【SS】私に似合う仮装は…

  • 1二次元好きの匿名さん23/10/19(木) 20:28:54

    「貴様、少し形がわるいぞ。先程、教えただろ」

    「エアグルーヴに習った通りにやっているつもりだが」

    「ここ、ほら。少しズレてるじゃないか」

    「あ……」

    「まったく。貴様は不器用だな。いいか、ここはこう、折ってだな…」

     10月に入り、日中の時間が減り、夜がだんだんと深まっていくこの頃。
     黄金に輝く夕日が窓越しに差し込み、トレーナー室を少しオレンジ色に染めあげる。
     そんな室内でトレーナーとエアグルーヴ二人が、夕焼けと同じ色のオレンジ色と白色の折り紙を折り込む。

     トレーナーは季節行事を大切にしているエアグルーヴが10月のイベント、ハロウィン用に模様替えの準備をしている所を手伝っている所だ。
     オレンジの折り紙はジャック・オ・ランタン、白色の折り紙はお化けといったハロウィンらしいものを作成している。

    「エアグルーヴ、これで、いい?」

    「うむ。貴様にしては上出来だ。その調子で綺麗に折ってくれ」

    「了解」
     
     不器用ながら一生懸命に折るトレーナー
    と慣れた手付きで折っていくエアグルーヴ
    とで、ハロウィンのジャック・オ・ランタン、お化けが完成していく。

  • 2二次元好きの匿名さん23/10/19(木) 20:30:14

    「なぁ、エアグルーヴ?」

    「なんだ、トレーナー」

    「結構作っているけど、これって、何処に飾るの?」

     折った折り紙たちを見るとこのトレーナー室だけ飾る量でないのは一目瞭然だった。

    「ああ、主に飾る所はトレーナー室、生徒会室、自室だ。残ったら、学園内の掲示板などに飾りするつもりだ」

    「自室に?」

     トレーナー室と生徒会室は飾る理由はわかるが、自室だけは疑問が浮かぶ。
     
    「貴様も知っているだろう。私の同室の相方はファインってことを。そして、ハロウィンの発祥はアイルランドだ」

    「ああ、そうか」

     そうだ彼女の同室、ファインモーションは出身はアイルランドで、今は留学でトレセン学園に通っていることを思い出した。

    「じゃあ、そのために…」

    「ああ、少しでも寂しい想いをさせないためにもな。それに折り紙の飾つけはここでしか見られないからな」

    「優しいな、グルーヴ」

    「……たわけ。私がしたくてやっていることだ。それよりも、貴様、手が止まっているぞ。まだこれで完成ではないからな」

    「…っと、ごめん」
     怒られて、慌てて、折っていく。先程の話をしている彼女はとても優しげな表情で語っていた。

  • 3二次元好きの匿名さん23/10/19(木) 20:30:24

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  • 4二次元好きの匿名さん23/10/19(木) 20:30:52

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  • 5二次元好きの匿名さん23/10/19(木) 20:31:14

     「よし、折り終わったな。後は、サインペンで目と口を描き込めば完成だ」
     
     そう言って、彼女はジャック・オ・ランタンとお化けを折った折り紙に表情を描いていく。

    「へぇ、上手いなぁ」

    「感心してないで、手を動かせ。サインペンはこれだ」

     渡されたサインペンでトレーナーがジャック・オ・ランタンとお化けに目と口を描いていく。

    「よし、これでいいか?」

    「ふむ、初めてにしてはなかなかいいじゃないか。ほら、私のと見比べてみろ」

     見せられたエアグルーヴが作ったそれとトレーナーの作ったものと見比べる。

    「やっぱり、エアグルーヴの方が上手いね。目と口とか輪郭とか綺麗だ」

    「まぁ、私は毎年やっているからな。だが、貴様も初めてでこの出来なら上出来だ」

     この作業してからか、彼女から始めて褒められて、少し嬉しくなる。
     
    「よし、じゃあ、描いていくよ」

    「ああ、頼む」
     
     それからは作業に没頭して、集中して描き込んだ。
     時折、彼女が書いたものを真似ながら、バリエーション豊かなものが作り上がっていった。
     完成したのは夕暮れから夜が訪れようとしていた時だった。

  • 6二次元好きの匿名さん23/10/19(木) 20:31:41

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  • 7二次元好きの匿名さん23/10/19(木) 20:32:21

    「……完成!」

    「うむ、上出来だ」
     
    二人で見つめ合いながら頷く。 

    「飾りつけまでする?」

    「いや、暗くなったからな。飾りつけは明日にするか。出来上がったものを、3等分に分けてくれ」

    「分かった」

     そうして、後片付けと並行しながら、ジャック.オ・ランタンとお化けを飾る場所用に3等分に分ける。

     「なぁ、エアグルーヴ?」

     「トレーナー、何だ?」

     「エアグルーヴはハロウィン当日は仮装するのか?」

     ハロウィンといえば、仮装しながらお菓子を貰いに訪ねる風習がある。

    「たわけ、私は羽目を外した生徒が出ない用に取り締まる側だ。取り締まる側が仮装したら、格好つかないだろ」

    「あぁ、おっしゃる通りで」

     正論を返されて、トレーナーはぐうの音も出ない。

  • 8二次元好きの匿名さん23/10/19(木) 20:33:26

    「だが、もしもだ、トレーナー。仮に私が仮装したら、貴様なら何が似合うと思う」

    「えっ!?」 

     彼女からのまさかの質問に驚きを隠せない。

    「たわけ! あくまでも仮定の話だ」

    「そうだよね。……うーん、そう聞かれてもなぁ。グルーヴは何しても似合うからなぁ」

     つい無意識でトレーナーが口にした言葉を聞き逃すことはなく、エアグルーヴの耳は拾っており、少し嬉しいのかこころなしか尻尾がゆれている。
     顎に手を当てて考え込むトレーナー。
     そして、少し悩んでから、絞り出した答えは。

    「……うーん、魔女かな?」

    「ほう、それで理由は?」

  • 9二次元好きの匿名さん23/10/19(木) 20:34:14

    「魔女っぽい帽子を被るだけで魔女っぽくなるから、これなら、忙しいエアグルーヴでも仮装の手間はかからないかなと」

     「このたわけがっ。…ったく、貴様は。私は似合う仮装を聞いているのに、私が仮装する手間のことを考えて、妥協した答えを言ってどうする」
     
    「うっ、ごめん。でも、君の忙しさのことを考えたら、つい。次は、ちゃんと答える」

    「いや、もういい。先程の答えは貴様らしいって、いえばらしいからな。さて、後片付けも終わったから帰るぞ。ほら、トレーナー室の戸締りをするぞ」

    「あ、うん」

     それから戸締りを終わらせて、トレーナー室を後にした。

     仮装の話でトレーナーの返答に呆れつつも、彼女が満更でもない表情を浮かべたのは言うまでもないだろう。

  • 10二次元好きの匿名さん23/10/19(木) 20:52:08

    ハロウィン前ってことで書いてみました

  • 11二次元好きの匿名さん23/10/19(木) 23:20:18

    日常感がすごい好き
    変なの沸いてるけど気にしないで…

  • 12二次元好きの匿名さん23/10/19(木) 23:29:11

    日常良いじゃない
    それはそうと魔女グルーヴはすごくすごいと思う

  • 13二次元好きの匿名さん23/10/19(木) 23:49:13

    何気ない1日って良いよね
    そんな1日が女帝とたわけの何よりの憩いの時間だと思う

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