- 1二次元好きの匿名さん22/01/02(日) 00:36:09
- 2二次元好きの匿名さん22/01/02(日) 00:39:02
トレーニングが休みの日、いつものようにメッセージアプリでトレーナーを遊びに誘う。いつもならすぐに同行する旨が帰ってくるのだが、今回は違った。先約があるのだという。
かわいいかわいい担当を放っておいてお出かけかーと抗議しようとして、やめた。アタシがコンマ一秒でもつまんねーことするわけにはいかないからな。
それはそれとして、唐突に遺跡探索するとか言い出すアイツがどこに向かうのか気になるのでついていくことにした。
ついてくついてくした先は、なんと大型ショッピングモール。トレセン学園周囲にも商業施設はあるのだが、わざわざこちらに来たらしい。
すると、アイツは大広間の真ん中で立ち止まった。きょろきょろとあたりを見回すと、一人の男が馴れ馴れしくトレーナーの肩を叩く。
……アタシとの距離感でもない。仲の良い同期のトレーナーとの距離感でもない。時々出くわすという地元の友達との距離感でもない。
かつてずっと同じ時を共にしていたような……言葉にすれば、そんな感じだろうか。少なくともあの男はトレーナーにとって特別なヤツなんだろうな、ってことがわかった。
次の日の模擬レース、アタシはやる気が出なかったのでテキトーに走った。15着だった。 - 3二次元好きの匿名さん22/01/02(日) 00:40:12
最近調子が悪いみたいだけれどどうかしたのか、とトレーナーが心配そうに聞いてきた。オメーが原因だよと言うわけにもいかずに、適当に煙に巻いて逃げ出してきた。アタシらしいっちゃらしいが、こういう逃げ方は良くねーよな。まーアタシ逃げ適正ねーし、下手なのはご愛嬌だろ?
あの日の男が誰なのかは、まだ聞けていない。アタシが馬鹿みたいな理由で機嫌を損ねて、最近はお出かけもなかなかしていない。その間にもあの男と会ってるのか…なんて考えるだけで、調子が二段階ぐらい下がりそうだ。
……あー、生まれ変わったら鯖になりてー。 - 4二次元好きの匿名さん22/01/02(日) 00:41:30
「そーいやトレーナー?実はアタシ、この間トレーナーのオフショ見かけちゃったんだけどさあ」
さり気なくこの間の男について探りを入れると、彼はトレーナーの元カレで、この間会ったのはなあなあになっていた関係をすっぱり断ち切るためだったそうだ。その割には随分と楽しそうだったな、という言葉は飲み込んだ。
あれきり会っていない、という情報が手に入ったのはよかったが。 - 5二次元好きの匿名さん22/01/02(日) 00:41:43
期待
- 6二次元好きの匿名さん22/01/02(日) 00:42:46
「……ゴルシ、お前」
「なんだよナカヤマ変な顔して。一週間放置したバナナでも食べたか?」
「ああそうだよ。随分と甘かった。……変なところで鈍いんだな」
「は?」
「アンタのトレーナーへの好意は、世間一般で言う恋じゃないのか」
「……。」
……マジか。天才ゴルシちゃんの頭脳はぽんこつだったのか?
アタシのコレは、恋なんてキレイなものじゃなくて、ずっと子供みたいな独占欲をこじらせただけだと思っていた。
「バレンタインにトレーナーの為だけに遠洋漁業に行く奴なんてアンタくらいだよ」
「そうかあ?」
「二人以上もいてたまるか」 - 7二次元好きの匿名さん22/01/02(日) 00:45:06
久しぶりにトレーナーと出かけた。場所はいつだかのショッピングモール。アクセサリーを取り扱ってる店に寄って、指輪選びをした。おそろっちにしよーぜと手に取った指輪を、トレーナーの左手薬指にはめる。なんの反応もなかったのがムカつくが、お揃いのアクセは変えたからまあいい。
「なぁ、そろそろメシでも…」
振り返った先に、トレーナーは居なかった。心臓が嫌な音を立てて跳ねる。すると、人混みの中からぐいと手を引かれて。
勢いで抱きつくような体勢になった相手は、トレーナーだった。はぐれないようにと強く引っ張った結果らしい。
密着したときに心拍が早いのを気づかれていないか、それだけが気がかりだった。 - 8二次元好きの匿名さん22/01/02(日) 00:48:18
今までなんとなく、今後もトレーナーと縁が続くものだと思っていた。けれど、アイツが身を固めたら隣に並ぶことすら許されなくなるんだろう。女同士、親友という立場には収まれるかもしれないが。情けない話、目の前で見せつけられたらアタシの超繊細なガラスのハートが耐えられる自信がない。残念ながら、トレーナーの恋愛対象は男だと判明してしまっている。
だから。
この想いは、アタシとナカヤマだけで墓場まで持っていくことにする。 - 9二次元好きの匿名さん22/01/02(日) 00:49:22
満員電車の中、ドア付近に立っていたアタシとトレーナーは隅っこで押しつぶされていた。何だこの密、世界線が違ったらソーシャルディスタンス警察が湧くぞ。
「トレーナー大丈夫か?ペーパートレーナーになりそうだったら言えよ?」
「う、うん……大丈夫……」
いわゆる壁ドン体勢になっているのだが、お互いの顔が近い。息すらかすかにかかる距離だ。
……なあ、トレーナー。なんで顔赤くなってるんだよ。なんで目を合わせようとしないんだ。
心配という皮を被って、トレーナーの顎を指でくい、と持ち上げる。…熱かった。
熱だよな。熱、なんだよな? - 10二次元好きの匿名さん22/01/02(日) 00:58:54
いつか訪れた、ショッピングモール内のアクセサリーショップ。
そこでトレーナーは銀色の指輪を見繕って、アタシと自分の左手薬指にはめた。
「私達、結婚しました!……な、なんてね」
エイプリルフールのジョークだよ、と少しだけ頬を赤らめてアイツはそう言った。
……勘違いさせんな、女たらし。いや今のところアタシぐらいだがな、たらされてるの。これから増えても困るが。 - 11二次元好きの匿名さん22/01/02(日) 01:00:21
「ゴルシはいいお嫁さんになるだろうなあ」
料理中に言われた言葉に、ふと手が止まる。
ここがアイランドキッチンとかじゃなくて良かったと心底思う。ニヤニヤしながら料理してる姿なんて見せられねーからな。 - 12二次元好きの匿名さん22/01/02(日) 01:02:11
早いもので、アタシがトレセンから旅立つ日がやってきた。
桜の木の下、同期の奴らとふざけあって写真を取っていたら。クラスメイトのひとりが、校舎裏へとこそこそ移動しているものだから。数人を引き連れて見物に行った。
……そいつは、自分を担当したトレーナーに告白していた。そして…そのトレーナーは、確かにこくりと頷いていた。
「………」
卒業式のあと、トレーナーの家でプチ祝賀会をした。
…………気持ちは、最後まで伝えなかった。 - 13二次元好きの匿名さん22/01/02(日) 01:05:51
久しぶりにトレセンへ遊びに行ってみたら、アイツが結構デカめなチームの担当トレーナーになっている姿を見つけた。
アイツの出世に喜ぶべきなのに、自分以外に笑顔を見せていることにもやもやして。
……結局、その日はトレーナーに会わずに帰った。 - 14二次元好きの匿名さん22/01/02(日) 01:12:55
トレーナーから、時々体調を心配するようなメッセージが届くようになった。もう担当でもないウマ娘のことまでこんなに気にかけるとは、大御所チームのトレーナーは暇なのかただのお人好しなのか。
結局、画面上のやり取りをしているうちに、無性にあの顔が見たくなって。直接会いに行くことにした。
場所は懐かしいトレーナーの部屋。卒業前は毎日のようにアタシが居た場所。
「ん?ほとんど変わってねーな」
「そりゃあ変えてないもの。今まで変わってたのはゴルシが遊びに来て色んなもの置いて行っていたからだよ」
「ふーん…」
じゃあ、アタシ以外はこの部屋に入ってないってことか? - 15二次元好きの匿名さん22/01/02(日) 01:17:51
メモ帳に記されていて、なおかつちゃんと完結しているのはここまでです
深夜にお付き合い頂きありがとうございました - 16二次元好きの匿名さん22/01/02(日) 01:25:10
続き期待してるぜ
- 17二次元好きの匿名さん22/01/02(日) 01:27:17
ちまちま書き進めているのでスレが落ちるまでに出せればな……とは思います
- 18二次元好きの匿名さん22/01/02(日) 01:36:24
期待してやす!
- 19二次元好きの匿名さん22/01/02(日) 01:39:10
とりあえず書きかけのぶんは仕上げられました
これで本当にストック切れです。皆様も良い初夢を〜
アタシの腕に抱きつくトレーナー。転がった洋酒の瓶。数時間前まで思い出話をしながら桃鉄99年耐久をしていたはずなのに、どうしてこうなった。
「…ごーるどしっぷー」
「はいはい、なんだ」
「……………すきだよ。お酒の力を貸してもらわないと、こんなこと言えないけれど。……わたしは、臆病だから……」
「……………」
どこが臆病なんだ、と思った。酒の力を借りていたって、それは自分の言葉に変わりない。いくら酒を飲んで酔ったって、アタシはその一言さえ多分言えないから。
「……ラブの方だと勘違いするぞ?」
「勘違い、して、くれるの……?」
喉から変な音が出た。……せっかく墓場まで持っていこうと思ってるのに、墓荒らしするとか。そりゃねーだろ。
いつの間にか気持ちよさそうに眠っているトレーナーの髪を撫でながら、案外諦めなくてもいいのかもなと独りごちた。 - 20二次元好きの匿名さん22/01/02(日) 08:27:59
保守
- 21二次元好きの匿名さん22/01/02(日) 16:31:37
「はー、食った食った……」
今日はトレーナーが担当しているチームの一人がG1を勝ったので、その祝賀会が行われていた。アタシもあの日以降時々トレセンに行って、チームメンバーに構っていたりトレーニングの補助をしたりしていたから、OGとして呼ばれた。
今はその後輩たちとロシアンたこ焼きをしていたら、正解を引き当て続けて食べすぎたのでこうして外の空気にあたっている。
「……なんだ、オメーも来たのか」
「背中に目でもついてるの?」
トレーナーはアタシの隣のベンチに腰掛けて、何かを話そうと口を開く。
「あのさ___」
同時に、トレーナーのスマートフォンがめちゃくちゃ爽やかな音楽を奏で始めた。画面に映る名前はトレーナーの幼馴染みで、確か地方トレセンのトレーナーをやっている女性だ。
ごめんと一言誤って、トレーナーは通話を始めた。
相手はかなり興奮しているようで、スピーカーにしているわけでもないのにアタシにまで声が聞こえる。
『いきなりごめんねっ、どうしても口頭で伝えたくって…!
あたし、今度結婚するの!
___相手?ごめんごめん、嬉しすぎて言うの忘れちゃった。あのね…この6年間、ずっと担当してきたウマ娘ちゃんなの。
……あんたになら、変に言われることもなさそうだから、胸張って堂々と言えると思ってさ』
その後も興奮した様子の相手にアタシ共々祝福の言葉をかけると、画面の向こうからは嬉しそうな声色でありがとう、と返ってきた。
それから軽く世間話をして、明日は色々手続きがあるから、ということで通話を終えた。
「結婚かぁ……ねえ、ゴールドシップはそういうのって考えてる?」
「アタシか?んー……考えてなくもなくもなくもないな」
「……つまり、考えてるってことだね」
あからさまにトレーナーの声のトーンが落ちる。わかり易すぎて調子狂うな。
「まー中々このゴルシ様のお眼鏡に叶う人材は現れないからな……今だとトレーナーくらいしか___」
みぎゅ、と奇妙な声が隣から聞こえた。 - 22二次元好きの匿名さん22/01/03(月) 01:02:51
「ねえゴールドシップ。今日はチームの皆+OGで無人島で徹底トレーニングって計画を立てていたはずだよね」
「そだなー」
「なんで私達しかこの場にいないの?」
「その答えはアマゾンの奥地…じゃなくてスマホを見てみればわかるぜ」
チームメンバーが全員加入している連絡用のグループには、次々と「急用ができたので遅れます」だの「電車に乗り遅れてしまったので遅れます」だの送られてきていた。
そしてアタシ個人のチャットでは「頑張ってください」だの「応援しています」だの、アタシとトレーナーの進展を望む声が多数送られてきていた。マジで誰にも話してないのだが、いつの間にかチーム内で共通認識になっていた。
「遅れてくるって言ったって……次の定期船は6時間後でしょう?」
「まーまー良いじゃねえか。たまにはのんびり過ごせっていうミスターシラオキのお告げかもしれないぜ?」
「それってマチカネフクキタルの言ってる、あの……?
……でも、そうだね。念の為危ないところがないか改めて確認しに行こうか」
島をぐるりと回っていると、結構デカめな森に入ることになった。木々が日光をかなり遮って、真夏の時期にしてはかなり涼しく感じる。
「なんだか、こうしてると懐かしいね。貴方と出会った時も、いきなりこんな感じの島に連れてこられたっけ」
「そうだな……トレーナーがあの日行方を眩ませた三億円を発見して追われる身となったのも今では懐かしいぜ」
「存在しない記憶であの事件の犯人にされてる…!?」
その後も懐かしい思い出を語りながら森の中を進むと、開けた砂浜にたどり着いた。そこは、アタシとトレーナーの全てが始まった海岸によく似ていて。次の定期船まであと1時間……ポケットの中のスマホには大量の応援メッセージが届いている。気持ちを伝えるなら、きっと今だ。
「トレーナー」
「なあに?」
3200メートルを走ったわけでもないのに、心臓が煩いほどに鳴っている。
「………アタシさあ、鍋のシメを投入するときにくたくたになってるモヤシとトレーナー、どっちが好きかって聞かれたらトレーナーなんだよ」
「……えっ?う、うん。ありがとう?」
「だから、さ」 - 23二次元好きの匿名さん22/01/03(月) 02:26:17
「歩きに行こうぜ、エンジェルロード」
「それって……」
エンジェルロード、別名天使の散歩道。香川県にある、潮が引いたときに現れる干潟のことだ。
この道を大切な人と手を繋いで渡り、願い事をすると、天使が舞い降りてきて願い事を叶えてくれるらしい。が、重要なのは別にそこじゃない。
「恋人達の聖地、だよね」
「ああ。でも歩くだけじゃつまんねーな……タイムアタックでもしようぜ」
「絶対ゴールドシップが勝つでしょう……」
「まあ渡りきったところで別に叶えてほしい願い事はねーけど」
「そう?私はあるよ」
そこでトレーナーは言葉を切って、アタシの手を握ってきた。反射的にそちらを向くと、耳まで真っ赤にしたトレーナーと目があった。
「大好きな人が、ずっと幸せでありますように、って」
「……へー。本当にそれでいいのか?」
「えっ?」
「神頼みじゃなくて、オマエ自身が頑張らなくていいのか?」
「……!」
「アタシだったら、……好きなヤツのこと、自分の力で幸せにしてやりてえって思うけどな。そんで一つ、聞きたいことがあるんだけど」
深呼吸をしながら、数回瞬きを繰り返す。もう話はそらさない。四方八方にヨレまくっていた長い長い航海も、これで終わりだ。
「アタシとの日々……他のどんなヤツと過ごした時よりも、クセになっただろ?」
「……うん。他の何よりも楽しくて、面白くて……幸せだったよ」
「これからもっと幸せにする予定だからな」
「わぁ……私の愛バがすてき………」
沈む夕日の中、定期船が到着する合図の汽笛が鳴り響く。
二人ともジャージ姿で、髪にはあちこち葉っぱやら砂やらついていて。ムードの欠片もなかった。
トレーナーを抱き寄せてそっと耳元で囁いてから、半開きの唇を自分のソレで塞ぐ。
_____アンタと過ごすの、すげー面白かったぜ。 - 24二次元好きの匿名さん22/01/03(月) 02:30:18
- 25二次元好きの匿名さん22/01/03(月) 02:31:56
- 26二次元好きの匿名さん22/01/03(月) 02:39:07
またこんな感じのスレタイと写真でぼちぼち深夜に現れるのでよろしくおねがいします
今度は供養だけじゃなくて最初からちゃんとしたss載せたいっすね……(願望)