と一緒に居るのもアレだしな。トレーナーとして担当を置いていく様な事はしないよ」
ふーん、と興味なさげに反応するフォール。こういう気怠げな所は出会った時と何も変わらないな。
『すみません、今私を見ましたよね? あなた学園のトレーナーですか?』
『え? まぁそうだけど……って、君さっきすごい走りしてなかった? もし良かったら俺と──』
『ふーん。じゃ、あなた私のトレーナー決定です』
……今でも全く意味が分からない。一体何を基準に何で実績も経験もない俺を選んだんだ?
「え、最初に目が合ったのがトレーナーさんだったからですけど。まぁ、あの時は私も捨て鉢になってましたし、今では少し反省してますよ」
……あまりの解答に目眩がする。GⅠ級の才能はそんな風に投げ捨てて良いものじゃないだろと思いつつ、そのおかげで無名の新人だった俺がGⅠウマ娘のトレーナーになれたのも事実な訳で、何だかとても複雑な気分になった。
「……でも、だからこそトレーナーさんに会えたのは運命だと思ってます。トレーナーさんのお陰で走る理由を見付けられた訳ですし」
「走る理由って?」
反射でそう尋ねた瞬間、俺は「あっ」と心の中で漏らした。そうだ、ずっと前から彼女は言ってたじゃないか。
「トレーナーさんと走る、そして勝つ! 私の走る理由なんてそれで十分ですよ。私、まだまだトレーナーさんを許してません。私を負かしておいて、勝ち逃げなんて許す物ですか。だから──」
その瞬間、夜空に大輪の光が打ち上がった。一瞬だけ輝いて消え落ちていくその光は──。
「──だから、私があなたと戦う日までずっと前を走ってて下さい。それまでは……私もあなたを離れさせませんから!」
──まるで、地平線に消えていく夕陽の様だった。
トレーナーの体調 dice1d5=5 (5)
1.絶好調 2.好調 3.普通 4.不調 5.絶不調
- 138二次元好きの匿名さん23/10/23(月) 12:32:20
不調止めあるとき以外いつも調子が悪い気がするぞトレーナーさん
好調なときもあるにはあったが - 139二次元好きの匿名さん23/10/23(月) 12:35:17
体調整えようとする競技者が本番で好調と不調が同じ確率ってのもな…
と思ってきた - 140二次元好きの匿名さん23/10/23(月) 12:37:35
何も調子ってフィジカル面だけじゃないしなぁ
気負いすぎちゃって空回りみたいなケースもあるだろうし、そもそも元がヒトミミだから突発的な不調あってもおかしくないだろうし - 141二次元好きの匿名さん23/10/23(月) 21:07:46
とはいえ逆境を跳ね返して勝つことにも定評のあるトレーナーさんだし今回も頑張って欲しいところ
- 142123/10/23(月) 21:11:41
夏も終わり、秋がやってくる。そして今年の秋口はスプリンターズステークス……なのだが。
「……おかしい」
今日までずっと体調を整えてきた。ストレスの掛からない食生活、規則正しい睡眠、肉体を苛めすぎない程度のトレーニング。何日も何日もかけて今日に備えてきた。そのはずなのに。
……身体が思うように動かない。筋肉に上手く力が入らず、頭が割れる様に痛む。さっきからずっと汗が止まらず、身体だけは熱くなっていく。
これは一体なんだ? ただの風邪なんかじゃない。まるで肉体だけが暴走しているかの様に体力が失われていく。俺の中で一体何が──。
「やぁ、元気かね? ……その様子では元気などとは言えないか」
「トッポギさん……!?」
声を掛けてきたのはトッポギ……だが、プライベートの彼女とは明らかに様子が違う。まさか、彼女も同じ症状に罹っているのか?
「……君には約束していたね。私が何故君をウマ娘と知る事が出来たのか、この身体の秘密とは何なのか、スプリンターズステークスで教えると」
トッポギの雰囲気が変わる。それは競技者の迫力ではなく、危機が迫った野獣のような面持ちだった。
「さぁ行こう。私は……死ぬ気で走るよ」
トレーナー dice1d100=24 (24) +(85+80)÷5
モチモチトッポギ dice1d100=12 (12) +250÷5
70以上で勝利
- 143123/10/23(月) 21:14:43
−10するの忘れてた……
ちなみに−10するとトレーナーは47、トッポギは52です
70の壁がデカい…… - 144123/10/24(火) 01:02:23
「……ッ! ハァッ、ハァッ、ハァッ……!」
酸欠になりかけの頭をどうにか動かし、何とか倒れないように立ち上がる。結果は入着も出来ずに敗北。かつてないほどの大敗だった。
だが今はそれよりも体力の消費の方が問題だった。頭がボーッとしてどうしても足取りがふらつく。普段の練習ならここまで消耗する事は無いのだが……身体が不調なせいだろうか?
「……大丈夫、か?」
息も絶え絶えのトッポギが俺に話しかけてくる。どうやら俺に肩を貸してくれるらしい。どう見ても疲れている彼女に身体を預けるのは少々不安だったが、俺も余裕がなく好意に甘えるしか出来なかった。
「後で……話せる場所を、探そう。伝えたい事が……ある」
……ここまでして伝えたい事とは何なのだろう? 俺はどこか嫌な予感を感じながらも頷いた。
「やぁ、待たせてすまない。身体の疲れが中々抜けなくてね」
その日の夜、俺とトッポギはトレーナー寮近くの喫茶店で合流した。俺はトッポギの疲れた作り笑いに胸を痛めながら、早速本題に入る。
「あの、今日のアレは一体何だったんですか? 前々からレースになると不調になりがちなのは自覚してましたけど、流石に今日のは単なる緊張とか調整不足を越してるような気がして……」
「……やはり、君も気付いていたか」
やはり? では、トッポギも何か心当たりがあるというのか?
「ああ。恐らく……私も君と同じ症状に罹っている」 - 145二次元好きの匿名さん23/10/24(火) 01:13:18
精神は男時代からウマ娘的&元々女性なのでここではなさそうだな
描写的に後付けのウマソウルが身体機能を不安定にしているとかか? - 146123/10/24(火) 02:04:38
「まずこの名簿を見てほしい。私が独自に調べた、恐らく『元人間のウマ娘』と思われる者の名前と成績だ。書類上は秘匿されているから、数十年の記録を虱潰しに漁って一人一人調べたよ。スプリンターズステークスまで言えなかったのはこれが原因だ」
トッポギから徐にB5サイズの紙を渡される。そこには数名のウマ娘の名前と競争成績が記されていた。だが、その成績は……。
「初戦は圧勝、その後も勝ちを重ねて……全員怪我や病気で引退……」
トッポギが頷く。全員初戦やジュニア級こそ華々しい戦果を挙げるものの、全員がクラシックの4月まで、中にはジュニア級の冬に引退している者も居た。
……引退している以外は俺と同じような戦績だ。俺も今年の4月に悪夢のせいで体調が最悪になったが、まさかアレも何か関係あるのか?
「次に彼女らの中でも連絡先が分かっている者に電話を掛けてみた。多くは音信不通だったりもう番号を使ってなかったりしたが、1人だけ話を聞く事が出来たよ。彼曰く……レース前は十中八九不調になったという。酷い時は立つ事さえままならなかったらしい」
それも俺と同じだ。恐らくトッポギも同じだろう。しかし話の繋がりが今一歩見えてこない。結局トッポギは何が言いたいんだ?
「……そろそろ結論を話してほしいという顔だね。良いだろう、まずそこから話そうか。恐らく遠くない未来、私達は故障する事になるだろう。正確な数字は出せないが、恐らく十中八九そうなるとだけは言える」 - 147二次元好きの匿名さん23/10/24(火) 02:06:30
保守
- 148二次元好きの匿名さん23/10/24(火) 02:06:58
このレスは削除されています
- 149二次元好きの匿名さん23/10/24(火) 02:07:55
ここからは未来を少しでも改善すべく根本原因に迫っていくのかな
なんでそうなるのかすごい気になってきてワクワクしてきたからそう願望してるだけかもしれないが - 150二次元好きの匿名さん23/10/24(火) 11:47:36
保守
- 151二次元好きの匿名さん23/10/24(火) 22:06:59
ダイスの結果で不調体質になったのにそこから設定練られるのすごい(小並感)
- 152二次元好きの匿名さん23/10/25(水) 09:32:53
「故障って……一体どういう事なんですか?」
俺が困惑しながら訊ねると、トッポギは重々しく口を開いた。
「……まず私が最初に異変に気付いたのは、君と走ったあのオープン戦の事だった。あの日私はそれまでの練習でも見た事がないほどのタイムを叩き出せた。特に体調が良かった訳でもない、本当にただ負けないよう走っただけなのに」
……俺はその言葉にどきりとした。その感覚に心当たりがあったからだ。身体は不調なはずなのに、いざレースが始まると自分でも怖くなるくらい速く走れるという違和感。メイクデビュー、ファンタジーステークス、アーリントンカップ。どれも体調不良だったのに圧勝してしまった記憶ばかりだ。
「そして、レースや併走を重ねる度に段々と気付いた。どれだけ練習しても、どんな距離を走っても体力が続かない。ガス欠なんて生温い表現じゃなく、身体にある全エネルギーを使って走る様な感覚に陥る。……君もそうじゃないかな?」
これも俺に当てはまる。どんなレースの時も酸欠になるほど息切れして、足取りが覚束なくなるほど全てを出し切っていた。
振り返ってみれば最初にフォールと戦った時も相当消耗した気がする。今日のスプリンターズステークスだって、マイルを走れるはずの俺が息も絶え絶えになりながらのゴールだった。いくら不調でもそんな事があるのだろうか?
……レース前はどれだけ体調管理をしても不調になる。一度レースが始まると驚異的な能力を発揮して勝ってしまうが、レースが終わるとまともに立てないほど消耗している。そして元人間のウマ娘は全員が怪我や脚部の病で早期引退してしまう。
ここから導き出されるのは──。
「……私は、元人間のウマ娘には本来ウマ娘が備えるべき『ブレーキ』が存在していないんじゃないか、と思っている」
トッポギは手元の資料をまとめながら言う。
「本来ウマ娘は成長の過程で加速度的に強くなっていく自己の身体能力やレースに対する本能に対し『ブレーキ』を学んでいくんだが、それには強すぎる能力で自壊するのを防ぐ意味もあるんだ。しかし人間からいきなり本格化したウマ娘になってしまった私達にはそれがない。だから──」
「……そのせいで上手く肉体を制御できず不調になったり、レースで必要以上の力を出してしまったり、怪我や病気のリスクが上がる、って事ですか」
トッポギは静かに頷いた。 - 153二次元好きの匿名さん23/10/25(水) 09:35:34
今後のルート次第では、邪神がケガさせるためにわざわざウマ娘化させてるみたいになりかねんな
- 154二次元好きの匿名さん23/10/25(水) 10:01:01
このレスは削除されています
- 155二次元好きの匿名さん23/10/25(水) 10:01:54
いわゆる肉体のリミッターがないようなものか
仮説でも原因に目星がついたならブレーキを身につける訓練もできそうだがどれだけかかるか、そして間に合うのかは未知数だな
でも普通のウマ娘の怪我にも関わってそう(怪我で引退するウマ娘は元人間の者らに近い?)だからレース界にとってもかなり意義は大きそう - 156二次元好きの匿名さん23/10/25(水) 20:50:54
保守
- 157二次元好きの匿名さん23/10/26(木) 01:37:54
保守
- 158二次元好きの匿名さん23/10/26(木) 08:07:07
- 159二次元好きの匿名さん23/10/26(木) 13:17:42
- 160二次元好きの匿名さん23/10/26(木) 21:47:21
「じゃ……じゃあ今からでもブレーキを覚える練習をすれば良いじゃないですか。後天的に覚えられるなら訓練次第で俺達も──」
「難しいだろうね。本来なら私達はクラシックの春までで潰れる存在だったんだ。むしろ走れている今の方が奇跡なんだよ」
それなら一体どうすればいい? 俺達はただ黙って自分が壊れるのを待っていろというのか? それとももう一生レースに出るなと?
「それも解決策の一つだが、私としてはもう一つ試したい事がある。それが出来るかは分からないし、君もあまり良くは思わないだろうが……」
「何ですか?」
トッポギは躊躇った様子で額に手を当て、溜息を零した。
「……私達をウマ娘にしたあの女神に人間に戻してもらう。恐らく彼女なら私達を人間に戻せるだろうし、話も通じるはずだ」
……その言葉を聞いた瞬間、俺の胸中を重たい物が満たしていった。
それはある意味で当然の選択肢だろう。ウマ娘の肉体を手放し、元の身体に戻る。ゴドルフィンバルブはきっと手を貸してくれるだろうし、それが本来あるべき姿だと言われれば否定はできない。
だが……選べる訳がない。ずっとウマ娘になりたいと思ってきて、ようやく千載一遇のチャンスを物にしたというのに。今さら人間に戻りたいだなんて誰が思うんだ?
「……気持ちはとても良く分かる。だが良く考えてみてほしい。君がウマ娘になりたいと願ったのはご両親の影響ではないかね?」
「それは……」
「もう君のご両親が君に干渉してくる事はない。君ももうウマ娘の身体を借りなくても一人前のトレーナーとしてやっていける筈だ。……そろそろ潮時だと私は思うよ」
そう言ってトッポギは席を立つ。俺は引き止めようとするが、すんでのところで躱されてしまった。
「……私は来年の安田記念を最後に引退するよ。君もこれからについて考えておきなさい」
そう言い、トッポギは店を出た。俺達の席に残されていたのは、もう中身の無くなったコーヒーカップだけだった。 - 161123/10/26(木) 21:53:13
その日トレーナーはゴドルフィンバルブの夢を…
dice1d2=2 (2)
1.見た
2.見なかった
- 162二次元好きの匿名さん23/10/26(木) 21:54:08
このレスは削除されています
- 163二次元好きの匿名さん23/10/26(木) 21:54:37
これは意外な展開
だがトッポギは難しいとは言ったが不可能とまでは言っていない
ゴッさんも様子見っぽいし、あくまで選択はトレーナーさん自身に委ねられているのだろうな - 164二次元好きの匿名さん23/10/27(金) 00:32:24
保守
- 165123/10/27(金) 09:40:30
翌日、まだ疲れの取れない身体を動かしてフォールの朝練を見に行く。
フォールは一年前と変わらず芝のコースを走っていたが、そのタイムは明らかに縮まっており、フォームも安定していた。苔の一念とはまさしくこの事だろう。
全ては俺とレースで競う為。その為に今までずっと──。
「おはようございますトレーナーさん」
「お……おはよう。今日も頑張ってるな」
俺は努めて普段通りに振る舞おうと疲労を身体の奥に押し込む。だが、フォールは俺の顔をしげしげと眺めて不安そうに言った。
「大丈夫ですか? 昨日のレースも体調悪そうでしたし、今日も顔色良くないですけど」
「ああ、実は昨日の疲れがまだ取れてなくてさ。しばらく休めばまた元通りになるから心配しないでくれ」
だが、フォールはさらに厳しい顔で問い詰めてくる。
「……嘘つかないでください。私だって疲れが残る事はありますけど、こんなに酷い状態にはなりませんよ。本当は何かあったんじゃないですか?」
「そんな事ないよ。昨日は酷い体調だったから余計疲れただけさ。それよりほら、朝練の続きを──」
「やめてください」
フォールはピシャリと拒否する。
「……本当の事を、言ってください。もうトレーナーさんが倒れたりするのは見たくないです……」
「………」
……もう隠せないか。
俺は静かに昨日あった事をポツリ、ポツリと話し始めた。
フォールの反応 dice1d3=1 (1)
1.……早く人間に戻りましょう。
2.……私との約束はどうなるんですか?
3.……分かってました。
- 166二次元好きの匿名さん23/10/27(金) 09:43:03
フォールがこう言うのはちょっと意外だね
- 167二次元好きの匿名さん23/10/27(金) 10:13:05
このレスは削除されています
- 168二次元好きの匿名さん23/10/27(金) 10:14:16
そういえば問題は怪我リスクもあるけど、
トレーナーさんの場合精神的に人間というか男だと不自然まであるところが最初から散見されてることもあるんよね
人間に戻るにしても女性のままという選択もあるのだろうか?ゴッさんがそこまで気を利かせてくれるかわからないが - 169二次元好きの匿名さん23/10/27(金) 18:09:37
一番自然な形に落ち着けるといいんだが
- 170二次元好きの匿名さん23/10/27(金) 21:14:59
俺はフォールに全てを話した。フォールは話が進むごとに少しずつ顔を下げていき、最後には表情すら見えないほど俯いてしまった。
……数秒ほど経った頃だっただろうか、フォールが突然俺の腕を掴んだ。
「……早く人間に戻りましょう。三女神に会えば戻してもらえるかもしれないんですよね? 三女神像の前に行ったらウマ娘になったなら、もう一度行けば何か……」
そう言いながらフォールはぐいぐいと手を引っ張ってどこかへ行こうとする。俺はいきなりの事で転びそうになりつつも、何とか姿勢を戻して足を突っ張った。
「ちょ、ちょっと待ってくれよ! まだそうと決まった訳じゃないし、今戻ったら皆に怪しまれる! それに君だって俺とのレースを楽しみに──」
「そんなのどうでもいいじゃないですか!!」
突然フォールが大声を出す。俺が呆気に取られて何も言えないでいると、俺の腕を掴む手が少しだけ緩んだ。
「……私は、トレーナーさんを犠牲にしてまで自分の我儘を通したいとは思いません……! 少しでも壊れる可能性があるなら早く戻るべきでしょう……!?」
「フォール……」
フォールが目元をぐしぐしと擦り、俺の方に向き直る。その目には今までにないほど強い決意が秘められていた。
「……私に出来る事があれば何でも言ってください。私、周りの人が不幸になっても関係ないなんて思えるような生き方出来ませんから」
そう言うとフォールは俺の腕を離し、「今日はもう着替えてきます」と言って校舎の方へ歩いていった。
……そしてこの日以降、フォールが芝のコースで練習する姿を見る事は無かった。
トレーナーの力量 dice1d10=6 (6) +80
- 171123/10/28(土) 01:51:00
スプリンターズステークスから2週間が経った。
あれから俺は自身のレーススケジュールを白紙に戻し、自分の身体について詳しく研究する事にした。
単純に自分の体質をどうこうしたいというよりは、不安で押し潰されそうになる恐怖を誤魔化したいという部分の方が大きいのだが……。
フォールは時々俺の手伝いをしたい素振りを見せる事もあるが、どうにか自分の練習に集中するよう説得している。
……正直言って彼女には申し訳なく思う場面も多々あるが、それでも彼女には自分のレースに打ち込んでもらわなければ。フォールにはフォールの人生があるのだから。
そんな訳で、フォールは東京大賞典に出走する事に決まった。
皮肉な事だが、レースの予定が無くなった事でフォールのサポートや知識の吸収に専念できるようになった。要らぬ心配をさせて迷惑を掛けた分、これからはより彼女の為に動いていこう。
dice1d100=8 (8)
〜10で絶不調、〜20で不調、〜70で普通、〜90で好調、〜100で絶好調
- 172123/10/28(土) 01:55:50
「流石に2/5で不調は高すぎるか」と思って新しく確率調整したのに……
こんなことある? - 173二次元好きの匿名さん23/10/28(土) 02:14:48
おつらい
- 174二次元好きの匿名さん23/10/28(土) 02:25:17
ダイス神さぁ……
- 175二次元好きの匿名さん23/10/28(土) 02:49:41
困ったことに壁を失ったことでフォールの調子がダメになったと言う筋が通るんだよな
本当ダイス神そういうところだぞ - 176二次元好きの匿名さん23/10/28(土) 11:14:28
保守
- 177123/10/28(土) 22:50:58
12月末、東京大賞典の日がやってきた……のだが。
「フォール? そろそろレース前のミーティングを……」
「………」
「フォール!」
「! ……すみません、少しボーッとしてました。何でしょうか?」
このようにフォールが上の空になってしまう事が多く、納得の行く調整が出来なかった。
……原因は、間違いなく俺だ。俺とのレースはデビュー前からの目標だったし、それが霧散してしまったとなれば無気力状態になるのも仕方ないだろう。
だが、それでも今日だけは集中してもらわなければ困る。俺は少し姿勢を正し、少し厳しい声でフォールを──。
「あ〜あ〜腑抜けた顔しちゃってまぁ。アンタ、あたしとレースする時ずっと不調だよね。もしかしてあたし嫌われてる? てか少し太った?」
と、背後から少し悪意を覗かせた声が掛かる。後ろを振り返ると、いつの間にかジュエルが控室のドアを開けていた。
俺の方には目もくれず、ツカツカとフォールに近付くジュエル。そしてフォールの目と鼻の先まで近付くと──。
「弱虫」
……真正面からフォールを罵倒した。
「アンタの事情なんてレースには関係ない。やる気無くすのは勝手だけど、レースさえ眼中に入らないならせめて他の子に枠譲れ。その1枠の為に全員クソみたいな現実抱えながら先の見えない努力してんだよ。アンタだけが不幸な訳じゃない」
じゃ、と言ってジュエルは怒りに満ちた顔を隠す事なく去っていく。フォールは俯いたまま、拳だけを握り締めていた。
フォール dice1d100=5 (5) +(88+86)÷5-10
ジュエル dice1d100=49 (49) +250÷5
70以上で勝利
- 178二次元好きの匿名さん23/10/28(土) 23:15:14
うへぇ大敗
- 179二次元好きの匿名さん23/10/28(土) 23:19:36
トレーナーが腕を上げてなければ12とかだったのが恐ろしい
流石に29.8で怪我ってことはないだろうからやっぱりトレーナーに支えられてるな - 180二次元好きの匿名さん23/10/29(日) 03:06:47
保守
- 181二次元好きの匿名さん23/10/29(日) 12:54:47
保守
- 182二次元好きの匿名さん23/10/29(日) 23:13:37
ほ
- 183123/10/29(日) 23:28:02
『ジュエル、念のため君にも言っておこう。私の身体はあと一年ほどで壊れると思う。もしそうなった場合、君の指導を続けられない事もあるから、君も心しておいてほしい』
秋の初め頃、トレーナーはそう言った。それを聞いたあたしはただ茫然としちゃって、「ああ」とか「うん」みたいな言葉しか出せなかった。
その日の夜、あたしが寝ようとするとトレーナーの事が頭に浮かんできた。次の日も、次の日も、ずっと「トレーナーが居なくなったらどうしよう」と頭の端っこで考えるようになった。
正直あたしはトレーナーが嫌いだ。元々女の癖にデリカシー無いし、何でも知ってますみたいな顔しといて割とボケやらかす事あるし、キモいくらい距離感近い所とか死ぬほど嫌い。
でも、トレーナーが居なきゃここまで勝ち上がる事はできなかった。才能の無いあたしに戦い方を教えてくれたのも、あたしに「まだ速くなれる」と言ってくれたのも、トレーナーしか居なかった。あたしはトレーナーから学べる部分は無限にあると思ってたし、トレーナーとまだまだ一緒に居られると思ってた。
……でも、どうやらそれは叶わぬ夢らしい。
トレーナーにはもう時間がない。壊れるにせよ、壊れないにせよ、トレーナーがあたしのトレーナーでいられる時間はあと一年しかない。
だったら、あたしに何が出来る? あたしはトレーナーが居ない自分を想像できない、トレーナー無しで成長できるビジョンが見えてこないなら。あたしが今すべき事は何だ?
……そんなの決まってる。あと一年でこれ以上ないほど速くなればいい。トレーナーに「私に教えられることはもう何もない」と言わせるくらい知識を吸収してやればいい。
トレーナーと一緒じゃなきゃ速くなれないというのなら、一緒に居られる間に限界を極めてやる。トレーナーが居なくたって上を目指せるくらい、トレーナーを利用し尽くしてやる。 - 184二次元好きの匿名さん23/10/30(月) 00:41:11
考えてみたら自分の身体が壊れたからといってトレーナーまで辞めてるのは奇妙な話なんだよな
もしかしたら壊れ方もまた普通のウマ娘の比ではないからほとんどと連絡が取れない状況になってて、
トッポギもトレーナーも続けられる保証がないと考えているのだろうか - 185二次元好きの匿名さん23/10/30(月) 00:52:08
頑丈さは人間のそれとほぼ変わらんって感じだったとしたら、ウマ娘の身体能力の反動はすごそうではあるよね
後は、そのケガの代償知っちゃったから、もう担当に負荷掛けられなくなってトレーナーとして廃業しちゃうとか?
肉体的な話も精神的な話もどっちもありそう - 186123/10/30(月) 01:18:31
……ふぅーっ、と息を吐き出す。初めてのGⅠ勝利は喜びというより安堵の方が強かった。
あたしは筋肉をほぐすように伸びをすると、足下に転がっているサンフォールに声を掛ける。
「もう起きなよ。その勝負服、自分でデザインした自信作なんでしょ? ダートで汚れるよ」
「……私はただ、トレーナーさんと一緒に走りたかっただけなんです」
ポツリ、と漏らすようにサンフォールが喋り出す。
「一緒に走って、どっちが速いか競い合って、終わったら2人で笑い合って……でも……」
「こんなの理不尽すぎるじゃないですか……! トレーナーさんが何をしたって言うんですか……!? トレーナーさんも私もずっと頑張ってきたのに……! ただ走りたかっただけなのに──」
「あたしには良く分かんないけどさ」
あたしはサンフォールを抱き上げながら彼女の言葉を遮った。その気持ちは良く分かる。分かるけど。
「……どんなに頑張ってもどうしようもなく前に進むしかない事が世の中にはあるんだよ。失った事を受け入れなきゃいけない瞬間が。アンタももう諦めな」
あたしはサンフォールの泣き顔を横目に、トレーナー達の下へ帰っていく。もう手に入らない物を後悔しながら、それでも手に残った物を握り締めて。 - 187123/10/30(月) 01:27:33
その日トレーナーはゴドルフィンバルブの夢をdice1d2=1 (1)
1.見た
2.見なかった
- 188二次元好きの匿名さん23/10/30(月) 01:28:18
抗うものにしか奇跡は降りてこないのは確かだが、
人生なんて飽いて飢えてが当たり前なんだと諦めるのもまた一つの道ではあるわな
そしてゴッさんがここで出るか - 189二次元好きの匿名さん23/10/30(月) 11:38:33
保守
- 190二次元好きの匿名さん23/10/30(月) 11:39:15
来たかゴドルフィン
何を話すのか - 191123/10/30(月) 20:02:51
「……起きて。話したい事があるんでしょう……?」
「ん……?」
……俺を呼ぶ声に目を覚ますと、昼か夜かも分からない不思議な草原に立っていた。どうやらまた三女神の領域に来てしまったらしい。
背後に気配を感じて振り返ると、そこには真剣な面持ちのゴドルフィンバルブが立っていた。
「こんばんは、またここに来てくれたのね」
「………」
正直、今のゴドルフィンバルブに対する信頼度はあまり高くない。これまで何人も人間をウマ娘にしてきたという事は、そのリスクも知っていた筈だ。なのになぜ俺やトッポギをウマ娘にしたんだ?
とりあえず、人間に戻れるかを訊かなくてはならないだろう。素直に真実を喋ってくれるかは置いておいて。
「……戻れるわ。私の力で今すぐにでも戻せるし、私も全面的に協力したいと思ってるの」
「本当ですか!?」
言い方的にさっきから心を覗かれているらしいのはさておき、俺は彼女の言葉に安堵した。戻らないと言われたらどうしようかと──。
「でも、今はダメ。あなたを人間に戻す事はしません」
「……は?」
さっき全面的に協力するって言ったじゃないか? なんでそうなるんだ?
「それは……」
dice1d3=1 (1)
1.あなたにはやるべき事がまだ残っている
2.トッポギが戻らないと言っている
3.分からない
- 192二次元好きの匿名さん23/10/30(月) 20:05:44
神、コワ~……
でも実際その通りなのは確かである - 193123/10/30(月) 22:51:40
トレーナーのやるべき事 dice1d2=1 (1)
1.親との決着
2.フォールとのレース
- 194二次元好きの匿名さん23/10/30(月) 22:59:50
このレスは削除されています
- 195二次元好きの匿名さん23/10/30(月) 23:00:35
そっちかあ
いやよく考えたらフォールとのレースはそもそもフォールが掲げた彼女の目標だからな
トッポギに決着を代行してもらったから改めて自分でその醜さの源を知り縁を切ってこいということだろうか - 196123/10/30(月) 23:43:57
「あなたは心のどこかで両親との正しい決着を望んでいる。それが終わらない限り、きっとあなたはずっとウマ娘になりたいという願望に囚われ続けるんじゃないかしら」
「それは……」
否定はできない。ゴドルフィンバルブの言う通り、俺はまだ両親との事を引きずっている。もしここで中途半端に人間に戻ったとしても、俺は後悔を抱えながら生きていく事になるだろう。
「でも、決着ってどうやって? もう両親とは連絡付かないんですよ?」
「それは私にも分からないわ。あなたの心が納得しない限り決着は付かないから。ゴール板の位置を決めるのも、それを踏み切ったと納得するのも、全てはあなたの心次第……」
でもね、とゴドルフィンバルブは続ける。
「あなたが強く望み続ければ運命はきっとあなたに味方してくれる。あなたがやるべき事を全力でこなして、あなたに迫ってくる選択から目を背けなければ、その先にあなたが本当に望む物が待っているはずよ」
……意味は分からないが、要するに頑張れという事なのか。理解するのも実行するのも難しい事だらけだ。
「あの、最後にもう一つだけ聞きたいんですが……どうして人間をウマ娘にするんです? この前は『それをする事で喜ぶ人が居るから』って言ってましたけど」
「そうね、言葉にするのは難しいけれど……あなた達は大なり小なり『自分でない何者かになりたい』と思っているでしょう? 私はその思いに反応してウマ娘の肉体をあげているの。そして、その想いが強ければ強いほどウマ娘としての能力も高まっていく……」
ゴドルフィンバルブは少し寂しげな顔をしながら話を続けていく。
「……レースに出た元人間のウマ娘が怪我や故障で引退するまで走り続けてしまうのはそういう執着があるからなの。私がどれだけ警告しても、自分の心を満たす為に壊れていってしまう。彼女も、モチモチトッポギもそうだった……」
トッポギ? なぜ今その名前が出てくる? 一体それはどういう事なんだ?
「……それも含めてあなたが体験しなければならないわ。彼女の最後を見届けて、それから自分がどうするか考えるのよ……」
……段々と意識が薄れていく。まだ質問したい事は山ほどあるのに、もうこの領域から出なければいけないようだ。俺はゴドルフィンバルブに手を伸ばしながら、落ちてくる瞼に抗う事すらできずゆっくりと目を閉じた。 - 197123/10/30(月) 23:44:37
というわけでクラシックは終わり
次のスレに移ります - 198123/10/30(月) 23:59:20
- 199二次元好きの匿名さん23/10/31(火) 00:00:13
このレスは削除されています
- 200二次元好きの匿名さん23/10/31(火) 00:00:42
200なら全員がそれぞれの納得を得る かも