- 1二次元好きの匿名さん23/11/03(金) 21:43:37
- 2二次元好きの匿名さん23/11/03(金) 21:47:48
「仕事が不満かね?」
「不満と言うより合点がいきません。なぜここ数日にわたって、海軍は新世界の海をエレジアへ向かう民間人の船を海軍で護衛したのですか。我々が護衛しなければ民間人は会場にたどり着くこともできず、ライブはできなかったはずだ」
「良い働きだったよ、旅客船を海賊から守った君の働きはとても新兵には見えなかった」
「はぐらかさず質問に答えてほしいのですが」
「ライブ…能力の始動まではまだ時間がある。自分で考えてみるかね?それとも説明を聞きたいかい」
「昨晩夜通し考えましたがわかりませんでした。なぜこのライブを決行させるのか。拝聴したく存じます」
「そうか、道理でクマがすごいのか…説明してあげるから仮眠しなさい」 - 3二次元好きの匿名さん23/11/03(金) 21:48:07
君はこの船の所属で良かったね。
全艦隊が本作戦の真の目的を知らされているわけではないから。
あの会場にいる無辜の市民全員の命を危険な賭けに晒しても、このライブが始まらねば達成できない使命がある。 - 4二次元好きの匿名さん23/11/03(金) 22:01:06
君なら作戦要綱は全て読破し頭に入れているだろう。トットムジカのことはどう書かれていた?歌の魔王。歌を愛する人々の負の想いの集合体。まぁその程度しか書かれていなかっただろうな。
おかしいと思わないかね。あまりにも抽象的で掴みどころのない説明だと。
おかしいところが他にもある?はい、言ってごらん。
そうだね。トットムジカが何であるにせよ、異様なまでにウタウタの実の能力に依存した存在だ。ウタウタの能力者が禁忌の曲を歌わなければ活動できない。超常的存在であれ人が作った兵器であれ、特定の悪魔の実がトリガーになるのは何か不自然だろう。 - 5二次元好きの匿名さん23/11/03(金) 22:01:25
トットムジカは別に魔界から来た何者かではない。
昔のウタウタの実の能力者が作り出してしまったものだ。我々は…ウタにライブを決行させ、トットムジカ始動に追い込み、トットムジカをこの世から処分することを、この作戦の真の目的としている。
これは、「いつか達成できる日が来たら直ちに行ってほしい」と、300年前から託されている願いでもあるんだ。 - 6二次元好きの匿名さん23/11/03(金) 22:09:15
頑張ってください
- 7二次元好きの匿名さん23/11/03(金) 22:11:38
昔からこの世界に平和や平等はなかった。君は大航海時代より前を知らんだろうが、その前からずっとこの世界には格差も戦もあったんだ。
そんな世界で、ある国が他国によって滅ぼされた。よくあることだ。国民は大半が殺され、生き残りは奴隷として売られた。
奴隷の中にソンという子どもがいた。ソンは親と共に敵国の貴族に買い取られた。
奴隷など当時もろくな扱いを受けなかっただろうが、ソンには少しだけ神から与えられた加護があった。とてつもなく美しい歌声を持っていたらしい。ソンは奴隷生活の中でも歌い仲間を慰めた。そしてその主人たる貴族さえ、ソンの歌声に聞き惚れ、ソンを飾り立てて他の貴族に自慢するようになった。
主人はソンに音楽を学ばせた。そしてその歓喜の歌声を損ないたくないばかりに、奴隷たちの境遇をだいぶ良くしたと言われている。少しだけ運の良い奴隷だったのだ。 - 8二次元好きの匿名さん23/11/03(金) 22:12:13
だが途方もなく美しい声を持った奴隷の噂は知れ渡り、国王がソンの身柄を差し出すよう主人に命じた。主人はかなり惜しんだが、王命とあっては逆らえない。主人は、ソンをその親と一緒にいさせてくれるよう王に頼み込んで、王に引き渡した。
王は入手していたウタウタの実を食べるようソンに命じた。ウタウタの能力は、使いこなせれば戦争も統治も随分容易くなる。二代前からこの国の王はウタウタの能力を負うにふさわしい人間を求めていた。 - 9二次元好きの匿名さん23/11/03(金) 22:17:27
ソンは嫌がった。歌はソンにとって人を攻撃したり支配したりする道具ではなかった。親もソンを守ろうとした。しかし王にとって親は不要だった。ソンは目の前で親を殺された。このことが後のソンにどれだけの呪いを負わせたか。
- 10二次元好きの匿名さん23/11/03(金) 22:17:49
ソンはウタウタの実を食べさせられ、王国の兵器として修業させられることになる。ソンの歌声は戦場で敵兵を歌世界に引きずり込んで無力化し全滅させ、民には歌世界で無限の幸福を与え王への忠誠心を植え付けた。
- 11二次元好きの匿名さん23/11/03(金) 22:17:52
見てます
- 12二次元好きの匿名さん23/11/03(金) 22:19:07
それでもそんな日々すら長くはなかった。歌声を武器とする王国の噂を聞いて天下ってきた天竜人がソンをあっさり没収してしまったから。なお抗議した罪で王は処刑され、王国は内戦の果てに滅んだ。
マリージョアに連れていかれたソンは、戦争に加担させられることもなく、ただ天竜人オランテ聖とその客人たちのために歌うばかりだった。だがこの頃にはもうソンの内面は取り返しがつかないほどにボロボロだったのだろう。ソンは何度か自死を試みている。一度はレッドラインから投身しようとさえしたとのことだ。オランテ聖がソンにつけた護衛に毎回止められソンは自由にはなれなかった。 - 13二次元好きの匿名さん23/11/03(金) 22:20:41
天竜人と共にいたことで、ソンはこの世界の醜悪な構造を否応なしに知っていく。ソンは自分の身の回りにいる人間を歌世界で癒すことを自分への慰めとしたが、声の届かない距離に対しては何もできないし現実世界は変わらず理不尽だ。何不自由ない生活はかえってソンを苦悩に追い込んだだろう。無数の絶望や怨嗟に触れていくなかで、ソンの内面にはあまたの(tot)歌(musica)が蔓延っていった。
- 14二次元好きの匿名さん23/11/03(金) 22:24:15
オランテ聖はこの奴隷を気に入っていた…多分本心から気に入っていたのだろう。愛し方が歪んでいたというか、人間が人間に対し抱く愛情ではなかったとしても。オランテ聖はソンが声変わりを迎えることも、やがては老いて死ぬことも疎んだ。オランテ聖はオペオペの実を入手してソンに不老手術を受けさせた。執刀したのはソンの専属医。ソンにとってはマリージョアの数少ない親友だったが、本人は命を差し出せるくらいにソンを崇拝していたらしかった。
親友に裏切られて死なれた形で、ソンはこの醜悪な世界から永遠に逃げられない体になってしまった。 - 15二次元好きの匿名さん23/11/03(金) 22:32:35
歌によって救われる自分は歌によって呪われる。歌によって人を慰められるのに歌によって人を破滅させていく。この絶望でソンは発狂する。
ソンは片時も休まず歌い続けた。これはソンにとって唯一可能性があった自死の手段だったんだ。普通ウタウタの能力者はとてつもなく体力を消費して眠りに落ちるし、眠らなければ死に至る。ソンは眠らず歌うことで死が訪れるのではないかと思ったのかもしれない…が、不老不死の呪いは覆らなかった。ソンは繰り返し深く深く絶望する中で、歌世界と現実世界をつなぐ特異点を生み出した。ソンは歌世界から現実世界へ干渉できる段階へ覚醒してしまったんだよ。 - 16二次元好きの匿名さん23/11/03(金) 22:40:39
正気を失ったソンは、理想のままに誰もが幸福でいられる歌世界が現実世界を塗り替えてくれることを願い、ただひたすらにむごたらしい現実世界を破壊できる力を欲した。それが、特異点に破壊的能力を与えた。それがトットムジカの前駆体だと言って良い。
特異点に呑まれたソンはマリージョアで暴れた。当然武力による鎮圧が試みられたが、特異点はこの世界からどれだけ攻撃しても無力化できなかった。君も知っているだろう、あれは歌世界と現実世界の両方から同時に攻撃しないと無意味だ。 - 17二次元好きの匿名さん23/11/03(金) 22:42:09
特異点は、現実世界のソンの身体を守る衛兵を薙ぎ払い…不老不死と化した自分の肉体を焼き尽くした。正気を失う前のソンにとってまず何よりも破壊したかったのが、この醜悪な世界に永遠に呪縛される自分の肉体だったのだろう。
しかし期してか期せずか、これは悪魔の実の能力の仕組みを考えると最悪手だ。能力者が能力によって起こした現象は、能力者が死んでも消えない。ソンは歌世界に不死の自分を残したまま死に、しかしソンが生前に能力で作り出した現実世界に対する破壊願望の権化はこの世に残る。こうして不死の暴走体、あまりに多くの人間の絶望の歌を吞み込んだ「トットムジカ」が完成した。 - 18二次元好きの匿名さん23/11/03(金) 22:56:03
荒れ狂うトットムジカは赤い大陸から飛び立って慟哭と怨嗟の歌声を撒き散らした。トットムジカが飛ぶところ人々はバタバタと昏倒して幸せな夢に溺れていった。むしろ民間人が救済を求めてトットムジカを追いかけていったとの記述もある。全世界の人間がその声を聞いてしまえばもう取り返しがつかなくなる。なるはずだったんだが、ある島に到達したところでトットムジカは動きを止めた。
- 19二次元好きの匿名さん23/11/04(土) 00:04:30
歌世界でオランテ聖がソンを必死に説得していたらしい。ソンは特異点に呑み込まれていたが、オランテ聖の呼びかけにわずかに正気を取り戻した。多少オランテ聖を敬愛していたのか、あるいは自分の破壊的行動が「奪われる者」を増やすばかりだと気づいたか。ソンは狂奔の道中に呑み込んだ人間の精神を解放することには同意したが…また我を失えば暴れ出すだろう自分を、もう、自分も他の誰もどうにもできないことを悟った。せめて動けないように封印するしかできない。
- 20二次元好きの匿名さん23/11/04(土) 00:06:41
ウタウタの実の能力のひとつに、音階拘束がある。歌世界内で能力者が行使する拘束技だ。それぞれの人間の精神に固有の「適切な音程」を見つけ出すことで動きを封じる。正確にその音程を発声しない限り拘束は解けない。
ソンはこれをトットムジカそのものに対して行った。無数の歌声、無数の魂の怨嗟から成るトットムジカを完全に拘束するには、かなりたくさんの音を要した…それが、楽曲Tot Musicaを構成した。歌世界と現実世界で同時にこの曲を絶唱し、歌世界で生成された楽譜が現実世界に顕現する形で…ソンはトットムジカの封印に成功したんだ。 - 21二次元好きの匿名さん23/11/04(土) 00:29:50
ソンは遺言をオランテ聖に託した。歌世界において音階拘束は破壊不能だったが、現実世界に物体として存在する楽譜は破損しうるものだ。そうなればトットムジカの封印は解けてしまう。
楽譜を破壊から守り、経年劣化して楽譜が消える前に、ウタウタの実の能力者で、しかもこの曲を歌い上げられる者を見つけ出してほしい。その者の力を借りて、歌世界と現実世界の両方から破壊せねば、トットムジカそのものは消えない。自分が次にトットムジカに呑まれ自我を失ったのちには、トットムジカは寿命も理性もない能力者の能力残滓としてただ世界を破壊しようとするだけだ。 - 22二次元好きの匿名さん23/11/04(土) 00:33:04
ソンは歌世界から全ての人を解放した。
マリージョアで目を覚ましたオランテ聖が以上の内容を告げ、そして「トットムジカが動きを止めた島」の捜索が始まった。そこには絶対に紛失してはいけない楽譜がある。
その島がここ、エレジアだ。オランテ聖の指示でエレジアは音楽の都として発展した…禁忌の楽譜を軍事利用しようとするあらゆる勢力から守り封印するための城塞、そしてウタウタの実とトットムジカの研究、いつかトットムジカの解体に携わることのできる人材を育成する、音楽の要塞国家。 - 23二次元好きの匿名さん23/11/04(土) 00:34:57
そして、彼が愛した奴隷の墓所。魂が解放される日までのソンの居場所。
その国がせめて、ソンのためにも音楽で溢れていてほしい。
300年前。オランテ聖は未来に対して、いつかその能力を持つ者が再び世に現れたときにはどうか、自分が不老不死の呪いを負わせ化け物に変えてしまった奴隷を解放してほしいと願い、マリージョアを去った。 - 24二次元好きの匿名さん23/11/04(土) 01:46:36
「その要請に応える千載一遇の機会であると」
「そうなるな」
「300年前の天竜人のお願いのために、今生きている人間をライブ会場で危険に晒すんですか?映像電伝虫で会場外の人間まで巻き込まれる可能性もありますが」
「天竜人の要望であるかどうかは今は重要ではない。兵器トットムジカの解体のためにはやらせるしかないんだよ、あのライブを。…そしてウタをTot Musicaを歌う状況に追い込むしかない。それがパンゲア城の意思だ。エレジアを滅ぼした惨禍には十中八九ウタが関わっている。…TotMusicaを歌える人間がエレジアにいる、今を逃せば次は何百年後になるかわからない。楽譜がそれまでもつかどうか」 - 25二次元好きの匿名さん23/11/04(土) 11:06:55
「天竜人の要望であるかどうかは今は重要ではない。兵器トットムジカの解体のためにはやらせるしかないんだよ、あのライブを。…そしてTot Musicaを歌う状況に追い込むしかない。それがパンゲア城の意思だ。エレジアを滅ぼした惨禍には十中八九ウタが関わっている。…TotMusicaを歌える人間がエレジアにいる、今を逃せば次は何百年後になるかわからない。楽譜がそれまでもつかどうか」
「プリンセス・ウタに事情を説明してもっと安全にトットムジカを展開させ解体することはできないんですか?」
「できなかったようだ。さらに悪いことに、交渉のために接触したことでウタは海軍の干渉を警戒している」
「…」 - 26二次元好きの匿名さん23/11/04(土) 12:29:33
「納得していないね」
「ええ。自分は民間人を海賊どもから守るために働けと連れてこられたわけですが、実際のところこれからやろうとしてることは何ですか。トットムジカを処分する機会を逃さないためなら、今から巻き込まれる民間人の犠牲も厭わない。…改めて海軍も世界政府も何もかもクソだなと」
「新兵らしい感受性だ。昇進するまではどうかそのままでいてくれ。昇進しても内心にその火を絶やさずいてくれ。…さぁ、温かいものでも飲んで少し仮眠しなさい。ライブ開始まであと二時間だ」
「イェッサー」 - 27二次元好きの匿名さん23/11/04(土) 12:55:54
手のかかる新兵も寝付いたので、中将は波の向こうのエレジアを見つめた。
…ソン。今も君はずっとトットムジカの無限の絶望の歌の中に独りでいるのか。
傑出した才能がいつも時代の犠牲となってきた。犠牲を出してしまうような構造の世界なのだ。
新兵に言わずにおいたことがある。
今回のトットムジカ解体作戦が成功裏に終わるとしたら、つまりそれはウタウタの能力者が体力の限界を超えて歌世界を維持するということである。あの島には不眠のキノコが生えている。舞台装置は全て揃ってしまった。今代のウタウタの実の能力者はおそらく生き残らないつもりでいるし、我々はそれに便乗しようとしている。 - 28二次元好きの匿名さん23/11/04(土) 14:58:52
トットムジカの解体が成功しなかったとしたら、滅ぶのは世界の方か。それはおそらくソンが望んだこと、そして心の奥底ではどうにかして回避したかったこと。
何が正しいのかわからない。正義とは何かを断言するにはあまりにこの世界は複雑になりすぎた。
いずれにせよ…本作戦への参加を希望したときから決めている。今代のウタウタ能力者の若者を死に追いやるとしても、300年前に果たされなかったソンの解放を果たしてやりたい。下界降下した天竜人を祖先に持っていると知った時点で、これは自分にとっても呪いとなった。
中将は顔を上げた。
もうすぐライブが始まる。 - 29二次元好きの匿名さん23/11/05(日) 00:17:17
面白いです!続き待ってます!!
- 30二次元好きの匿名さん23/11/05(日) 01:27:00
ゆりかごで宣伝してた「なんだあんたも寂しかったんだね」ってウタに言われるキャラを生やすスレってここ?
- 31二次元好きの匿名さん23/11/05(日) 01:28:49
- 32二次元好きの匿名さん23/11/05(日) 10:35:09
- 33二次元好きの匿名さん23/11/05(日) 21:54:48
保守
- 34二次元好きの匿名さん23/11/06(月) 09:47:30
魔王の中に魂が囚われてるのか
- 35二次元好きの匿名さん23/11/06(月) 09:56:37
なんか勘違いしてるっぽいけどゆりかごは最初から宣伝目的のスレじゃないよ
過去に落ちたスレのリンク張ってこのスレの概念で書きました、ってのはあるけど現行のSSスレの宣伝なんてやってた事はない
唯一現行が貼られたのも書き方とかのアドバイスがほしいってやつだけ
- 36二次元好きの匿名さん23/11/06(月) 18:29:39
このレスは削除されています
- 37二次元好きの匿名さん23/11/07(火) 01:13:31
保守
- 38二次元好きの匿名さん23/11/07(火) 12:43:47
保守
- 39二次元好きの匿名さん23/11/08(水) 00:42:38
保守
- 40二次元好きの匿名さん23/11/08(水) 07:24:00
保守
- 41二次元好きの匿名さん23/11/08(水) 14:00:30
- 42二次元好きの匿名さん23/11/08(水) 22:05:46
ありがとうございます。
映画を見ていて、「なんで一般人が新世界の海を航行できたんだろう…」「なんでワンピース世界に魔王がいるんだろう…」とか思ったところの辻褄を合わせてみたくて書きました。(むしろ五老星の言動とは完全に矛盾した話になりますが)
ここから先の展開として、
①映画内正史を踏襲する(ライブが始まり最終的にウタが死ぬまでをワールド外から)
②映画内正史と別ルートを展開する(本SSの設定で、ダイスと安価で進む)
どっちでいこうか悩んでいます。 - 43二次元好きの匿名さん23/11/09(木) 09:53:18
- 44二次元好きの匿名さん23/11/09(木) 21:35:12
魔王の中にはかなりの人の魂が囚われてそうだよね…
- 45二次元好きの匿名さん23/11/10(金) 00:25:04
『ライブ開始時刻30分前です』
艦内放送電伝虫から、伝声管から。誤ってはいけない一瞬が迫っていることを告げる声が響いた。
「総員、イヤーマフ最終確認」
中将は電伝虫を持ち上げ指示を発した。応答の声が各部隊隊長から次々に返る。一番隊よし。二番隊良し。三番隊良し。医療班良し。狙撃部隊良し。機関操縦員良し…。
「アルツェヒト中将」
走り寄ってきた海兵が敬礼して中将に問う。「ミヴさん達をそろそろ起こしてよろしいでしょうか」
「もう少し寝かせてあげたいが…頃合いだね。いいよ、私が起こそう。ちゃんと起こすのは難しいから」
海兵たちの休憩室として作られたその部屋だが、今休んでいるのはただ一人だ。部屋の真ん中の長椅子で、新兵が一人寝ている。その側の机には大量に電伝虫が並べられていた。その中の映像電伝虫は、今まさにエレジア各地の様子を受信し、壁に投影して中継していた。霧のエレジアは視界が悪く、ライブの始まりを待つ観衆のざわめきばかりが細波のように聞こえている。
制服制帽の海兵たちが壁際に直立して待機している中、中将は自ら長椅子に歩み寄った。長椅子で寝ている直属の部下の肩を軽く叩く。
「ミヴ。仕事の時間だ、ミヴで起きなさい。ミヴ」
「ミヴは留守」
「ダメ。ミヴ起きなさい」
声を荒げず、しかし有無を言わせず声をかけ続け、数分後、まどろみから引きずり出された部下が長椅子の上で背伸びをした。
「よく眠れたかね、とも聞きにくいほど短い仮眠ですまないが…うん、おはよう。ちゃんと起きてくれてありがとう、ミヴ」
「いや。新兵へのご配慮、感謝申し上げる」
ミヴと呼ばれた海兵はもう一度思い切り背伸びをしてから長椅子の上で上半身を起こした。新兵と呼ばれたが、下級海兵に義務付けられた制服制帽は身に着けていない。私服と思しき白のウェア、一般海兵と同じ青のタイを大雑把に首に巻いている。 - 46二次元好きの匿名さん23/11/10(金) 00:46:46
海兵ミヴは長椅子の上で胡坐を組む。「作戦に変更はないのだな?」
中将は「あぁ。今朝の会議の最終確認の通りだ。しっかり頼むよ」
「承る。Dr. ハルは?」
「待ち侘びてもうこちらに来るだろう」
『ライブ開始15分前です』
艦内放送とほぼ同時に、蹴破るような勢いで船室のドアが開けられた。
「遅い!やはりここか、この親バカ中将!」
白衣の女がつかつかと部屋に入ってきた。「甘やかしがすぎる!ギリギリまで寝かせようとするな。私がウタなら敵対勢力の出鼻をくじく奇襲として予告時間より早く歌いだすことも考えるぞ!」
「すまないねハル」
中将は鷹揚に言った。「だが君も知っての通り、本作戦はミヴ達に十分な気力あってこそのものだ」
白衣の女は何か言いかけたが、時間を惜しんだらしく、無言のままガラの悪い表情で長椅子の側まで近寄った。海兵が素早く駆け寄ってスツールを置く。女はスツールにどさっと腰を下ろした。深呼吸をして、中将相手に荒げた声を落ち着けてから口を開いた。
「お前はミヴか?」
「あぁ、いかにも」
「そのかわいげのなさなら大丈夫そうだね。…いいかミヴ、手順を誤るな。本艦の作戦の肝はお前たちだ。このあと私たちは聴覚を封じる」
「承知した」
海兵ミヴは微笑んで目を閉じた。穏やかな表情のまま、首がカクンと前に倒れる。白衣の女が平手打ちを用意するかのように右手を肩から振りかぶった。固唾をのんだ一瞬の後、海兵ミヴはぐらっと上体を傾がせながらまた顔を上げた。
「ハル先生。ぶたないでいいですよ。行けます」
「間違いないね。…武運を祈る。お前のウェーバー船は射出機にある。必ずここで会おう」
「はい」
白衣の女は胸ポケットから耳栓を出し、耳に詰めた。肩にかけていたイヤーマフで耳を覆う。電伝虫を三匹つまんで脇に寄せ、筆談用のノートをテーブルに置いた。目を閉じ、イヤーマフの上に更に手を被せた。 - 47二次元好きの匿名さん23/11/10(金) 07:28:50
『ライブ開始5分前です。放送室も防音体勢に入ります』
中将、一般海兵、室内の全員が耳栓とイヤーマフを装備した。無音になってから、中将は海兵ミヴの首元を指さした。海兵の制服と同じ青いタイが巻き付けてある。
「つけていきますよ。これつけてれば死なない、そうでしょ」
ミヴの声は中将に届いていない。中将はミヴの唇の動きをじっと見て、何を察したか、かすかに微笑んだ。中将は両手を伸ばし、我が子にそうするように、ミヴのタイをきれいに結んでやった。
行ってこい。
自分の首元を見下ろしてミヴは表情を引き締め強気に微笑み返した。敬礼する。
「行ってきます」
背筋を伸ばし、ミヴは自分だけに音のある室内で、映像電伝虫が投影する壁の中継映像に目を向けた。
深呼吸する。
奇襲なんかしないだろう。プリンセス・ウタは、配信開始の時間を裏切ったことはないんだ。
『新時代は この未来だ』
長椅子の上でミヴの身体がどさりと倒れた。
白衣の女がミヴの頬を軽く叩く。起きないことを確認してから、彼女はライブ会場の状況を中継する映像電伝虫の接続を切った。彼女が手を挙げると、壁際の海兵のうち三人がイヤーマフを、耳栓を外した。そして右手を挙げる。今この部屋にライブ会場の音声は届いていない、の合図だ。それを見て、室内の全員がイヤーマフを外した。
「寝たか」
「寝たね」 - 48二次元好きの匿名さん23/11/10(金) 07:30:20
中将は眠りに落ちた新兵を見下ろした。白衣の女が右手を振りかぶったそのとき、海兵ミヴは突然目を開けた。海兵たちからおぉ、とどよめきの声が上がる。
「確認する。お前は誰だ」
「ミヴだ」
「状況を報告してくれ」
「潜入成功。第一段階、順調だ。サブはウェーバーに乗ってライブ会場に向かっている。歌世界の中は晴れ、霧もない。最高のツーリング日和だが、歌世界ではウェーバーの駆動音が軽い…?らしい。体に響かんのが少々不満なようだ。エレジア旧市街地が見えてきた。なかなかに再現度が高い」
海兵たちの顔に安堵と歓喜が浮かんだ。中将が「よくやった。そう伝えてくれ」と言った。
「作戦完了してから直接言ってやってくれ。まだ上陸すらしていない」
ミヴはそう返した。「それにしてもこれは初めての感覚だな…多少気持ちが悪い」
「それは感想か?身体に不調を覚えているのか?」
白衣の女が身を乗り出して問いただす。「お前の言う通り初めての試みだ、…精神医学史上初めての試みだ。危険や不調を感じたら直ちに言え」
「今のところ『気持ち悪い』は感想だ。心身に影響は感じない。だが…」
ミヴは苦笑した。「二か所で目を覚ましているのは、本当に妙な感覚だな。本当に別々の人間になってしまいそうだ」
海兵ミヴは多重人格者である。
ミヴは代理人格サブに切り替わってウタの歌声を聞き、サブとして歌世界に入った。サブが眠りに落ちた体でミヴは目を覚ました。
主人格ミヴは自分以外の全ての人格の状況を観測できる。
作戦第一段階・成功。アルツェヒト中将直属の部下ミヴによってオブザーブできる別人格、サブが歌世界に潜入、ミヴは現実世界で覚醒。アルツェヒト艦隊は今、現実世界との間で情報をやりとりする手段を獲得した。
- 49二次元好きの匿名さん23/11/10(金) 18:20:56
二重人格だと片方ウタワールド片方現実ってなって二つの世界で連絡とれるっていうのは面白いな
- 50二次元好きの匿名さん23/11/11(土) 02:30:27
REDの設定を踏まえつつREDのストーリーをなぞらない方向で行きます
- 51二次元好きの匿名さん23/11/11(土) 12:45:11
どういう展開になるか楽しみ
- 52二次元好きの匿名さん23/11/12(日) 00:37:16
このレスは削除されています
- 53二次元好きの匿名さん23/11/12(日) 12:27:58
保守
- 54二次元好きの匿名さん23/11/12(日) 12:31:16
歌世界はウタウタ能力者が自在に造形できる世界だ。現実世界で本人がどんな場所にいようとも、歌世界では望みのままに花畑にも宮殿にもいられる。
それでいて、これか…。
海兵ミヴ…その代理人格、サブは旧市街を見渡した。
エレジア。12年前、赤髪海賊団の襲撃を受けて滅んだ国、と言われている。
赤瓦と石畳の美しい街なのだ。廃墟だが。
一夜にして国民ほぼ全員が死んだ惨禍の後にしては、存外建物の多くがきれいな形を残している。それでも屋根が大きく崩れて石壁には焼けた跡が残っていたり、建物の半分が瓦礫となっていたり、樹木は焼かれてからもう一度枝を伸ばした奇妙な樹形をしていたりする。
…歌世界の中に市街地を再現するとしたら、炎の夜などなかったかのように綺麗な町並みを作ることもできたはずだ。あるいはいっそ古びた町並みなど再現せずにここにウタスタイルの新しい街を作ることだってできた。
歌世界にあるもののほとんどは…、能力者本人が「あえてそのように造形したもの」か、「そのようにしか造形できなかったもの」「無意識にそのように造形していたもの」、あるいは能力者以外の歌世界参入者が持ち込んだものだと思っていいはずだ。さすがに市街地全土をライブ観客が持ち込むはずもないから、この現実世界のエレジアを完全に再現した町並みはウタが作った物だと考えていいのだろう。 - 55二次元好きの匿名さん23/11/12(日) 12:33:31
…何を思って、プリンセス・ウタは現実のエレジアを歌世界の中に忠実に再現したのか。
ウタの経歴はよくわかっていない。2年程前に彼女が配信を始めた頃から、その電伝虫念波はエレジアから発せられていたと聞いている。海賊嫌いの歌姫という風評が正しいのなら、もしかしたら、海賊に襲われて荒廃したエレジアを世界中に見せつけてやろうという目論見でもあるのだろうか。
サブはウェーバーを押して海沿いの石畳の道を進み、ちょうどいい段差に腰かけた。海へ突き出したライブ会場からは、遠く、しかし観衆を巻き込んで沸き上がる歌声が響いてくる。あぁ今『新時代』だ。治療中何度も聞いた…あの曲に何度も引き上げてもらった。
ウェーバーに積んだバッグを開ける。UTAグッズのブレスレットとリストバンドを腕につけ、ウタ配色テープを髪に編み込みグッズのピンで留める。フェイスペイントマーカーの蓋をキュポッと取り、道の端まで歩いていって静かな水面を覗きながら頬にUTAと縦書きした。左右対称な文字しか使わない名前でいてくれて本当に助かる。顔と手の甲の空いたスペースにハートマークと星マーク、八分音符を書き込んで顔は完成。会場から響く音楽に乗せて鼻歌を歌いながら、自分の服にUTAバッジをつけてボトムスにペンライトを突っ込む。どこからどう見てもライブグッズ鈴なりのプリンセス・ウタのファンだ。
実際ウタの楽曲は本当に好きなんだ。でも中将、あなたの命令ならば俺、大好きなアーティストの敵にだってなる。今日聞く歌が聞き納めになってしまうかもしれないけれど。
ウェーバーを民家の庭先に隠すように停めた。バッグを背負う。七色に煌めく会場へ。
空は晴れ。世界が今日終わる可能性があるなんてにわかに信じがたいほどに美しい港町。ライブ前にエレジアを観光しようとして遅刻した観客を装って入場する。まずは情報集めだ。 - 56二次元好きの匿名さん23/11/12(日) 22:13:12
ファンでもあってこういう任務に当たるのは辛いだろうな
- 57二次元好きの匿名さん23/11/13(月) 00:04:41
アルツェヒト艦隊、旗艦ダスキント・ヴァールトート号、海兵休憩室。
「アルツェヒト中将、失礼します」
部屋に小走りに駆け込んできた海兵が敬礼する。中将が、略礼で構わん、と手で合図すると、海兵は「はっ」と手を下ろし、「報告します。本部、近隣の海軍基地、依然待機状態のまま動きがありません」
「ふむ」
「当艦隊には海賊船等を発見次第直ちに報告するよう要請が」
「アルツェヒト艦隊はエレジア沖を哨戒中、生憎異常なしとだけ返信してくれ」
「はっ」
「あ。…いや待ってくれ。『決断しろ』と付け足してくれるかね」
「承知しました」
海兵は小走りに出ていった。
白衣の女…軍医ハルが「呆れた」と感想を漏らした。「事態の深刻さを上層部は認識していないのか?」
「認識しているからこその待機状態だろうよ」
中将は答えた。「…それでも大義なき武力は暴力と変わらない、そしてその謗りを受け止める覚悟もない」
ウタウタの実は危険である。強力な催眠系能力であるだけでなく、映像電伝虫を介せばその能力は全世界に影響を及ぼせることが判明した。さらに場所が厄介だ。エレジア、この島はトットムジカを保有している。全世界に歌声を聞かせるだけの人気を築き上げた彼女は、望めば今日世界を滅ぼせる。
しかしウタが本当にライブをするだけならば、海軍にはそれを制止する理由も彼女を逮捕する道理もない。現状、海軍はウタ討伐などという名目では動けない。
元帥はライブ会場へ集まる市民の航路の護衛という名目で中将艦隊をエレジア沖に配備した。帰路も護衛するため、として中将艦隊はこの海域で待機する。他に配備できたのは観客として歌世界に潜入させるSWORDと私服戦闘員のみ。
海賊の目撃情報があれば…というのは、要は、エレジアへの艦隊出撃の大義名分が必要なのだ。なんなら誤情報でもいいからほしいというのが本部の本音だろう。それを汲めないほど鈍くはないが、汲んでやるほど愚かでもない。面子を気にして二の足を踏みながら口にする徹底的正義など生温い。 - 58二次元好きの匿名さん23/11/13(月) 00:05:45
エレジアへ向かう民間人の船の護衛。五老星の意向あってアルツェヒト艦隊がその任務を負うこととなった。アルツェヒトが天竜人の末裔であることは五老星にはとっくの昔に知られていることだし、アルツェヒトの部下ミヴを通せばウタの声を直接聞くことなくエレジアの様子を把握できる。そして五老星は、サカズキ元帥を通さず直接アルツェヒト中将に「可能であればこの機にトットムジカの解体を行うこと」を命じている。かつて天竜人が作り出させてしまった古代兵器級のウタウタ能力残滓、これを処理するためならば民間人の集まるライブ会場でのトットムジカ起動も厭わない。それが五老星の意思。そんな指示を全艦隊に発するわけにはいかないだろう。
とはいえ…いざトットムジカが起動してしまえば、中将艦隊だけで太刀打ちできるはずもない。五老星は五老星で、真意を世に知られたくないがためにアルツェヒト艦隊に初手から大規模な戦力を持たせることを避けた。
権力を持つ者が揃いも揃って怖気づいて決断を躊躇い、世界は破滅と紙一重のところでセイレーンの歌声を聞いている。世界を統治するなどという大権を背負うには、我々の誰もが卑小過ぎるのだ。
そんな世界がミヴを生んだのではないか。
軍医ハルは長椅子に腰かけたままのミヴに「心拍が少し上がっている。今運動しているのか?」と尋ねた。
「大したことではない。ウェーバーを降りてライブ会場に向かって歩いている。サブはウタの曲が好きだから心躍っているだけだな。いやはや、…私はこの手の文化には詳しくないが、歌唱にも演出にも圧倒されるものがあるな。サブにとってはまたとない機会だ」
「…それでも安全に戻ってきてほしい」
「Dr.は自分の被験体が惜しいかね?」
「…お前、サブと同じ顔してるのが信じられないほどかわいげがない」
「はは、さて実況を続けるよ。サブは観客席に入ってペンライトを振り回している。あぁ、曲が終わるようだな。観客は凄まじい盛り上がりだ。ウタが観客に挨拶してちょっと泣いている」
ミヴは目を閉じてつらつらとサブが見ている光景の様子を口述し始めた。別に目を閉じる必要はない。ただ、自分の肉眼の視界とサブが歌世界で見ている視界を同時に見ていると「酔う」らしい。 - 59二次元好きの匿名さん23/11/13(月) 00:07:21
中将は目を閉じたミヴに話しかけた。
「サブはどうやらステージばかり見ているようだが…会場全体を見渡してもらっていいかい?」
「働きかけてみるとしよう。あ、いや、それどころじゃない」
「?」
「ステージに乱入者あり。…おいおいおいおいおいおい」
「どうした」
「手配書ファイルを取ってほしい。億越えリストを頼む。海賊がステージに乱入した」
「億!?」
室内待機の海兵が棚からファイルを引き抜きミヴに手渡す。ミヴは片目だけ開けてファイルを捲った。「あー、残念ながら間違いない」その手は、麦わらの一味・船長の手配書のページを開いて止まる。
「中将。本部が喜ぶぞ。ウタのステージにモンキー・D・ルフィが乱入した」
「本部へ電伝虫!」
「はっ!」
「サブに会場全体を俯瞰させなさい。モンキー・D・ルフィがいるならその仲間もいる可能性が高い」
室内に緊張が滲む。軍医の女も表情を強張らせた。「よ、よりによってあいつか…!」
麦わらの一味。異質な海賊団である。富や権力を求めて武力を振りかざす一般海賊はまだ行動原理がわかりやすい。麦わらの一味は…民間への武力行使はないが、政府機関を次々に襲撃し、七武海を打倒し、戦力を削いで四皇を落とし、…まるで計画的に世界秩序を解体しようとしているかのような動きをする。体制にとっての危険度は革命軍のそれと近しい。何を考えているのかはわからないが、世界に影響力を及ぼせる歌姫のライブに麦わらの一味が現れたのなら、何か企んでいると考えた方が良い。
「サブはどうしてる」
「ウタを守ろうとしてステージに出てやしないか?」
「いや、この視野はちゃんと月歩で会場の上空に飛び上がっている…麦わらの一味を探し…は?」
ミヴが黙り込んだ。
「どうした?」
「中将、モンキー・D・ルフィがステージ上でウタと抱擁。親交がある様子だ。…そして会場に対して、ウタはシャンクス…赤髪海賊団船長シャンクスの娘であることを宣言した。ウタも否定する様子はない」
「なんと!?」
「中将殿!それもニューマリンフォードに連絡してよろしいですか!?」
「直ちに!…ただしこれは秘匿通信を使え。マリージョア直通電伝虫をこちらに…。五老星には私から連絡する。Dr.はミヴから聞き取りを続けてくれ」 - 60二次元好きの匿名さん23/11/13(月) 00:08:41
軍医の女が頭に手をやり、自分の髪をぐしゃりと握った。「おいおい…話がでかくなりすぎる…」青ざめている。「赤髪は…エレジアを滅ぼした張本人だろう?そして娘?娘なんかいたのか?赤髪の娘がエレジアにいて、世界破壊のスイッチを握ってるこの状況は一体何なんだ?」
そうしながらも軍医の女はミヴの様子から注意を逸らさない。「ミヴ。その心拍は何だ。サブは戦闘に入ったのか?」
「ややこしいことになった。サブは半開ドームの上から観察している。ウタが赤髪の娘と聞いてステージ上に他の海賊が現れた。…すまない君、ビッグ・マム海賊団のシャーロット・オーブンとシャーロット・ブリュレの手配書を確認させてくれるかね?ありがとう。…あぁ…、これは多分本人だな。中将、ビッグ・マム海賊団の幹部も来ているぞ。それから…これはわからんな、ビッグマム海賊団とは別勢力と思しき海賊団が混戦。あ。麦わらの一味の幹部も乱入。ステージで混戦している」
「最悪じゃないか。アルツェヒト、ニューマリンフォードに言ってやりな。麦わらの一味の確保、ビッグ・マム海賊団幹部の確保、赤髪の娘の確保、海賊に襲われた民間人の保護…どれでも好きな理由で艦隊出撃できるぞ」
軍医はげんなりし、海兵たちが冷や汗を浮かべている。
「中将。電伝虫中に失礼する。サブが戦略人格の参入を求めている」
「不可。サブも戦闘には参加させるな。監視に徹するよう伝えてくれ」
「歌世界でも動体視力は変わらない。サブにそのまま戦闘を観察させていいのか?」
「構わない」
ミヴは片目だけ開けて筆談用のノートを掴んだ。「麦わらでもビッグ・マムでもない勢力がいるな…」鉛筆を受け取りその似顔絵を描く。「こんな風貌だ。心当たりはないか?」海兵たちに見せると、「クラゲっすね」「クラゲ海賊団」「船長エボシだな」「そっちはカギノテ」「ハナガサ」と答えてくれた。
「本物の海賊だったか」
「状況は?観客は無事かね」
「戦闘は観客席に波及していない。麦わらの一味がウタを守る形だな。ウタが海賊たちを説得しようとしたが聞き入れられなかったため、ウタは麦わら以外の海賊を音階拘束した。『私は最強』か。新しい楽曲だな。麦わらは客席に戻った」
「大人しく戻るのか…」
「だんだん心拍の変化から楽曲の始まりを察せるようになったよ」
「いや、今の鼓動の跳ね上がりは違う。ウタから嬉しいおしらせ…らしい」 - 61二次元好きの匿名さん23/11/13(月) 00:10:32
いつもの映像電伝虫を使った配信ライブ
私が疲れて眠くなっちゃうからすぐに終わっちゃうけど
今回のライブはエンドレス!ずっと続けちゃうよ
ミヴはサブが聞いているウタの声明をそのまま告げた。
「エンドレス…か」
「不眠で歌世界を持続する気か。最悪の予想が着々と当たっていくな」
それとね大事なお話
海賊のみんな それに海軍 世界政府の人達
このライブの邪魔をしないで
みんな楽しいこと 幸せなことを探してるの
ひどいことをやったら 覚悟してもらう
私は新時代を作る女 ウタ!歌でみんなを幸せにするの!
「海軍、世界政府に敵対する立場を表明したか」
電伝虫を持つ中将の手が震えた。その電伝虫は、マリージョア、パンゲア城…五老星の会談の場に繋がっている。
ウタウタの能力者が、トットムジカのある島で、極めて狡猾な反体制派の海賊団と手を組んで、体制に敵対する姿勢を表明した。この世で一番揃ってはいけない出目が揃った。 - 62二次元好きの匿名さん23/11/13(月) 00:13:51
連絡係の海兵がやってきて、「本部より連絡です。大将2名、中隊小隊を編成、艦隊三十隻がエレジアに向かっています」と述べた。
「ありがとう。大将は誰が来る?」
「大将黄猿、大将藤虎です」
「出撃の目標は何になったんだね」
「ウタの討伐、だそうです」
「一応海軍本部に連絡は入れておきたまえ…『遅い』と」
中将は頷き、伝令の海兵に、下がっていいぞ、と示した。海兵は敬礼してその場を辞した。
「今更か?そして三十隻?」
軍医が耳を疑うといわんばかりの顔で尋ねた。「ウタウタもトットムジカも舐めているとしか思えん」
三十隻か。キリは良いがこれは戦略上意味のある数字ではないだろう。アルツェヒト中将は顎に手をやり思案した。これは、今ただちに本部とエレジア近隣の海軍基地から出撃できる艦船の数とほぼ同じだ。すなわち場当たり的な掻き集めに過ぎない。
何を目的として出撃するのかほんの数十分前まで決まってすらいなかった大将艦隊が今エレジアに向かっている。具体的な作戦行動も未定、船内で話し合っている状況だろう。下手すると船の装備点検すら航行しながら行っているかもしれない。
「サブはどうしてる?」
「今幕間だ。ウタが観客に食料と玩具のサービスをしている。しばらくは歌わんだろうから会場中継電伝虫に接続して状況を把握するなら今だ」
「ありがとう。偵察部隊、会場中継電伝虫に接続しなさい。視聴担当以外は全員イヤーマフを。視聴担当も歌いだしを察知したら直ちにイヤーマフをするように。ミヴ、サブには能力者が出した食料は食べないように言っときなさい」
「バッグにしまわせた。不服がっている。食べると何か能力を重ね掛けされる恐れでも?」
「いや、験担ぎだ。東の海の言い伝えでね…異世界で出された食事を口にすると帰ってこられなくなるらしい」
「…」
ミヴは微笑んだ。「ほう?帰ってこさせる気があったのだな」
「今作戦で消耗するつもりかと思っていた。何、戻ってこなくてもまたサブを作ればいい、そうだろう、Dr.?あなたならできるじゃないか」
軍医が引きつった顔でミヴを睨んだが、彼女が何か言う前に中将は手で制した。 - 63二次元好きの匿名さん23/11/13(月) 00:14:32
「サブに伝えてくれ。今夜はビーフシチューだよ。好きだろう」
「承知した。持ち込んだ携帯食で我慢して歌世界のものは食わせないでおく」
「頼む」
ミヴはまた目を閉じた。軍医が膝の上で拳を握り締める。軍医の肩を軽く叩き、中将は「私の罪だ。君のものではない」と言った。
そのまま中将は五老星に電伝虫をつないだ。「CP0は無事に難聴電伝虫を設置できましたか?そうですか。設置できたら番号を教えていただきたい。えぇ、今ウタはなぜか麦わらと遊んでますが…いつ歌いだすかわからない。漫然と映像を見ていると危険ですよ」
歌唱停止の連絡を受けて接続し直した映像電伝虫が映し出す画面では、赤髪の娘が麦わらのルフィとチキンの早食いに興じている。観客ももらったおやつで休憩しているためか、ライブの休止や歌姫と海賊とのお遊戯に文句を言う様子はない。観客席のほとんどが、事の深刻さを理解しないで笑っている。
私は、この一見平和な世界の終わりの最前線に、息子を派兵している。 - 64【安価】23/11/13(月) 00:17:28
- 65二次元好きの匿名さん23/11/13(月) 00:22:05
骨つき肉
- 66二次元好きの匿名さん23/11/13(月) 09:43:27
①せんべい
②ローとベポ - 67二次元好きの匿名さん23/11/13(月) 17:33:43
①りんご
②コビー - 68二次元好きの匿名さん23/11/13(月) 18:01:00
①ワイン
②捕まってるブリュレ - 69二次元好きの匿名さん23/11/13(月) 18:02:38
①プリン
②潜入してるブルーノ - 70二次元好きの匿名さん23/11/13(月) 18:25:13
①水水肉
②チャルロス聖 - 71【安価ダイス】23/11/13(月) 22:59:19
サブはウタから
dice1d6=2 (2)
をもらった。
1 骨つき肉
2 せんべい
3 りんご
4 ワイン
5 プリン
6 水水肉
サブはこの後
dice1d6=1 (1)
と接触する。
1 なし
2 ローとベポ
3 コビ―
4 捕まってるブリュレ
5 潜入してるブルーノ
6 チャルロス聖
- 72二次元好きの匿名さん23/11/14(火) 10:12:15
誰とも接触なしか
- 73二次元好きの匿名さん23/11/14(火) 10:26:45
このレスは削除されています
- 74二次元好きの匿名さん23/11/14(火) 17:47:03
せんべいを手に入れました
接触チャンスはあと2~3回あります
うまいことフラグを折ってウタ生存ルートに入ってみたい - 75二次元好きの匿名さん23/11/15(水) 05:46:24
せんべい好きなのは渋いな
- 76二次元好きの匿名さん23/11/15(水) 16:39:33
接触なしだけど情報収集はどうなるんだろうか
- 77二次元好きの匿名さん23/11/15(水) 20:50:24
サブは何度か空を蹴った。高度を確保して、ふっと力を抜いて自由落下を味わう。
耳元で引き裂かれる風の唸りが高まっていく、髪が風に同化して暴れ出す、服をはためかせ肌を叩きやがて四肢を振り回す程の風になる、その感覚が好きだ。
どれだけ高く飛んでも会場からは死角となる位置、ほぼ旧市街地の上空。遙か斜めの下方では、プリンセス・ウタがライブを中断して麦わらの一味と話し込んでいる。この距離でも問題ない。視力には自信がある。
…海賊嫌いの歌姫、じゃなかったのかよ。
月歩で落下速度を緩め、また飛び上がっていき見晴らしを確保した。仮想現実の世界であってもエレジアは美しい。空は晴れ、胸がすくほど爽快な景色の真ん中で、しかしサブの胸中にはファンとしての落胆と、海軍としての懸念がこみ上げる。
不可解で不快だ。
麦わらと言えば…30億ベリーの賞金首。それに見合う悪事を働いてきた大悪党。
プリンセス・ウタは平和と幸福を奪う海賊を憎んでいるはずじゃなかったか?今までファンに見せてきた「海賊嫌いの歌姫」は偽りなのか?
そして、こちらの方が深刻だ。一海兵としては、今日判明した事実が唐突にちらつかせてくる想定外の事態に注視しなくてはならない。
自由落下しながらサブは目を閉じた。麦わらのルフィがステージ上でプリンセス・ウタと抱擁したとき、麦わらの一味も驚いていた。奴らの狡猾さならそれも会場全体、世界中に見せる演出かもしれないが。あれは間違いなく麦わらの一味幹部…狙撃手ゴッド・ウソップと懸賞金4桁のわたあめだ。視力には自信がある。二人で「なんでプリンセス・ウタと仲良しなんだ」と自船の船長に問うていた。
麦わらのルフィは「だってこいつ、シャンクスの娘だもん」と答えた。
すなわち、言外に、「一味全体の共通理解事項として、麦わらはそもそも赤髪とつながりがある」ことが読み取れる。これをあえてライブをジャックして世界中に聞かせたのだ。この島、かつて赤髪が滅ぼした島で。 - 78二次元好きの匿名さん23/11/15(水) 20:50:56
麦わらと赤髪は海賊同盟を結んでいたのか?だとすると、先のワノ国で起こった事件の意味合いが変わってくる。ワノ国にルーキーが三勢力集まって、四皇を二人蹴落とした…というそれはそれで衝撃的な事件が、「現四皇である赤髪が、水面下で手を組んでいた麦わらを差し向けて他の四皇を討った」という構造となる。白ひげの没後不安定になっているこの海の勢力図を赤一色に塗り替えようとでも言うのか。
しかしそんな重大な案件を、海軍も世界政府も誰も関知しないなどありえるのだろうか。
調べてくれ。今すぐ。麦わらと赤髪は同盟関係にある可能性があるのか。新時代計画の黒幕に赤髪がいるか、あるいは我々の想定を超える何かを目論んでいるのか。麦わらがウタ、赤髪と組んでいるのなら、娘の命を犠牲に麦わらを巻き込んだまま歌世界を閉じることはないかもしれない。現実世界で脅威である麦わらを歌世界に閉じ込める意義はあまりない。その読みすら甘いかもしれない。
いや。そもそもここは歌世界だ、あの麦わらの一味はプリンセス・ウタが作り出した演出用の幻覚である可能性だってある。ライブ会場で肉を頬張っている麦わらがプリンセス・ウタの作り出した偽物なら、赤髪とプリンセス・ウタは、あえて偽物を用意して麦わらに何か仕掛けているということになる。麦わら本人がこのエレジアに来ているかどうか確かめるのが先だ。
サブは落下と浮上を繰り返しながら、歌世界の外にいる主人格に読み取ってもらえるよう期待しつつ目を開けた。強めに蹴ってもう一度空へ。
この件については現実世界に対処を投げるものとして…、サブは思考を切り替えた。憶測を膨らませている場合ではない。そもそも思考するのは司令部の仕事。己の上官が信頼に値する頭脳ならば、前線兵は手足に徹しよう。
とにかく情報を集めなくてはならない。
海賊たちが一体何を目論んでいるのかはわからないが、とにもかくにも、何に巻き込まれているのかすら定かではない民間人を無事に歌世界から脱出させること。
そしてトットムジカの解体。それには、トットムジカを起動させねばならない。
これらを両立できれば理想的。限りなく不可能に近い、難題を超えた難題。 - 79二次元好きの匿名さん23/11/15(水) 20:51:22
ライブ会場から目を離さず、サブは月歩浮遊の位置を、エレジア本島、旧市街上空に移した。歌姫の背後に赤髪がいる可能性が示された以上、潜伏兵を警戒しておきたい。高度を維持しながら見聞色の覇気で本島全域を探知する。
…人が二人いる。
一人は…エレジア城の礼拝堂。一人は市街地の通りを歩いている。
調べに行くか?
体を捻って向きを変えようとしたそのとき、サブの目は会場の照明がいきなりライブモードに切り替わったのを捉えた。パーカッションが響く眩いレーザー演出の中、プリンセス・ウタが浮上してきた。
「現実世界!!プリンセス・ウタが歌唱する!!防音体勢を取れ!!!」
『 惨憺たる思い出は悲しみを穿つほど 』
ズキリと側頭部に痛みが走り、危うくサブは空から転落しかけた。鐘楼の屋根に着地して事なきを得た。あぁこれ、うん、かなりしんどかった治療で使われた音源だ。すごく好きな歌なのに脳は苦痛を覚えてる。心臓の音がビートに引っ張られる。それでもやはり好き。
頭痛とペンライトを振りたい気持ちの両方を我慢して、サブはスレート瓦に膝をつき遠い会場を監視した。距離も速度も閃光も暗転もこの目にとっては何ら問題ない。だが思いもかけないものが目に飛び込んできた。
麦わらの一味幹部が二名、音階拘束されて会場上空に吊るされている。あれは泥棒猫ナミ、黒足のサンジ。そして麦わらの一味とプリンセス・ウタは交戦していた。正確に言うと、プリンセス・ウタは空中ステージで踊りながら歌っており、彼女が作り出したと思われる飛行兵と麦わらの一味幹部がステージエリア内で激突している。当然、歌世界内ではウタウタ能力者が圧倒的に有利だ。一曲終わる前に、麦わらのルフィはレーザーライトで捕縛され、幹部は全員音階拘束された。
ステージ上でプリンセス・ウタが観客に「海賊をどう思うか」と問うている。観客たちは、海賊被害の珍しくないこの時代の嘆きと怒声となってプリンセス・ウタに応えた。
意味が分からない。
最悪の海賊同盟を警戒したら、突然歌姫と麦わらは仲違いした。何を見せられているんだ…と困惑しながら、サブはひたすら自分の視界を現実世界に送ることに徹した。 - 80【安価】23/11/15(水) 20:55:10
- 81二次元好きの匿名さん23/11/15(水) 23:22:45
このレスは削除されています
- 82二次元好きの匿名さん23/11/16(木) 10:17:54
パンツ見えそうになるのは重要だな
- 83二次元好きの匿名さん23/11/16(木) 16:41:37
2かなぁ
- 84二次元好きの匿名さん23/11/16(木) 23:06:08
3はゴードン?
- 85二次元好きの匿名さん23/11/17(金) 07:11:32
エレジアの地下を探索
- 86二次元好きの匿名さん23/11/17(金) 15:45:23
⑤
- 87二次元好きの匿名さん23/11/17(金) 21:56:05
①
- 88二次元好きの匿名さん23/11/18(土) 09:27:52
- 89ダイス23/11/18(土) 12:23:01
82+ dice1d6=6 (6)
- 90ダイス23/11/18(土) 12:24:00
- 91ダイス23/11/18(土) 21:44:27
- 92二次元好きの匿名さん23/11/19(日) 09:10:46
パレードってことはコビーたちとは会うかな?
- 93二次元好きの匿名さん23/11/19(日) 19:34:12
ブルーノにも会える感じか
- 94二次元好きの匿名さん23/11/20(月) 07:12:04
コビメッポブルーノと会うかとかパレードの列と一緒に礼拝堂の方行くかとか分岐しそうだね
- 95二次元好きの匿名さん23/11/20(月) 18:15:46
列のどの位置に入るかで変わってきそう
- 96二次元好きの匿名さん23/11/21(火) 05:39:12
保守
- 97二次元好きの匿名さん23/11/21(火) 17:13:44
どうなる
- 98二次元好きの匿名さん23/11/21(火) 19:25:08
ミヴは状況を報告した。ウタと麦わらの一味は手を組んでいるのかと思いきや、突然交戦に至り、船長以外全員が音階拘束された。船長麦わらのルフィは傘下の「人食い」バルトロメオの援護を受け会場から逃走した。
「ここからはサブの推測が含まれるが、会場に『死の外科医』トラファルガー・ローがいる可能性がある。サブがROOMの展開によく似た半球を目視。麦わらと人食いは忽然と姿を消した。トラファルガーの能力なら容易だろう」
「気を付けなさい。トラファルガーと麦わらは同盟関係にある…解消の報道もない」
中将の助言に、ミヴは「サブが現実世界に対し提案している」と述べた。「見せられているものがウタウタの能力による幻覚でないとしたら、30億級海賊がエレジアのどこかで寝ているはず。アルツェヒト艦隊から上陸要員を出して捕縛できないか、とのことだ」
「職責への真摯な姿勢は好ましい、だが不可能だ」
四皇は海軍の最大の敵である以上に、この海の均衡の要である。非常に不合理な真実として、四皇同士の牽制と新参に対する威圧は世界の恒常性を維持するものであった。四皇の一角に刺激を与えれば大海原を戦乱の波が襲う。
「君が海軍に入隊する契機となった『世界徴兵』だが…あれが必要になった経緯は知っているだろう。二年前、我々は望まぬ戦争を始めさせられた」
最初は旧・四皇白ひげ海賊団の内部での諍いでしかなかった。後に四皇の一角となる「黒ひげ」マーシャル・D・ティーチが悪魔の実を奪い、仲間を殺して出奔。これを追った二番隊隊長ポートガス・D・エースとの間で決闘が勃発する。海軍としては相打ちとなってバナロ島で死んでくれていればどれほどよかったことか。しかし不幸なことに二人とも生きた状態で勝敗は決し、しかも勝者黒ひげは敗者火拳を海軍に引き渡しに来た。
火拳。あまりにも悪名高い海賊。引き渡された以上その身柄を引き受けないわけにはいかない。引き受けてしまった以上、経歴を調査しないわけにはいかない。調査の過程で海賊王の実子と判明した以上、処刑しないわけにもいかない。処刑するとなれば…白ひげとの全面戦争は回避する術がない。黒ひげが火拳を海軍に連行してきた時点で「詰み」、勝っても負けても世界の均衡を崩す戦の引き金はそのとき既に引かれていた。 - 99二次元好きの匿名さん23/11/21(火) 19:27:08
四皇と争うとはそういうことだ。海賊を捉えるという行為そのものは正義であっても、その正義がもたらす犠牲があまりにも大きい。たとえウタウタの能力で眠っていても、麦わらの一味、およびその同盟相手に手を出すならば、麦わら大船団との決戦を想定しなくてはならない。そんな用意はない。
そして、今回は30億海賊以上に重大な案件を抱えている。トットムジカの解体、これが先決だ。
「サブは不満だろうな。30億海賊二人を見過ごせと言われれば」
ミヴは鼻で笑うように言った。「『サブは海賊嫌いだ。』そうだろう?」
Dr.ハルは無言だ。中将は「嘲りはあとでいくらでも聞こう」と苦い口調で言う。
「サブ。…ミヴが君にきちんと伝達してくれることを願うよ。サブ、今回はトットムジカが最優先だ。…その海賊たちも、ウタの協力者でないなら歌世界からの脱出を希望するはずだ。…トットムジカ破壊戦力に加える想定でいなさい」
「海賊を逮捕しないどころか海賊と手を組めと」
「トットムジカは、使えるものは全て使わねば太刀打ちできない相手だ」
「サブは…不承不承でも中将殿には従うだろうがね、心の底から気の毒だよ。早いところ戦略人格と戦闘人格を送り込んで交代させるべきだ。さて、ところでまずはお利口な猟犬に何させるのかね」
「…SWORDと接触し情報交換を。彼らが何か掴めているかもしれない」
「こちらの手札はどの程度見せて良い?」
「サブが持ち込んでいるものと情報は全て扱いをサブに委ねて良い」
「当艦隊とSWORDの目標が一致しない場合は?」
「交渉しても折衷案が立てられないのであれば共闘を諦めていい」
「了解」
ミヴは目を閉じた。 - 100二次元好きの匿名さん23/11/22(水) 06:58:40
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- 101二次元好きの匿名さん23/11/22(水) 18:20:28
とりあえずコビーたちと接触か
- 102二次元好きの匿名さん23/11/22(水) 19:17:39
サブの目は、ウタが華やかなフロート車を出現させてパレードを始めたのを捉えた。ウタを先頭に観客がぞろぞろついていく。群衆の中に、ミヴから提示された情報に一致するSWORDメンバー二人を目視した。サブは軽めの剃を使ってパレードに追いついた。UTAグッズを振り散らかしご機嫌に「U・T・A!」コールしながら人垣の中を泳ぎ、桃髪と金髪の二人組の背後数メートルにつく。
「SWORDの電伝虫が反応しない」
「まずいな…ウタは本気であの計画を実行するつもりか?」
フロート車から鳴り響くBGMとUTAコールの中、二人はひそひそ密談していた。
「待ってくださいヘルメッポさん。目を感じる」
「目?」
「誰かに見られてる」
桃髪の青年は低くそう告げ電伝虫をしまい、注意深く振り返った。サブはその警戒と索敵の視線を自慢の目で受け止め、にこっと微笑みかけた。
「コビ―大佐。ヘルメッポ少佐」
人垣の中を走るまでもなく、先を歩いていた桃髪が歩みを止めてくれた。金髪が慌てて立ち止まって転びそうになりながら「おい何いきなり立ち止まってんだ」と相方に声をかける。「あー、あれか?『ロッキーポートの英雄』のファンボーイ…」
「悪いな、こいつも俺も今任務中なんだ、英雄のサインならここ出てからな。その総UTAグッズ揃えファッションなかなか見ごたえあるな、ライブ、楽しめよ」
「ご安心を、ヘルメッポさん。彼たぶん同業者です」
「…?」
「マリンコード3978156。アルツェヒト艦隊所属、ミヴ・サブです」
スカーフ状に首に巻いた青タイの下からドッグタグを人差し指で引っ張り出して見せ、一瞬だけ、右手の甲を相手に向ける敬礼をした。
「アルツェヒト艦隊。エレジアに向かうライブ客の船団の警護に当たっていたと聞いていますよ。お疲れ様です」
「ええ。表向きの任務は終わりました」
「なるほどな、場所を変えようぜ」
三人の海兵は瞬きする間に消えたが、それに気づく市民はいなかった。 - 103二次元好きの匿名さん23/11/22(水) 21:23:42
- 104二次元好きの匿名さん23/11/22(水) 21:27:07
2
3 - 105二次元好きの匿名さん23/11/23(木) 08:51:59
ブルーノとは別行動か
- 106二次元好きの匿名さん23/11/23(木) 10:35:05
2
2 - 107二次元好きの匿名さん23/11/23(木) 10:57:56
103+ dice1d3=3 (3)
- 108二次元好きの匿名さん23/11/23(木) 11:02:24
CP0とは別行動となりますが、ブルーノとサブは友好的な面識があります
- 109二次元好きの匿名さん23/11/23(木) 22:41:50
ドアドアなしだとどう動くんだろう
- 110二次元好きの匿名さん23/11/24(金) 10:13:10
ここからどう動くかコビーたちと作戦たてるのかな
- 111二次元好きの匿名さん23/11/24(金) 21:45:25
- 112二次元好きの匿名さん23/11/25(土) 09:01:58
ここからどう動く
- 113二次元好きの匿名さん23/11/25(土) 12:07:39
ライブ会場となった港島と、エレジア本島をつなぐ橋塔。そのうちひとつの内部の部屋に三人はいる。見晴らしの良い屋上を選ばなかったのは、警備の目からも自分たちがよく見えるから。ウタが「海賊狩り」のために作り出した音符の兵士たちが空を哨戒飛行している。自分たちは海賊ではないとはいえ、ウタの意に沿わず別行動を取っているのが見つかれば警戒されかねない。この歌世界では、能力者に従わないということはただそれだけでリスキーなのだ。
「アルツェヒト艦隊。表向きの、とわざわざ言ったということは、本来の任務内容を僕たちと共有する意向もしくは必要があるということですよね」
「ええ、可能であれば。上官は何が何でも共闘せよとは言っておりませんので」
「わかりました。肩肘張らずにとりあえずお互いの目的を確認しましょう。僕はコビ―大佐、こちらはヘルメッポ少佐。海軍ではなくSWORDとして行動しています」
「存じております。SWORDがここに潜入している目的は?」
「プリンセス・ウタが新時代計画を本当に実行するのかどうか見極めること、そしてそれを止めること。歌世界に連れ込まれている民間人を無事解放することです」
サブはコビ―大佐の表情を見ながらヘルメッポも視界の中に入れて観察した。表情に大きな動きはないが、頷いている。
「具体的にどう動くご予定で」
「それが…方法が見つかっていません」
サブは目を丸くした。これは、情報を伏せられているのだろうか。SWORDともあろうものが、あの有名なロッキーポートの英雄ともあろう者が、本当に無策に死地に突っ込んで来たなんてことがあるだろうか。
タイムリミットに間に合わなければかけがえのない人材がこの世から消えるのに、そんな作戦なき作戦を命じた上層が愚かなのだろうか。それとも、ほとんど詰んでいることを理解した上で、この英雄は民衆のためにここに来たのか?
サブは困惑した。戦略部隊が戦略なく行動しているとは信じがたい。
「あなた方…何か隠していますか?」
「いえ、今のところまでは何も隠していません。…ウタの能力についてはある程度知っていますが、打開策はここに来てから見つけるしかないと」
「呆れた。あなた方二人を失えば海軍にとってどれだけの損失か」
「かくいうお前はどうなんだ?」 - 114二次元好きの匿名さん23/11/25(土) 12:32:24
ヘルメッポ少佐が口を開く。「アルツェヒト艦隊の目的は?それから、そう言うからにはお前が艦隊の損失にならない方策があるのか?アルツェヒトのミヴなら…お前『ミラーニューロン』『隼の眼』のミヴだろ?」
「あぁ、それ俺です。アルツェヒト艦隊の目的は大筋であなた方と同じ、民間人の解放。しかし最終的にはトットムジカを解体することが望ましい」
「つまり…ウタにTot Musicaを歌わせる前提であると」
「あなた方もそうなのでは」
「可能な限り避けたいですね。トットムジカと戦う戦力はありますが…危険すぎる」
「トットムジカを起動させず民衆を解放できますか?」
「ウタと話し合います」
サブはだんだん冷や汗が滲んできた。本当に、本当に無策なのだ。対等な対話などできないパワーバランスなのに。目の前の英雄の瞳にはあまりにも曇りがない。正義を信じ、人を信じすぎる目だ。
彼には死ぬ覚悟はあるのに、能動的に犠牲を伴う手を選ぶ覚悟はない。「トットムジカを撃破すれば歌世界を消すことができる」と認識していながら、それを望むことを自分に認めていない。なるべく戦わず双方納得する形に調停しようとしている。そのくせ成り行きでトットムジカが呼び起こされるのならばそれと戦う。
冷酷になる覚悟のない正義。
この二人とは手を切った方がいいのではないか。
そう思ったが、現実世界からミヴが同行を指示するので踏みとどまった。
「お前にはあるんじゃないのか?」
ヘルメッポ少佐が重ねて尋ねた。「アルツェヒト艦隊がお前を失わない活路」
「あぁ、こちらは大丈夫です」
「教えてください。間に合わなかった場合、あなたはウタ世界からどうやって脱出する予定ですか」 - 115二次元好きの匿名さん23/11/25(土) 12:32:43
「そんなものありません、俺は死んでも損失になりません」
「えっ」
「俺は多重人格者です――今ここにいるのは複数あるミヴの人格の一つに過ぎない。歌世界から俺が出られなくなっても、現実世界の俺の身体は別の人格が生きるだけですし、主治医が何度でも何人でも新しい俺を作ります。アルツェヒト艦隊はミヴの能力を失わない」
今度はSWORDの二人が凍り付く番だった。コビ―大佐がいきなり胸倉を掴んできた。「何言ってんですかあんた!!」
「うわっ」
「死んでいい人間がいるわけないでしょう!!今ここにいるあなたが死んでもいいものとして立案されてる作戦なんかあっていいわけないでしょう!?」
「コビ―落ち着け!」
「あなた自分の命をなんだと思ってるんですか!?」
「静かに!」
ヘルメッポ少佐がコビ―大佐の口を咄嗟に塞ぎ、コビ―大佐とサブ二人まとめて床に押し倒した。
窓の外を、音符の兵士が通り過ぎる。息を殺してやり過ごし、コビ―大佐が「…すみません」と謝った。「でも、取り消しません」
「…僕は僕の正義のもと、民間人も、あなたも絶対に連れて帰ります」
「俺は、可能な限り目的の遂行を目指します。中将に顔向けできない」
「仲間としては心強いけど癖の強ぇの抱え込んだな。ま、よろしくな」
コビ―大佐から手を差し出した。サブはその手を握り、ヘルメッポ少佐とも握手を交わした。 - 116二次元好きの匿名さん23/11/26(日) 00:29:48
保守
- 117二次元好きの匿名さん23/11/26(日) 11:50:26
死にたがりだったか
コビーは怒るよな - 118二次元好きの匿名さん23/11/26(日) 21:16:16
「まずなんとかしてライブ客の安全確保を目指しましょう」
コビ―大佐が提案した。「僕はなんとかしてウタを説得してみます。一般人を解放してもらった上で、トットムジカ解体への協力を改めて求めてみます。それならアルツェヒト艦隊の任務も達成できるのでは」
「あなたはあくまで話し合いで解決しようとしますね」
「可能な限り争わないのは平和の基本ですから」
「…。…いいでしょう、従います」
サブは頷いた。コビ―大佐は、サブの完全な納得は得られていないのを感じたが、この場で一番階級が高く、すなわち指揮権限を持つのは自分だ。自分が優柔不断になるわけにはいかない。時間もあまりない。コビ―大佐はこのまま進めることにした。
「で、ウタをどうやって説得しますか」
サブが問う。
「まず我々の誰も、歌姫と個人的に話し合える立場ではない」
「お前そのすさまじいファン装束でサイン求めに行ってみたらどうだ」
「見事な仮装ですよ、熱心なファンにしか見えません」
「私物です」
「…わあ」
「ファンだったんですか。この任務、おつらいでしょうに」
「大丈夫。トットムジカ解体を目指せばプリンセス・ウタの歌手生命、そして文字通り生命を危険にさらすことも承知の上。…世界が悲しむでしょうが、今後の世界のための犠牲です。好きなものや大事なものがなくなるのは慣れています」
ヘルメッポ少佐は咄嗟に相棒の腕を掴んだ。コビ―大佐がぎゅっと表情を歪めたからだ。「あなた…」コビ―大佐が続く言葉を紡ぐ前に、その口を手で塞ぎ、ヘルメッポ少佐は「なァ、サブ」と言った。「海軍やめなよとまでは言わねェ。この任務が終わったら、長期の休暇取れ」
コビ―大佐が何か言いたそうにしていたが、ヘルメッポ少佐は彼を黙らせたまま「時間がないから多くは言えねェ。だが、お前は正義を担う人間として足りてねェモンがある。俺だって偉そうに物言える人間じゃねェがそこだけは断言できる」と言った。
「何ですか」
「知りたきゃ生きてこの歌世界を出ろ。飯奢らせろ、お前に何が足りないか教えてやるから」
「…そうですか」
サブは怪訝気に首を傾げながら、「とりあえず、プリンセス・ウタにファンとして話しかければよろしいですか」と尋ねた。
「まぁやってみる価値はあるんじゃねェのか。ファンを装って海軍が交渉しに来た、となりゃ逆に激昂する可能性もあるが」 - 119二次元好きの匿名さん23/11/26(日) 21:40:26
「プリンセス・ウタのいつもの配信は三曲くらいが限界です。まだ歌世界が維持できているとなると、彼女がもう既にネズキノコを食べている可能性は高い。ネズキノコは致死性の毒によって眠らなくなるだけでなく、感情の制御を狂わせ暴力性、衝動性を強めます」
「ファンからの情報ありがとう。ウタはもう話し合える状態じゃないかもしれないな、拘束される可能性も考慮した方がよさそうだ」
「ところですみませんが」
「なんだ」
「さっきからずっと思ってたんですけど、ウタじゃなくてプリンセス・ウタって言ってもらえますか?」
「おう黙ってていいぞ」
コビ―大佐が手を挙げて二人の会話を遮った。「サブさんはウタの配信をよく見るんですか?」
「勤務と鍛錬と治療に時間が被らない限りほぼ視聴してますが」
「新時代計画について、ウタからファンに対し何か声明は出ていますか?」
「はい。『みんなー!エレジアエンドレスライブについてのお知らせだよ!映像配信電伝虫越しじゃない、本物の歌を聞きに来て!いつもの配信と違って、ライブ会場での歌世界は不滅だよ!』」
「誰が声真似しろつったァ!!」
「痛ァ!!」
「なるほど、普段と違って歌世界が消滅しない違和感を『生歌だから』と思い込ませているのか…」
コビ―大佐は考え込んだ。「会場に集まったライブ客は…やはり、このイベントの果てに自分たちが歌世界に永遠に閉じ込められることを知らない…?」
「知らないでしょうね。そもそも彼女が配信を通してファンに見せてきた歌世界は、現実世界とほとんど違いがない。…プリンセス・ウタの配信を視聴している間自分が眠っていることを知っているファン自体少ないはずだ」
そもそも映像配信電伝虫は新種で、普及もつい最近のことだ。本来の映像配信電伝虫がどのような挙動をするもので、ウタの配信の何が異質なのか、気づきも理解もしないまま使用している視聴者の方が多いだろう。
「プリンセス・ウタは一度も嘘はついていません。『エレジアライブはエンドレス!』『ずっとずっと一緒にいようね!』『どうにかして来てくれさえすればね、あとは永遠に幸せな時間を約束するよ!』しっかり言ってるんですよ。問題は、彼女がそれを文字通り実現する能力を持っているとは誰も思っていない。だから、歌姫の言葉の綾だとみんな思ってる」
「頼む、声真似しないでくれ。無駄に似てるのがかえって気持ち悪いんだ」 - 120二次元好きの匿名さん23/11/27(月) 09:03:57
サブはファンでもあるから思わず真似したくなるのかな
- 121二次元好きの匿名さん23/11/27(月) 20:20:29
説得を試みる方法を考えてる感じか
- 122二次元好きの匿名さん23/11/28(火) 08:08:04
保守
- 123二次元好きの匿名さん23/11/28(火) 19:35:27
ヘルメッポツッコミお疲れさま
- 124二次元好きの匿名さん23/11/29(水) 07:02:08
ヘルメッポのツッコミで笑う
- 125二次元好きの匿名さん23/11/29(水) 18:39:43
とりあえずウタと接触図る感じかな
- 126二次元好きの匿名さん23/11/29(水) 20:26:41
作戦はこうだ。
ウタの精神状態がわからないので、ひとまず全滅を防ぐために直接対話に向かうヘルメッポ少佐とサブ、待機するコビ―大佐に分かれる。
サブが海軍であることもファンであることもどっちも最初から正直にバラした方がいいだろう。疑いは負の感情を増大させる。
その上で、まずウタが冷静に話し合える状況ならば、ウタの能力をファンのほとんどは正確に理解していないこと、自分の身に起こることを把握していないままここにいると指摘する。一度コビ―に委ねて観客に意思表示をさせる。
「でも、会場のファンがプリンセス・ウタを責める状況は作らないでください。…考えてみてください、新時代計画自体、そもそもプリンセス・ウタがファンを愛するがゆえに強行しようとしている能力を最大限使った救済行為に他ならない。救おうとしたファンから一斉に責められることになったら心が痛む」
「ファン心理としてつらいのもわかるし、ウタを追い込んで凶行に走らせないためにもその配慮はあった方がいい」
「プリンセスってつけろよ少佐野郎…」
「コビ―、ステージから観客に呼びかけるときに、『ウタが騙した』みたいな印象を与えないよう言葉は選べよ」
観客に意思表示をさせた上で、ウタに円満にライブを中断させ、観客を解放させる。その次の段階としてトットムジカ解体への協力を得られるか交渉できれば良いが…。
どちらかと言えば、ウタが「冷静に話し合える状況でない」場合の想定を入念にしておくべきだ。ウタは自分のファンであるサブとの意見の相違を呑み込み切れず、認知不協和を引き起こすかもしれない。サブを「納得させる」ためにいかなる実力行使もできてしまうのだ。こうなったらヘルメッポは何が何でもサブをウタから逃がす。サブは今、外部と連絡を取る唯一の手段だ。
この状況であれば、現実世界の海軍にはまず、会場で眠っているライブ観客の身体を安全な場所へ搬送、場合によっては拘束してもらう。
「なぜですか?」
「歌世界に心を取り込まれて空っぽな状態で現実世界に残された体は、能力者によって制御可能になるでしょ…待って、あなた方の身体はどこで管理されている状態ですか」
「管理…すみません、会場ですね」
「ウタウタの実でそこまでできるとは聞いてなかったな…」 - 127二次元好きの匿名さん23/11/29(水) 20:27:16
「…SWORDの強靭な体を、ウタが操って戦力として使役できる状況ですね」
「まずいな、俺たちに限らず私服海兵が結構な人数歌世界入りしてるぞ」
「ミヴから上陸部隊へ連絡します。歌世界に潜入している海兵全員の身体をとりあえず搬送、拘束させます。でも本当にまずいのは観客を操られることだ。まず数の暴力…その上、非戦闘員というのは海兵にとっては最も戦いにくい相手ですから。…観客の搬出なんて間に合うだろうか…」
観客さえ安全なところへ移動できれば、会場で大将がウタと直接交戦しても問題ない。
「観客と配信視聴者を無事解放させるためには、プリンセス・ウタを死なせるわけにはいかない。眠らせられさえすれば歌世界は強制終了する…この辺りはアルツェヒト艦隊でなくとも海軍では周知されているはずです。ネズキノコ解毒剤と睡眠導入剤…それを彼女に投与できるかどうかの勝負となるでしょう」
「なら、生け捕り前提の近接戦になるな」
「対能力者部隊を編成招集できているかは怪しいですが、海楼石捕縛網くらいなら機材があれば専門部隊でなくても扱えますよ」
「トットムジカ起動前にウタを眠らせられるかどうかで、民間人の安否が大きく左右されてしまうな」
「そして弊艦隊の任務の成否も。プリンセス・ウタの生存の可否も」
「お前任務第一の海兵と厄介オタク両立してるのすごいな。もしかして今既に人格が多重なのか?」
「いや、今のところ人格一つ分しか歌世界に投入されてません」
「お前の今ここにあるたった一つの人格が俺ァ割と心配だよ」
ヘルメッポは手のかかる後輩を抱え込んだらしい。
「コビ―。とりあえず俺はこの滅私系ファンと一緒にウタのところに行く。お前はどう動く?会場に先に戻るか?」
「二人がウタと交渉している間、僕はひとまず戦力を確保します」
「戦力?」
「えぇ。ウタと交戦する場合に備えて」
「あぁ、さっき仰ってましたね…私服海兵が結構な数いるって。よろしくお願いします。外部との連絡手段に困っている海兵がいたらアルツェヒト艦隊越しなら俺が使えるって伝えてください」
「海兵は後回しでも動いてくれます。でも攻撃力が足りない。今この歌世界の中には有力海賊がたくさんいるようなので彼らを説得して…すごくイヤそう‼」
「海賊に頼るんですか?!海軍なのに?!俺たち海軍なのに?」
「頼るというよりは、利害が一致する範囲で手を結ぶというか…」 - 128二次元好きの匿名さん23/11/29(水) 20:37:04
「手を、結ぶゥ!?」
フェイスペイントのUTAが歪むほど露骨に嫌がるサブを、ヘルメッポは「海賊嫌いはまァ海兵としては正しいんだけどよ」と宥める。「…海賊の方がえげつない戦い方の経験値は高い。その分個人個人が戦力として強い。…海軍の強みは人数、組織力、兵器と科学。そのどれもこの歌世界の中には持ち込めてねェんだ。ウタは今俺たちにとって世界の創造神そのもの…そいつと敵対するとなったらここにいる海軍戦力だけじゃ足りねェぞ、…イヤそう‼」
「従いますけどイヤです!」
「言いやがったァ!」
「海兵としては本当に正しい姿勢ですけど、海軍も必要があれば海賊と手を組むことがあります。撤廃されましたけど、七武海って制度もありましたし、ガープ中将はゴッドバレーでロジャーと共闘してますし」
「…UTA!UTA!」
「念仏唱えるな!」
「サブさん、納得させてやれなくてごめんなさい。でも、…海軍戦力は一般人を守り誘導する方に割かないといけない。戦闘に振り切ることができる人が要るんです。…今から声をかけに行く海賊は、人として信頼できる相手です」
「コビ―、こいつは俺に任せて行ってくれ。俺はこいつと一緒にウタのところへ向かう」
サブがすさまじい顔のまま敬礼した。コビ―大佐の目配せに、ヘルメッポ少佐は頷いた。
三人は二手に分かれた。各自が見聞色の使い手。コビ―大佐は( ① )の元へ。ヘルメッポ少佐とサブはウタのいる( ② )へ。
①に該当する海賊を
・麦わら音階拘束組
・麦わら逃亡組
から選ぶ
② ウタのいる場所を
・市街地(パレード中)
・礼拝所(ルフィ達・ゴードンもそこにいる)
・会場(ウタはルフィ達・ゴードンとも接触済み)
から選ぶ
任意の展開を書き足してくださっても結構です。
- 129二次元好きの匿名さん23/11/30(木) 08:00:44
①ルフィ
② パレード中 - 130二次元好きの匿名さん23/11/30(木) 19:16:29
①拘束組
②会場 - 131二次元好きの匿名さん23/12/01(金) 06:42:53
①拘束組
②パレード - 132二次元好きの匿名さん23/12/01(金) 17:48:44
①音階拘束組
②パレード中 - 133二次元好きの匿名さん23/12/01(金) 23:56:48
① 拘束組
②礼拝所 - 134二次元好きの匿名さん23/12/02(土) 08:02:01
① 逃亡組
②会場 - 135二次元好きの匿名さん23/12/02(土) 19:15:34
どれになるだろうか
- 136ダイス23/12/02(土) 19:23:06
128 + dice1d6=2 (2)
- 137ダイス結果23/12/02(土) 19:33:10
・コビ―は会場上空で拘束されている麦わら海賊団を救出しに行く
・ヘルメッポとサブは会場にいるウタ(ルフィ、ゴードンとは既に会った)のところへ行く - 138二次元好きの匿名さん23/12/02(土) 23:23:46
保守
- 139二次元好きの匿名さん23/12/03(日) 10:44:59
サブはコビーと違って有名じゃないだろうから観客には声が届けづらいだろうな
ウタに対してファンの立場で話しかけられるのがどうなるか
…届くのは難しそうではあるが - 140二次元好きの匿名さん23/12/03(日) 18:12:11
保守
- 141二次元好きの匿名さん23/12/04(月) 00:24:23
保守
- 142二次元好きの匿名さん23/12/04(月) 12:01:34
ルフィと会うのはまだになりそうだな
- 143二次元好きの匿名さん23/12/04(月) 23:11:03
ルフィに会うのは映画と同じタイミングになりそうな感じかな
- 144二次元好きの匿名さん23/12/05(火) 10:02:09
説得どのくらい声届くだろうか
- 145二次元好きの匿名さん23/12/05(火) 21:44:59
なんとなく初回はうまくは行かなそうな気はする
- 146二次元好きの匿名さん23/12/06(水) 01:20:40
コビーは会場の屋根の上に陣取った。肋骨のような、あるいは花びらのような。ライブ会場を半開放で包む可動式の屋根だ。拘束された海賊たちはここから斜めに見下ろす位置。会場のどこからでも見えるところに吊られている。コビーの脚力で接近できないこともないが、そんなことをすれば目立ちすぎる。
今すぐ彼らのもとにいくのはまずい…。
コビーが海賊を連れていくことに対し、ウタと観客が気付かないか、あるいは納得できる状況を作らねばならない。
コビーは見聞色の覇気で会場を俯瞰した。ウタは海賊狩りパレードを中断して戻ってきており、ライブ客へのファンサに励んでいる。ライブ客は音符に乗って滑空するウタと一緒になってウェーブを作って盛り上がっている。ヘルメッポとサブは客席だ。
―――相手は数万人規模の観客を相手にする歌姫なのだ、たった二人でどうウタの注意を惹き付けるつもりだろう…。
「ヘルメッポ少佐」
「おう、なんだ」
UTAコール上げながらをウェーブで思いっきり飛び跳ねた直後のサブが声を落として、隣のヘルメッポ少佐に話しかけた。
「あなたが上官ですので一応聞きます。プリンセス・ウタに話しかける策はありますか」
「困ったことにねェんだよ…俺たちは今完全に群衆に埋もれてる。同じ路上を歩いてるときならまだ話しかけられる見込みがあったが、空中の歌姫一人を数万人の客の中の一人二人で呼び止めるきっかけ、それも後々穏便にいける展開…少し待て、考える…」
「そうですか。…プリンセス・ウタはファンを愛してるんですよ」
「オタクトークは今度聞く」
「俺は彼女の内面に何があるのかは知りません。でも、彼女がプリンセス・ウタとしてファンに見せるのは、ただひたすら愛です。彼女は今日ここに連れ込んだ全員を本気で救いたいんです」
「おっと、オタクトークでもなさそうか…?」
「…この後外道を働きますので、俺に賭けて少佐も騙されてください」
「どういうこった」
「俺、実は闘病中なんです」
「そういやさっき治療とか言ってたな」
「少佐は俺の病状について詳しいことは知りません」
「知らねェな」
「ただ、少佐は俺がなんらかの病であることは聞いており、しょっちゅう薬を飲んでいるのは知っています」
「あ、それ設定だったんだな」
「白い錠剤です。薬が切れるとどうなるか少佐は知りません」
「?」
「助けを呼んでください」 - 147二次元好きの匿名さん23/12/06(水) 01:36:48
サブは俯いた。「サブ?」ケヘッケヘッと妙なえずき方をしながら口元と心臓を押さえて前のめりに背中をひくつかせ始めた。「おい、サブ?」演技、上手ェじゃねェか…などと思ったヘルメッポ少佐の顔が青ざめた。口元を押さえるサブの指の間から血が滴った。ポタ、と芝に落ちる。
「せんぱ…先輩ッ、まずい、俺、やば…」
「いやおいちょ、ちょ、血ィ!?」
ヘルメッポ少佐は慌ててサブの肩下を掴んだ。騒ぎに周囲の観客が振り返る。ざわめきがウェーブを寸断する。「ケガ!?」「え?何あれ?!」
サブはヘルメッポ少佐にだけ見えるように血に赤い親指を立てて頷いた…そのまま彼はふっと目を閉じ、芝の斜面に向かって受け身も取らずに崩れ落ちるように倒れた。そのまま荷物か何かのように転がり落ちる。周囲の観客が悲鳴を上げた。
ヘルメッポ少佐は追いかけようとして転倒した。爪先は空転するがごとく二度三度無意味に地面を掻く。なんとか駆けだした。騒然たる悲鳴の中、サブは斜面下の方にいた観客たちに受け止められて海への転落は免れたらしい。「い、医者ーーー!海兵っぽい兄ちゃんが痙攣してる!!」
ヘルメッポ少佐は茫然とした。 客席の斜面、海際ぎりぎりの場所でライブ客に囲まれたサブは、…血の気を失った顔で浅い呼吸でケヘケヘと咳込み鼻からも口からも血を流し、取りつかれたようにガクガク痙攣している。
「兄ちゃん!意識あるか!息しろ息!!」
「え、えげっ、…へ、先ぱっ、…」
「だめだこれ回復体位!気道確保!」
サブが焦点の全く合わない目で、激しくぶれる手をヘルメッポ少佐に向かって伸ばす。その体を周囲のライブ客が横向きに転がしてきぱきと手を掴んで顎下に入れる。「ドアホ!斜面でやったら逆効果だ!頭をこっちにやってあげてからだろ!」「すまん兄ちゃん!がんばって息しろ!」
ヘルメッポ少佐はぎゅっと拳を握り締めた。怒りで胸が痛い。
お前。お前、ほんと、…この任務終わったら説教だ。
「あんた知り合いか?これ何の発作だ?!」
「普段対処どうしてる?!」
ライブ客がサブの激しく震える手の先にヘルメッポ少佐を見つけ矢継ぎ早に質問をぶつけてくる。「おい、おいおいおい…こっちまで真っ青じゃねェか!」
「大変!どうしたの?!」
あぁ。多分彼女は本当に慈悲深いのだ。
滑空する音符から躊躇なく飛び降りて、歌姫がざわめく客席を走ってきた。 - 148二次元好きの匿名さん23/12/06(水) 13:12:32
身体張りすぎだな
- 149二次元好きの匿名さん23/12/07(木) 00:37:15
自分の命を軽く見てる感じ
いろんなキャラから怒られるだろうな - 150二次元好きの匿名さん23/12/07(木) 12:16:17
保守
- 151二次元好きの匿名さん23/12/07(木) 23:30:18
サブかなかなかにめんどくさいやつだな
- 152二次元好きの匿名さん23/12/08(金) 07:22:23
演技が迫真すぎる
これは心配するよ - 153二次元好きの匿名さん23/12/08(金) 18:59:46
保守
- 154二次元好きの匿名さん23/12/08(金) 20:13:44
「ウタ!この兄ちゃんが急に血吐いて倒れたんだ!」
「ウタちゃん助けてあげて!」
「お願い!可哀想」
「…ここに来る途中で海賊船を撃退してくれた海兵さんじゃないかな」
「ライブスタッフに救護班とか多分いる…よね?何とかなるよね?」
人込みは素直に割れてウタに道をあけ、サブの周りの善意の市民たちが、走ってきた歌姫に口々に助けを求める。
ウタは「ケガしてる…転んじゃったの?」と言いながら屈みこんだ。「大丈夫、すぐなんとかするよ!」とサブに手を伸ばした。「どこから血が出てるんだろう…ケガしてる場所さえ分かれば…喉かな?」ウタの指先で、サブの喉が七色に揺れ動く光に覆われた。
「ケフッ」
「また血吐いた!」
「ウタちゃん、それ今何したのかよくわからないけど多分ダメだ!」
「え、そんなことないよ!?ここでなら身体のケガくらいちゃんと治せる!」
ヘルメッポ少佐は浅く、しかし長めの呼吸をしてから、腹を括った。「サブ…お前…お前ェ!」拳で地面を殴って立ち上がり、転倒しそうな勢いでサブに駆け寄った。「通してくれ!俺の後輩!後輩なんだよ!」サブを抱え起こそうとすると周囲から「動かさない方がいいぞ金髪兄ちゃん!」「血で窒息する!落ち着いて!」と声が上がる。
サブのカバンを開けて漁って見せる。「薬!薬今出してやるから!…お前、サブ!あの白い薬!…なんで持ってきてないんだよ!おい嘘だろ!」
「ふ…ふね…」
「船に置いてきたのか!?」
ヘルメッポ少佐がサブの上半身を引きずり起こそうとすると周囲が「待って!」「担架、担架ないの!?」と慌てる。
「船に!船に戻る!誰か手を貸してくれ!担架なら棒ありゃ作れるから!」
ヘルメッポ少佐が周囲に呼びかけると、サブの救護に当たっていた観客が「任せろ」「消防団員です」「レスキューです」と走り寄ってくる。
「この兄ちゃん海兵なんだって?金髪兄ちゃんもか?」
「海軍の船はどっちの港に停泊してる?」
ウタがはっとしたように声を上げた。「ダメ!」 - 155二次元好きの匿名さん23/12/08(金) 20:17:09
「な、治せる!治せるからここにいて!港になんか行かなくていい!」
「そう言ったって…さっきのキラキラのやつじゃ無理だったろ」
「歌手が医者の仕事までしなくていいよウタちゃん」
「みんな!みんなちゃんと助ける!助けられるから!!行かないで!」
「…プリンセス!急患なんだ、今この兄ちゃんに必要なのは医者と薬!命に関わるかもしれねぇだろ!」
動揺は細波のごとく広がる。サブが倒れるのを見ていなかった観客、今サブたちの周りで何が起きているかよく見えていない観客も、人だかりにウタが降りそこで何か事件が起きていることくらいは察する。憶測は不安を誘う。ざわめき始める。
何かあったの? 誰か倒れてる。 あれ血?
なんかウタ怒られてない? ウタなんかしたの?
歌姫の表情に焦りが滲んだ。急に夢から醒めたような、全身が冷えていくような感覚に襲われた。
この世界には、自分を愛し慕ってくれる人達とだけ立て籠もったのだ。今、群衆は戸惑っている。疑っている。自分への愛以外の感情が蔓延し始めている。この人数から好意や憧れ、崇拝、共感以外の感情を向けられたら。どうしよう。このままでは歌姫でもメシアでもなくなってしまう。
一つ目のダイス(コピペ用:dice1d100=)
■ネズキノコを食べたウタの現在の正気崩壊度 0--------100
39以下で歌世界継続を断念することも視野に要救助者の生命を優先
40以上で歌世界継続のため観客を落ち着かせることを重視
85以上で観客は虹の海
100でトットムジカ即召喚 詰む
二つ目のダイス(コピペ用:dice1d6=)
■この忙しい状況に重なって発生する事件
1 現実世界 海軍到着
2 海賊「俺は医者だ!」
3 歌世界 ウタの意志とは無関係の変化を来す
4 アルツェヒト艦隊から数名ほど歌世界に突入
5 ゴードン「ウタ!!!落ち着きなさい!!!」
6 まだこれと言って大きな事件は起こらない
- 156二次元好きの匿名さん23/12/09(土) 01:31:45
一つ目 dice1d100=61 (61)
二つ目 dice1d6=3 (3)
- 157二次元好きの匿名さん23/12/09(土) 12:47:49
一つ目 dice1d100=18 (18)
二つ目 dice1d6=5 (5)
- 158二次元好きの匿名さん23/12/09(土) 17:19:59
一つ目 dice1d100=74 (74)
二つ目 dice1d6=5 (5)
- 159二次元好きの匿名さん23/12/09(土) 17:23:08
一つ目 dice1d100=77 (77)
二つ目 dice1d6=5 (5)
- 160二次元好きの匿名さん23/12/09(土) 19:52:00
- 161ダイス23/12/09(土) 20:06:25
155 + dice1d5=4 (4)
- 162二次元好きの匿名さん23/12/09(土) 20:11:10
二つ目が5ばっかだ
ウタが取り乱しすぎたか - 163二次元好きの匿名さん23/12/10(日) 07:21:58
ギリギリ理性は保ってるね
まだ説得する余地はあるか - 164二次元好きの匿名さん23/12/10(日) 13:29:58
ウタは思考した。最優先事項は何だ。
心は焦り、どうにかして血を吐いて痙攣しているライブ客を助けたいと思っている。
だが頭の中の冷静な部分が熟考を促す。目の前で死にかけているのはおそらく海兵だ。その海兵を抱えて船に行かせろと喚いているのも海兵…いや多分海軍将校だ。海軍は自分のライブを危険な計画と見なして妨害しようとした。今目の前で起きていることだって罠ではないとは言い切れない。そりゃ…血の匂いは本物としか思えないけれど、…こちらは世界中のファンを連れて行こうとしているのだ、…海兵の命一人分を犠牲にする戦略を取らないとも限らない。
そもそもなぜ歌世界の中なのに、負傷を治すことができないのかわからない。現実世界で眠っている体が負傷して、それがこちらの世界の精神にまで影響を及ぼしているのだろうか。この血を吐いている海兵についてはわからないことが多すぎる。
むしろ優先すべきは、観客の動揺を止めることだ。この人数でパニックを起こされたり自分への反感を抱かれては困る。あと数時間で現実世界の自分は死んで歌世界は永遠のものとなるが、この先ずっと一緒にいるからこそ愛と喜びしかない最高の新時代を迎えたい。
抱えているものが違うのだ。
最悪の場合一人を見殺しにするとしても、数万人、配信の向こうまで含めるなら数千万人のファンのメシアでいさせてもらう。
ウタは両手を空に上げて観客に呼びかけた。「みんな聞いて!」
「よくわからないけど海兵さんが急病みたいなの!応急手当とかするからライブ中断しちゃうけど、カラオケ音源流しとくから好きに歌ったり踊ったりして待ってて!」
ウタは担架を出現させた。「ここに乗せて。あとは運べるから」
ヘルメッポ少佐が「どうする気だ?」と尋ねた。「どこに連れて行く気だ、エレジアに病院はないだろ?」
「任せてよ、なんだって作れるんだから薬くらい作れる。スタッフルームに連れてくね。海軍の方にはスタッフルームから連絡するよ。ほら、乗せて!」
周囲の救護者が顔を見合わせる。先ほどのウタの言動には多少不可解な点があったが、…助けてくれるなら問題ないだろう。サブの脚を抱えて下半身を担架に乗せた。 - 165二次元好きの匿名さん23/12/11(月) 00:15:47
ここでウタが会場離れて本編と違う流れができたね
ここからどうなるだろうか - 166二次元好きの匿名さん23/12/11(月) 06:53:46
ウタの気をそらせたのはプラスに働くんだろうか
- 167二次元好きの匿名さん23/12/11(月) 18:31:36
保守
- 168二次元好きの匿名さん23/12/11(月) 23:24:01
アルツェヒト艦隊、旗艦ダスキント・ヴァールトート号、海兵休憩室。
「ふぶっ」
長椅子に座っていたミヴが突然咳込んで口から血を噴いた。
飛び散って顔に赤い斑点を作られた軍医が目を丸くして「どうした?!」と尋ねた。「何故…サブが攻撃でも受けているのか?!」
「安心してくれ、Dr.ハル…歌世界にあるのは心、精神だけだ。ウタウタの能力者が歌世界内で無敵であろうと、歌世界から現実世界の肉体に損傷を与える攻撃はできない」
「その血は。…二つの世界で覚醒している負荷か?」
「いや。潜入はまだ続行できる…サブは今ウタと接触中、げぶっ」
「何が起きている」
「サブの身体はあの世界において『ウタの思い通りにできない特異点』だ、自分の身体を小道具として有効活用して陽動に成功しっ、げほっ、した」
「どういう意味だ」
「…あとで話す、…朗報、しばらくウタは歌わない」
そこまで言ってミヴは口を押えた。激しく咳込む背中を擦りながら、Dr.ハルは中将を振り仰ぎ「構わん、指示は出してくれ」と声を上げた。中将はミヴの上体を支えていたが、艦内放送電伝虫を介して「配信確認!」と指令を発した。
エレジアから生中継している電伝虫を稼働した途端に流れたウタの楽曲に一斉に悲鳴が上がったが、それがウタの歌唱によらないカラオケ音源と分かり艦隊一同冷汗を拭う。歌世界を中継する電伝虫が送る映像では、ウタは今ステージに不在、観客は客席で思い思いに踊ったり歌ったり一眠りしたりしている。
「サブはどこ?」
Dr.ハルが投影映像を食い入るように見つめて呟くように問う。「無事とは思えないのだが?」
ミヴは血色を欠いた顔色でゼエゼエ息をするばかりで応えない。ただ、虚空を凝視している。やがて息が整ったとき、ミヴは「ご安心を」と掠れた声で言った。
「…私が持ちこたえればいいだけのこと」
「持ちこたえられるような負傷なのか?サブも同じ苦痛を?」
「それはあなたが気にすることではない」
ミヴは血まみれの口元で嘲りによく似た笑みを浮かべた。
「生存願望を持ち合わせない人格としてサブを作り出したのはあなたじゃないか、Dr.ハル。忠実で誠実、死を恐れない。傑作だと誇ればいい、『彼』は立派に機能しているよ」 - 169二次元好きの匿名さん23/12/11(月) 23:29:43
ヘルメッポ少佐はサブの上半身を抱えたまま逡巡した。
「ね、ほら、早く離して?」
ウタが言うが、…サブは一人で行動させるにはあまりにも不安要素が多いのだ。ただのファンボーイならまだしも、こいつは自分のことを中将艦隊備品の消耗品か何かと見なしている節がある。
「俺も行く。後輩なんだ」
「えぇー、ちょっと困っちゃうよ」
不意にサブがヘルメッポ少佐の服をつかんだ。「せっ、せんぱ…」タンクトップに血が付く。
「先輩…側ついといて、苦じっ…げほっ…だすけてよ」
少しだけ誉めてやろうと思った。全く褒めるに値しないんだが。サブの背中を擦ってやりながら「当たり前だろ、いくらカラオケ大会始まるからって発作起こしたお前ほっとくほど俺は鬼じゃねぇ」と周囲に聞こえるように言ってやる。
周りの人垣から「せめて知り合いが一緒で良かったねぇ」「こんなんじゃ本人から電伝虫できないだろうし」と声が聞こえる。ウタも反論しづらくなったか、小さくため息をついて「わかった。一緒に来て」と言った。
ウタは音符に乗った。担架は誰の手を借りることもなく宙を滑るように飛ぶ。ヘルメッポ少佐は担架の持ち手を掴んで並走していたが、途中で地面をけって担架に飛び乗った。
「みんなごめん、ちょっと待ってて!それじゃ、楽しんでてね!」
ウタがパンと手を叩いて会場に音源を流す。
三人は緞帳で隠されたステージ袖からぐるりと回りこむ。ウタが照明をつけた。狭い廊下にはドアが並んでいる。開ければそれなりの広さの空間があったが、楽屋高スタッフルームだか…と呼ぶには殺風景だ。
衣装や小道具がすし詰めだとか、ウタの休憩のために何か置いてあるだとかそういうこともない。本当に…無機質で何もない部屋。当然だろう。物質面の需要は全てウタが能力で無限に満たせる、そういう世界なのだから。この部屋だって、さっき照明をつける瞬間まで存在していなかったかもしれない。
そもそもウタが、楽屋とはどんなものか知らないのだろう。だからこの無機質さはむしろウタの知識の欠落の表れと見なしてよかろう。
ウタは担架を部屋に運び込んだ。部屋の奥のドアから動物の着ぐるみを被った集団が出てくる。
「金髪お兄さんは廊下で待っててもらっていい?」
「そりゃまたどうして」
「一応ここ部外者立ち入り禁止なんだよ。大丈夫、うちのスタッフがなんとかするから!」 - 170二次元好きの匿名さん23/12/12(火) 06:56:30
サブの人格ができた件がなかなかひどいな
- 171二次元好きの匿名さん23/12/12(火) 17:59:46
もとから生存願望持たなくできてるのひどすぎる
- 172二次元好きの匿名さん23/12/12(火) 19:53:35
ヘルメッポ少佐はウタの後ろの着ぐるみたちをじっと観察した。「スタッフ」たちは生き物ではないのが見て取れた。ウタが能力で出して見せているまやかしに過ぎない。ここにはウタしかいない。
ウタ、お前が世間知らずで良かった。見聞色の覇気がどんなものかわかっていたら、お前はそれで俺をごまかせるとは思わなかっただろう。
ただ、…見聞色さえなければ視覚的には立派に機能するごまかしを生むその能力、それを使ってこの場を乗り切るとしたら、ひとつ最悪な手段が思いつく。 このあとお前が何をするかによっては、俺はもうお前に共感する理由がなくなる。
ヘルメッポ少佐は頷いて「頼む」と言った。ウタはサブのバッグをヘルメッポに預け、パタッとドアを閉めた。
楽屋だとかスタッフルームだとか、一般的にはどんな様子の部屋なのかウタにはわからない。だから、ここはコンクリート打ちっぱなしの無機質な空間。でもまぁ、いいや、そんなの気にしてる状況じゃないし。
ちょうどいい高さに浮かばせたままの担架に歩み寄る。
「…君はどういう病気なの?というかそれは病気なの?」
口元を血まみれにした海兵…多分海兵…に話しかけた。まぁ、このこれ見よがしの青ネクタイは海兵のもので間違いないだろう。敵なのか味方なのか…海兵ネクタイと、全身装備のUTAグッズ、どっちに注意を向ければいいのかわからない。
海兵でさえなければ、警戒などせず心の底から心配するだけなのに。
「血だけでも止められないかな…」
ウタは海兵を観察した。生憎医療知識は持ち合わせていない。本来ここでは医療知識など必要になるはずがなかった。「ねぇ、もうこの世界には戦争も病気もなくなるはずなんだけど。どうして君の血は止まらないのかな…」
サブは薄く目を開けた。「ごめんなさい、プリンセス・ウタ」掠れた声で謝罪を述べる。
「俺が海兵だって気付いているでしょう」
「うん、みんなそう言ってた」
「…俺はウタウタの能力だとか歌世界だとかについて事前に知った上でここにいます」
「それがどうしたの?」
「プリンセス・ウタ、ここに今いる俺は精神だけの存在。そうでしょう?」
「うん。知ってるんだね」 - 173二次元好きの匿名さん23/12/13(水) 07:29:41
「…歌世界に連れてくれば皆に病気も苦しみもない生活をさせてあげられるっていうあなたの見込みは、ほとんどの人に対してはそこまで大きな誤算じゃない。ほとんどの場合病気や負傷って言うのは肉体の異変だから、精神が肉体から解放されればもう苦しまないかもしれない。でも、俺が病んでるのは精神の方だ。肉体を捨てても逃れられるわけじゃない」
「何それかわいそう…」
ウタは表情を曇らせた。「そうだ、薬作ってあげる!白いのって言ってたよね?」
「あなたは薬剤師じゃないでしょう。プリンセス・ウタ、俺が飲んでる薬はプラシーボじゃないから、あなたから薬をもらってもすごく嬉しいだけで効能はない。…現実世界の身体の方にちゃんとした医療を施さないと意味がない」
「…じゃぁ君は、歌世界の中では救われないの?」
「あなたは歌世界の中で最強とはいえ全能じゃない。どうしたってあなたの能力の及ばないものはある」
「そう…」
「あなたは完全な救世主にはなれない」
ウタは沈痛な表情で俯いた。「じゃぁ、…仕方ない」そしてサブの顔に手を伸ばした。
「ごめんね」
救ってあげたいと心から願ってはいるのだけれども、メシアは喝采を浴びねばならない。
民衆に奇跡を見せねばならないんだ。
コビー大佐はステージに飛び降りた。
自由形カラオケ大会の騒ぎの中でなら目立たず行動できるかもしれないと少し期待したが、誰かが同時多発的に「あれコビー大佐じゃない?」と声を上げたのがきっかけになって結局注目を浴びてしまった。
「コビ―大佐?」「ロッキーポートの?」「こっち向いてー!」「なんでステージに?」
コビー大佐は周囲を見渡し、ひとまず敬礼した。歓声が上がる。
「皆さんお楽しみのところお騒がせしてすみません。海軍本部大佐、コビーです」
観客席は手を振ったりペンライトをピンクに変えたりして応える。
「海賊が捕縛されていると聞いたので、海軍として引き取りに来ました。ウタさんのお手柄だと聞いています。いらっしゃら…ないから直接お礼が言えなくて申し訳ないのですが、皆さんからどうかお伝えください」
はーい、がんばってーなどの声が上がり、ちらほらと敬礼を返す姿もあった。群衆の中で、制帽を被ってぞろぞろ客席から下りてこようとする私服海兵の姿もあった。コビ―大佐は手を挙げて彼らに客席待機の合図を送る。
よし、この場については問題なく進められる。 - 174二次元好きの匿名さん23/12/13(水) 13:12:05
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- 175二次元好きの匿名さん23/12/13(水) 13:12:35
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- 176二次元好きの匿名さん23/12/13(水) 13:14:20
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- 177二次元好きの匿名さん23/12/13(水) 13:15:35
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- 178二次元好きの匿名さん23/12/13(水) 13:18:12
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- 179二次元好きの匿名さん23/12/13(水) 13:19:42
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- 180二次元好きの匿名さん23/12/13(水) 13:21:05
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- 181二次元好きの匿名さん23/12/13(水) 13:24:36
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- 182二次元好きの匿名さん23/12/13(水) 13:27:42
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- 183二次元好きの匿名さん23/12/13(水) 13:34:15
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- 184二次元好きの匿名さん23/12/13(水) 23:49:09
コビーはウタがいない隙に正面から海賊たちを解放しに行ったか
ここからどう展開が動くだろうか - 185二次元好きの匿名さん23/12/14(木) 06:39:47
コビーは有名すぎて目立たずは無理だったか
- 186二次元好きの匿名さん23/12/14(木) 18:11:25
保守
- 187二次元好きの匿名さん23/12/15(金) 00:01:25
コビー大佐は舞台を蹴って音階拘束の譜面の高さまで跳び、終止線の辺りを片手で掴んでぶら下がった。
「こんにちは!麦わら海賊団の皆さん!」
「おうコビーじゃねェか、お前も来てたのか」
「久しぶりね、今日はオフ?」
「仕事です!えぇと、そちらのすごいメイクの方はウソップさんでよろしいんでしょうか?」
「おう俺だ俺だァ、…よくわかったな?」
他愛無い会話をしながら、コビー大佐は音階拘束された面々を確認した。船長麦わらのルフィ以外は全員いる。そして別の海賊団の顔ぶれも。ビッグマム海賊団から二名、クラゲ海賊団の三名。
「なんじゃ、お前達は海軍の英雄とも親交があったのか?」
「あぁ、そいつルフィの友達だ。で、どうした?」
「ウタの計画を止めるために皆さんの力が必要なんです。僕を信じて捕まってくれませんか」
「ヨホー!!大変!私たち逮捕されちゃうんですか!」
「安心しろブルック、こいつなら問題ねェ」
「この音符から脱出する方法知ってるの?」
「えぇ。音階拘束は、拘束者の精神を特定の音程と紐づけしてロックするもの…解除には正確にその音程を発することが必要です。僕が音符を読み取るので、ブルックさん、発声は音楽家のあなたに頼りたい」
コビー大佐は片腕に全体重を乗せてぶら下がったまま、譜面を指さした。ブルックが「なるほど、承知しました」と答える。
「何番目の線の上…とか言えば伝わりますか?」
「できたら楽譜全体を見たいですね。コビーさん、何か書くものを持ってらっしゃいませんか」
「メモ帳はあるんですけど、ここにぶら下がるのに右手が埋まっちゃってて」
「わしを足場にせェ」
「そんなの申し訳ないですよ」
「構わん。事態は一刻を争うじゃろう」
海軍本部大佐は恐縮しながら元七武海の胴体の上に足場をもらい、ノートに手早く譜面を書き写し始めた。
「まずはロビンさんですね」
「あら、どうして?」
「この高さから落ちたら危険です。皆さんのためにネットを張ってください」
「私は構わないけど、私が能力でスパイダーネットなんて張ったら一般市民に私たちが協力関係になるのがバレてしまわないかしら。さっき観客相手に装った言葉が無駄になってしまうわよ?」
「あっ…」 - 188二次元好きの匿名さん23/12/15(金) 00:04:47
コビー大佐が手を止めると、一つ上の譜面からサンジが「俺をナミさんより先に下ろしてくれさえすりゃいい。うちの野郎どもは頑丈だ、自力で着地する」と言った。ゾロが「おいコビー、怪しまれたくなきゃ海兵を集めてステージを囲ませろ。俺たちが自由の身になったのに逃走しなかったら不自然だろうが」と補足した。「ヨホッ。では、私が最後に下りましょう。下から声が届くかどうかわかりませんから」かくして、コビー大佐の招集に応じてステージ周囲を囲む形で編隊した海兵たちの真ん中に、麦わらの一味がボトボト降ってくることになった。
「おい!」
コビー大佐に、別の譜面から声が飛んできた。ビッグマム海賊団、こんがり大臣オーブンである。「妹だけでも助けてやってくれねェか?」
「お兄ちゃん…」
コビー大佐は少し考えた。「あなた達…」
「あなた達、今この場だけでも海軍である僕や麦わらの一味と共闘する意思はありますか」
「うっ…わかった。力を貸す」
「あなた方を信頼しても問題ないと確信できる何かをください」
「は?」
「僕たちは今この歌世界にいる人間全員でかかっていっても勝ち目の見えない相手と戦わないといけない。ウタの能力、トットムジカの実態についてあなたは理解していますか。内輪揉めする余裕がないんです。敵対されるとなるとあなた方の力は脅威です」
オーブンは静かにこめかみに青筋を立てたが、コビー大佐はあくまで大真面目に本音を述べた。
「あたしに手錠をつけな」
ブリュレが言う。「オーブンお兄ちゃんへの人質には十分だろう?」
「ブリュレ!」
「お兄ちゃん、…絶対この島から出ようね?」
「…」
交渉は成立した。ブルックの発声でブリュレが落ちる。サンジが迷わず受け止めたのを見て、オーブンは何か考考え込んだまま解放されステージへ落ちていった。ついでにクラゲ海賊団三名とも交渉し仲間に引き入れた。この三名は寝返っても大した脅威ではない。
「ブルックさん、これがあなたを拘束する音程です」
「ありがとうございます。それではお先に。レ~♪」
ブルックがヨホッと離脱したのを見届けて、コビー大佐も譜面から手を離した。着地の衝撃を関節で殺し周囲を見渡す。
潜入海兵総勢40名、船長を除く麦わらの一味、ビッグマム海賊団の二名、クラゲ海賊団の三名。
足りない。四皇勢力を引きこんでなおおそらく戦力として足りない。でもやるしかない。 - 189二次元好きの匿名さん23/12/15(金) 07:50:44
この後は海賊側は映画と同じ動きだろうか
- 190二次元好きの匿名さん23/12/15(金) 19:35:41
やっぱり脱出方法探る感じかな
- 191二次元好きの匿名さん23/12/15(金) 21:29:35
「大佐殿!海賊たちはどこへ連行すればよろしいですか」
「よく聞いてください。特に海兵の皆さん…」
コビー大佐が客席に聞こえないよう声を落とした。
「一時的共闘です。この後ウタ及びトットムジカとの交戦の可能性があります。一般市民や海軍への危害がない限り、今ここにいる海賊たちを拘束することは僕が禁じます」
海兵たちもある程度予見していたのだろう。大きな驚きもなく彼らは受け入れた。
「SWORD隊員とアルツェヒト艦隊隊員が今ウタと直接対話に臨んでいます。どう転ぶかわかりません。まず海賊たちを、ウタが歌い始めてもその声が届かないところまで撤退させてください。市街地方面へ。上空を哨戒中の音符の兵士に警戒しつつ護送、あなた方もウタの索敵範囲外で戦力を温存して待機していてください。麦わらの一味の皆さんはできればルフィさんと合流してほしい…僕はウタと交渉中の隊員と合流します」
イェッサー、の声が上がった。
ブリュレが両手をそろえて差し出してくる。「さァ」
「失礼します」
ブリュレに手錠をかけると、コビー大佐はオーブンに向き直った。「無礼は承知の上です。ただ、今は腹の探り合いをする時間すらないんです。僕一人の無礼です、報復は他の海兵ではなく僕に」
「海賊と海軍で手を組むんだ、逆の立場なら俺もそうしてる。だが、事が終わってもブリュレの手錠が外されなかったら、万国が海軍へ宣戦布告すると思え」
「えぇ。わかりました」
コビー大佐の服を下から一心に引っ張る者がいた。見下ろすとトナカイ。麦わらの一味の船医が「なァ、なァ」と話しかけてくる。海兵から「タヌキ…」「かわいい」と声が聞こえる。
「ウタと交渉中の隊員って、さっき血を吐いて倒れた奴のことじゃないのか?俺を連れてってくれ、俺、医者なんだ」
コビー大佐は麦わらの面々の方を見た。麦わらの一味にはルフィを迎えに行ってほしいが、トナカイの船医チョッパーは必死に言い募る。「あいつ斜面を転がり落ちて…多分頭も打ってる。何があったのかわからないけどなるべく早い診察と手当てが必要だ」
「どうしましょう、麦わらの一味の皆さん」
船長不在の麦わらの一味の意見
誰が言ったか込みでお願いします>>193
1 ウタを刺激しかねない 海軍の医者に任せて一緒に来い
2 チョッパーならそう言うよな 行ってこい
3 チョッパーが行くなら、自分も付き添おう
4 その他
- 192二次元好きの匿名さん23/12/16(土) 09:14:47
3
ゾロ - 193二次元好きの匿名さん23/12/16(土) 20:36:25
3かな
キャラはゾロかサンジかフランキーあたりだろうか - 194二次元好きの匿名さん23/12/17(日) 07:50:33
チョッパーが動くことで展開に変化あったりするだろうか
- 195二次元好きの匿名さん23/12/17(日) 09:18:45
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- 196二次元好きの匿名さん23/12/17(日) 09:22:38
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- 197二次元好きの匿名さん23/12/17(日) 09:22:49
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- 198二次元好きの匿名さん23/12/17(日) 09:23:02
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- 199二次元好きの匿名さん23/12/17(日) 09:23:14
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- 200二次元好きの匿名さん23/12/17(日) 09:23:25
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