- 1二次元好きの匿名さん23/11/12(日) 17:48:20
――えへへへ。
私、ニシノフラワーは最近、御機嫌です。
その、理由は。
右手で、胸元に吊るされた小さな金属を、そっと触ります。
――えへへへ。
それだけで、笑みが零れてしまいます。
トレーナーさんの部屋の、合鍵。
先日、トレーナーさんに渡されたものです。
毎日、お夕飯を作りに、スーパーの袋を持って、トレーナーさんの部屋の前で待っていたら、「身体が冷えるから」と言ってくれたのです。
「家の中に入っていて良いよ」って。
――えへへへ。
ちょっと冷たい、金属の感触が心地よいです。
これがあるだけで、トレーナーさんが隣にいる気がして。
トレーナーさんとの、絆が確かにある気がして。
きっと、これが「恋」なんですね。
トレーナーさんのことを、寝ても覚めても、ずっと考えていて。
夢に出てくるだけで、とても幸せな気分になって。
会えるだけで、胸が一杯になって。
触れられたら、天にも昇るような心地になって。
トレーナーさんを想うだけで、胸がドキドキして嬉しくて。 - 2二次元好きの匿名さん23/11/12(日) 17:48:55
そんな時でした。
舞い上がってしまっていたのでしょう。
周囲への注意が、おろそかになっていた原因は。
「フラワーちゃん、危ない!」
「えっ!? ……きゃあ!」
向こうから走ってきた誰かと、衝突してしまったのです。
「いたたた……」
「大丈夫、フラワーちゃん」
クラスの方たちが、手を差し伸べて助けてくれます。
ぶつかった先輩は「ごめーん」と言いながら急いだ様子で走り去っていきました。
でも。
私は、それどころではなかったのです。
「あっ……」
おへそに伝わる、冷えた感触。
――まさか。
夢中でお腹をまさぐり、その正体を掴み出します。 - 3二次元好きの匿名さん23/11/12(日) 17:49:00
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- 4二次元好きの匿名さん23/11/12(日) 17:49:54
……折れた、鍵。
根元から真っ二つに折れた、トレーナーさんの部屋の合鍵。
――どうしよう。
――トレーナーさんに、怒られる。
力が抜けて、廊下の壁にもたれかかります。
氷のような、足元のリノリウム。
背中から、無機質なコンクリートが私を責めています。
「どうしたの! フラワーちゃん! 顔が真っ青だよ!?」
クラスメイトが、なにか声を掛けてくれていますが、なにを言っているのかわかりません。
身体中を、凍ったナメクジが這いずり回っているような不快感。
――トレーナーさんに、捨てられるかも。
そのまま、意識を手放しました。
――今なら、幸せな記憶のまま、死ぬことができるのかもしれない。
そんなことを、思いながら。 - 5二次元好きの匿名さん23/11/12(日) 17:50:23
「大丈夫、フラワー」
保健室のベッドで目覚めた時。
隣で、心配そうに顔を顰めているトレーナーさんがいました。
白いカーテンで仕切られた空間にいるのは、私とトレーナーさんだけ。
「ぐすっ、ひぐっ。ごめんなさい……」
――ああ、これから、トレーナーさんに捨てられるんだ。
そう思うと、自然と涙が出てきてしまいます。
それでも、きちんと言わないと。
「トレーナーさんから預かった鍵、壊してしまいました」
気を失っても、右手で固く握りしめていた鍵の残骸を、トレーナーさんに見せます。
――ごめんなさい。
――なんでもするので、捨てないでください。
ところが。
「そんなことより、身体は大丈夫?」
私と視線を合わせて。
私がちょっと動けば、キスできちゃいそうな距離で。
私の頭に、やさしく手を載せて。
静かに、問いかけてくれるトレーナーさん。 - 6二次元好きの匿名さん23/11/12(日) 17:50:59
「はい。大丈夫です。でもごめんなさい……。大事な鍵を壊してしまって。――なんでもしますので、捨てないでください……」
そう言うと。
トレーナーさんはちょっと困った顔をして。
ポンポン、と。
頭を撫でてくれました。
「そんなこと、気にしなくて良いんだよ。でも、そうだな――」
手渡された鍵の残骸を、じっと見るトレーナーさん。
根元から、横に綺麗に折れているそれ。
と……。
トレーナーさんは、おもむろにポケットから自分の鍵を取り出すと。
「はい、フラワー。これ、ちょっと縦に折って」
そんなことを言い出したのです。
「えっ!? でも、そんなことをしたら、トレーナーさんがおうちに入れなくなっちゃいますよ?」
「いいから」
「――はい」 - 7二次元好きの匿名さん23/11/12(日) 17:51:41
トレーナーさんに気圧されるままに。
渡された鍵を、縦に2つに割ります。
あいだにあるくぼみから、真っ直ぐに2つになる鍵を、トレーナーさんは手に取ると。
「はい。フラワー。今度は折らないでね」
片方を、私の手のひらの上に、載せてくれたのです。
……理解が、追いつきません。
私は、トレーナーさんの鍵を壊した罪人なのに。
「あの」
「フラワーは、鍵持っていないと、また部屋の前でスーパーの袋持って待っちゃうでしょ。それに、時々は俺が早く帰ることもあるし。だから――」
ちょん、ちょん、と。
私の手のひらの上の、半分になった鍵をつつくトレーナーさん。
「鍵を、はんぶんこ。俺もフラワーも、2人が一緒にいないと鍵を開けられないから、ずっと隣にいてね」
笑顔で、私に笑いかけてくれました。 - 8二次元好きの匿名さん23/11/12(日) 17:52:06
「……良いんですか?」
「なにが?」
「私、まだトレーナーさんの隣にいて、良いんですか?」
すると、穏やかに微笑んで。
トレーナーさんは、私を抱き締めてくれました。
「フラワーがいないと、寂しいな。ずっと隣にいて欲しい」
トレーナーさんの温もりと。
大人の男の人らしい、頼りになる匂いと。
素敵な、笑顔と。
やさしい声色に、包まれて。
嬉しくて、私も。
ぎゅうっ、と。
トレーナーさんを抱き返しました。
――えへへへ。
――トレーナーさん、愛しています。だーい好きです♪
――ずっと、私を離さないでくださいね。約束ですよ♪ - 9二次元好きの匿名さん23/11/12(日) 17:53:01
これで終わりです。
ありがとうございました。
至らない点もあると思いますが、よろしくお願いいたします。 - 10二次元好きの匿名さん23/11/12(日) 17:53:34
セイちゃんちょっと横になりますね
- 11二次元好きの匿名さん23/11/12(日) 17:54:32
末永くイチャつけ
それはそれとして鍵はお店に直してもらいなさい - 12二次元好きの匿名さん23/11/12(日) 17:57:07
鍵を縦に裂いたニシノフラワーさん、この力はやっぱりウマ娘なんやなって……
- 13二次元好きの匿名さん23/11/12(日) 23:42:06
- 14二次元好きの匿名さん23/11/13(月) 00:19:34
ちょっぴり重いフラワーちゃんいいね…
いや、これトレーナーも重いな? - 15二次元好きの匿名さん23/11/13(月) 00:32:29
- 16二次元好きの匿名さん23/11/13(月) 08:00:39
ほしゅ
- 17二次元好きの匿名さん23/11/13(月) 11:29:27
- 18二次元好きの匿名さん23/11/13(月) 12:21:37
- 19二次元好きの匿名さん23/11/13(月) 12:24:11
良いものだった…
- 20二次元好きの匿名さん23/11/13(月) 20:09:15
感想ありがとうございます。
早く縦になってトレーナーさんのところへ行ってください。
感想ありがとうございます。
早く鍵を直さないと、野宿になってしまいますからね。フラワーはそれも悪くないって言いそうですけど。
感想ありがとうございます。
もちろん、力こそパワーなウマ娘です。
感想ありがとうございます。
ウマ娘同士の絡みも良いですけど、やっぱりトレーナーと絡んで欲しいですよね。
感想ありがとうございます。
うちは重いのしか扱っていないものでして……。
感想ありがとうございます。
次回が何時になるかわかりませんが、がんばります。
感想ありがとうございます。
ルールなんてないと思うので、呼びたいように呼べばいいと思うのです。
感想ありがとうございます。
今後とも精進しますね。