【閲覧注意🎲⚓SS】ロー中心ハートの海賊団をホラーな目に遭わせる Part7

[1 ◆Pxx1Kifjy2 23/10/17(火) 20:47:03]

お盆だけどきせいするばしょがないので、ローやハートのひとたちにちょっかいを出そうと思うPart7（盆を過ぎて早二ヶ月…）

※諸注意は前スレを参考に
※怪異に遭遇すると正気度ダイス→出目により行動・結果が変化（1d6で6を引く→混乱　1を引く→冷静に対処　など）
※怪奇現象は1d3前後、大切な人やモノに関わることなら1d6前後


・感想、ツッコミ、考察、関連する雑談も大歓迎だ　いつもありがとな！あんまハートの海賊団語れる場所ないしヒートアップしない程度に好きに使ってくれ
・ただし言葉遣い＆過度な否定になっていないか気を付けてほしい
・意見が違っても「みんな違ってみんないい」精神でいこうぜ


【現状とSAN値メモ】

＝現実世界組＝
・合流後、船長室に全員集合（2人はもぬけの殻）
・イッカク？が来た
・酒と塩を手に入れたけどどうする？←ｲﾏｺｺ
シャチ36（発狂・恐慌まであと11）
ベポ 30（発狂・恐慌まであと10）

＝精神世界組＝
・合流後、船長室まで戻ってきた
・ペンギンの手足が元に戻った
・体の透明度はそのまま
・伝声管から嫌な音が聞こえ始めた←ｲﾏｺｺ
ペンギン 21（発狂・恐慌まであと1）
ロー21（廃人まであと21）

[2 ◆Pxx1Kifjy2 23/10/17(火) 20:47:29]

【前スレ】

https://bbs.animanch.com/board/2261264/

https://bbs.animanch.com/board/2288717/

https://bbs.animanch.com/board/2313593/

https://bbs.animanch.com/board/2344373/

https://bbs.animanch.com/board/2380957/

https://bbs.animanch.com/board/2445089/

【スレ主による箸休め】

https://telegra.ph/%E3%83%8F%E3%83%BC%E3%83%88%E3%81%AE%E6%B5%B7%E8%B3%8A%E5%9B%A3%E6%97%A5%E5%B8%B8-09-13

https://telegra.ph/%E3%83%8F%E3%83%BC%E3%83%88%E3%81%AE%E6%B5%B7%E8%B3%8A%E5%9B%A3%E6%97%A5%E5%B8%B8%E3%81%8A%E6%9C%88%E8%A6%8B%E3%81%AE%E8%A9%B1-09-30

[5 ◆Pxx1Kifjy2 23/10/17(火) 20:49:17]

>>3

>>4

海戦おかしくて連投してしまったようなので削除

[6 二次元好きの匿名さん 23/10/17(火) 20:49:56]

きたぁ！まってた！！

[7 二次元好きの匿名さん 23/10/17(火) 20:50:25]

待ってたよー、おつおつ

[8 ◆Pxx1Kifjy2 23/10/17(火) 20:51:17]

【頂戴した絵・SS】

※現在は三次創作のみ頂き中（恐れ多いってか全員レベル高すぎないか？？ここあにまんで合ってる？？）

Part4 196（見てくれこの狂気の表情を）

https://telegra.ph/%E3%81%99%E3%82%8B%EF%BC%93%E7%A7%92%E5%89%8D-09-13

Part5 141（ベポSS／兄弟を思うと切なくて胸にクるが旗揚げほんと最高だ）

https://telegra.ph/%E8%B5%B0%E3%82%8B%E5%AD%90%E3%81%A9%E3%82%82-09-23

Part5 169（この絶句してる表情も掴みかかられてるのも良すぎる）

https://telegra.ph/%EF%BC%95%EF%BC%91%EF%BC%94%EF%BC%95%E3%81%AE%E3%81%82%E3%81%9F%E3%82%8A-09-26

Part5 196（幼子の空っぽな薄っすらとした狂った笑み！！！オマケもわろた）

https://telegra.ph/5180-09-29

Part6 9（Part5の最後やらかしたのはスレ主なのに何故かキャプテンがッ！）

https://telegra.ph/Part5-9-10-17

Part6 50（鬱くしいさとベポの気が触れかけてる空気感がすごい…すごい…）

https://telegra.ph/%E3%83%99%E3%83%9D%E3%81%AE%E7%B5%B5%CE%B1-10-02

Part6 100（絵も表現も良すぎて五体投地しかできねェ！！）

https://telegra.ph/%E4%B8%89%E6%AC%A1%E5%89%B5%E4%BD%9C%E3%83%8F%E3%83%BC%E3%83%88%E3%81%AE%E6%B5%B7%E8%B3%8A%E5%9B%A3SS%E3%81%AE%E6%BC%AB%E7%94%BB%E5%8C%96-10-06

Part6 200（刺さり過ぎた待ってくれイッカクちゃん大好きなんだ／御健在だった頃くそわろたｷｬﾌﾟﾃﾝｶｯｺｲ-

!!）

https://telegra.ph/%E8%AA%AD%E6%9B%B8%E6%84%9F%E6%83%B3%E7%94%BB-10-16

[9 ◆Pxx1Kifjy2 23/10/17(火) 20:52:52]

こんな片隅ホラースレにもらうには勿体ないものばかりだがすごく嬉しい有難う！！

感想等も頂いた物も時々見返して元気もらってるんだぜ！

そんで>>5海戦じゃなくて回線だ！！

早めに建てるつもりが色々あって遅れちまったごべーーん！！もしかしたら更新頻度落ちるかもしれないがあと少しだし最後まで書く予定だ信じてくれ

誕生日小説もまだ諦めてないしハートネタはいくらでも書きたい時間が無い

今日も更新できるか分からんが書けたら置きにくる！保守は無理しないでくれ

[10 ◆Pxx1Kifjy2 23/10/17(火) 20:54:27]

そんで前スレ200ーーーーーッ！！！！

最高の置き土産すぎてゴリラの鳴き声みたいな声出たわ

後日改めて感想テレグラせてくれ文字乗せとかデータ触られるのが嫌なら拒否は今のうちだ！！！（時間あればちょっと画像で遊ばせてもらうかもしれん）

>>6

>>7

有難う！忘れられてなくてよかった！！じゃ行ってくる！

[11 二次元好きの匿名さん 23/10/17(火) 21:27:47]

こんなに面白いのに忘れるわけないんだよなぁ
主のペースで大丈夫やでー

[12 二次元好きの匿名さん 23/10/17(火) 21:58:15]

>>10

前スレ200です　ラス1埋めちゃって申し訳ない

もとよりこのスレが無ければ生まれなかったあれやこれやですので主に遊ばれるなら本望

切るなり焼くなり好きにしてやってくらさい

一応証拠

[13 二次元好きの匿名さん 23/10/17(火) 22:09:24]

スレ立て乙！
これだけの大作、読み返すのも楽しいからのんびりスレ主のペースで頼む

[14 二次元好きの匿名さん 23/10/18(水) 01:41:38]

待ってたーー！！
続きありがとう！！！

[15 二次元好きの匿名さん 23/10/18(水) 08:27:47]

立て乙！
自分も読み返してたけどハクガンの聞いてる叫び声ってpart1の188安価…？
ハクガンの日常も気になる

[16 二次元好きの匿名さん 23/10/18(水) 19:11:31]

過去スレ他のまとめ有り難いわ

[17 二次元好きの匿名さん 23/10/18(水) 19:50:32]

すごく気になるところで止まってたから新スレきてうれしい

>>15

「ハートの海賊団操舵士の奇妙な日常」とかでほんのりホラーとかできそうだな

[18 ◆Pxx1Kifjy2 23/10/18(水) 21:36:06]

保守＆レスサンキュー！！

ほんと何でこんなに長くなったんだろうな……地の文を書きすぎる問題定期

ハクガンの奇妙な日常！？なんだそれ良すぎる

オムニバス形式とか面白そうだなー書きたいものがが増える増える

>>12

何から何まで有難う！！自己満させてもらうもう少し待っててくれ！！！

[19 ◆Pxx1Kifjy2 23/10/18(水) 21:37:46]

『なんだ……？』

管の向こう、遠くに相棒の声が聞こえてペンギンは目を見開いた。
どうして伝声管から声が。そう思う間もなく"管の向こう"からびきびきと氷塊がひび割れてゆく音が走る。
次いで、激しい水の噴出音。

『おい……なんで、なんで水が！！！』

混乱と絶望が入り交じるシャチの叫びに、ペンギンはぞっと背筋を凍らせた。もしやあの伝声管は現実世界と繋がっているのでは、と思考が嫌な予想へたどり着き慌てて声を張り上げる。

「シャチ！？　おい、何があった！？　聞こえるか、おれだペンギンだ！！！」

『こんな時に！！なんでだよ！！！』

しかしペンギンの声は届かない。そればかりかごうごうと水音の激しさは増してゆくばかりだった。艦内で水場など限られており、もちろんこの船長室に水道などあるはずがない。
とすれば推察できる状況は限られる。老朽化、点検ミス、

―あるいは他船による襲撃。

「シャチ！！　応答しろ！！！」

伝声管へ飛びついたペンギンがあらん限りの声で叫ぶが、"向こう"から聞こえてくるのはどうどうと襲い来る水の音。それから、きん、と超音波のような音が耳を劈いた。

途端、爆発音と濁流の音が入り乱れ船長室を支配する。
ごぼごぼと気泡が逃げる音、濁流の音、金属が捻じ曲げられる音。

音の洪水が部屋に満ちる。
激しいそれらに呑まれるようにして、微かに人の声が耳に届く。

それは、仲間たちの悲鳴だった。

[20 ◆Pxx1Kifjy2 23/10/18(水) 21:38:52]

『こんな事……！！』

　　　『ダメだ間に合わねェ！』

『うわああああ！！！』

　　『ポーラータングが…！！』

『あ"あ"あ"あ"あ"ッ！！』

　　　　　　『沈んじまう！！』

　 『キャプテンは…！！』

『たすけて…ッ！！』

間に合わない、ポーラータング、沈む。覚えのある声で次々と耳に飛び込んできた単語に、否が応でも状況を理解させられる。
破壊音と気泡渦巻く濁流を合わせた命を呑み込み掻き消す轟音は、ごぼごぼとくぐもり始めたが止む気配はない。すべてが、家が、仲間が、一瞬にして奪われてゆく。


もう人の声は聞こえない。

ペンギンは何も考えることができなかった。

想像することすら叶わない。

脳が、思考が、機能していない。

ゆっくりと首を動かし振り返ったのは無意識だった。視界に入ったローは、被せられた毛布を剥ぎ落している。取り乱し叫んだペンギンに対してか、もしくは伝声管からの声や音に反応したのか。
真っ青な表情で目を見開き、虚空を見詰めていた。

[21 ◆Pxx1Kifjy2 23/10/18(水) 21:39:32]

ロー　SAN値チェック

dice1d6=4 (4)

ペンギン　SAN値チェック

dice1d6=5 (5)

※1or2の場合は「辿り着いた部屋に居る」事への信頼＆冷静でいられたとして再ダイス→「発狂をこらえた」を引けば発狂セーフ（つまり覚悟ガンギマリ）

[22 ◆Pxx1Kifjy2 23/10/18(水) 21:42:33]

（ロー　SAN値21-4=17）
（ペンギン　SAN値21-5=16）

ロー発狂中
ペンギン発狂入り

二人とも夢の10代入りのため本格的にダメだな！
という訳でまた明日！

[23 二次元好きの匿名さん 23/10/18(水) 22:07:35]

これは辛い...
そら発狂するわ

[24 二次元好きの匿名さん 23/10/18(水) 22:07:37]

うわぁ…うわぁ…

[25 二次元好きの匿名さん 23/10/19(木) 06:53:37]

結構削れたな

[26 二次元好きの匿名さん 23/10/19(木) 09:19:36]

覚悟ガンギマリにも限度があったか

そしてさりげなくダイス二段構えにしていたスレ主ェ…

[27 二次元好きの匿名さん 23/10/19(木) 20:52:59]

気づけばちょっとだけペンギンの方が削れてるな

[28 二次元好きの匿名さん 23/10/19(木) 20:54:17]

やべぇ……マジで発狂ルート一直線だ

[29 ◆Pxx1Kifjy2 23/10/19(木) 22:23:05]

>>26

ペンギンがたとえ１を引いても発狂ルート不可避だったから温情したつもりが全くの無駄だった…

最初のほうの固いペンギンどこいった

[30 ◆Pxx1Kifjy2 23/10/19(木) 22:25:17]

不安、覚悟、緊張、意地、責任、希望。
そういったものを撚り合わせて、耐え抜き、張り詰めさせていた糸がペンギンのなかでふつりと途切れる音がした。

「……は、ははっ……、はははははっ！！」

「う、ぐっ、……ぁ、あ、ああああああッ！！」

部屋を満たす水音に、ペンギンの乾いた笑い声とローの苦痛に塗れた叫びが重なった。
突如頭を抱え、嫌だやめろとうわ言を呟くローと、ひたすらに笑い続けるペンギンの声。船長室は一瞬にして狂気に包まれる。

「あは、ははっ、ははは、ははははっ！！」

「おれが、やめろ、……あいつらを助けにっ……！！　だめだ、持っていくなっ……」

ポーラータングも、仲間たちも、自分やローの身体でさえも、何もかもが手遅れの現実が受け入れられずペンギンは笑い飛ばすことしかできなかった。腹が引き攣って笑いがおさまらない。

笑っていれば何も考えずに済む。考えなければ、知らなければ、仲間も艦もぜんぶ失ったことになどならない。
そして笑えば笑うほど、不思議とこの状況が愉快になってゆく。

「あははははははははっ！！」

しかし、けたけたと壊れた絡繰りのように笑うその視界の端できらりと長刀の輝きが反射し、ペンギンはふと目を向けた。

―そこには抜き身の"鬼哭"を首に当てる、ローの姿。

息も絶え絶え、動くのがやっとというようすだった。震える両の手で力を振り絞り、今にも首を刎ねようとする動きにペンギンの脳がつい先刻見たばかりの記憶を蘇らせる。

―伸ばした手は間に合わず、薄ら笑いを浮かべたローの首が胴と離れゆく。噴出した鮮血がペンギンの視界いっぱいに広がり、

[31 ◆Pxx1Kifjy2 23/10/19(木) 22:27:19]

「やめろ！！！！」
悲鳴のような制止と同時に、勝手に足が動いていた。思考あってのものではなく、その"光景"への拒絶。まるで先刻をトレースするスローモーションだが、そこにローの薄ら笑いは無い。泣き出す直前、或いは虚勢、感情を堪える瞳が駆け寄るペンギンをゆるりと捉えた。
間に合わないと思った足は不思議と鈍く動くローの手元を蹴りあげることに成功する。がらんと音を立てて落ちた鬼哭をそのまま勢いで蹴り飛ばせば、棚やベッドにぶつかりながら部屋の隅へ転がっていった。

笑い声やうわ言で渦巻いていた部屋は一転して、ぜえぜえと荒い２つの呼吸と伝声管から聞こえる水泡の音のみとなる。

「なに、を、」

ペンギンの声は震えている。
一方ローは蹴られた手を気にすることなく、普通の姿として見えているはずのペンギンや掛けられた声にも反応せず、ただ見失った鬼哭を探すように視線を彷徨わせていた。

「た、助けに……知らねェ、ちがう、でもいい、たすけに、何でもいい、ここから…はやく……行かねェと……！！」

震える身体のまま、床を這うように鬼哭を取りに向おうとするロー。その姿にペンギンは思わず

――思わず、笑みが漏れた。

「ふはっ…………ははは、はははははっ！！」

続けてひとしきり笑いきったペンギンは、這いつくばって鬼哭へ手を伸ばすローの腕を無遠慮に取り力任せに船長室の扉へ向かう。

「あ！？」

「そうか、そうだ、ここから出ましょう！　おれは間違えたんだ！！　ははっ、こんな簡単なことだったのに！！　ごめんなァ、ロー、キャプテン、船長、おれは間違えてたんだ、この部屋じゃない！！　さあ早く、こんなところに居ちゃダメだ！！　くくっ、こんなものに騙されるなんて、ははっ、ははははっ！！」

「やめろ、鬼哭が…ッ！　あいつで、おれは……！！」

掴まれてなお、鬼哭へ手を伸ばすローをペンギンは力尽くで引き立てる。抵抗する力も残されていないのか、ローはずるずると扉に向かって引き摺られていった。

「だいじょうぶだせんちょう、おれといっしょに、みんなのところへかえろうな……ふ、ははっ、あははははッ！！」

[32 二次元好きの匿名さん 23/10/19(木) 22:43:55]

やべえ地獄だ
船長はダウナー系　ペンギンはアッパー系の狂気だな

[33 二次元好きの匿名さん 23/10/19(木) 23:02:28]

あっはっは！素晴らしく狂気に満ちた空間だ！
いや最終的にはハッピーエンドを望んでるけどね

[34 二次元好きの匿名さん 23/10/19(木) 23:11:52]

わーいやったぜ！　笑顔の絶えないたのしい展開だ

[35 二次元好きの匿名さん 23/10/20(金) 07:48:44]

ニコニコ

[36 二次元好きの匿名さん 23/10/20(金) 08:06:20]

過去スレの恐怖体験のあれこれが随所で軽くリフレインしてトラウマスイッチになってるのがいいな

[37 二次元好きの匿名さん 23/10/20(金) 19:38:05]

これは地獄

[38 ◆Pxx1Kifjy2 23/10/20(金) 22:35:56]

１レスぶんだけ！亀の歩みですまん

[39 ◆Pxx1Kifjy2 23/10/20(金) 22:37:46]

ペンギンの笑い声は止まらない。
そしてまた、ローも鬼哭への執着を止めることがない。自身を引き摺っているのが誰か、何を言っているのかすら理解しようとせずただ"助けにいくために"刀を求め続けていた。

「はなせ、クソッ、……はやく、はやく行かねェと、」

大した力ではないが頑是ない子供のようにいう事をきかないローへ、ペンギンが焦れる。
目的はただひとつ、ローと共にこの偽物の部屋を出て"元の船長室"へ戻ること。だというのに本人がまるでいう事をきかないのが不思議でならなかった。笑い声をあげながらも、はやくシャチやベポのところへ戻らねばならないのにという意識が強く募ってゆく。

「ははっ、なくしてない、なくしてない、おれはなにもなくしてない、みんないきてるにきまってる……だいじょうぶ、かえる、かえろうな、ほらはやく……」

扉を開ければ、その先は来た時と同じように重く深い暗闇が広がっている。どこに向かえばいいのかなんて分からないが、ペンギンにはどうでもよかった。とにかくこの部屋から離れなければ、歩かないよりマシだろう。そう一歩踏み出そうとするものの相変わらずローは協力的でない。
ペンギンは立ち止まり、振り返ってローを見下ろした。

「鬼哭、きこくを……っ、」

ローは身体を傾け手を伸ばし、なんとか室内へ戻ろうとするが腕を掴まれているため叶わない。このまま力尽くで引っ張り続けることはできるだろう。しかし微かとはいえ抵抗が煩わしくなったペンギンは、ははっと乾いた笑い声をあげ、

ローを殴り飛ばした。

鈍い音をたてて床へ崩れる姿に口角を上げる。
もはや"ローを連れてここを出る"ということしか眼中にない。邪魔なものは何をしてでも排除しなければと拳を握る。

「おれの邪魔をしないでくれ！！」

ペンギンの怒声が部屋に響く。
殴られた衝撃と大声に、部屋の隅へばかり目を向けていたローの瞳がゆるりとペンギンへ向いた。金色の瞳には白い化け物の姿は映っておらず、見慣れたツナギ姿を認めて虚ろだった目が丸く見開かれる。
暗闇で背負って以来、初めて二人の視線が交差した。
しかしペンギンの瞳の色が変わることはなく、口元を引き攣らせて歪に笑む。

「へへ……ようやくここまで来れた、あとすこし、……はははっ、だいじょうぶ、だいじょうぶだ！　……おれがまちがえただけだから……はやくいこう……」

[40 二次元好きの匿名さん 23/10/20(金) 22:58:09]

ペンギンなかなか折れないと思ったが一旦折れたら雪崩れるように狂うな
しかしテンパった挙げ句本末転倒しちゃうこの感じ…なんかこっちまで心が痛いぞ

[41 二次元好きの匿名さん 23/10/21(土) 07:05:08]

これどうなるんだ

[42 二次元好きの匿名さん 23/10/21(土) 09:07:41]

最初の頃の硬いペンギンさんが懐かしいや
勢い余って船長殴っちゃうのは正気に戻ったあとが怖いな

[43 二次元好きの匿名さん 23/10/21(土) 09:46:32]

ドキドキする…
シャチやベポ√で一緒に発狂してたらどうなってたんだろな

[44 二次元好きの匿名さん 23/10/21(土) 12:17:47]

一気に見ちゃった…面白すぎる…文章がうめぇ…

[45 二次元好きの匿名さん 23/10/21(土) 13:59:42]

何故か「嘘だろ…！？父様にも殴られたことねェのに…！？」みたいな顔しながらペンギン見上げるローが頭をよぎった

[46 ◆Pxx1Kifjy2 23/10/21(土) 19:19:58]

まさかの新規さんようこそ＆有難う！！

二ヶ月前の内容なんて整合性取れてなさそうで恥ずかしくなるな…

まだ今後安価出てきそうな気配があるから良ければ参加してってくれ

>>45

すげー分かる

あとスレ主も思ってたことがあるが今の雰囲気をぶち壊しそうだから念のためテレグラせてもらう

ギャグにしてもいい人だけ読んでくれ

スレ主感想

[47 ◆Pxx1Kifjy2 23/10/21(土) 19:22:00]

>>12

遅くなったが改めて御礼＆感想言わせてくれ！！！！

めちゃくちゃ好き勝手語らせてもらったし触らせてもらった！！！！

いつもまじで有難う！！！！！

Part6-200　ありがてえ…ありがてえ……

[48 ◆Pxx1Kifjy2 23/10/21(土) 22:41:06]

ペンギンの意識は薄く、誰に言っているのかすらあやふやだった。それでもやるべき事は決まっているとばかりに倒れているローへ歩み寄り、再びその腕を取る。
が、それは勢いよく振りほどかれた。

「おまえ、やっぱりペンギン……なのか、……その身体は……いや、今はいい、」

荒い呼吸とともに放たれた言葉には安堵の色が滲んでいる。透明度が増しているペンギンの身体を気にしてはいるが、先ほど聞こえた伝声管の声のほうが気になるのだろう。話を続けようとするローに、しかしペンギンはその荒れた呼吸と消耗ぶりに眉を寄せるだけだった。こんな問答をしている暇はない。抵抗が続くならいっそ絞め落とすか、などと思考を彷徨わせている内に言葉は続いてゆく。

「お前、が、言ったんじゃねェか……、ここは現実じゃない……だからはやく」

「ッあんなのはちがう！！　ここから出る方法でもなんでもない！！！！」

大声をもってローの声と、脳裏に浮かぶ"刀を首に当てる姿"を掻き消したペンギンは苛立ちに任せて今度こそ腕を取る。勢いに押されたか、さしたる抵抗はなかった。

「……シャチもベポも、みんな、みんないきてる……。あんなこどもだまし、ああ、ほんとうにいやになるな……はは……みんなせんちょうをまってる、ぜったいにかえれる、だいじょうぶだから、ほら、いこう、」

「しゃち……べぽ……？」

「そうだ、ベポがせんちょうとおかしをたべたがってた。シャチはへんなものをかったからみせたいとか。ウニはいいさけをかったからいっしょに……、イッカクも、ジャンバールも、クリオネも……みんな、せんちょうとやりたいこととか、みせたいものとか……だから、あんなのでしぬわけがない、しぬわけが……」

「ぅ、あ、ああっ……、」

ぶつぶつと呟き腕を引くペンギンの瞳はすでに扉の向こう、暗闇だけを捉えていたためローの異変は見えていなかった。
次々と紡がれる聞き覚えのない名を認識した途端、ローの脳裏にさまざまな人の顔が、会話が、ポーラータングでの生活が、浮かんでは消えてゆく。シャチやベポをはじめ、クルー達の姿を掴もうとすればするほど、ローの人生から"無かったもの"となる。

危機感を覚え、思い出さないよう大切に仕舞っておいた記憶たち。

確かに自分のなかに残っていると思っていた"なにか"。

自身を形成していたはずのそれらが、するすると解けてゆく。

[49 ◆Pxx1Kifjy2 23/10/21(土) 22:42:15]

「ぺん、ぎん……ッ！！」

ローの切羽詰まった声にペンギンが振り返る。

同時に、腕を掴んでいたはずの手が、地面を踏みしめているはずの足が、感触を失っていた。

感覚だけではない。微かに残っていたはずの全身そのものが、空気に溶けている。

「なっ……！？」

気付いたときには手遅れだった。

驚くわずかな間にも意識が薄まってゆく。それはまるで強制的に眠らされる感覚に近い。感覚も姿もない手は、伸ばしたくとも伸ばせない。ローの名を叫ぶだけがその場で唯一できることだった。

「船長！！！！」

そしてローもまた、突如消えてゆく姿と自分の記憶たちに成す術はない。

もはや誰かも分からない消えゆく男へ無意識に手を伸ばすが、それは触れる前に掻き消えた。

残してゆく恐怖。

己が消えてゆく恐怖。

ペンギン　SAN値チェック

dice1d3=2 (2)

自分が自分でなくなる本能的な恐怖。

先程いた男は誰だったのかも分からない。

ロー　SAN値チェック

dice1d3=2 (2)

[50 ◆Pxx1Kifjy2 23/10/21(土) 22:43:29]

（ロー　SAN値17-2=15）
（ペンギン　SAN値16-2=14）

[51 二次元好きの匿名さん 23/10/21(土) 23:07:23]

まだ落ちるのか…まじでどうなってしまうんだ

[52 二次元好きの匿名さん 23/10/21(土) 23:11:54]

スレ主のテレグラフ読んだ直後に今日の分読んだせいで最初の件がそうとしか見えなくてフフッwってなった
まあその直後にそんな悠長なこと言ってられなくなったんですがね…

[54 ◆Pxx1Kifjy2 23/10/21(土) 23:14:43]

>>53

すまん安価近すぎて消した

せっかくだしローの継続（追加）発狂内容を安価にするか

もし内容的に難しかったら微調整させてもらうかもしれんが良いのがあれば書いてくれ

特に思いつかなくても大丈夫だこっちで話の筋のままいかせてもらうからよろしくな！

>>59

[55 二次元好きの匿名さん 23/10/21(土) 23:51:40]

怪異　じゃなくて発狂内容でいいんだな？

[56 ◆Pxx1Kifjy2 23/10/22(日) 00:02:03]

今回は発狂内容だな！
こういう発狂させたいとかあれば書いてほしい

[57 二次元好きの匿名さん 23/10/22(日) 00:11:40]

皮膚や髪に珀鉛病の白斑の幻覚をみて掻きむしる（アル中の幻覚的なアレで）

[58 二次元好きの匿名さん 23/10/22(日) 00:32:30]

あー前の方にあったあれ
自分の手に一つずつ内臓が抜かれて身体も空っぽになっていく幻覚をみる

[59 二次元好きの匿名さん 23/10/22(日) 00:33:44]

今まで会った人達（家族・コラさん・ミンゴ・麦わら・超新星等々）の幻影が現れて親しいor敵対的な言葉を投げるけど誰のこともわからない
最後にハートのクルー達がきてペンギンに抜き身の鬼哭を差し出される

[60 二次元好きの匿名さん 23/10/22(日) 07:55:34]

怪異と怪異による結果がエグすぎて今からでも入れる保険があるんですか状態

[61 二次元好きの匿名さん 23/10/22(日) 08:32:08]

安価乗り遅れた…
本誌じゃ無理だろうし泣かせるとか

[62 二次元好きの匿名さん 23/10/22(日) 08:38:01]

ちなクトゥルフの狂気内容の主だったもの

●一時的狂気（1d10＋4ラウンドまたは1d6＊10＋30分）
１．鸚鵡返し（誰かの動作・発言を真似することしか出来なくなる）
２．健忘症（1d6時間以内のことを忘れる）
３．多弁症（何があってもひたすら喋り続ける）
４．偏食症（奇妙なものを食べたくなる）
５．頭痛・嘔吐などの体調不良（技能値に－5）
６．暴力癖（誰彼構わず暴力を振るう）
７．幻聴或いは一時的難聴（聞き耳半減。この症状の探索者に精神分析や説得などを試みる場合は技能値に－10）
８．逃亡癖（その場から逃げようとする）
９．吃音や失声などの発語障害（交渉技能の技能値が半減する）
１０．不信（単独行動をとりたがる。交渉技能不可。）
１１．恐怖による行動不能
１２．自傷癖（自傷行動を行う。ラウンドごと1d2のダメージ判定を行う）
１３．感情の噴出（泣き続ける、笑い続けるなど。自発行動が出来なくなる）
１４．気絶（精神分析・またはCON＊5のロールに成功で目覚める）
１５．幻覚あるいは妄想（目を使う技能は技能値に－30）
１６．偏執症（特定のものや行動に強く執着する）
１７．フェティシズム（特定のものに性的魅惑を感じる）
１８．退行（乳幼児のような行動をとってしまう）
１９．自己愛（自分を守るために何でもしようとする）
２０．過信（自分を全能と信じて、どんなことでもしてしまう

[63 二次元好きの匿名さん 23/10/22(日) 08:38:26]

●不定の狂気（1d10＊10時間）
１．失語症（言葉を使う技能が使えなくなる）
２．心因性難聴（聞き耳不可。精神分析を受ける際に技能値に－30）
３．奇妙な性的嗜好（性的倒錯。特定のものに性的興奮を覚える）
４．偏執症（特定のものや行動に異常に執着する）
５．脱力・虚脱（自力での行動が出来なくなる）
６．恐怖症（特定のものに強い恐怖を覚える。そのものが側に存在する場合、技能値に－20）
７．自殺癖（ラウンドごとに1d4＋1のダメージ判定を行う）
８．不信（単独行動をとりたがる。交渉技能不可。）
９．幻覚（目を使う技能は技能値に－30）
１０．殺人癖（誰彼構わず殺そうとする）

[64 二次元好きの匿名さん 23/10/22(日) 19:26:48]

実は一回ダイス表振って安価考えたんだけど規制かかって書き込めなかったんだ…悔しい…
もし次があればチャレンジしたい

[65 ◆Pxx1Kifjy2 23/10/22(日) 21:19:39]

狂気安価のタイミング悪くてすまん！

しかしトンチキ服を食いだすとかがくると思ってたから想像以上に容赦なくて笑う
こういうアイデアがもらえるからスレ民との合作楽しいんだ
たまらねェなこのライブ感！！

[66 ◆Pxx1Kifjy2 23/10/22(日) 21:21:15]

（現実世界）

「やっぱり危ないんじゃない？　それ……罠かもしれないぞ」

「でも折角手元にあるんだし。食わなくても近くに置いとくだけでいいと思うんだよなァ」

一方、現実世界では塩と酒の使い道についてああでもないこうでもない、とシャチとベポが言葉を交わしていた。
使い道については思うところがあり、シャチが浴室で起きた出来事―ペンギンに振りかけた塩が煤のようなものとなっていた―を掻い摘んで話せば、ベポは眉を寄せてあからさまに身を竦ませる。

「その服の汚れ、気になってたけどペンギン危なかったのか。やっぱりおれが一緒に運んでいれば……」

「まあまあ、たぶん無事だろうしおそらく何ともないだろ。外傷はねェんだし」

心配させまいと殊更明るく言い放ち、べしべしとペンギンの帽子を叩くシャチ。実際のところは起きてみないと分からないが、加害された痕跡はなかったのだから、と悲観の色はない。

ペンギンで実証されてしまった訳だが、おそらく塩は近くに置いておくだけでいいのだろうと蓋を開け、小さな壺をベッドの上に置く。それでもベポは心配そうに、そして警戒心を隠そうともせずそれを胡乱げな目で追った。
そんな様子に苦笑をひとつ零し、シャチは酒の瓶を取り上げる。

「あとはこいつだなァ」

液体を意識のない人間に呑ませるのは危険だが、果たして塩と同じく置いておくだけでいいものかと悩む。そして、先ほど自分で「折角手元にあるんだから」と言ったものの、また浴室で起きたように目玉が浮かんでこないとも限らない。
正直、塩だけで効果があるのなら使いたくないと思う程度には目玉への嫌悪感が、そして幻だったとはいえローを刺殺した感触が手にこびりついている。

「……ベポ、この酒なんだけどさ、」


処遇を相談しようとした、その時だった。

[67 ◆Pxx1Kifjy2 23/10/22(日) 21:22:09]

「――ッ！」

ベッドを背もたれにして座らせていたペンギンの身体が、びくりと跳ねる。

いわゆるジャーキング現象のような軽いようすではなく、まるで電気を流され続けているかのようにばたばたと跳ね、苦しみだす相棒にシャチが慌てて駆け寄った。

「おい、ペンギン！？　しっかりしろ！！」

「ぐ、ぁ、あああっ……！」

めちゃくちゃに四肢を動かす身体をなんとか抑えつけるとその拍子に帽子が落ち、カッと目が開かれた。

「――船長ッ！！！！」

現実へ精神が切り替わったことにより、ペンギンの発狂状態を更新

>>71　狂気の状態

※CoCの狂気表ありがとな！

フレーバー要素だから思いつき狂気や幻覚系とか創作狂気も全然大丈夫だ

好きに狂わせてみてくれ

[68 二次元好きの匿名さん 23/10/22(日) 21:41:26]

(云えない…今までCoCどころかTRPGの経験もロクに無いまま参加してたなんて…)

[69 ◆Pxx1Kifjy2 23/10/22(日) 21:51:25]

>>68

（スレ主が処理を間違えそう＆旗揚げ直葬したい＆スレ民にはCoC知らなくても手軽に参加してほしいからSAN値の概念のみを採用してたんだ　やったぜ）

[70 二次元好きの匿名さん 23/10/22(日) 21:59:14]

加速

[71 二次元好きの匿名さん 23/10/22(日) 21:59:32]

偏食症！
酒と塩食い散らかそうとしようぜ

[72 二次元好きの匿名さん 23/10/22(日) 21:59:48]

スレ主の文すき

[73 ◆Pxx1Kifjy2 23/10/22(日) 22:13:42]

さんきゅー！！！！！

酒と塩の食い散らかしも了解したぞ

ペンギンもうひとつ発狂盛っておくか…という訳で追加

>>75

連日短めですまんまた明日！

[74 二次元好きの匿名さん 23/10/22(日) 22:29:46]

叫んで気絶する

[75 二次元好きの匿名さん 23/10/22(日) 22:43:57]

見る人みんな船長に見える

[76 二次元好きの匿名さん 23/10/22(日) 22:44:37]

手足の感覚があるか確認するために自傷

[77 二次元好きの匿名さん 23/10/22(日) 23:02:59]

>>73

71だけどしようとするだからダイス振って妨害出来たりしてもらっても大丈夫だぜ余計だったらすまない

[78 二次元好きの匿名さん 23/10/23(月) 00:04:22]

>>47

遅くなりました　ほぼ私信ですすみませんです

スレ主…！

[79 二次元好きの匿名さん 23/10/23(月) 07:44:54]

面白い！
これからどうなるか楽しみ

[80 二次元好きの匿名さん 23/10/23(月) 18:22:24]

追いついた
序盤からドキドキしたかったぜ…
わたしは優しい怪異、ハッピーエンドを望む…

[81 ◆Pxx1Kifjy2 23/10/23(月) 22:58:13]

まさかの新規さんか！？有難う！あと少しだが最後に質問回やアフターもやりたいとは思ってる

ゆっくりしていってくれー

ローとペンギンの発狂もありがとな！

安価中心に混ぜれるものは混ぜたいが入りきらなかったらすまん

>>77も気遣いさんきゅー！シャチの頑張りによるな…

>>78

くそ有難うめちゃくちゃ笑ったから後日レスさせてくれ

スレ主は楽しいこと以外やらないタイプだしあの方式のほうが感想書きやすいんだ全然気にしないでくれな！

なんなら全部あの方式で絵の感想書き直したいとすら思ってる

[82 ◆Pxx1Kifjy2 23/10/23(月) 22:59:16]

ペンギンの絶叫が部屋に響き渡る。

あまりに異様なようすに思わずシャチとベポが息を呑んでいると、ペンギンはゼェゼェと忙しない呼吸を繰り返しながら強い力で身体を掻き毟り始める。

「き、消える、おれが消えるッ……！」

「お、おい！？」

「ダメだ、船長を残してなんて、」

何かが憑りついているかもしれない。

そんな警戒心から手を出すことができず、中途半端に声を掛けるだけとなってしまったシャチ。だがペンギンはそもそもシャチのことなど眼中に入れていなかった。虚ろな瞳でガリガリと身体を掻きながら、すぐ傍に転がっていた酒瓶へと顔を向ける。

「そうだ、そう、これがあればっ……」

酒瓶を手に取り、そのネック部分を床へ叩きつける。咄嗟のことで制止の間すらない。ばりん、と硝子の派手な音と共にシャチとベポの声なき悲鳴が重なった。

だくだくと中身を零す瓶を逆さにして頭上で掲げ、ペンギンは恍惚の笑みで酒を浴びる。

「は、ははっ、これで、これでいいっ……おれは、おれは"居る"……ッ！！」

一体何がペンギンをこうさせているのか、そもそもこの人物は"ペンギン"なのか。

シャチは固まったように身動きがとれずごくりと唾を嚥下し、ベポは恐怖に苛まれながらもローを守る腕へ僅かに力を込め、先ほどと同じく羽毛布団を引っ張り上げてその姿を覆い隠した。

シャチ　SAN値チェック

dice1d2=2 (2)

ベポ　SAN値チェック

dice1d2=2 (2)

[83 ◆Pxx1Kifjy2 23/10/23(月) 23:01:02]

（シャチ　36-2=34／発狂・恐慌まであと9）
（ベポ 30-2=28／発狂・恐慌まであと8）

だくだくと重力に従い落ちる酒により瓶の中身はすぐにカラとなる。同時に、恍惚としていたペンギンの表情も落ち切ったように無くなった。

「……ダメだ。た、足りない、足りない、足りない！！　こんなんじゃ船長を置いていっちまう！！！」

震える言葉で叫び、手にしていた酒瓶をかなぐり捨てて立ち上がる。ぼたぼたと全身から酒を垂らしながらゆるりと辺りを見回し、ベッドの上で視線を留めるペンギンにシャチがハッと我に返る。何をしでかすつもりかは分からないが、ベポを、ローを守らねば。

「そうか、あれか、あれも、」

「っの、いい加減にしろッ！！」

ふらりとベッドへ歩み寄ろうとするペンギンの背後から肩を掴み、強制的に振り向かせる。"中身"が何であれ、とにかく今は二人から引き離さねばと戦闘態勢をとるシャチだったが、反してペンギンはシャチを見て目を丸くした。
そして、酒を滴らせたまま安堵の笑みを浮かべてみせる。

「――ああ、なんだ、船長、よかった。おれは"置いて行って"なかったんだな」

「……は？」

「ほら、おれは身体なんて消えてない、大丈夫だ、ここにいる。絶対連れて帰るからな……」

「ペンギン、お前、」

妄執に取りつかれたようすは、"怪奇現象"のなにかが身体を支配しているというよりも"ペンギン本人が"錯乱しているように見える。自分たちを襲ってこないのが何よりの証拠だろう。そして今、何故かは分からないが自分が"ロー"に見えているらしいと知る。

冷静且つ慎重派のペンギンがここまでになるほどの異常事態が"あちらの世界"であったのか。何を見せられ、何があればこんな事になってしまうのか。そして、どうしてローは一緒に起きてこないのか。
呆気に取られていた脳がようやく動き出し、さまざまな疑問が駆け巡る。

「ああでも行くのはちょっと待ってくれ、ついでにほら、そこにあるアレも……」

[84 ◆Pxx1Kifjy2 23/10/23(月) 23:02:56]

不意に、ペンギンが薄ら笑いを浮かべてベッドを振り返る。その視線を受けてこれまで固唾を呑んで状況を見守っていたベポがびくりと身体を揺らした。

「ペ、ペンギン……？」

「船長？」

おそるおそるベポが声をかけるが、ペンギンはその姿を認め、ぴたりと動きを止めて訝しげに首を傾けた。
は？とシャチとベポから疑問符があがる。

「どういう……なに……何で船長が、ふたり……？　どうして、ベッドに……？」

シャチとベポへ交互に視線を送り混乱するが、見られている二人もまた同じく混乱するしかない。

「な……ペンギンどうしたんだよ、おれベポだよ！」

「どうして、なにが……これも幻覚……？　そうか、そうだ、そうに違いない……」

「いや一人で自己完結してんじゃねェ！！」

意識のはっきりとしない声で呟くペンギンを振り向かせたシャチがその襟首を持ち締め上げる。

「いい加減にしろ！！　キャプテンはお前が連れてくる予定だったろ！？　何やってんだ！！」

声を張り上げるが、ペンギンの目はまるでひどく酩酊したときのように"此処"を見ていない。薄く笑い、船長が、ローが、と口にしているようすからして"現実世界"に居る事すら認識していないのだろう。シャチは鋭く舌打ちをする。

「船長、ああ、動けるのか。それならいい、ほら早くここを出よう。そっちの船長も。……はは、はははははっ！！　ぜんぶ、ぜんぶおれが連れていくからな！！」

何がそうさせたのか、スイッチが入ったかのように突然笑い始めたペンギンに再び部屋の空気が凍る。このままではまずい。言葉も通じない。となるとシャチに残された手段はひとつだけだった。
締め上げている手はそのままにして反対の手で拳をつくり――力いっぱいその横っ面を殴り飛ばした。

[85 二次元好きの匿名さん 23/10/23(月) 23:14:24]

増える船長安価とれたﾔｯﾀｰって思ってたら想像よりずっとペンギンが発狂しててﾋｪｯこわってなった　文章力が強い
シャチの精神分析(物理)もつよい

[86 二次元好きの匿名さん 23/10/24(火) 07:01:42]

お酒だめにしちゃったけど大丈夫かな…
ペンギン怒涛の勢いでSAN値削られすぎて冷静な頃が懐かしいぜ
精神分析はベポだと一撃で昇天しそうだからシャチで正解

[87 二次元好きの匿名さん 23/10/24(火) 10:58:48]

ベポには平手打ちだったけど相棒にはグーパンな容赦の無さ好き

[88 二次元好きの匿名さん 23/10/24(火) 14:19:34]

ロー救出の前にペンギンが現実に追い出されちゃったって認識で合ってる？

[89 二次元好きの匿名さん 23/10/24(火) 16:58:08]

>>88

イエス

１人で何とかしなきゃいけない

[90 ◆Pxx1Kifjy2 23/10/24(火) 21:54:28]

反動で身体が揺れるが、シャチは締め上げている手を離さない。そのまま頭突きするほどの勢いで瞳を睨み付け、叫ぶ。

「起きろよペンギン、おれを見ろ！！！　乗っ取られたか呆けてるんだか知らねェけどお前がそんなでどうすんだ！！　キャプテンに置いて行かれた事も、ワノ国でドジった事も忘れたか！！？　このままだとおれ達ァまた"何もできないだけのお荷物"になっちまう！！！」

シャチの怒声に、ベポがぎゅうと目を瞑りローを抱え直す。
その合間にも力なく揺れていたペンギンの瞳がゆるりとシャチを捉えていった。

「早く目ェ覚ませバカ野郎！！　休んでる暇なんてねェんだぞ！！！」

これで起きないならもう一発、と拳を握り直したところでペンギンの唇が微かに開かれる。

「…………しゃ、ち？」

「おう」

擦れた声だった。だがしっかりと焦点が結ばれた瞳に、シャチは肩で息をしながら掴んでいた手を離す。反対によたよたとたたらを踏んだペンギンは体重を預けるようにしてシャチの肩を鷲掴みにした。
思わず警戒しかけるシャチだったが、その手が、身体が震え、瞳に水の膜が張っていることに気付き固唾を呑む。

「しゃ、シャチ……お前、本当に、シャチなのか、」

「お、おう……」

「死んで、ないのか、」

「勝手に殺すなよ！」

今まで散々軽口で使い合ったセリフだったが、冗談を言っているようすはカケラも無い。そして何かが憑りついているといったようすも無い。最悪の事態にはならなくて済みそうだ、とシャチは胸中で安堵する。
対してシャチの顔や身体を確かめたペンギンは、細く息を吐きながら力が抜けたようにずるずるとその場へへたり込んでいった。震える手で床へ触れ、部屋をゆっくりと見回してゆく。

[91 ◆Pxx1Kifjy2 23/10/24(火) 21:55:20]

「ポーラータングも、無事……そう、そうか。壊されるなんて、皆が流されるなんて、そんなこと……」

聞こえた内容にシャチの心臓がどきりと跳ねて、先刻の体験が呼び起こされる。
目前で起きた現実のような惨事。突然の蹂躙。何もかもが海に呑まれ、ローの安全確保どころか事態に抵抗すらできない自分。

まさかこいつも同じような体験をしたのかと思わず口を開きかけるが、今やるべきことは夢の共有などではなく情報の共有だ。異常事態が続く今、自分がしっかりしなければと気合を入れ直してペンギンの前にしゃがみ込む。

「今んとこ全員無事だ。キャプテンも、ほら。ベポのとこ」

親指でくいと指し示せば、ペンギンの顔がゆるゆると持ち上がる。何かあってもすぐに対処できるよう、気配を殺して二人の様子を見守っていたベポが涙声でペンギンの名を呼んだ。

「ぺ、ぺんぎん……！　おれも、キャプテンもここにいるよ！」

「ベポ！！　――船長！！！」

足をもつれさせながら、ペンギンは転がるようにしてローを抱えたベポの元へ走り寄る。
ローを隠すために引き上げていた羽毛布団をそっと剥がせば、ペンギンは息を呑み震える手でベポの白い手へ触れ、次いでローの頬や口元に手をあて、熱を、呼吸を確かめる。

「みんな……みんな生きてる……ッ！」

「ペンギン、大丈夫？　おれ達ちゃんと居るよ、だいじょうぶ、大丈夫だ。こっちが現実なんだから……！」

ペンギンの取り乱しようにその苦労と恐怖を垣間見たベポは、自身の身に起きたことを重ね鼻水を啜る。散々な目に遭い、散々なものばかり見せられた。それでもまだ、身も心も負けてはいない。負けてはならないとツナギの袖で浮かんだ涙を拭う。
しかしペンギンは"現実"という言葉にハッと息を呑み、ベポへ詰め寄った。

「ここは、ここが現実なのか！？　そうだ、おれは、ローは……ッ！」

ようやく事態が呑み込めてきたらしいが、一人で慌てられても要領は得られない。シャチは急ぎ、酒まみれとなっているペンギンの身体をベポとローから引き剥がす。
混乱して暴れられても困る。まずは落ち着かせるのが一番だろうと肩を押しやりその場に座らせた。

[92 ◆Pxx1Kifjy2 23/10/24(火) 21:56:00]

「一旦落ち着け相棒、ステイ」

「おい、のんきなことしてる場合じゃないんだ！」

「だからだよ！　……お前は一旦落ち着くべきだ」

急く心はお互い様だった。正論にぐっと押し黙ったペンギンは一度、二度、と呼吸を整える。それにより段々と"あちら"で起きたことを思い出してきたのだろう、「おれが船長を置き去りに？」「どうしてあんな馬鹿なことを」と悲痛な声で頭を抱え始めた。
が、阻止するようにシャチが肩を叩く。
それは"いつも通り"の気合の入れ方だった。

「今んとこキャプテンの容態に大きな変化はねェ。まだ間に合う、……間に合わせてみせる、だろ？」

「シャチ、」

「おれ達だって後悔はある。だから全部まとめて後回しにすんぞ。落ち着いたんなら何があったのか教えろよ。じゃないといま何をすればいいかも分かんねェ」

「そうだよペンギン！　キャプテンは？　キャプテンはどうなったんだ！？」

二人の言葉にようやく視界を広げることができたペンギンは、ぐっと唇を引き結ぶ。
暴走し、自分の感情を優先させてしまったこと。ローを迎えに行くはずが一人で戻ってきてしまったこと。己の心が弱かったこと。さまざまな自責の念が重く肩に圧し掛かるが、シャチの言う通り今はまだ戦いの最中であり、悔いるのは後回しだろう。

ペンギンはごめん、と前置きをしてから端的に"ローの様子や置かれている状況"そして"置き去りにして目の前から消えてしまったこと"を話し始めるのであった。

[93 二次元好きの匿名さん 23/10/24(火) 22:14:27]

>皆が流されるなんて、そんなこと……

まあその内起きるんですがね…（本編）

[94 二次元好きの匿名さん 23/10/24(火) 23:20:14]

ペンギンには最後までローを連れ帰ってほしかったが……惜しかったなぁ残念だなぁ

[95 二次元好きの匿名さん 23/10/25(水) 07:12:59]

ペンギンはひとまず大丈夫か
船長は…戻る動機すら残っているかあやしいからなぁ

[96 二次元好きの匿名さん 23/10/25(水) 12:23:41]

これ現実組も発狂してたらヤバかったな
一番SAN残ってるシャチですら30台…

[97 二次元好きの匿名さん 23/10/25(水) 13:05:12]

頑張ったなあ愉悦組

[98 二次元好きの匿名さん 23/10/25(水) 20:31:23]

船長どうなるんだ
もうクラさんの助けは見込めないのでは…
クラさんもなんか惑わすようなこと言うし…

[99 ◆Pxx1Kifjy2 23/10/25(水) 21:43:26]

（side ロー／SAN値15）

「あ……？」

何かを追うように伸ばしていた自分の手を、呆然と見やる。
直前まで何をしていたのか、誰かがいたのか、まったく思い出すことができず行き場のない腕をゆるりと引っ込めた。そもそも"此処"は"どこ"なのか。辺りを静かにあたりを見回せば見覚えのない個室だった。整えられてはいるが、所々に本や紙の束が雑多に置かれている。

意図せず他人の生活空間に入り込んだようで居心地が悪い。

自分は何故こんなところに、と思うがその"自分"すらも思い出せることがない。
ただ覚えているのは「トラファルガー・ロー」という名前だけだがそれすら"自分のもの"なのか"他の誰かのもの"なのか分からない。
とにかくこの場から去りたくて立ち上がろうとした瞬間、全身が激痛に襲われ膝が床へと逆戻りをする。身体はいう事を聞かず、加えて身体が燃えるように熱く、つめたくなってゆく。

「ぅ、あ……！」

ふと視界に入った己の手や腕が、まだらに白くなっている。まるで痣のように、黴のように、じわりじわりと侵食してくるそれに思わず爪を立てる。

「やめ……くるな……！！」

痛覚はすでに限界を超え、新たな痛みを感じることはない。だからこそ力いっぱいあちこちを掻き毟るが白いそれには噴き出した赤が加わるだけで、一向に剥がれそうになかった。それでもただ"取り除きたい"一心でひたすら手首を、腕を、首を、抉るように引っ掻いてゆく。それしか方法が見当たらない。

『おそろいね、お兄様』

[100 ◆Pxx1Kifjy2 23/10/25(水) 21:43:46]

「…………あ……？」

ふと耳元で聞こえた少女の声。床に倒れたまま虚ろになった顔だけを向ければ、膝をついた見知らぬ少女がこちらを覗き込んでいた。

「だ、れ……、」

『ああ、かわいそうに……もう大丈夫、大丈夫よ、ロー』

少女の隣に座り込み、こちらへ手を伸ばす女性。そして少女を挟むように反対側に座る男もまた、こちらへ手を伸ばす。

『大変だったなぁ、よく耐えたなぁ……』

優しく、労わる声。激痛と熱に浮かされたなかで掛けられた言葉はひどく甘美なものだった。じわりと瞳に涙の膜が張り、重力に従ってぽたりと零れ落ちた、その瞬間。

『これで家族全員一緒だからな、もう大丈夫』

まだらに白く染まった三人の手が、伸びてくる。

「――――ッ！！」

それは身体のもつ危機感、あるいは反射だった。咄嗟に身体を起こして身を引けば背中に壁があたり、痛みで呻く。どこから来たのか、いつの間にかそこに居た三人を改めて見ようとして目を向ける。

―が、そこには誰もいなかった。

「……ぁ……？」

ぐわん、と頭が揺れて意識が朦朧とするが痛みがかろうじて意識を繋いでいた。

[101 ◆Pxx1Kifjy2 23/10/25(水) 22:29:42]

『お前のそれは、治してみせる』

若い男の声がした。慌てて視線を向ければ、デスクに金髪の男が腰を掛けている。大きな男にはこの部屋は窮屈なのか、背を丸めながら白い本を読んでいた。吊り上がったサングラス越しに、瞳が向けられる。

『なァ、おれがきっとお前の病気を、』

『ダメだ、お前はあいつと一緒にいちゃいけねェ人間だ！！！』

「ッ！？」

突如場を切り裂く声は近かった。勢いよく振り向けば自身の背後、部屋の出口に大男が立っている。背格好は先ほどの男と似通っているが、下ろされた金の髪と道化を装うメイクが決定的な違いとなっていた。
誰だ、と問う暇もなく長い腕がこちらへ伸ばされる。

『ロー、お前は自由なんだ、さあ、おれと行こう……！！』

覚えのない人間たちから次々に声をかけられ、何をしていいのかも分からない。ただ知らない人間という一転のみに恐怖を抱いて大男の手から逃れるために身を捩れば、その反動でまたしても涙が零れ落ちてゆく。
思わず黒いシャツの大男がいたデスクのほうを振り返もののそこに同じ姿はない。代わりに、麦わら帽子の男が立っていた。

『トラ男お前、仲間を守れなかったのか』

笑顔で意味の分からない言葉をかけられる。
口を開くが言葉は見つからず、零れ落ちるのは涙と痛みに呻く声ばかり。気付けば部屋のあちらこちらに多種多様な出で立ちの人間が立ち、こちらを見て笑い、哀れみ、責め立てては煙のように消えてゆく。

『格下には格下のやるべき事があんだろうが』『もうちっと骨のある奴だと思ってたぜ』『お前はこんなところに居るべきじゃあないだろう…！』

次々と現れては消える人間のことはおろか言葉の内容も意味も、ひとつも理解できることはない。だというのに連なる声は、酷く心を搔き乱す。

「なに……が、……どうなってっ……！」

『キャプテン、こっちだよ』

[102 二次元好きの匿名さん 23/10/25(水) 23:02:41]

おおお……

[103 二次元好きの匿名さん 23/10/25(水) 23:46:00]

追いついた
最高の作品をありがとう
無理せずに更新してってほしい

[104 二次元好きの匿名さん 23/10/26(木) 07:32:52]

ドフラミンゴが存外優しくて最後まで言わせてやれよコラさんとつい思ってしまった

[105 二次元好きの匿名さん 23/10/26(木) 15:17:22]

この幻覚？が一応各人の性格に沿ってそうなところが記憶がないなりに…
あの世で見守ってる本物コラさんいたらキャプテンの精神を引きずって助けてくれませんかね
なおローは忘れてるのでただの強引な大男なんで従う理由はないんですけどね（白目）

[106 二次元好きの匿名さん 23/10/26(木) 18:10:05]

>>105

ドジってローを連れて暗闇に逆戻りしたらロストハッピーエンド！？（ハッピーとは）

[107 ◆Pxx1Kifjy2 23/10/26(木) 23:13:11]

新規さんあるいは久しぶりさんか！？
有難う！　話もようやく佳境だが楽しんでくれると嬉しい

まだロストではないはずだ安心してくれ＆今日更新無理だすまん！
明日は早めに更新できると思うからまた読みにきてやってくれー

[108 二次元好きの匿名さん 23/10/26(木) 23:19:02]

乙　スレ主のペースでいいよー　無理しないでな

[109 二次元好きの匿名さん 23/10/27(金) 08:01:03]

朝保守
病のことまで忘れているのはお労しいのう

[110 ◆Pxx1Kifjy2 23/10/27(金) 18:56:38]

囁くような呼び声が聞こえ、騒がしかった室内は水を打ったように静まり返る。"キャプテン"という意味は分からなかったが己に掛けられたらしき声へゆるりと顔を上げれば、部屋の真ん中にオレンジ色のツナギを着た白熊が立っていた。こちらへ向けて笑顔をみせて、大きな手を揺らし招いている。

『こっち、こっち』

「ぅ、あ……？」

朦朧とする意識を痛みで保ち、短い呼吸を繰り返しながら続く言葉を待つ。しかし消えた者たちとは違い同情も罵声も浴びせることもないその熊は、ただひたすらに手招きを繰り返しているだけで歩み寄ってくることはなかった。
数歩の距離はひどく遠く感じられる。それでも、何故だか"そこへ行くこと"が正しいような気がしてならない。崩れ落ちそうになる身体を腕や肘で支えながら、四つん這いに近いかたちでずるりと身体を引っ張ってゆく。

何故呼ばれているのか、近付けば何が起こるのか、わからない。

それでも力を振り絞って手足を動かせば、白熊は満足そうに笑む。

ぽたり、頬を伝った雫が床に落ちる。

『キャプテン、もうすこし』

耳元で男の声がした。
顔を上げる力もなく視線だけを横に流せば、サングラスをかけた男がすぐ傍にしゃがみ込んでいる。薄い黒越しに目が合うと、男は口元ににんまりと笑みの形をつくってみせる。
ぽたり、涙がまた落ちた。
まるで身体から何かが抜け落ちていくように。

それを合図としたかのように、部屋のあちらこちらから優しい声が降り注ぎ始める。

『まってますから』

『ほら、もうちょっとです』

『私たちがいますよ、キャプテン』

[111 ◆Pxx1Kifjy2 23/10/27(金) 18:57:11]

喪失感に嬲られ、気力で起こしていた身体がずるりと崩れ落ちた。その反動で、ぱたり、ぱたり、と勝手に涙がこぼれ落ちてゆく。あんなにも熱く、冷たいと思っていた身体の感覚は今や震えるほどの寒さだけを訴えている。だがそれも痛みと合わさりどんどん麻痺していくようだった。
自身の状態に思わず自嘲が漏れるが、笑えているのかすら分からない。

どうすればいい。

何をすればいい。

どうして、こんなことになっている。

思考は削られ、視界は回り、霞んでゆく。

『船長』

薄れゆく意識の中で、またしても己を呼びかける男の声がした。
まだ誰かいたのか、と瞼をこじ開ければ、そこには防寒帽を被った男が膝をついてこちらの顔を覗き込んでいた。部屋の光が逆光となってその目元までは分からないが、柔和な表情でこちらを見詰めている。

「な、ん……」

返事をするのも億劫だった。擦れた声は相手に伝わったのかどうか分からない。男はただ優しい笑顔を顔に張り付けたまま、床の一点を指さした。

『ほら、これ。使ってくださいね』

移動しているときは気が付かなかったが、男が指さした先には、大きな、身の丈ほどもある長刀が落ちていた。腕を伸ばせば、きっと柄に手が届く。

『だいじょうぶですからね、船長』

何がだろう、という疑問と、そうなのか、という納得が同時に沸き起こる。ぱたりぱたりと涙は滑り落ちてゆく。それでも男の穏やかな笑顔に誘われるまま、力を振り絞って柄へと手を伸ばす。指先に触れる柄糸の感触はどこか懐かしい。
ひどく重く、鈍器のように感じられるそれをなんとか手元に引き寄せた。

『ほら、それで……おれ達のところまで来れますね』

[112 ◆Pxx1Kifjy2 23/10/27(金) 18:58:08]

耳元で囁かれる、切望の声。
望む意味を確かめたくて男を振り返るが、やはりそこには誰もいない。


きっと先ほどの人間が最後だったのだろうという予感がした。


もう、誰もいない。


自分の傍には、誰も、彼も、


なにもない。



「……ッ、」

数式や手術の術式をなぞるようだった。身体が勝手に最適解へ導くように、太刀の柄を両手で握る。
そうして重いそれを振り上げた。

あとは重力が、断ち切ってくれるだろう。

[113 ◆Pxx1Kifjy2 23/10/27(金) 18:58:50]

さあ怪異を起こす最後の機会だ
注意文をよく読んでレスしてくれ

■「現実組（ベポ・ペンギン・シャチ）」or「精神世界（ロー）」の"どちらか"に怪異を起こせるぞ

■注意事項
・現実と精神世界の間で人を移動させる事はNG
・体を乗っ取る（動かす）事もNG
・現実も精神世界も船長室へ入るには中に居る人間の許可が必要（幻覚は可能だが実体は伴わない）
・できるかどうか心配な場合は聞いてくれ


怪異を起こす最後だし土曜の18時くらいまでで集まった案のなかからダイスで決めさせてもらうな
バッドエンドになる分岐じゃあないからとことんSANを削るもヨシだ
スレ民のヘキに任せるからやりたいように楽しんでくれ

[114 二次元好きの匿名さん 23/10/27(金) 20:03:19]

ローが忘れた部分を奪っている怪異（ローのすがたの幻覚）が忘れたことを責めながらローの半生を語り、記憶は戻るけど現実のポーラータングは沈み、助けに来たペンギンは消滅したという

アウトな部分あればスレ主に調整はお任せする
アイデンティティがぐちゃぐちゃになるまで記憶を奪ったら、今度はその記憶を戻してお前が大切なことを忘れて情けないことになっている間にもう取り返しのつかない展開まで行っちゃったよ、と教えてあげて削るしかないよねﾆﾁｬｱ

[115 二次元好きの匿名さん 23/10/27(金) 20:14:24]

（1ケタがみえたので集中したいが…ここまで「無くしきった」人間を恐怖させることは可能だろうか？ちと考える）

[116 二次元好きの匿名さん 23/10/27(金) 20:22:33]

ローを酸欠にさせて意識を落とす
大幅には無理だろうけど苦しみでSAN値削れたらいいな

[117 二次元好きの匿名さん 23/10/27(金) 20:58:33]

「死が救済」状態になっているようなのでそれも奪おう

ロー：いくら斬っても血を流しても死なない　シねない

[118 二次元好きの匿名さん 23/10/28(土) 07:01:31]

現実組のローの身体に白い痣が現れる

[119 二次元好きの匿名さん 23/10/28(土) 11:20:43]

子ロ―がロ―の記憶を呼び覚ましてそのあと砂が風にあおられたようにきえてべポペンシャチがボロボロなのに責めてるような顔をしてじっとロ―をみつめてる

[120 二次元好きの匿名さん 23/10/28(土) 11:22:40]

ローに対して『様々な声がお前は過去のためにしか生きられない人間だ』と責める
・十年以上復讐のためだけに生きてきたとは虚しい人生だなと嘲笑うドフラミンゴらしき者
・クルーはお飾り、船長ばかり目立つし一人で行動してると尤もらしく語る市井の人々
・お前いつも一人で動いてるじゃん？守る？信頼してないの間違いだろ？などと悪気なく言い放つ元同盟者らしき連中
・おれは自由になってほしかったのに、おれに囚われず今の仲間たちと楽しく生きてほしかったのにと嘆くコラソンらしき者
・トドメとばかりに「大丈夫、分かってるよ」「それでもおれ達はキャプテンが好きだから」と温かく笑うオレンジや白いツナギの人々「分かってる。おれ達が死んでローが生き残ったら、初めてローはおれ達のために生きてくれるんだよな」etc...

信頼してない訳ないだろ二手に分かれるのだって合理的な選択の結果だしそもそも信頼してなかったら危険な新世界まで連れてきてないなどの前提はあるけど、怪異なのでそこはあえて無視する感じで

[121 二次元好きの匿名さん 23/10/28(土) 17:05:20]

現実組

室内にある尖ったもの(割れた酒瓶など)が3人+布団巻きのローめがけて飛んできて串刺しバーベキュー開催しようとしてくる
部屋の照明は急に消え轟音と衝撃で部屋が揺れて洗濯機の中みたいにぐるぐるシェイクするし
伝声管は沈黙してるけど床が浸水して水浸しになる　水位は段々上がってくるかもしれない
部屋の扉は開かず脱出できない　意識のないカナヅチ一人抱えてれば結構な不安を煽れるはず
現実か幻覚かはお任せする方向で

[122 二次元好きの匿名さん 23/10/28(土) 17:32:03]

傍から見たら混乱して刃物を手に取っただけの状況なのに精神分析できる人がいない＋本人視点だと恐ろしいことになってるぅ…

移動が出来ないなら見せるだけはいける？
110以降のローさんの様子を現実の三人に見せてみたい
声も届けばいいけど声だけで阻止できるものかどうか…

[123 二次元好きの匿名さん 23/10/28(土) 18:01:52]

現実組
首取れかけで心臓から血を流してずぶ濡れの船長（パンイチは再現せんでいい）の幻影が現れてお前達のせいだと責める

[124 二次元好きの匿名さん 23/10/28(土) 19:41:55]

まだ間に合うかな？

精神世界
ローの記憶が戻る
が、ペンギンが見た悪夢の世界線も思い出す（というか見る）
今までのハートの旗揚げ組との出会い、暖かな仲間たちとともに過ごした航路全てが1人ぼっちで孤軍奮闘する自分がみた都合のいい夢と錯覚してしまう

[126 二次元好きの匿名さん 23/10/28(土) 20:23:14]

>>125

本当に失礼でごめんだけどSSとか注意事項ちゃんと読んだ？

[127 二次元好きの匿名さん 23/10/28(土) 20:40:55]

>>126

間に合ってないので書きましたが失礼しました

[128 ◆Pxx1Kifjy2 23/10/28(土) 22:22:34]

遅れたすまん！！！というか予想以上にレスあってビックリだ

そんでこの怪異たち優しさどこいった！！？？

畳みかけるSAN切削めちゃくちゃ笑ったしどれも書いてみてえ！！！ありがとな！！！

時間も単純に来る予定だったものだから滑り込みもOKだ！こまめに確認来れなくてごめんな

折角たくさんレス貰ってるし現実世界と精神世界分けるか

話の流れ作る時に外れた安価も入れさせてもらうかもしれんが逆に拾えないものの方が多そうだ

くそ勿体ないがその点は申し訳ない

【精神世界】

dice1d6=6 (6)

１…>>114

２…>>116

３…>>117

４…>>119

５…>>120

６…>>124

【現実世界】

dice1d4=3 (3)

１…>>118

２…>>121

３…>>122

４…>>123　（パンイチ表現せんでいいくそわろた）

[129 ◆Pxx1Kifjy2 23/10/28(土) 22:31:55]

決定したがマジで全分岐つくりてえ！！
みんな精神攻撃やらバーベキューやら酷くてレス読んでるだけでおもろいし話づくりが上手そう
何度も言ってるが自分にないアイデアの宝庫でくそ楽しい

終わる終わる詐欺みたいになってきたがあと少しよろしくな！
という訳でまた明日！

[130 二次元好きの匿名さん 23/10/29(日) 07:32:14]

エンディング後のバドエン巡りもオツなもの
各自の廃人パターンとかみたいぞ

[131 二次元好きの匿名さん 23/10/29(日) 15:39:01]

わわ安価当たった嬉しい…！
楽しみにしてます！

[132 二次元好きの匿名さん 23/10/29(日) 15:58:19]

ロー服着られてよかったね…！

[133 二次元好きの匿名さん 23/10/29(日) 18:13:37]

自分も安価当たって滅茶苦茶嬉しい
楽しみにしてるよスレ主ー！

[134 ◆Pxx1Kifjy2 23/10/29(日) 22:26:31]

網羅もいいよなー廃人だらけの地獄巡りみたいで
（あと服着れてないなんて言えない）

[135 ◆Pxx1Kifjy2 23/10/29(日) 22:28:02]

（side現実世界）

静かな部屋のなかで、独白、あるいは懺悔のようなペンギンの端的な説明が紡がれる。

「色々あったけど合流はできたし一緒に船長室まで戻ってきてたんだ。でもあの"子供"はいなかったし、どうしたらいいのかも……。そしたら伝声管から、……ッ、お、お前たちの悲鳴が、ポーラータングが水に飲まれる音が聞こえて……」

項垂れ、拳を握り締める姿にベポもシャチも押し黙る。状況は違うがそれぞれ似たような怪奇現象に襲われており、生々しい記憶は掘り起こしたいものではない。ベポはシャチにしてもらったように優しさを分けたいと口を開きかけるが、ふと目が合ったシャチに制される。
ペンギンの唇が再度、戦慄きながら開かれた。

「そこから、正直あまり記憶がないんだ。帰るところが無くなったと、お前たちが死んだのかと思い込んで―……いいや、部屋がニセモノだと思ったんだ。だから、確か、船長を連れて……部屋を出ようと……。そうしたら、気付いたらここに居て……だから、おそらくいま船長は記憶がないまま……」

記憶を辿る声が部屋を彷徨う。しかしそれを聞いていたベポの耳が異音を拾い、ピクリと跳ねた。

「伏せて！！」

突然の指示にいち早く反応したのはシャチだった。話すことに集中していたおり思わず呆けるペンギンを床へ引き倒し自身も地へ伏せる。
ベポもまた腕の中のローを庇うようにして羽毛布団を引き上げれば、"何か"がどどどと鋭く重い音をたてて次々と壁や羽毛布団へ降り注ぐ。その強い衝撃は下手をすれば人体を貫通するほどのものだった。

音と衝撃が止み、突然のことに詰めていた息を零しながら三人はそっと顔をあげる。
つい今しがたまで姿を置いていた場所へ、割れた酒瓶の鋭い切っ先やペーパーナイフ、ペン、予備のダガーやハサミなどありとあらゆる凶器が深々と突き刺さっていた。

「くそ、次は直接攻撃かよッ！　サンキュなベポ、キャプテンは！？」

「大丈夫、傷ひとつつけてない！」

二撃目を警戒しつつベッドに駆け寄るシャチと遅れて立ち上がるペンギンにベポはしっかり頷いた。羽毛布団を貫通した刃物で多少腕を突かれたが、ほとんどが厚い毛皮と表皮で止められており騒ぐほどのダメージはない。

[136 ◆Pxx1Kifjy2 23/10/29(日) 22:29:25]

もはやこの色々なものが刺さった羽毛布団は危険だろう。ベポは片腕でローを支えたまま、器用に刃物を内側へ巻き込みつつ折りたたんでゆく。まだ湯たんぽはあたたかく、毛布も重ねているので保温に問題はないだろう。

「食堂でもあったな、今みたいなポルターガイスト」

「ああ。またアレが始まると消耗戦だぜ。今度は逃げりゃいいってもんじゃねェし」

すこし前の出来事を思い出し、ペンギンとシャチが焦りの色を浮かべる。怪奇現象への対処だけでなく、どうにかして精神世界で一人きりになっているローへコンタクトを取る、もしくは再びあちらへ行ける何かが必要だった。
が、視線が落ちる二人とは裏腹に、ベポは記憶の端に引っ掛かっていた"ある事"を思い出し勢いよく顔を上げる。

「そうだ、おれここに来る前"あの子"に言われた！　声をかけてあげて、って！」

「……声？」

どういう事かと眉を顰めるペンギンに、ベポは分からないけど、と前置きをして状況を思い出す。

「うん、もうすぐペンギンがキャプテン連れて戻ってくるから声を掛けてあげて、って。記憶がないキャプテンに伝わるのかは分かんないけど、それで連れ戻せるのなら！」

「呼び水ってことか？　まずは意思疎通だけでもできればいいけどな」

「時間がない、とにかくやってみるしか……！」

心が落ち着かないペンギンは言うが否や、身を乗り出してローを包んでいる毛布に触れる。

[137 ◆Pxx1Kifjy2 23/10/29(日) 22:29:49]

「船長、船長……！　聞こえますか、返事してください、おれですペンギンです！」

ペンギンの言葉にベポとシャチが顔を見合わせ、頷いた。
ベポは抱き締める腕へ少しだけ力を込め、シャチはペンギンと同じように毛布へ触れ、代わる代わる意識のないローへ声をかけてゆく。呼吸はひどくなる一方だった。細く、乱れ、時折何かを堪えるようにぐっと息を詰めている。
頼りないその呼吸にベポの瞳が水の膜を張っていった。

「キャプテン、戻ってきてよ！　お願いだから、おれ達のところに戻ってきて！」

「キャプテン！！　おれの声、届いてますか、どうかコッチに……――ッ！？」

三人の意識が集中したその時だった。突如全員の視界が暗転する。ぐるりと眩暈に似た浮遊感に襲われたのち、視界いっぱいに広がったのは"船長室"の光景だった。

[138 二次元好きの匿名さん 23/10/30(月) 07:19:03]

え…パンイチ継続してたのか
シャチがなんか用意してたからてっきり着せたものかと

[139 ◆Pxx1Kifjy2 23/10/30(月) 11:13:32]

おはよう！

服準備の最中にベポが戻ってきてイッカク（偽）が来て…とやってたから暇が無かったな

とはいえマジでパンイチに意味はないし寒そうだから着せてもいいんだが折角だしダイス振るか

１：スレ民もとい怪異の優しさによりPart6の182～Part7の66（塩酒をどうするか悩んでる）の間に着せていた

２：現実は非情である！着せる暇がなかった

３：安価スレだから安価しような

４：民主主義万歳！投票で決める

dice1d4=2 (2)

[140 ◆Pxx1Kifjy2 23/10/30(月) 11:15:43]

温情マシマシしたのになんで1/4引いてんだよ

[141 二次元好きの匿名さん 23/10/30(月) 11:29:16]

ここのダイス神はイイ仕事をするなあ…

[142 二次元好きの匿名さん 23/10/30(月) 13:40:37]

>>139

めっちゃ笑ったわありがとう

まともな服が全部洗濯中だったんかな

[143 二次元好きの匿名さん 23/10/30(月) 18:51:27]

今ほどカーゴパンツを切望したことはない…
ダイス神の運命だからしょうがないやね…

[144 二次元好きの匿名さん 23/10/30(月) 19:20:21]

ダイス神愉快犯で草

そんな、嘘だろ……！？

[145 二次元好きの匿名さん 23/10/30(月) 19:58:32]

ここまで来ると目が覚めたらパンイチになってた船長の反応が見たいまである

[146 二次元好きの匿名さん 23/10/30(月) 20:08:21]

>>144

くっそわらった

[147 二次元好きの匿名さん 23/10/30(月) 20:36:57]

ま、まぁ体温めるには裸に毛布ってのは効率的だし？

[148 ◆Pxx1Kifjy2 23/10/30(月) 22:29:18]

>>144

めちゃくそ笑わせてもらったサンキュー！！

つか画力の使い道！！！！

仕事の合間の楽しみがまたできた！じっくり味わってから返信させてくれ

マジでこのスレのダイス色々酷いな…

[149 ◆Pxx1Kifjy2 23/10/30(月) 22:29:56]

まるで夢を視ているようだった。手足や身体の感覚はなく、視覚だけが映像情報として与えられている。そして此処は、つい今しがた居た"船長室"とは明らかに違う"船長室"だった。またしても幻影か何かか、と三者三様に身構えるが、扉付近に"ロー"の姿を認め、思わず凝視する。

「せ……船長！」「キャプテン！！」

途端、口々に呼び止めるが聞こえていないのか見向きもされなかった。心ここに在らずといった虚ろな瞳で座り込んでいる姿にペンギンは既視感を覚え背筋が総毛立つ。

「おれが消えたあとの部屋か……！？」

ペンギンの絶望を含んだ声は二人にも聞こえていた。ただの幻覚ではなく、"精神世界"を覗き見しているのかもしれないという事に期待と不安が入り交じる。

「なんとか、キャプテンにおれたちのこと気付いてもらえたら！」

意気込むベポの声が響いた。
だがしかし、呼びかけに対して反応ひとつなかったことがペンギンとシャチの不安を肥大化させてゆく。そしてその不安は現実となり三人を嘲笑うのだった。


―それは目を覆いたくなる内容だった。
見ないという選択肢は許されず、ただ訥々と脳に直接"ローの様子"が流される。

痛みに倒れ、皮膚に浮かび上がるまだらな白い痣。

混乱し、肌を抉り、血を流し、自我をも失いかけ、苦しみ悶える姿。

「やめろ、やめてくれ……！！」

「きゃぷてん……！！」

しかしそれは序章に過ぎなかった。

[150 ◆Pxx1Kifjy2 23/10/30(月) 22:31:49]

顔は見えず、声も聴こえない。だが雰囲気から察するに恐らくはローの記憶の中の家族なのだろう。幼い女の子や男女はに手を伸ばされ、"何か"を語り掛けられ、ぽたりと落ちる涙に三人の胸が張り裂けそうだった。数えるほどしか見たことのない涙はいつだって特別な意味をもっていた。その涙が、まるで枷が外れたようにぽたり、ぽたりと落ちてゆく。
どうにかして届けたいものは何一つ伝わることがない。声をあげることしかできない無力さに血反吐を吐きそうなほどだった。

そしてこの空間で、家族に言葉をかけられる意味。ベポは兄の声に身を委ねた己の甘さとその"有り得た"結末を思い出し悲痛な声でローを呼び続ける。

「やめて…やめろよ……キャプテンが何をしたっていうんだよ！！！」

伸ばされた手を寸でのところでローが躱し、家族らしき姿が消えたと思えば朦朧とした様子のなでかドフラミンゴに声を掛けられ、似た姿の大男に手を伸ばされ、見覚えのある者たちから口々に"何か"言葉を掛けられている。記憶は無いはずだが、明らかに状況が分かっていないローの混乱と絶望に拍車をかけていた。

やめて、聞かなくていい、耳を塞いで。
三人の絶叫は届かない。

そして部屋の真ん中に、見慣れた姿が現れた。

「ベ、ベポ……？」

「ちがう、おれじゃない！　キャプテン、それはおれじゃない！！」

その白熊は、笑顔でローを手招いている。動揺するシャチの声を一刀両断し、ベポは涙を浮かべた声でただひたすらにローを呼ぶ。
しかしローは"偽物"に招かれるがままだった。虚ろな目のまま、ずるり、ずるりと重い身体と血を引き摺りながら"白熊"のほうへ向かってゆく。
途中、現れたのはシャチだった。

「やめろ！！　キャプテンに近付くなよテメェ！！」

叫ぶ本物の声は風のそよぎにすらならない。ローの隣にしゃがみ、何かを耳打ちしてにたりと笑む"そいつ"をぶち殺してやりたいとシャチの狂暴性が身の内で荒れ狂う。

見ている事しかできず、解決の手立てもない。
あの"子供"は声をかけてと言っていたが、それでどうにかなるとも思えない。
ローが縮める白熊との距離は、まるで死へのカウントダウンのようだった。

[151 二次元好きの匿名さん 23/10/31(火) 07:32:25]

自分らの姿をしたものが船長を絶望に追い込んでいるのを見てるしかないってのは辛いな…

[152 二次元好きの匿名さん 23/10/31(火) 13:22:43]

やっと船長と会えたのに見てるだけなのは本当におつらい…

[153 二次元好きの匿名さん 23/10/31(火) 16:26:48]

ごめんこれだけ言わせて
１つ前の羽毛布団を盾にするベポ（しかも貫通で怪我したっぽいのを気にしない）めちゃくちゃグッときた
格好いいベポ好きだ…！

[157 ◆aG6hEQuusLPP 23/10/31(火) 20:48:48]

>>154

>>156

間違えまくりで草

ちょっと落ち着いて一つずつ行動させてくれ

まずはトリップ披露というクソミスしでかしたので念のため変更

以降こっち使わせてもらうがこれでちゃんと表示できてるか…？

>>155ガチで気付かなかったあぶねえ！サンキュー！

[158 ◆aG6hEQuusLPP 23/10/31(火) 20:52:42]

できてた！

そんで>>154とかに書いてた内容

↓

いつもみんな感想めちゃくちゃ嬉しいありがとう！！

SAN抉られつつも頑張る旗揚げが書きたかったからそう言ってもらえるの嬉しい

しかしこの先ペンギンがあぶねーな

>>78改めてギャグ時空の御礼と私信だ！

（弄られることを）諦めてくれ

出来心

今日の更新書けたら置きにくる！またあとで！

て撃ってたんだ

一人で勝手に騒いですまん…

[159 二次元好きの匿名さん 23/10/31(火) 21:35:29]

>>157

無駄レスしてすみませんでした　それにしてもスレ主多才すぎだろ

[160 ◆aG6hEQuusLPP 23/10/31(火) 22:39:01]

>>159

いや感謝しかない

半角と全角間違えるって何だよ…

しかも撃つも誤字ってるなクソ消してえ

今日いろいろダメだ悪いな！

[161 ◆aG6hEQuusLPP 23/10/31(火) 22:40:08]

「だ、ダメだ……船長、だめだ……」

は、は、と短く切羽詰まった呼吸音とうわ言のようなペンギンの呟きに気付いたのは、"映像の自分"に向けて罵詈雑言を放っていたシャチだった。姿かたちは見えないが、きっと顔面蒼白になっているであろう相棒に歯噛みする。錯乱のさなか、そして"自分が連れ戻せなかった結果"をこう見せつけられて正気ではいられないだろう。

遮ることも手出しも許されない"映像"は続く。

クルー達がローを囲む。

応援でもしているのだろうか、それらは優しい顔で口々に何かを伝え、"死"へと進ませる。

ベポが濡れた声でそんなものはおれ達じゃない、目を覚まして、とひっきりなしに叫んだその時だった。笑顔で手招きをしていた白熊が一瞬にして"ペンギン"の姿へと変わる。
ひ、とペンギンの喉が引き攣った。

「なんで、なんでお前がそこに、おれが居るはずだったのに……！」

悲痛な言葉に、あっと驚くベポの声が重なった。映像のなかの防寒帽を被った男はしゃがみ込み、鬼哭に向けて指をさしている。ペンギンのなかであやふやになっていた精神世界での記憶がじわりと浮かびあがった。

「鬼哭……あれは、おれが……ッ！」

自刃を試みたローの焦りを含んだ虚ろな瞳と、咄嗟に蹴飛ばし部屋の隅へ転がった鬼哭。あの時と違い"あそこに居ない"自分にはもう手出しが叶わない。ペンギンは身を焼き切るほどの後悔に苛まれる。

これまでの悪夢のような道のりはただの"誘導"であり、これから見せられるものなど明白だった。
身体の感覚はない筈なのにざっと血の気が引き全身が凍り付く。

―どうか、それだけは。

願いも声も一方的で、電伝虫のダイヤルをかけ続けるようなものだった。繋がっていない内に何を叫んでも相手には伝わらない。
三人の声が絶望に染まる。

「キャプテンやめて！！！！」

[162 ◆aG6hEQuusLPP 23/10/31(火) 22:40:24]

鈍い金色の瞳は何処をも見ていない。

ぱたり、ぱたりと涙が落ちてゆく。

"誘導"されるがまま血に塗れた手を鬼哭へ伸ばし、引き寄せ、ややあって震える両腕でそれを振り上げるローへ三人は慟哭することしかできない。

するりと撫でるように、落ちゆく大太刀が首を斬る。

刀が床を跳ねると同時に、勢いよく噴き上がる鮮血。

力なく、ローの身体が床へ崩れ落ちてゆく。

ペンギンSAN値チェック

dice1d6=3 (3)

ベポSAN値チェック

dice1d6=4 (4)

シャチSAN値チェック

dice1d6=3 (3)

[164 ◆aG6hEQuusLPP 23/10/31(火) 22:46:45]

>>163

計算間違い　ダメ過ぎる

（ペンギン　14-3=11）

（シャチ　34-4=30／発狂・恐慌まであと5）

（ベポ 28-3=25／発狂・恐慌まであと5）

[165 二次元好きの匿名さん 23/10/31(火) 22:57:34]

ペ、ペンギンが悪夢の一桁代目前じゃないですか…

こうやって見ると本当に精神世組は過酷だったんだな

>>164

シャチとベポの減る方のSUN値逆では

[166 二次元好きの匿名さん 23/10/31(火) 23:31:17]

更新おつです　いつもいつでも楽しみにしてます
それはそれとして主あんま無理しないでね

[167 二次元好きの匿名さん 23/11/01(水) 06:48:03]

どんどん削れてくな！！

[168 二次元好きの匿名さん 23/11/01(水) 10:10:09]

これを乗り越えた先に何かがあると信じてる

[169 ◆aG6hEQuusLPP 23/11/01(水) 11:36:23]

おはよう！
ほんとだ間違えてるなベポが一番削れてんのに！指摘サンキュー！！クソミスアゲインだ

（ペンギン　14-3=11）
（シャチ　34-3=31／発狂・恐慌まであと6）
（ベポ 28-4=24／発狂・恐慌まであと4）


お言葉に甘えて少し休ませてもらうわすまん
落ちても大丈夫だから保守も無理しないでくれー
自分が読みたいから書くタイプの人間だからドロンはしない！二次創作を誰かに読んでもらう機会そんなになかったから楽しいんだいつも有難う！

[170 二次元好きの匿名さん 23/11/01(水) 18:42:17]

スレ主昨日の様子だとかなりお疲れ（お憑かれ？）のようだったから…
ゆっくり休んで英気を養ってほしいぞ

[171 二次元好きの匿名さん 23/11/01(水) 22:22:11]

完結するつもりなのがわかってるだけでとても嬉しいんだ
ゆっくり待ってるよー

[172 二次元好きの匿名さん 23/11/02(木) 08:14:06]

朝保守

[173 二次元好きの匿名さん 23/11/02(木) 18:50:57]

>>172

怪異スレ民（目玉）イラストデビューしてて草

シャチーッうしろうしろーッ！！

[174 二次元好きの匿名さん 23/11/02(木) 22:20:16]

初代スレから読み返してたらローの初期SAN値が70でびっくりした　今15……

[175 二次元好きの匿名さん 23/11/03(金) 00:55:14]

>>174

そうやって振り返るとめちゃくちゃ削れてるんだな

そういえば初期SAN値ってローが一番多かったんだっけ…

[176 二次元好きの匿名さん 23/11/03(金) 01:23:32]

初期値こそ高かったがはじめからダイス上限ガンガン出して削れてった思い出
今見返したら1スレ目50もいかんうちに一時発狂してたな

[178 二次元好きの匿名さん 23/11/03(金) 13:02:51]

昼保守

[179 二次元好きの匿名さん 23/11/03(金) 19:59:39]

怪異スレ民酔っぱらってるかわいい

[180 二次元好きの匿名さん 23/11/03(金) 22:16:06]

>>178

シャチも嫌そう…って感じの顔してて草

[181 二次元好きの匿名さん 23/11/04(土) 06:57:43]

楽しみ！

[182 二次元好きの匿名さん 23/11/04(土) 16:35:13]

スレ主の発言的にバッドエンドルートは無いと思ってるけど船長とペンギンの残りSUN値はちょっと不安になるぞ…

[183 ◆Pxx1Kifjy2 23/11/04(土) 21:34:51]

感想とかイラストとかめちゃくちゃ贅沢な保守してもらってんな！！？？ビックリした

すげえ…有難うしか言えねえ……

またじっくり眺めさせてもらおう

PCは直らなかった（し新たに設定したはずのトリップも忘れた）が、バックアップ中に遺物を発掘したから保守がてら置かせてくれ

だいぶ前に書いたものだが微ホラーだから許してほしい

とはいえ今回の話と無関係なものだしこれきりにする

ハートの海賊団日常？

仕事も区切りが見えてきたからスレが終わる前には戻る予定だ！

のんびり待ってくれると嬉しい

>>182

ちなみにバッドエンドへいけるようにも準備してある安心してくれ（？）

[184 二次元好きの匿名さん 23/11/04(土) 22:39:06]

微ホラー…かな？
赤字が不穏すぎて解釈次第で正統ホラーにもサイコホラーにもなりそうで結構ゾワゾワしたんだが

[185 二次元好きの匿名さん 23/11/05(日) 08:02:51]

朝保守
バッドエンドもあるのか…

[186 二次元好きの匿名さん 23/11/05(日) 15:51:09]

>>185

怪異スレ民ーーーー！！！

[188 二次元好きの匿名さん 23/11/06(月) 06:46:17]

続き楽しみ！

[189 二次元好きの匿名さん 23/11/06(月) 12:48:57]

バッドエンドも楽しみ
一時発狂(怪異側)

[190 二次元好きの匿名さん 23/11/06(月) 13:50:55]

元安価は「ローの聞いたことのない笑い声」だったな
まあ…たしかに…
（代休潰して「おれは医者だ」待機中）

[191 二次元好きの匿名さん 23/11/06(月) 22:01:52]

ちょっと様子のおかしい怪異じわじわ来る

[192 ◆Pxx1Kifjy2 23/11/06(月) 22:17:31]

保守ありがてえ！！

ゆるゆると再開していくつもりだが当然書き溜めてないから数日溜まったら読むくらいがいいかもしれん

適度に覗いてやってくれ

>>184

まじか苦手だったらすまん！

むしろサイコギャグ寄りだと思ってたんだ…一応注意文書き加えとくな

>>185

くっそわろた

そら塩ならそうなる

>>187

可愛い絵を描いてもらって申し訳ないが投下は三次創作のみだから削除させてもらった！すまん

良ければ時間のあるときにでもSS読んでやってくれ

>>189

怪異側の発狂草しか生えん

こんなん別の意味でSAN削れる

イラスト保守マジで勿体ねえが有難う！！またテレグラせてくれな

[193 ◆Pxx1Kifjy2 23/11/06(月) 22:19:29]

（side ロー／SAN値15）

「……ッ、……、」

大太刀は確かに喉を切り裂いた。
噴き出した血は止まる事なく身体を濡らし、地面へ広がってゆく。遅れてやってくる激痛は失血に伴う眩暈と共にぐちゃぐちゃと意識を搔き乱し、何もかもを奪い去ろうとしていた。

だというのに、いつまで経っても死が訪れる気配はない。

呼吸がままならず、ごぼ、と口から血が溢れ出た。

「（足りないのか）」

朦朧とする意識が辿り着いた答え。それと同時にローの手指が床を這った。
動かす力など残っているはずもなく、まるで見えない誰かに手首を掴まれ、動かされているようだった。瞼をこじ開ければ霞む視界の端で空間の一部が歪むように揺らめいた、気がした。しかしそれは一瞬のことで次に瞼を持ち上げたときにはもう何も見えはしない。ぴちゃり、ぴちゃりと血だまりのなかを動かされた指が固いものに触れ、無意識ににゆるりと握り込む。それはつめたく、硬い、――刀身だった。
先程の刀が傍にある、そのことになぜかひどく安堵した。

朧げな視界のなかで眼球だけを動かして、切っ先の向きを確認する。きらりと訴えるように朱く光って見えたのは、血が反射したせいだろうか。
重いそれを引き寄せる反動で横を向き、躊躇なく心臓目掛けて埋め込んだ。

「ぁ”、ぐ、ああッ……！」

切れ味の落ちない刃はいとも簡単に皮膚を、臓器を、切り裂いてゆく。

尋常でない痛みが重なる。意識があり、声が出ているのが不思議なほどだった。確かに肉を断つ手応えも、一帯を染めてゆく血も、痛みもあるというのに、意識だけを無理矢理繋ぎ止められている感覚。

しかし、"辿り着けない"。

消えて行った者たちが誘導する場所へ、目的へ、一向に辿り着けない。
何故、どうして、何が悪い、と混濁する意識。血液にまみれ、濡れた呼吸をするたびに涙が落ちてゆく。

[194 二次元好きの匿名さん 23/11/06(月) 23:04:42]

これベポ達も見てるんだろうなぁと思うと…（ｿﾞｸｿﾞｸ）

>>192

誤解させてすみません　読後にあれって？もしかして？みたいな解釈で怖くなる作品大好物です一行ホラーとか

[195 二次元好きの匿名さん 23/11/07(火) 08:12:32]

凄惨だなあ
あっちでもこっちでもSAN削れそう

[196 二次元好きの匿名さん 23/11/07(火) 18:20:39]

保守
さてどうなっていくのやら

[197 ◆Pxx1Kifjy2 23/11/07(火) 22:57:58]

その時だった。
違和感が全身を駆け抜け、弾けるように目を見開いた。

大太刀を胸元に深く突き刺すほどに"なにか"が意識へ、脳へ、流れ込んでゆく。

「――ッ！？」

―それは"記憶"、或いは"自分そのもの"だった。

全身が心臓になったように脈打った。どくり、どくり、流し込まれる"それ"はいつの間にか削られ、欠け落ち、奪われ、存在すら無かったことになっていた記憶。曖昧だった自身の輪郭が、意識が、突如として形を成してゆく。

家族の、故郷の、恩人の、クルー達の、これまでの人生の記憶たち。

なぜ忘れていたのか。
そもそもどうして自分はこんなところに。
この痛みは、なんだ。

鮮明になってゆく"自分"へ疑問が溢れて止まらない。しかしそれらの疑問は直ぐ、同じように溢れる記憶によって解を掴み取る。

「おれ、は……！」

妙な空間を彷徨っていたこと。"景色"のなかを渡り歩いたこと。

「コラ、さ……」

知らず、恩人と会話したこと。あれは本物だったのか、作り出されたものだったのか。有り得るはずのないクルー達の死体。闇のなかの硝煙の臭い。銃声。炎の熱。悲鳴、駆除、死体の温度、家族の怨嗟。

「ぁ、あ、あああっ、」

[198 ◆Pxx1Kifjy2 23/11/07(火) 22:58:24]

子供の自分が狂ったように嗤っていた。訳も分からず全てを壊せばいいと思った。この場所から出るために、偽物は全て斬ればいいと。既にあのとき"なにも"わからなくなっていた。その中で出会った男が、ひとり。
あれはたしかにペンギンだった。それもおそらく、本物の。

―自分はあいつに何をしようとした？

助けに来たのであろうあいつへ刀を向け、斬り捨てようと。

―他の奴らは無事なのか。

クルー達へ危害を加えられそうな気配があった。それだけは回避しようとした覚えがあるが、具体的にあいつらの身に何が起きているかは分からない。自分のしていた行動が正解だったかも。

そうして逆流する記憶は"つい先ほど"の音を、声を、鮮明に思い起こさせる。

爆発音と濁流の音、金属が捻じ曲げられる音。激しいそれらに呑まれるようにして、微かに届く人の声。

『こんな事……！！』

　　　『ダメだ間に合わねェ！』

『うわああああ！！！』

　　『ポーラータングが…！！』

『あ"あ"あ"あ"あ"ッ！！』

　　　　　　『沈んじまう！！』

　 『キャプテンは…！！』

『たすけて…ッ！！』

[199 ◆Pxx1Kifjy2 23/11/07(火) 22:58:59]

「――――ッ！！」

悲鳴へ呼応するようにして、突如全身が激痛を思い出す。

身体が千々に破られるようだった。形づくったはずの意識が白んでゆく。どくどくと耳の奥で音がする。気付けば血だまりのなか生暖かな血を流し、今も鬼哭を心臓に刺す"自分"。

生々しく鮮明となった多くの記憶たち。

状況不明のクルー達。

失血死を免れない状況。

そのどれに対しても、心が追い付いていなかった。

dice1d6=6 (6)

[200 ◆Pxx1Kifjy2 23/11/07(火) 23:02:39]

>>194

それならよかった（？）やったぜ仲間だ！

そして次スレだ！

【閲覧注意🎲⚓SS】ロー中心ハートの海賊団をホラーな目に遭わせる Part8｜あにまん掲示板