- 1二次元好きの匿名さん21/12/30(木) 02:16:15
- 2二次元好きの匿名さん21/12/30(木) 02:16:41
男達は一斉に銃を向けたが、少年の表情は変わらない。接着剤で固めたような笑顔に虚ろな眼、安っぽい言い方をすれば人形のようだった。
「名乗れ!」
「...俺を好きに使ってくれよ、なかなかタフだからよ」
「名乗れっつってんだろがよォ!それとも何かァ!?タフって名前か!?テメーはよォ!」
「名前はこの際なんでもいいわ、やぁボーイちゃん。アナタここに何をしに来たのかしら」
先程よりはほんの少し自然な笑顔で少年は答える。
「俺はなんでも屋だ」
一番奥に座る俺がリーダーだと言わんばかりの態度の男が少年を探るように睨む。
「なんでも屋ねェ...生憎だがお前に用はねェよ、他を当たりな」
「そうか?俺は伊達になんでも屋なんて名乗っちゃいないよ」
ポケットから折りたたんだ紙を取り出し、男に投げ渡した。一通り斜め読みし、フゥと息を吐く。
「......なるほど、それで?目的は何だ」
「まァ...金かな」
「...いいだろう、なんでも屋。2つ目の3人目から8人目までを始末してもらおうか」
他の男達が驚き、リストに群がった。そのリストは2グループに分かれており、1つ目は捜査官30人の名簿、もう1つは...民間人12人の名簿だった。
「な、なによこれ...!もしかしてアタシ達を捜査してる連中の名簿!?ど、どこからこれを...!?」
少年はやはり表情を変えずに、抑揚なく笑い、やる気のない音読のように言った。
「ハハハ、なんでも屋だからね」 - 3二次元好きの匿名さん21/12/30(木) 02:17:13
「ソレデ、何故3人目カラ8人目ナンダ」
「そうだぜ、どうせなら全員始末させりゃ良いだろうがよォ?」
乱暴な口調の男は少年をキッと睨む。
「全く信用してねェがな」
「...名前の横に指紋がついているものがあるだろう」
確かに、民間人の上2人と9人目から後の名前と年齢と思わしき数字の後に、ハンコのように指紋がある。
「あァん?...どっかから指紋の情報も手に入れたってことかァ?」
「なんでも屋、見せてやれ」
少年はほんの少し口角を上げて、反対のポケットからシミのついた袋を取り出して投げた。
その拍子に袋のヒモが緩みなかから飛び出したのは...
「ゆ...指...!!」 - 4二次元好きの匿名さん21/12/30(木) 02:17:37
偶然だった。別のクライアントで「好きに使われていた」時に、たまたまその民間人達とハチ合わせることになった。
彼らは探偵やホワイトハッカー、協力を条件に黙認されている犯罪者などだ。現在、違法ドラッグ「ANM-003」を密輸し売りさばいている集団の捜査をしていた。
たまたま、少年のクライアントにハチ合わせ、結果、仕事がパーになってしまった。その報復だ。
ここは兄摩氏2丁目、海沿いにある物流倉庫。大手スーパー「アニマート」へ飲料水などを仕分けする。
「やぁ」
すでに2人始末し、3人目に選んだのは、茶色い短髪の男。コードネーム「あにまんおじさん」...と呼ばれる男だった。
「どうも、なんでも屋くん」 - 5二次元好きの匿名さん21/12/30(木) 02:18:02
姿を見せていない少年へおじさんは問いかける。
「こちらも君に用事があったわけだが...先にそちらの要件を聞いてあげよう」
背後から風が吹き、その行く先でダンッ!!と叩きつける音が鳴る。おじさんの目の前の暗闇から立ち上がるように少年は姿を現した。
「俺の好きに遊ばれてくれよ」
おじさんの真後ろから頭目掛けて金属バットが飛んできた。振り返ることもせずそれを受け止め、勢いを殺さず少年に向けてバットを投げた。
...はずだったが、すでに姿を消している。
それを確認した矢先、上から中身の入ったビール瓶が降り注ぐ。おじさんがベルトのスイッチを押すと足から伸びたワイヤーが勢いよく巻き取られ、引っ張られるように柱へと飛ぶ。
「!...やるね」
ワイヤーを巻きつけた場所にはすでに少年がナイフを構え待機している。
「でも!こっちは知ってたかな?」
おじさんがもう一度スイッチを押すと次は腕から伸びていたワイヤーにより、石の柱の一部が引っ張られ少年の後頭部に直撃し、構えていたナイフが手から離れた。
猛スピードで飛んできたおじさんの蹴りを喰らい柱に背中を強打。少年は前のめりに倒れた。 - 6二次元好きの匿名さん21/12/30(木) 02:18:37
だが、そのままの体制で強く柱を蹴り距離を取った。おじさんは無理な体制で蹴りを入れたため受け身を取れず柱にぶつかり、一瞬悶絶する。そして、今度は中身の入った大量の酒紙パックがパレット(倉庫で使う荷役台)ごと落ちてくる。
...5つほど。
「流石にそれはヤバくないかーッ!?」
ズドドーン!!バシャ!!間違いなくおじさんへ直撃。酒と共に血が広がった。
「ま、まさか、こんなおっさんに、ここまでやられるとは...」
脚が震え、後頭部から血がにじむ。後数分早ければ、さきほど食べたシャケおにぎりを戻す所だった。タフだと自負するだけあって、10トントラックくらいになら轢かれてもなんともない少年だったが、HPゲージがあるとすれば3分の2は持っていかれた。 - 7二次元好きの匿名さん21/12/30(木) 02:18:59
「...同じく、まさか君みたいな少年にここまでやられるとはね」
ソイヤッ!とパレットを持ち上げ...血まみれのおじさんが登場した。
「ふ...不死身かよ、アンタ...!!」
「フフ、なんだ、そんな顔もできるじゃないか」
少年のコチコチフェイスは大量の汗と共に固定剤が流れ落ちたように柔軟に変形し、笑顔が消え、恐怖に満ちていた。
「い、一体どれくらいの重さがあると思ってるんだ!?な、なんで動けるんだよッ!!」
「いやね、おじさんもビックリ!意外とイケるもんだね」
しかし、飄々としつつも、立つも一苦労といった様子だった。
「お互い千鳥足だけど、お酒のせい...ってワケじゃなさそうだね...君、未成年に見えるし」
フラフラながらも両者が構えると...
「オイオイオイオイ、なんだァ!?その有様はよォ!」 - 8二次元好きの匿名さん21/12/30(木) 02:19:30
「お前達は...!」
4人の男達が銃を構えて現れた。
「実はね、用済みになったらボーイにも死んでもらうつもりだったのよ」
「俺タチノ事ヲ知ッテイル野郎を生カシテオクワケニハ、イカナイカラナ」
「だが厄介なあにおじをここまで弱らせりゃ十分ってもんだろ、アァン?」
「そういうわけだ、なんでも屋。あの世で閻魔様にでもこき使われていな」
少年とおじさん、それぞれ2丁づつ拳銃が向けられる。
「...なぁ少年、一時休戦といかないかな」
「...一時どころかおっさんと戦う理由はなくなったな」
「ならここから切り抜けるプランがあるんだけど、乗ってくれるかい?」
「あぁ......俺を好きに使ってくれよ」
終わり - 9二次元好きの匿名さん21/12/30(木) 02:28:07
何もんだよタフ君
- 10二次元好きの匿名さん21/12/30(木) 02:31:35
二人ともクソかっこよくて笑った
- 11二次元好きの匿名さん21/12/30(木) 02:54:25
タフななんでも屋
- 12二次元好きの匿名さん21/12/30(木) 14:26:42
コードネーム: TOUGH
か… - 13二次元好きの匿名さん21/12/30(木) 19:26:52
やあ君だったりタフ君だったりしろ
- 14二次元好きの匿名さん21/12/31(金) 07:12:22
謎のクオリティ