- 1福丸は俺22/01/01(土) 21:54:58
- 2二次元好きの匿名さん22/01/01(土) 21:57:12
おい名前
- 3二次元好きの匿名さん22/01/01(土) 21:59:05
おっ小糸のクラスメイトSS書いた奴じゃん
- 4福丸は俺22/01/01(土) 22:00:36
私は都内で働くサラリーマン。
40代半ばで独身。
自分で言うのもなんだが冴えない中年オヤジだ。
両親が他界して住まいはこじんまりとしたワンルーム。
趣味もなく恋人も友人もいない。
自宅と会社を往復するだけの空虚な日々を送っている。
ー
「なんだこの書類は! あんた何年この仕事やってんだよ!」
「はい……申し訳ありません……」
「あーもういいよ! 他の人にやらせるから」
「あの……では私は何をすれば……」
「やることないんだったらトイレでも掃除しとけ!」
「はぁ。分かりました」
「クスクス……クスクス……」
歳下の上司に怒られ、周囲の若手社員や女性陣に笑われる……弊社ではすっかりお馴染みの光景だ。
歳下に怒鳴られるのにはもう慣れたものだが、正直今でもこたえる。 - 5福丸は俺22/01/01(土) 22:01:03
トイレ掃除を始める前に、私は喫煙所に向かうことにした。
そう、煙草休憩だ。
昨今の若者は煙草を吸わない者が多く、「煙草休憩なんて時間の無駄」と考える者も多いと聞く。
しかし、私に言わせれば彼らは何もわかっていない。
大事なのはオン/オフの切り替えだ。
適度に煙草休憩の時間を設け、リフレッシュする方が却ってその後の仕事に集中できて能率も上がるものなのだ。
それこそがデキる社会人というものなんだ。
喫煙所の扉を開くと先客が一名。
「……あ、お疲れ様」
「あー……ス」
彼は入社2年目の若手社員。
あまり話したことはないが、いまいち覇気のない青年だ。 - 6福丸は俺22/01/01(土) 22:01:56
「…………」
「…………」
「…………」
「…………」
「……あの、えっと……キミ、もう仕事には慣れたの」
「……まーぼちぼちっすね」
「……彼女とかいるのかい」
「いねっす」
「そう……」
沈黙が気まずくて話題を振るが、返って来るのは適当な返答ばかり。
彼はスマホの画面をずっと見ていて、私のことなど気にも留めていない。 - 7福丸は俺22/01/01(土) 22:02:47
「あ……あの……キミね」
「はい?」
「人と話すときはちゃんと相手の目を見なさい」
「キミはまだ2年目だろう? わ、私はもう20年先輩なんだからもっと敬意とか……」
「えっ?そうなんすか? 20年やってもこれ……はは、終わってる」
「え……」
「てか、申し訳ないんですけど」
「社内でみんなから馬鹿にされてるからって僕ら若手にだけ威張るの、やめてくれません?」
「そーいうのマジダサいんですよ」
「…………あ……ご……ごめん……」 - 8福丸は俺22/01/01(土) 22:03:01
「…………」
「…………」
「あ、あの……さっきからスマホで何やってるの?」
「あー……ゲームっすよ。今日ガチャ更新なんで。シャニマスってんですけど」
「フゥン……」
「……ゲームとか、しないンすか?」
「パチスロ……くらいかな」
「あー」
「それ楽しい?」
「どっすかね……分かんないっす。俺は好きっすけど」
「そう……」
「ス…………あ、限定出た」 - 9福丸は俺22/01/01(土) 22:03:30
「……お疲れ様でした」
みっちりトイレ掃除をしたのち、デスクでしばらくボーッと過ごしていよいよ定時。
他のみんなは残業するらしいが私は特にやることもないので定時退社だ。
睨まれないように出来るだけ小さな声で挨拶し、足早にエレベーターに乗り込んだ。
満員電車に揺られること一時間。
最寄り駅に着くと、途中で発泡酒とコンビニ弁当を買い帰路につく。
あとは帰ってテレビでも見ながら晩酌するだけ……
「はは……40年以上生きて、20年以上勤めた結果がこれか……」
目頭が熱くなる。……さっさと帰ろう。 - 10福丸は俺22/01/01(土) 22:03:57
酒缶を片手に何か面白い番組でもやっていないかとチャンネルを回す。
しかしこの頃はつまらないバラエティ番組ばかりで結局すぐに電源を消してしまった。
はぁ……と、大きなため息をつく。
「あぁ……そういえば……」
ふと思い出す。今日、会社の喫煙所で若手社員と交わした会話を。
「スマホのゲーム……シャニマスとか言ってたかな……」
スマホのブラウザで「しゃにます」と検索をする。
……どうやらアプリをインストールしなくても遊べるらしい。
「試しに……やってみるか」
普段ゲームで遊ぶことのない私だ。
どうせすぐに飽きるだろうが……。
あまり期待をせずに、私はタイトル画面をタッチした。
──これが私とシャニマスの出会いだった。 - 11福丸は俺22/01/01(土) 22:04:32
─1ヶ月後─
「……よし、trueも安定して取れるようになってきたな!」
──ハマっていた。
それはもうドハマりしていた。
コッテコテのアニメ絵に最初こそ戸惑いはしたもののそれもすぐに慣れた。
今では毎朝毎晩プレイするほどに熱中していて、もはや私の生き甲斐と言っても過言ではないだろう。
数あるアイドルの特に気に入ったのが「七草にちか」だ。
私は生涯独身。当然子どももいないが、彼女と接していると「娘がいればこんな感じだったろうか」と思えるのだ。
にちかは生意気で扱いづらく、何かに苛ついていて八つ当たりのように辛く当たる……
二次元とは思えない、確かな“実在性”がそこにはあった。 - 12福丸は俺22/01/01(土) 22:04:58
……と、そろそろ仕事に行かなくては。
trueで手に入れたジュエルで10連だけ回したら支度をするとしよう。
「……む、pSSRか……」
まだ持ってないカードだな。
この子は……。
小糸……そう、福丸小糸だ。
まだプロデュースしたことはないが、おそらく小学生か?
そのカードには公園の遊具で楽しそうに遊ぶ福丸小糸の姿が描かれていた。
かわいい子だ。
よし、帰ってきたら早速プロデュースしてみよう。 - 13福丸は俺22/01/01(土) 22:05:23
「ちょっと!何だよこのファイル!」
「な……何か問題でもありましたか……!?」
「Excelのデータが滅茶苦茶じゃないか! ほらここ! ここも!」
「す、すみません……Excelには不慣れなもので……」
「…………ッ!」
「あのさぁ!分からないことあったら聞こうよ!!大人なんだからさ!!」
「はぁ……頼むよほんと……あんた何年目だよ」
「すみません……」
「もう辞めてくんないかな……マジで……」
「…………すみません」 - 14福丸は俺22/01/01(土) 22:05:50
「はぁ……上手くいかないなぁ……」
今日も会社で歳下の上司から怒鳴られる。
若手社員はそれを見て嘲笑い、女性社員達は「チビハゲダメリーマン」と給湯室で陰口を叩く。
それを私は聞こえない振りをして足早に立ち去るのだった。
……いつになったら私はちゃんとできるようになるんだろうか。
……いつになったらみんなに追いつけるんだろうか。
いつになったら……
「……シャニマスでもやるか……」
今朝決めた通り、福丸小糸をプロデュースすることにした。 - 15福丸は俺22/01/01(土) 22:06:15
小糸をプロデュースし始め、まず最初に感じたのは”焦燥感”だ。
彼女がアイドルを志した理由は「幼馴染達と一緒にいるため」。
彼女は小学生と見紛う程に小柄で幼い。性格も大人しく、コミュニケーションを苦手としている。
プロデューサーに話し掛けられても最初のうちは緊張からかまともに会話になっていない。
どう考えてもアイドルには不向きだ……。
それでも幼馴染の3人に置いて行かれないよう、必死に追いかける姿は痛々しさすら感じる。
彼女自身はアイドルへの憧れを持たず、具体的な目標もない、空っぽのままでアイドルの道を志す。
浅はかで、愚かで、見苦しい。
私はそんな福丸小糸の姿に、不思議と親近感を覚えた。 - 16二次元好きの匿名さん22/01/01(土) 22:06:29
- 17福丸は俺22/01/01(土) 22:06:52
自分で言っておいて何だがおかしな話だ。
冴えない会社員のハゲ散らかしたおっさんが美少女アイドルに親近感だって?
そんなことあるはずが……ん?
「書類を……偽造……」
まさか……!! 私と同じ……!
書類に不備……!!
『わ、わたし、なんにも上手くできてないですね……』
『わたし、いつになったら……』
これも同じだ!! まさか!!!! - 18福丸は俺22/01/01(土) 22:07:42
『──上手くいかないなぁ……』
低身長……コミュ障……仕事がだめだめ……間違いない……!!
福丸小糸と私って 同じなのか!!!??? - 19福丸は俺22/01/01(土) 22:08:23
1.【実質福丸小糸おじさん】
- 20二次元好きの匿名さん22/01/01(土) 22:10:49
- 21二次元好きの匿名さん22/01/01(土) 22:13:04
内容しょうもないのにちゃんと面白いの悔しい
- 22二次元好きの匿名さん22/01/01(土) 22:19:35
私と福丸小糸が同じ……!
とどのつまり……私は実質福丸小糸……ってコト!?
…………
…………
…………
…………
「ぴ……ぴぇ……」
「ぴゃ……!」
「………………」
「……え、えへへ……!」
そう、私は実質福丸小糸……
そうと分かれば、より福丸小糸になる必要があるな……! - 23二次元好きの匿名さん22/01/01(土) 22:21:09
「お、おはようございます……!」
「え? あ、おはようございます……」
「珍しいな……朝にあの人から挨拶されんの」
────
「はぁ……ミスして先輩に迷惑掛けちゃった……」
「元気出しなよー」
「あ、あの……!」
「うわっ、なんすか……?」
「これ……お、お菓子食べよう……!」
「はぁ……ありがとうございます……?」
「行っちゃった……なんだったんだ、あれ……」
「チビハゲなりの励ましじゃない? その飴、どうする?」
「いや捨てるでしょ……なんかキモいし」 - 24二次元好きの匿名さん22/01/01(土) 22:22:50
「ねぇ、見た……?」
「チビハゲ、学習本広げてExcelの勉強してるんだけど……」
「マジ? どういう風の吹き回し?」
「ふむ……なるほど……」
小糸ちゃんは勉強が好き。
──だから私も勉強が好き……!!
そう思うと苦手なパソコンの勉強も苦ではなかった。
えへへ……良い機会だ、資格の勉強もしようかな?
なんだか今日は周りの私を見る目が違う。
肌でそう感じた。 - 25福丸は俺22/01/01(土) 22:23:48
「あー、ちょっといい?」
「ぴゃい……!」
上司に呼び止められたので福丸小糸らしく返事をする。
「ぴゃ……?」
上司はなんだか訝しげな表情をしているが、私……いや、わたしは構わずに続ける。
「ななな何か御用ですか……!?」
「い、いや……やっぱりなんでもない……行ってくれ」
「……? はい!」
すごい……なんだか分からないが今日は叱られなかった。
これが福丸小糸……!やはり庇護欲を唆られるのだろう。
「なんだ……? ふざけているのか……?」
「まさか……怒り過ぎてとうとうおかしくなったか……!?」 - 26福丸は俺22/01/01(土) 22:26:17
実質福丸小糸になってから調子が良い。
周りの私に対する態度が目に見えて変わって位心地は良くなった。
失敗すること、上手くいかないことは依然として多いがそれも福丸小糸たる所以。
福丸小糸たるわたしは、焦らずにゆっくり前に進んでいけば良いのだ。
そう思うと以前ほど苦ではなかった。
最近は酒も絶っている。
福丸小糸は酒なんて飲まない。
最近は酒の代わりに甘いジュースやスイーツを好んで飲み食いしている。
勿論飴もいつも持ち歩いている。
そう、何故ならわたしは実質福丸小糸だから── - 27福丸は俺22/01/01(土) 22:28:46
実質福丸小糸になってから初めての休日。
わたしは杉並区のとあるコンビニを訪れた。
「フゥン……ここで透ちゃんが『財布ないわ』して小糸が訝しんだのか……」
そう、聖地巡礼という奴だ。
なんと感慨深い……そう思いながらわたしはコンビニの前で買ったばかりの煙草を吸っていた。
ちなみに酒はやめられたが煙草はやめられなかった。
しかし、銘柄は変えた。今は甘い匂いのする物を吸っている。実質福丸小糸ならば当然だ。
2本目を吸い終わる頃、珍奇な服装をした青年がコンビニに近づいて来た。
どう珍奇なのかと言うと、彼の来ているシャツには大きくプリントされていたのだ。
福丸小糸の幼馴染にして親友──
──そう、市川雛菜が。 - 28福丸は俺22/01/01(土) 22:31:11
「あの……」
「へ? なんですか?」
「そのシャツ……雛菜ちゃんですよね?」
「そうですけど……え、知ってるんですか?」
「わたしもシャニマスやってるので……」
「へ〜! そうなんですか! あーじゃあもしかして、聖地巡礼ですか?」
「ぴゃい……! も、もしかしてキミも……?」
わたしとこの雛菜推しの青年はすっかり意気投合し、近くの喫茶店で語り合った。
最初こそシャニマスの話題で盛り上がったのだが、青年は途中から今の生活が幸せかしつこく問い詰めてくるようになった。
気恥ずかしさから最初のうちははぐらかしていたが、あんまりしつこいのでわたしはとうとう観念して目標がなくて不安だ。仕事が上手くいっていないと正直に告白した。
すると青年は「しあわせ〜」になれる壺を格安で譲ってくれるというのだ。 - 29福丸は俺22/01/01(土) 22:35:09
「わぁ……良い壺……!」
わたしはこういった物には疎いのだが、彼から譲ってもらった壺からはそこはかとないオーラを感じた。
こんな良い物を5万円で譲ってくれるなんて彼は良い人だ。
わたしは青年を認めて、”実質市川雛菜”と、胸の内ではそう呼ぶことに決め、連絡先を交換した。
歳こそ離れているが彼とは良い友人になれる気がする。
福丸小糸と市川雛菜は堅い絆で結ばれているのだ。
「今度会うときはもっとしあわせ〜になれる方法教えてあげますね〜」
「ぴぇ……い、いいの……?」 - 30二次元好きの匿名さん22/01/01(土) 22:36:51
こわい
- 31福丸は俺22/01/01(土) 22:37:57
それから実質市川雛菜とは何度も連絡を取った。
より「しあわせ〜」になれるという御守りや新聞を買った。
しあわせ〜になれる集会を定期的に開いている、彼の知り合いにも会わせてもらった。
その人はなんというかとてつもないオーラというかカリスマ性を放っていて……そう、実質浅倉透と言っても過言ではない。
わたしも何度か集会に参加させていただいた。
詳しくは書かないが絶対に儲かるビジネスとやらも教えて貰った。
初期投資は高くついたが、すぐに取り返せるとのことだ。
えへへ……ようやく地に足がついたような気がする。 - 32二次元好きの匿名さん22/01/01(土) 22:39:17
きたない「魔女見習いをさがして」
- 33二次元好きの匿名さん22/01/01(土) 22:39:25
(アカン)
- 34福丸は俺22/01/01(土) 22:40:50
それから暫く経って、わたしは遂に初めてのライブイベントのチケットに当選した。
サイリウムを用意し当日を待つ。
実を言うと楽しみな反面、不安も大きかった。
ライブで歌い踊るのは当然だがアイドル自身ではなくそれを演じる役者に過ぎない。
わたしが好きなのは向こうの世界にいるアイドルであって、それを演じる役者にはさほど興味はないのだ。
不安を抱えたまま、とうとうライブ当日を迎えた。 - 35福丸は俺22/01/01(土) 22:42:20
わたしの中ではキャラクターはキャラクター、役者はあくまで役者。
その考えに変わりはない。 なかったはずだった。
──だがどうだ。
ステージの上で歌い踊るその姿はゲームで知るアイドル達そのものではないか。
「あ……あぁ……! あぁぁぁ!!」
小糸だ! 小糸がいる!!
重なって見える……!! 小さな身体で一生懸命歌う福丸小糸のその姿が……!!
彼女は小糸そのものだ!!
わたしはその事実を目の当たりにし感動して震えた。
「小糸ちゃん!! 小糸ちゃん!! 福丸小糸!!!!」 - 36福丸は俺22/01/01(土) 22:43:59
- 37福丸は俺22/01/01(土) 22:46:30
ライブの後、会場から出る途中に1人の客がスタッフに取り押さえられているのを見た。
はぁ……やれやれ、呆れた物だ。
行動力のある異常者ほど厄介なものはないな。
そんなことを考えながらわたしは会場を後にし、その帰り道、近所にある公園へ立ち寄った。
まだ余韻に浸っていたかったのだ。
よかった……凄くよかった……。
アイドルを演じる声優の1人1人がまるでアイドル本人のように感じられた。
勿論小糸も例外ではなく、彼女を演じた声優はまさしく小糸そのものだった。
「…………?」
あれ……? じゃあわたしは何なんだ? - 38二次元好きの匿名さん22/01/01(土) 22:48:20
- 39福丸は俺22/01/01(土) 22:50:20
──福丸小糸はみんなの居場所になれるアイドルを目指していて
──誰よりも努力家で
──家族や仲間から愛されていて
────わたしは本当に実質福丸小糸か?
…………
…………
…………
…………
「…………ぴぇ」
…………考えるのはよそう。 - 40二次元好きの匿名さん22/01/01(土) 22:54:04
雲行きが…
- 41福丸は俺22/01/01(土) 22:54:10
気晴らしに私は公園の遊具で遊ぶことにした。
「はは……子どもの頃以来だな……」
手始めにジャングルジム。
シーソー。ブランコ。滑り台は幅が狭くて滑れなかった。
それから小糸も遊んでいた動物のビヨンビヨンするアレ。
う……こっちも狭い。
「ぴゃ〜ぴゃっぴゃっぴゃ!!」
私は実質福丸小糸……誰がなんと言おうと実質福丸小糸なんだ……!
そう自分に言い聞かせるように、大声ではしゃぎ声を上げる。
すると……
「すみません。ちょっとお話よろしいですか?」
「ぴゃ……!? なななんですか!?」
「いえね、深夜の公園で奇声を発している男がいるという通報を複数受けて来たんですけど」
お巡りさんだった。 - 42二次元好きの匿名さん22/01/01(土) 23:02:05
重くない…?
- 43二次元好きの匿名さん22/01/01(土) 23:49:56
ぴぇ……
- 44二次元好きの匿名さん22/01/01(土) 23:53:13
アイデンティティが…
- 45二次元好きの匿名さん22/01/01(土) 23:56:03
しあわせって何〜?
- 46二次元好きの匿名さん22/01/02(日) 03:58:43
現在収監中
- 47二次元好きの匿名さん22/01/02(日) 04:56:50
本当に実質福丸小糸のSSかいてんじゃねーよ!
- 48福丸は俺22/01/02(日) 08:03:35
……完全に目が覚めた。
お巡りさんにみっちり説教された。
真冬の深夜の公園で小一時間説教された。
「あなた何やってる人?」「ご家族は?えっ?独身?」
「あなたね、普通なら家庭を持って守らなきゃいけない年齢でしょ」
「そのぴゃーぴゃー言うのやめなさいよ。ふざけてんの?」
……あぁダメだ。また涙出てきた。
昨日も最後の方ずっと泣きながら「すみません。すみません」と謝っていた。
とにかく私は目が覚めた。
実質福丸小糸なんて、そんなものはいない。
私はただのハゲたダメオヤジだ。
もう二度とぴぇらない。
「はぁ……実質福丸小糸じゃないってことは……」
「そろそろ現実と向き合ってしっかりしなきゃ、な……」
「もう家庭を持っていて当たり前の年齢……だもん、な……」 - 49福丸は俺22/01/02(日) 08:06:43
「おはようございます!」
「あっ!その資料なら昨日の内に準備しておきました!」
「えっ私がですか……!? はい、任せてください!!」
「……なぁ、最近あいつ変わったと思わないか?」
「やっぱり課長もそう思いますか?」
「急に頼もしくなりましたよね〜。なんか、守るべき物が出来た男、みたいな」
「あいつに? もう良い歳だろう。まさかな……」 - 50福丸は俺22/01/02(日) 08:08:28
トントントン ガチャガチャッ
「ただいま」
「…………」
「やぁ。今帰ったよ」
「…………」
「キミは良い子にしていたかい?」
「…………」
「ふふ、今日も1日良い子にしていたみたいだね」
「…………」
「……今日も仕事大変だったよ。でも、キミが家で待っていると思うと頑張れるんだ。……ねぇ」
「──小糸ちゃん」
終わり - 51福丸は俺22/01/02(日) 08:47:32
一本目はこれで終了
今Pラブ小糸ちゃんの話を書いています
個人的な話になりますが先月ハリネズミを買い始めました
近寄るとビビってその場で丸まって震える姿が小糸ちゃんのようで愛らしかったので「フク丸」と名付けました - 52二次元好きの匿名さん22/01/02(日) 08:57:43
- 53二次元好きの匿名さん22/01/02(日) 11:19:15
怖すぎて泣いてる
- 54二次元好きの匿名さん22/01/02(日) 11:20:39
無駄に文才があるせいでより一層怖い
なんで他の道にそれを活かせなかったのか - 55二次元好きの匿名さん22/01/02(日) 11:29:55
- 56二次元好きの匿名さん22/01/02(日) 11:54:57
文才あるから普通にPラブ小糸を楽しみにしてる俺がいる
- 57二次元好きの匿名さん22/01/02(日) 13:28:49
明らかにおかしいところが一つある
小糸の声優のさらんちゃんは結構大きい
この現実との矛盾は大きな伏線であることが予想される - 58二次元好きの匿名さん22/01/02(日) 17:51:13
普通に楽しみだから上げとくね
- 59二次元好きの匿名さん22/01/02(日) 18:25:41
現実のものでなくたって人生の支えになるものに出逢えたんだからいいんじゃね?(白目)
- 60二次元好きの匿名さん22/01/02(日) 18:39:28
おじさん壺相手に話かけてるぞ
- 61二次元好きの匿名さん22/01/02(日) 20:54:01
今までに書いたのがアイドルの同級生の話と自分を福丸小糸だと思っている精神異常者の話なので相応の覚悟をした方がいい
- 62二次元好きの匿名さん22/01/02(日) 21:40:14
年越し前に大掃除目的で発表した方が良かったんじゃない?
- 63二次元好きの匿名さん22/01/03(月) 06:19:47
- 64二次元好きの匿名さん22/01/03(月) 11:06:17
- 65二次元好きの匿名さん22/01/03(月) 12:51:59
保守
- 66福丸は俺22/01/03(月) 16:41:29
2.【福丸小糸と僕】
- 67福丸は俺22/01/03(月) 16:42:12
僕は男子高校生。本当に冴えない男子高校生で地味だし友達も少ないしクラスでもあんまり目立つ方じゃない。
入学して半年が経った頃の席替えになったときに、くじ引きで福丸さんの隣の席になった。
福丸さんも僕と同様にクラスでは目立たない方で、休み時間でも机に向かって勉強している姿をよく目にした。
友達にも秘密にしていたが、僕はそんな福丸さんに密かに憧れを抱いていた。
席替えで机を移動させ、隣に座った福丸さんに緊張しつつ「よろしく」と声を掛けると、福丸さんも「ぴぇ……よ、よろしく……」と、やはり緊張した様子で返事をした。 - 68二次元好きの匿名さん22/01/03(月) 17:12:10
楽しみ
- 69福丸は俺22/01/03(月) 17:23:05
ある日の昼休み、僕は購買にパンを買いに走っていた。
僕は普段、母の作った弁当を食べているので購買に用事はないのだが、その日だけは母が寝坊して弁当を拵える暇がなかった。
だから今日に限って昼食代だけ持たされたのだ。
パンを買って教室へ戻る途中、福丸さんの姿を見つけた。
いつも昼休みにはどこか教室の外で食べているのは知っていたが、実際にその様子を見るのは初めてだった。
福丸さんは、美人だけど少し怖い感じの上級生2人、それから学年は同じだけど違うクラスのなんだか体格の良い女子と一緒にいた。
もしやカツアゲ……?と思ったが、それはどうやら勘違いのようだ。
福丸さんはとても楽しそうに笑って弁当を食べていた。
教室でそんな風に笑うところなんて、見たことなかった。
教室での彼女は、いつだって何かに怯えるような顔をしていたから……。 - 70二次元好きの匿名さん22/01/03(月) 17:28:39
- 71福丸は俺22/01/03(月) 17:51:52
「あっ、浅倉先輩と樋口先輩だ」
気づかれない内に通り過ぎようと少し早足気味に歩いていると、同学年の女子達の話し声が聞こえた。
福丸さんと一緒にいた先輩2人のことかな。やっぱり校内でも有名人なんだろうか、かなりの美人だもんな。
「すごいよね。芸能事務所にスカウトされたらしいよ」
ふーん、やっぱり街歩いてたらスカウトとかされるんだ。
「ノクチルだっけ?市川さんも同じユニットなんでしょ」
まぁあっちの子も結構かわいいしな。
「え、じゃあもう1人も?」
……は? - 72福丸は俺22/01/03(月) 18:13:15
福丸さんが?芸能人?
「え〜どうだったかな〜あまり印象に残ってないし……一緒にいるってことはそうなんじゃない? ていうかあの子何組だっけ?」
おい、ちゃんと思い出せ。
「……あの、何か用……?」
「え……あ……」
しまった、いつの間にか立ち止まって聞いてた……! 不審がられたか?
「あ、いや……別に……フヒュヒュ……」
「ねえ、もう行こう?」
「うん……」
「…………」
……別にあんな奴らどうでもいいし……。 - 73福丸は俺22/01/03(月) 18:23:00
教室に戻ると僕はいつも弁当を食べるのと同じように自分の席に座り、買ってきたコロッケサンドとパン・オ・ショコラを広げる。
左手にそれを持ち一口齧り付くと右の方の手で胸のポケットからスマートフォンを取り出した。
少し行儀が悪いが、今は購買の安っぽくて冷めたパンよりも先ほど女子生徒が言っていた「ノクチル」が気になって仕方がなかった。
福丸さんはノクチルのメンバーかもしれないし、メンバーではなくただ彼女達と仲が良いだけかもしれない。
それもネットで検索してみれば分かることだ。
僕はスマートフォンのバックライトを最小に設定し、早速ブラウザを開いて「ノクチル」と検索した。
背後をクラスの陽気なグループが通った際、思わず反射的にブラウザを閉じてしまった。
「やれやれ」
彼も僕に関心なんてないだろうに。
自身の自意識過剰加減に鼻で笑った。 - 74二次元好きの匿名さん22/01/03(月) 20:03:18
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- 75福丸は俺22/01/03(月) 20:03:41
出た。ノクチル。
幼馴染4人で結成された透明感あふれるアイドルユニット……紹介文にはそう書かれていた。
紹介ページにはヒラヒラのステージ衣装を身に纏う浅倉先輩、樋口先輩、市川さん、そして……福丸さんの写真があった。
同じ学校にアイドルがいるなんて知らなかった……。
何より、あんな真面目で大人しくて勉強ばかりしている子がアイドルになるなんて、到底信じられなかった。
何か悪い大人に騙されているんじゃないだろうか。
事務所は……283プロ……?聞いたことがないな。
僕がアイドルとかに疎いだけなのかもしれないが。
調べてみるとあの「アンティーカ」と同じ事務所らしい。
僕でも知っているくらいの人気アイドルユニットだ。 - 76福丸は俺22/01/03(月) 22:26:22
その後も時間の許す限りノクチルと、そして283プロに関する情報を調べ続けた。
僕がそうしたのは、福丸さんの身を案じてか、それとも……
そのとき、昼休みの終わりを告げる予鈴がキンコンカンコンと鳴り響いた。
僕はネットに夢中で昼食を食べるのを止めていたことを思い出し、慌ててパン・オ・ショコラを口に詰め込んだ。
ほどなくして福丸さんは教室へ戻ってきた。
僕はアイドルの福丸さんについて訊ねてみたかったが、その反面、僕の知らない福丸小糸の存在がなんだか気持ち悪く思えて何も言えずにいた。
それに、隣の席とはいってもそれほど話すわけではなかったし、急にそんな話を振ったところで不審がられるような気がするのだ。 - 77福丸は俺22/01/03(月) 22:30:46
- 78福丸は俺22/01/03(月) 22:58:08
3作目はちゃんと小糸Pラブにするし内容ちゃんと考えてるので数日お待ち下さい
- 79二次元好きの匿名さん22/01/03(月) 22:58:38
待ってるよ
- 80二次元好きの匿名さん22/01/04(火) 06:52:04
ぴぇぇ
- 81二次元好きの匿名さん22/01/04(火) 13:11:54
オススメから来ましt……(宇宙猫顔)
- 82二次元好きの匿名さん22/01/04(火) 13:22:15
おすすめに出てきていい奴じゃない
怖い
久しぶりに文字を読みたくない感情が生まれた - 83二次元好きの匿名さん22/01/04(火) 13:33:34
なんでオススメに置いたんですかね…?
- 84二次元好きの匿名さん22/01/04(火) 13:42:24
ぴぇ
実質福丸小糸=福丸小糸の隣の席のぼっち - 85二次元好きの匿名さん22/01/04(火) 14:00:48
- 86二次元好きの匿名さん22/01/04(火) 14:06:53
続き楽しみにしてるから保守しとくわよ
- 87二次元好きの匿名さん22/01/04(火) 14:11:10
ジャンプ感想スレに紛れ込む実質福丸小糸
- 88二次元好きの匿名さん22/01/04(火) 17:55:10
下手なホラーより怖いな…
- 89二次元好きの匿名さん22/01/04(火) 18:01:05
ぴゃ……!失礼な……!じゅ、純愛だよ!
- 90二次元好きの匿名さん22/01/04(火) 19:10:21
こ、小糸ちゃん……!2作目はともかく1作目は擁護できないよ……!
- 91二次元好きの匿名さん22/01/04(火) 20:17:55
- 92福丸は俺22/01/04(火) 23:10:16
その日の放課後、僕は街の本屋に立ち寄った。
ネットでノクチルについて調べている内に、数日前に発売したばかりの芸能雑誌でノクチルが紹介されているという情報を目にしたのだ。
僕はどうしてもその中身を確かめずにはいられなかった。
本屋に行っても普段見るのはせいぜい漫画コーナーくらいなので、目当ての雑誌を見つけるのに少し手間取ったがとうとう発見した。
店員や他の客の視線を警戒しつつ、恐る恐るページを捲る。
あれ……? おかしいな。
パラパラパラ……と一通り中身を確認したがノクチルのページが見つからない。
それを2回繰り返した所でようやく見つけた。
なんだ、これだけか……?
ノクチルの紹介ページは1ページのその更に半分程度。どうやらそれが現時点でのノクチルの認知度のようで、僕は安堵したような、落胆したような、何だかよく分からない心持ちで雑誌をレジに運んだ。 - 93二次元好きの匿名さん22/01/05(水) 06:54:38
ぴゃ
- 94二次元好きの匿名さん22/01/05(水) 12:46:26
ぴぇ……
- 95福丸は俺22/01/05(水) 20:58:40
ノクチルが寺で修行するネット番組を見た。
毒にも薬にもならないクソ番組だった。
ノクチルがハロウィンパーティーをする生放送動画を見た。
福丸さんが作ったお菓子が食べてみたいと思ったが、内輪ノリで騒いで食べるだけのクソ企画だった。嫉妬じゃない。
283プロのファン感謝祭ライブに行った。
バレないように観客席の最後尾でサイリウムを振った。
他のメンバーと比べると福丸さんのイメージカラーのライトが少ないのが、後ろにいるとよく分かった。
ステージで一生懸命歌う彼女は果たしてそれに気づくだろうか。
気づいたとき、どう思うだろうか。
──もうやめてくれよ。
この頃僕の中で大きくなりつつある、良くない“何か”がそう呟いた。 - 96福丸は俺22/01/05(水) 21:13:50
──冬が来た。
ある日の休み時間、僕は自分の席で次の授業の準備をしていた。
すると同じクラスの女子が「綺麗な先輩を見た」と話していたので、僕はつい聞き耳を立てていた。
どうやらノクチルの浅倉先輩と樋口先輩のことらしく、隣の席で座っていた福丸さんの方をちらっと横目で見ると、やはり少し緊張で強張っていた。
彼女らの話題は「美人の先輩達といつも一緒にいる市川さん」へと移る。
福丸さんはより一層緊張で固まる。僕も少し緊張してきた。
ひょっとすると彼女達は福丸さんが3人といつも一緒にいることを知っていて、「すごいね」と褒めそやすのかもしれない。
……でも、そうはならなかった。
結局彼女達は浅倉先輩、樋口先輩、市川さんが一緒に何をしてるかなんてロクに知らないし、ましてや一緒に福丸さんがいることになんか気づいちゃいないんだ。
……結局その程度なんだよ。
──ノクチルも。
──アイドル、福丸小糸も。
アイドルなんてやめてしまえばいいのに。 - 97福丸は俺22/01/05(水) 21:39:49
それから、福丸さんは以前にも増して勉強に精を出していた。
といってもどうやら学校の勉強とは違うようで、雑学の本だとか、高1の範囲では習わないような英語の単語カードを隙間の時間に開いているのを度々見た。
芸能人なのだから、きっとクイズ番組か何かに出るんだろう。
それならきっと上手くいくかもしれない。
勉強なら福丸さんの得意分野じゃないか。
クイズに正解しまくってテレビにたくさん映って、そうすれば学校のみんなもノクチルを、福丸小糸を知る筈だ。
福丸さんが人気者になるのは何故だかモヤモヤするけれど、きっとその方が良いに決まってる!
家に帰るとそれらしきクイズ番組を片っ端から毎週録画に設定した。
ハードディスクを圧迫するんで怒られたがそんなの知るもんか。
そして、ついに福丸さんが出演するクイズ番組が放送日がやってきた。 - 98福丸は俺22/01/05(水) 21:50:52
結果から言って福丸さんの立ち位置は依然何も変わらなかった。
早押し式のクイズ番組で福丸さんは気圧されてか全く解答ボタンを押せていなかった。
最初の方で受け答えが上手く出来なかったからか、司会者から話を振られることも殆どなかった。
そのせいか福丸さんは殆どテレビに映っていなかった。
今、隣にいる福丸さんは何を思っているんだろうか。
声をかけたい。 そう思った。
「テレビ見たよ」「アイドルやってるなんて凄い」と声をかけたかった。
たったそれだけのことが言えなかった。 - 99福丸は俺22/01/05(水) 21:59:37
昼休み。教室で弁当を食べる。
福丸さんはいなかった。 いつものようにノクチルのメンバーで集まっているのだろう。
「そういやさ、昨日テレビ見てたら福丸が出てたんだよ」
クラスのやんちゃグループに属する男子の声だった。僕は思わず振り返った。
「は? マジ?」「え?何の番組?」
教室に残っていたクラスメイト達が注目する。
男子生徒は得意になって喋りだす。
「〜〜〜〜ってクイズ番組なんだけどよ。たまたま見てたら『ノクチル 福丸小糸』って出てたから間違いねえよ」
「ノクチルって何?」「あーなんか聞いたことあるわ。浅倉先輩達とアイドルやってるって」「えっ!?福丸さんが!?」
教室中で福丸さんの話題で持ちきりになる。
あぁ……なんて間の悪い。
今この場に彼女がいればきっとクラスメイトに囲まれて質問責めに遭っただろう。
「……でも笑えたのがよ」 - 100二次元好きの匿名さん22/01/05(水) 22:04:47
お腹痛くなってきたけどそれがいい…
- 101福丸は俺22/01/05(水) 22:06:53
「えーなに?」
「福丸のやつ、せっかくテレビに出てんのに何も答えないし全然映ってねぇでやんの(笑)」
「…………っ」
「マジで笑」「教室にいるときと変わんないじゃん」
…………
「マジだって!」
「喋らないで良いんなら俺にだってアイドル出来るぜw」
…………
「っ(笑)」「ウケる(笑)」
「えっ?ねぇちょっと……!」
「は?お前何? おい、待t」
お前が……
福丸さんを……
笑うなッッッッ!!!!!! - 102福丸は俺22/01/05(水) 22:22:25
僕の拳が男子生徒の顔面に直撃し、奴の身体は椅子ごと勢いよく倒れ込んだ。
一瞬の静寂の後、周りの生徒が驚きの声をあげる。
教室内の無関係のグループは僕に対し蔑みの目を向けていたが、今はそんなことはどうでもいい。
今僕は奴らへの怒りと、人を殴り慣れていないせいか拳が痛いので一杯一杯だった。
しかし、その数秒後には僕はやんちゃグループに捕まり、騒ぎを聞きつけた先生がやってくるまで殴る蹴るの暴行を受けサンドバッグのようになっていた。
保健室で簡単な手当を受けたのち、午後の授業への出席は許されず、別室に通されて学年主任の先生から事情聴取を受けた。
先生が音を上げるまで、いくら怒鳴られようと僕は何も言わなかった。
反省文の提出と1週間の停学を言い渡され、僕は家に帰された。
福丸さんには会わなかった。 - 103福丸は俺22/01/05(水) 22:36:15
僕の起こした事件に母は酷く悲しんでいた。
相手の家に菓子折りを持って謝罪に行くと言って聞かなかったが、それだけはやめて欲しいと頭を下げて頼み込んだ。
僕は自分のやったことにちっとも後悔はしていなかった。
福丸さんはどうしているだろうか。
僕ははっきりいって福丸さんにアイドルを辞めて欲しいと思っている。
何様だと思うかもしれないが、だってあんまりじゃないか。
きっと福丸さんが認められる日も、報われる日も来ない。
きっと彼女は必死に努力をつづけているんだろう。でも、努力なんてすればするだけ誰よりも辛い思いをするだけじゃないか。そんなの福丸さんが可哀想過ぎる。
彼女は一生懸命勉強して良い大学に行って、彼女の努力が活かされる仕事をしていずれは結婚する、そういう普通の人生のが良いに決まっている。 - 104福丸は俺22/01/05(水) 22:45:13
自宅謹慎の最初の数日は大人しく部屋で過ごしていた。
しかし、どうしても買いたいものがあって両親が仕事へ行っている間に街へ出た。
それがいけなかった。大人しく家でじっとしていればよかった。
僕はそこで信じられないものを見た。
──福丸さんが大人の男と楽しそうに歩いているのを見た。
嫌だ……そんなの嫌だ。
親子?
……そこまで歳が離れているようには見えない。
兄弟?
……プロフィールには妹しか書かれていなかったはず。
それにあの笑顔……教室にいるときは勿論、ステージに立つ時にも見せない、まるで恋人に向けるような表情じゃないか。
惨い……優等生の福丸さんに、アイドル福丸小糸に歳上のイケメン彼氏なんて、そんなのクソ過ぎる!
僕は停学中で身体中傷でボロボロで、それでも彼女のことを気に掛けていた。
でも彼女はどうだ?僕のことなんて気にも留めずに、アイドルの癖に幸せそうに彼氏とデートしてる!
この差はいったいなんだ?
脳がぐっちゃぐちゃに掻き混ぜられたような、僕の中の何かが崩れ落ちたような気分がした。 - 105福丸は俺22/01/05(水) 22:49:26
今日はここまで
あと1,2日でこれ終わる予定です - 106二次元好きの匿名さん22/01/05(水) 23:35:13
一番気になるとこでッッッッッッッ!!!!!!!!!!!!!!!!!!
- 107二次元好きの匿名さん22/01/05(水) 23:35:51
てかこの後Pラブ小糸書くの?????情緒ぐちゃぐちゃになりそう
- 108二次元好きの匿名さん22/01/06(木) 06:50:54
よし、純愛だな
- 109福丸は俺22/01/06(木) 11:44:31
- 110二次元好きの匿名さん22/01/06(木) 11:53:42
- 111二次元好きの匿名さん22/01/06(木) 13:33:17
ここまで来たらとことん暴れさせたかった
- 112二次元好きの匿名さん22/01/06(木) 13:51:30
こいつ……勝手に小糸のために戦って勝手に裏切られた気持ちになって、雁夜おじさんみたいだな……
- 113二次元好きの匿名さん22/01/06(木) 17:28:28
生きがい
- 114福丸は俺22/01/06(木) 20:12:18
僕は福丸と、そして一緒にいる白コートの男の背後に回り、少し距離を空けて二人の後を着けた。
裏切られたショックではらわたが煮えくりかえっているが存外冷静でいられた。
とにかくあいつらをめちゃくちゃにしてやりたい。
もしバールでもバットでも何か武器になるものがあれば、すぐに襲いかかっていたかもしれないが、生憎今は丸腰だ。
それならただ闇雲に殴り掛かるよりは、機会を伺ってよりダメージを与える手段を考えるべきだろう。
だから、まずは二人の後を着けて白コートの正体を探ることにした。
白コートにしか見せない福丸の照れた顔も、笑顔も、怒った顔も、全てを見逃さない。 - 115福丸は俺22/01/06(木) 20:37:44
二人はレトロな雰囲気の喫茶店に入っていったので、外から二人の座った席を確認したうえで数分遅れて僕も入った。
向こうから極力見えず、尚且つ会話が聴こえる席に座る。店員がやってくると、ささっと適当な飲み物を注文した。
そして二人の会話にひたすら耳を傾けた。
福丸は白コートのことを「プロデューサーさん」と呼んでいた。
会話から察するにどうやら奴はノクチルの担当プロデューサーで、浅倉先輩や樋口先輩をスカウトしたのも、福丸をオーディションで採ったのもあの男らしい。
どうやらノクチルの他の3人とも仲が良いようで、一緒に食事はしょっちゅうで他にも人気のスイーツ店に行ったり、映画を観に行ったりと一緒に遊びに行くことも度々あるらしい。
えっ そんなことある?
プロデューサーってそういうものなの? - 116福丸は俺22/01/06(木) 20:47:19
いやどう考えても駄目だろ。
アイドルは夢を売る商売。
ファンが求めるのは清純であること。
それなのによりによって事務所の関係者と、プロデューサーとデートするとか絶対にあっちゃいけないはずだ。
そんなのファンに対する最低最悪の裏切りじゃないか。
しかも相手は複数の女の子に手を出すゲス野郎……そんなのクソだ。
呑気にコーヒーなんて飲みやがって……あれもアイドルオタク達から巻き上げた金で注文したオタクコーヒーだ。
そう思うと悔しくて涙が出てきた。
僕の中にある“消したくても消せない炎”は、どんどん肥大化していった。 - 117福丸は俺22/01/06(木) 21:00:30
「あ"あ"あ"あ"あ"あ"あ"あ"あ"あ"!!」
家に帰ると僕は、怒りに身を任せハードディスクをぶち壊した。
福丸が出演した番組が録画されていたものだ。
それから福丸が紹介されていた雑誌も破り捨てた。
応援グッズもみんな捨ててやった。
「はぁ……はぁ……」
裏切られた。
裏切られた。
裏切られた。
裏切られた。
裏切られた。
この家にある福丸小糸に関する物は全て壊してやりたい。
それでも怒りは収まらない。
僕はノートパソコンを引っ張り出した。 - 118二次元好きの匿名さん22/01/06(木) 21:13:52
ああああ…………
- 119福丸は俺22/01/06(木) 21:14:42
こいつで福丸小糸と283プロのクソっぷりを暴露してやるんだ。
「某高校生アイドルの交際相手発覚」
「プロデューサーが担当アイドルに4股」
「2○3プロは超ブラック企業」
話題になるためなら多少の脚色をしたっていい。
「同級生によるリーク」とでも文頭に置けば悪徳記者かネットメディアが飛びついてくるはず。
客観的に見て信憑性に欠けるかもしれないが、話題にさえなれば確実にダメージを与える。こっちの勝ちだ。 - 120福丸は俺22/01/06(木) 21:23:38
パソコンのメモ帳を開き文字を打ち込む。
カタカタ……カタカタ……
いつのまにか外が暗くなっていた。
僕は真っ暗な部屋でキーボードを叩く。
カタカタ……カタカタ……
物音がする。両親が帰ってきた。
どうやら壊れたハードディスクに気付いたようだが何も言ってこない。
両親はこの頃腫れ物に触れるように僕に接する。
カタカタ……カタカタ……
夕飯は食べなかった。
腹が減らないわけではないが、今は目の前のパソコンと向き合っていたかった。
カタカタ……カタカタ……
キーボードを叩く音が旋律を奏でる楽器のようで
不思議と心地良かった。
カタカタ……ッターン
──そして朝がやってきた。 - 121福丸は俺22/01/06(木) 21:57:05
僕は夜通しパソコンに文字を打ち込み続けた。
福丸小糸のこと。
プロデューサーのこと。
ノクチルのこと。
学校のこと。
家でのこと。
昔のこと。
将来のこと。
福丸さんへの想いを。
僕の中にある全てを。
……晴れやかな気分だった。
気がついたら福丸さんに関係のないことまで書いていて、
……全てを吐き出したら、もう全部がどうでもよくなっていた。 - 122福丸は俺22/01/06(木) 22:01:17
──それはきっと、恋ではなかった。
僕が福丸さんに抱いていた感情。
いや……男として、異性として好意を持っていたのは確かだ。
でもそれ以上に大きな僕の中にあった感情は……。
そう、”憧れ”だ。
僕はずっと、福丸さんに憧れていたんだ。
いつも教室で独りでいて、勉強をしている福丸さん……
ひたむきに努力する、その姿に。
追いつきたかった。僕も福丸さんのように頑張りたかった。
だから嫌だった。
福丸さんが独りでないのが。
福丸さんが遠くに羽ばたいていくのが。 - 123福丸は俺22/01/06(木) 22:12:21
だから挫折を願った。
福丸さんが遠くに行かないように。
僕は愚かにも、努力もせずに相手の足を引っ張ることばかり考えていた。
だけど福丸さんが誰よりも努力しているのを知っていたから、それを馬鹿にされると腹が立った。
何が何だか分からなくなっていた。
……もう終わりにしよう。
これは卒業論文だ。
福丸さんに固執する僕。
何も努力せず不満を零す僕。
そんな昨日までの僕からの卒業。
メモ帳を閉じ、パソコンをシャットダウンした。
保存する必要はもうない。
僕はこれから福丸小糸のただのファンになって、ただ応援して幸せを願う。
そして観客席の最後列で他のファンと同じようにただサイリウムを振るい涙を流すんだ。
完 - 124二次元好きの匿名さん22/01/06(木) 22:34:31
名作だった
本当に名作だった
お疲れ様… - 125福丸は俺22/01/06(木) 22:35:00
……いや、それじゃ駄目だろ。
そんなのはただの諦めだ。
成長でもなんでもない。
そうじゃないだろ……!
僕は、福丸小糸に追いつきたい!
僕は、福丸小糸のための僕になりたい!
福丸小糸がより高みに羽ばたく、その助けになりたい!
そのためにはどうすればいい?
既にその答えは僕の中にあった。 - 126二次元好きの匿名さん22/01/06(木) 22:36:17
え
- 127福丸は俺22/01/06(木) 22:37:04
それから数年が経った。
福丸さんは今、ソロアイドルとして活動している。
浅倉先輩と樋口先輩の高校卒業を機にノクチルは解散。
全員別々の道へ進んだが、4人共芸能活動は続けているし、SNSを見た感じだと今でも仲が良いみたいだ。
一方僕はというと……
あの後、僕は停学期間が明けても学校には行かなかった。
両親と相談し、しばらくして退学手続きを取った。
しかし、それは逃げではない。
僕の僕に目標へ向かうための大切な一歩だ。
学校を辞めたのであれっきり福丸さんには会っていないし、ライブにも行かなかった。
そして今…… - 128二次元好きの匿名さん22/01/06(木) 22:38:56
!?!?!?!?
- 129福丸は俺22/01/06(木) 22:39:15
「本日はお時間をいただきありがとうございます。」
「では、いくつか質問をさせていただきます」
──はい。よろしく。
「まず、今でこそ人気作曲家の○○さんですが、音楽に出会ったのはいつ頃でしょうか?」
──高校1年生の時だね。僕は当時、本当に冴えなくてクラスで目立たない、友達も少ない男だった。
で、ある日、どうしても許せないことがあって暴力事件を起こしたんだ。
そんで停学になって、自暴自棄になって……そんな時に出会ったのが音楽だった。
「今の○○さんからは想像出来ませんね……。許せないこと……というと、具体的に何が?」
──悪いけどそれは言えない。あれは僕の過ち。武勇伝のように語るつもりはない。
「そうですか…では次の質問を」
「今後の目標、やりたいことはありますか?」
──そうだな……これは僕が音楽を始めた時から考えていたことなんだけど……
──僕の作った曲で、歌ってほしい人がいるんだ。 - 130二次元好きの匿名さん22/01/06(木) 22:40:34
!!!!
- 131福丸は俺22/01/06(木) 22:40:57
「それは……ひょっとして女性ですか?」
──ははっ、そうだね。
「憧れの女性という訳ですか」
──うん。僕の作った曲はみんなその人へのラブレターと言ってもいい。
僕は芸能界で戦う彼女に、僕の曲で天下を取ってほしくてこの道に進んだんだ。
「驚きました……素敵な話ですね」
──そんなことないよ。
「ちなみにその女性というのは?」
──それは……いや、これもやめておこう。
ここで彼女の名前を言えば偉い人達が面白がって僕と彼女を引き合わせてくれるかもしれない。
──でも、それじゃ意味がないんだ。
僕は、僕の足で彼女に追いつかなくちゃならない。
だって、僕の主人公は僕だから。
【福丸小糸と僕】 完 - 132二次元好きの匿名さん22/01/06(木) 22:42:14
めちゃくちゃ良い話じゃないか……
- 133二次元好きの匿名さん22/01/06(木) 22:43:36
稀に見る傑作だった
- 134二次元好きの匿名さん22/01/06(木) 22:43:38
そしてお前が福丸に婿入りするのか
- 135二次元好きの匿名さん22/01/06(木) 22:45:43
- 136福丸は俺22/01/06(木) 22:45:51
3.【恋と呼ぶには】
- 137福丸は俺22/01/06(木) 22:48:57
- 138二次元好きの匿名さん22/01/06(木) 22:52:58
ゆっくりでいいよ
楽しみに待ってる - 139二次元好きの匿名さん22/01/06(木) 22:59:03
保守しとくからゆっくり書いてくれ
- 140二次元好きの匿名さん22/01/07(金) 07:11:00
ぴゃ……っ!
- 141二次元好きの匿名さん22/01/07(金) 17:05:57
ぴぇ…!
- 142二次元好きの匿名さん22/01/08(土) 00:37:48
ほわっ
- 143二次元好きの匿名さん22/01/08(土) 08:40:13
保守
- 144二次元好きの匿名さん22/01/08(土) 16:51:45
ほ
- 145福丸は俺22/01/08(土) 20:47:24
- 146二次元好きの匿名さん22/01/08(土) 20:49:37
かわいい
- 147二次元好きの匿名さん22/01/08(土) 20:52:56
ぴぇ……本当に飼ってる……
- 148二次元好きの匿名さん22/01/08(土) 21:21:17
フク丸ちゃんかわいいね…
- 149二次元好きの匿名さん22/01/09(日) 02:49:32
埋まらんように気つけながら保守しとくます
- 150二次元好きの匿名さん22/01/09(日) 06:56:03
飼ってないのに「飼ってる」とか言い出したらそれはもう異常者なんだよなぁ
- 151二次元好きの匿名さん22/01/09(日) 15:08:44
ま、待ってましゅ……!
- 152二次元好きの匿名さん22/01/09(日) 20:21:34
ぴゃ〜ぴゃっぴゃっぴゃ!
- 153福丸は俺22/01/09(日) 22:16:48
わたしは人と関わるのが苦手です。
小さな頃から引っ込み思案で、幼稚園ではいつも幼なじみの透ちゃんと円香ちゃんの後ろにくっついてばかりいました。
二人とは歳が違うから、教室で離れ離れになったときにいつも泣いて大変だったらしい、とお母さんから聞きました。
小学校に入学すると、初めて同い年の友達ができました。それが雛菜ちゃんです。
雛菜ちゃんは大抵のことはできたけど、いつも宿題をやらずに学校にくるので、放課後一緒に宿題をして、それからみんなで一緒に遊ぶようになりました。
みんななんでもできて、可愛くて、自信を持ってて、いつも一緒にいて「凄いな」って思っていました。
そんなみんなと一緒にいられることはわたしの自慢だったけど、ときどきわたしだけみんなより後ろにいるような気がしました。
だから、がんばろうと思いました。
みんなと一緒にいられるように、「よゆー」だって笑って言えるわたしになりたいと思いました。 - 154福丸は俺22/01/09(日) 22:21:39
だけどなかなかうまくいきません。
スポーツはだめだめだし、人と話すのもやっぱり苦手でした。
でも勉強は苦ではなかったので、とにかくいっぱい勉強しました。
すると、お母さんや学校の先生が褒めてくれるようになりました。
きっと「すごいね」って褒めて貰えるのが嬉しかったんだと思います。
わたしはもっと勉強をがんばりました。
6年生になってすぐ、先生に中学受験を勧められました。
透ちゃんと円香ちゃんと同じ地元の中学に入学するんだと思っていたけど、みんなと離れるのは嫌だったけど、お母さんも中学受験に賛成したので言う通りにしました。
みんなに中学受験するって話をしたら、透ちゃんは「そっか」とだけ言って、あとはいつも通りでした。
雛菜ちゃんは残念そうにしてくれたけど「小糸ちゃんがしあわせ〜になるならいいんじゃない?」と言いました。わたしはよく分かりませんでした。
円香ちゃんは何も言いませんでした。
そして無事に私立の中学校に合格して、わたしはみんなと離れ離れになりました。 - 155福丸は俺22/01/09(日) 22:24:17
中学校でのことは……特に書くことはありません。
学校が違うし通学に時間が掛かるので、小学校のときと比べるとみんなとは前ほど会えなくなりました。
みんなと一緒にいられる時間は、わたしにとって前より大切な時間になりました。
でも「中学校の面白い名物教師」「美味しい給食のメニュー」といった3人にしか分からない話題は、わたし一人除け者にされてる気がしてなんだかすごく嫌でした。
みんなと過ごす時間が減ったわたしはその分もっともっと勉強をして、気がついたら一学年上の内容まで予習していました。
三者面談で「超難関校を狙える」と先生が言いました。
お母さんはそれに喜んで賛成しました。
だけど、わたしはこのままだともっとみんなと離れ離れになる気がして……
初めてわたしはお母さんと先生に反抗しました。
透ちゃんと円香ちゃんがいて、雛菜ちゃんも受験する高校を受験したいと言いました。 - 156福丸は俺22/01/09(日) 22:27:10
先生にはすごく反対されたけど、お母さんはわたしの好きにすればいいと言いました。
今思えば、本当にお母さんはわたしが行きたい学校に行くのが一番だと思ってくれたんだと思います。
中学受験のときも「受験はしたくない」とわたしが一言いえば、お母さんは許してくれたのかもしれません。
でもそのときのわたしはお母さんを失望させたような気がして、負い目を感じていました。
そしてわたしはついにみんなと同じ高校に進学して……またみんなと一緒に過ごせるようになりました。
透ちゃんと円香ちゃんと雛菜ちゃん。それからお父さんお母さんと妹、それから学校……それがわたしの世界の全てでした。
そして、高校に入ってわたしは…… - 157福丸は俺22/01/09(日) 22:30:06
「……ふぅ」
「おっ小糸、できたのか?」
「あっ、プロデューサーさん……!」
「は、はい……! ばっちりです」
「どれどれ……うん、よく書けているな。さすが小糸だ。これなら少し書き加えたり修正するだけで大丈夫だ」
「ほ、ほんとですか……!」
「で、でも……こんなのでいいんでしょうか……」
「小糸?」
「だって、わたしの生い立ちなんて、何も面白いことないですし……!」
「あぁ……ははっ、それなら大丈夫だよ」 - 158福丸は俺22/01/09(日) 22:33:53
「前に子どもの頃の写真を紹介する企画があっただろ?」
「それが結構反響あってさ、ノクチルの、小糸の小さい頃の話がもっと聞きたいって声が集まって、今回の企画が生まれたんだ」
「…………!」
「だから自信を持っていい。みんな小糸のことを知りたがってるんだよ」
「はい……!」
「……と、もう暗くなってきたな。家まで送るよ」
「……あ、あの!」
「ん?どうした?小糸」
「えっと……ぷ、プロデューサーさんはわたしのこと知りたいって……お、思いますか……?」
「そんなの当たり前だろ? 俺も小糸のこと、知れたら嬉しいよ」
「ぴゃっ……!? そ、そうですか……?」
「……えへへ……」 - 159二次元好きの匿名さん22/01/10(月) 09:37:21
楽しみだ……
- 160二次元好きの匿名さん22/01/10(月) 19:29:20
保守
- 161福丸は俺22/01/10(月) 21:20:37
「なぁ小糸」
「最近、どうだ?」
わたしの家までへ走る車の中、プロデューサーさんが言いました。
「どうって……お仕事、ですか? それともレッスン……学校……?」
「あぁごめん。なんでもいいんだ」
「『すごく、前向きなんです』って言ったよな?」
──この前、クイズ番組に出演した時の話だ。
「あれから何か変わったか?」 - 162福丸は俺22/01/10(月) 21:29:34
「えっと……そうですね……」
「なんだか、前より楽しいですよ」
「…………」
「新しいこと……どんどん覚えられるのが嬉しいんです。それに今までにやったことのないお仕事にも挑戦したいって、思います」
「……焦りでなく、心からそう思えるようになりました」
「そっか……それならよかった」
「えへへ……みんな ぷ、プロデューサーさんのおかげですよ……!」
「…………」
「……そろそろ着くぞ」
「あ……はい……! ありがとうございました……!」 - 163福丸は俺22/01/10(月) 21:40:03
「ただいま」
「──あ、お姉ちゃんお帰りー」
家に帰ると、妹がリビングでテレビを観ていました。
「おかえり。寒かったでしょう。ご飯あっためておくから、先にお風呂入っちゃいなさい」
お母さんはそう言って台所へ入りました。
「あ、うん……!」
車で送ってもらったからそんなに冷えてはいないけど……
もう時間も遅いし、わたしはお母さんの言う通りにしました。
そしてレッスンでの疲労を癒すように、お母さんに呼ばれるまでゆっくり湯船に浸かりました。 - 164福丸は俺22/01/10(月) 21:44:18
「わぁ……あったかい……」
お風呂からあがってお母さんが用意してくれたご飯を食べました。
お風呂も気持ちよかったけど、温かい味噌汁を飲むとホッとします。
「ねーお姉ちゃん」
すると、テレビを観ていた妹が声をかけてきました。
「今日、プロデューサーさんに送ってもらったでしょ」
「ぴぇ……!?」
「な、なんで知ってるの……!?」 - 165福丸は俺22/01/10(月) 21:53:29
「エンジンの音」
「あ……」
「前までは家の近くで降りてたよね?」
「ほら、私がコンビニ行こうとして会ったときとか」
「そ、それがなに……?」
「別にどうでもいいけど、なんでかなーって」
「家の前まで送ってもらったでしょ。今日」
「た……たまたまだから……! お話してたらいつの間にか着いてただけ……!」
「ふ〜ん……」 - 166福丸は俺22/01/10(月) 22:02:20
「ね、お姉ちゃんってプロデューサーさんのことどう思ってるの?」
「ど、どうって……優しくて、頼りになって、いつもお世話になってて……」
「もー、そうじゃなくて、異性として好きなのかってこと!」
「ぴゃ……!?」
「顔は結構良いよね〜背も高いし」
「ななな何言って……!?」
「うわ……お姉ちゃん顔真っ赤じゃん」
「こ、これはお風呂上がりってだけ……!」
「それに、プロデューサーさんはそういうのじゃ……!」
「あはは、お姉ちゃん面白ーい!」
「も、もう……!お姉ちゃんをからかって……!!」
「ごめんごめん。じゃ、私部屋に戻るから。おやすみ〜」
妹は満足したように笑うと、テレビを消して部屋を出ました。
「……でも、あのお姉ちゃんがあれほど打ち解けるんだもん……そういうこともあるよね」
妹は小声で何か言いましたが、わたしには何を言ったのか聞き取れませんでした。 - 167二次元好きの匿名さん22/01/11(火) 07:46:55
異常者成分が足りないよ
- 168二次元好きの匿名さん22/01/11(火) 09:15:12
- 169二次元好きの匿名さん22/01/11(火) 18:34:07
保守ぴぇ
- 170福丸は俺22/01/11(火) 20:42:16
- 171二次元好きの匿名さん22/01/11(火) 22:33:27
あんまり無理しないでね
埋まっちゃったらPart2立てればいいし - 172二次元好きの匿名さん22/01/12(水) 07:24:10
補習
- 173二次元好きの匿名さん22/01/12(水) 19:04:59
保守
- 174福丸は俺22/01/12(水) 20:59:33
次の日。わたしは学校が終わった後、レッスンを受けてそのあと事務所に寄りました。
透ちゃん、円香ちゃん、雛菜ちゃんはみんなそれぞれお仕事があったので、今日はわたし一人です。
事務所へ入るとプロデューサーさんが一人でデスクワークをしていました。
「あ……プロデューサーさん」
「おっ小糸、レッスン終わりか? お疲れ様」
「お、お疲れ様です……!」
プロデューサーさんの顔を見ると、昨日の妹との話を思い出して何だか緊張してしまいました。
「……? どうかしたか?」
「い、いえ……! なんでもないです!なんでも……!」 - 175福丸は俺22/01/12(水) 21:42:41
「そうか? それならいいんだけど……」
「でもちょうどよかった。小糸に渡したい物があったんだ」
「渡したい物……わたしに、ですか?」
「うん。ほらこれ」
「わぁ……飴……ですか?」
「製菓会社でCM撮影の仕事があってさ、担当の人が新商品をくれたんだ」
「小糸、飴好きだっただろ?」
「…………!」
プロデューサーさんはそう言って、黒っぽい色をしたパッケージをわたしに渡しました。
わたしはそれがとても嬉しいと思いました。
お菓子を貰ったことも嬉しいけど、プロデューサーさんがわたしのことを考えてくれたことがなんだか照れ臭くて、けれど温かく感じました。
「…………あれ?」 - 176福丸は俺22/01/12(水) 21:53:09
「あ、あの……プロデューサーさん」
「ん?どうした?」
「…………あ」
そのパッケージにはこう書かれていました。
『ブラックコーヒーキャンディ』
「これ……苦いやつ……ですよね……?」
「ごめん! 新商品の飴っていうから甘い飴とばかり……!」
「コーヒー味、ダメだったよな……!?」
「ぴぇ……コーヒー味……」
「い、いえ……! こ、こんなのぜんぜんよゆーですよ!」
「わたし、コーヒーくらいふつーに飲めますもん!」
子ども扱いされているようで、つい虚勢を張ってしまいました。
わたし、苦いの苦手なのに……。 - 177福丸は俺22/01/12(水) 21:56:52
「そ、そうか……? ならよかったけど……」
「もしダメだったら他のメンバーに……あ、雛菜も苦いのダメだったな……」
「透と円香なら大丈夫か……?」
「な……う、疑ってるんですか!?プロデューサーさん!」
「わたし、嘘なんてつきませんよ! ぜんぜん平気なんですからー!」
プロデューサーさんから貰った飴、大切に食べようと思いました。
大切に……もっと大人になって、苦いのが平気になるまで……。
いつか。きっと。
──たぶん、13月までには……。 - 178福丸は俺22/01/12(水) 22:03:39
- 179二次元好きの匿名さん22/01/12(水) 22:20:03
愛だ……
- 180二次元好きの匿名さん22/01/12(水) 22:24:35
前半戦の怪作からは考えられないほど心が温まるPこい…
- 181二次元好きの匿名さん22/01/13(木) 06:52:51
保守
- 182二次元好きの匿名さん22/01/13(木) 15:50:32
保守
- 183福丸は俺22/01/13(木) 20:36:29
次の日の昼休み、ノクチルのみんなとお弁当を食べて、おしゃべりをしていました。
「飴?」
「う、うん……! 昨日プロデューサーさんに貰ったんだけど……食べる?」
「うん。ありがと」
「じゃあ私も一つ」
「雛菜も食べる〜」
「あっ……! 待って雛菜ちゃん……! それ……」
「うぁ〜! これニ⬛︎〜! 雛菜これ嫌い〜!」
わたしの静止も虚しく、コーヒーキャンディを口に入れてしまった雛菜ちゃんは、すぐに「ぺっ」と吐き出して手元にあったお茶で口直しをしました。
「ちょっと。それ私の」
「ひ、雛菜ちゃん大丈夫……!?」
「ぴぇ……やっぱり苦いんだ……」 - 184福丸は俺22/01/13(木) 21:06:36
「別に。普通でしょ」
「え……そうなの? 透ちゃんは……?」
「んー」
「わからん」
「そ、そっか……」
「小糸ちゃんは?」
「えっ……」
「食べれば。小糸も」
「ぴゃっ……わ、わたしはいいよ……!」
「さ、さっきお弁当食べてお腹いっぱいだし……!」
「ふふっ そっか」
「円香せんぱ〜い。お茶なくなっちゃった〜」
「…………はぁ」 - 185福丸は俺22/01/13(木) 21:53:04
「でね〜 そしたらプロデューサーが〜」
雛菜ちゃんはプロデューサーさんとのことをいつも楽しそうに話します。
透ちゃんと円香ちゃんはあまり話さないけど……。
……みんなはどう思ってるんだろう。
──わたしはどうなんだろう。
「あ、あの……!」
「何?小糸ちゃん」
「あは〜おっきな声〜」
「え、えっと……みんなはプロデューサーさんのこと、どう思ってる……?」 - 186福丸は俺22/01/13(木) 21:59:52
「急に何?」
「ぴぇ……ご、ごめんね……! なんとなく気になって……!」
「おもしろそう〜! 雛菜はね〜、雛菜のためにいつも一生懸命だな〜って思う!」
「あー 忘れんぼ?」
「……えっと、そういうのじゃ……」
「樋口は?」
「……どうでもいい」
「へ〜?」
「そ、そうじゃなくて……!」
「プロデューサーさんのこと……お、男の人としてどう思う……?」
「…………は?」
「おー 小糸ちゃん 大人だ」
「やは〜円香先輩顔こわい〜」 - 187二次元好きの匿名さん22/01/14(金) 06:28:12
ほ
- 188福丸は俺22/01/14(金) 10:10:11
- 189二次元好きの匿名さん22/01/14(金) 20:22:29
保守わよ
- 190二次元好きの匿名さん22/01/15(土) 05:48:33
ヤハ
- 191二次元好きの匿名さん22/01/15(土) 16:57:33
ぴぇ
- 192福丸は俺22/01/15(土) 21:44:27
「あは〜、雛菜はプロデューサーすき〜〜〜」
「…………!」
そ、そんな気はしてたけど、やっぱりそうなんだ……。
「楽しい仕事いっぱい持ってきてくれるし〜、プロデューサーといるとしあわせ〜! あと顔も良いし!」
「プロデューサーも絶対雛菜のことすきだよね〜?」
「……そんな理由でいいの?」
「え〜? ダメ〜?」
「知らないけど」
「と、透ちゃんは……?」
「えっ? あーうん どうだろ」
「……んー 好きかも。やば 照れるね、めっちゃ」
と、透ちゃんも……!?
- 193福丸は俺22/01/15(土) 21:49:02
このスレ完走したら次スレ立てて小出しで投下するのと、少し時間掛かるけど全部書き上げてからまとめて投下するの
どっちがいいですかね? - 194二次元好きの匿名さん22/01/15(土) 21:51:01
毎日の楽しみなので小出しだと嬉しい
- 195福丸は俺22/01/15(土) 22:24:26
- 196福丸は俺22/01/15(土) 22:25:29
「樋口は?」
「雛菜知ってる〜。 円香先輩はプロデューサーのこときらいなんだよね〜?」
「ぴゃ……!? そうなの……? ど、どうして……」
「そんなこと言ってない」
「へ〜〜〜? 言ったよ〜」
「プロデューサーと二人で話したあとに『あなたのそういう所……本当に嫌い』とか〜。他にも……」
「……雛菜うるさい」
「じゃ、じゃあ…… 円香ちゃんはどう?」
「興味ない」
「そ、そうなんだ……!」
「あの人を恋愛対象として見たことなんてないし、今後見ることもない。そもそも仕事上の付き合いでしかないし?まあ、出会ったばかりと比べると印象は悪くないけどそれでも全然付き合うとかありえない。仕事のことばかりで交際相手のことなんて全然気にしなそうだし、もし子どもとかできたら『家族のため』とかいって益々仕事に没頭して、家事育児全部任せきりになりそう。それで怒った私が子どもを連れて実家に帰ったら慌てて迎えにきて、情けなく泣いて強く私を抱きしめるあの人……はぁ、ほんと頼りない。あんな人と付き合うなんてありえない」
「ぴぇ……」
「樋口……?」
「あ〜、そういう感じか〜」 - 197二次元好きの匿名さん22/01/16(日) 00:02:43
ぴぇ…こわ、円香先輩
- 198福丸は俺22/01/16(日) 10:28:28
「それで? 何でそんなことを?」
「じ、実は……この前、妹に『プロデューサーさんのこと好きなの?』って聞かれたんだけど……」
「でもわたし、自分の気持ちがよく分からなくて……」
「やは〜、小糸ちゃん恋愛映画とかも観ないもんね〜?」
「う……うん……」
「それで、みんなの気持ちも聞けば少しは分かるかもって……思ったんだ」
「分かった? なんか」
「う、ううん……まだよく分からない……」
「ふふっ そっか」 - 199福丸は俺22/01/16(日) 10:36:14
- 200二次元好きの匿名さん22/01/16(日) 10:58:21
200ならみんな幸せになる未来がある