- 1二次元好きの匿名さん22/01/02(日) 13:11:29
『では次はトウカイテイオーさんのインタビューになります!!』
「おっ!トウカイテイオーじゃん!!お前の幼馴染の!!いやーほんとに可愛いなー!」
「あぁ、そうだね」
ニュースキャスターの明るい声と共に映し出されたテイオーのインタビューをぼんやり眺める
そう、俺はいわゆるテイオーの幼馴染というやつだ
親同士が仲がいいから
そんな有り触れた理由で顔を合わせた俺とテイオーは割とすんなり仲良くなった
初めの頃は今とはかけ離れた素直さと自分を兄のように慕ってくれる無邪気さに絆され自分も彼女のことを妹のように可愛がっていた
そう……そのままなら、兄と妹のような関係なら良かったのに
「ねぇ!大きくなったらボクが結婚してあげてもいいよ!特別!」
いつも通りの無垢な笑顔で言われた、彼女にとってはなんでもない一言…でもそれを俺の中で「可愛い妹の冗談」で済ませるにはその時のテイオーの笑顔が眩しすぎて
俺はうっかりあの時恋に落ちた
そこからはかなり大変だった
いつも通りの平常心を保とうとしても、彼女の何気ない仕草にドキリとして
それを隠すのに精一杯だった
それなのに自分の気持ちは反比例してどんどん増すばかりで
ついにはテイオーが別の男と喋ってるだけでわかりやすく不貞腐れるなんて事態だ
オマケに「なになに?ボクが他の子と喋ってるの見て嫉妬しちゃった?安心してよ〜ボクの大事な幼馴染は唯一無二、キミだけだからさ!」
とからかわれる始末、二つも下のあいつに手玉にとられてる気がしてならない… こっちの気も知らないであいつは……
まぁそんな拗らせた初恋もおそらくもうすぐ終わるんだろうな
「こちら!ボク専属のトレーナーだよ!!すごーく頼りになるんだ!!!無敵のテイオー伝説に欠かせない人!」 - 2二次元好きの匿名さん22/01/02(日) 13:12:07
テレビ電話で紹介されたテイオーのトレーナー
いかにもイケメンって感じのその人と話すあいつはすごく、すごく楽しそうで
あぁきっとあいつはこの人のことが好きなんだなって分かった
前に年上の人がタイプって言ってたしあいつとトレーナーさんは固い絆で結ばれてるんだろう…俺が入る余地も無いほどに
でも、分かっていたことだ
俺みたいな平々凡々が今やレースで大活躍のテイオーと付き合うなんていくら幼馴染であったとしても到底無理な話
失恋は正直に言う辛いけど……人生そんなもんだろう、どっかの誰かが言ってたはず
「おい、なんかお前のスマホなってるけど」
「ん?あ、ほんとだ」
長い長い物思いから友人の言葉で一気に現実に引き戻される
画面を見てみれば「トウカイテイオー」の8文字
タイミングの悪さにも程があると思う
「えっ!?トウカイテイオーじゃん!!まじ!??スゲー!!俺も話させて!!!」
「後でな、とりあえず1回外出てくる」
「おう!!ちゃんと電話代わってくれよな!!」
「テイオーがいいって言ったらな」
軽く手を振る友人にこちらも振り返した後
さっきまでの雑念を振り切るために軽く頭を振って外に出る
1度大きく息を吸って、吐き出して
意を決して通話ボタンを横に滑らせた - 3二次元好きの匿名さん22/01/02(日) 13:12:18
しっとりテイオー 来たな
- 4二次元好きの匿名さん22/01/02(日) 13:12:51
「えー!?テイオーちゃん好きな人いるの??誰!誰!??」
「ちょ!マヤノうるさい!!!外に漏れるじゃん!!」
「で!誰なの?誰なの!?」
「ボクの話聞いてる!?」
グイグイ身を乗り出して聞いてくるマヤノにボクは1分前の自分を蹴り飛ばしたくて仕方が無くなった、なんで口すべらせちゃったんだよー!!
でも、過ぎちゃったことを後悔してもどうしようもないし…
「ねえー!!誰なの?マヤノの知ってる人?あっ!!それとも幼馴染とか?確か前に言ってたよね?」
「流石マヤノ…ほんとに勘がいいなぁ」
どうせなら恋バナを楽しむのもありだということにしちゃおう
『幼馴染』というワードに肯定すればマヤノの目がさっきの2倍は輝き出して矢継ぎ早に質問しだす
「えっ!?幼馴染なのテイオーの好きな人!すごい漫画みたい!!どんな人かどんな人?優しい?かっこいい?」
「んー、優しいとは思うよ?小さい頃からボクと一緒に遊んでくれるし勉強も見てくれてるんだ!トレセンにきても分からない問題はスクショして質問したりしてる。顔は……かっこいいんじゃないかなぁ?ボクはかっこいいと思う」
「へー!へー!それじゃそれじゃどうして好きになったの!?」
「えっ…なんか恥ずかしいなぁ。誰にも言わない?」
「言わない!言わないならマヤにだけ教えて?」
小首を傾げて上目遣いのマヤノに早々に白旗が上がる、それはずるい
「えー……初めて会った時に」
「えっ初対面で恋したの!?」
「うー!そうだよ!!初めて会った時、すごーく優しくしてくれたの!!公園で走ってたらコケたボクをやさしく手当してくれて『もう大丈夫だよ』って笑われたら誰でも恋しちゃうじゃんしょうがないじゃん!!」
半分ヤケになって叫んでマヤノを見れば今までにないくらいキラキラした笑顔でボクの目を見返している
「すごい!すごい!!!ほんとに少女漫画みたい!!!マヤ感動した!!!」
「やめて!なんかすっごく恥ずかしい!!その笑顔でぱちぱち手を叩くのやめて!!」
お願いしても拍手をやめないマヤノをちょっと睨みつけながら恥ずかしさでムズムズ気持ちを吐き出す為にため息をつく - 5二次元好きの匿名さん22/01/02(日) 13:13:22
「はぁ〜…どう?これでまんぞくした?」
もう限界…を大袈裟にアピールするために眉間に皺を寄せてはぁ〜ってため息ついてみるけど…マヤノはさっきよりウキウキしてる
なんか…背筋がゾクゾクするんだけど……
「ねぇ!テイオーはその子に告白しないの?」
「うぇ!?こっ告白!??」
相変わらずのぶっ飛び発言に思わず声が裏返るし嫌な汗がダラダラ出てくる…けどマヤノはちっとも止まらない
「そう!告白!!好きならやっぱりするべきだと思う!それにマヤ達はずっと寮暮らしになるでしょ?ならちゃんと『好きです!』って思いは伝えなきゃだよテイオー!!」
「ま!まってまって展開が早すぎるよ!!!それに……あいつはボクのこと大好きだからそんな心配ないし!!!絶対両思いだもん!」
「ふーん?根拠はあるの?」
「あるもん!だってあいつボクがほかの男子と喋ったら明らかにむすーっとした顔するんだよ?それにボクが『キミの幼馴染はボクだけだよ〜』って言ってもちょっとだけふてくされたままなんだ!これはあれだよ!!『唯一の幼馴染っていう不動のポジションは悪くないけど本当は男として見て欲しい!!』ってやつでしょ?ボク詳しいもん!!だからボクとあいつは両思いだし!!」
そう、だってあんなにわかりやすいんだ!ボクのこの恋心は一方通行じゃない!!
ちょっと自慢げにマヤノにいえば…予想した反応と違ってじとーっとボクを見つめてる
「テイオー…それってさ『甘え』じゃない?」
いつもと違ってちょっと真面目なマヤノの調子にボクは思わず背筋が伸びる
「あ、甘えじゃない!それによく考えてみてよ?だってボクテイオーだよ?みんなの人気者、最強ウマ娘『トウカイテイオー』!ボクに恋しといてほかの女にうつつを抜かすなんてありえないし!!」
ちょっと焦って大声で言い返すけどマヤノは相変わらず呆れた顔だ
「マヤノはね、逆だと思うよ」
「逆?」
はたしてなにが逆なのか
じっとマヤノを見つめればマヤノはゆっくり口を開いた - 6二次元好きの匿名さん22/01/02(日) 13:14:30
「テイオー、『高嶺の花』って知ってる?」
「ん?知ってるよbacknumberとかの歌にもなってるし」
「マヤノね、テイオーの幼馴染にとってテイオーの存在は『高嶺の花』なんじゃないかなって思うの」
「え?なんで?だってずっと一緒だったんだよ?高いどころかいつも隣りにいたのに?」
「ううんと…別に幼馴染君を悪く言うつもりはマヤにはないよ?それにテイオーがこんなに大好きだってことは間違いなくいい人なんだし……ただテイオーがちょっと普通とは正反対なんだよ、テレビにも引っ張りだこの超人気ウマ娘なんて学校1番の人気者の女のコよりずっと、ずーっと『高嶺の花』じゃない?」
『高嶺の花』
なんだかその言葉にムカムカする
だって…だって
あいつのそばにいたのはボクなのに
ボクはずっとずっとずっとあいつのことが好きなのに、あいつもボクのことが好きなのに
勝手に自己完結されてるかもしれないなんて…そんなのあんまりじゃんか
「……いやだ」
「ん?どうしたの?」
「いやだ!『高嶺の花』なんてぜーったいにいやだ!!子供の頃から一緒だったのに勝手にボクのことを『手の届かない女の子』にされるなんてぜーーったいにいやだ!大体結婚の約束だってしたもん!!『将来結婚して!』って言ってら『テイオーの気持ちが変わらなかったらね』って答えてくれたし!!ボクはこの気持ち変えるつもりもないし!!」
胸に溢れた気持ちをそのまま口に出す
1度出てしまえばびっくりするくらいすんなりとあいつへの思いが出てくる
「テイオー、子供の頃の結婚の約束は基本的に無効だよ」
「しらない!!!」 - 7二次元好きの匿名さん22/01/02(日) 13:15:43
>>1だけで破壊された脳が再生してきた
- 8二次元好きの匿名さん22/01/02(日) 13:16:09
ちょっと辛辣なマヤノをギリっと睨みつけるけど…マヤノは心なしか楽しそうだ
ニンマリ弧を描いた口がゆっくり開く
「なるほどなるほど、それにしてもテイオーは幼馴染君のことが大好きなんだね?」
「そうだよ!!」
「付き合いたいくらい?」
「結婚したいくらい!」
「おー思い切った!!」
パチパチパチ、本日2度目の拍手を送るマヤノにブスっとした顔を向ければマヤノはニコニコ顔でボクのスマホを持ってくる
「それじゃテイオー、この勢いのままいってみようよ!」
「……なにをさ」
「愛の告白!!」
「うえっ!??こ、ここ告白!?今!?」
「今!なう!!」
さぁさぁどうぞ!とでも言うかのように耳をピコピコ動かしてボクの目の前にスマホを差し出すマヤノの顔は今日1番……いや、今まで見た中で1番輝いてる、正直憎らしい
「さっさすがに今はちょっとあれなんじゃない!?さすがに!!!」
「あれってなに?」
「あれはあれ!タイミングとか心の準備とか色々!!!」
「んー、でもいい感じに吹っ切れてる今がマヤノ的には1番のベストタイミングだと思うけどなぁ…告白って案外勢いって言うでしょ?」
「聞いたことはある…けどさぁ」
「それにテイオー、今を逃したら絶対この先上手く告白できないでしょ?」
「うっ…」
マヤノがあまりに的確に弱みを突いてくるから開きかけた口がまた閉じられる
「だって初めて会った時から大好きなのに今の今までずーっと好きだって伝えてこなかったんでしょ?ならもう勢いでもなんでも全部ぶっちゃけちゃうべきだよ!多分幼馴染君側からは何にもしてこないだろうし…」
「あのヘタレめ……」
「どっちもどっちだよ、それに結婚したいんでしょ?ならほら!まずは付き合うところから!!」 - 9二次元好きの匿名さん22/01/02(日) 13:16:48
ぐっとスマホを顔に押し付けられて渋々それを手に取る
まぁ………うん、多分こうでもされなきゃきっとボクは告白できないだろうし………もう流れにのるしかないか、あとでマヤノはこちょこちょだけど
「……なんて言えばいいかなぁ」
「そこはテイオーの頑張りどころだよ!!ファイトーオー!!」
「うあうぁぁぁぁ」
喉の奥から変な声がでるけれど
それでも………それでも
覚悟を決めて
ボクは通話ボタンを押した - 10二次元好きの匿名さん22/01/02(日) 13:18:28
- 11二次元好きの匿名さん22/01/02(日) 13:19:30
お見事です
- 12二次元好きの匿名さん22/01/02(日) 13:20:21
- 13二次元好きの匿名さん22/01/02(日) 13:21:55
告白シーンはなんか思いつかなくて書けませんでした…
トレーナー以外の人と恋するウマ娘概念ありだと思うんです、流行れ - 14二次元好きの匿名さん22/01/02(日) 13:21:58
- 15二次元好きの匿名さん22/01/02(日) 13:25:15
マヤがめちゃくちゃ有能だな
さすマヤ - 16二次元好きの匿名さん22/01/02(日) 14:03:38
- 17二次元好きの匿名さん22/01/02(日) 19:27:19
あげついでに
今はスペの話書いてるんですけどやっぱり幼馴染設定は最高ですね