【オリキャラ・ブルアカ】49億kmの愛を込めて

  • 1風車23/10/16(月) 17:54:38

    《一話:エピローグ》
    デスクを一つ挟み、彼らは相対する。一人は一つとして同じ存在でなく、無数の可能性の紐の根源たる存在。学園と青春の物語というジャンルの中で、無数のテクストを跨ぎ、遠い夜を飛び越え、遥か遠い朝日すら手にするような。一方デスクに座る存在は、黒い容姿をし、怪しく白い光を煌々と照らし、その名を体現するように、漆黒のスーツを身にまとう。それは何にも染まらない意志の表れか、それとも心の底をも見透かせない、永遠の深淵か。そんな彼らはたった一つのために、話をしていた。デスクに置かれた印鑑のない白紙の紙、桃色の髪の彼女の話を。その”大人の戦い”の始まりは、こんな話から始まった。

    「あなたはキヴォトスに来てから、数々の騒動に関わってきたと聞きます。その性格と、その思いならば、ずっと、様々なことを見てきたのでしょう。」

    黒い者が口を開き、その見えない瞳の奥底で、その奇怪で美しい存在を眺める。聖典ならば、主ともいえるその存在、時に師であり、時に友人。そんな教えを解き、先に生きる者に対し、言葉を紡いでいくのだ。畏怖とも、高揚とも取れるその静かで冷たく、そして熱を持ったその声で。

    「でしたら勿論。あなたにとってもそういう思い出はあるのでしょう?」

    白い者は口を閉め、静かに軽蔑するように、その奇怪で恐ろしい存在を見つめる。図書ならば、宇宙ともいえるその存在。時に敵であり、時に仲間。しかしその言葉は信じず、道を外れる者に対して、ただ言葉を返すのだ。正義とも、愚勇でもあるその熱く、しかしどこまでも冷たいその声で。

    「忘れたい思い出も、忘れられないことも。」

    そう、この物語は誰しもが知ることのない、言わば終わる後の、始まる前の物語。存在したはずの昔話。ふいに、彼が口を開いた。そして陰陽たる両名は、その昔話を語ることはない。しかし、この物語はここで終わるのだ。忘却という終焉にて。知られることはなく、ただ消えていく。

    「”忘れてしまった些細な記憶も。”」

  • 2二次元好きの匿名さん23/10/16(月) 17:55:32

    保守兼期待

  • 3風車23/10/16(月) 17:56:53

    これから始まる物語は、どこまでも奇怪で、貴方にとっては悍ましく、それでいてどうでもいい話だ。過去は変わることはなくただ脈々と受け継がれ、轟々と流れゆく一つの流れに過ぎない。

    こぶしで大いなる流れを退け、歪めることは敵わず、ただ流れ続けていく。それでも、だとしてもその大いなる流れに向き合い続けてくれ。『先生』。それがこの昔話を知ると、見て往くと望んだのだから。最後まで向き合ってくれ。

    この世界に遺る、七つの古則の五つ目、楽園を信じることで証明としたように、二つ目を他人を通じ、己を知ると記したように。きっとこの物語も、貴方が何かを変える、ほんの手掛かりになってくれるはずさ。

    To Be Continued…

    ブルーアーカイブのスレッドを見て、立ててみたいと話して早数日になり、ようやくスレッドを立てた者です。基本的にSS形式ですが、キャラクターの名前や設定などは安価やダイスで決定しようと思っています。あにまん掲示板初心者かつ、拙い文章となると思いますが、ご愛読くだされば幸いです。よろしくお願いいたします。
    ※一部キャラクターを除く。

  • 4風車23/10/16(月) 17:58:34

    《二話:蔑むる詞》
    …………ブウウ――――――ンンン――――――ンンンン………………。

    私がウスウスと眼を覚ました時、こうした蜜蜂の唸るような音は、まだ、その弾力の深い余韻を、私の耳の穴の中にハッキリと引き残していた。眼のぼやけはなく、まるでふと瞬きをして、次の瞬間、世界が切り替わっているような感覚に襲われる。しかし、前に何をしていたのかの思い出も、記憶も、それを示すアーカイブすら存在しない。自分の頭上にぼやぼやと、仄暗い蛍光灯のように輝いている。枠だけで構成された、どこか味気なく透明で、色彩からは大きく離反されたこの透明色の光輪(ヘイロー)は、自分の薄っぺらさと中身の無さを証明し、あざけ嗤っているように見えた。しかし、どうにもこうにも何もわからない。言葉や意志、歩き方はわかるのに、すっぽりと思い出だけ抜け落ちてしまったような感覚に悩まされる。自分がいるのは、恐らくベッドの上だろう。13.4340°(以下0が続く)ほどに傾いたベッドからは、眠らせやすいように、という製作者の心意気が伝わってくる。あまり娑々していない、固い背中面からは、あまりそれを感じない。どうやら長く眠るのに、軟らかさは要らないのだろう。ベット…いや、傾いた棺桶というほうが、正しいのかもしれない。そこから起き上がり、足を一本伸ばし、地に足を付ける。裸足の接地面からはひんやりとした感覚が伝わってくる。思わず顔をしかめながら、歩き出そうとしたときに、身体にガクリという衝撃が走った。後ろを見ると、コードのようなものがベッドの中から伸びている。まるで逃がさないと触手を伸ばす軟体生物のようで、それに自分は捕まってしまっている。コードの伸びる先を見ると、自分の右腕に繋がっていた。右腕は、肌色の滑らかな皮膚や、鋭く、しかし硬き骨や、撓やかで紅の血液を拍動させるモノではなく、薄暗くてらてらと怪しげな溶液で輝く、機械仕掛けの腕であった。指先を動かすと、難なく動くが、やけに君が悪い。義手と言えばいいのだろうが、だとしても良い目覚めとは言えない気がした。左腕でコードを引っ張ると簡単に外れ、再び歩き出すことができる。暗い部屋の中、開いた瞳孔で光を捉えてゆっくりと扉へ伸ばしたとき、眼がくらむような光が灯った。人間でない人工音声のようなものが、自分に声をかけて来た。

  • 5風車23/10/16(月) 18:02:24

    人工音声『o オ オァ(少しの沈黙)おはようございます。』

    なんとも形容しがたいその声は、自分に対して挨拶を掛けているようだった。自分も、挨拶を返した方が良いのだろう。少なくとも、そうすれば嫌われにくいというコトは、知識として知っているからだ。

    「おはよう。」

    短く自分がそう返すと、人工音声は抑揚と感情のない声で天井のスピーカーの様なものから再び声をかけてくる。はっきり言って喧しくけたたましい音だというのは、黙っておこう。きっと面倒くさいことになってしまうから。

    人工音声『お久しぶりです、(気分が悪くなりそうなノイズ音)。私は人工知能のN-H-K-Sと申します。』

    名前の場所のノイズ音は、実に不愉快な物だった。甲高い悲鳴のような、囂々と泣き喚く砂嵐のような、そんな音で耳を劈いてきたからだ。眉を顰めながらも、話は続けられなくてはいけない。黙ってたら何を言ってくるか溜まったものではないからだ。もし「どうされましたか?」とかいうように、ひたすらノイズ音を鳴らされたら本当にどうにかなってしまう。

    「その、N-H…って何。何かの略称?」
    そう私が先ほどの言葉に対して質問を投げかけると、喧しい人工音声はその喧しくもどこか温かみのある声で再び言葉を返してきた。慣れればそう悪くはない。少し音量が下がればもっと悪くないが。

    人工音声『申し訳ありませんが、本機はそのような知識を獲得しておりません。詳しく知りたい場合は____』

    しまった、どうでもいい質問だった。そう思う前に人工音声は何かあったときの連絡先を示している。生憎今、その変な名前の会社には興味がない。短く、しかしその音量に負けないように声を張る。自分の声はそこまで強くはっきりした声じゃないからか、何度か言わされる羽目になってしまった。

    「もういい、大丈夫、わかったから静かにして。」

    静寂が訪れる。先ほどまであんなに喧しかったからか、逆に静寂が耳に痛いのは少しだけ気に食わなかった。静寂を求めたが、ここまで静かだとどうにもこうにも静かすぎる。だから私は静寂に耐え切れずに何か言おうとした。最もらしく、それでいて今したいこと。それは単純だった。扉相手に押し問答するのは、簡単に飽きが来るものだから。

    「ここの外に出して。」

    私はそう言った。

  • 6風車23/10/16(月) 18:05:54

    そう私が言うと、人工音声は驚いたような声を出す。いや、驚いたような声を疑似的に表現しているだけなのだろう。家に仕えている者が主人を煽てるような、少しだけわざとらしい声で。


    人工音声『それでしたら何か服装を用意させていただきます。少々お待ちください。』


    そういわれ、ふと気づく。今の自分は赤裸々で、右腕が機械なだけという奇怪で問題のある状態だった。それを少しも考えなかったのは、もしかしたら自分の危機管理が少々欠如しているのかもしれない。すると『ガコン。』という音が鳴り、壁が押し出されるように開き、中にハンガーに止まった洋服が出てくる。ハンガーはヴォルフスエック鉄で出来ているようで、触ると冷たかった。長らくこの部屋に放置されていたのだろう。少しだけ埃が被っている白色のシャツに茶色のトレンチコート、それにズボンを着て、指抜きグローブのようなものを付ける。体に温かみが戻ってきて、今から外へ出れるという高揚感が自分の血液と共に駆け巡ってくる。靴下に厚底ブーツも忘れずに履き、ブーツの先で地面をコツンと叩くと音が部屋に鳴り響いた。


    人工音声『とてもお似合いですよ(問題の音)。』


    どうやらこの非常に不愉快な音は私の名前をそう言っているらしい。文法的にそんな感じなのだろう。人工音声が問題だと思っていない辺り、もしかしたらこのノイズ音はノイズ音足りうる意味と目的があってあえてこういう風になっているのかもしれない。煽てられ、少しばかし上機嫌になり、再び扉の前に立つと不意にガコンと、再び箱が動く。扉のすぐ上の壁から、何かが降って来た。頭に鈍い痛みが走り、尻もちをつくのを尻目に機械は話を続ける。


    人工音声『もしお出かけでしたら本機と護身用の武器を持つとよいでしょう。』


    頭を抑えながら降って来たものを見ると、それは武器だった。


    【武器種の決定】

    1:アサルトライフル 2:スナイパーライフル 3:ハンドガン

    4:サブマシンガン 5:マシンガン 6:ショットガン

    7:ロケットランチャー 8:グレネードランチャー

    9:レールガン 10:モーター(迫撃砲) 11:フレイムスロワー

    dice1d11=5 (5)

  • 7風車23/10/16(月) 18:26:32

    落ちてきたマシンガンを見ると、横には古めかしい掠れた文字で『Charon』と書いてある。カロン、どうやら文学作品に出てくる、冥府の船の渡し守の名前のようだ。それを持つと、扉がゆっくりと重厚な音を立てて開く。すると唐突に膨大の砂が流れ込み、足をとられかけることになった。砂の中にでもこの部屋はあるのかもしれないが…とにかくこれで外には出られる。そういい砂の坂を踏みしめ、登ろうとしたとき、三度目の『ガコン』にして、おそらくこれで最後の音がした。自分が振り向くとそこにあるのは一機のドローンだ。ドローンにしてはやや大きいような気もする。それに、ヒトが座れるようにと上部にはプロペラなどがついていない。一体どうやって浮いているのかがさっぱりだった。そしてそのドローンから声がする。

    この声には聞き覚えがある。さっきからとてつもない煩さを誇ったあの人工知能の声だ。しかし、部屋のスピーカーほど大きくはない。ケチをつけろと言われても、少なくとも声で悪いとは言われないような音量だった。

    『本機は(もう聞きたくなかった音)の破損などを防ぐ目的で作られております。そのため__』

    おそらく弁解や弁明をしてもついてくる、ということがハッキリと伝わってくる。耳から耳へその話を聞き流し、そのドローンについてこさせることにした。確か…名前はN-H-S-K…みたいな。そんな感じの。

    砂を駆け上がり、陰影の境目、真っ白な外へ出ると、その瞳に入り込んでくる陽光のあまりの眩しさに一瞬目が眩み、手の甲で太陽を遮る。そして気づく。さっき考えていたことは、正解だったってことに。それも大正解といえる。この部屋は砂の中にあったらしい。それも、広大な砂漠のど真ん中に、だ。視界の端まで砂が続き、動物はおろか、植物すら一つもない。空に太陽を遮る雲もおらず、太陽はさんさんと平等に死の光を降り注がせている。生命が生きられるか怪しい環境に放りだされたことを察して、最初から諦めるわけにはいかないが、大きくため息を吐かずにはいられなかった。

  • 8風車23/10/16(月) 18:29:05

    不意に向こう、遥か遠くに見える一本の光が目に入る。それに注目したとき、空に駆け巡る一つの巨大な輪が存在していることに気づいた。きっとそこには何かがあるのかもしれない。そう思うと、足は動き始めていた。何かを為す、そんな大層な目的ではなく、誰も知らない神秘のような、死ぬことへの恐怖から逃れるような、生きていくためへの知性のような、自分の底から湧き上がるような激情のような。そんな、証明できない衝動に駆られたのだ。だから、私は砂を踏みしめた。

    その、遠くへ、何か美しい物語を求めて歩き出した。

    To Be Continued…

  • 9二次元好きの匿名さん23/10/16(月) 19:11:20

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  • 10風車23/10/16(月) 19:11:49

    《三話:冥府へ。》
    砂漠というものが、正しく地獄と言われる意味を知った。少し歩くのにも数分要し、砂に足が沈み込まれ、体力を奪われていく。やけに重たい武器と、いざ知らずと浮いているドローン。人が乗れるような見た目をしているが、無言でただただついてくる。話すだけの体力もなく、銃を杖代わりにして歩いていた。

    何時間歩いたのかもわからない。空が少しずつ朱く染まっていく。砂漠だからか夕暮れがよく見える。この後数時間もすれば、極寒の時間がやってくるかもしれないが、もうそこまで持つかわからない。40℃を余裕で超えたこの場所で、それまでの数時間はあまりにも重たく長い数時間なことは予想がついてしまうから。

    口が乾き、唇がくっつきそうになっていたが、その時見えた景色は、驚きと感嘆の声をあげずには居られなかった。家のようなものと、緑色のものがある。あれは、きっと町のようなものなのかもしれない。助かった。そう思い、そちらへ足の舵を切る。少しだけ軽やかな足取りで歩き始めるが、数分せずに再び重くなり始める。いくら向こうに求めたものがあっても、疲れ切った足はそう易々とは動いてくれない。膝が歩き疲れて変な音を立てて軋んでいるような感覚がするし、立ってるだけで足がちょっと震えている。

    そして気づいたが、夜が訪れそうだが、気温が下がることはない。10℃ほどは下がったが、それでも30℃ほどあるのは変わらず、汗が体から水分を着実に奪っていく。そこで限界が来た。意識が不意にピンと糸を張る。体がぐらつき前のめりに倒れた。砂が顔にボソリとぶつかる。砂とはいえかなり痛い。嗚呼、もう少し先に家のようなものが見えているのに、視界に帳が降りてくる。暗闇に染まっていき、そこから意識はない。最後に聞いたのは、パシュンという何かが打ち上げられるような音だった。

  • 11風車23/10/16(月) 19:37:25

    ???「ね、ね。大丈夫そ?」
    その声で目が覚める。意味も解らずに飛び起き…れなかった。誰かに背負われてるらしい。緑のような、少し青色の混じった色。エメラルドグリーン色というものがきっと近いだろうか。そんな長い髪の生徒に自分は背負われ、砂漠にかけられた舗装された道路を進んでいた。その素っ頓狂な動きで気づいたのか、こちらをみて笑いかけてくる。Yシャツに水色のネクタイにスカート。学生だと一目でわかるそのヒトは、糸目、といえばいいのか目の色もわからないほどに細い目であった。それにしても不可解なことがいくつもあり、そもそも今背負っているこのヒトの名前すらも知らない。何を返せばいいか困っていると、向こう側からもう一度かけてくれた。

    ???「ここはね、アビドス自治区の端っこって言えばいいのかな。そんな場所だよ、キミは倒れてたの。そこのドローン君が狼煙を焚いてくれなかったら危なかったかなぁ」

    自分はさっぱりわからない。アビドス、という場所の自治区に今いるのはわかるが、アビドスというのがどんな場所かすら知らないわけで、少しだけ向こうから話してくれた話題のとっかかりを掴んでみることにした。

    「すいません、アビドス…ってなんですか?」

    するとその生徒は驚いたような顔で、説明を始めた。

    ???「アビドスっていうのはね、キヴォトス…つまり、この都市で三大校って言われるくらい大きい学校なんだよ、数年前から砂漠が出てきちゃって、今では衰退しはじめちゃってるけれどね…」

    キヴォトス、キヴォトスは知っていた。なぜ知っているかは知らないが、記憶の底にハッキリと単語として記憶している。そして、この学園都市で三大校の一つ、アビドスに…今、いるらしい。

    「あの、あなたは…?」

    そして次に私はこう聞いた。長い説明をさせてしまった上に、おんぶまでさせてしまっている。だから、名前くらい聞いておかないと、失礼というものじゃないかって思ったんだ。

    ???「私?私はね~、ユメっていうの。」

  • 12二次元好きの匿名さん23/10/16(月) 20:42:32

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  • 13二次元好きの匿名さん23/10/16(月) 20:44:58

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  • 14二次元好きの匿名さん23/10/16(月) 20:46:28

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  • 15二次元好きの匿名さん23/10/16(月) 20:55:22

    >>11

    ユメ先輩!!

    という事は過去編か…。

  • 16二次元好きの匿名さん23/10/16(月) 20:58:07

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  • 17二次元好きの匿名さん23/10/16(月) 21:14:16

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  • 18二次元好きの匿名さん23/10/16(月) 21:16:48

    初っ端から想定外の人物 楽しみ

  • 19片腕メカニック主23/10/16(月) 23:06:50

    「ユメ…いい名前ですね…」

    するとユメと名乗るその生徒は今度はというように自分のことを聞いてくる。当然というか、コミュニケーション能力は高いようだ。自分はというと、ヒトと話した記憶がないからか、いいとは言えないかもしれない。しかし、話すことくらいならば、私でもできる。

    ユメ「ねぇねぇ、キミはなんていう名前なの?」

    当然答えることはできない。自分の名前は知らないし、それにあたるものはノイズ音だ。それも聞きたくもないような。そう思ったとき、ドローンが語り始める。まずい、そう思うよりも先にあの音が砂漠と鼓膜に鳴り響いた。

    人工音声『彼女の名前は(ノイズ音)です。』
    「ストップ。ちょっと静かにして」

    やはりその音は不快な音だった。ユメと名乗った彼女も、びっくりしたのか耳を塞ごうとしたが、自分が乗っているからできていない。おんぶされたまま、ドローンの発言を止めると、降りた方がいいかなと思い、少し肩を叩き降りたいです。と伝えると、しゃがんでおろしてくれる。よいしょと降りると、びっくりした声で言ってきた。

    ユメ「不思議な音だったね~…びっくりしちゃった。」

    結局、自分も他の人も名前は聞き取れないそうだ。二人横並びで歩きながら、それをそのまま伝えると、不思議そうな顔をする。名前がない人なんて普通いないのだから。しかし、感じているかもしれない奇怪さを繕って隠しているのか、本心からか。彼女は気にしてないよというように話を続けてくれた。

    ユメ「そうなんだ、不思議だね。もしかしてアビドスってこういうことがあるのかな?私は一年生だからわからないや。でも…先輩とかなら何かわかるのかな?」

    くだらない雑談でもあり、小さな幸福でもある。ドローンと二人は、道の先へ向かっていく。しばらく進めば、廃線となった線路が見えるだろう。つい最近まで使われていたような…いや、使おうとしていたような名残が見える。どうやらここからは線路の上を歩くらしい。道よりも、こっちの方が近道だそうだ。

    不意にうーんと顎に手をあててやや上を見る。しばらくして、そうだ、と人指し指をたてて、堂々と言って見せた。素っ頓狂のような名前を。彼女なりに考えてみせた”私”の名前を提出してきた。”鯨ちゃん”…?

    「あー…それは…なしで。」

  • 20二次元好きの匿名さん23/10/16(月) 23:09:47

    いあいあな感じで聞き取れないのか、はたまた"外"の言語はそう聞こえてしまうのか…。
    そしてユメ先輩1年生!?かなり昔だなぁ…。

  • 21二次元好きの匿名さん23/10/17(火) 05:33:18

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  • 22二次元好きの匿名さん23/10/17(火) 05:34:24

    句読点減らしてくれ

  • 23二次元好きの匿名さん23/10/17(火) 07:01:48

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  • 24二次元好きの匿名さん23/10/17(火) 07:18:54

    本当に読みにくくて笑う

  • 25二次元好きの匿名さん23/10/17(火) 07:30:27

    文章もうちょい頑張れ...

  • 26風車23/10/17(火) 08:10:22

    『ステンドバイミー』を想起させるような線路を歩いて見えてきたのは大きな校舎だった。六階いや七階だてくらいの、大きな木造校舎は見た目にしてはやけに伽藍洞としていて静かだった。玄関においてある緑色のマットと濡れ雑巾を踏んで落として、靴を下駄箱に置く。三、二、一年とあるというのに、ほとんどの下駄箱は空いている。少し薄暗いこの時間でも、外から見た時に一つだけポツンと明かりがついていた教室へユメと一緒に歩いていく。階段をあがり、廊下を歩き、そしてその扉の前に立つ。扉にはドアプレートが掛けてあり、そこにはこう書いてあった。

    「”アビドス生徒会?”」

    生徒会室と学校設備に備え付けられた、ドアの上にある文字盤以外に、わざわざドアプレートにアビドスの生徒会と表記し、誇るように書いてある。そのプレートの達筆の文字は、まるで自らに意義があるというかのような態度だった。ユメがドアを開き、それと一緒にユメが笑顔で言ってくる。

    ユメ「ようこそ、アビドス高等学校へ」

    そこにいたのは、6名の生徒であった。それぞれがアビドス高等学校の制服と、アビドス高等学校生徒会に担当の腕章をつけている。全員がユメと、そして横に並ぶ自分に対して、眼を真ん丸にしてみていた。まるで信じられない、というように。

    「え、えっと…」

    その雰囲気に少し気圧され、戸惑った。複数の視線に注目されたのは、目覚めてから初めての経験だったからだ。どもっている間に、一人が詰め寄ってくる。何か言われるのかと思い後ずさるとユメの前に何かを見せつけてくる。

    生徒会 書記「ユメちゃん、また腕章忘れていったでしょ~、今月で4回目だね…」

    あきれ半分、かわいがり半分のような、愛猫を叱るような声でそう言っていた。しかし、残りのメンバーはそこじゃないだろう、というようにこちらを見ていたのであった。

    To Be Continued…

  • 27二次元好きの匿名さん23/10/17(火) 08:18:28

    何が何で何!?

  • 28片腕メカニック主23/10/17(火) 15:06:10

    《四話:アビドス生徒会へようこそ!》
    生徒会 会計「…つまり、ユメちゃんはオアシスの方で拾ってきたってこと?その不思議なドローンと一緒に?」

    時間が6時半を回ったころに一先ずの状況整理が終わり、それぞれが意見を出し始めることになる。長机を複数組み合わせた場所にパイプ椅子が並び、そこに計8名の生徒が座っていた。

    意見の出し合いの口火を切ったのは、会計という腕章をつけた生徒であった。やはり記憶を失った生徒が行き倒れていた、それを保護する…というのは問題として間違いはないのだろう。ただ、それよりもというように発言したのは庶務の腕章の生徒だった。

    生徒会 庶務「ただ、元の場所がわかるまではアビドスにいて…いいんじゃないかな、今はもうこのメンバーしかいないから…」

    その言葉で重い沈黙が訪れた。まったくわからない私は、それに対して何も言うことができない。しかし、その沈黙の原因でもある故に、その突き刺さるような沈黙を破り、質問をしてみた。

    「このメンバーしかいない…って、どういうこと?」

    生徒会 会計「ああ、そんな気にしないで。こっちの話だからさ。」

    しかし、その質問は遮られてしまった。ただ、その質問は静寂を破るに十分であったようだ。副院長の腕章をつけたユメがみんなに向けて説明してもいいかな?というように目線を向けると、会計は肩を竦めて、どうぞ。というように軽く手を差し出した。

    ユメ「ありがとう先輩。それで、ここアビドス高等学校の問題…っていうのは…今いるこの7人で全員ってことなの。一年生は私だけで、二年生の先輩が三人、そして三年生の先輩が三人…って感じなんだよね。」

    ユメのありがとうという声に対して、少しバレないようにほんの少し嬉しそうに目を細め、「ふん」、と会計の生徒は押し黙った。どうやらユメにある程度任せるといいたいらしく、周りのみんなもそれをなんとなく察している。

  • 29片腕メカニック主23/10/17(火) 22:41:20

    会長が言葉を続けてくれた。
    生徒会 会長「四年前、このアビドス高等学校周囲の電車利権を握っているセイント・ネフティス社が撤退をすることを決定したんだ。砂嵐の悪化、そして…謎の存在がアビドス砂漠に出現したことだ。白色の蛇のようなその存在は、ネフティス社の事業に大損害を与え、撤退せざるを得なくなった、といおうか。そして___」

    何か知っていた。自分はその白蛇を。砂の塵を食し、這いずる存在を知っていた。そう、まるで己のように、知っているはずなのだ。脳裏に稲妻が駆け巡る。椅子からガタンと立ち上がる。皆が驚いたようにビクリとした。

    ユメ「ど、どうしたの?」

    しかし、その稲妻は正しく稲妻のようにほんの一瞬だけ駆け巡り、跡形もなく消えていく。ただ、網膜に焼き付くように脳にその一瞬の鳴動は残っていた。

    「いえ…なんでもないです。」

    そういいながら座ると、会長が不安そうに私を見ながら、話を続けてくれる。

    生徒会 会長「…まぁ、なんでもないならいいけれど。そして後続として入ってきたのは、カイザーコーポレーションだ。もともとはセイント・ネフティス社と対立していたが、穴ができたからとしてやってきたようだね。そして…砂漠化とカイザーコーポレーションの強引な行動によって、生徒数はボクの代から二桁まで落ちこんだ。それも次々と転校していき…そして残ったのが、このメンバーってわけだよ。いやはや、物好きというかなんというか。」

    自嘲するように苦笑する。そしてすべてを話し終わったから、というように机に両肘を置き、まるで何かの作品に出てくるキャラクターのように口元を手で隠す。目元が影に隠れ、はっきりと顔が捉えられなくなった。

    生徒会 会長「キミはどうしたい?アビドスにいてもいいし、ここを去ってもいい。」

    再び沈黙が訪れる。すべての視線がこちらを見る。先ほど脳裏を駆け巡った雷鳴が今でも拍動として残る。あの存在に合わないといけない、そう思った私は、答えることにする。肯定し、歩みを共にしたことが過去にあったかもしれない。今まで孤独な星だったかもしれない。しかし、今言う言葉は、どことなく暖かかった。

    「はい、私は____アビドスに、居たいです。」

  • 30片腕メカニック主23/10/18(水) 08:32:42

    その瞬間一人…生徒会の庶務の腕章をした生徒が立ち上がり、低めのロッカーの上に置いてある紙を一枚とって渡してくる。大きく”入学届”と書いてあるプリントだ。すかさず生徒会の書記の生徒がボールペンを手渡す。

    私がそこに自分の名前を書こうとしたときに手が止まる。自分の名前がない、ということに。ユメがそれに気づいて会計に伝えると、ふーむと考え始める。そして思いついたように一つ言ってきた。

    生徒会 会計「鯨ちゃんでどう?」
    「それはユメさんにも同じこと言われました。」
    生徒会 会計「じゃあ私はムリ。」

    匙をあっという間に投げ出してしまった。それの間を埋めるように会長が話題を出してくる。それは、自己紹介であった。

    生徒会 会長「まず私が蛇腹ミナミ。アビドス高等学校生徒会所属の三年生、担当は生徒会長。」

    そういい、ミナミは自分を指さす。ミナミは青色のポニーテールと、眼を閉じてそうな糸目、ユメと同じか、というとユメと違って、少しも開いているように見えないし、驚いても糸目のままだ。他には…服を着崩している。生徒会長だというけれど、問題はないのだろうか。

    蛇腹ミナミ「それで、今匙を投げたのが雨霧ナガレ。アビドス高等学校生徒会の三年生、担当は会計…で、ユメちゃん大好き部の部長。あ、その部活は非公認ね。」

    次に指をさしたのは先ほどから話題の中心にいることの多い、白色の髪の生徒だった。青色のジト目に、片目を隠すような前髪とロングヘアー。そして曲が流れているかはわからないがヘッドホンをつけている。制服は上にパーカーに来ていて、タイツをはいている。

    雨霧ナガレ「で…次が書記の稲留カコ。書記担当の二年生だよ。ボクと身長でいい勝負なんだよね…」

    と言いながらため息をつく。私は緑色の髪の…少しモップを連想するくらい大量の髪を持った、小さめの生徒を見た。目の色も緑で、ズボンを履いている。アビドス高等学校はスカート以外にも服装が用意されているっぽい。それと、ニーソックスを履いていた。

  • 31片腕メカニック主23/10/18(水) 20:13:43

    議長団 議長「じゃあ次は私かな」

    と議長が言ってくる。そうだよ、というようにミナミが頷く。
    それを確認してから少々かっこつけたような声で自己紹介を始める。

    議長団 議長「私が生徒会役員の不正や生徒総会の進行を取り計らう、議長団の総括…地曵カワキ。感じの”びき”の部分は点のないほうじゃなくて(曳)、あるほうさ(曵)。よろしく頼む。嗚呼、三年だよ。」

    右手に巻かれた包帯と、腰に巻かれた制服、後ろで短く結った一本結わきが目に留まった。それと…動物、ネコ科の動物のような短めの耳がついている。本来の動物ではない耳があるかはここからだと見えないほどにもみあげが長かった。

    そして続いて、庶務の腕章をした生徒が私だよね、というように少しだけ自己主張しようと手をほんの少しだけあげている。それをカワキが見つけて手を掴んで高々と掲げさせる。そしてミナミがどうぞ、と伝えた。

    生徒会 庶務「えっと…内空閑(うちくが)ヒエン…です。」

    桃色の髪に赤と青の眼。所謂オッドアイというものだろうか。白色のスカーフとユメとお揃いのネクタイをバンドのようなもので止めている。アビドスでネクタイバンドは少しだけ流行りなのかもしれない。

    雨霧ナガレ(会計)「じゃ、なくて。名前、名前は決まったの?」
    地曵カワキ(議長)「鯨ちゃんよりはまだ鯱や鮫のほうがいいと思うな」
    稲留カコ(書記) 「うーん…えーっと一回海産物から抜け出した方が…」

    生徒会 副会長「凍空。凍空なんてどうかな。」
    ユメにもう一人の副会長の腕章をした最後の一人が喋る。今まであんまり喋っていなかったからか、少しだけ会長が眉を動かした。

    蛇腹ミナミ(会長)「ん~、いいんじゃないかな?」
    生徒会 副会長「火詰ラシン。よろしく。」

    赤色に黒のメッシュ、狼のような長い耳が目につく生徒だった。肘置きのように防弾のシールドをすぐ横に置いている。ジト目で、そしてさっきまでほとんど喋っていなかった。…が、真面目に苗字を考えていてくれたようだ。

  • 32片腕メカニック主23/10/18(水) 20:14:45

    【お詫びと訂正】

    >>30

    レスの9ブロック目、雨霧ナガレのセリフは蛇腹ミナミのものでした。申し訳ございません。

  • 33片腕メカニック主23/10/19(木) 01:03:56

    雨霧ナガレ「凍空…?じゃあ名前はクジラにしようよ」

    「…ま、まぁそれなら…?」
    その妥協のような言葉とともに、私の名前は凍空クジラってことになった。本当になるとは思ってもいなかったから、少しばかしの沈黙の後、一斉にあれ?と首をかしげることにはなったのだが。そして、アビドス高等学校での生活が始まる。私、凍空クジラの。

    To Be Continued…

  • 34片腕メカニック主23/10/19(木) 11:05:42

    《五話:クジラの平凡な一日》
    あれから数日、クジラは振り回されっぱなしだった。制服を手に入れ、学校道具を見に行き、一週間ほどしてようやくひと段落がつき、平凡な一日が訪れる。目が覚めてから色々な経験をしてきた彼女にとっては、この平凡さが非凡に感じるのは、当たり前のことのような気もするが。

    アビドス高等学校に入ってから初めての休日で、スマートフォンを持って自転車にまたがり、リュックサックに飲み物や食べ物を詰め込み、ドローンがついてくる中、コンクリートの道を進んでいく。特にするべきことはないが、砂漠の見える丘や廃線の近くの道路を通っていく。この前走った雷鳴を再び見るために、この広大な砂漠のどこかにいる白色の蛇に会うために、ただただ走っているのだ。そう簡単に会えるとは限らないし、時間もかかるが、会いたい、そう強く思わずには居られないほどに衝動的なものがそこにはあったのだ。

    昼頃、コンクリートが埋まっている小高い丘の上、道路の隅に砂が掃けられた道で、何かを見つけた。機械の装備をした”大人”達が何かをしている。ざっとでも数百人ほどはいる。戦車や何かもある。しかし、戦車にあるロゴには見覚えがあった。あれは…おそらく、カイザーコーポレーションだ。

  • 35二次元好きの匿名さん23/10/19(木) 11:21:45

    良い、ss、です、ね

  • 36二次元好きの匿名さん23/10/19(木) 21:04:33

    カイザーコーポレーション出てきたってことはアビドスもう借金してるんか?

  • 37二次元好きの匿名さん23/10/19(木) 21:08:11

    >>36

    アビドスが借金し始めたのが数十年前(のはず)でここの時系列がユメ先輩1年生時代(本編から4~5年前)なので、まあはい……

  • 38片腕メカニック主23/10/19(木) 21:19:00

    カイザーコーポレーションがなぜあんな行軍をしているのだろうか?そう思うころに、ドローンが話し出した。それはまさしく、今自分が考えて、そして求めている情報であった。

    人工音声『付近に№3の存在を確認しました。手順にしたがって№3の…』

    その声と共に、稲妻ではなく、今度は鮮明に景色が焼き付く。

    自分は真っ黒な湖に立っていた。空はどこまでも遠く広がり、墨を落としたような真っ暗闇で、しかし美しい湖だった。その場所にたった一人で立っている。私は周囲を見渡すが、アビドス自治区の痕跡も自分の自転車も、ドローンすら居なくなっている。ここがどこかを考えるより先に、その湖からぬるりと這い出たのは、巨大な白色の蛇だった。蛇とも海洋生物とも取れるソレは橙色の光輪を持ち、複数ある瞳で私を見つめている。

    凍空クジラ「へ、え?なに…?」

    しかし、その理解できない状況とは別に何をすればいいかははっきりとわかっていた。この場所で何を自分が取り計らうかを、だ。それを目の前にいる存在は待っている。機械の腕をその蛇に向けると、喉が揺れ動いた。

    『歪んだ真珠と鉛を持ち、恒久の輪を持つ者よ、理解者にして至高の母の名を渡され、神名を持つ者よ、末よ。理解を通じた結合とその名を持って、己に名を再び、定め、与える。故にこれより、Binahは目覚め、再び地を這い、空を呑み、そして食らうのだ。』

    自分の喉から信じられない音とともに何かが発せられた。舌を動かしてすらいないのに発せられたその音が終結すると共に、視界が唐突に元の景色に戻される。自分は倒れていた。自転車ごと倒れてしまっていたようだ。既に日は傾き始めている。遠くには壊滅したであろうカイザーコーポレーションの人たちが撤退していっている。自分の中に、何か別の使命が目覚めているような気がした。それを示すように、腕にはぼんやりと橙の光が流れているように見えた。

  • 39片腕メカニック主23/10/20(金) 00:43:12

    夜になる前にはアビドス高等学校へ向かい、生徒会室に集まりみんなと話し合う。モモトークでもいいのだけれど、折角なら顔を合わせた方がいいよねということで休日でも会うことになっているのだ。実際それが嫌になったりはすることがないのが凄いのか普通なのかはまだわからない。

    稲留カコ 「カイザーコーポレーションが?それも、200から300?」

    日中に見たことを話すと、カコが興味深そうに話し始める。
    書類棚から何枚かの書類を出す。アビドス高等学校の借金や土地の利権に関係する書類の中の一つに『デカグラマトン大隊の進駐許可証』がある。そしてこれをホワイトボードに磁石で止めた。

    稲留カコ 「もしかしたらこれが関係しているかもしれない。デカグラマトン…って何か知っている?」
    蛇腹ミナミ「いや、カイザーコーポレーションについては少々調べたから知っているが、デカグラマトン大隊は、対デカグラマトンというだけで詳しくは知らないかな。申し訳ない。」
    雨霧ナガレ「そこは気にしなくてもいいけど、対デカグラマトンってことはデカグラマトンっていうのがいるんじゃないかな?」
    ユメ   「デカグラマトン…たしかセイント・ネフティス社が工事をしているときに出会ったあの蛇のことじゃ…な……あれ?」

    ユメの声が不意に止まる。理解できないかのように右上を見ている。そっちには何もないけれど、何かを考えているようだった。

  • 40片腕メカニック主23/10/20(金) 00:43:22

    ユメ   「ビナーっていうんだっけ、それ。」
    地曵カワキ「……………………そうだ、そのはず。ビナーって名前だったはずだ。今までそんな呼び方……していた…か?いや、していたような。」
    内空閑ヒエン「していなかったようなしていたような…いったいどうなってるんでしょうか、でも…ビナーって名前なんですよね?」

    その光景を見て経験したあの空間の話はするべきではないのかもしれない、というのをやめた。そのことがバレたら変な眼で見られてしまうかもしれないから。

    地曵カワキ「とにかくわかっていることはあのビナーと戦うためだってことだ。それなら他にも何か目的がある。」
    雨霧ナガレ「採掘じゃない?前採掘道具のあるカイザーコーポレーションの基地を目にしたことがある。」
    地曵カワキ「それはあり得るがこの地下に鉱石資源が眠っているのだろうか?いや、あるからしているのかもしれないが、それならここではなく最近できたミレニアムサイエンススクールを頼った方がいいのではないだろうか。わざわざここに来るのにはそれなりの意味があるはずだ。」
    稲留カコ 「でもそれはあくまで想像に過ぎない…ってことですから、難しいですね…」
    蛇腹ミナミ「どちらにせよ、今決まっているのは…少しでもアビドス高等学校を守ることくらいかな、ビナーがもし来た時のために対策を考えておこうか。」

    そうしてアビドス高等学校一年生の凍空クジラの平凡な一日は終わっていく。

  • 41片腕メカニック主23/10/20(金) 11:42:18

    しかし、闇は疑念を生み、譫言を呟き続ける。それと同じようにつを見る者がいる。月が全てを見るように。

    とあるオフィスで、その者はほくそ笑んでいる。

    カイザーPMC「これが今回の敗北の原因です。」
    ???    「なるほど、突然活性化したといいたいのですね?」
    カイザーPMC「は、はい…申し訳ございません…」
    ???    「問題はありませんよ、大丈夫です。」

    そしてその者は一人になった部屋で、夜を背景に暗躍を始める。その存在を知っている者は今となっては指で数えることができるほどに少ないが、彼は知っている一人であった。複製や無限の図書館、そして力を求める同志とは聊か異なり、しかし飽くなき探求心を追い続ける存在は、今、かつての存在に触れようとしていた。

    黒服     「”ゲマトリア”…ですか。」
    To Be Continued…

  • 42二次元好きの匿名さん23/10/20(金) 14:46:09

    いい意味でハーメルン向きだと思う

  • 43片腕メカニック主23/10/20(金) 18:24:13

    《六話:一敗地に塗れる》
    銃弾が頬をかすめ、熱が伝わる。今私はカロン…マシンガンを持ち、戦っている。先輩たちもそれぞれ武器を持っている。蛇腹ミナミ会長は二丁のアサルトライフルを持ち前線を着々と破壊していっているし、火詰ラシン副会長はシールドと対戦車ライフルを持っている。内庶務の空閑ヒエン先輩と書記の稲留カコ先輩はドローンやミサイル、回復物資を投下したりして支援をしてくれている。ナガレ先輩に関してはどこから引っ張ってきたのか戦車に乗っているし、ユメ先輩はシールドとショットガンで戦ってくれている。

    しかし何より意外だったのは議長の地曵カワキ先輩だ。拳に巻いた包帯が厨二病ということだと思っていたのだけれど、銃のマガジンが切れると同時に銃を投擲武器にした後、走り出して拳で制圧していっている。シールドとか構えてもシールドごと吹き飛ばされているのを見たときは、目が点になってしまった。

    ユメ    「うーん…大変なことになっちゃった…」

    ____数時間前

  • 44片腕メカニック主23/10/21(土) 00:36:32

    内空閑ヒエン「えぇっ!?…それはどういうことですか?」

    その声と共に一斉に視界がヒエンに集う。どうやら毎月この日にカイザーコーポレーションから返済金額や、今月の利子などの電話がくるそうなのだが…その日は違った。焦ったヒエンは電話をスピーカーにして机に置き、蛇腹ミナミが代わって出た。

    蛇腹ミナミ「変わりました、生徒会室の蛇腹ミナミです。どうされましたか?」
    カイザーPMC専務取締役「こちらはカイザーコーポレーションだ。少々話があってだな。」
    蛇腹ミナミ「と、いいますと?」
    カイザーPMC専務取締役「先程も言ったが、数日前我々の敷地内に不法に侵入したという情報があってだね。キミたちの信用ランクを一番下まで下げさせてもらう。」

    蛇腹ミナミが顔を挙げて自分たちを一瞥する。眼を開けてはいないが、確かにこちらを見ているというのが伝わってくる。それを見てラシンがため息をついている。

    蛇腹ミナミ「いえ、我々は…」
    カイザーPMC専務取締役「我々は?実際こちらにはけが人もいるのだぞ?居なかったことを、証明できるのか?アビドス高等学校生徒会。できないだろう?」

    内空閑ヒエン「断ります…そんなの受け入れられるわけないじゃないですか!」

    ヒエンがそう電話に向けて言い放つと電話越しにため息が聞こえる。わかりやすいほどに大きく、露骨なため息だった。そして直後、爆発音がアビドス高等学校の窓に響いた。フレームがびりびりと震える。外を見るとそこには大量のヘルメット団がいた。

    カイザーPMC専務取締役「おや?どうしたのだ?そちらで何か問題が起きているようだな…ここは一度、電話を後でかけなおさせてもらう。ただ…すでにランクは下げているから、忘れないように。」

    プツン、と電話が切れた。

    蛇腹ミナミと火詰ラシンが同時に立ち上がる。蛇腹ミナミのオーバーサイズで手が見えない袖から、するりとライフルが出てきて、ラシンは壁に置いていた対戦車ライフルを片手で持つ。

    火詰ラシン「始まるぞ。」

    そして今に至る。

  • 45片腕メカニック主23/10/21(土) 12:13:16

    結果から言ってヘルメット団の鎮圧は難しくはなかった。数時間としないうちにヘルメット団は全滅、脱兎のごとく逃げていった。しかし、それよりも問題なのは借金だ。教室に戻り、椅子に座り、深く溜息がつかれると共に長い沈黙が訪れた。

    稲留カコはこれで全部が終わりだというように目元を手で覆い、
    雨霧ナガレは悔しそうにうつむき、爪を噛みそうになっている。
    内空閑ヒエンは窓の外をただぼんやりと眺めている、喧しいほどの快晴だ。
    地曵カワキは拳かつ前線だったために受けた怪我を包帯などで処置している。
    火詰ラシンは静かに壁にもたれかかり目をつむっている、寝てはいないようだ。
    蛇腹ミナミはそういうみんなを見つめている。しかし誰も視線を交わしはしない。

    そして、ユメはそんなみんなを変えられないか、励ませれないかと考えているようだった。

    しかし、誰一人として言葉を発さないこの場において、どんな発言も全てを砕き夢を終わらせるものでしかなかったのだ。

    しかし、その静寂を破るものがいた。このどん底の中ですがる存在、子供にとって希望であり、絶望たりえる者。

    そこに立つは黒色の背広と黒き影を形にしたような存在であった。一敗地に塗れる、泥にまみれるほどに絶望しきった私たちは青春を取り逃がしてしまったのかもしれない。椅子に座り、テーブルを介し座る我々の前に現れたその”主”は言う。

    420と910の世界で、複製された奴は笑う。無限の図書館にある最も有名なその書を倣い、その名を持つのだ。

    黒服「こんにちは、皆さん。」

    一人も銃を上げることはなかった。そこにいる存在は、自分らとは隔絶され、触れることのできないような存在であると理解しているから。

    今から始まるのは、罪の告白と懺悔、そして告解。

    6人の付き添う”生徒”と、1人の主。しかしその主の座は今、生徒会長ではなくその黒き者が握っている。さて、この世界の生徒は二つの名を持つとされる。自身の名と、忘れ去られた名。そして”生徒”でない一人。ここに立つのは8人ではない。13人と、主だ。

    黒服「これをマエストロが見たらおそらくは最後の晩餐と呼び、ゴルゴンダが見たら荒唐無稽な話だというでしょう。しかし…私は違います。アビドス高等学校の皆さん。交渉をしましょう。」

  • 46二次元好きの匿名さん23/10/21(土) 23:28:55

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  • 47片腕メカニック主23/10/22(日) 00:17:15

    角ですので、と付け加え、歩き出す。黒服がラップにくるまれた一切れのパンを取り出すと、それを私の前に置いた。それぞれが意味が解らない中、背広の男は続ける。ゆっくりと私を指さして言う。敬意を持つような、侮蔑するような。心の底を見透けない声で静かに宣告した。

    黒服「彼女は裏切り者です。このアビドス高等学校に存在しては”ならない”。」

    その宣告は、あまりに重かった。確かに言われたその言葉に対して、蛇腹ミナミが銃を抜いて黒服に向ける。黒服は焦ることもなく、静かにその銃口を見ていた。

    黒服「…引き金を引きたければ良いですが…これはまぎれもない事実です。その存在は生徒ではなく、機械仕掛けの神(デウスエクスマキナ)このテクストにおいて望まれていない存在です。ゲマトリアがかつて作り上げたその存在が、まさか人の姿を模しているとは思いませんでしたがね。」

    蛇腹ミナミが銃をゆっくりと下した。理解できないという嘆きでも、信用しようという肯定の意志でもなく、その場の沈黙と理路整然と並べる大人の残酷さに打ちひしがれているのだ。

    黒服「さらに言うのであれば、数日前に不法侵入…正確にはデカグラマトン大隊を壊滅させたのも彼女といって差し支えないでしょう。転寝をしていたビナーを目覚めさせたのですからね。」

    そう先に前提を付け加えてから、次に黒服はあちら側…カイザーコーポレーションの方についての話を始める。

    黒服「あなたたちも気づいている通り、先程のヘルメット団を裏で指揮しているのはカイザーコーポレーションです。質の悪い地上げ屋といったところかもしれませんが、幸運なことに私はカイザーコーポレーションに対して、ある程度強く出ることができます。」

    そして黒服は、人差し指を立てて、提案をした。最初に言ったとおり、交渉をしようというように。教鞭をとる教師のような、しかしようやく出でた黒幕といっても差支えはない。

    黒服「彼女の身柄を我々に渡してください。そうすればいくらか先ほどの信用ランクの問題を減らしましょう。少なくとも、法外な利息はとられませんよ。月に数千万、数億と用意はできないでしょう?」

  • 48二次元好きの匿名さん23/10/22(日) 00:21:14

    ああなるほど、裏切り者の指名か>パン

  • 49片腕メカニック主23/10/22(日) 03:04:12

    「それに…何も違和感を感じなかったのは仕方がありませんが、あなたたちは本来まじりあうことがないものです。」

    ダアト…凍空クジラ以外の生徒を見る。それはそれぞれの名前が、知ることのない名前がそう言っている。彼女たちには聞こえないだろうが、それをただ静かに語るだけだ。

    青色の髪の生徒、蛇腹ミナミ。忘却する前の名を実にアトゥム神という。蛇の姿で生まれた神というだけあり、苗字からしてわかりやすい。

    赤色に黒いメッシュの生徒、火詰ラシンはセト神。戦の神なだけあり、その攻撃性のある対戦車ライフルを片手で軽々と扱うのは、裏付けでもあるのだろう。

    雨霧ナガレはヌト神。確かユメ…ネフティス神を愛しているのは、元の話になぞれば親子だから、なのだろうか。

    稲留カコはイシス神。豊穣の名を持ちながら稲を留める、他の生徒も苗字は神の者を表す影が見えるのに、名前はそれを否定するかのような名前がほとんどだというのは、皮肉な話だろう。

    地曵カワキはゲブ神。否定する名前の体現ともいえるだろう。湿気の神を母に持つというのに乾いた地を示すのは。

    そして内空閑ヒエンはオシリス神だ。オシリス神は、再びホルスを戻らせたこともある。だから我々、ゲマトリアは知っているが。無知は罪とは、よく言ったものだろう?

    しかし、彼女は古い聖典の存在だ。砂の世界ではなく、楽園という場所にあるはずの存在。元々からして、この場にふさわしくない、裏切り者だということは、ハッキリとしていた。

    凍空クジラ「…」

    件の彼女は未だ沈黙していた。自分がこの場に相応しくないと知らされ、混乱しているか、何かを決めているか。しかしハッキリしているのは。

    自分の足で教室の扉を開けて、部屋を出る。
    「決断できたら一報ください、いつでも向かいますよ。」

    そういい背広を翻す大人は居なくなってしまった。
    To Be Continued…

  • 50片腕メカニック主23/10/22(日) 14:28:24

    《七話:未来の話》
    静寂の中、最初に喋ったのはユメだった。

    ユメ「ねぇ、クジラちゃん…クジラちゃんは…どうしたい?」

    ここにいてほしいという声と、今言われた話両方がまじりあった、何を言えばいいかわからない今にも崩れて泣き出してしまいそうな声だった。何も自分で変えられないことへの絶望のような。彼女が持つ盾とショットガンほど、その言葉は真実を打ちぬくことも、嘘から守ることもできないという真実がありありと映ることになる。

    私は黙って立ち上がる。その言葉に何か返せるだけの強さはなかった。静かに教室を歩く。今さっき黒服が出ていったそのドアを開ける。ガラガラという音だけが部屋に静かに響いた。ドアが閉まると同時に私は駆け出していた。

    自転車にまたがり、訳もわからず漕ぎ始める。どこか、何かへ向かってだ。太陽が傾いて真っ暗闇になるまでかけていく。近くについてくるドローンだけが静かに自分を眺めていた。これも、そのゲマトリアの被造物の一つなのかもしれない。自分だってそうだ。あの時喧しく、けたたましく、邪魔だったのは自分のほうでもあった。

    結局、全部意味はなかったんだ。
    そこで足が止まる。向こうに、人影が見えていた。

  • 51二次元好きの匿名さん23/10/23(月) 00:08:37

    「…」
    誰かがいる。道路の先、水がうっすらと見える小さな湖。そこに人がいる。よく見た姿の生徒がいる。緑のような、少し青色の混じった色。エメラルドグリーン色というものがきっと近いだろうか。そんな長い髪の生徒。そこにいたのはユメだった。

    「…………」

    彼女は振り返ることなく、話し始めた。そこにいるのが自分だって、私が来たって確信しているように。

    ユメ「やっぱり来た。ここにいたら会えるかなって思って来ててよかったよ。」
    そこにいるユメは、湖を静かに眺めながら呟いている。いつも楽しそうな彼女からは想像できないほどに静かで…………それでいて、言葉で表せないほどに、悲しそうで、嬉しそうだった。

    ユメ「ここはね、昔オアシスだったの。もう十年くらい前かな。ここではアビドス砂祭りっていうのがあったんだよ、クジラちゃん。今はもうないけれど、いつかきっとまたするんだよ。絶対にするの。」

    ユメ「きっと、なんとかできるよ、きっと。だから諦めないで。ね?クジラちゃん。」

    振り返ったユメの顔は今にも崩れてしまいそうな、この夜のように綺麗だった。夜風に砂が靡き、全てが洪水と濁流の中に呑まれる、この世界に無き母なる川のように。

    少しだけ私は微笑む。大丈夫だよ、というように。また明日、そう手を振り、帰路へつく。遠く、砂地へ向けて。始まりの場所、戻るべき場所へ。そう、そこへ行かなくてはいけない。

    「ユメ。ありがとう、会えて。また今度。」

    ユメは、何かを言おうとした。何か言おうとしたけど、もう私は聞かずに動き出した。きっとその言葉を聞いたら、戸惑ってしまうだろうから。大丈夫、きっと。ユメなら何かを変えられる、アビドスだけじゃなくて、もっと大きいような、世界だって変えられるはず。

    そう信じていたいんだ。

    アスファルトをしばらく駆け抜ける。あの日、私が倒れた砂地がそこにはあった。自転車をそこに止め、ゆっくりと倒す。数日、数ヶ月、数年とすればきっと砂に埋もれてしまうだろう。私は歩み始める。スマートフォンを持つと、一つ、カイザーコーポレーションに電話をかける。

    数時間もかからず装甲車の音が聞こえてくるはずだ。きっと大丈夫。

    未来のためならば、きっと朽ちることだって怖くはない。ユメがそれを望んでいるかはわからない。でも、私にできることなんて、これくらいしかないのだから。

  • 52片腕メカニック主23/10/23(月) 09:47:13

    装甲車が砂漠だと言うのに走ってきていた。まるでヒッチハイクか何かのように手を上げると、こっちに近づいてくる。その光景に少しだけ苦笑しながら降りてきた兵士たちに自分のマシンガンとドローンを渡した。ドローンは電源の切り方が分からないと困った顔をされたけれど。

    車の中には一人、先程居た黒い背広の男が居た。顔は黒くひび割れ、割れた場からちろちろと白い光のようなものが見える。これ以上の表現が似合わないその存在は私を見て声をかけた。

    黒服「随分早い報告ですね、ダアト。どうされましたか?」

    社交辞令のようにどうしたかを問てくるが、恐らく何があったかは知っているのだろう。答えを待たずに車は動き出した。

    投げられたのは賽か匙か。進み出した車は砂地を通っていき、止まることはなかった。
    To Be Continued…

  • 53片腕メカニック主23/10/23(月) 20:03:07

    《八話:掴み取ったもの》
    車の中で黒服が話しかけてくる。一枚の紙を持っていた。そこに書いてあることは、身柄をゲマトリアに委ねること、そして代わりにアビドス高等学校が背負う借金の数%を代わりに返済するほか、カイザーコーポレーションの借金の信用ランクを上昇させるということだった。

    それを万年筆で記載した後に連れていかれたのは私が目覚めた場所と同じ場所だった。飛び出てから長い時間は経っていないいないというのに内装などが全く変わっている。三角形が組み合わさったような壁に、細長い道の先に一つの柱が伸びている。

    その柱に背を向けるよう言われ、そうすると赤い線が伸び、動きを封じられる。おそらく今から始まるのは何かの実験のようなものなのだろう。力が抜け、ガクリと項垂れる。黒服もカイザーPMCも見えないが、おそらく今から始まることは想像なんかできないものだってものはわかっていた。

    漠然と理解する。これが死というものなのだろう。生徒会のメンバーは探しているかもしれないけれど、きっと見つかることはない。だって相手は大人なんだから。だから、自分で掴まないといけない。手放さないとか、落としたとか、そういうものじゃなくて。あのユメのために、変えなくてはいけない。

    変えなくてはいけないんだ。

    その瞬間、視界が開ける。空から光が漏れだす。世界が裂けたように、一斉にあの日と同じように太陽の光が入り込んだ。カイザーコーポレーションの兵士たちが数秒もかからず駆けつけるが、それも無意味に終わる。顔をあげると、そこにいたのは白い蛇だった。

    ”ゲマトリア”が助けに来たのだ。

  • 54片腕メカニック主23/10/24(火) 00:50:17

    大きく砂が躍動し、私の意識のごと吹き飛びそうになりながら地上へ吹っ飛ばされる。ヘイローがちかちかと輝くソレだけは私を生徒だと認めていた。

  • 55片腕メカニック主23/10/24(火) 00:57:40

    「まさか逃げられるとは思っていませんでしたね。」

    遅れて地上へ駆けつけた”私”はカイザーコーポレーションの兵士からビナー襲撃の詳細を聞く。あの少女はどうにも逃げ出したらしい。おそらく今から追おうとしても、そう思い外を見る。しかし、ただ黒洞々たる夜があるばかりである。私は静かに笑った。クジラの行方は誰も知らない。

  • 56片腕メカニック主23/10/24(火) 00:58:57

    時は流れる。静かに誰かが消えていき、誰かが訪れる。誰かが卒業し、誰かが入学する。そんな平然としたサイクルはこの世界が物語ではない故に存在し続けている。数年として、一人の桃色の髪の少女に、彼女は笑いかけるのだ。「ようこそ」、と。

    鯨は泳ぐ。誰も知らない文学と想いを載せて。鯨は泳ぐ。砂と歴史を超えて。
    鯨は泳ぐ。何かの記憶と、夢を乗せて。鯨は泳ぐ。全てを守るために。

    そして暗闇もまた残り続ける。新しい時代にもいつでも夜はあるように。
    「暁のホルス…ですか。なるほど。」

    To Be Continued…

  • 57片腕メカニック主23/10/24(火) 11:41:29

    《九話:プロローグ》
    誰も居ない列車の中、血を少し帯びて白の服が汚れている。
    「……私のミスでした。」
    「私の選択、そしてそれによって招かれたこの全ての状況。」
    「結局、この結果にたどり着いて初めて、あなたの方が正しかったことを悟るだなんて……。」

    物語が始まる。青春の物語が。
    そこにもう、彼女たちはいない。
    砂地の奥底で、静かに眠りこけるのだ。

    何れ、暫くすると手紙が届くだろう。
    沙漠の先、埋もれた砂を越える先に、一つ。
    意志たちが、翼を広げ、白い髪を風に靡かせ。
    赤い瞳で駆け抜け、黄金の光を持ち、そして黒い文字を記す。

    そう、全てはあまねく奇跡のために。

  • 58片腕メカニック主23/10/24(火) 12:12:50

    《あとがき》
    本作は筆者があにまんに来たところから始まります。およそ3週間ほど前にあにまんに来た筆者ですが、目の当たりにしたのは絶賛大荒れしていた『その他ゲーム・ソシャゲ』(そのうちのブルーアーカイブ)のカテゴリーでした。元より創作を嗜んでいた私にとってそのような現状は幾分と納得できないもので、かつ何かしてみたいと思っていたのです。そこの話し合いを見るに、なぜ言われているかという場で、オリジナルキャラクターが原作に関係ない故に創作カテゴリーなのではないかという発言が幾つか見られ、であれば出来うる限り安価を減らし原作と関わりのある話ならばよいのでしょうか?そう考えSS形式かつ安価やダイスではない作品を作るというところに着地したのが本作品です。

    原作、ブルーアーカイブ様への感謝を込めると共に、元ネタの解説を少々させていただきたく思います。
    【タイトルについて】
    タイトルは殆どの場合元ネタが存在します。
    《一話:エピローグ》エデン条約編第一話、プロローグに則り話が始まります。なぜプロローグではなくエピローグかというと、これはすべてが終わった後、先生と黒服の話し合いによって神秘の話が小鳥遊ホシノへ移行することで、忘却されていくことによる終焉です(トーマの心臓がベースともされる)。
    《二話:蔑むる詞》ゲーテの作品「ファウスト」のタイトルの一つです。Vol.1対策委員会編などでファウストという名前のキャラクター出る他、この作品の主人公が生命の樹に由来するなどの理由から、ミカエル、ラファエル、ガブリエルの合唱から始まるファウストをベースにさせていただきました。
    《三話:冥府へ。》これは現実でのアビドスが墓所になっているというのが最も理由です。後々現れる砂狼シロコがアヌビスだというのも少々関わっているかもしれませんね。また、原作ブルーアーカイブではユメが死亡しているのもあり、この話は全体的に死にかかわりのある場所や状況、人物が出てきていることが多い傾向にあります。凍空クジラも死にかけていたようですから。
    (続く)

  • 59片腕メカニック主23/10/24(火) 12:13:12

    《四話:アビドス生徒会へようこそ!》わかりやすいかもしれませんがこれはVol.1対策委員会の一章対策委員会の奇妙な一日一話『対策委員会へようこそ!』のパロディとなっています。原作ブルーアーカイブではアビドス高等学校に到着するのは2話となっているので、ここは同じとまではいきませんでしたが、初めてアビドス生徒会という概念がでてきたのもここにあります。
    《五話:クジラの平凡な一日》ここも同じくブルーアーカイブの対策委員会編、一章より『セリカの平凡な一日』から来ています。こちらは両方五話と一緒になっていますね。黒見セリカがヘルメット団に連れ去られてしまうという”転”の話であるように、こちらもビナーと関わることで物語が一転していくきっかけの場所でもあります。
    《六話:一敗地に塗れる》こちらはいきなり飛び、二章、失ったもの、手放さなかったものの第11話『負け戦』がパロディ元となっています。負ける屈辱という諺の通り、子供間では勝利かもしれませんが大人の前には完全に無力という話が出ています。
    《七話:未来の話》ここが恐らく元ネタがはっきりと無い場所です。しかし時折「少し未来の話をしよう」という言い回しがされる作品は少なくはないはず。筆者はこのセリフがMOTHER2のどせいさんの台詞かと思っていましたが、どせいさんはそんなことを言っていませんでした。恐らく最も近しいのは「なんか むつかしいことを かんがえよう。 これからの ぼくは。」でしょうかね。
    《八話:掴み取ったもの》対策委員会編二章の13話『手をすり抜けたもの』、18~19話『それでも手放さなかったもの』のパロディです。二つは先生とアビドス対策委員会からの視点で大人によって子供が絆を守る話ですが、こちらは一人、ビナーによって助け出されています。本当はアビドス生徒会に助け出させるシナリオを作りたかったのですが、どうにも場所を教えれる大人がいなかったんですよね。ユメが小鳥遊ホシノに会うという話上、誰かを死なせるわけにはいきませんし、ということです。
    《九話:プロローグ》そして先生が訪れるということで最後にやってくるのはプロローグでしょう。エデン条約編やあまねく奇跡の始発点でもエピローグが存在しているのである意味関係があるかもしれませんね。

    (続く)

  • 60片腕メカニック主23/10/24(火) 12:27:36

    《その他パロディ》

    一話冒頭:先生と黒服が相対する場 →対策委員会編2章 16話 「大人の戦い」

    黒服のセリフ:ブルーアーカイブのファンアートをそのまま使用させていただきました。

           作者様には申し訳ございませんが何卒ご容赦いただけたら嬉しいです。

    (引用元:
    www.pixiv.net

    拳で等のト書き:Lobotomy corporation セフィラコア抑制 時間停止時のビナーの台詞

    二話冒頭:夢野久作作「ドグラ・マグラ」の冒頭分より引用。巻頭歌ではない。

    13.4340°:冥王星(134340 Pluto)より。

    ヘイローの模様:冥王星のマークを二つ重ねたものをベースにしている。

    (参考画像:
    ja.wikipedia.org

    機械の腕:「メイドインアビス」など複数元ネタはありますが、ここで強調したかったのは人ではないような感覚を出させたかった所にあります。

    人工知能のN-H-K-S:冥王星の衛星のうち4種、ニクス、ヒドラ、ケルベロス、ステュクスより。

    マシンガンのカロン:こちらも冥王星の衛星カロンより来ています。他にはダンテの小説『神曲』の主人公より。

    ガコン。:呪術廻戦の八握剣異戒神将魔虚羅の効果音より。そこまで詳しくはありませんが音が文学的でしたもので…

    陰影の境目:「リトルナイトメア」や「ウマ娘プリティーダービー」の地下から外へ出るシーンのオマージュ。外が真っ白なやつです。

    アビドスの気温:現実のエジプトの気温をそのまま引用しています。

    三大校:アビドスがかつて三大校の一つだったという発言からこの時代はギリギリ三大校だったりしています。

    線路を歩く描写:本文中にもありますが「ステンドバイミー」より。この描写を知ったのは「ポケットモンスター」でありますので、こちらも元ネタです。

    (続く)

  • 61二次元好きの匿名さん23/10/24(火) 12:44:15

    このレスは削除されています

  • 62片腕メカニック主23/10/24(火) 12:50:17

    >>61

    誤字したからコピーして消して直そうと思ってたらコピー出来なかったよー!悔しい、悔しい〜!

  • 63片腕メカニック主23/10/25(水) 00:46:36

    ドアプレート:アビドス廃校対策委員会編で対策委員会がドアの上のプレートに張り付けられている描写
    ネフィティス社:十六夜ノノミと関わりがありそうな会社。この世界ではここ数ヶ月~数年で撤退してる
    ビナー:この世界ではここ数年で出始めた。クジラが少しずつ目覚め始めたのがトリガーらしい。
    自転車:砂狼シロコが自転車に乗って移動したり、見下ろす構図(起動時のイラスト)のパロディ
    No3:生命の樹、および神名十文字のビナーの番号。
    黒い湖:連邦生徒会長やアロプラのあの湖の対比。神秘⇔恐怖で対比になっている。
    ビナーへの言葉:ビナーのパスや異名、セフィラのつぎはぎワード。
    ミレニアムサイエンススクール:この時代ではまだまだぽっとでの新参者。数年であそこまで大きくなるらしい。時代的に明星ヒマリ、調月リオ、白石ウタハなどの3年生が二、三期生としているかもしれない。
    カイザーPMC専務取締役:みんなご存じカイザーPMC理事。この時代では専務取締役のようだ。
    420と910の世界:レオナルドダヴィンチ作、「最後の晩餐」の大きさ。今後のシーンと相まっている。
    パン:コメントで指摘してくださっている方がいらっしゃいましたが「最後の晩餐」でキリストがイスカリオテのユダを裏切り者として指名したシーンのオマージュ。ここエジプト神話の学校だというのにあえてキリスト教でしているのはなぜなのだろう…
    アビドス砂祭り:この時代ではもうないが、この前まではあったよう。もしかしたらそれを見ている生徒もいたのかも。
    つかまっていた場所:ホシノがつかまっていた場所でもある。あの後作り直されたのかもしれない。場所がわからないとたどり着けないというブルーアーカイブでの描写と、かなり遠い場所という3話当たりの描写から再利用されている。
    鯨:それぞれが”激情/ユメ(Pathos)”、”恐怖/ビナー(Terror)”、”神秘/ホシノ(Mystery)”、”知性/先生(Logos)”。デカグラマトンの自己証明のパロディでもある。
    暁のホルス:ホシノの異名…かもしれない。
    「私のミスでした。」:連邦生徒会のお言葉。
    砂地の奥底で、静かに眠りこけるのだ。:ユメ先輩
    翼を広げ:小鳥遊ホシノ
    白い髪を風に靡かせ:砂狼シロコ
    赤い瞳で駆け抜け:黒見セリカ
    黄金の光を持ち:十六夜ノノミ
    黒い文字を記す:奥空アヤネ
    (続く)

  • 64片腕メカニック主23/10/25(水) 00:49:23

    最後となりますが、当該作品はブルーアーカイブの二次創作です。この作品は原作であるブルーアーカイブ、および多数の引用、参考元への批判はおやめください。

    ここまでお読みになってくださった皆様に感謝を伝えることで、このスレッドおよび作品を〆をさせていただきます。

    皆様誠にありがとうございました。

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