- 1マーベラスハロウィンデー23/11/01(水) 21:59:18
「トレーナー!トリックオアトリート☆☆★」
10月31日俗にいうハロウィンの日の穏やかな昼下がり。いつもより幾分パワーを増したにぎやかな声がトレーナー室に響く。
ドアを開けて入ってきたのはマーベラスサンデー。俺が担当しているマーベラスなウマ娘だ。その顔に浮かぶ満面の笑顔に、思わずこちらも笑顔になる。
「マーベラスは今日もマーベラスだね。ハッピーハロウィン」
そういって用意しておいたお菓子を渡すと、受け取ったマーベラスは、不思議そうな顔でじっとそのお菓子を見つめる。
「トレーナー。…もしかしてこれ…」
どうやら気づいたようだ。
普段は料理もろくにしない俺だけど、せっかくならマーベラスに喜んで欲しいと思い、手作りのお菓子を作ってみたのだ。作ったのは星形に型抜きしただけの簡単なクッキーだけど。
「そうだよ。作ってみたんだ。ちゃんと味見もしたし、成功したやつしか入れてないから、味は悪くないと思うよ」
一瞬マーベラスはうつむいた。その様子に声をかけようとした次の瞬間……
「マーベラーーーーース!!!☆★☆★☆」
響く声とともに周囲の空気が変わった。どうやらマーベラス空間が展開されたらしい。
「こんなにも素敵なマーベラスに出会えるなんて☆やっぱりトレーナーはマーベラスだね☆☆★」
テンションが上がったマーベラスが、満面の笑顔を浮かべながら早口でまくしたてる。
「今日はね、朝からドキドキワクワクでマーベラスがいっぱいだったの☆学校も街も、すれ違う皆も楽しそうで、とってもとってもマーベラスなの☆
そしたら、トレーナーからもっと素敵なマーベラスをもらっちゃった☆★☆」
「喜んでくれてうれしいよ」
そのままマーベラスは俺の手を取ると、外(外なのか?マーベラス空間だからよくわからないが恐らく外だろう)に向かって駆けだした。
「さぁさぁ!トレーナー!もっともっと素敵なマーベラスに出会いに行こう☆★☆★」
「そうだな。今日もマーベラスな一日にしよう」
「マーベラス☆」 - 2マーベラスハロウィンデー23/11/01(水) 21:59:57
というわけでいろんなハロウィンシチュのお話が見たいな、と思い建てたスレです。
いくつか投げてくので、読んだ方もぜひに。 - 3マーベラスハロウィンデー23/11/01(水) 22:00:26
「トレーナーさん!トリックオアトリート!」
「待ってたよ。はいこれ。ハッピーハロウィン」
「わぁ!ありがとうございます!」
用意していたお菓子を渡すと、満面の笑顔をみせるスペシャルウィーク。
「今日は休養日だけど、この後どうするんだい?」
「後でみんなで集めたお菓子を持ち寄ってパーティーしようってなってます!私ハロウィンパーティーなんて初めてだから楽しみで♪」
「それはよかった。じゃあ、こっちも持っていって、みんなで食べるといい」
他の同期の子たちに声をかけられた時のために用意しておいた予備のお菓子を渡す。どうやらこの後集合するようだし、ここでスぺに渡しておいた方がいいだろう。
スぺは「こんなにいいんですか!?」と少し戸惑いを見せるが、俺がうなづいて見せると「……えへへ、ありがとうございます」と素直に受け取る。
普段なら食べすぎ注意!と言いたくなるところだが、せっかくなら楽しんで欲しい。初めての楽しい行事ならなおさらだ。
「戻る前に少し、時間はあるか?」
「あ、はい。大丈夫だと思います。なんですか?」
「今日は特別にこれも用意したんだ」
そういって、有名な高級店のケーキを差し出す。以前、テレビを見ながら食べたいと言っていたものだ。
「これ……っ!あのお店のっ!?いいんですか!!?」
「もちろん。先週のレースも頑張っただろう?ご褒美だよ」
「ありがとうございます!すっごくうれしいです!」
「あ、でも、これはこの一個しかないから、ここで食べていってくれ」
「わかりました!…え?ひとつですか?」
「そうだけど?」
そう言うとスペシャルウィークは難しそうな顔をしてうなりだした。こういう表情にも愛嬌があるのは、彼女の大きな魅力の一つだろう。ころころ変わる表情は飽きる気がしない。
などと思いながら、彼女を見ていたのだが…
「トレーナーさん、もしよかったら……一緒に食べませんか?」
そういって上目遣いでこちらを見る彼女の表情に、思わずドキリとさせられてしまうのだった。 - 4マーベラスハロウィンデー23/11/01(水) 22:00:57
「トレーナーさん、こんにちは。……トリックオアトリート」
「こんにちは、スズカ。それと、ハッピーハロウィン」
「ありがとうございます。……ふふつ」
お決まりの挨拶にお菓子を渡すと、スズカは楽しそうに笑っていた。
「何か面白いことでもあったのか?」
「いえ、……少し前まで、こういうことをするなんて考えていなかったですから」
「そうだね。スズカがこういうイベントごとに積極的に参加するのは珍しいと俺も思うよ」
「そうなんですか?」
「あぁ。スズカは走ってばかりだからね」
「そんなことは……」
「ないって言えるかい?」
「……あるかもしれませんね」
「……」
「「……ふふっ」」
一瞬の沈黙の後、二人同時に噴き出す。
「いいさ。走るのが好きなら、思う存分走るといい。それがスズカだし、そんなスズカだからこそ、俺は支えたいと思っているから」
「はい。よろしくお願いしますね、トレーナーさん。……ところで、トレーナーさんは今お忙しいですか?」
「いや、ちょうど仕事も一段落ついてるし、何かあるなら付き合うよ」
「それじゃあ、少し休憩しませんか?ちょっといい紅茶をもらったので。ちょうど美味しそうなお菓子もありますし」
「いいのか?それならありがたくいただくよ」
そうしてスズカと二人、穏やかな午後のティータイムを楽しんだ。
「トレーナーさんと一緒なら、こういう時間を過ごすのも、楽しいですね」
スズカはそういって、少し悪戯っぽく笑うのだった。 - 5マーベラスハロウィンデー23/11/01(水) 22:01:24
「ふぅ…」
「お疲れ様、トレーナー」
休憩用の一室で、大きなため息をついた俺を、くすくすと笑いながら、楽しそうに見るファインモーション。
今俺とファインは、大使館で行われた非公式のハロウィンパーティーを終えたところだった。
『トレーナー。ハロウィンの日は私に、エスコートさせてくださる?』
ハロウィンを目前にしたある日、そう言われて予定を開けておいたところ、大使館への連れてこられたのだった。
パーティー自体はごく少数で楽しむ食事会といった様相で、豪華な料理に舌鼓を打ったり、アイルランド伝統のゲームをしたりして楽しい時間を過ごすことができた。
以前に訪問していたこともあり、前回よりは余裕があったのもよかったのだろう。
しかし、やはり緊張感は残っているもので、気を抜ける場所を用意してもらえたのはありがたい。
「パーティーって言うからどんな盛大なものなのかと思ったけど、少人数の食事会で正直助かったよ。以前みたいなパーティーだったら料理の味もわからないところだった」
「あはは。そんなキミも見て見たかったな」
「勘弁してほしいな。…でも、今日はどうして俺を誘ってくれたんだ?」
誘ってもらえたのは嬉しいが、いささか場違いではなかっただろうか。そんな居心地の悪さから、思わず質問をする。
「……アイルランドではね、ハロウィンの日は、家族で集まって、いろんなゲームをしたり、食事を楽しんだりするんだよ」
そう言ってほほ笑むファインを見たら、なんだかわかった気がした。
「キミにね、知って欲しかったんだ。ハロウィン発祥の地のアイルランドで、私たちがどんな風にして過ごしているのかを」
出自の違う自分たちの、そのルーツを分かち合う。その相手に自分を選んでくれたのが、とても嬉しかった。
「ありがとう、ファイン。君の国のことを教えてくれて」
「ふふっ。どういたしまして」
そうしてしばらく二人で、アイルランドのことや、自分の故郷のことなど、いろんなことを語り合った。 - 6マーベラスハロウィンデー23/11/01(水) 22:01:48
***
しばらくして、ボーン、ボーンと、柱時計の鐘の音が響いた。そろそろよい時間なので帰る支度をしなければならない。
そう思ってファインを見ると、いたずらっ子のように怪しい笑みを浮かべたファインが、膝の上に飛び乗ってきた。
「ファイン!?何を──」
慌てておろそうとしても、首に回された腕は力強く振りほどけそうもない。
仕方なくなすがままになっていると、ファインは耳元で話し始めた。
「あのね、トレーナー。私はアイルランドのハロウィンを知って欲しいとは思っているけれど、それを押し付けるつもりはないの。日本にいるなら、日本式の楽しみ方をするのも、とても大切で素晴らしいことだと思うんだ」
まずい──そう思っていると、例の言葉がささやかれた。
「トリックオアトリート」
やられた。持ってきていたお菓子は、パーティーのホストへのお土産として渡してしまっている。
「あなたはどんな”いたずら”がお好みかしら?」
そう言って、俺の顔を覗き込んだファインは、とても妖艶に笑うのだった。 - 7マーベラスハロウィンデー23/11/01(水) 22:02:18
「トレーナーさん、準備はよろしいですか?」
「ああ」
「それでは…」
「「トリックオアトリート!!」」
トレーナー室で、二人の声が重なる。その言葉を合図に、二人同時に、用意したお菓子の包みを相手に差し出す。
「ありがとうございます、トレーナーさん」
「こちらこそありがとう、フラッシュ。……やっぱり、なんだか緊張するな」
「何か緊張することがありましたか?」
「素人の手作りのお菓子をプロ直伝の技術を持つ君に食べてもらうわけだからね」
きっかけはハロウィンを目前に呟いた一言。
日々練習に打ち込むフラッシュに、何かご褒美的なものを用意したいと思っていたたところ、TVのハロウィン特集が目に飛び込んできた。
そこで、『お菓子を作ってみようかな』と呟いたのを、どうやらフラッシュは聞き逃さなかったらしい。
『お菓子を作るのですか?トレーナーさんが?』と目を輝かせてこちらを見る彼女に、逃げ道を封鎖されてしまったのだ。
そして、彼女の何かに火が付いたのか、『せっかくですから、お互いにお菓子を作って交換会をしましょう。ハロウィンの時期ですし、ちょうどよいかと』と言い出し、交換会をすることになったのだった。
「そんなにかしこまらないでください。私はとても楽しみだったんですから」
「楽しみ?でも素人の手作りだよ?中身も簡単なクッキーだ」
「はい、とても楽しみでした。ほかならぬトレーナーさんの手作りですから」
「──っ!」
「トレーナーさんはどうでしたか?」
「もちろん、楽しみだったよ。それに──」
「それに?」
「初めての手作りを君に食べてもらえることは、とても特別に感じられるからね」
「……っ!」
「それじゃあ、一緒に食べようか。飲み物も用意できたよ」
「はい。……それでは」
「「ハッピーハロウィン」」 - 8二次元好きの匿名さん23/11/01(水) 23:24:36
素晴らしいSSじゃないか
- 9二次元好きの匿名さん23/11/01(水) 23:33:55
- 10二次元好きの匿名さん23/11/01(水) 23:39:11
もっと伸びろ
- 11二次元好きの匿名さん23/11/01(水) 23:39:20
ハロウィンよくばりセットいいぞ
- 12二次元好きの匿名さん23/11/02(木) 01:12:09
死ぬな
- 13マーベラスが枯渇した23/11/02(木) 01:16:53
ゴルシのハロウィンエピソードで、トレーナーの心技体三種を鍛える特訓→各国の代表が登場する世界ハロウィン大会→ハロウィンファイトレディーゴー!→俺たちの戦いはこれからだ夢オチ→特訓の成果がトレーナー室にあるって話を書こうとしたが、ボーボボ力が尽きたのでネタだけおいて失礼する。