- 1二次元好きの匿名さん21/08/31(火) 14:18:40
- 2二次元好きの匿名さん21/08/31(火) 14:19:00
実は彼女とは、幼稚園の頃から一緒だった。
自分がそれに気づいたのは小学生の時で、グループの男子とその話になってからだった。
すなわち、「ライアンって男っぽい、変だ」という話だ。
男子以上に快活な性格に加え、ベリーショートのヘアスタイルがそれを後押ししたのだろう。
自分はそれに良い感情を覚えなかったが、ここでムキになって否定することはないと思い、否定する事はなかった。いや、むしろ周りに同調することさえした。
そこで同調しておけば、自然と彼女が自分の手の中へ近づいていくような、根拠の無い奇妙な計算が働いていたのだ。
中学生に上がってもその手の話題は続いた。
恐らく、ウマ娘特有の美貌を持つ彼女をまともに話題にするのが恥ずかしいという心理が働いていたのだろう。
自分は、彼女が好きだった。
だからその手の話題には必ず反応したし―――その事を表に出す事はしなかった。ライバルを作りたくないと思っていたのだ。
そうしていると、特に彼女にアプローチするような機会も得られず、卒業を迎える事になる。
卒業してから彼女は当然のようにトレセン学園に行き(メジロの令嬢なのだから当たり前だ)、そこで自分達の関係は切れた……と、そう思っていた。
いくつかの偶然が重なった。
「あれ……?」
道行く1人のウマ娘に見覚えがあるような気がして、思わず近寄って声を掛ける。 - 3二次元好きの匿名さん21/08/31(火) 14:19:27
トレセン学園の制服だ。もしかして……その思いは的中した。
「えっ、と。どなたですか?」
「俺だよ、ほら、小学校から一緒だった……」
「……あぁ、お久しぶりです」
本当は幼稚園からなのだが、彼女と直接の面識が出来たのはその頃だ。自分からそれを口に出すのははばかられた。
彼女の所属する学園はここから遠い場所にある。なぜここにいるのか話を聞くと、近日レースに出走する為に前乗りしてきたとの事だった。日曜日に開催されるレースだ。その日、自分の予定は入っていない。
短い計算の後、意を決して口を開く。
「あの、その……応援にいってもいいかな?」
言った。
言ってしまった。
恐る恐る顔色を伺う俺に、
「……はい、ありがとうございます!」
思わず見惚れる笑顔と共に、ライアンは答えてくれた。深い安堵を覚え、同時に心臓が早鐘を打つのを止められない。
その後ニ三言葉を交わし、別れた。
思わず踊り出しそうなのを堪え、偶然に深く感謝する。 - 4二次元好きの匿名さん21/08/31(火) 14:19:51
自分と彼女の縁は切れていなかった。
その事がひたすら嬉しかった。
レース当日、彼女は直線一気の末脚で先行勢を抜き去り、見事1着に輝いた。
これで今日のセンターは彼女に決まりだ。最後まで見ていくつもりであったが、楽しみが増えた。
レース後、ライブを心待ちにする観客の間を縫って、レース場の外に出る。
レースの余韻も冷めた夕暮れ時、ライブを待つだけの街通りには人っ子一人見当たらない。
そんな中、またしても偶然に彼女に遭遇した。
「ライアン?」
「あっ……どうも」
「どうしたんだ、こんな所で」
ライブに備えて控室に入っているはずの彼女とこんな所で会えるなんて……この間といい、運が良いという事なのだろうか。
「いえ、人を待ってて……あっ、トレーナー!」
彼女の顔がパッと明るくなる。その視線の向こうには、長身の男性が1人、手を上げて駆けてきていた。
「お待たせ。ほら、忘れ物。こっちの子は?」
ライアンのトレーナーらしい人物が手渡したのは、制汗剤のスプレーだった。ホテルに置き忘れていたようだ。 - 5二次元好きの匿名さん21/08/31(火) 14:20:15
「大丈夫って言ったのに……えーと、あたしの同級生だった人です」
「おお、そうか。応援に来てくれたんですか?」
「あ、はい」
「ありがとうございます。ライアン、良かったな」
「はい!」
それから、彼らは今後の予定などを確認し始めた。自分はといえば、門外漢の立場で話に割り込む訳にもいかず、その場で立っているだけなので居心地は良くない。
ライアンは今まで見たことのないくらい明るい笑顔で会話に興じている。それだけ、信頼を置いている人ということか。
2人だけの強固な信頼関係が、傍からも見て取れた。
何となく居たたまれなくなって、別れを告げてその場を去る。
……はずだったのだが、後ろ髪引かれる思いがあり、歩を緩めてしまう。
ウマ娘とトレーナーとはどのような事を話すのか、興味もあった。
また声が聞こえる場所まで戻り、思わず足を止めてしまう。
ライアンの、真剣な声が聞こえてきたからだ。
「……それで、例の相談だったんですけど……」
「ああ……好きな人が出来た。そうだったな?」 - 6二次元好きの匿名さん21/08/31(火) 14:21:04
ドッ。
その言葉を聞いた瞬間、心臓が飛び跳ねた。
好きな人。その単語に耳がそばだつ。
出来た。前まではいなかった。
つまり―――
「トレーナー。あたし、決めました」
「そうか……ライアンがどうしたいのか、その想いを全力で応援するよ。もしかしたら今日の―――」
「ええ、想いを伝えたいんです―――あなたに」
は? - 7二次元好きの匿名さん21/08/31(火) 14:21:53
「……何だって?」
「トレーナーって、演技、ヘタですよね」
ぐっ、と近づいていく2つの影。
夕日に照らされた彼女の顔は、今まで見たことないほど真剣で―――妖しい艶を帯びていた。
「あたしの気持ちに気づいてない振りをして、応援するって線引きして……そういうの、ズルいですよ」
「……いいか、よく聞いてくれ。ライアンは何か勘違いをしている。君のそれは近くで過ごす異性へのんぅ―――!?」
影が片方の影に飛びついた。
同時に大人として諭そうとしていた声が呻き声に変わる。口を塞がれたのだ、当然だろう。
目を、覆いたくなった。
「へへ……憧れが一つ、叶っちゃいました」
「ライアン……」
ああ、いつものように快活笑う彼女は、しかしあんなに大人びた顔をしていただろうか。
アレは、誰だ?
脳が軋みを上げる。 - 8二次元好きの匿名さん21/08/31(火) 14:22:04
- 9二次元好きの匿名さん21/08/31(火) 14:22:31
「あたし、恋愛の事、何も分からないから……次は、どうすればいいですか?」
「……ふぅ」
溜息のあと、ベシッという音が響いた。
「痛ぁ!?」
「次も何もあるか。頭を冷やしてこい。ライブの準備、遅れるなよ」
それだけ言うと、トレーナーは立ち去って行った。
ただの逃避だ。おためごかしだ。彼女の事を真に思うなら、そこできっぱりと断るべきだ。ひりつく臓腑のむかつきを手で押さえ、凍りついた体を無理矢理に進ませる。
「むへへ……優しいなぁ、トレーナー」
夕日の中、もじもじとするライアンへ、ふらふらと近づいていく。震える足が、僅かに地面を擦った。
「!」
鋭敏な聴覚がそれを捉えたか、ビクッとライアンが振り返る。こちらの姿を認めたその目に冷ややかなものが混じるのを見て、泣きたくなった。
「……見てたんですね。いつから?」
「それは……そんな事じゃなくて! 何してたんだ!?」
「何って……関係ないじゃないですか」
「関係は、その、そもそもライアンとあいつは駄目だろう!」 - 10二次元好きの匿名さん21/08/31(火) 14:23:05
そう、どう考えても駄目なのだ。
大人と子供。先生と生徒。トレーナーとウマ娘。
その関係を考えた時に、誰もが否定することを今彼らはやっていたのだ。
「あいつって。失礼じゃないですか? でも、そうですね……少し、掛かりすぎました。トレーナーに迷惑は掛けたくないですし、もう強引な事はしません」
「…………」
そういう問題ではないと思いつつも、どうにもこの話題は地雷のような気がして黙りこくる。あまり彼女の機嫌を損ねるような事を言いたくなかった。
「それで……何しに来たんですか?」
「何って……」
そう言われて、迷ってしまう。
自分は何をしに来たんだろうか。彼女のレースを応援し、それを終えた彼女に近づいて……そして……だが、それは先程の光景で全く滑稽な物となってしまった。それを今更出す勇気は、自分にはない。
口ごもる俺を一瞥し、ライアンは再び口を開いた。
「クラスの他の子から聞いてたんです。『あいつだけはない』って、他の男子と一緒に言ってたらしいですね」
聞かれていた―――その事実が雷のような衝撃となって背筋を貫く。
肺から空気が絞り出されるような心地がして、思わず胸を抑えて喘いだ。 - 11二次元好きの匿名さん21/08/31(火) 14:24:53
「お、俺は、ずっと、君の事が」
「態度が変わったの、中2の頃からですよね。言いたくないけど、あたしの胸が大きくなってきてから。その時から、ちょっとキモチワルイって思ってました」
「ぇ、ちが、ま、待って……」
「確かに、女の子らしくなかったですもんね。他の子みたいに綺麗で、おしゃれじゃなくて……」
「…………」
「―――あたしなら、『簡単そう』って思ってませんでしたか?」
「―――」
ヒュッ、という風切り音。
それが自分の喉から発せられたものだということに気づいたのは、踵を返して全力で駆けだしてからだった。
気がつけば、家に帰ってベッドに横たわっていた。
今の自分は肉の塊だ。天井を眺めて、とめどなく流れる涙に枕を濡らすだけの。
どうすれば止まるのか、皆目見当もつかない。
分かっている事は1つだけ。
自分の初恋は、始まる前に終わっていたのだ。
終わり - 12二次元好きの匿名さん21/08/31(火) 14:26:50
こころがしんどい
- 13二次元好きの匿名さん21/08/31(火) 14:27:22
脳破壊は気持ち良いゾイ!
ライアンがちょっと嫌味な子になっちゃいました
大変申し訳無い
次はトレーナーとのイチャラブ書きます - 14二次元好きの匿名さん21/08/31(火) 14:28:10
- 15二次元好きの匿名さん21/08/31(火) 14:28:52
お手本のようなAくんだった
- 16二次元好きの匿名さん21/08/31(火) 14:31:28
次の参考にしたいので批評オナシャス!
- 17二次元好きの匿名さん21/08/31(火) 14:31:44
素晴らしかった
- 18二次元好きの匿名さん21/08/31(火) 14:32:34
批評といっちゃしょうもないけど……罫線使おうぜ!
- 19二次元好きの匿名さん21/08/31(火) 14:32:45
A君はこんなにライアンの心に何かを残せたりしないので解釈違いです(A君信者過激派)
それはそれとしていっぱいでた - 20二次元好きの匿名さん21/08/31(火) 14:33:21
- 21二次元好きの匿名さん21/08/31(火) 14:34:03
しんどくなれるものを書きたかったのでそう言ってもらえてうれしい
- 22二次元好きの匿名さん21/08/31(火) 14:34:34
童貞力高い描写には自信あります(白目)
- 23二次元好きの匿名さん21/08/31(火) 14:34:39
- 24二次元好きの匿名さん21/08/31(火) 14:34:44
こころがきしむ
- 25二次元好きの匿名さん21/08/31(火) 14:35:34
そういえばこれライアンな一世一代の告白の後だった……許せねぇよなぁ!?
- 26二次元好きの匿名さん21/08/31(火) 14:36:17
ああパーフェクトな勘違い童貞模写だ
心が痛いよ - 27二次元好きの匿名さん21/08/31(火) 14:36:27
あにまん民特有の集団幻覚すき
- 28二次元好きの匿名さん21/08/31(火) 14:37:26
- 29二次元好きの匿名さん21/08/31(火) 14:38:17
確かに純度の高いBSSでは無かったかも……もっと脳に来るヤツを書きたいですね……
- 30二次元好きの匿名さん21/08/31(火) 14:38:34
あ────
- 31二次元好きの匿名さん21/08/31(火) 14:39:35
脳も軋ませるんだよ
- 32二次元好きの匿名さん21/08/31(火) 14:41:55
- 33二次元好きの匿名さん21/08/31(火) 14:43:16
自覚してないだけでモラハラ気質だなAくん
- 34二次元好きの匿名さん21/08/31(火) 14:45:57
- 35二次元好きの匿名さん21/08/31(火) 14:48:58
- 36二次元好きの匿名さん21/08/31(火) 14:49:51
- 37二次元好きの匿名さん21/08/31(火) 14:51:28
- 38二次元好きの匿名さん21/08/31(火) 14:54:05
- 39二次元好きの匿名さん21/08/31(火) 14:58:28
邪悪なSSとかいってイチャラブなんだろ? って思って開いたらとんでもないものを見せつけられた
- 40二次元好きの匿名さん21/08/31(火) 15:05:40
このAくんはちょっとウザすぎて解釈違い(わがまま)
- 41二次元好きの匿名さん21/08/31(火) 15:06:00
- 42二次元好きの匿名さん21/08/31(火) 15:07:07
こういうのがいいんだよおじさん「こういうのがいいんだよ」
- 43二次元好きの匿名さん21/08/31(火) 15:17:35
- 44二次元好きの匿名さん21/08/31(火) 15:18:19
ちょっとAくんの解釈を間違えましたね……
- 45二次元好きの匿名さん21/08/31(火) 15:19:55
こういうのいいよね……
- 46二次元好きの匿名さん21/08/31(火) 15:23:40
このレスは削除されています
- 47二次元好きの匿名さん21/08/31(火) 15:26:12
- 48二次元好きの匿名さん21/08/31(火) 15:27:31
このレスは削除されています
- 49二次元好きの匿名さん21/08/31(火) 15:31:57
このレスは削除されています
- 50二次元好きの匿名さん21/08/31(火) 15:32:31
- 51二次元好きの匿名さん21/08/31(火) 17:04:39
流石にライアンがかわいそうなのであとでトレーナーとのイチャラブシーンで浄化します
- 52二次元好きの匿名さん21/08/31(火) 18:31:16
すげぇ童貞くせぇなコイツ!!!
ってなった
なった後大ダメージを受けた - 53二次元好きの匿名さん21/08/31(火) 18:33:20
- 54二次元好きの匿名さん21/08/31(火) 18:34:31
ライアンの解像度よりA君の解像度への言及が多い…これがあにまんか…
- 55二次元好きの匿名さん21/08/31(火) 18:36:00
A君のAはあにまんのAだからな
- 56二次元好きの匿名さん21/08/31(火) 18:39:07
まーたA君曇らせBSSかと思って覗いたらそんな生温いものじゃない悪意の塊のようなものを見せられた
これA君特効というか童貞特効の呪物だろ - 57二次元好きの匿名さん21/08/31(火) 18:56:38
ここマジで心が痛い
- 58二次元好きの匿名さん21/08/31(火) 19:19:49
自分も書いてる最中はそうでもなかったんですけど見返したらダメージやばかったです(童並感)
- 59二次元好きの匿名さん21/08/31(火) 19:20:11
- 60二次元好きの匿名さん21/08/31(火) 19:21:30
- 61二次元好きの匿名さん21/08/31(火) 19:26:06
A君はライアンにとってあくまで路傍の石であって存在を残すような存在じゃないんだ
ああ、昔そんな人もいたね、程度の認識でいいんだ
A君の中だけで感情が盛り上がって勘違いして勝手に下がっていくのがいいんだ(A君過激派 - 62二次元好きの匿名さん21/08/31(火) 19:42:03
二次創作でオリキャラの解釈違いが発生するとはこのリハクの目をもってしても……
- 63二次元好きの匿名さん21/08/31(火) 19:47:31
SS初心者だったけど割と良く書けたと思います(自惚れ)
ありがとうございました - 64二次元好きの匿名さん21/08/31(火) 19:50:49
破壊力の高いものを読ませてもらいました
- 65二次元好きの匿名さん21/08/31(火) 21:10:30
A君はこれまでの態度からなぜいけると思ってしまったんでしょうねぇ?
- 66二次元好きの匿名さん21/08/31(火) 21:16:00
- 67二次元好きの匿名さん21/08/31(火) 21:19:52
- 68二次元好きの匿名さん21/08/31(火) 22:10:12
途中まで読んだけど駄目だった
俺には素質がないらしい - 69二次元好きの匿名さん21/08/31(火) 22:11:24
壊すものと壊されるものがいてこそ芸術が完成するんだよ!
- 70二次元好きの匿名さん21/08/31(火) 22:21:35
壊すべし A君の初恋壊すべし
- 71二次元好きの匿名さん21/08/31(火) 22:23:02
- 72二次元好きの匿名さん21/08/31(火) 22:35:24
童貞というか単純に人の気持ちを推し量れてないだけだと思う……
- 73二次元好きの匿名さん21/08/31(火) 22:36:29
童貞だから愚かなんじゃない愚かだから童貞なんだ
- 74二次元好きの匿名さん21/08/31(火) 22:38:37
A君いじめから童貞煽りにスレが移行してる……これが次のあにまんの流行りなんですね
- 75二次元好きの匿名さん21/08/31(火) 22:45:18
ここほんと気持ち悪いポイントだと思う
- 76二次元好きの匿名さん21/08/31(火) 22:47:29
ライアンに「キモチワルイ」とか言われるのを想像しただけで心臓キュッてなる
- 77二次元好きの匿名さん21/08/31(火) 23:42:11
こんなんただのピエロじゃないですか……
- 78二次元好きの匿名さん21/08/31(火) 23:43:33
もうA君ブームは終わったんだ
悔しいだろうが仕方ないんだ - 79二次元好きの匿名さん21/08/31(火) 23:46:00
このブームのせいでライアンがまともの語れなくなってしまった