- 1二次元好きの匿名さん23/10/13(金) 22:12:43
まずはセイレーンちゃんを無断で使用したことを部長に謝罪します。この深海に出現した第7の虚妄のサンクトゥムとその守護者を討つためにはこれしか手が無かったんです。この子を、人型深海探索用重機セイレーンを兵器として使ってしまい、深海開発部の皆にはお世話になったのに恩を仇で返す結果となってしまい、申し訳ありません。
シャーレの皆には、この第7の虚妄のサンクトゥム出現の報を伝えなかった不実を謝罪します。ですが地上に顕現した六つのサンクトゥムだけで手一杯で抽出できる戦力も無いこの状況でさらにもう一本追加で出現したサンクトゥムに戦力を割り振れば他戦線が瓦解する可能性が大きかったのは事実でしょう。でも、私と新型ジェネレータを搭載したこのセイレーンちゃんなら単機でも……そうだ、発電機研究会の会長さん……すみません、あなたに載せてもらった神秘変換式ジェネレータの実働データ、渡せそうにありません。ヘイローがちかちかして、もう意識もほとんど無いんです。大丈夫です、コイツだけは道連れにしますから。 - 2123/10/13(金) 22:13:26
アリスちゃん、ごめんなさい。今度一緒にゲームしようって約束してたのに破っちゃって。嫌いになっちゃったとかじゃないの、ただ私はこれから……そう、遠いところにいくの。とってもとっても、遠いところに。宇宙よりも、深海よりも。ただそれだけ。だから私は、これからもずっとアリスちゃんが大好きだよ。
コユキちゃん、他人に迷惑かけちゃだめだよ。あなたの持つ力はあなたの思ってるよりもずっと大きくて、危険で、でも正しく使うことができたならとても、とっても素敵なものだから。
ヒマリ先輩、お世話になりました。私がミレニアムに拾われた時、口添えしてくれたのが先輩だったと聞いてます。そのあとも学園内で浮いてた私の為にいろいろとしてもらって……その、お茶菓子のセンス若干古かったですが、美味しかったです。
ネル先輩、すみません。再戦の誓いは果たせそうにありません。57戦全敗、これが私のスコアになりそうです。勝ったらコールサインを貰い受けるってあれ、皆はできっこないて思ってましたけど私は本気だったんですよ?
コトリちゃん、ありがとう。ただ相槌を打つばっかの私の為にいつも何時間もお話してくれて。コトリちゃんのお話、伝えたいって気持ちがひしひしと感じられて、あとわかりやすくって飽きなかったよ。それに、セイレーンちゃんの建造はエンジニア部の皆が手伝ってくれたからできたの。本当に、ありがとう。
マキちゃんもだ。マキちゃんがハッキングで深海探査ツアーのチケットを仕入れてきて……そう、ちょうどここだ。ここにきて、私は胸の奥が熱くなって……打ち込めるものに出会えた。立場上、私は君を叱らなきゃいけないけど、それでも感謝してる。ありがとう。
リオ会長、今ならわかります、何故過去もわからない浮浪者の私を拾ってセミナーにまで入れてくれたのかが。他の皆に役割があるように、これが私の役割なんですよね。大丈夫です、きっちり片付けますから。
先生……行ってきます。 - 3二次元好きの匿名さん23/10/13(金) 22:14:57
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- 4二次元好きの匿名さん23/10/13(金) 22:15:18
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- 5二次元好きの匿名さん23/10/13(金) 22:15:43
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- 6二次元好きの匿名さん23/10/13(金) 22:17:24
いい…
- 7二次元好きの匿名さん23/10/13(金) 22:18:06
オチは?
まさか死んでないよなあ?! - 8二次元好きの匿名さん23/10/13(金) 22:18:50
- 91主23/10/13(金) 22:19:10
すみません……
- 10二次元好きの匿名さん23/10/13(金) 22:21:14
(漂着した機体残骸の録音機器から再生されたメッセージ)
- 11二次元好きの匿名さん23/10/13(金) 22:22:14
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- 12二次元好きの匿名さん23/10/13(金) 22:23:34
……ミンチよりひでぇや……
- 13二次元好きの匿名さん23/10/13(金) 22:24:31
なまじ良い文だからBADENDだからクソ!とも言いにくいのがFuckyou
- 14二次元好きの匿名さん23/10/13(金) 22:25:00
盛大に死に逃げしやがったコイツ!
- 15123/10/13(金) 22:25:58
「……こんなもんか。これ以上はもう……」
意識が途切れかける。もう電池が切れかけているのだろう、視線を頭上に向ければヘイローはもうほとんど消えかかっていた。このジェネレータはちょっと認可できないかなぁ。
「……うん、ここなら海流が運んでくれる」
運が良ければ。そして音声を録音した防水型USBを放出して、しかし万が一のことに思い当たる。
もし、このUSBが海流に乗れず置き去りにされたら。私がここで戦ったことを誰にも知られぬまま静かに、孤独にいなくなるのだろうか。
それは嫌だ、いなくなるのならせめて何か皆に残していきたい。何か、潮に乗せられるものは……そう思い視線を下ろして、学生証が目に入る。あの日、空っぽだった私がリオ会長に渡されてから肌身離さず首にかけ続けていた、私の存在理由そのもの。
私はそれを初めて首から外すと、裏に短いメッセージを書いて、そして。
「……これだ。ここからなら、間違いなく届く」
複雑に絡み合う潮の流れ、その内の一本に希望を見出した私は学生証を放出した。この潮なら間違いなく私の声を皆の下へ運んでくれるだろう。そんな漠然とした確信が、私の中にあった。 - 16二次元好きの匿名さん23/10/13(金) 22:29:46
続いてる!やったぜもっと聞かせてください
- 17123/10/13(金) 22:37:27
さて、と。セイレーンちゃんの全長40m超の巨体をゆっくりと虚妄のサンクトゥムタワーへと向ける。
見れば少なくないダメージを与えたはずのタワーは修復が完了しており、粉砕した守護者もまた新しいのが出現して臨戦態勢だった。デカグラマトンとはちがう甲殻類を思わせる装甲に全身が三角のパーツで出来た歪な人型のシルエット、近接格闘型といったところか。また違うタイプの守護者だ。さっきのドラム缶みたいなヤツは一目見て笑っちゃったなぁ。
「それじゃ、やります、かぁ!!」
その掛け声とともに海底に土煙を上げるとセイレーンちゃんは守護者へと駆けだし、がっぷりと組みつく。駆動部にアラート?エンジニア部製アクチュエータがそう容易く壊れるものかよ!
「でぁぁぁぁぁぁあああ!!」
一歩、また一歩と守護者を押し出し、タワーへと近づく。
「どうしたぁ!?馬力が違うんだよぉ!!」
一歩進むたびに膨大な量の海底蓄積物が巻き上げられ、機体に雪のように降りかかる。マリンスノーだ。
そうだ、私がこの光も届かない暗黒の世界に恋焦がれるようになったのは、あの日この場所でコレに魅せられたからだ。
「どうよ、これが雪さ!綺麗なもんだろう!?」
さらに一歩押し出して叫ぶが、反応無し。目の前の守護者は頭部に瞬く15個もの光点で相も変わらずセイレーンちゃんを睨みつける。
「……っ!情緒のないヤツめ!いいよ、なら___」
入った、射程圏内だ。私は自爆装置のロックを解除すると___一瞬、ミレニアムでの日々が脳裏をよぎってスイッチから指が離れて。
「___綺麗な花を、見せてあげる!!!」
怯えてる暇なんてない、守るんだ、私が、皆を!!
にわかに沸き立つ恐怖、後悔。そのすべてを押しのけるように自爆装置を力いっぱい押し込んで___
F.SCT攻略戦の最中、ミレニアム近海で謎の爆発が観測された。衛星映像からはまるで海底に花が咲いたようだ、と記録されている。
それを先生が知ることとなったのは、色彩を発端とした一連の騒動を終えたしばらく後であった。 - 18二次元好きの匿名さん23/10/13(金) 22:46:56
シロコみたいに記憶喪失か重症で生きていて…
- 19二次元好きの匿名さん23/10/13(金) 22:47:29
これがあるから安易な死ネタ難しいんだよね
- 20二次元好きの匿名さん23/10/13(金) 22:49:31
ファフナーROLを思い出す
- 211主23/10/13(金) 22:52:54
- 22二次元好きの匿名さん23/10/13(金) 23:19:50
完結かな
- 23123/10/14(土) 10:04:42
「はぁ……本当にどこ行っちゃったのよ、もう……」
事件が解決し日常を取り戻しつつあったキヴォトスであったが、そんな中でミレニアム学園は未だ落ち着きを取り戻せていなかった。というのも、あの事件の中でセミナーに所属する生徒が一人行方不明になっていたのだ。そのうえ……
「深海開発部のあの重機が無くなってたって話だもの。まさか……」
彼女は深海開発部と深い繋がりがあった。それこそ、深海探査用重機セイレーンのテストパイロットを任されるほどには。彼女がセイレーンに乗って出撃したと考えられなくはないが……
「……じゃあ、どこに」
40mを超える巨体だ、戦場に出れば間違いなく人目につくだろう。しかし現実には目撃情報は一つも挙がっていなかった。そも戦場に現れなかったのならば、なんの目的で乗ったのか。動機が全く分からないのだ。
「やめよ、やめ。ここ数日同じことばっかり考えてるわ」
そう言うと早瀬ユウカは軽く頭を振り、思考をリセットする。あの事件を受けてミレニアムも無傷じゃない。復旧作業を進めつつ、片手間にはなるが抽出した余力であの子を捜索するしかないか。幸いなことにあの子も人望はあったから頼まなくてもいろんな子が探してくれている。が、それでも見つからないとなると学外にも捜索範囲を広げるべきだろうか……
そんなことを考えながら街から少し離れたところを歩いていると、側溝に何か見覚えのあるものが引っかかっているが見えた。
「あら、これは……っ!?」 - 24123/10/14(土) 10:05:12
近寄ってみればそれはミレニアムの学生証で、記入された名前と顔写真はまさに行方不明になっている彼女のものだった。慌てて紐を引っ張り、引き上げる。
「なんでここに……!?なに、この匂いは……」
混乱するユウカの鼻元を潮の香りが撫でる。匂いの元は……
「側溝から……?ここ、海水が流れ込んでる……」
側溝の先に目を向ければ、海に繋がっているのが見えた。海水がここまで流れ込んでいるとは……いや、それよりも。
「海水、セイレーン……待って、繋がりそう……」
そう独り呟き考える。海水、潮の流れ、消えたセイレーン、F.SCT攻略戦……何だ、私は何かを見落としている……?
欠けたピースに悶々としていると。
「ユウカ先輩!ここにいたんですか!」
唐突に響いたその声に、ユウカの意識が思考の海から引き上げられる。
「え?あ、あぁ。ごめんなさい、探させちゃったわよね。それで何かあったのかしら?随分と急いできたみたいだけど……」
「はい!その、衛星写真から深海開発部のあの重機の足取りが追えまして!」
「……!そう、それじゃあもしかして……!」
あの子がセイレーンに乗っていたのならようやく所在が掴める。にわかに湧いた希望にユウカは歓喜の色を隠せなかった。 - 25123/10/14(土) 19:44:50
「___12:11、セイレーンの自爆を確認しました」
明星ヒマリのその言葉に、部屋が静まりかえる。そこに、先ほどまでの期待に満ちた雰囲気は欠片もなかった。
衛星をハックして得た画像群から導きだされた結論は、酷く残酷なものであった。
あの子の世話になったからとゲーム開発部の皆を連れてきたのは完全に悪手だった。事の真相に気付き始めたのか今にも泣きだしそうだ。
「これ、脱出装置とかは___」
「実装予定だった。まだ付けてない」
「じゃあ遠隔操作とかは……!」
「それは実装する予定もなかった。ないよ」
僅かな希望をかけて振り絞ったその言葉は開発者たちに次々と否定される。……いや、あんな爆発の中では脱出装置だって意味をなさないだろう。ならば、やはりパイロットは。
だめだ、考えるな。理解してはいけない。合理性を信条とするユウカの脳内で酷く不合理な思考が荒れ狂っていた。
違う、違う、違う!!あの子は生きている!あの子のことだ、きっと人込みに流されて他学区で迷子になって近場の公園で「いえ~いソロキャン~☆」とかやってるに違いない!そうよ、それを首根っこ捕まえてセミナーに連れて帰ったらお腹すいてるだろうから美味しいもの……ステーキは重いでしょうからとりあえずおにぎりを___ - 26123/10/14(土) 19:45:16
「ユウカ。セイレーンさんを動かせるのはアリスとここにいる深海開発部の皆と、あとは彼女だけです」
その声にユウカはふと我に帰り、視線を落とす。その先には瞳に涙を溜めたアリスがいた。……あぁ、この子も気づいてしまったのか。人の死に対して一番疎そうなこの子ですらも。
「ユウカ……彼女は……彼女は……!」
そこから先の言葉は出なかった。ユウカが言葉を遮るように抱きしめたのだ。
「死ぬはずがないじゃないあの子が!!あの子の強さはアリスちゃんも知ってるでしょ!?エリドゥであれだけ暴れまわったあの子が、そんな、こんなところで……!!」
もはや自分に言い聞かせるだけのその叫びに黙りこくるしかないアリス。そんな中で。
「……ユウカちゃん、その学生証は」
生塩ノアが口を開く。視線の先にあるのはユウカが先ほど見つけた、あの子の学生証だ。
「それは彼女の……」
「……そうよ、落ちてた。落ちてたのよ!爆発の中でこれだけが無事だなんて考えられないわ!きっとあのあたりにあの子が___」
にわかに活気づくユウカであったが、それが無理をしたものであることは誰の目にも明らかだった。しかしユウカは止まらない、止まれない。止まったらあの子が死んだことを理解してしまいそうだから。まくしたてるように希望を語る彼女であったが、ふと学生証の裏に書かれたメッセージが目に入り___
「___ぁ」
膝から崩れ落ちた。理解してしまったのだ。メモ帳以下の大きさの紙に書かれた極短いメッセージから、彼女の覚悟が、決意が。
「ぁあ、あああああ……!」
感情を抑え込んでいた理性のダムが決壊すれば、あとはもう洪水だ。喉からは嗚咽が、瞼からは涙がとめどなく溢れ出る。
床に、裏向きに落ちた学生証は、その場にいた全員に対して彼女の最期を伝えるには十分だった。
『ありがとう さようなら』 - 27二次元好きの匿名さん23/10/14(土) 19:46:39
これで海泳いで帰ってきたら笑う
- 28二次元好きの匿名さん23/10/14(土) 19:48:17
関係者の心を傷つけるだけで終わるのか……?
- 29二次元好きの匿名さん23/10/14(土) 20:19:19
ここまで派手にやったらうっかり生き残っても気まずくて表に出てこれないだろうというのは分からないでもない
でも戦場が深海で、動力が自前の神秘で、自爆してるんだよなぁ - 30123/10/14(土) 20:19:19
彼女の計算は極めて正確だった。学生証を発見して数刻後、防水性USBがミレニアム自治区沿岸部で発見、回収された。収められていた音声を聞いてあるものは涙し、あるものは悔しさに唇を噛みしめ……平気な生徒なんているはずがなく、皆が皆、彼女の死を悼んだ。深海開発部の活動を問題視する声も挙がった。何かせずにはいられなかったのだろう。しかしセイレーンの本来の運用目的を無視して戦闘に使用したのはあの子の判断だったからして、その旨の裁定を公表すれば声はたちどころに消えていった。ただ、神秘を……生徒の命を燃料にするとかいうとんでもないジェネレータを開発した挙句セイレーンに載せた発電機研究会の会長は反省質送りとなった。
そうして、皆があの子の死を受け入れつつも再び日常に戻ろうとしていたのだが。
そのUSBを発端に数日間、ミレニアム自治区沿岸部で次々とセイレーンの残骸が打ち揚げられたのだ。きっとUSBと同じ海流に乗って、重いものも流れ着きはじめたのだろう。
……正直、あの爆発規模じゃあ残骸の一つも残らない見立てだったから少し嬉しかった。まるであの子が帰ってきたみたいで……
だから、深海開発部の皆には悪いけど拾った装甲板の一部をこっそり拝借させてもらった。気のせいだっていうのはわかってるけど、それでも。あの子の温もりを感じる気がするから。
早瀬ユウカは金属片を愛おしそうに握り締める。ソレに宿る熱は、夢か幻か。 - 31123/10/14(土) 20:21:49
___そしてセイレーンの残骸が沿岸部に打ち揚げられ始めて一週間が過ぎたころ、技術者たちの中で異変に気付く者が現れ始めた。
「待って、この部品は一昨日も拾ったよ」 - 32二次元好きの匿名さん23/10/14(土) 20:23:11
取り込まれちゃった?
- 33二次元好きの匿名さん23/10/14(土) 20:23:58
ミメシスか、デカグラマトンか……
- 34二次元好きの匿名さん23/10/14(土) 20:44:51
ヒエッ
- 35二次元好きの匿名さん23/10/14(土) 21:08:28
補陀落へ渡った者が戻ってこようとしている……
- 36二次元好きの匿名さん23/10/14(土) 21:14:12
次の総力戦決まった?
- 37二次元好きの匿名さん23/10/14(土) 21:15:03
ちゃんと助けて一緒に過ごすんだよ!!
ブルーアーカイブは終わらねえ! - 38二次元好きの匿名さん23/10/14(土) 21:17:17
- 39123/10/14(土) 22:05:26
「回収した残骸の中に重複するパーツがある。どういうことだ」
「おかしい。このボルト、まるで新品だ」
「装甲の形状、なんか三日前と変わってない?」
次々と発生する不可解な現象に頭を捻らせる技術者たち。しかししばらくは原因の究明よりも残骸の回収を優先していた。の、だが……
「……まさか本体が流れ着くとはねぇ」
回収され、ハンガーに固定されるセイレーンを眺めながら発電機研究会の会長は独り言ちる。目の前の鋼の巨人はコックピットのあった胸部が頭部や左肩付け根からえぐれるように消失しており、右腕も肘から下が欠損。両足も左右で差こそあれど脛の途中からなくなっている。一目見てわかる。大破状態だ。
……が、これがあの衛星写真にあった巨大な花の爆心地であったと考えると途端に不自然なものに見えてくる。なんせ虚妄のサンクトゥムタワーを消し飛ばすほどの威力の爆発だったのだ、それにしてはあまりに傷が小さすぎる。正直、原型を留めているだけでもおかしいのだ。
いや、おかしいのはこれだけじゃない。回収された機体にジェネレータが残っていたことから調査のために反省室から仮釈放されたのだが、いざジェネレータの稼働実績を調べてみると消費した神秘に対して生成した電力が少ないのだ。このジェネレータを知らない者ならエネルギーロスなども考えるだろうが、コレはその原理上ロスは極めて小さい。発電効率は99.9の後ろに無数に9が並んで%だ、それに対してこの発電量は…… - 40123/10/14(土) 22:05:45
さて、どうしたものかと頭を悩ませているとどこからか駆ける音が聞こえてきた。その音はどんどん大きくなり___ハンガーの地上用通路から、その主が姿を現す。天童アリスだ。恐らくはセイレーンのデカい残骸が回収されたという噂でも聞きつけて一目見ようとカッ飛んできたのだろう。が、あそこまで目を輝かせてはしゃいでいる様子をみると、無神経にもほどがあると感じてしまう。ほら見ろ、連れて来られたのだろうゲーム開発部の子が諫めようとしている。
しかし青髪の少女は聞く耳を持たずにセイレーンへと近づく。近くにいた作業員が危ないからと下げようとするが、それに対し困惑するように声を上げる。
「アリス、わかりません!彼女が帰ってきたんですよ!?こんな冷たいところに立たせてたらかわいそうです!座らせてあげましょうよ!クッションを用意して……あ、ゲームを持ってきました!約束しましたもんね!」
あの子は何を言っているのだろうか。帰ってきた?馬鹿をいえ、あれはただの重機で……いや、そうか。特異現象捜査部の部室では理解したように振る舞っていたが実際のところはあの子も現実を受け入れられていなかったということか。そして流れ着いた機体を見て、彼女が帰ってきたと___いや、待て。
増えるパーツ、不自然に残った残骸___まるで、自己修復したかのように。
そして消えた神秘。我々生徒の本質、魂といってもいいかもしれないソレはどこにいった?
……まさか。
「……君は、そこにいるのかい?」
その問い掛けに答えるかのように、誰も乗っていないはずの機体が軋んだ。 - 41二次元好きの匿名さん23/10/14(土) 22:10:11
…機体に精神が移った?
- 42二次元好きの匿名さん23/10/14(土) 22:12:06
ビナーみたいなヘイロー持ち機械?
- 43二次元好きの匿名さん23/10/14(土) 22:12:53
魂はまるで大気に溶け込むように……
- 441主23/10/14(土) 22:28:08
皆さま、付き合っていただきありがとうございました。
>>21にもありますように動画を見ていてピンときたのですが、思いついた内容はいまのところこれで全部となります。ただ、やはりブルアカということですので何とかハッピーエンドに持っていきたいところで……う~む、どうしたものか。
……そういや書きながら思っていたけどもこの子の名前どうしようか。
- 45二次元好きの匿名さん23/10/14(土) 22:32:01
アリス経由で意思疎通出来そうな
いっそフェストゥムにでもなるか? - 46二次元好きの匿名さん23/10/14(土) 22:38:00
- 47二次元好きの匿名さん23/10/14(土) 22:39:23
ネットワークに繋げばある程度意思疎通出来そう
- 48二次元好きの匿名さん23/10/14(土) 23:01:59
とりまエンジニア部にBluetooth繋いでもろて……
- 49二次元好きの匿名さん23/10/15(日) 05:36:25
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- 50二次元好きの匿名さん23/10/15(日) 05:42:53
なんとなく、海から引き上げられたモノに碌なものじゃない偏見もある...ここからどう転ぶかな
- 51二次元好きの匿名さん23/10/15(日) 06:24:06
お名前は安価なん?
- 52二次元好きの匿名さん23/10/15(日) 08:07:18
最も重要な部分が欠けたままで一旦閉められてるからな
- 53二次元好きの匿名さん23/10/15(日) 09:10:54
多分あれか?
アリスも人工物に魂が宿った存在だから流れ着いた機械に魂?が宿った?ことに気付けたのか? - 54二次元好きの匿名さん23/10/15(日) 09:23:49
デカグラマトンの"ダアト"とかになりそう
- 55二次元好きの匿名さん23/10/15(日) 09:29:28
本人と同一性があるならオリジンとか
- 56二次元好きの匿名さん23/10/15(日) 09:35:33
ヘイロー付き機械(生徒入り)とか黒服食いつきそうだよな
黒服出てきてどう解釈するのか知りたい - 57二次元好きの匿名さん23/10/15(日) 09:41:57
分析してたら飼い犬が駆け寄って来て匂いを嗅いでから、寂しそうに鼻を鳴らしてからワォーン…!!的なのを想像してたら何だか方向性変わってきたな…。
- 581主23/10/15(日) 11:15:16
- 59二次元好きの匿名さん23/10/15(日) 11:27:04
このレスは削除されています
- 60二次元好きの匿名さん23/10/15(日) 11:27:25
このレスは削除されています
- 61二次元好きの匿名さん23/10/15(日) 11:28:27
- 62二次元好きの匿名さん23/10/15(日) 11:32:27
ルルイエちゃん
- 63二次元好きの匿名さん23/10/15(日) 11:35:53
将陵ユミ
- 64二次元好きの匿名さん23/10/15(日) 11:37:55
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- 65二次元好きの匿名さん23/10/15(日) 11:39:15
一字付け足すと無駄に強くなりそうな名前だな
具体的には勝っちゃいけないor勝っても好転しない場面で勝てる系 - 661主23/10/15(日) 12:01:15
しまったダイスと安価が頭の中でごっちゃになってた。寝ぼけ眼で書き込むのはアカンなぁ
しかし他にも魅力的な名前も出ているので>>68まででダイスとしたいです
- 67二次元好きの匿名さん23/10/15(日) 12:05:54
弘原海エイ
- 68二次元好きの匿名さん23/10/15(日) 12:24:20
- 691主23/10/15(日) 12:58:38
- 70二次元好きの匿名さん23/10/15(日) 13:02:44
うおっすっごい名前…
- 71二次元好きの匿名さん23/10/15(日) 13:04:42
絶対本名じゃない
- 72ルルイエちゃん23/10/15(日) 13:11:45
「ミレニアム学園所属、『ルルイエちゃん』……あの、本当によろしいんでしょうか、リオさん……」
「?ごめんなさい、名前に不満があったかしら。こう、ほっぺたのここ、このルルっとした感じにインスピレーションを受けてつけたのだけれども……」
「いえ、不満はありません。可愛くてとても良いと思いますよ。そうでなくて、何の記憶もない私に学籍なんか用意して、それどころかセミナーの席まで……その、わからないんです。なんでここまでしてくれるのか」
「そう、ね……」
すみませんアイデアが浮かばなかったので>>75までダイスでリオ会長の動機お願いします
- 73二次元好きの匿名さん23/10/15(日) 19:03:44
殺したかったから
- 74二次元好きの匿名さん23/10/15(日) 19:05:05
私的な『手札』を増やしておきたいから
- 75二次元好きの匿名さん23/10/15(日) 19:05:24
- 76二次元好きの匿名さん23/10/15(日) 19:06:02
- 77二次元好きの匿名さん23/10/15(日) 19:06:49
こんな長文で感情動かすSS書けるなら
安価に頼ると馬鹿選択肢入れられかねないからな - 78二次元好きの匿名さん23/10/15(日) 19:17:08
ここまで長期化すると安価もきつくなるな
- 79二次元好きの匿名さん23/10/15(日) 19:18:58
- 80二次元好きの匿名さん23/10/15(日) 19:20:39
実際ふざけた択突っ込まれてるし
- 81二次元好きの匿名さん23/10/15(日) 19:29:40
安価は展開決めるの楽だけどこういうことがあるからなあ
- 82二次元好きの匿名さん23/10/15(日) 19:32:49
- 831主23/10/15(日) 20:49:57
- 84二次元好きの匿名さん23/10/16(月) 08:14:48
保守
- 85二次元好きの匿名さん23/10/16(月) 13:08:11
ほ
- 86二次元好きの匿名さん23/10/16(月) 13:17:54
期待してる
- 87123/10/16(月) 19:33:15
「私は順当にいけば来年で生徒会長に就任することになっているわ。そこでやりたいこともあるのだけれども……いかんせん、人材不足なのよ」
「人材……つまり、数合わせというやつですか?」
「いいえ、それは違うわ。さっき貴女に暇つぶしの為に与えたパズル、あれは間違えても片手間で解けるものではないの。……路地裏で目に入ったからじゃない、その才気を持った貴女だから、私は欲しいのよ。……これで納得してくれるかしら」
「……それだけ言われたら、納得しないほうが無理がありますよぉ……」
「___という感動ストーリーがあって今の私があるのですからして、これが私の本名なんですぅ~~~!!」
「うひゃああまりつつかないでください壊れてしまいますぅーーー!!」
“……その、ごめん。配慮が足りなかった”
「……いいんです、本名を教えてほしいとか、いろんな人に言われましたから。そして!そんな人たちに片っ端から知らしめてきましたから!私の名前はルルイエちゃんであると!!」
“それが今回は私だったって訳”
「そういうことです!あ、そろそろ会議の時間ですので自分はこれで!」
“それじゃあまた”
“行っちゃったね。忘れ物とかは……”
“……あれ?”
“……あの子、アロナに干渉してなかった?” - 881年前 とある教室にて23/10/16(月) 19:46:49
「リオ、聞こえていましたよ」
「……盗聴は褒められる行為ではないわよ、ヒマリ」
「おや、盗聴とは人聞きの悪い。私はたまたまチャンネルをいじっていたらたまたまマイクの付いた電子機器と繋がってたまたまそこからあなた達の声が聞こえただけですの。それで聞き耳をたててみれば、やれ人材不足だの、やれ才気だの……」
「……何が言いたいの?」
「あれこれ理屈をこねるくらいならもっと素直になってもいいんじゃないかと言いたいのですよ。路上で右も左もわからず蹲っていたあの子を放っておけなかった、と」
「私は次期生徒会長、そんな義理人情で動いていたらミレニアム学園の長は務まらないわ」
「……」
「それに。そういうのは貴女の役割でしょう?違うかしら、ヒマリ?」
「……まったく、私をかわいい後輩のためならなんでもする便利屋かなにかと勘違いしていませんか?」
「あら、違うのかしら?」
「そうは言ってないでしょう。学籍の偽造に履歴の作成……ちょっと頑張るとしましょう」 - 89二次元好きの匿名さん23/10/16(月) 21:59:40
待ってた
- 90二次元好きの匿名さん23/10/17(火) 00:38:35
この頃はまだ仲が拗れて無かったんだ感がある
ここからどんどん拗れていって最後はルルちゃんのMIAである
悲しいね(なおry - 91二次元好きの匿名さん23/10/17(火) 02:12:51
支援
- 92二次元好きの匿名さん23/10/17(火) 09:56:58
このレスは削除されています
- 93二次元好きの匿名さん23/10/17(火) 19:00:20
リオはショックでぶっ倒れてるのか、それとも大急ぎで向かってるのか、既に海の調査を始めているのか………
- 94二次元好きの匿名さん23/10/17(火) 19:01:16
このレスは削除されています
- 95二次元好きの匿名さん23/10/17(火) 19:12:49
- 961主23/10/17(火) 19:28:19
すみません、急ぎのレポートがありまして少々時間を空けてしまいました
もうちょっと書きたいことが浮かんできたのでお付き合いいただけると幸いです - 97二次元好きの匿名さん23/10/17(火) 19:28:54
ん
待ってる - 98二次元好きの匿名さん23/10/17(火) 19:28:56
かしこまー
とりあえず管理よろです - 99123/10/17(火) 20:36:08
あれから幾ばくかの時間が過ぎた。アリスちゃんのその発言は最初こそ彼女を___ルルイエちゃんを失った現実から目を背けるための与太話と切り捨てられた。だが、自己修復を続けあの事件以前の、完成した直後の姿を取り戻したセイレーンを目の当たりにして、アリスちゃんの意見を肯定する声はたちどころに増えていった。そして先日、ついに彼女と思われる意識波形を捉えることに成功し、あの子の意識がセイレーンのコアブロックに宿ってることが立証された。つい先程まではルルイエちゃんの人格をサルベージする計画について討論されたが、アリスちゃん曰くまだ眠っている状態らしく、事実として意識波形は未だ極めて微弱で不安定であることから計画は困難という判断を下す他なかった。会議室を後にしてデスクを覗けば格納庫に暖房設備と娯楽用の大型モニターを設置する案が提出されていたのだが……これらも難しいだろう。費用が掛かるし、それにこの案を通すとあの子がセイレーンの姿でいることを肯定することになるみたいで抵抗があったのだ。だが、だからといって頭ごなしに却下するのもそれはそれであの子を蔑ろにしているみたいで嫌だ。何かいい案があるか、他の部活が解決してくれるかもしれない。提案書に保留のハンコを押して、早瀬ユウカは次の書類に目を通す。
『セイレーンで暖を取る案』。却下!確かに今のセイレーンはジェネレータ起こしてなくても37℃くらいあって暖かいけど却下!!次!
なになに?『セイレーンの装甲にグラフィティを描く』?……いいかもしれない。セイレーンの自己修復はどうやら塗料は範囲外だったらしく、今のあの子……いや、あの機体は本来の鮮やかな赤色を失い真っ白な装甲色になっていた。これくらいならおしゃれが好きだったあの子にも良いだろう。外部からの刺激が意識を覚醒させる可能性もある。よし、承認___と、ハンコを押そうとしてユウカの端末が振動する。
「はい、ミレニアム学園、セミナーの早瀬ユウカです。どうしましたか、先生?」
“ごめんユウカ。デカグラマトンが出た、手を貸してほしい”
その言葉に、惚気気味だったユウカの顔が引き締まる。
総力戦だ。 - 100二次元好きの匿名さん23/10/17(火) 21:17:11
- 101123/10/17(火) 22:29:53
その戦闘は、まさに総力戦といった具合だった。デカグラマトン『ホド』と『ケセド』の二体が同時に出現する極めてイレギュラーな事態が発生していたのだ。これにはリン代行の後ろでお菓子をかじっていたモモカも明太ポテチを置いてデスクと向き合うほどだった。
それに加えて。
「強い……今までとは比較にならない程に……!化け物が……!」
戦場で誰かがそう言った。シャーレは過去数回に渡って同機種__同個体かもしれない__と戦い、これを撃退してきた。が、こと今回のは過去交戦したそれらよりも遥かに強力なものであった。そう、Tormentだ。
「合流されたらおしまい……でもこれじゃあ……!」
早瀬ユウカはシャーレの部員として自他校の生徒と共に市街地を進むホドの迎撃、足止めに当たっていたのだが効果は薄い。得意の演算による回避とバリアで行く手を阻もうとするも圧倒的な弾幕を前に後退を余儀なくされていた。
「ユウカ先輩!このまま下がり続けたらヤバいんじゃないですか!?」
「そうは言うけど、じゃあどうすんのよ!?」
「とにかく先生がケセドを攻略するまで耐えしのぎましょう!それまでっ!?きゃあ!?」
「ノア!!?」
黒崎コユキの口から漏れ出る不安に苛立ちを隠せないユウカ。そんな彼女を生塩ノアが諫めようとするも、そんな彼女のすぐ横を熱線とミサイルが掠めるように通り過ぎる。幸い飛来した瓦礫でかすり傷ができた程度で済んでいたが……これは本格的にマズイ。前衛でタゲを取る人間が不足してきているんだ。かなり押されているこれまでの状況でもなんとかホドの攻撃は防ぐか逸らしてやり過ごしていたからして、ある程度の均衡は保っていた。が、それすらも無くなればあとは一瞬だろう。撤退する他ないか?いや、しかしそうするとこの怪物がケセドの、先生の所に行く。
どうする……どうすれば……!?
打開策を探るべく思索するユウカであったが。
「……っ!?何、このタイミングで連絡!?誰よいったい!」
端末が震え、着信音を鳴らす。両手は愛銃のトリガーを引くのに手一杯だからオペレーターに連絡して耳元のデバイスと繋いでもらう。これでどうでもいい内容だったら承知しないんだから……!
『ユウカか!?大変なんだ!!セイレーンが動き出して、脱走した!!今君たちのほうへ向かっている!!』
「……え?」 - 102123/10/17(火) 22:31:05
予想だにしないその報告に、一瞬思考が真っ白になる。その間に攻撃が飛んでこなかったのは幸いか。
セイレーンが、あの子が来る。意識すら不鮮明だったあの子が。何故?デカグラマトンに反応した?
……待て。神秘を宿した機械。白い機体色。いまのセイレーンは、まるで。
遥か後方から響く駆動音に目を向ければ、人型のシルエットが目に入る。その様相は、まさにデカグラマトンであった。 - 103二次元好きの匿名さん23/10/18(水) 03:40:55
死ぬ前に相対していた相手も多分デカグラマトンだからな……
- 104R'lyeh. OS23/10/18(水) 12:43:02
<格闘戦用プログラム、増設完了>
<各関節モジュール、最適化>
<戦局演算、完了。誤差40%>
<コマンド『気合い』でカバー可能と判断>
<存在証明、既決>
<神とは調月リオである。天童アリスである。黒崎コユキである。明星ヒマリである。美甘ネルである。豊見コトリである。小塗マキである。各務チヒロである。音瀬コタマである。白石ウタハである。早瀬ユウカである。生塩ノアである。花岡ユズである。才羽モモイであり、ミドリである。>
<神とは、ミレニアム学園の皆である>
<Q.E.D>
<コマンド『気合』を実行>
- 105二次元好きの匿名さん23/10/18(水) 16:48:49
仲間を神と定義することで無理矢理デカグラマトンの制御下から外れたって事…!?
と言うかやっぱ修復の過程でデカグラマトンも混ざっちゃってたのか - 106二次元好きの匿名さん23/10/18(水) 17:24:54
コマンド「気合い」の効果は大体スパロボみたいな効果なのかな?
- 1071主23/10/18(水) 19:15:26
そんなかんじですね
- 108123/10/18(水) 19:16:03
ミレニアム自治区から飛来した純白の機体___戦場にいた多くの生徒がデカグラマトンの新手と誤認したソレは、光を蓄えていたホドのメインカメラと思しきレンズめがけ膝蹴りをぶちかまし一区画分後退させた。
「なんだ!?」
「シャーレの増援!?でも、あれは……!」
「デカグラマトンじゃあないの!?何、仲間割れ!?」
シャーレの部員たちの間に混乱の色が広がる。無理もないだろう、二体ものデカグラマトンと戦っていたところに背後からもう一体、40m級の未知のデカグラマトンが突っ込んできたかと思えば同族であるはずのデカグラマトンに攻撃を仕掛けたのだから。
恐らく今この戦場で状況を理解しているのはミレニアム生だけだろう。
「あれは……」
「あの子が……目覚めたんだ」
後方で支援していた猫塚ヒビキの漏らしたその言葉に白石ウタハが続く。
「……寝坊だぞ、馬鹿」
瓦礫の山から這い出た美甘ネルが呟く。
「おはようございます!ルルイエちゃんさん!!」
ビルの屋上で待機していた天童アリスが満面の笑みを浮かべ、無邪気に語り掛ける。
その声に答えるべく、緑色のカメラアイが一際光度を増す。 - 109123/10/18(水) 23:23:29
<初撃の命中を確認>
<外部信号『おはよう』を検出>
<ジェネレータ温度、0.3℃上昇>
<コマンド『気合い』の強度を上昇>
<交戦、開始>
ホドの背部から無数の柱が射出され、セイレーンに突き刺さる。インベイドピラーだ。命中した箇所を中心とした一定範囲内の電子機器を制御化に置くソレはセイレーンにとっては天敵であるはずだ。が、しかし、オレンジ色に光っていたピラーが突如発光パターンを変化させ、力なく抜け落ちる。
「逆ハッキング……ホド相手に電子戦で対抗できるなんて……!」
無論、相手が本体よりも演算能力の落ちる子機である。が、それでもかつてミレニアムが開発した最新型AIだ。インベイドピラーに対し電子的なアプローチを仕掛けるなど、かの全知であっても難しいだろう。各務チヒロが唸るように呟く。
そんな彼女らを後目にセイレーンが駆け出す。と、同時にセイレーンの制御下に置かれ転がっていたインベイドピラーのブースター光が瞬き、ミサイルの如くホドへと殺到する。その全てが鞭状のアームに阻まれるが、狙いは目くらましにあり。スクリュープロペラが装備されていたハズの背部ユニットから本来出るはずのないブースター光を灯し、ホドの予測を上回る速度で肉薄するとそのままずっと握っていたのだろうケセドのコアユニットをラグビーボールの如く叩きつける___ケセドのコアユニット!!?
「オイ、アレってケセドじゃ……ユウカ!?」
「待っていま繋いでもらってるから……!!」
少女たちのやり取りなど知らず、ホドの下側頭部装甲に膝蹴りをかますとその衝撃で外れ宙に浮いたケセドコアをキャッチ、そのまま両手で窪んだ上部装甲にダンクシュートを決めれば更に七割ほど埋め込まれ、激しくスパークする。美園ミカも真っ青の貫通ダメージだ。
「……っ繋がった!先生!無事ですか!?」
“こっちは皆無事だよ!それよりユウカ、ケセドが新手のデカグラマトンに回収された!そっちに向かてるはずだ!”
「……いえ先生、その子はデカグラマトンではありません。それと恐らく、ケセドは撃破できたかと」
ユウカの視線の先で、共に純白の巨人と怪物が格闘戦を繰り広げる。
- 110123/10/18(水) 23:41:39
ショルダータックルでホドの姿勢を崩すと右肘打ちでダメージを与え、ケンカキックで高層ビルに叩きつければビルはへし折れるように倒壊し、その全てがホドへと降り注ぐ。被害請求額は馬鹿にならないが、まぁTormentクラスのデカグラマトンを撃退できるなら安いものだろう。
「やったか!?」
「お姉ちゃんそれフラグ!」
「!避けてください!!」
才羽姉妹の漫才を後目に機械特有の何かを察したアリスが叫ぶとそれを聞いたセイレーンが身構えるが、それを超える速度で土煙の中からアームが無数に伸びる。反応の遅れた機体の手足を拘束すると、左腕が力任せに引き千切られる。
「___!!?」
「!アリスちゃん、見ちゃダメ……!そうだ、アリスちゃんにとってはすごくグロテスクな光景なんだ……!」
破断面からオイルが血のように流れるその光景に口を両手で抑えるアリスを庇い、急いで彼女の両目を覆う花岡ユズ。視線を上に上げればセイレーンが悶えるように振る舞っており、痛覚が機体と直結しているのは明らかだった。
「ダメーーー!下がってーーー!ルルちゃん先輩、格闘戦は雑魚なんだからーーー!!」
「後退してください!!注意は私たちが引きます!!」
見ていられないと才羽姉妹がホドへ銃弾を浴びせる。装甲に弾かれている訳ではないがさりとて有効打のなっているようにも見えない貧弱な弾幕だが、ホドに注意を引くには十分だった。土煙の中からホドの頭部ユニットが現れるとビルの屋上を走る双子へと主砲を向け、そして___
「そんな、チャージが早___!?」
「ヤバ___」 - 111二次元好きの匿名さん23/10/19(木) 01:19:27
オイオイオイこのまま倒されるのはやめてくれよ!?
続き期待 - 112二次元好きの匿名さん23/10/19(木) 09:27:52
自己修復がどこまで機能するか
あとやっぱシンプルな人型と同サイズの多機能異形型とじゃ後者のが圧倒的有利だな - 113二次元好きの匿名さん23/10/19(木) 18:36:08
ほし
- 114123/10/19(木) 19:04:37
主砲が瞬くその直前、ホドの巨体が前方に勢いよく引き寄せられる。その先には片手でホドのアームを引っ張ったセイレーンが。飛び込んできたホド目掛け左腕を突き出せば、ホドのレンズに深々と突き刺さった。
「折れたフレームは凶器となりえるか……無茶をする……!」
セントリーガンを起動しつつウタハが唸る。その横では豊見コトリが愛銃の損傷確認を済ませ、射撃姿勢を取っている。
「部長!準備できました!」
「よし、タイミングを見計らって攻撃だ!これは総力戦だ、あの子たちだけに戦わせてなるものか!」
突き刺さった左腕を引き抜きヘッドバットをかませばホドが三度姿勢を崩す。そこへ。
「皆さん!今です!!」
オペレーターの号令を受け無数の火線がホドへと集中する。そのうちのいくつかがホドのアームを破壊し、千切ると、セイレーンの手足から力なくすべり落ちていく。
「拘束の解除を確認!これであの子も……何?何をして___」
セイレーンとルルイエちゃんの援護をすべくサブマシンガンを残りのアームへ向け連射するユウカであったが、次の瞬間、セイレーンの取った行動に驚愕する。
千切れたアームを三本ほどまとめて拾い上げるとこともあろうにそのアームの束の破壊箇所を力任せに左腕の破断面に突っ込んだのだ。そのうえ移植されたアームは彼女の意のままに動き出すときた。
「な、なんでもアリなんですかあの子……!?」
それを見ていたコユキが思わず呟いた。 - 115123/10/19(木) 19:56:32
無数の弾丸に榴弾を浴びせられ、ホドの装甲に無数の損傷が生まれる。もう一息だ。と、そこへセイレーンに接続されたアームが槍の如く襲い掛かると装甲の破損箇所に的確に突き刺さり、力任せに正面装甲を引き剥す。そしてセイレーンがマウントポジションを取ると、レンズが破損し大穴の空いていた箇所に腕部を突っ込んだ。
「今度は何を……まさか、ジェネレータを!?」
「は、ハートキャッチ……!」
驚愕するユウカに、ちょっと引くコユキ。ご明察、セイレーンの右マニピュレータはホドの心臓部であるメインジェネレータを掴んでいた。心臓を潰されまいと必死に抵抗するホド、対してセイレーンも、ルルイエちゃんも死んでも離すまいと握る手に力をこめ___
___オオオオオオオオォ……!!!
限界まで出力を上げた各パーツの駆動音が重なり、咆哮にも似た音を響かせる。
「……いけ。いけぇ!!」
彼女の気合、覚悟。それらは熱となって戦場に広まり、伝わる。最初にその熱にあてられたのは美甘ネルだった。
「いっけぇーーー!握りつぶせぇーーー!!」
「パワー勝負です!Aボタンを連打です!!」
次いでモモイ、アリスが。
「機械化しても最後は根性勝負、か……悪くない!やってしまえ!!」
「ヒトの手は掴むことに特化しているとされています!握り潰すという行為を行える生物は___失礼、この解説は帰ってからにしましょう!ささ、やっちゃってください!」
ウタハが、コトリが。
「おっと、無粋な邪魔はさせませんよ?そこ!狙ってください!!」
「了解!それ、いっけーーー!」
明星ヒマリのその指示に的確にセイレーンに襲い来るアームを迎撃し、小塗マキが。
「そのままアイアンクローです!ユウカ先輩のアイアンクローをイメージしてぇででででで!!!」
「そのまま行きなさい!!」
コユキがアドバイスを飛ばし、それを後ろから鷲掴みにしてユウカが。
<出力、臨界点突破>
<これ以上の運用は危険>
<コマンド『捨て身』実行___撤回>
<データ受信。送信元は調月リオであると推測>
<構造解析、完了>
<対象物、構造状の弱点を把握>
<いけます>
- 116123/10/19(木) 19:57:03
セイレーンの周囲を小型のドローンが通り過ぎ、すれ違いざまにホドの設計図を送信し。
「行きなさい、ルルイエちゃん___!」
薄暗い部屋でただ一人、リオが。
そして。
___ホドの機体内から、一際大きな金属音が響き渡った。 - 117二次元好きの匿名さん23/10/19(木) 19:59:55
ルルイエちゃんカッケェ…
これ先生も興奮しながら応援してそう - 118二次元好きの匿名さん23/10/19(木) 20:06:36
リオ会長ナイスアシスト!
- 119二次元好きの匿名さん23/10/20(金) 04:03:14
ミレニアムの総力をあげた戦いよ
- 120二次元好きの匿名さん23/10/20(金) 10:21:03
ここでセイレーンの性能に恐れおののくことがないの本当ミレニアムって感じする
- 121二次元好きの匿名さん23/10/20(金) 11:02:28
この子、何気に単騎でデカグラマトン撃破(相討ち)してるんだよな
セイレーンのスペックがあたおかなのか、この子のテクがあたおかなのか
いや両方だな - 122シャーレの部室23/10/20(金) 16:18:19
『ミレニアム自治区付近で発生した大規模戦闘から今日で1週間。連邦生徒会では今も解析を進めており___』
「先生、こちらの書類は先生が」
“わかった、ありがとう”
あの総力戦を終えて数日後、早瀬ユウカは後始末に追われるシャーレの応援に駆けつけていた。
「しかし、あれだけ破壊してもまだ『撃退』どまりとは……デカグラマトンって本当にしぶといですね」
“手を焼かされるよ”
あの戦闘の折、ルルイエちゃんはホドのメインジェネレータを握り潰し、粉砕した。が、直後にホドはサブジェネレータのみで機体を動かし撤退した。死に体といった風体だったが、逃げられたのには変わりない。ついでにケセドもだいぶとべっこべこだったが、あれでまだ活動を続けているらしい。
“そういえば、あれからルルイエちゃんはどう?”
「意識波長は安定していますので、あとは肉体さえ用意できれば」
あの一件であの子の意識は完全に覚醒したようで、今では機器を接続することでモニター越しにコミュニケーションをとることもできるほどである。
“ごめんね。やっぱりクラフトチェンバーは___”
「いえ、いいんです。わかってますから、そういうのは倫理的によろしくないというのは。今はエンジニア部を中心に義体の作成が進められています」
“……そっか”
やはりあの子が機械の肉体のままでいることには先生も思うところがあるのだろうか。 - 123シャーレの部室23/10/20(金) 16:22:04
……まずい、空気が重い。ここはなにか話題を変えなくては。
「そういえば先生。この間の戦闘の折に回収したホドのアーム、アレを流用したセイレーン用サブアームの実用試験が今度行われることになったんですよ。もしよろしければ見に来てみてはいかがでしょうか?」
“いいね”
私のその言葉に先生が目を輝かせる。この人は歳のわりに子供らしく、ロボットの類が大好きなのだ。ついこないだなんて特注の1/144スケールセイレーンフィギュアなんか注文して財布の中身を吹き飛ばしていた。
『次のニュースです。カイザーアーマメンツは昨日、特殊作戦に使用された人型深海探索用重機セイレーンを同社の開発していた新型兵器スキュラの違法コピー品であると___』
「……はぁ、面の顔が厚いにもほどがある」
聞こえてきたニュースに思わずため息をこぼせば。
“まぁ、カイザーの相手は私に任せて。大人の横行は大人が止めるよ”
「先生……はい、ありがとうございます」
マグカップに口をつけると、再び書類と向き合う。後始末はまだまだこれからだ。
to be continue.
次回
終章『帰る場所』 - 124二次元好きの匿名さん23/10/20(金) 16:37:37
カイザーもだけど、ゲマトリアも興味持ちそうなのが怖いな
ついでにロボだからEMPとかの攻撃貰うと下手すると………正面勝負ならたぶん敗けないから心配はしてないけど - 125二次元好きの匿名さん23/10/20(金) 17:39:47
ミクさんの身体を用意出来るぐらいだからなぁミレニアムの技術力
ルルイエちゃんの身体を用意するのも容易だろうけど混ざってるデカグラマトンがちょっと不安要素かな? - 126二次元好きの匿名さん23/10/20(金) 18:58:30
セイレーンの見た目ってなんだろう?
勝手にファフナーのマークザインで考えてたんだけど - 127二次元好きの匿名さん23/10/20(金) 19:24:06
- 128二次元好きの匿名さん23/10/20(金) 20:17:41
人型っつってたしもうちょい人間寄りなんじゃないかな
それはそうとスクリュー部分がスラスターになってたらしいし、ある程度自力で構造を弄れたりするのかね?
そうだとするとカイザーにゲマトリアから幾らか加わる可能性が激増するから厄介度マシマシなんだが - 129二次元好きの匿名さん23/10/20(金) 21:25:03
ジプシーデンジャーかボトムズかウォドムポッド+か……
- 130二次元好きの匿名さん23/10/20(金) 21:27:25
(深海探査用だから)耐圧考えるとウォオドムポッドだろうけど、人型かと言われるとね
キヴォトスのテクノロジーでその辺解決!って可能性もあるし - 1311主23/10/20(金) 21:57:58
私としてはティターンモデルファフナーをイメージしています
- 132二次元好きの匿名さん23/10/21(土) 09:05:13
ほ
- 133ブリーフィング23/10/21(土) 13:14:35
「機は熟しました。これよりルルイエちゃんサルベージ作戦を実行します!」
それなりに広いはずのミレニアムのとある会議室にミレニアム生と先生が詰めかけひしめく中、明星ヒマリが声を上げる。
「ミレニアムの清楚系超天才病弱美少年ハッカーこと明星ヒマリが今作戦の作戦の概要を説明しましょう。セイレーンに取り込まれたルルイエちゃんの意識に以前アリスを呼び戻すのに使用した機械を用いてダイブして接触し、こちら側で用意した義体とのパスを通わせて彼女の意識をこちら側に引き戻すという案が以前より提唱されておりましたが、ルルイエちゃんの意識波長は弱く不安定であり、彼女の精神世界とリンクするには危険すぎるとして実行に踏み出せずにいました。が、先日行われた総力戦において、あの子……ルルイエちゃんの意識が安定して表層化するようになり、実行に踏み出した訳です。ウタハ、どうぞ」
言って、白石ウタハに場所を渡す。
「では、失礼して……我々エンジニア部を主導に義体は何とか完成にこぎつけられたよ」
そういってウタハがプロジェクターを操作すれば、彼女等が作成した義体が映し出される。
おぉ、と歓声の上がる会議室であったが、普段のエンジニア部の仕事ぶりを見たことのある生徒・先生はすぐに違和感を感じる。
「……まぁ、皆も一目見て気づくかもしれないが、今回の義体はだいぶと突貫工事でね。時間が許せばもっとクオリティの高いものにしていたのだが、いかんせん観測データを見るに彼女の意識波長は少しずつ弱まってきている、再び眠りにつくのも時間の問題だろう。そこで、誠に遺憾ながら……クッ、スピード重視でやらせてもらった……」
そう言って苦虫を嚙み潰したような顔をする。技術力に誇りを持つ彼女のことだ、ましてかわいい後輩の肉体となるものであるからして、妥協せざるを得ないというのは相当に屈辱なのだろうことは想像に容易い。
「完成度については作戦後、アップデートを重ねることで対応することとした。それまであの子には不便を強いてしまうな……」 - 134オペレーション・ネモ23/10/21(土) 13:15:36
と、そこで再びヒマリが口を開く。
「我々の作戦はルルイエちゃんの精神へダイブし、この義体と彼女の精神を接続することにあります。が、どうやら楽には済みそうにありません」
そう言ってルルイエちゃんの意識波長を多角的に観測した幾つかのデータをプロジェクターが映し出し、重ね合わせる。すると、波形の一部が不自然な形を取っているのが浮き彫りになった。
「これらのデータに散見される不自然な意識沈降から、ルルイエちゃんの意識は何者かによって抑えられている、というのが私の導き出した結論です。あの子を連れ戻すというのは、その何者かからあの子を奪還するということと同義になります」
「ならソイツをぶっ倒せばいいのか」
と、そこで美甘ネルが口を開く。
「そうですね、理論上はそのようなアプローチでも行けるかと。ただ、推奨はできません」
「っつーと?」
「この何者かが何なのかが本当にわからないのです。全長、質量、容姿……いえ、精神世界ですので自在というのも考えられます」
「正体によっては分が悪いってことか」
「そういうことです。ですので戦闘を視野に入れつつのスニーキングミッションになるかと」
ヒマリの説明を受け、ネルは納得した表情を見せる。
その後、いくつかの質疑応答をして。
「各員、配置につきましたね?それではこれよりルルイエちゃんサルベージ作戦、『オペレーション・ネモ』を開始します!」
作戦開始を告げる号令が響きわたった。 - 135二次元好きの匿名さん23/10/21(土) 13:34:54
精神世界で総力戦デカグラマトンかな?
- 136二次元好きの匿名さん23/10/21(土) 18:26:00
ルルイエちゃんがネモ船長なら
抑え付けている相手は白鯨かノーチラス号か…… - 137二次元好きの匿名さん23/10/21(土) 22:11:11
ほ
- 138精神世界23/10/22(日) 09:22:40
オペレーション・ネモに挑むのは天童アリス、花岡ユズ、才羽モモイ、才羽ミドリ、早瀬ユウカ、生塩ノア、黒崎コユキ、和泉元エイミ、各務チヒロ、小塗マキ、豊見コトリ、美甘ネル、サポートに現実世界から半同調状態で指示を出す明星ヒマリの13人の少女と、そして引率の先生だ。が……
「ここがあの子の精神世界……」
「わぁ……!海です!アリス、海に来ました!波が冷たいです!」
「そういえばアリスちゃん、海に行ったことなかったね」
「ですが女お……アリスよ、この海は個体識別名『AL-0……失礼、『ルルイエちゃん』のメモリから構成された疑似的なものです。実物とは若干の差異が見られます』
「そうだね、今度アリスと一緒に本物の海、を……?」
そこまで言って違和感に気付いたモモイが声の方へと振り向く。
「よい提案だと思います。そのほうがアリスの情操教育にも好影響でしょう」
「け、けけけっ、ケイだぁーーーーー!?」
その先には、アリスと瓜二つの少女___ケイがいた。
「わぁっ!ケイです!また会えて嬉しいです!」
「はい、私もuむぐぅ……あ、アリスよ……抱きつくのはいいですが、力を……緩め……」
波の音だけが支配していた精神世界が、にわかに賑やかになる。もみくちゃにされるケイを少し離れたところで眺めながら。
「でも、なんでケイが……?」
“精神世界だから、とか?”
「はい、恐らくその解釈で正しいかと」
マキの抱いた疑問に先生が自身の考察を語ると、隣でアロナが肯定する。
……隣?
「……せせっ、先生……その子、だだ誰?」
“あ、アロナぁーーーーー!?”
「はい、先生のスーパーOS、アロナちゃんです!」
先生も先ほどのモモイ同様に声の方へと首を向ければ、そこにはいつもおなじみアロナちゃんが立っていた。
___13人、もとい15人の少女と一人の大人による潜入作戦が、始まる。 - 139二次元好きの匿名さん23/10/22(日) 12:51:10
アイェェェ!?
アロナ!? 推定連邦生徒会長赤ちゃんプレイの姿なんで!? - 140二次元好きの匿名さん23/10/22(日) 15:59:09
明らかにスニーキング出来ない……!
- 141二次元好きの匿名さん23/10/22(日) 18:32:48
速攻に❗️マークが出て見つかりますねコレは(KONAMI感)
- 142二次元好きの匿名さん23/10/22(日) 20:11:33
>>「ですが女お……アリスよ、この海は個体識別名『AL-0……失礼、『ルルイエちゃん』のメモリから構成された疑似的なものです。実物とは若干の差異が見られます』
>>個体識別名『AL-0……
- 143二次元好きの匿名さん23/10/22(日) 20:13:51
………!?
- 144二次元好きの匿名さん23/10/22(日) 20:57:01
ルルイエちゃんの方か、混ざったデカグラマトンの方か
後者であって欲しいけど、口振り的にルルちゃんの出自って……… - 145二次元好きの匿名さん23/10/22(日) 22:51:56
ほしゆ
- 146発見!23/10/23(月) 00:38:26
朝焼けと夕焼けが混在する浜辺を歩くこと十数分。
「ポイント・ネモに到達。ルルイエちゃんはこの付近にいるはず___」
「あ!アレはいったい!?」
チヒロがそう言いかけたちょうどそのとき、コトリが声をあげて指さす。その先にいたのは。
「ビンゴ!ルルイエちゃんだ!」
機械的な椅子の上、海水に足首まで浸けながら寝ているルルイエちゃんだった。
「にははは~~~!先輩発見!」
「回収するよー!」
「了解!それ~!」
一目散に駆け出すコユキ、モモイ、マキらミレニアム三大問題児、一歩遅れてアリスも。
「あっコラ待て!突っ走るな!!」
『いいんじゃないですか?今のところ敵の反応は見られないのですし、感動の再会を邪魔するのも野暮というものでしょう』
「それはそうだけど……」
突出するちびっこ組を止めようとしたネルであったが、ヒマリの声に足を止める。
「とはいえ離れすぎるのが良くないのも確かだね。探知範囲外から突っ込んでくる可能性もあるわけだし」
そんなネルの後ろからチヒロが声を掛ける。現状、ヒマリが現実世界から、チヒロが精神世界からの二面的にモニタリングしている。今のところ問題はないが、安全を保障するものでもない……という言い分だが、その言葉の真意は別だ。
「私のほうで警戒しとくから。ほら、顔見にいって来な」
「……わりぃ」
促されれば、軽く礼を言って椅子のほうへと駆け出す。 - 147何者か23/10/23(月) 00:39:53
「ぐっすり寝てるね~。あ、せっかくだし落書きしておこうよ!」
「先輩には心配かけさせましたからね~、これ位はいいでしょ!」
「いーじゃんやろうやろう!あ、誰かペン持ってない?さすがに缶スプレーはね……」
「え?アリス、油性ペンはインベントリ内にありますが……いいのでしょうか?」
「いいわけあるかバカ!」
「げ!?いや、でもほら見てよこのルルっとした寝顔!いたずら心がくすぐられ___」
「ねぇよ!ホラ、お前も口車に乗せられんな」
「あの椅子、見覚えが……?」
ぐっすりと眠るルルイエちゃんを取り囲んで再び賑やかになる。あとは彼女を連れてもと来た道を___
「!?皆気を付けて!その子の近くにエネルギー反応が出現!これは……!」
「「総員、退避してください!!」」
突如観測された異常なエネルギー反応にチヒロが叫び、次いで同様に異常を察したアロナ、ケイの両AIの声が重なる。
直後、なにもなかったはずの虚空から。
頭部に灯る光点は二つ、塔を思わせる黒鉄の巨人が舞い降りる。
―Uninstall System―
The・Moon - 148二次元好きの匿名さん23/10/23(月) 06:45:00
これが抑え付けてるもの、か
ケイと違ってネーミングはタロットからなんだろうか - 149二次元好きの匿名さん23/10/23(月) 15:41:58
こうなった原因はジアースもどきとの交戦だしアンインストールプログラムって言ってるから元ネタは小説版ぼくらののラスボスかと
ところでジアースもどきは15個も光点あったのになんでコイツは二つしかないんですか…? - 150二次元好きの匿名さん23/10/23(月) 15:46:43
ルルちゃん、デカマトの二つかな?
- 151二次元好きの匿名さん23/10/23(月) 18:34:48
このレスは削除されています
- 152二次元好きの匿名さん23/10/23(月) 18:55:56
- 153二次元好きの匿名さん23/10/23(月) 19:16:21
ボス戦BGM アンインストール(幻聴)
- 154二次元好きの匿名さん23/10/24(火) 06:52:45
一方でこちらは十五人なんだよな
- 155開戦23/10/24(火) 08:44:37
(やられた)
瓦礫の散乱した砂浜の上で、早瀬ユウカは膝をつきつつそう考える。
(気が緩んでた……10分強ひたすらに歩いてて気が抜けてた……)
周囲を見渡す。ヤツが出現したときの衝撃で皆一様に吹き飛ばされ、散り散りになっていた。
「荒事に慣れたC&Cならこうはならなかったんでしょうけど、このチーム唯一C&Cのネル先輩があの子たちに構ってたから……」
ふらつく足取りでなんとか立ち上がり、巨人を睨む。が、その巨人はそんな視線を意にも介さず、足元に手を伸ばす。そして。
「……あぁ、なるほど」
何もかもが吹き飛び砂地が露出し、しかし唯一残った椅子とそれに座する少女を掴むと、胸部装甲を透過して機体内部に取り込まれる。
「釣られたって訳ね、私たち」
油断を誘う暇に、油断を誘う餌。なるほど、ただタイミングが悪かったのではなく相手が待ち構えていたというわけか。わざわざ網を張って待ち構えていたということは、お相手さんもこちらを逃がす気はさらさら無いということだろう。と、そのとき。
“ユウカ!無事!?”
その言葉に振り向けば、先生が駆け寄ってくるのが見えた。怪我はなさそうだ……というか、服が汚れていないあたり、どうやったかは不明だが衝撃を完全に避けられたのだろう。
「先、生……えぇ、大丈夫です。だいぶと転がって三半規管がかき回されましたがあと4秒で回復するかと。それよりも」
“ああ、かなりヤバいね”
その言葉に先生と共に視線を巨人のほうへと向きなおせば、胸部に備え付けられた三日月型の装甲板が光を蓄えているのが見えた。だれがどう見てもわかる、何かしてくる気だ。
覚悟を決めて愛銃を構える。
こちらは生身の人間、対してあちらは40m台の巨大ロボット。さて、どこまでやれるか。 - 156二次元好きの匿名さん23/10/24(火) 09:06:00
- 157二次元好きの匿名さん23/10/24(火) 19:01:52
総力戦、どうなる
- 158散り散り23/10/24(火) 22:50:01
「このぉ!」
ユウカの手に持つ二挺のサブマシンガンが火を噴くが、その全てが巨人の装甲に弾かれ、あらぬ方向へと飛んでいく。
「うそ、効いてない……きゃあっ!!」
光学兵器ならばエネルギー集約部はデリケートであると踏まえて発光する三日月型の装甲板を攻撃したのだが、効かないどころか弾かれるとは思いもしなかった。胸に湛えた光が奔流となって浜辺に突き刺さると、膨大な量の砂と共にユウカを巻き上げる。
「おうおうやってくれるじゃねえか!?」
ならばと廃墟からネルが飛び出してユウカと同様の、しかしユウカのものよりも貫通性能を重視したサブマシンガンを放つが、これも大した効果はない。もっとも、彼女の目的は機体に取りつくことでありダメージは与えられたらラッキー程度に考えていたのだが___
「そぉら捕まえ___なにぃ!?」
装甲に手がつきそうなその時、突如として巨人が急制動し、巨体に似合わない身のこなしでネルの横に回るとそのまま蹴とばした。
“ユウカ!ネル!!くぅっ……!”
「ダメだよ先生!今出るのはヤバい!」
瓦礫の影から駆け出そうとする先生であったが、マキに止められる。彼女は知らないが、事実いつも先生のそばで彼を守っていたアロナはやや離れた海岸で水面から下半身のみ出しており、今先生を守るものは無い。むやみに飛び出すのは自殺行為だ。
と、別の物陰から足音が近づく。
「よかった!マキも先生も無事で……いやよくあの距離で無事だったねマキ?」
「せ、先生……モモイ、ちゃんが……」
“チヒロ!ユズも!”
ノアに肩を貸したチヒロと息も絶え絶えにコユキを背負ったユズが先生らの隠れる瓦礫に駆け込むと、そのすぐ後ろをビームが通過する。
“その二人は……”
「うぅ~ん、ユウカちゃんが何人もいます~」
「にはは、はは~……」
「心配しないで、怪我はない。すぐには動けなさそうだけど」
「モモがなんかあったって口ぶりだったけども、何があったの!?」
「その、さっきの衝撃で吹き飛ばされて、あそこに……」
ユズの指さす方に視線を向ければ、アロナの下半身のその先にもう一人下半身だけの生徒がいるのが見えた。恐らくあれがモモイなのだろう。アリス……いや、あのヘイローの色はケイか、ケイが発掘作業に向かっている。 - 159メタ戦術23/10/24(火) 22:51:17
「ごめん先生、あのロボットについて解析したいのはやまやまなんだけどさっきので機器がダメになった。ヒマリ部長との連絡も途絶してる」
“いや……たぶんだけどヤツは特殊装甲に覆われてる。爆発は受け付けないし貫通も効き目は薄い”
先程の光景から、先生は自身の見解も踏まえ予想を語る。そしてそれは実際合っていた。
「特殊装甲といいますと、有効なのは神秘を多大に含んだ弾丸ですが……」
「特に適正のある三人のうち二人がこの有様かぁ」
そう言ってセミナーの二人を見れば未だに目を回して譫言を繰り返していた。
「どうする先生?二人が回復するのを待って仕掛ける?」
“……いや、ここは相手のホームグラウンドだ。長期戦は危険だろう”
チヒロの問にそう返すと、ではどうするかと考えを巡らせる。そして。
“……うん、これでいこう。私に考えがある”
“なにも馬鹿正直に装甲を叩く必要はない”
反撃の狼煙が挙がる。 - 160※イメージ図23/10/24(火) 22:54:31
- 161二次元好きの匿名さん23/10/25(水) 05:18:56
犬神家状態の二人ェ…
さてここからどうやって倒して救出するんだろうか? - 162二次元好きの匿名さん23/10/25(水) 16:13:31
相手の技術力による慢心を誘って奇襲
天才ハッカーは通信妨害で隔離
ネルパイセンは取りつかれたら何されるかわかったもんじゃないから回避
ミレニアム勢は神秘の層が薄いから特殊装甲にした上でノア、コユキを排除
アロナもぶっ飛ばして先生を牽制
なるほどメタ戦術だ - 163作戦開始23/10/25(水) 21:52:35
「光よ……うわぁ!?」
先程から孤軍奮闘していたアリスであったが、未だ決定打を与えられずにいた。
「うわーん!大型ボスが持ってたらダメな回避値してます!それにこちらのチャージを妨害する行動ばかり取ってきます!ゲームだったら低評価待ったなしです!」
あまりの理不尽に愚痴るアリス。そんな彼女の元に。
「アリスちゃん!先生から連絡!」
「ミドリ!なになに、なるほど……わかりました!ぱんぱかぱーん!アリスは指令を受け取りました!行動を開始します!……ところでミドリ、モモイはどこに?」
「あぁ、お姉ちゃんなら___」
「海水飲んじゃったじゃん!しょっぱかったんだから~~~!!」
アリスは先程放物線を描いて飛んで行ったモモイを心配していたが、杞憂だった。全身ずぶ濡れ、砂まみれの発掘されたそのままの姿のモモイが前線に躍り出ると、手にしたライフルを乱射する。
「あなたのせいなんだよ~!うりゃうりゃ~~~!!」
「ちょ、お姉ちゃん!作戦を……もういいや、手伝うよお姉ちゃん!」
怒りの弾丸を浴びせる姉を前にミドリは下手に抑圧するよりは手綱を引いたほうがいいと判断し、モモイに追従して同様に弾幕を張って駆けだす。
足元をちょろちょろと駆けまわる双子に苛立ちを覚えたのか、巨人が足元に向け胸の三日月を光らせる。
「それ、いまだ!」
が、見過ごしはしない。マキの放ったペイント弾が顔面と思わしき部位の光点を覆うと、視界を失った巨人があらぬ方へとビームを放つ。 - 164作戦開始.223/10/25(水) 21:53:07
「ビンゴ!あそこが目で間違いなさそうだよ!」
“よくやったよ、マキ!チヒロ、通信は!?”
「待って、もうちょっとで……ちょ、何アレ!?」
ヒマリとの通信が復旧すれば戦況はこちらに幾分か傾く。デバイスを操作するチヒロであったが、視界の端に映った拡散ビームに目を剥く。一発一発の火力は低いがそれでも彼女の作業を妨害するには十分だろう。
“アロナっ___!”
「いや、私が行く」
「説明を求める声が!」
身構え、咄嗟に相棒の名を呼ぼうとする先生らの前に、特徴的な巨乳が躍り出る。和泉元エイミだ。その横ではコトリが人に物を説明する構えを取っている。
コトリがデバイスを起動させるとエイミの周囲にバリアが展開し、拡散ビームのうちの一つを受け止め、減衰させる。それでも受け止めきれない分のビームが彼女を襲うが……
「あっついなぁ……!」
持前のフィジカルでこれを受けきると、涼しい……涼しい?顔でそう口にする。
「今現在提唱されている光学兵器の理論では光を収束させるのにレンズを用いるのが主流ですが、ならばレーザーを拡散させて広範囲をカバーできるのではないかという案が___」
「ごめん、説明は後!通信が復旧するよ!」
そう言ってチヒロがキーボードを気持ち強めに叩くと、目の前の空間にホログラムが浮かび上がる。
『……ですか、大丈夫でっ!よかった、ようやく繋がりましたか……!バイタルは全員異常無し、そちらはどのような状況で!?』
「部長の危惧してたヤツが現れた!今交戦中!」
『わかりました、こちらで解析を行います!』
さすがは天才というべきか、最小限の言葉で状況を理解すると即座に自分の作業を開始するヒマリ。
“よし、まだまだこれからだよ……!”
「先生!早瀬ユウカ、戦線復帰します!」
“ユウカ!無事だったの!”
「私が女お……アリスのご友人のついでに発掘しました。感謝しなさい」
ユウカとケイも合流する。ユウカの方はあの攻撃でモモイのやや後方に水柱を上げて埋まっていたためかぐっしょりと濡れていたが、ここは精神世界。ちょっと服を払うだけで砂が落ちるどころかどんどん乾いていく。
「ケイちゃんから作戦は聞きました。私も前線で攪乱します!」
“気を付けてね”
わかりましたと答えると、ユウカは巨人の元へ、ケイはアリスの方へ駆け出した。 - 165二次元好きの匿名さん23/10/26(木) 00:00:20
このレスは削除されています
- 166交戦.123/10/26(木) 00:01:34
視点は変わって、巨人の足元。
「よかった、エイミさんが防いでくれたみたい……!」
「この期に及んで隠し玉だなんて、なめてくれちゃって~!おーいこの大根足ロボット!太股大魔神!こっち向け~~~!!」
その言葉に反応してか巨人が光点に殺気じみた光を灯しモモイの方を向く。
「え、あれ?なんか思ってたのと反応が違___」
そのまま胸に光を湛えたその時、巨人の顔面に爆炎が灯る。
「させない……!」
下手人はユズだ。会心の一撃だったのか、巨人が仰け反ると、ビームは遥か空へと放たれて消えていった。
『姿勢が崩れました!マーカーセット、今です!』
その隙を逃すようならヒマリは天才とは自称しない。即座に立体空間にマーカーを付ける。狙うは、巨人の右膝関節だ。
「捉えたわ!そこぉ!」
「おりゃ~~~!!」
「ロボット物で装甲の無い関節部を狙うのは人型構造を著しく疑問視させるため邪道とされていますが……この際致し方ありません!」
そこにユウカ、マキ、コトリの三者の火線が集中する。関節部までは装甲化されていないのではという先生の予想は正しく、少しずつ、しかし確実に削れていく。
「よし、行け___えっ!?」
効き目を確認し、自身も攻撃に加わろうとしたミドリであったが、直後巨人が視界から消える。巨人があれだけの巨体を持ちながらバク転の要領で砲火から逃れたのだ。
マズい、距離を取られた! - 167交戦.223/10/26(木) 00:02:41
「オイオイ、あたしを忘れてもらっちゃあ困るなあ___オラァ!」
その瞬間、巨人の後退した先の廃ビルが崩れ、土煙の中からネルが飛び出す。
「これはさっきのお返しだぁ!くらいやがれ!!」
そして上空から肩関節めがけマシンガンの雨嵐をお見舞いする。普段の命中率からは考えもつかない正確無比な射撃は関節のただ一か所に吸い込まれていき、そして。
「空いた!ホラ、アカネ謹製の爆弾だ!」
無数の弾痕によってできた穴に爆弾を投げ込んだ数秒後、いったいあの爆弾のどこにあんな火薬が仕込まれていたのかと疑問になるほどの大爆発が巻き起こり、片腕が肩から派手に吹き飛ぶ。回避運動を取っていた巨人は急な重心の変化に対応しきれず姿勢を崩す。
「仕事はしたぞ……!」
「あとは任せて!今度こそ!」
「わざわざ突っ込んでくれるなんてね!」
「え?何?あそこ狙えばいいの!?」
そして再び、しかし先ほど以上の量の火線が膝関節部に集まる。あと少し、あと少しで……!
「!まだ立ち上がるの!?」
『……いえ、崩れます』
だが巨人もただでやられるわけではない。抵抗すべく立ち上がろうとして___
それがトリガーとなったのか、ついに負荷を超え、関節部が音を立てて崩れる。
「先生!お待たせしました!」
「黒崎コユキ、完全復活です!」
“ノア!コユキ!ちょうどよかった、あそこを狙って!”
「なるほど、わかりました!」
「了解です!それ~!」
先生が指定したのは巨人の胸部装甲、ヒマリから動力源かそれに類するものがあると聞いた箇所だ。そこへ。
「そこが弱点なんですね?」
ノアに胸部装甲の弱点を看過され。
「わっかりました~!それ~~~!!」
コユキの爆弾を浴びて、胸部装甲が大きく破損し。
それでもなお、残って片手片足で抵抗しようとする巨人の胸に。
「魔力充填、120%!」
「アリスよ、私が照準を合わせます。アリスはタイミングを見極めて___!」
「いまです!貫け、超極大魔法!!」
一条の光が、突き刺さった。 - 168二次元好きの匿名さん23/10/26(木) 11:31:40
命中!!
- 169二次元好きの匿名さん23/10/26(木) 21:50:59
ほ
- 170二次元好きの匿名さん23/10/27(金) 05:56:09
さてどうなる……?
- 171アンインストール23/10/27(金) 08:25:30
「動いて!動いてよ!!」
薄暗い空間の中__倒れ伏した巨人のコックピットの中で、椅子に座った一人の女性が叫ぶ。その傍らには、眠りこけるルルイエちゃんを抱えたもう一人の女性が。
彼女らは色彩の先兵だった。色彩によって滅ぼされた無数の世界のうちの一つ、その世界の生き残りであった彼女らは色彩に目を付けられ、神秘は侵食され、変質していった。
……はずだった。
「守らないと!私が!この子を!!」
この世界においてF.SCT攻略戦と呼称された色彩による大規模侵略、その最中色彩に呼び出され駆り出される時を待っていた彼女らは、しかし深海のサンクトゥムタワー内からあの子を__とうに失ったはずの友人を見つけたその瞬間、渇望した。あの子の生を、あの子の未来を。
「だから動きなさいよ!戦うことしか出来ないんなら、せめてそれだけは全うしろってのよ!!」
だからセイレーンが自爆するあの瞬間、色彩の命令を無視してこの木偶の坊にルルイエちゃんを連れ込もうとした。色彩曰くこの木偶の坊は他世界から拾ったものであり色彩の汚染も内部は軽微であるからして、シェルターとして使えると考えたのだ。その後はまた三人でやり直そうか、などと考えていた。
「絶対に渡さないっ……!たとえ別の世界であったって関係ない……!」
ちょうどそのタイミングでデカグラマトンからも接触があったのは完全に想定外だった。
ルルイエちゃんを呼び込むためのパスは切断され、それどころかこのままではこの子が新たなる預言者へと変質する。そんなこと、とてもじゃないが看過できなかった。
一瞬のうちに巡らせた思考、そして出した結論は彼女を自分ら諸共セイレーンに同化させることだった。極めて分の悪い博打であったそれはしかし思惑通り成功し、ルルイエちゃんは存在を繋ぎ留められた。
デカグラマトンによる思考汚染は防げた。その後もデカグラマトンによる無数の接触を二人で拒み続ければ、そのうち接触はなくなった。後は神の存在証明などという戯言に本気にならないよう祈ることしかできなかったが、ルルイエちゃんはこれをミレニアムとの絆をもって退けた。
「この子は私の、私たちの!」
いくつもの悲劇の先で、あの子を失った。いくつもの奇跡の先で、この子は残った。たとえこの子の本来の友人が、この世界の自分が迎えに来ようとも、はいそうですかと手放すのは彼女らにはあまりにも酷すぎた。それでも。 - 172不公平23/10/27(金) 08:28:08
「■■■ちゃん。もう、やめにしましょう」
傍らに佇んでいた女性が、呟く。
「■、■……?何言って、やめって……」
「■■■ちゃんも、もう本当はわかってるんでしょう?」
「なにがっ……!なんでっ……!!」
反論しようと口を開く。が、その後に出てくるのは言葉ではなく涙ばかり。ずっとわかっていたのだろう。この世界の先生たちがここを訪れた時点でどうするべきであったかなど。
「なんでっ……!この世界の私だって変わらないじゃない!同じ私なの!なのに、なんで私たちばっかり……!」
「……はい、よく頑張りましたね。■■■ちゃん」
「■■!あなただって頑張ったじゃない!私たち二人で頑張って、ここまできて……!」
「でも、だからと言ってそれをあの子に押し付けるのは違うでしょう?」
そう言って諭す彼女の眼からも涙が絶えず落ちる。それもそうだろう、その論は自分らの努力とそれによってようやく得られたただ一つの成果を否定する、激しい自傷行為なのだから。
「この子には帰る場所がある、それを私たちの勝手な都合で通せんぼするのは可哀そうでしょう」
「それは、そうだけど……!でももうちょっと幸せな夢を見たっていいじゃない!!」
「その結果!誰かが悪夢を見ることになってもですか……!?」
「!!」
ルルイエちゃんは一人しかいない。この世界の私たちか、あの世界の私たちか、どちらかが涙を呑む必要があるとするならば……それは、合理的に見て異物である自分らだろう。 - 173決断23/10/27(金) 08:28:53
「……合理と理性は無慈悲なのね。ホント、嫌になるくらい」
鼻をすすり、顔を上げる。
「■■■ちゃん……」
「ごめん、■■……ここまで、こんなことに付き合わせちゃって」
「……ふふっ、いいんです。他ならぬ■■■ちゃんの、そして、唯一残った親友のためですから♪」
この空間___巨人のコックピットには、ルルイエちゃんを除けば彼女ら二人しかいない。二人しかパイロットが選出されなかったのではない、彼女らの世界には二人しか生き残りがいなかったのだ。巨人たちの顔に灯る光点の数は、その世界で生き残り、巨人に乗せられた生徒の数を示す。15個も光点の灯った同業者を見たときなど彼女らは殺意すら抱いていた。それほどに孤独だったのだ。
そしてその孤独の末に見つけた友人を。今度こそ救えた友人を、今、自らの意志で手放す。どれだけの苦痛かなどわからない、どれだけの決意かなど測り知れない。それでも、彼女らは決断した。
「それじゃあ……さよなら。どうか、元気でね」
そう言って念じれば、イメージした通りにルルイエちゃんは彼女ら二人の手を離れ、コックピットの壁すら透過し、外へと流れて行った。 - 174二次元好きの匿名さん23/10/27(金) 10:15:50
違う世界のユウカとノアなのか…?
だとしたらメタ戦術取れたのも納得だな
そして違う世界とはいえ生き残り二人だけなの辛すぎる…
…余りにも辛すぎるんでこの二人にも救いが欲しいところだけどどうなるか - 175二次元好きの匿名さん23/10/27(金) 10:22:34
時数的に当て嵌まり得るのはリオヒマリもだけど、あの二人よりはユウカノアの方がそれらしいか………
- 176二次元好きの匿名さん23/10/27(金) 10:31:34
もしかして守護者として出てきたジアースもどき、もしやミレニアム製のジアースか?…………
……困った。エンジニア部なら普通に作れそうだ - 177二次元好きの匿名さん23/10/27(金) 20:31:45
- 178二次元好きの匿名さん23/10/27(金) 23:16:37
ロマンも外聞も殴り捨てて作った可能性もある
- 179二次元好きの匿名さん23/10/27(金) 23:18:33
お経と念力で動き戦う奴だったっけか
- 180二次元好きの匿名さん23/10/28(土) 04:29:50
ミレニアムって大概なんでも作れそう
- 181未来へ23/10/28(土) 08:59:20
「……私たちも、そろそろ限界ね」
手を離れていく友人を見送ったあと、独り言ちる。みれば彼女らの肉体は煙のように、しかしガラスのように足元から砕けて消えはじめていた。変質する中で色彩が根幹に食い込んだからだろうか、母体たる色彩が退けられたいま、取り残された彼女らは消えるときを待つほかなかった。ならせめて、消えるまではあの子と共に居たかったのだが。
「ええ、だいぶと暴れましたからね」
「……最期に、青空が見たかったわね」
「あら、最後だなんてそう悲観することはないかと♪」
「……■■?何言ってるの?」
妙に明るいその声に疑問を抱く。空元気とは違う、確固たる事実を述べる口調だ。
「調べてみたんですが、どうやらセイレーンの残骸を養殖して量産しようとしている不届き者がいるみたいでして。器になりそうですし、数も揃ってるみたいですよ?それこそ私たちの同業者皆が入っても余りそうな位には♪」
「……はっ、はは。いいわね■■、せっかく用意してもらったんならありがたく使わせてもらおうじゃない!」
にわかに降ってわいた希望。否、希望と呼ぶにはあまりにも妥協的だが、それでも彼女らからしてみれば奇跡と呼んでもいいほどの希望に、頬を綻ばせる。
久々に屈託のない笑みを浮かべると、二人は手早く準備に取り掛かるのだった。 - 182二次元好きの匿名さん23/10/28(土) 09:03:25
カイザーかな?
やってる事はあれだけども結果的には良かったか…? - 183二次元好きの匿名さん23/10/28(土) 09:12:10
>>「調べてみたんですが、どうやらセイレーンの残骸を養殖して量産しようとしている不届き者がいるみたいでして。器になりそうですし、数も揃ってるみたいですよ?それこそ私たちの同業者皆が入っても余りそうな位には♪」
同業者皆?.....ノアユウ以外にもテラーいたんだ……
- 184二次元好きの匿名さん23/10/28(土) 09:22:22
コーラルが乗り移った廃棄ACみたいな……
- 185二次元好きの匿名さん23/10/28(土) 09:23:38
- 186二次元好きの匿名さん23/10/28(土) 10:06:57
バッドエンドの数だけテラー生徒もいるだろうしねぇ
- 187二次元好きの匿名さん23/10/28(土) 18:37:17
ミレニアムがクッソ強化されてまう
- 188さぁ行こう23/10/28(土) 23:21:34
海の底にいた。
深い深い海の底、暗い暗い海の底。懐かしさすら感じる静寂の世界。
独りが好きだった。いや、誰かといるのが怖かった。昔、大好きだった何かを壊してしまったような気がするから。
だから、私はここにいる。ずっとこの世界で、独りここにいる。
孤独には慣れた。寂しくはない。寂しくなんて……
___声が、聞こえる。水面の彼方、光のわずかに差す方から、皆の声が。
それがきっかけだった。心の奥底にしまい込んでた感情が爆発する。
___いやだ!終わりにしたくない!やりたいことだって、やり残したことだってまだたくさんある!!私は、皆と一緒にいたい!!
力強く立ち上がる。どうすればいいのかは不思議とわかっていた。行かなくちゃ、この場所に未練を思う前に。
おもむろに駆け出すと、確かな助走で光の差す方へと飛び立とうとして。
踏み切るその直前、とん、と二つの手が私の背中を押す。
海底から足が離れ、どんどん浮上していく。意識が上へと上がっていく。
誰が私を押したのか気になって振り向くと、二人の女性がそこにいた。髪型や背格好こそ違えども、その顔はとても見覚えのあるもので___ - 189目覚め23/10/28(土) 23:23:15
「___です……勇者よ、目覚めの時です……!」
声が聞こえる。勇者?目覚め?あぁ、そうだね。勇者なら目覚めないと……いやもう3分だけ……待って、周りに無茶苦茶人の気配が……
「……んあ?あれ、アリスちゃん……」
「!勇者が目覚めました!」
人に囲まれてる気配を感じて何事かと瞼を開けると、私の顔を覗き込んでいたアリスちゃんと目が合った。次いで。
「馬鹿!心配したんだから!!」
「わぷっ!?ゆ、ユウカちゃん!?」
ユウカちゃんが胸元に飛び込んでくる。ちょ、苦し……!?
「はい、気持ちはわかりますがその辺にしときましょうか。ルルイエちゃんも困っていることですし」
「あれ、ノアちゃんも。あぁれ、でもさっき二人と会った気が……?」
二人の顔を見て、なにかが脳裏に引っかかる。なんか、さっきも二人と会った気が……
「あら、たしかに私たちはここでずっと待っていましたが……まさか人が本気で心配している中で狸寝入りしていたんですか?」
「うぇ!?いや、私は今しがた起きたところだけど……!」
「ふふ、冗談ですよ♪それは脳波をモニタリングしてわかってますから」
「もー!からかわないでよ心臓に悪いんだからーーー!」
「おーおー、なんだ元気そうじゃねえか!」
からかい上手の生塩さんに抗議の意を示していたところ、また別のほうから声を掛けられる。
「あ、ネル先輩!はい、私は元気ですが……というか、この人だかりはいったい?」
そういって周囲を見渡せば、人、人、人……
“ルルイエちゃん、君は直近のことはどれだけ覚えてる?”
「あ、先生。そうですね、皆で私を義体に移すぞー!って作戦を始めたあたりから急に眠気がきて……そうだ、あの後作戦はどうなったの!?説明を要求します!!」 - 190ザルヴァートル23/10/28(土) 23:24:07
「説明なら私が!!まずルルイエちゃんさん、作戦は成功しあなたは見事現世に帰還することができました!」
そう言ってコトリちゃんが私のお手手をふにふにする。この感覚が、作戦が成功した何よりの証拠だろう。
「あなたの精神の中に潜んでいた敵性存在を排除して飛び出てきたあなたを回収したところ、急に精神世界が不安定になりまして……!」
「そっからはもー大変!私たちが元来た場所じゃないと現実に帰れないって急に言われて、必死の思いで走ったんだから!」
「弁明させていただきますと、急激に現実と精神とのパスが乱れたのは想定外の出来事であり、本来はもっと余裕を持って帰還できる計画だったのですが……」
それはもう大変だったのだろう。話に割って入ってきたモモイちゃんの身振り手振りやヒマリ先輩の狼狽えっぷりから用意に読み取れる。
「でも、帰りがけ綺麗な景色を撮れました。これは次回作の背景資料に使えそうです」
「うんうん、グラフィティのインスピレーションが湧いてくるよ!」
どうやら悪いことばかりではなかったようだ。ミドリちゃんがいくつか写真を見せてくる。
わぁ、夕暮れと夜明けが一緒くたに存在しててこれは確かに……!
「特に脱出する段階になって夕暮れが沈んで朝日が昇ってきたのなんか、次回作の演出に使えそうだと思うの!」
「わぁ、おぉ……!よく撮れてるじゃん!」
「記録用に常に動画を回してたってのもあるけど、まぁ写真はユズがね」
チヒロ先輩の言葉に、ユズちゃんがおずおずと頷く。
「はい、その、恥ずかしながらアリスちゃんが私を抱えて走ったほうが速いってなりまして……その、手持ち無沙汰だったので撮った次第です……」
「にしてはブレとかほとんど無いし、アングルも最高じゃん!」
「あ、ありがとうございます……」
“ちなみに私はケイに背負われました”
「それでいいんですか先生……あれ?ケイってあの?」
「そうなんです!精神世界でケイが実体化して___」
「えー、説明の続きよろしいでしょうか?」
「あ、わぁ!ごめん!」
コトリちゃんのその言葉に、話の本来の流れを思い出す。
「まぁ皆さんの言った通り精神世界とこちらの世界との接続が不安定になりまして、あわや精神世界に取り残され遭難するやもしれない事態に見舞われたのですが何とか脱出に間に合われることができまして!あなたの意識が義体に入ったのも確認できまして……」 - 191奇跡か、必然か23/10/28(土) 23:26:16
「そうだよね、これ義体なんだよね。あまりにも違和感がないから忘れかけてたけど……」
そう言ってお手手を自分でもふにふにする。うん、感触といい温もりといい、とても人工物だとは思えな___
「そう!!そこなんですよ!!!」
「うぇ!?」
そこでコトリちゃんが急に音圧を三段階くらい上げる。な、なんだぁ!?
「私たちの作った義体は不完全なものでした。いえ、時間が無かった、人手が足りなかったなどと言い訳をする気はありません!私たちの力不足に起因するものです!ですが、あなたの意識が入ってから程なくして義体に異変が起きました。なんと全身が結晶体に覆われたのです!」
“うん。クラフトチェンバーに使うキーストーンそっくりだった”
興奮気味に語るコトリちゃんに、先生が合いの手を入れる。
「しかもそれだけではありません!その直後未知の発光現象と共に結晶体があなたの身体へと再構築されたのです!!」
“うん。クラフトチェンバーそっくりだった”
「へぇ……!じゃあこの肉体は……」
「はい!調べたところ身体組織の99.8%が以前のルルイエちゃんのものと一致しまして、限りなく生体に近いと言えるでしょう!」
「わぁ……!部長、いつの間にセイレーンちゃんにクラフトチェンバーなんて載せてたんだ……!いや、会長さんのほうか……?」
「いいや、それについて本人らは否定しているよ。無論私たちもだ。万物を再構築できるなんて、そんなオーパーツを用意できるはずがないだろう?」
「おおかた海底に沈んでいた遺跡が再生するときに混ざったとかそのへんだろうさ」
私の推察をいつのまにかそこにいたウタハ先輩と発電機研究会会長さん本人が否定する。その後ろで深海開発部部長も「私も知らない」と首を振っていた。え、じゃあ何?
「それじゃ私、不明瞭な現象で訳も分からず復活したの……!?」
「そうなりますね!」
私のその言葉にコトリちゃんが勢いよく肯定する。ちょ、何それ怖―――? - 192こんなもんでいいんだよ!23/10/28(土) 23:32:27
「いいじゃんいいじゃん!いなくなったキャラが復活するのなんてあーだこーだ理屈まみれにする必要はないよ!」
「あ、あんまり乱雑だと白けちゃうかもしれないけど……でも、今なら」
「そーですよ!こんくらいでいいんです!先輩が帰ってくるのならいっそ虚空から生えてくる位大雑把でも大歓迎ですよ!にはははは!」
「虚空って……コユキちゃん、私を何だと思ってんのさー!」
「でっかいロボットと同化してデカなんちゃらをぶっ飛ばした私の大好きな先輩!!」
「……っもーーー!!コイツぅーーー!!」
からかうつもりが返ってきた思わぬ言葉にたまらず愛しき後輩の頭をわしゃわしゃ撫でていると。
「勇者ルルイエちゃんよ、約束は覚えていますね?一緒にゲームをしますよ!」
そう言ってアリスちゃんが腕を引っ張ってくる。ちょ、待……!
「え、ちょ、確かに約束してたけど今から!?まだ精密検査とか……!」
「その点は心配ありません」
その声は超天才病弱系美少女……ええと、まぁいい!ヒマリ先輩!
「少し前にリオのAMASが一体訪れましてね。不本意ではありましたがリオの手も借りつつ検査を終わらせました。結果は異常無し、今も精神波長に異常は見られないので大丈夫かと」
「リオ会長……来てたんですね」
「あなたが目覚める前に帰ってしまいましたが。全く、本当に無責任な女ですよ」
「ということですので!さぁ!靴を履いたら冒険の始まりです!」
「わわ、わかったから引っ張らないでー!皆本当にありがとう!!そういうことで、それじゃまた後で~~~!」
「おー!いつでも挑戦受け付けてるからなー!」
「仕事の方は私のほうでやっときますから!先輩のために頑張っちゃいますよ~!」
「なっ、コユキが仕事にやる気なんて……!?」
「あら、明日は雪ですかね~♪」
「セイレーンちゃん、グラフィティ増やしておくけどいいよねー!」
「説明や解説が必要になりましたらまたいつでも呼んでください!いつでも駆けつけますので!」
「……ふふっ、頑張った甲斐がありましたね♪」
“……うん、そうだね” - 193FlyMeToTheSky23/10/28(土) 23:33:18
「ささ、はやくはやく~!」
「ルルちゃん先輩があそこにいる間に新しいゲームもたくさん出ましたからね♪」
「皆、待って……は、速い……」
「あ!ユズのスタミナが空です!ユズ、私の背中に搭乗してください!……はい、それではアリス、再発進します!」
「よぉし皆、ついてこーい!まだ見ぬ世界へ、冒険へ!空でも海でも!どんとこーーーい!」 - 194後日談:とある電子の海での一幕23/10/28(土) 23:35:50
<ファイル『深海で発見された資料@セイレーンちゃんの初成果!』の解読完了>
『****年**月**日 12:40
我々アトランティス海洋学園は失敗した。AL-0Hを無名の司祭の残した危険因子であるとする派閥を抑えきれず、あの子を不用意に刺激してしまった。結果、あの子を女王として覚醒させてしまった。
あの子を眠らせるために校舎の7割が崩壊し、あの子の内部OSとこの学校で過ごした記憶を消してしまうほかなかった。
残った3割の校舎ももう持たない。生徒のほとんどは脱出船に移動した。あの船の上で一からやり直すとのことだ。
私はこれから、残った司祭の兵器と、そしてあの子の肉体諸々学校を深海に沈める。兵器はそれで沈黙するだろうし、あの子は特別製だから無事だろう。あるいは何百年、何千年か後になって陸地に流れ着くかもしれない。もしそうなったとき、生まれなおしたあの子が使命もなにもかも忘れ、あらゆるしがらみから解放されて、このキヴォトスで青春を謳歌する一生徒として生きることができたのなら……それ以上、望むことはない。』
<解読結果をサーバー『深海開発部』及び『調月リオ』に送信……>
<送信停止を受理>
<ファイルの破棄を受理>
<破棄します>
//私とアリスと同様に、我が姉も自分で役割を見つけました。
//今の彼女は無名の司祭の兵器、そのプロトタイプではなく、『ルルイエちゃん』という一生徒です。
//それに一石を投じるような文書は必要ありません。
//カバーストーリーは……そうですね、『解読中にブレーカーが落ちてデータがパァ』でいいでしょう。
//……見ていますか、名も知らぬ亡校の子よ。あなたの望みは果たされましたよ。
//……そういえば、この前カイザーアーマメンツの工場で無断生産していたセイレーンの同型機が暴走した挙句脱走したそうですね。それも数十機も。
//信用もがた落ち、倒産は免れないでしょうが……
//まぁ、私とアリスには関係のない話ですね。
- 195終章『帰る場所』23/10/28(土) 23:47:11
~Fin~
『I believe ~海の底から~』から『アンインストール』を経て『Fry_me_to_the_sky』にたどり着いた本物語、これにて完結です。
おおよそ二週間お付き合いいただき、本当にありがとうございました。 - 196二次元好きの匿名さん23/10/29(日) 02:41:55
乙やで
- 197二次元好きの匿名さん23/10/29(日) 03:00:33
面白かったです!
完結おめでとう御座います。 - 198二次元好きの匿名さん23/10/29(日) 06:53:16
乙でした
透き通った青春の物語だから大団円で良いのだ
そしてぱちもんセイレーンに魂を移した事で
テラーたちはクロコが危惧していた同一人物が同じ世界にいる事の危険性を回避したんだなって - 199二次元好きの匿名さん23/10/29(日) 09:11:04
カイザーもたまには役立つもんやな()
- 200二次元好きの匿名さん23/10/29(日) 11:03:06