【SS・🎲⚓️あり】服部ヒョウ太は水の都に居る⑯【閲覧注意】

[1 ◆BtOeeshqkE 23/11/05(日) 15:19:35]

水の都を離れ、僅かな視界で世界を見て回るクローンと生徒会長異世界奇譚です

[2 ◆BtOeeshqkE 23/11/05(日) 15:20:10]

今までの章

chapter.0　落下

chapter.1　生徒会長は水の都の夢を見るか？

chapter.2　最初の接触

chapter.3　病院の窓

chapter.4　宿借りの島

chapter.5　過ぎにし日々、ウォーターセブンで

chapter.6　豹は無慈悲な夜の兵器

chapter.7　出来損ないの順列都市

chapter.8　あなたのための物語

chapter.9　豹は街から世界を夢見る

[3 ◆BtOeeshqkE 23/11/05(日) 15:22:31]

原作開始（⑨より）
chapter.10　すべての終わりの始まり
・カクと同時に麦わらエンカウント
・最初のアイスバーグさん襲撃に出くわして徹夜で見張り
・白昼押し掛けてきた麦わらに利害の一致で付いていく
・決断、決別
・オリジナルに海まで投げ飛ばされる

chapter.11　たったひとつの冴えたやりかた
・ドボン、波に拐われかける
・アクア・ラグナから逃走ついでに人獣化
・覚悟を宣誓、ロケットマン乗車

chapter.12　今宵我ら星を奪う
・睡眠でほぼ全回復
・体の状況を共有したり、しなかったり
・味覚が治る示唆を得る
・司法の塔探索、そげキングと合流
・ジャブラを騙し討ち成功
・手錠わちゃわちゃの補助
・しっかりクビ宣告
・ルフィと合流、最終決戦へ
・克服、勝利、帰還

[4 ◆BtOeeshqkE 23/11/05(日) 15:23:24]

chapter.13　クローンドリーに花束を
・タイルストンの家に居候
・味覚GET
・お酒飲みとエトセトラ
・ロビンとお話
・ゲージ発生
・平穏な日常が過ぎる
・造船を手伝い、全て話した←ｲﾏｺｺ!

[5 ◆BtOeeshqkE 23/11/05(日) 15:24:30]

1スレ

【SS・🎲⚓️】服部ヒョウ太は水の都に居る｜あにまん掲示板

前スレ

【SS・🎲⚓️あり】服部ヒョウ太は水の都に居る⑮【閲覧注意】｜あにまん掲示板

参照概念スレ

服部ヒョウ太を原作ガレーラに投げ込みたい｜あにまん掲示板

[6 ◆BtOeeshqkE 23/11/05(日) 15:27:03]

有志の方がスレをまとめてくださったテレグラフ

服部ヒョウ太は水の都に居るSSリンクまとめ

[7 ◆BtOeeshqkE 23/11/05(日) 16:48:17]

「アーニキ〜〜〜！！呼んできたわいな〜〜〜！！」
「ん？……来たか」
特徴的な語尾が遠くから飛んできて、うとうとと降ろしていた瞼を上げる。
途中からの手伝いであったおれとは違い丸三日ぶっ続けで作業をしていた職長に社長、そして主に力仕事を請け負っていたカエルのヨコヅナは平たいガラクタの上で鼾をかく程に寝入っていたが、大声はしっかり届いたらしく皆目を覚ました。


スクエアシスターズの案内を追い越し、たたたっと軽やかな小走りの音をさせて、船の所有者となる麦わら帽子を先頭にした一味が向かってくる。
「おーーい来たぞフランキー！！船くれーーっ！！」
「ンマー、来たな。あいにくフランキーは外しててな、だが船は出来てる」
腕を大きく振り上げたルフィが呼ぶ名前は今この場にはいない。代わりにしゃんと起き上がった社長が応対する。


「……この船は凄いぞ、図面を見た時目を丸くした。あらゆる海を越えて行ける、世界の果ても夢じゃねェ」

[8 ◆BtOeeshqkE 23/11/05(日) 18:26:39]

「フランキーからお前への伝言はこうだ、麦わら」
アイスバーグ社長は船を覆う布に手を掛け、急かすルフィの期待を背後に口角を上げる。

「『お前はいつか海賊王になるんなら！この百獣の王の船に乗れ』！！」


ばさ、と勢いよく白布が翻れば、隠れていた姿が現れ出る。デフォルメされた百獣の王──ライオンが骨に支えられた、海賊らしくないようで自由な海賊らしい船首、がっしりと高く聳えた縦帆を携えたスループ船。


「うおーーっ！！！でけーーー！！かっこいい〜〜〜！！！」

船長の雄叫びを皮切りに続々と上がる歓声はどれもきらきらと輝き、心からの喜びに満ちていた。これだけの反応を受ければ船大工冥利に尽きるというやつだろう、おれの横に座り込んだ職長たちも嬉しそうにからからと笑っている。

[9 二次元好きの匿名さん 23/11/05(日) 18:47:18]

わーい新スレだー!!
スレ主さんたて乙です

[10 二次元好きの匿名さん 23/11/05(日) 19:27:13]

スレ立て乙です！！！
完結までずっと見守っております！本当に応援してます…！！

[11 二次元好きの匿名さん 23/11/05(日) 19:32:38]

スレ立てありがとうございます　とうとうPart16かぁ　概念スレから追っかけ続けてまさかこんな素晴らしい物語と化すとは思わなかった
ありがとうございます　本当に、本当に応援してます

[12 二次元好きの匿名さん 23/11/05(日) 19:41:15]

うおーー！新スレあざます！
ヒョウ太がサニー号の造船手伝ったのが感慨深い…

[13 ◆BtOeeshqkE 23/11/06(月) 01:00:11]

一通り船上ではしゃぎ回り終わったのか、ルフィがデッキの手摺りから身を乗り出して下へと声を掛けてくる。
「なァアイスのおっさん！フランキーどこだ？礼も言いてェのに！！」
礼を言うにしても伝える相手がいなくては仕方がない、という訳だ。

しかし、奴がここから離れていったときの態度からして──
「──もうお前らに会う気はねェらしい。麦わら、あいつを船大工として誘う気なのか？」
「うん！よくわかったな！！おれ、あいつに決めたんだ船大工！！」
「それを察したようだ」
面と向かって誘われれば断る自信がない、だからこそ会わないように。……面倒な精神性だ。過去に起こした後悔への償い、それに縛られているのだという。あの不良解体屋のバックボーンと思うと首を傾げてしまうが、昔馴染みである社長の言うことだ、事実だろう。



「もし本当にあいつを連れてく気があるんなら手段を選ぶな、力尽くで連れてけ。それがあいつを解放できる唯一の手段だ」
「無理やり？そんなんでいいのか！？」

[14 ◆BtOeeshqkE 23/11/06(月) 01:02:13]

力尽くで連れて行くと麦わらが堂々と宣言した、そのすぐ後の騒ぎは最悪の一言で片付けられる。
ほとんど復興の終わっていた裏町が盛大に破壊されることから始まって、飛び交う罵声と共に文字通りカッ飛んで来た諸々の汚らしい事柄から顔を逸らしたり、痛々しく見苦しい場面があったりとまァ色々と、本当に最悪な一幕であったが。


「さァ乗れよフランキー！おれの船に！」
「──仕方ねェ！世話してやるよ！！おめェらの船の船大工！！このフランキーが請け負った！！」


そんな最悪を送り出す声援が耐えない辺り、海賊の船出としては悪くない……のかもしれない。

[15 二次元好きの匿名さん 23/11/06(月) 01:41:32]

クラッチも見たのね…

[16 二次元好きの匿名さん 23/11/06(月) 08:12:40]

＞僅かな視界で

う゛ぅ゛っ

毎回1の説明文で刺さるのつらい　ドウシテ

[17 二次元好きの匿名さん 23/11/06(月) 10:28:11]

流石にヒョウ太もクラッチ含めたあの流れは見てられないか……
あと今月のワンピース学園でヒョウ太が出てたので真っ先にスレ主さんの安否が気になってしまったよ

[18 二次元好きの匿名さん 23/11/06(月) 18:17:03]

こっち来てからルッチも少しずつ考え方が変わっていることがよくわかる…

[19 ◆BtOeeshqkE 23/11/07(火) 01:33:21]

>>17

心配ありがとう　正気を失い無事墓場にいるよ

「やっと全員揃った！さっさとこんなに砲撃抜けて！！冒険にいくぞ野郎共〜〜！！！」

海軍に追いかけ回されるなどという慌ただしい出航の真っ只中で、この数日間続いていた一味内での悶着も締結したらしい。鉄の弾丸が海に上げる飛沫を避け、最後には飛翔してあっという間に見えなくなった海賊船に背を向ける。

（最後、ルフィさんなんか言ってたね？）

（聞こえる訳があるか、あんだけの距離で）

飛び跳ねながら何やら口を動かしていた彼奴の行動が少々気になったらしい。前の健康体ならばいざ知らず、耳の悪くなった今の聴覚は常人とそう変わらないのだ、分かるはずがない。

[20 二次元好きの匿名さん 23/11/07(火) 08:02:43]

>>僅かな視界で世界を見て回る

>>前の健康体ならばいざ知らず、耳の悪くなった今の聴覚

わァ……ぁ…(泣)

[21 二次元好きの匿名さん 23/11/07(火) 10:07:18]

ヒョウ太………泣
ルフィはなんて言ったの…

[22 二次元好きの匿名さん 23/11/07(火) 13:35:05]

麦わらの一味とも別れが…来ちゃったか
結局あの時ロビンちゃんはなんて言おうとしたんだろうか

[23 二次元好きの匿名さん 23/11/07(火) 23:54:26]

夜保守

[24 二次元好きの匿名さん 23/11/08(水) 07:35:46]

ヒョウ太の過去は突拍子も無いし暗い要素が多いけれど未来の海賊王を乗せる船の造船の作業の最中に説明することで、重苦しい雰囲気が削がれたような気がしなくも無い
あと一味は出航か…騒がしい奴らが居なくなってしまったから寂しくなるな

スレ主さんが今後の展開を組み立てて紡ぎ出した物語を本当に楽しみにしてるのですが、とてつもなく大変な作業かと思われますので…応援しています！くらいしか言えないんですけど本当に応援しています…！

[25 ◆BtOeeshqkE 23/11/08(水) 18:15:47]

海賊達が居なくなった途端に静寂を取り戻した海を、しばし野次馬と共に眺めていた。住民が一人、また一人と景気良さげに人混みから散り始めたのを合図に、ルルがほうと息を吐いて自身の大工道具を拾い上げる。
「いい仕事したな」
「そうだな……さァ職場に戻るか！ヒョウ太はどうする？」
ぐっと伸びをして肩を鳴らすパウリーに声を掛けられ、首を回しがてら返答する。

「帰って旅支度、だな。明日にでも町を出る予定なんだ、悠長にはしてられない」
「そうか明日……明日ァ！？」
驚愕したように跳ね上がった声を浴び、此方が驚かされる。……形だけとはいえ休暇申請をしに来たのに期日についての話が抜け落ちていたことに、今気付いた。
「素でも大概抜けてんじゃねえかお前……」
言っていなかったなと呟けば呆れ顔が向けられた。偶々忘れていただけだ、その評価は些か心外である。

「まァ……サン・ファルド、プッチ、セント・ポプラ。全部回るんだよな？それぞれ二、三日づつとしても、確かにそんくらい早めに出なけりゃ間に合わねェ、か」
「そういうことだ」

[26 ◆BtOeeshqkE 23/11/08(水) 20:24:07]

金髪をがしがし搔きながらの確認に頷く。
……が、あーだの何だの呻くそいつは納得が行っていないと言いたげで、眉を顰めた。
「なんだ？はっきり言え」
少し語調を強めて問うてやれば、歯切れ悪く唸るのを止めて身をかがめ視線を合わせてくるパウリーに肩を掴まれる。


「……お前は、ちゃんと帰ってくるよな？」

アイツらとは違って、とでも続きそうな言葉だった。実際は、一文字に結ばれている口が二の句を紡ぐことはなかったけれど。

[27 ◆BtOeeshqkE 23/11/08(水) 21:54:23]

はァ、と短く息をつく。
此奴はこんなに心配性だったろうか。お節介ではあるが根っからガサツで適当なパウリーという男に見合わぬこの態度、含まれているのは根本からの心配と、恐れ。ひょっとすると『ロブ・ルッチ』の顔がトラウマにでもなっているのかもしれない。

「……安心しろよ、パウリー。エニエス・ロビーからだって無事に帰っただろう？それにおれも050も、ここを終の住処にすると決めたと言ったろ」
ウォーターセブンにもお前らにも迷惑を掛けるがな、なんて言ってみればパウリーはぶんぶんと首を横に振る。
「迷惑だとか悪ィとか、ンなこと思う必要全くねェ！むしろもっと頼れっての！……ちゃんと帰ってくるんだな？」
念を押すような言葉と共に、肩に掛けられた手がふっと緩む。


「なら良し！気ィ付けて行ってこい！」
「言われなくとも」

[28 ◆BtOeeshqkE 23/11/08(水) 22:09:50]

？？ゲージ

19+dice1d10=5 (5)

[29 ◆BtOeeshqkE 23/11/08(水) 22:19:49]

ようやく旅行パートに入れそう！

サン・ファルドに行く前に何個か決めとこう

視点

1.ルッチ視点

2.050視点

dice1d2=2 (2)

サン・ファルドで起こるイベント数

dice1d3=3 (3)

？？ゲージでのダイス数

dice1d2=1 (1)

[30 二次元好きの匿名さん 23/11/09(木) 00:53:55]

その？？ゲージが怖すぎて安心して読めない
え？大丈夫だよね？？不穏なやつじゃないよね？

[31 二次元好きの匿名さん 23/11/09(木) 09:27:12]

とうとう旅行きたぁぁぁぁぁぁぁぁあ！！！！そして、サンファルドで……050視点………………？うおお…

[32 二次元好きの匿名さん 23/11/09(木) 21:04:18]

何気にイベントダイス最大値引いてて草
大丈夫？ゆったり旅出来る？？
050君良い子だから自分から問題に突っ込んで行ってワチャワチャ旅になるのでは？

[33 ◆BtOeeshqkE 23/11/10(金) 00:45:27]

イベント最大値…だなあ…出来るだけ詰め込もうとする神の意志を見た気がする　ダイス1d5にしなくてよかった
いっそオリキャラあと一人くらい生やしていい…？

[34 二次元好きの匿名さん 23/11/10(金) 07:01:49]

良いと思う!
現地民枠が居たほうがイベント巻き起こしやすいし単純にヒョウ太に友達が出来るのも嬉しいぞ!!

[35 二次元好きの匿名さん 23/11/10(金) 08:04:25]

俺もその意見に賛成だ！
スレ主さんほんとやりたいようにおもいっきりやっちゃってください　スレ主さんはこのSSシリーズの船長で、読者たる我々は乗組員みたいなもんです　
船長の行くところにどこへでもついていきますよ

[36 二次元好きの匿名さん 23/11/10(金) 11:50:00]

前にサンファルド来た時は完全にヒョウ太視点だったしその時に050くん爆誕したからなぁ
050くん視点から語られるの新鮮　彼はどうその視界で世界を見つめるのか…

[37 ◆BtOeeshqkE 23/11/10(金) 16:17:00]

「着いた〜〜！」

景気よく汽笛を吹かす海列車から降り、ぐいと腕を頭上に伸ばして固まった肩を解す。
沢山押し寄せてきた観光客の人波に流されないようキャリーバッグをしっかり握って駅の敷地から出れば、前とは比べ物にならないくらい飾り付けされた街並みが広がっていた。どれもこれも、今がカーニバルの時期だからだろう。


キャスターをがらがらと石畳に転がして、くるくる辺りを見て回る。建物自体もさることながら住民達の衣装もイベント一色だ。
「凄いなー、皆仮装してる……」
（ウォーターセブンにも同じような格好の奴らがちらほらいたな。別の島まで届くようなら、本場は尚のことってことだ）
仮面くらい買っとこうかな、荷物にならん程度にしておけよ、なんて脳内会話を交わしながら、賑やかなお祭り騒ぎの中心街へと足を進める。

[38 ◆BtOeeshqkE 23/11/10(金) 16:29:33]

オリキャラについて詳細安価

性格とか属性とか

>>39

>>40

ヒョウ太との出会い方

>>42〜>>44

からダイス

どっちとも何となくのふんわりでOK

[39 二次元好きの匿名さん 23/11/10(金) 16:30:30]

年相応のヒョウ太と同い年くらいの少年

[40 二次元好きの匿名さん 23/11/10(金) 16:35:59]

050とは仲良くなれそうで、ルッチは嫌いそうなタイプ

[41 二次元好きの匿名さん 23/11/10(金) 16:37:28]

うおおおお今週の本誌にヒョウ太が登場して熱が冷めないまま訪れるSSの更新マジで""魂""にしみるううううう！！

[42 二次元好きの匿名さん 23/11/10(金) 16:47:32]

とてつもなく強烈で思い出に残る出会い方
(漠然としていてすみません汗)

[43 二次元好きの匿名さん 23/11/10(金) 17:04:34]

海賊や反社会勢力、それかヒョウ太にとっては都合の悪い政府とかがサンファルドにやってきてゴタゴタしてる時に出会う…とか？

[44 二次元好きの匿名さん 23/11/10(金) 17:40:02]

クローン達が眠る研究所辺りで出会う

[45 ◆BtOeeshqkE 23/11/10(金) 17:47:44]

協力感謝

1.とてつもなく強烈で思い出に残る出会い方

2.海賊や反社会勢力、それかヒョウ太にとっては都合の悪い政府とかがサンファルドにやってきてゴタゴタしてる時に出会う

3.クローン達が眠る研究所辺りで出会う

dice1d3=3 (3)

名前決めるの忘れてた

>>46

[46 二次元好きの匿名さん 23/11/10(金) 17:57:40]

ヘールシャム

[47 ◆BtOeeshqkE 23/11/10(金) 20:24:37]

ヘールシャムくん了解　元ネタは読んだことがないので深く考えず自由に行かせてもらう


大勢の人が行き交う街中をするすると進みながら目的を探す。
「ええと、花屋花屋……」
道沿いに立ち並ぶ多種多様な店々を指を差して確認していれば、心の内からはァ、と呆れたような溜め息が聞こえた。
（律儀だな、お前は）
「そう？お前だって考えなかった訳じゃないでしょ」
（それもそうだが……観光を後回しにしてまで墓参り、ってのは十分律儀で献身的だろう）
軒先に置かれた派手な花を見つけ、いいものがあるだろうかと店へと入る。花言葉なんてものがあることは知っているけれど、それぞれの持ってる意味は分からないから考慮に入れることはない。


あの時から今に至るまで人の手が入っていなければ倒壊したままの、墓未満で残された瓦礫の山が瞼の裏に浮かぶ。
サン・ファルドへ行くと決めてからすぐに思い至ったのが、兄弟達、そしてシャアナさんへの弔いをしなければということ。……今のおれに出来ることなんて花を添えるくらいだけど、それでも弔いは弔いだろうってルッチは言ってくれた。

[48 二次元好きの匿名さん 23/11/10(金) 20:41:28]

まさかの新キャラのネームの元ネタがわたしを離さないでってなんかやばい
あと050くんほんとに偉い　ちゃんと弔うという行為を理解しててホンマこの子はええ子や…

[49 二次元好きの匿名さん 23/11/10(金) 21:15:46]

ああぁぁぁ弔いねぇ050めっちゃ優しくて良い子やん…

[50 ◆BtOeeshqkE 23/11/11(土) 06:56:06]

内側のルッチに言葉を口に出して話し掛けるのは、傍から見れば一人言と変わらない。街中ならともかく屋内の狭いところじゃ悪目立ちだろうからと、思考だけで会話をしながら店内を闊歩する。

（あ、これとかどうかな）
色とりどりの花が所狭しと飾られている中で、一つピンと来たものがあった。まあ、直感といってもただ綺麗で目を引くなあと思っただけだ。
（………………カーネーションか）
（何その間……あんまりよくない花だったり？）
長めの沈黙に少し首を傾ける。なにか非常識だとか、そういうことだろうか。
おれは一般常識を知ってるつもりではあるけど身に付いてる訳じゃない。特に、今からしようとしてる墓参りみたいな、ルッチがこっちでやってないことは尚更分からないのだ。

（……墓花としちゃメジャーで問題はねェんだが）
（だが？）
（よりによって赤と白のカーネーションは……いや、何でもねェ）
お前の直感だ、好きに買え。そんな風に言われてもっと首を傾げた。思考を直接読めたりはしない、でもルッチの複雑そうな気持ちは伝わってくる。
その態度が気がかりになりつつも、大丈夫だと主張されるままに波打った花弁の優美なそれを束ねてもらって購入した。

[51 二次元好きの匿名さん 23/11/11(土) 08:07:54]

カーネーション…母の日…うっ
カーネーションの花言葉調べたら無垢で深い愛ってピッタリじゃんか050
しかも赤いカーネーションの花言葉は母への愛、白のカーネーションは私の愛情は生きているってなんともまあ

[52 二次元好きの匿名さん 23/11/11(土) 12:48:25]

外側の人からみたらシャアナさんは倫理観ゼロの自己勝手自己満足のヤバい人だけどクローン達からみれば大切な母親だからなぁ
親を愛するのも兄弟を親しく想うのも人として当たり前の事だし…ちょっと複雑な気持ちにはなるけど…

[53 二次元好きの匿名さん 23/11/11(土) 13:30:41]

前々からそうだけど050はヒョウ太のガワがそのまんま人格になりましたって子なのに一人称が「おれ」二人称が「お前」だったりでしっかりルッチっぽいとこあるの好き

[54 二次元好きの匿名さん 23/11/11(土) 14:50:56]

>>53

それすげぇわかる

[55 二次元好きの匿名さん 23/11/11(土) 16:36:04]

雛鳥が最初に見たのが生徒会長もといルッチだったみたいなもんか
とてつもなく善良で献身的で明るい子なのにところどころにルッチの図々しさがしっかり及ぼされてて本当最高
あとルッチの心理が描写されない050視点になったから楽しみ　早速複雑な気持ちを抱いてやがる…

[56 ◆BtOeeshqkE 23/11/12(日) 01:15:28]

花束を抱えて街から離れに離れた島の端、木々に覆い隠された山の中腹を目指す。今までにない疲労に体力の低下を覚えながらところどころ途切れている獣道を目印に暫く進めば、記憶と相違の無い拓けた場所が見えてくる。


そこで、ふ、と。

「……あれ？」
前方に確かな人の気配を感じ、足を止めた。


近くの木へと身を寄せて隠れ、花束を片手に抱え直して目を凝らす。この近辺は人のいない土地、それこそおれの生まれた研究所しかなかったような場所。道中にしても登山道とも異なるルートで、何かを目的に来るような者はいないはずなのに、残骸の傍には一つ影が立っている。

[57 ◆BtOeeshqkE 23/11/12(日) 01:16:01]

1.話し掛ける

2.様子を見る

3.あちらに気付かれる

dice1d3=1 (1)

[58 ◆BtOeeshqkE 23/11/12(日) 02:08:45]

大体おれと同じくらいの背丈で、マフラーを巻いた……男の子？後ろ姿しか見えないけれど、泥棒だとか海賊だとかの物騒な気配じゃない。
（話し掛けるのか？あの不審者に）
（不審者はおれ達にも返ってくるよルッチ。まー多分大丈夫でしょ）
ルッチが若干渋っているのは前程の戦闘力がなくなった今危険を見定める為、当然のことだろう。とはいえ先客が何処かに行くまで背中をじっと眺めているのも時間の浪費だ、とにかく話し掛けてみることにする。

「こんなとこで何してるの？」
「っ、！」
背後から声を掛ければびく、と肩を跳ねさせ驚いた様子で振り返ったその子は、やはりおれの見た目と同年代くらい。

[59 ◆BtOeeshqkE 23/11/12(日) 02:21:13]

丸眼鏡のレンズ越しに警戒が滲んだ瞳に睨まれて、怖がらせてしまったかと手をひらひらと振って無害を主張し笑いかけた。
「ごめんね〜急に声掛けちゃって！」
「だ、誰だ！ここに何の用が！？……まさか研究所をこんなにしたのはお前か！？」
「え、えェ〜〜……？」

思ってもみなかった言いがかりに困惑の声が出た。瞳孔を揺らし前のめりで突っかかってきた彼を見るに、おれが話し掛ける前から何やら酷く動揺していたらしい。それも、この研究所の惨状を見てしまったから、っぽい。
（……随分と思考の飛躍をしたものだ。その通りではあるんだが……）
ルッチも微妙そうに胸中で言葉を零す。そう、彼の言ったことは当てずっぽうでも正解なのだ。流石にはいそうですおれが壊しました、なんて言う訳にはいかないが。……どうしたものか、一度落ち着かせないとまともに会話も出来ないだろう。

[60 ◆BtOeeshqkE 23/11/12(日) 03:00:59]

（……口振りからして研究所の関係者のようだが、知らないのか？050）
（全く面識ないよ〜……ウォーターセブンに行くまでシャアナさんとクローン以外に会うことなんてなかったってば）
「違うって言うんならなんでこんなとこに……って、ん、んん……？あれ？」
どう言い訳しようと考え込んでいた傍らでぎゃんぎゃんと喚いていた彼だが、ふと言葉を止めると訝しげにおれの顔をまじまじ見つめてきた。

「……ちょっとお前、眼鏡外してみろ」
「え、えっと……？」
「いいから早く！」
ずい、と距離を詰められて思わず後退る。……別に眼鏡を外すことに不都合はないけど、少し強引じゃないだろうか。

[61 ◆BtOeeshqkE 23/11/12(日) 03:01:44]

気圧されつつも言われた通りにすればじいと数秒見つめてきた後、何故だか途端に警戒を解いておれの腕を掴んできた。その軽い衝撃で抱えていた花束がしゃらりと擦れる。

「やっぱり……！表情とか態度とか格好とか、色々変わりすぎてて分かんなかったけど、お前！！」

ぱ、と先程とはうってかわって喜色に溢れた表情。きらきらとした目で抱き着かんとするような勢いに思わずたじろぐ。どうしようと脳内で会議をしようとしてもルッチも同じように考え込んでるし、多分聞いたとしても突き飛ばせとしか言わないだろうから頼れないし！

そして。
本当に面食らったのは次に飛び出してきた言葉に、である。


「お前ルッチ兄だろ！？覚えてないか？僕だ、ヘールシャムだ！」
「……どえっ！？」

[62 ◆BtOeeshqkE 23/11/12(日) 03:06:04]

というわけで
研究所ひいてはクローンの掘り下げをしていいよ！って安価ダイス結果に言われた気がするので設定を作り込みます　これは容姿イメージ

[63 二次元好きの匿名さん 23/11/12(日) 07:39:27]

容姿イメージ助かる〜
相変わらずイラストお上手だ
ヘールシャム君の呼んでるルッチはクローン達の方かオリジナルの方か謎過ぎてドキドキしちゃうぜ

[64 二次元好きの匿名さん 23/11/12(日) 09:24:19]

わーーーーいクローン周りのお話大好きだから掘り下げマジで助かる！！楽しみにしてます！！さっそくルッチ兄とか言って不穏だけども！

[65 二次元好きの匿名さん 23/11/12(日) 10:59:47]

ヘールシャム君の立ち絵どストライク

[66 二次元好きの匿名さん 23/11/12(日) 21:46:59]

前スレの180なんですがヒョウ太の顔差分描いてたら止まらなくなったうえに手が滑ってカッスン海賊団まで描いちゃったのでファンアートとして上げときます

スレ主様お納めください

個人的に１番気に入ってるのはふぇ…の嘘泣き顔です

服部ヒョウ太SSファンアート

[67 ◆BtOeeshqkE 23/11/13(月) 00:54:03]

>>66

わーい！？めちゃ沢山描いてくださってる！表情差分も豊かで可愛いし、何より自分以外が描いたカッスン海賊団を拝めるとは…！うれしうれし…どんどん手は滑らせてもろて　ファンアートに小躍りする強欲で貪欲なスレ主なので

対応

1.素直に知らないと言う

2.ぼやかして様子見

3.知ってると嘘をつく

dice1d3=2 (2)

[68 二次元好きの匿名さん 23/11/13(月) 09:01:43]

相変わらず絵がうまくて本当に助かります　一般通過科学者シャアナさんも顔だけは良いのに中身が……
ヘールシャムくんもビジュ良でこんな子が結構オラついた口調なの良　
ファンアートも怒涛に来てしまってすご…ヒョウ太の表情もカッスン海賊団も良過ぎる…！

[69 二次元好きの匿名さん 23/11/13(月) 20:04:46]

どうして文書けて絵も描けるんですか…？どうかその画力と文章力を分けてください…

[70 ◆BtOeeshqkE 23/11/13(月) 23:46:27]

（『ルッチにい』、兄？……どっちの皺寄せだこれは）
表に出ていれば眉間が凶悪に歪んでいるであろう声で、ルッチが訝しげに唸る。
どっち、ってのはシャアナさんかオリジナルかってこと、ここにいるってことは前者の可能性が高そうだけど。

「ええと……何でまた、今になってここに？」
彼を覚えているか否かの問答を一旦逸らし、とりあえず素性を察知する為の手掛かりとなりそうな質問を投げ掛けてみる。
「そうだ、ルッチ兄がいるんだから……！」
ヘールシャムと名乗ったその子はハッとしておれの腕を離し、辺りをきょろきょろと見渡し始めた。そしてすぐ、おかしいとばかりに首を傾げる。
「……あれ、シャアナさんはいないのか？いっつも一緒だったのに」

……やっぱり、おれ達関連の話みたいだ。

[71 ◆BtOeeshqkE 23/11/14(火) 00:32:21]

彼がさっきから探している人は、とっくのとうにこの世にはいない。おれが造られた二年近く前、オリジナルの手に掛かっている。……どうしよう、伝えるべきだろうか。

「研究所がこんな有様だったから、肝が冷えたったらないよ……でもルッチ兄がそうなってるってことは、シャアナさんの研究成就したってことだよな？」
安堵からか饒舌に語る彼は、一体どこまで知っているんだろう。

研究自体は知っている、ならばクローンの事は、研究が頭から爪先まで違法な手段であった事は？研究の根源と目的は。
全て知っているのならば実験体の前でこんなに無邪気に笑いはしないと思うけど、絶対じゃない。

「ヘールシャム君、そうなってるって……何？」
おれの変化についての言葉を切り取り、オウム返しで問うてみる。彼が把握している以上の真実を知られるべきじゃないことくらい分かっているんだ、探り探り接しないと。

[72 ◆BtOeeshqkE 23/11/14(火) 08:05:52]

「表情筋が仕事してるというか、そもそも感情があるっていうか。前のルッチ兄は、その……人形みたいだったから、パッと見じゃ分かんなかったんだ」
感情がないというのは間違いなく、おれの前型番の兄弟の話。後ろ暗さの塊のようなここが外部と接触があったのか、とかシャアナさんはどんな思惑で彼を研究所に招いたのかとか、気になることは沢山あるけど取り敢えず。


途中で口ごもったのは、本人を前にして人形だなんて言い辛かったから。よく知りもしない研究の成功に喜んで、こんな山奥まで訪ねてくるような子。少なくとも、悪い人じゃあなさそうだ。

[73 ◆BtOeeshqkE 23/11/14(火) 08:11:50]

「というか、君付けって何さ！」
言いづらそうに目を逸らしていたのがおれが納得している間に膨れっ面になっていて、またもずいと食って掛かられた。なんとも感情の行き来が激しい。
「やっぱ覚えてないじゃん、僕のこと！そっちは治ってないんだな」
「……そっち？」
名前を呼んだのは間違いだったかと内心汗をかく。ルッチならばこんなポカはしないだろうに、なんて思ったのだけれど、何故だか……知らないのを当然のように受け入れられている？


「健忘症だよ、これで僕のこと忘れるの何回目？……病気だし、どうしようもないことは分かってるけどさ」
一方的な知り合いはマフラーに口を埋め、少し不服そうに呟いた。

[74 二次元好きの匿名さん 23/11/14(火) 12:06:15]

シャアナさんってルッチと出会って狂気の研究に走り出してしまったけどそれ以外ではヘールシャムくんと交流関係を築けたり結構まともな部分もあるのかな
でもヘールシャムくんと出会った前型番クローンも気になるしそのクローンをルッチって呼ばせてたっぽい…？何番なんだろう　どちらにせよルッチとヒョウ太によって全てが終わってしまった子達なんだけど
これクローンをヘールシャムくんと交流させることで人間性を発現させようとしてたとか…ないかな？
なんか考えれば考えるほど闇深案件な気がしてきた…

[75 二次元好きの匿名さん 23/11/14(火) 15:59:07]

050くんさぁルッチならばってよく言うけど君も大概やで…
頭も回るし駆け引き強いしレスバ強いし意志も強いしで

[76 二次元好きの匿名さん 23/11/15(水) 00:16:49]

>>これで僕のこと忘れるの何回目？

それってつまりヘールシャム君が会ってたルッチ兄は実は毎回別個体だったり…？

[77 ◆BtOeeshqkE 23/11/15(水) 00:29:45]

健忘症、彼と接していたという兄弟の抱えていた異常だろうか。

（記憶障害、か。そういう症状を抱えたクローンがいてもおかしくはないな）

（うーーーん……）

四肢が動かせなかった者がいる、人になれず豹のままだった者がいる。おれに味覚がなかったように、おれ達は人間の不完全な複製だった。故に何かが欠けているってことも往々にして起こることだけど……何か、違うような。

「……もしかしてルッチ兄、警戒してる？僕の事忘れて不審者だって思ってるから、シャアナさんに会わせらんないとか思ってたり？」

思考を回せばそれだけ時も経つ。いい加減焦れたみたいで、全部本当だよ、証拠だってあるなんて言いながらヘールシャム君がバッグを漁り始めた。

いい加減伝えなければならないか。本当でも嘘でも、シャアナさんに会うことは叶わない理由を。

1.死んだと伝える

2.今はいないとだけ答える

dice1d2=2 (2)

[78 ◆BtOeeshqkE 23/11/15(水) 00:32:49]

ヘールシャムくん、察する？

1.真実まで察する

2.懐疑的だが保留

3.疑わず受け入れる

dice1d3=3 (3)

[79 二次元好きの匿名さん 23/11/15(水) 00:38:31]

純粋だぁ～!
この子は間違いなく050とは仲良くなれるタイプだわ

[80 ◆BtOeeshqkE 23/11/15(水) 01:00:07]

この子あれかな　名誉トンタッタかな
050はともかくとしてルッチが嫌いそうということで、キャラ造形は混沌中庸かつハッフルパフ寄りのグリフィンドールのつもり　ここからどこまで合致してどこまで逸れるのだろう

[81 二次元好きの匿名さん 23/11/15(水) 09:44:38]

名誉トンタッタは果たして褒め言葉なのかぁ！？ヘールシャムくん、すなお！でもダイス神の導きでどうなるかわからないから…これからヘールシャムくんと研究周りの話がどうなるか非常に楽しみ

＞おれ達は人間の不完全な複製だった。

ここでかなりしんみりしてしまった

[82 二次元好きの匿名さん 23/11/15(水) 19:10:30]

証拠ってなんだろう
続きが楽しみ

[83 ◆BtOeeshqkE 23/11/16(木) 01:26:47]

「ヘールシャム君」
「呼び捨てでいいってば。……どうしたんだよ、改まって？」
名前を呼べば手を止めてこちらに向いた顔に真実を教えるのは躊躇われる。
心情的にもだが、万が一研究のことを知ってしまえばシャアナさんに懐いているらしい彼がどういう行動を取るのかが計り知れないからだ。ただでさえ世界政府が絡んでくるような事件を態々聞かせるようなことはしない方がいいだろう。


「んじゃ、ヘールシャム。……実はシャアナさん、今サン・ファルドにいなくってさ」
くしゃりと髪を混ぜて、辛うじて嘘ではない言葉を選び出す。

[84 ◆BtOeeshqkE 23/11/16(木) 01:29:41]

「島にいない……つまり、研究所移ったってことか？」

ここの有様から読み取った情報からものを言っているのだろう。じゃあどこに、と小首を傾げて疑問符を飛ばすヘールシャムに破綻が見抜かれないよう、脳内で矛盾の生じないストーリーを構築していく。

「健忘症のこと知ってるんだよね？実は、あー……今のおれには大体二年前からの記憶しかないんだ。で、丁度その辺りでシャアナさんは何処かに行っちゃった」

大事なことはその前に伝えられてたのかもしれないけど、忘れてるのかもしれなくって、と視線を下げる。

「……まさか、ルッチ兄でも連絡付かないの？あのシャアナさんと？」

「うん、全く」

ヘールシャムの反応の大きさ

dice1d100=9 (9)

[85 二次元好きの匿名さん 23/11/16(木) 02:35:31]

うまい！

[86 二次元好きの匿名さん 23/11/16(木) 10:59:43]

050、いつも困った時にはどうしよルッチ〜！！って慌てたり心の中で相談したりしてたけど今の050あまりにも頭がキレ過ぎてる　嘘が得意なルッチを一番側で見続けてきたからかな
半端ない実力者だ…これが、これが一歳児？

[87 二次元好きの匿名さん 23/11/16(木) 22:22:33]

夜保守

[88 二次元好きの匿名さん 23/11/17(金) 07:59:33]

シャアナさんとヘールシャムくんの関係性なんなんだろう　そして恐らくはその2人に間に居たはずのクローン達…
ヘールシャムくんかなり素直で良いやつということが分かるから真実なんて伝えたらそりゃショック受けそう

[89 二次元好きの匿名さん 23/11/17(金) 09:02:36]

このSSオリジナルストーリーめちゃ面白いから考察や想像の余地が膨らんで待機してる時楽しいのよな

[90 二次元好きの匿名さん 23/11/17(金) 18:56:07]

保守

[91 二次元好きの匿名さん 23/11/17(金) 23:06:12]

和解できるかな

[92 ◆BtOeeshqkE 23/11/18(土) 09:43:14]

うろうろ彷徨った視線がおれを見てから、言い分を信じた顔が分かりやすくしゅんと下がる。
「……はあ、ルッチ兄でダメなら僕じゃ尚更どうしようもないじゃんか」
軽く肩を落として溜め息を吐いた彼の、思った以上の反応の薄さに逆に驚かされた。
「えと、ヘールシャムはそれでいいの？会いに来たんじゃ？」
「良くないよ、良くないけど！何だよもう、せっかくお土産だって買ってきたのに！……でも」
思わずこちらに都合が悪い方向に行くかもしれないというのに聞き返す。すると彼は少しだけ声を荒らげ、しかし直ぐに鎮火した。

「でもなァ、あの人どうしようもない自由人だし。どうせ好き勝手やってるのが性に合ってんだろ」
不貞腐れながらも諦めに似た苦笑を薄く浮かべながらそういう彼は、随分とシャアナさんのことを理解しているようだった。


……きっと、おれよりも。
当事者だから事実は全て知っている、日記だって全部読んだ。けれどたったの一週間もない程の時間しか本人に接することのなかったおれは、彼女の人となりを何にも知らない。

[93 二次元好きの匿名さん 23/11/18(土) 16:34:53]

私たちはシャアナさんが変態天才科学者だということしか知らないが自由人なんだろうなきっと
050も自我が生まれる以前で短期間しか一緒に居なかったからロクに知らないし本当に謎に包まれてるなぁ
ヘールシャムくんもまだ謎が多いけど素直に現実を受け止めていい子だということは分かる

[94 二次元好きの匿名さん 23/11/19(日) 00:29:29]

保守

[95 ◆BtOeeshqkE 23/11/19(日) 00:51:32]

おれの、おれ達の生みの親。ルッチとオリジナルは酷く嫌悪していて、おれはそうでもない。創造主に好感を抱くのをインプットされているんじゃないかって言われたこともあるけど、それもまた違う気がする。
もっとあの人を知れば、このもやもやが何か分かるのかもしれない。……知りたいような、知りたくないような。

「いつでもおいでって言ってた癖に、僕やっぱ忘れられてる？……なんて、愚痴ってもしょうがないか」
いつの間にか瓦礫の前に屈み込んだヘールシャムの隣に、同じようにしゃがんでみる。

「シャアナさんは、さ。研究バカで雑だったけど、それ以前にルッチ兄の為に動いてるって感じで」
「うん」
育児どころか介護じみたことニコニコしながらやってた、などと目を閉じて訥々と思い返すような声に相槌を打つ。
クローン技術を政府から盗み出す人間はそりゃ研究一直線だろうし、雑さだって散らかり放題だった部屋からも読み取れた。でも肉声として聞く話からは、頭の中に温度を持った実像として一人の人が形作られる。

[96 ◆BtOeeshqkE 23/11/19(日) 00:53:47]

「だから、お前の傍にいないってことは満足したんだろうな。今のルッチ兄は健康そうだし、感情だってある。口癖みたいに言ってた『救いたい』ってのが叶った訳だ」
「……救いたい、かあ」


本当にあの人のことが分からない。救いたい、笑顔が見たい。彼女の行動原理はきっとそれだけだった。
それならもしかしたら、おれが死ぬことは望まれていないかもしれない、なんて。大前提で全ての根幹、おれ達がただ一つだけ抱いていた意志を覆すような思考が過ぎってしまう程に、回路が混乱してきている。


もしも、そうだったら。
それじゃおれは、どうしたらいいの。

[97 ◆BtOeeshqkE 23/11/19(日) 01:18:52]

もうとっくに塗り潰されたけれど持っていたはずの殺意とか、片時も忘れることのなかった使命感とか。
全てはおれ達の思い込みだったのかもしれなくて。
背負っていた荷物は元々なかったかもって。

（……050？）
ならおれとルッチは、何の為に兄弟たちをこの手に掛けた？
どうしておれはここにいる？


おれが死ぬ意味は、一体何だ？

[98 ◆BtOeeshqkE 23/11/19(日) 01:28:54]

（おい、050！！）
「……ルッチ兄？大丈夫？」
「っあ、うん、平気」
内からの同じ声の呼び掛けと気遣わしげなヘールシャムの声に現実に引き戻される。無意識の内に寄っていた眉間を揉んで、落ち着けと自分に言い聞かせた。

（大丈夫じゃねェだろうが。一旦ここから離れるぞ）
（いやいいの、ホントに問題ないから！）
かぶりを振って細く息を吐く。



そうだった。大丈夫、決意は何にも鈍ってない。
ちょっと色々見失いかけたけど、一番大事な意味はここにいるんだから。

[99 二次元好きの匿名さん 23/11/19(日) 07:30:35]

毎回更新される度に嬉しくて噛み締めてるんだけど今回の更新はより一層読んでて心が突き動かされてしまった……

050が、""献身の一切は無駄である""ということに気が付きかけて闇に堕ちかけてる　いや　まじで　どうしよう　いや　うわぁ　本当に…死ぬ直前にやめてくれ…せめて気が付かないまま無知のまま幸福のままでいてくれ…ってのも残酷ではあるけどさぁ…

＞おれが死ぬ意味は、一体何だ？

が重過ぎて一番印象に残ってる　普段の050の口調っぽくないのが辛いけどとても好きで…

[100 ◆BtOeeshqkE 23/11/19(日) 19:28:15]

「てことでシャアナさんいないけど、どうするの？ヘールシャム。そもそも何の用事だったんだっけ」
そういえば現状の話ばかりで、彼の経緯を聞いてはいなかった。気を取り直して用件を聞いてみると、むっと表情が歪む。何か訳ありなのだろうか。

「……ちょっと、家出してきたんだよ。避難先がここしか思い浮かばなくて」
「家出？」
反復すれば、ヘールシャムは苛立ちと消沈が滲んだ顔でこくんと頷く。

[101 二次元好きの匿名さん 23/11/19(日) 21:08:56]

概念元スレを見つけたのが昨日、気づけば最新に追いついてしまった･･･。何だこれ、沼か？
服部ヒョウ太というキャラクター自体にも惹かれるけどそれを表現する文章力と執筆の速さが凄すぎて･･･。

[102 二次元好きの匿名さん 23/11/20(月) 00:15:43]

今まではルッチの精神的成長を深掘りしてくることが多かったけど今回から050の深掘り更にくるか…？とこれからの更新待ち遠しくしてる ヒョウ太やルッチから見たシャアナさんの印象は悪いけどヘールシャムくんから見たシャアナさんはなんていうか、一般通過天才科学者というよりかは""シャアナさん""って感じ　人間の多面的な側面を描いてくれてありがとうございます
ヘールシャムくんも中々複雑な事情抱いてそう…

[103 二次元好きの匿名さん 23/11/20(月) 00:23:54]

050が悩んでるところ　これ以上考えたらヤバい、戻れなくなる　って感じが伝わってきて読んでて何故か恐怖を感じて心臓バクバクしちゃった

[104 二次元好きの匿名さん 23/11/20(月) 07:30:42]

こういう時の大丈夫は大丈夫じゃない大丈夫じゃない！？
嗚呼050もしっかりばっちしワンピ世界の親子(?)の業に巻き込まれてしまった…なんてこったい

[105 二次元好きの匿名さん 23/11/20(月) 18:58:01]

ヘールシャム君には家族居るんだね…
家族なんて創造主の母とクローンの兄弟達と一心同体のルッチしか知らない050に『ちゃんとした家族』という概念ぶつけられたらより精神ダメージうけそうで怖いんだが

[106 ◆BtOeeshqkE 23/11/20(月) 21:23:38]

「家族と折り合いが悪くて耐えきれなくなった……まあ、よくある話。それで匿ってもらおうと遠出してきたんだけど」
研究所はこんなでシャアナさんもいないときたもんだからさ、と。おれと同じくらいの見目の少年は、途方に暮れて吐き捨てるみたいにぼやいた。


頭の中にいるってのに、ルッチからじとりとした視線が飛んできたような心地がする。
（はァ……助けたいって？050）
（そりゃ、まあ。困ってるみたいだし）
知らないとはいえ元からあった縁、成り行きとはいえここまで聞いた話。ならばなんとかしたいと思うのは自然だろう。

[107 ◆BtOeeshqkE 23/11/20(月) 21:41:19]

でもってルッチも気は進まないにしても拒否まではいかないことはわかってる。
（止めやしねェ、好きにすりゃいい。が、事情が何なのかくらいは聞いておくべきだろう。ただの癇癪で家出した奴に手を貸す道理はないからな）
冷たく聞こえても正論だ。いや、本当にただの癇癪だとしても行き場がないことには変わらないから、全部に賛同はしないけど。

（ルッチ、もしかしてヘールシャムのこと好きじゃなかったり？）
（……あの研究者と関わりがあったんだぞ。どんな地雷が埋まってるか分かったモンじゃねェ、逆に何故警戒しない？）
それにしたって突き放すような態度を半分茶化して聞いてみたら、存外真面目な答えが返ってきてついでに呆れられた。おれがそういう性格になったってことは、ルッチが演じてた皮がそうなんだから仕方ないじゃん。


それに、あと一つ。
思い間違いでしかなくとも兄と慕ってくれるのは悪い気などしないから、かもしれない。

[108 ◆BtOeeshqkE 23/11/20(月) 21:46:24]

手に抱えていた花束を瓦礫の上にそっと置いて、一拍置いて立ち上がる。屋外だけれど風は木々に遮られて届かないからそのままでもいいはずだ。

「詳しい事情、聞かせてよ。もしかしたら協力できるかもしれないから、ね？」

とりあえず街に降りようと手を差し出せばヘーゼルの瞳が瞬刻揺れはしたけれど、おれより少しちいさな手の平はすぐに握り返してきた。

設定決めタイム　本当に行き当たりばったりでどのくらい掛かるのかさえ分からん　申し訳ない

ヘールシャムくんの家族（小さい程善人、大きい程悪人）

dice1d100=57 (57)

[109 ◆BtOeeshqkE 23/11/20(月) 21:47:53]

中くらいか

なら

1.下層階級

2.中流階級

3.上流階級

dice1d3=2 (2)

[110 ◆BtOeeshqkE 23/11/20(月) 21:54:32]

平々凡々だ　何もかも特例なヒョウ太達に絡ませるならこういうのでいいんだよこういうので

家族の職

1.芸術系統

2.戦闘系統

3.安価

dice1d3=1 (1)

[111 二次元好きの匿名さん 23/11/20(月) 22:23:53]

ヒョウ太(ルッチと050)に対する当てつけか？ってくらいに平凡で程よい幸福を享受出来てやがる　それなりに悩むことはあるんだろうけどさ…
しかも芸術系統で中流レベルで食えてけるってのもかなり恵まれてるし　家族才能あるな

[112 二次元好きの匿名さん 23/11/20(月) 22:34:18]

芸術系って言っても酒場のバンドマンとか歌手とかって可能性はあるな

[113 二次元好きの匿名さん 23/11/20(月) 22:39:09]

芸術系統のお家なのか
なら今こそカッスン海賊団から教わった事が活きる時だぜﾋｬｯﾊｰ!!!
大道芸もトランペットもアコーディオンも教えられる頼れる050お兄ちゃんだぜ〜

[114 二次元好きの匿名さん 23/11/21(火) 10:29:24]

ほしゅ

[116 二次元好きの匿名さん 23/11/22(水) 07:34:51]

ヘールシャム君は地元の子ではないのかな？シャアナさんが亡くなってるの知らないから暫く研究所には来てなかったんだろうし
もしくは地元民でも研究所の場所が離れた所にあるから気軽に来れなかったとか？

[117 二次元好きの匿名さん 23/11/22(水) 08:39:34]

クローンとしても末っ子、ガレーラとしても末っ子の、ルッチにとっては弟のようなもんだし、とにかくみんなの弟みたいなようなポジションの050くん
だからこそ初めてお兄ちゃんのような顔出来るの嬉しいんだろうなぁ…

[118 二次元好きの匿名さん 23/11/22(水) 17:05:48]

そもそもヘールシャムくんはどうやってシャアナさんと知り合ったのだろう　

[120 ◆BtOeeshqkE 23/11/22(水) 23:24:25]

とんぼ返りで森を出ようとした所で、近道を知っているというヘールシャムが先導してくれた。幾分か足場の悪い、来た道より狭い獣道を歩きつつ続きを聞く。
「家族のことはもういいんだ。問題は今からどうするかって話」
淡々と歩を進める後ろ姿から表情は読み取れない。先程の苛立ちも鳴りを潜めているようだ。
家族ってのは普通大切なものだって認識くらいはある。切っても切れない血縁で繋がった人、もういいだとかで切り捨てられると思えないのは、この価値観が一般的な家族を体感したことがない故に持っている理想像だからだろうか。

[121 ◆BtOeeshqkE 23/11/22(水) 23:29:48]

「いいんだってば。多分、僕が出てくことは父さんも母さんも納得してくれるはずだから」
訝しむ気配が伝わったのか半身で振り返り、世間話でもするような軽さで苦笑される。

「ええと……親御さん、あんまり良い人じゃなかったの？」
「そういう訳じゃなくて、ただ本当に折り合いが悪かっただけ。フツーの親なんだろうけど僕には合わなくて、きっと一緒にいない方がお互い幸せだと思うんだよね」
一言一句に腹立つんだから逆に凄いよ、なんてふんふんと頷いているのにルッチが眉を寄せる。

（唯の反抗期じゃねェのか？親の言うこと為すこと全て気に食わないなんてよく聞く話だろう）
（おれは何とも言えないなー。そういうのはさっぱりだし……）
家族間とのギスギス、というものにはちょっと理解が及ばない。強いて言えばオリジナルとは血の繋がりがあるけれど、アレは相当な特例であって。

[122 二次元好きの匿名さん 23/11/23(木) 02:07:29]

その辺はルッチより現役中学生ヒョウ太の方が理解しやすそう

[123 二次元好きの匿名さん 23/11/23(木) 10:48:52]

ヘールシャムくんはよくある話って言ってるけどそもそもの家族の概念に関してからちんぷんかんぷんだよね　難しい
オリジナルとクローンの関係性を言い換えれば親みたいなもんかもしれないけどアレは…うん…違うかなぁ　お互い嫌い合ってる節もあるし

[124 二次元好きの匿名さん 23/11/23(木) 20:19:36]

学園ルッチに兄と呼ばれるのは満更でもなかった原作ルッチだけど050に兄と呼ばれたらキレそう
なんなら島の外まで飛んで逝けされる

[125 ◆BtOeeshqkE 23/11/24(金) 02:48:14]

本人がいいと言っている、知識がある訳じゃないおれが聞いてどうするんだってのもある。家族とかそっち方面の深掘りはしないのが賢明かも。
「んじゃ、行く宛てがないってのが本題かな。帰るのが嫌にしたって、シャアナさん以外の知り合いとかに頼るのは……」
「そんなこと頼めるような知り合い、サン・ファルドには研究所以外にないぞ僕は。顔見知りすらいないんだもん」
「あれ、ヘールシャムってここの島民じゃないの？」
おれの疑問を遮っての即答。その口振りでは、彼は今この島に住んではいないように聞こえる。例え引きこもっていたとしても世間は狭い、暮らしていれば見知った顔の一つや二つくらいある筈だ。

「生まれはこの島ではあるけどね。三年前に引っ越した上に、元から友達いなかったから」
「は、はァ……」
……どうしよう、人間関係近辺に難が多すぎる。いや本人あんまり気にしてなさそうだから、おれが勝手に気まずくなってるだけなんだけど。

[126 二次元好きの匿名さん 23/11/24(金) 07:38:33]

やべーーー！！！！何から何まで質問の答えが気まずい！！！ピンと来ない！！！答えづらい！！！
一体どうなる！？

[127 二次元好きの匿名さん 23/11/24(金) 17:21:21]

ヘールシャム君のご家族は転勤族なのかな?
せっかく友達出来ても転勤で人間関係ゼロに戻るの繰り返してたら友達つくるの億劫になって諦めちゃうよね
でもその割にはシャアナさんとルッチ達に謎に懐いてるのよな
シャアナさんとよほど気が合うのかな?

[128 ◆BtOeeshqkE 23/11/24(金) 23:54:33]

──自分の話に時折質問を重ね、それに返答する度どこか気まずそうにする背後の気配をヘールシャムはちらと横目で伺う。

兄貴分として呼び慕っていた彼は、島を離れている間にまるで別人のような変化を遂げた。それも間違いなく良い方法へと。

鉄面皮なんて言葉が生温く思う程動かなかった表情がよく変わるようになっていたのも、話し掛けなければ言葉を発さなかった彼がこちらを気遣ってきたのも、全くもって慣れないことで。先程手を差し伸べられたときだってひどく当惑してしまったものである。

[129 ◆BtOeeshqkE 23/11/25(土) 09:21:26]

感情も意思も、記憶さえもが希薄であった難病持ちの患者。辺鄙な郊外に引きこもって、その患者を助けたいと願っていた研究者。奇人変人に分類されるような彼彼女らは、面影だけを残してここにはいない。
病気が治り別人のようになったこと、ひとところに留まって居られない気質だろうあの人がどこかへ行ったこと。きっとそれは栄転だ。

いい事だ、と思う。
同時に、愚かしくも埒外の淋しさがある。
離れていた三年間いつも反芻していたあの日々が今日この時、研究所と共に倒壊したのだから。

[130 ◆BtOeeshqkE 23/11/25(土) 09:37:38]

懐かしい獣道を下り、下り。
意識の片隅を奥へと沈め、沈め。
何度も取り出した記憶を思い返す。
救いとなったあの時のこと、人生の指針を与えられた時のこと。



ヘールシャムに才能がないと断じてくれた、彼女のことを。

[131 ◆BtOeeshqkE 23/11/25(土) 09:41:12]

previous chapter.　追想、アムネジア

[132 ◆BtOeeshqkE 23/11/25(土) 20:47:31]

きっと恵まれた生まれだったと、ヘールシャムは自覚している。大海賊時代なんて荒波の中、芸術一本に身を捧げた家系はそれなり以上の暮らしが出来ていたから。

父は画家で母は音楽家、共に暮らしていた父方の祖父は彫刻家。皆職業こそ異なっていても、何かを創り誰かの心を満たすことが好きで、それに見合う才覚が与えられていたのは同じ。
そして、家族の通る道標は大なり小なり子どもの模倣先となる。彼とて例外ではなく、物心つく頃には既に父や母、祖父を見ては同じように手を動かしていた。



努力すれば報われる。
……とく芸術の道には、根拠などない話である。

[133 ◆BtOeeshqkE 23/11/26(日) 02:08:12]

環境は整っていた。
努力だって人並み以上にした。
けれど、駄目なものは駄目だった。

こなせない訳ではないのだ。筆に狂いはない、音の外れはない、石に亀裂はない。けれど、ヘールシャムの創造が人の心を揺さぶるようなことは一度たりともなかった。
……そもそもの話。彼は、芸術に取り憑かれるような楽しさを見出すことが出来ない気質であった。幼い時分は自ら気付くことが出来なかったけれど。


家族は悪ではなかったとも。才能がないからと虐待をしたり、見放したりするような人間ではなかった。
とはいえ輝かしき善ではなく、そして自分が歩むにしろ子どもに歩ませるにしろ、芸術以外の視野を持ってはいなかった。だからヘールシャムは囚われた。

[134 二次元好きの匿名さん 23/11/26(日) 12:14:30]

うわぁ〜〜…………ヘールシャムくんが囚われてること自分も凄くわかるな…絵に描いた不幸とかじゃなくても周囲との比較、自分の存在意義や価値、才能についてすんごく悩むことって本当にあるよね…それって本気で辛いんだよね…

[135 二次元好きの匿名さん 23/11/26(日) 12:47:12]

これあまりにもヘールシャムくんが現代社会の人間が持つ悩み過ぎるな　この手のしがらみにガツンと一言言ってくれるシャアナさんは色々問題抱えてたとはいえ本当にありがた過ぎる存在　こりゃ頼りたくなるわ

[136 二次元好きの匿名さん 23/11/26(日) 23:44:53]

シャアナさんってルッチ狂いを除けば意外と良い人なのか…？

[137 二次元好きの匿名さん 23/11/27(月) 07:46:56]

保守

[138 ◆BtOeeshqkE 23/11/27(月) 10:21:55]

第一の不運は努力できる環境があったこと。
第二の不運は彼の一族が芸術以外に目もくれなかったこと。
第三の最たる不運は、彼の実の兄が稀代の才人であったこと。

数個年上の兄弟は、芸術と名が付けばありとあらゆるものに手を出し完璧にこなしてしまえる程の才覚を持っていた。そんな兄を見上げるのは酷く疲弊するものなのだと気付いたのは四年前、ヘールシャムが生を受けて十年経った頃。
生来素直であった彼はそれまで、前へ上へと向かえると信じて愚直に走り続けられていた。

でも、心身にへばりついた疲れに気付いてしまったが最後。ふと糸が切れて崩れ落ちそうになって、衝動のままにその場から逃げ出して。


──そこで、出会ったのだ。

[139 二次元好きの匿名さん 23/11/27(月) 18:45:34]

なんと現代的なわかりみ

[140 ◆BtOeeshqkE 23/11/27(月) 21:38:50]

子どもの足で駆けるにしては長過ぎる距離をあてどもなく走って走って着いた先、木々に囲まれた灰白の建物。

郊外も郊外なこんな所に誰かが家を？と思わず足を止めれば同時に脳内麻薬が切れたらしい、一気に肺から喉までを痛みが支配する。そんな過呼吸気味の苦しさに悶えながら不足した酸素を吸い込んでいた最中。



不意にかたん、と金属が回る音。
「あれ？人……っていうか、子ども？ここに来客なんて初めてだなあ」
「！？な、げほっ！」

背後から掛けられた突然の声に反応しようとして、勢いのままむせた。

[141 ◆BtOeeshqkE 23/11/27(月) 23:32:07]

「っと、ごめんごめん。大丈夫？」
げほげほと咳き込みながら振り向いた先にいたのは明るい水色の髪をした白衣の女性、言葉とは裏腹に一切悪びれていない笑みを湛えている。そして彼女が押す車椅子に座る生気のない少年。見目はヘールシャムより幾つか年上だろうか、瞼こそ閉じているが眠っている訳ではなさそうだ。

医者と患者、のようである。病院であれば何ら目を引く光景では無い、しかしここは街中ですらない森の奥。そぐわない外観の施設と併せてヘールシャムは世界から切り取られたような空間に戸惑いを覚え、そして顔に出ていた。

「ンー……その顔したいのあたしな訳だけど。とりあえずきみは誰で、こんなとこに何用？」
「え、と。ぼくはヘールシャムで、その……」
もしや迷子？と軽い調子の問いかけが重なる。迷子。……迷子かもしれない。否定したくとも来た道はいくら反復しようとしても方角すら覚えていないし、分かったとしても体力が尽きて帰れず仕舞いだろう。

[142 二次元好きの匿名さん 23/11/28(火) 07:56:25]

もしかしてこの車椅子の子って023？

[144 ◆BtOeeshqkE 23/11/28(火) 19:37:17]

「迷子、です……」
「あ、ほんとにそうなんだ」
自分で迷ったと認めるのも癪ではあるが、それ以外ない。ううん、と唸りながらヘールシャムはこくりと肯定した。

「しっかし迷子ね、そうだなあ……ま、一旦中入りなよ。お茶くらいは出せるから」
そう言って、からからと車椅子を転がし建物に入っていく白衣に釣られるようにドアを潜る。かつりかつり鳴る足の音に着いていきつつ薄暗い廊下を見渡せば、ちらほらとゴミを詰めた袋が転がっていた。
「ちょーっと散らかってるのはご愛嬌ってことで。何せ人なんて来ないからね」
「ああ、はあ……」
訪れたことのない空間、名前すら知らない相手。どこか場違いであるように感じて縮こまってしまって、ヘールシャムは相槌を返すくらいしか出来ずにいた。
それを見兼ねたのか、否か。


「あー、そういや自己紹介がまだだったかな？」
彼女はくる、と車椅子ごと振り返り、眠っているような少年の肩に両手を乗せる。

「あたしはシャアナ、この子はルッチ。この研究所にはあたし達しかいないから、まー好きにしてって！」
一切の陰りもなく快活に笑うその人は、暗い研究所にも無表情の患者にもそぐわないように見えた。
少なくとも、ヘールシャムの目には。

[145 二次元好きの匿名さん 23/11/29(水) 00:19:17]

マッドサイエンティストとは思わんよな

[146 二次元好きの匿名さん 23/11/29(水) 09:58:42]

もしかしてなんだけど結構シャアナさん陽キャ？
あの若さでクローン作って研究所持つくらいの行動力の化身だから納得しかない　子ども視点から見たら頼れるお姉さんだな

[147 二次元好きの匿名さん 23/11/29(水) 19:24:40]

他作品持ち出して申し訳ないが、どこぞの分隊長を想起させるな

[148 二次元好きの匿名さん 23/11/30(木) 01:53:02]

あたし(とたくさんのルッチ)達

[149 ◆BtOeeshqkE 23/11/30(木) 04:20:26]

それが最初。

「また迷子？家出でしょーが。来る時は先に連絡してよね、こっちにもルッチくんの調整とか片付けとか、色々あるんだから」
「いつ来ても全然片付いてないことの方が多くない？」
「重要書類とかがあるの！そっちはちゃんと管理しなきゃだからゴミは二の次なんだって」
何となく家に居づらいときには来るように、つまり定期的に通い詰めるようになって。



「……だ、れ」
「ッうわあァ！？しゃ、シャアナさん！ルッチくんがしゃべ、喋った！」
「ふふん、段々良くなってきてるってこと！ほら自己紹介しなよヘールシャムくん」
置き物同然だった彼と意思疎通が叶い、森奥の研究所には息抜きだけではなく経過を見守ることも訪れる目的として加わり。

[150 ◆BtOeeshqkE 23/11/30(木) 04:24:22]

「もう立てるようになったのか？凄いな、あの状況から回復できるものなんだ」
「……誰」
「、え」
ほとんど一方的に話し掛けてばかりだったけれど認識はされているだろう、と思っていた相手から忘れられるなんてトラウマが出来かけたりして。
「あー……ルッチくん、健忘症なんだよね。分かるかな？定期的に記憶無くしちゃう病気」
「そう、なんだ」
横から入った補足に病気ならば仕方ないと落胆して、でも少しだけ安堵してしまったりして。



「聞いてよシャアナさん、また僕忘れられてた……普通に動けるようになったのもいい事だけどさ、記憶の方どうにかなんない？」
「当分難しいかなー。まずは体が健康にならなくっちゃ、いくら天才のあたしでも何も出来ないってもんよ」
「自称天才……」
「事実！天才！」
ルッチと呼ばれる少年のどこかが良くなる度に、名前も何もかも忘れられる。そんな否応なしの物悲しさを繰り返しても彼彼女らに流れる時間の穏やかさは変わらなくて、ヘールシャムはそれが好きだった。

[151 二次元好きの匿名さん 23/11/30(木) 07:37:55]

穏やかな時間だ
シャアナさんと漫才までしてるし!
ヘールシャム君からはこう見えていたのか

[152 二次元好きの匿名さん 23/11/30(木) 07:52:42]

ヘールシャム視点のシャアナさんめちゃくちゃ良いお姉さんじゃん絆されてしまうわこんなんvs一視点では良い人だとしても黒髪少年のアレな本持ってたり覚醒剤実験で投与してたじゃん　ファイッ　になってる
あとこれ1クローンの状態が段々良くなってきてるの…？それとも会う度に別のクローンと会ってるの…？どっちだ？後者だったらハートフルな話にホラー要素が加わってしまう

[153 二次元好きの匿名さん 23/11/30(木) 09:43:59]

なんか　悲しいな…
元々頼れる友達がいない孤独の日々でやっと出会えた、同年代の子は会う度に自分の事忘れてるって…

[154 二次元好きの匿名さん 23/11/30(木) 17:39:25]

その内情がグロテスクであれ研究所での日々がヘールシャムくんにとっては美しい思い出ならそれは美しいんだ　その思い出は素晴らしいんだ…

[155 ◆BtOeeshqkE 23/12/01(金) 03:47:32]

ルッチくん、とシャアナを踏襲して呼んでいたのが兄呼びに変わったのもほとんど悪ノリのようなもの。
「あっ、ぶな！ったく、足元ふらふらするんなら手すりとか持てよなお前」
「うん、ヘールシャム。松葉杖そっち」
「はいはい、これでいい？兄さん。……？」
「にいさん？」
本当にただの言い間違え。自分の兄とは全くもって似ても似つかない、歳の頃が同じなだけの彼をそう呼んでしまったことに誰よりヘールシャム自身が動揺したものだ。

「…………っあー！？違う！違うから、言い間違えただけだから！」
「いいじゃないの兄さんで！呼び方可愛いし！」
「うん。いいよ、にいさんで」
「何にもよくないぃ……！」



シャアナは横で煽り立て、ルッチはきょとんとしているような無表情でそれを受け入れる。一頻り頭を抱えたヘールシャムだって、いつの間にかなんの抵抗もなくルッチ兄と呼んで憚らなくなっていく。

それは、彼等が出会って季節が半周した頃の話。

[156 二次元好きの匿名さん 23/12/01(金) 07:45:02]

良い日々だね
コメントで実は会う度にクローン変わってんじゃない？説などが囁かれてるけども…車椅子のクローンも…今回の更新でにいさん、と言われたクローンも023だったという期待をしてしまう！！！

[157 二次元好きの匿名さん 23/12/01(金) 19:33:45]

きょとん顔の幼いルッチとか絶対可愛いよね
性癖歪みそう

[158 二次元好きの匿名さん 23/12/02(土) 07:21:09]

朝保守〜

[159 二次元好きの匿名さん 23/12/02(土) 15:01:53]

やっぱり静かでよく分からないお兄ちゃんから急に050みたいな活発な子に変わると本当に分からないな…人って、クローンって変われるんだな

[160 二次元好きの匿名さん 23/12/02(土) 16:41:46]

もうアニメ化して欲しいまである

[161 ◆BtOeeshqkE 23/12/03(日) 01:53:16]

自身の家にも芸術にも一切関与しない交流によって、コンプレックスの肥大は治まりかけていた。学校に通うこともなく閉じた環境で、ヘールシャムの才能を見つけようと張り切る両親と優秀過ぎる兄以外に殆ど関係を持たない、そんな世界はようやく開かれたのだ。

……けれど。


カッカッ、と速く床を蹴る音。研究所で走るような人間は一人しかいない、施設の主は当たりをつけて口を動かす。
「いらっしゃいヘールシャムくん。どうしたの、今日は早かったじゃ……」
「シャアナさん」
「……ヘールシャムくん？」
入り口に目をやらず、少年が来るのをいつもの事だと書類に向き合っていたシャアナは、やけに抑揚のない声に首を傾げて振り返る。俯きがちに目線を下ろしたまま、彼女の名前を呼ぶのが精一杯だと言わんばかりに唇を噛むヘールシャムがそこにいた。

「……何かあったのかな。とにかくこっちおいで、座りなよ」

[162 ◆BtOeeshqkE 23/12/03(日) 02:19:22]

「引越し？」
「……うん」
泣き出しそうになりながらギリギリのところで留めているような、そんな焦燥を醸したヘールシャムから何とか理由を聞き出した。

「父さん達の知り合いがいる島に行くんだ。遠くて、海列車も通ってないところ。……仕事の都合も、だけど、一番の理由は僕らしくて」
ソファの布生地を握り締めてぼそぼそと言葉を零すのを、シャアナは無言で促す。
「そこならもっと色んな人、芸術家とかがいるから、何か一つくらいは上手くいくだろうって言われた。……ほんとかなあ、僕、どうやったらもっと上手くやれるんだろ」

僅かに心の内に残るプライドと、この期に及んで自分に眠っているのかもしれない才能への期待のせいで無理だと泣き喚くことも出来ず、迷子のように身をかがめるしか出来ない子どもを前にシャアナはううん、と首を捻る。
「やっぱよく分かんない悩みだなあ、あたしには」
「……知ってるよ、シャアナさんは天才なんでしょ」
自分のことを天才と呼ぶ彼女は、ヘールシャムの味わい続けている辛酸など分からないだろう。そしてこの一年の交流で感情についての理解がどうにもズレているところがあるということも知った。共感されるとは端から思っていない。ただ吐き出したかっただけ。

[163 ◆BtOeeshqkE 23/12/03(日) 03:08:38]

僻みの片鱗がヘールシャムからちらつこうと気を悪くすることなく、シャアナはするりと指を組む。
「ま、それもあるかな？きみの気持ちも芸術の良し悪しについても、あたしは何にも分からない。その諦めの悪さの出処もね」
何故諦めないのか、なんてあっけらかんとシャアナは言う。激励を期待した訳じゃない、けれどあまりにも予測出来ない言葉だった。

「なんで、って……」
「物心ついた時には始めてたって前言ってたでしょ。それでも手が届かない、それどころか楽しくもない。そんなの、お世辞にも才能あるとは言えなくない？」
慰めるでも共感するでもなく、ヘールシャムの悩みを根本から蹴り飛ばすように。

[164 二次元好きの匿名さん 23/12/03(日) 08:12:55]

シャアナさんが優しい…！(感動)
好きになっちゃう〜〜〜

[165 二次元好きの匿名さん 23/12/03(日) 10:25:25]

じゃあヘールシャムくん今回は海列車で来たんじゃなくてわざわざ船に乗って遠くから来たのか　大変だ

それとヘールシャムくんとヒョウ太って平凡と特別で全然違う2人だなと感じていたんだけど、ヘールシャムくんは無い才能をあると信じて進んでしまってた状態で　ヒョウ太というか050はこれまで信じてた筈のものが思い込みでしか無かったかもしれなくて
ヘールシャムくんと050って懸命に信じてた道が実は無かったり、崩れたりした2人なのかもな…って思った

[166 二次元好きの匿名さん 23/12/03(日) 22:01:11]

保守

[167 二次元好きの匿名さん 23/12/04(月) 09:25:43]

諦めず一つの方向を見続けるのも良い事だけど諦めをつけて別方向に目を向けるのも時には大事よな
ヘールシャム君はサン・ファルドから離れてた3年間で好きな事とか得意な事とか見つけることが出来たのかな