(SS注意)キタサンブラックがサトノダイヤモンドにある不満を相談する話

  • 1二次元好きの匿名さん23/10/15(日) 19:57:07

     涼やかな風とともに、夏の暑さが通り過ぎていく秋の夕暮れ。
     お日様が沈み徐々に空が色を消していく姿を見ながら、私――サトノダイヤモンドはベッドの上でぼんやりと座っていた。
     トレーニングと課題も終わってしまい、やることがなくなってしまった。せめて同室の親友がここにいたら話は違うんだけどなぁ。
     そう考えてもあの子はまだトレーニング中。とりあえず終わるまで待つしかない。
     だけど、こういう静かな時間も私は結構好きである。目まぐるしく過ぎていくからこそ、安らかな時間は貴重で何よりも尊いものだ。

    「聞いてよダイヤちゃん!トレーナーさんが酷いんだよ!」

     そんな時間は私の親友によって消えてしまった。
     大きな音にビクリと体が震えてしまい、尻尾と耳がピン!と立ち上がってしまう。
     その声の主であるキタサンブラック――キタちゃんは、肩で息をしながら耳を絞っていた。

    「き、キタちゃん……びっくりしたよ……。扉を乱暴に開けちゃだめだよ……」

    「……あ!ご、ごめん……。頭に血が上りすぎてて……つい……」

     いつもと違う様子の親友。体を震わせながら注意すると、ハッとした表情に変わった後で申し訳無さそうな顔になった。
     良かった……ちょっとだけ落ち着いてくれたみたい。私の震えた心も少しだけ落ち着いてくれた。
     くるりと後ろを向いたキタちゃんは、ゆっくりと扉を閉める。最近妙に綺麗だったキタちゃんの尻尾は、今のキタちゃんの心情と同じくらいボサボサになっていた。

    「ううん……キタちゃんがそんなに怒るなんて思ってなかったから……。私は気にしてないよ!」

    「うう……怖がらせてごめんね〜……」

    「ふふ、もう気にしてないのに……。それよりもキタちゃん、何があったの?」

  • 2二次元好きの匿名さん23/10/15(日) 19:57:25

     耳と尻尾を震わせてながら、両手を合わせるキタちゃんの姿が少し可笑しくて、ちょっと笑ってしまう。
     とはいえ、何があったか知りたい。キタちゃんのトレーナーさんとキタちゃんって仲良しだと思ったから、喧嘩?をするとはとても思えない……。
     私の疑問にキタちゃんは、合わせた手を離して顔の前でグッと握り直して、またムッとした顔に戻る。
     うん、怒りの根本は深いみたい。

    「聞いてよダイヤちゃん!あのね、トレーナーさんがね!」

    「うん」

    「あたしのことをね!犬みたいな扱いするんだよ!」

    「うん。…………?」

     怒りのオーラが後ろから溢れ出してるキタちゃん。私はそれを聞きながら、ゆっくりと右手を顎の下に置く。……犬?それってどういうことだろう?
     キタちゃんの見た目……とかではないか。
     性格……は、素直で従順で誰にでも優しくて、落ち込みやすいところはあるけれど立ち直りも早い。仲がいいヒトには、目に見えて大きく尻尾を振る。
     あれ?キタちゃんって確かに犬みたいかも?
     ぼんやり考えていたら、キタちゃんがこっちを不思議そうな顔で見ていた。いけない、この考えは今は置いておかないと。

    「ダイヤちゃん?」

    「あっごめん。ちょっと考え事してた。えっと、トレーナーさんが犬扱いしてくるんだっけ?」

    「そうなんだよ!あたしは犬じゃないのに!」

    「えっと……例えばどんな風に犬扱いするの?」

     私が人差し指を頬に当てながら聞いてみる。するとキタちゃんは、よくぞ聞いてくれました!と言わんばかりにあたしに指を差す。本当に凄い勢いで、ビシッ!と音が出そうなくらいだ。思わず私は耳と尻尾が持ち上がる。
     ビクリと体を震わせる私を気にすること無く、キタちゃんは口を開く。

  • 3二次元好きの匿名さん23/10/15(日) 19:58:05

    「あたしね!最近トレーナーさんに頭を撫でてもらうことが増えたんだけどね!」

    「うん?」

     え?惚気?
     いや、キタちゃんならしてもらっても可笑しくないか……。聞き流そう。

    「ワシャワシャ!として乱暴な感じだけど、気持ちいいな……って思ってたの!」

    「う、うん……」

     やっぱり惚気?
     いや、焦るなダイヤ。キタちゃんの怒りの理由を聞いてない。理由を聞くまでは我慢するんだ。

    「何を参考にしてるんですか?って聞いたらね!犬の動画だったんだよ!酷いよね!」

    「うん。……うん」

    「あれ?ダイヤちゃん?……むぅ~……」

     のろ……いや、酷いのは確かだけど……う~ん……。何だろう?この納得いかない感じ。
     私が同じ立場ならキタちゃんみたいに相談するんだけど……何かが引っかかるんだよね……。それがなにかは分からないんだけど。
     私の微妙な様子に気づいたからか、頬を膨らませるキタちゃん。普通の時ならキタちゃん可愛い!が出来るんだけど、それどころではない。

    「納得……してくれないんだね……」

    「えっと……仲良しアピールなのかなって気持ちがどうしてもあって……ちょっと……」

     とりあえず本音を隠しつつ、そういうことを言ってみた。まぁこれも思ってることではあるし、怪しまれないよね。

  • 4二次元好きの匿名さん23/10/15(日) 19:58:23

     キタちゃんはというと、さっきよりも頬を膨らませて大きく尻尾を左右に振り回し始めた。

    「違うよ!参考が犬の動画はダメだよ!せめてヒト同士だよ!」

    「そうなると小さい子供を撫でるやつだけど、キタちゃんはそれでいいの?」

    「……!」

    「それに小さい子供にやるのって、今のキタちゃんが好きな撫で方は出来ないかもだよ?」

    「ぐっ……ぬぬ……」

     苦虫を噛み潰したように苦しそうな顔で、拳を握りしめるキタちゃん。今じゃんけんしたら、絶対私が勝つってくらいは強く握りしめている。
     キタちゃん……そんなに強く撫でられるのが好きなの?そんなに手を握って痛くない?
     思うところは色々あるけど、話を続けることにする。

    「確かに、犬の動画を参考にするのは良くないかもしれないよ?でもキタちゃんは、乱暴な撫で方がいいんだよね?」

    「そ、それは……そうだけど……」

    「なら仕方ないんじゃないかな?」

    「むむむ……」

     思ったことをそのまま伝えてみた。
     キタちゃんは眉間にシワを寄せながら考え込み、考え込み、考え込んだ末。小さくため息を吐く様子が見えた。

  • 5二次元好きの匿名さん23/10/15(日) 19:58:43

    「分かってたんだ……受け入れるしかないってことは……。でも納得出来ないところが……どうしても……」

    「そうだよね……納得は出来ないとは思うよ」

    「頭だけならあたしもまだ我慢出来たんだよ……」

    「……?」

     頭だけなら?その言い方変じゃない?それじゃあまるで、別の場所もしてもらってるみたいだよ?
     気になるとそれを追求したくなる。それは私だけではないはずだ。

    「キタちゃん、頭以外にも何か撫でてもらってるの?」

    「えっ?」

     私の言葉にキタちゃんはピクリと耳を立てる。そして、腕を後ろに持っていき顔を背けだした。そして、後ろに回した腕は尻尾を守っているようにも見える。
     なんで尻尾を守るの?ちょっとつついてみなきゃ。
     謎の使命感に襲われるまま口を開く。

    「尻尾撫でてもらってるの?」

    「ち、違うよ!そんなことしてもらってないよ!ただ尻尾をブラッシング!…………ぁ」

     キタちゃんは勢いそのままに大きな声を出して……すぐに両手で口を塞いだ。文字通り尻尾を掴んだということだろう。
     ブラッシング……ブラッシングかぁ……。なるほどな……。キタちゃんが怒ってた理由はそこが一番なんだ。なるほどなぁ。私もトレーナーさんにしてもらってないのに。ふ~ん……そっかぁ……。
     ふつふつと何かが浮かんで溢れそうになってきた。

  • 6二次元好きの匿名さん23/10/15(日) 19:59:04

    「キタちゃん、ブラッシングって……なに?」

    「…………」

    「ねぇ、ブラッシングがどうしたの?」

    「…………」

    「そういえば、最近キタちゃんの尻尾凄く綺麗だね。何でかな?」

    「……………………」

     私の言葉に何も言わないキタちゃん。
     徐々に顔色が悪くなり、白い肌がより一層白く変わっている。それにしなしなと耳と尻尾の力が無くなっていた。
     見つめる私と目を逸らすキタちゃん。そして、扉の向こうの足音が聞こえるくらい静かな空間。それを打ち消すのは一体誰だろうか?

    「…………!」

     打ち消したのはキタちゃんだった。
     口から両手を離したかと思うと、素早く扉を開けて室内から出ていく。
     私は座っていたせいで、その一歩が何よりも遅くなってしまう。脚に力を込めて立ち上がって……。

    「…………っ!」

     駆け出した。
     最低限の動きで扉の前まで進み、標的が移動したまで急ぐ。だけどあの一瞬のロスは余りにも大きかった。もう小さくなるくらい遠くにいる。
     だけど構わない。それなら私は追いつくまでだ。

  • 7二次元好きの匿名さん23/10/15(日) 19:59:34

    「キタちゃん!!!待ちなさい!!!」

    「……………!!!!」

    「せつめい!!!せつめい!!!」 

    「……………!!!!!」

    「まて!!!!」


    「…………!!!!!!!」

     言語能力すら走る力に変えて標的目指して走る私。それでもまだまだ遠い距離。
     私達の必死のレースはその後すぐに寮長さんに捕まり、ふたりして大目玉を喰らうことで幕を閉じるのだった。

  • 8123/10/15(日) 20:02:55

    アニメが始まっているのにアニメとはあまり関係ない話を書いてるのはどうなのだろうか……。

    自然な感じで尻尾のブラッシング頼みそう……な気がするキタちゃんです。
    ダイヤちゃんのほうがこういうのは一歩先に行ってそうですが今回は別ということで……。

  • 9二次元好きの匿名さん23/10/15(日) 20:04:03

    アニメで描写されない部分ということでどうだろうか
    それはそうと良き

  • 10二次元好きの匿名さん23/10/15(日) 20:04:29

    でこうなると

  • 11二次元好きの匿名さん23/10/15(日) 20:05:01

    どちらかというとアプリ世界線かな?
    なんにせよ可愛すぎて悶えた

  • 12123/10/15(日) 20:09:09

    読んでいただきありがとうございます。

    >>9

    アニメ……ではこんなことあるのか……はかなり難しいところですね……。

    >>10

    そうですね……。これが一番イメージにあいますね。全力追いかけっこです。

    >>11

    そうですね、アプリ世界線ですね。

    可愛いと言っていただき嬉しいです。

  • 13二次元好きの匿名さん23/10/15(日) 20:15:52

    いつもはしっかりしてても、やっぱり等身大の女の子なんだなって

  • 14123/10/15(日) 20:24:10

    >>13

    読んでいただきありがとうございます。

    まだまだ中等部の子達ですからね……。だからこそ頑張ってる姿がより輝くのだと思います

  • 15二次元好きの匿名さん23/10/15(日) 20:33:07

    犬の動画ねぇ…まだ余罪がありそうですね

  • 16123/10/15(日) 20:37:15

    >>15

    読んでいただきありがとうございます。

    誤解です!本当に犬の動画見ながら撫でる勉強とブラッシングを学んだだけなんです!

    ……これも大概失礼かつダメな行為ですね。

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