黄金千界樹を背負い挑む聖杯戦争 第六局

  • 1二次元好きの匿名さん23/11/18(土) 19:43:28

    あの女、容赦無く殺しに来やがった
    予めセイバーの用意した蘇生のルーンが無ければ死んでいた
    アイツはこの程度は織り込み済み何だろうがな!
    だが、終わるわけにはいかない。俺には一族の未来が掛かっている!半ば勝手に背負い込んだ未来だが、それでも皆の願いを背負った事には変わらない

    悪いが、勝たせてもらうぞ……!

  • 2二次元好きの匿名さん23/11/18(土) 19:44:26

    仕事が忙しくて中々時間が取れなかったけど、何とか復活!
    落とさないように気をつけないと……

  • 3二次元好きの匿名さん23/11/18(土) 19:45:01

    立ておつ!!!

  • 4二次元好きの匿名さん23/11/18(土) 19:45:27

    おかえり〜〜!!

  • 5スレ主23/11/18(土) 19:46:28

    前スレ達

    【悲報】どうして……|あにまん掲示板俺は幸運にも最優のセイバーを引き当てた。さらに幸運な事にとても強力なサーヴァントだ。けれど聖杯戦争で油断は出来ない。まずは他のサーヴァントと戦って各陣営の戦力を測った。真名迄は把握し切れていないけど戦…bbs.animanch.com
    千年樹を継いで挑む聖杯戦争代2局|あにまん掲示板俺はユグドミレニア再興を賭けて聖杯戦争に挑んだが、特に悪いことをして……して……ないのにいきなりアーチャー、ランサー、ライダー、キャスター、バーサーカーの5陣営に同盟を組まれてしまい、一気に四面楚歌に…bbs.animanch.com
    黄金千界樹の未来を背負い挑む聖杯戦争 大3局|あにまん掲示板ユグドミレニア復興を目指して10年の月日を費やし、この聖杯戦争に挑むセイバーのマスターだ。戦いは過酷で、アサシンを墜としたばかりに他の陣営全てからロックオンされてしまう。何度も死にかけるが、キャスター…bbs.animanch.com
    黄金千界樹の未来を背負い挑む聖杯戦争 第3.5局|あにまん掲示板ユグドミレニア復興を目指して10年の月日を費やし、この聖杯戦争に挑むセイバーのマスターだ戦いの中、突如各陣営を襲撃した正体不明の魔獣共俺達は辛くもそれを退き、その正体と黒幕の調査を行うこととなるーーーbbs.animanch.com
    黄金千界樹の未来を背負い挑む聖杯戦争第4局|あにまん掲示板キャスターのマスターが仕掛けたイレギュラー。屍神ゴルゴーンをアーチャー、ライダー陣営と手を結び何とか退けたセイバーのマスターだしかし、聖杯戦争なら訪れた脅威を排除したところで俺達なら置かれた状況は変わ…bbs.animanch.com
    黄金千界樹の未来を背負い挑む聖杯戦争第4.5局|あにまん掲示板あ、ありのまま起こったことを話すぜ突然スマホが異常を吐くわ仕事で変なところに飛ばされるわで更新が途絶えてしまいました突然の事で俺も何がなんだかわからなかったが申し訳ない漸く更新出来るようになった様なの…bbs.animanch.com
    黄金千界樹の未来を背負い挑む聖杯戦争第5局|あにまん掲示板ランサー陣営を斃し、残るはアーチャーとライダー。あの2人は恐らく協力して此方と戦うつもりだろうランサーとの戦いで受けたダメージは回復しきってはいないが、これ以上の猶予を与えてくれるほど向こうも甘くない…bbs.animanch.com
  • 6二次元好きの匿名さん23/11/18(土) 19:46:55

    うわああ待ってました!ありがとう!

  • 7二次元好きの匿名さん23/11/18(土) 19:48:09

    復活確認ヨシ!

  • 8二次元好きの匿名さん23/11/18(土) 19:48:56

    予告はあったけどマジできたか
    おかえりスレ主

  • 9二次元好きの匿名さん23/11/18(土) 19:53:31

    とりあえず10まで

  • 10スレ主23/11/18(土) 19:55:01

    本文はもうちょっと待っててね
    因みにスレ画はスレ主の自前のシグルドです

  • 11二次元好きの匿名さん23/11/18(土) 20:22:38

    wktkwktk

  • 12二次元好きの匿名さん23/11/18(土) 20:25:43

    スレ画が再臨バージョンになってるー!!!!待ってたぞー!!!スレ主ー!!!!!

  • 13千界樹の記録23/11/18(土) 20:32:28

    繰り出されるルーナの拳と蹴撃を凌我は剣と拳、蹴を重ねる様に渡り合う。ルーナが動きを加速かせればそれに合わせるように凌我も加速する
    その動きは骨格にもダメージを受けている様な人間の動きとは思えない程に速く、強靭なものであった
    「何で、アレだけのダメージを受けてまだ動けるのよ……ッ!?」
    人狼への変貌できる時間も残り僅か、ならば此方もせめて何かしら攻撃をしようと最速で駆け出す。マルグリットが駆けるその間も、ルーナと凌我は未だに死の剣戟拳戟を繰り広げていおり、その2人の死角を縫う様に爪を振り上げる
    狙いは首筋。未だ僅かに躊躇いは残るものの、あれ程の出血だ。生物が活動するためには確実に血が足りなくなる筈、流れる血が足りなければ最低限の生命活動さえ叶わなくなるのだから
    お互い魔術師だ。何かしらの仕掛けはあるのだろう。魔術師にとってどうやったかなんて想像するだけ無意味なのだから、それはそう言うものと捉える他はない。しかし、こちらからの攻撃によって、致命的な一撃とはいかなくてもこれ以上血を失えばキレが変わらずともそもそも動く事が出来なるだろう
    振り下ろされた爪は凌我の首筋を掠める。寸前で彼はマルグリットの攻撃を躱すと同時に、回し蹴りでルーナの蹴りを相殺し続く拳を剣で弾く。その技のキレはどう見ても致命傷に近いダメージを受けている人間の動きとは到底思えない
    にも関わらず先輩の動き方は今までとは変わらず、あの傷では少し動くだけでも相当な激痛に苛まれていることには間違いない。例え魔術で痛みを遮断していても明らかにおかしい動きをしている。何せ最初の時よりも寧ろ速いくらいの動きを見せているのだ。最早肉体が砕け散ってもおかしくはないほどの速度に達そうとしている
    「一体どうなってんの!?」
    その明らかな異常な状況にマルグリットは叫ぶ。ルーナも多少なりとも驚きはあるのか、笑顔の中に困惑の色がみえた
    「前のときにはなかった術式よね?一体どこから見つけてきたのかしら!」
    「死徒の一件から古い文献を読み漁ってな!」
    そう言う凌我は剣を振るってルーナへ斬り込み灰錠と火花を何度も散らしていく。人狼と化したマルグリットの瞳は、人間の動体視力を遥かに上回る力を持つ。だからこそその瞳に捉えることができたーーー彼の身体から微かに魔力の線が上に伸びているのを
    糸は身体の複数箇所から宙へ伸びていた

  • 14二次元好きの匿名さん23/11/18(土) 20:36:03

    このレスは削除されています

  • 15スレ主23/11/18(土) 20:36:54

    スパムに慈悲は無い

  • 16二次元好きの匿名さん23/11/18(土) 21:07:59

    帰ってきてた…ありがとう…ありがとう…

  • 17二次元好きの匿名さん23/11/18(土) 21:12:33

    …これあれか、HUNTER × HUNTERのテレプシコーラみたいなことやってんのか、化け物か?

  • 18二次元好きの匿名さん23/11/18(土) 21:53:12

    >>17

    俺は乱装天傀が出てきた

    世代差かな?

  • 19千界樹の記録23/11/18(土) 22:38:35

    後は彼の頭上少し上で消えているが、まるでその後で身体を吊っているように見える。糸そのものが動いているようには見えないが、その魔力の糸を見た後では、彼の動きに違和感を覚えるのも当然だった。成程ーーー
    「あれはーーー」
    「要はマリオネットね」
    ルーナも魔力波形の反射から何となく察し、納得した。あれは魔力の糸で自身を釣り上げ、まるで操り人形のようにして体を動かしている。古い文献を読み漁った、と凌我は言った。つまりあれはかなり古い術式で構成された代物だろう
    確かに、時計塔の中でも黒魔術に連なる呪詛の中に似たようなものがある
    しかし、それらは大抵の場合相手に呪いを掛けて思い通りに操る術であることが多い。だが、これは明らかに自分へと施した魔術だ
    「ハアッ!」
    「シッーーーフゥッ!」
    振るわれる剣は血を吐き出す腕からは想像もつかない程の膂力で振るわれ、手甲と激突し大きな火花を散らせる。この程度の力で揺らぐルーナでは無いが、本来であれば即死している程の肉体損傷を与えたにも関わらず依然変わらぬ戦闘力を発揮されては多少は困ってしまう
    更に反撃で繰り出した蹴りも凄まじい反応で躱されては、本当に一度は死ぬほどの損傷を当たれたのかどうかすらも不安になってくる
    「全く、とんだ魔術もあったものね!」
    自身の意のままに自身の肉体を操る。しかし、このようなものは余りにも効率が悪い筈なのだ。肉体とは本来ならば神経を通して脳からの命令で動かすものだ。それをこれは態々外部から迂回するように魔術式で行動を入力している。明らかに考えて入力をする分、肉体の可動は本来よりも遅くなる
    それを此処まで速いレスポンスで動かす技量もさることながら、術式自体も相当難度の高いものなはずだ。それをこうまで使い熟すのは流石の一言に尽きる
    「こいつは老いた退魔士が戦う術として生み出された術式でな、肉体が砕けようが死ぬまで戦い続けるためのものだからな!」
    「アッハハハハ!流石!!」
    楽しそうに笑うルーナは更に白熱したように拳と蹴りを嵐のように乱打していく。対する凌我も剣だけでなく掌打や蹴撃を駆使して付いて行っている。それを先程以上の速度と精度で渡りあっている。傷を負う前よりも明らかに五分に近い形で戦闘を繰り広げている。肉体が砕けようとも筋が千切れようとも彼の望み通りに強引にでも動き続ける様はまさにマリオネット

  • 20二次元好きの匿名さん23/11/18(土) 22:39:59

    やっぱ化け物だな凌駕くん

  • 21二次元好きの匿名さん23/11/19(日) 00:05:41

    普通に凌我も凄え魔術師じゃないですかーヤダー!

  • 22二次元好きの匿名さん23/11/19(日) 00:42:43

    >>21

    時計塔の1級講師に油断出来んとか言わせてるからなコイツ、しかも携行可能なサイズの魔力蓄積礼装作ったりしてるし確実に天才と言われる領域にいる人だよ、ただ蒼崎橙子とかみたいな規格外には届かない天才って感じ?

  • 23二次元好きの匿名さん23/11/19(日) 08:08:23

    保守

  • 24千界樹の記録23/11/19(日) 12:54:05

    自分自身とはいえ人間を手繰るその様はまるでーーー
    「まるでどこぞの人間使いの様ね!」
    振り下ろされる剣を回し蹴りで蹴り上げる。火花と共に弾かれた剣を握る腕は途中で強制的に勢いを停止させられたように弾かれたまま停止する下手をすれば肩が壊れかねない止め方をしたが、そんな事はお構い無しであるかのように全身を駆動させていく
    「なんて無茶苦茶な!―――っ」
    マルグリットももう一度攻撃しようと試みるが、身体への違和感にハッとする。とうとう憑依可能時間が限界を迎え、憑依した霊が抜け出ていくと同時に憑変していた肉体も元の姿に戻っていく。更に肉体へ大幅な変化をもたらしていた術が解けて、そのフィードバックに肉体への負荷が凄まじく襲いかかる
    「―――くぅっ」
    連続して同じ術式はできないだろう。息も肩でするくらいには疲労も大きいが、それでも戦闘を放棄するつもりはない
    すぐさま治癒の魔術を施して身体への負荷を少しでも和らげていく。そして腰につけてあるポーチを開き、中にしまってあるものを掴む。このポーチは戦闘用に用意したもの
    魔術で中の空間を広げて見た目よりも遥かに大きい容量を持っているのだ
    その中から、彼女の得物であるボウガンを取り出しボルトを番え、術式を起動する
    番えるボルトは3本。それぞれに霊を憑依させて標準をつける。標的は当然先輩ただ一人
    「Tri's=Bolt!」
    放たれた3本のボルトは猟犬の霊を宿し、それぞれが別の場所、角度から凌我へと向かい飛来する。猟犬の霊は一度ロックオンした標的をどこまでもしつこく追尾していく。さらに射撃の初速の運動量が維持される。高速で飛翔する3本のボルト。通常ならば容易く迎撃されるが、今はまた勝手が違う
    「―――チィ!二十番解錠!」
    ボルトを視認した凌我はすぐさま場に仕込んだ術式を起動する
    本来ならば、すぐに剣で叩き落とせるが今はルーナと至近距離で激戦を繰り広げており、さらに言えば今の彼は反射運動が取れる状態ではない。彼は今魔術で身体を操っている状態。即ちマニュアル操作状態である。反射的に身体を動かすことができるような状態でないところを、強引に外部から動かしているのだから当然だろう
    故に仕込んだ術式で迎撃を行う他はなかった

  • 25二次元好きの匿名さん23/11/19(日) 18:51:23

    ハイレベル戦闘だな……

  • 26二次元好きの匿名さん23/11/19(日) 19:08:14

    この世界にもマーリオゥは居るのか

  • 27千界樹の記録23/11/19(日) 21:34:40

    凌我の足元から撃ち出される氷の弾幕。一つ一つが銃弾程度の大きさでそれが一気に300近い数で放射されれば如何に俊敏性の高い猟犬でも避け切る事は不可能。凄まじい密度の面制圧の前にはあっという間に3本のボルトは砕かれてしまう
    「ハッーーーハッーーーくぅっ」
    苦悶の表情と声を漏らすマルグリットもまた、憑依が解けた彼女の体力は既に限界が近く、これ以上の戦闘は難しい。このボルトに霊を憑依させるのだって当然魔力を消費する。如何にコスパのいい降霊術であってもこれ以上の消耗は厳しい
    さらに、例え魔術で憑依の負荷を軽減したとしても、やはり肉体が大きく変貌する程の深度はその反動が大きいのだ
    だが、限界が近いのは凌我も同じ。ただでさえ深刻な身体損傷を受けている状態で、さらに魔術で無理やり動かしているのだ。そんな無理が長く続くはずがない
    残された時間は少ない。此処で決着を付けなければ
    「―――だから、そろそろ決着をつけましょうか?」
    その提案をしたのは一番有利な立場にいるルーナであった。彼女はこのまま戦闘を続行していれば、いずれ無理な駆動でガタが来るのを待っていればいいだけだった。何せ現状、ルーナは単に戦鎚を喪失しただけで、消耗度合いも大した事はなく、傷も殆どない。このまま時間を稼いでいれば残りの2人が勝手に消耗して倒れてくれて一人勝ちの可能性すらも存在しているのだ
    が、そんな勝ちを拾っても何ともつまらない。代行者としても個人としてもそのような勝ち方では主に顔向け出来ないし、何よりーーー
    「それじゃあ、態々戦う意味がないからね」
    言いながら一度距離を取る。同時にルーナの両手の灰錠から火花が散り、両足の甲からは突風が渦巻き出している。それを見た凌我は状況を察して不敵に笑う
    「ああ……そうさせてもらおうか!」
    ルーナの狙いは既に理解している。ここで一気に蹴りをつけてメリットが有るのは寧ろ俺の方である。アイツはこのまま時間をかけていれば勝てるだろうに、それをこうして明確に決着をつけるような真似をするのはかえって自分に不利な状況になるのだから
    両手で剣を握りしめたまま構えを取る
    鏡面の様に磨き上げられた刃から複数本の水流が渦巻き、剣先に集約され巨大な刃を形成していく

  • 28二次元好きの匿名さん23/11/19(日) 23:05:17

    >>18

    俺もそれ浮かんだぞ、同士よ。

  • 29二次元好きの匿名さん23/11/20(月) 07:39:11

    朝保守

  • 30千界樹の記録23/11/20(月) 08:44:32

    「―――いいわね」
    ルーナの灰錠から散る火花が弾け、銀色の聖火が灯る。聖火は手甲に灯る程度の大きさだが、底から感じられる神秘の濃さは凌我が構えている剣に集う水の刃を上回る
    「私だって―――」
    マルグリットもまた矢筒から幻獣の骨から作り上げたボルトを引き抜く。このボルトの神秘もまた強力なものであり、普段扱う霊よりも、より強い力を持つ霊を宿すことができる。以前使用した時はシャチであったが、今回はそれに加えてボルト自体に複数の魔術式を与え、より強力な一撃に仕立てる
    三者三様、最後の決着をつけるべくその力を注ぎ込む
    終わりのときは近い―――そして、それは向こうも同じであった

    『―――何?』
    アーチャーから放たれた「死んでもらう」の言葉に思わず聞き返す。唐突に死を求める提案をされてはこの反応もやむなしだろう
    『む、単刀直入が過ぎたか。つまりだな―――』
    アーチャーからの提案を改めて聞く。その手段は成程、たしかに―――
    『確かにその方法だと私は死ぬかもしれないな』
    『どうする?乗るか?』
    遠くにアーチャーの表情は挑発的で、明らかに此方の反応を伺っており英雄ならば勇んで受けるな?と目が物語っている
    この作戦ならば、たしかにセイバーを倒すことができるかもしれない。しかし、己に掛かるであろう負担が尋常ではない。恐らく下手をすれば本当に消滅する可能性が存在している
    しかし、だからこそ受けて立とうと思った。アーチャーとしてはここで自身とセイバーの共倒れを狙っているのは明白だろう。それを見抜かれていることを見越してこうして挑発的に提案をしているのだ。だからこそ、受けて立とうと思った
    本来の自分ならこのような提案を受けることはない。戦術的に勝てるかわからない手段を取ることもそうだが、何より皇帝という立場が自身に安易な死を許さなかったからだ
    サーヴァントというものは、新しい自分を発見することもあるということらしい
    『……わかった。乗ろう』
    『フッ……そうこなくてはな』
    ライダーが提案に乗る意志を示すと、アーチャーは不敵に笑い跳躍する。積み上げたコンテナの上に登り、弓を構える。ライダーは再び魔力放出による勢いを載せてセイバーに斬りかかる。セイバーは当然のように振り抜かれる剣を容易く受け止める。それには構わずに剣を振り抜いて剣戟を繰り広げていく

  • 31二次元好きの匿名さん23/11/20(月) 10:42:04

    鯖戦もそろそろ終わりかー

  • 32二次元好きの匿名さん23/11/20(月) 11:57:04

    早いかもだけど一応保守っとく

  • 33二次元好きの匿名さん23/11/20(月) 21:31:27

    まもなくクライマックスか

  • 34千界樹の記録23/11/20(月) 23:20:03

    「この攻め―――何か策でも考えたか」
    「さあ、どうだろうね!」
    セイバーの問いかけにライダーは大した意味はないと理解しながらも白を切る。どちらにせよセイバーには此方が何か作戦があって攻めてきていることは見抜かれている。ならばここは強引にでも攻めに出てセイバーを釘付けにすることが肝要だろう。その間に、アーチャーが準備を完遂するだろう
    「何を考えていようとも、全て正面から潰そう」
    「―――できるかな?」
    不敵に笑って見せる。生前であればこんな悪どい顔をする余裕も発想も無かっただろうが
    これもサーヴァントの妙というものか
    「ハアッ!」
    「セェイッ!」
    セイバーの斬撃はやはり重く、鋭い。こうして何度も刃を交えてるからこそ分かる。大英雄シグルド、恐らくセイバークラスとして召喚される英霊の中でも最大級の存在。誰もが認める比類無き大英雄
    その力は想像を超えて余りにも強大であり、よもや同じサーヴァントである筈の我々2騎、否最大で3騎もの英霊達を相手取って生き残る等慮外にも程があった
    正真5騎による同時攻撃ならば仕留めることもできたのだろうが、マスター同士にもそれぞれの思惑があって、3騎による同時攻撃迄が限界で、それでも本来ならば過剰な戦力差だったのだから、やはりシグルドと言う英霊自体が破格の存在なのだろう
    「光よ!!」
    魔力放出による聖光を至近距離で放つ。光はセイバーの身体をジリジリと灼くが、その程度では竜殺しを止めるには些か力不足であった。セイバーの勢いは留まらず、さらなる圧力で此方を潰しにかかる。だが、ライダーも負けじと更に魔力放出を重ねて真っ向から打ち返す。しけし、素の能力で圧倒的な力を発揮するセイバーに対して、ライダーは令呪による後押しがあっても魔力放出を上乗せしなければ力負けするのが現状。側から見れば無謀とも言える攻防だ。一見すると、これまでのライダーらしからぬ無謀な攻めだが、これで良い
    (ーーーこのまま、セイバーを釘付けにする!)

  • 35二次元好きの匿名さん23/11/21(火) 01:33:31

    早いけど保守

  • 36千界樹の記録23/11/21(火) 08:52:57

    ライダーとセイバーが激しく撃ち合う最中、アーチャーは1人積み上げられたコンテナの上に立つ。音を置き去りにする剣戟に空気が引き裂かれ、その度に悲鳴を上げる大気が突風となって吹き荒れる。その風は離れた場所に立つアーチャーの髪を小さく揺らす。この位置取りならば、セイバーに対峙するライダーに対して、対角線上に近いポジションであり、誤射の可能性を限りなく抑え、効果的に援護が出来る十字砲火の位置関係を取れる
    「フゥーーー」
    息を深く吐き出すように深呼吸する。ライダーの援護としては絶好のポジショニング。しかし、例えこのまま狙撃を敢行してもセイバーには大した効果を見込めないだろう。ただでさえ桁違いの膂力と技量を両立する怪物なのに加えて原初のルーンによるコマ割りも効くときたものだ
    「竜殺しとは、とことん怪物だな……」
    静かに呟くアタランテ。彼女の中に朧げに映る過去の記録。かつて、彼女が戦うこととなった聖杯大戦と呼ばれる儀式。そこに自信が「赤」の陣営として参戦した記録があった
    今のアーチャーには朧げにしか想起できないが、その中には視界に映るシグルドとは異なる、また別の竜殺しと対峙した瞬間も存在していた
    その圧倒的な強度、無敵の鎧を纏うもう1人の竜殺し。脳裏に微かに蘇る男は共に戦ったあの韋駄天小僧の攻撃にもビクともせず、己が放った渾身の一矢を持ってしてもその鎧を貫くことで精一杯の有様であった
    今、前にいる男にあの鎧はない。頑強さで言えば数段劣るだろう。だが、あの竜殺しにはない器用さが奴には存在している。厄介さで言えば大して変わらないだろうが、心待ちとしては幾許か楽ではある
    「当たれは斃せるーーーそれだけだがな」
    それだけだが、自身の持つ攻撃手段で倒せると言うだけでも救いだろう
    アーチャーは意識を集中させ、セイバーへと向けていた弓を天へ掲げる
    「この矢、二大神へ捧ぐーーー」
    弓へ二本の矢を番える。一矢は太陽の神、ニノ矢は月女神へと捧げた矢は二柱の神からの加護へと変わる
    アーチャーの提案した作戦ーーーライダーがセイバーを動かないように釘付けにし、その隙を突いてアーチャーの宝具を最大威力で発動させるーーー!

  • 37二次元好きの匿名さん23/11/21(火) 10:42:12

    おー!!!Apocryphaの記憶が若干残ってるのは熱いねえ!!!

  • 38二次元好きの匿名さん23/11/21(火) 11:50:32

    当たれば倒せる()

  • 39二次元好きの匿名さん23/11/21(火) 16:38:35

    >>37

    そう言えばジークフリートとも一回だけ戦ったんだっけ

  • 40二次元好きの匿名さん23/11/21(火) 21:00:33

    確かにジークフリートと違って当たれば倒せるけどルーン魔術の防壁でダメージを軽減されるかも

  • 41千界樹の記録23/11/21(火) 21:02:54

    「ーーー来るか」
    そして当然、その狙いに気が付かないセイバーではない。アーチャーの魔力の高まりを具に感じとり、即応してみせる。ライダーが猛攻を仕掛けてきた時点で、アーチャーの宝具の発動を狙っていることは判っていた。敢えてそれになる形で誘ったのだから
    此方を押し留めようと渾身の力で振り下ろされたライダーの斬撃を上に弾き返し、ガラ空きになった腹部へ強烈な蹴りを叩き込む。ライダーの身体は鎧に守られ蹴りそのものでダメージは与えられない。だが、その衝撃は強くライダーの身体を後ろへ退ける程である
    「くっーーー」
    「読めている!」
    ライダーから距離を取ったセイバーは、アーチャーが宝具の真名解放をする一瞬の隙を縫う様に短剣を撃ち込もうとする
    アーチャーは宝具発動に意識を注いでおり完全に足を止めてしまっている。故に、この高速で撃ち込まれる短剣を躱す事はできまいと踏んでいた
    「ーーーさせないさ!」
    しかし、セイバーがこちらの策を読むこととは想定の内。剣を掲げるライダーにはセイバーを留める策を持っていた
    しかし、それもまたセイバーの読み通り。離れた位置からこちらを妨害するには魔力放出による攻撃以外の選択肢は無いだろう。聖光を放つ魔力放出は強力な攻撃を可能にするが、それだけだ。ライダー自体が行使できる魔力量そのものはそこまで高くはなく、セイバーへの有効打は収束させて撃ち放つのみ。その攻撃ならばセイバーにとってはわざわざ見て避ける必要もないのだから
    しかし、ライダーは此処へきてセイバーの予測を上回るーーー
    「雷鳴よ!」
    ライダーは地面に剣を突き立てる。刃から放たれる光は聖光ではなく雷光。この瞬間、ライダーはスキル「終焉特権」により獲得したスキルを「魔力放出(光)」から魔力放出(雷)」へと切り替えた。雷光は文字通り閃光の如き速さで地面を伝いセイバーへと迫る。戦場で敵の動きが自身の予想を超えることは常とは言え、このタイミングは相当の痛手となってセイバーへと牙を剥く
    「ーーーぬうっ!」
    今まさに短剣をアーチャーへと叩き込む構えを取っていたセイバーの死角から稲光が襲い来る。収束された聖光を躱す準備をしていても、それはあくまで線、若しくは点での攻撃に対してである

  • 42二次元好きの匿名さん23/11/21(火) 21:36:37

    シンプルだけど頭脳戦だなあ

  • 43二次元好きの匿名さん23/11/21(火) 21:44:47

    終焉特権とか皇帝特権とかのスキルは本来持ち得ないスキルを短期間獲得出来るというのはマジでチートだなと改めて思い知った。というかマイケルはシグルドに距離を取られているから位置的にアタランテの宝具のダメージが少なくなりそうだな。

  • 44二次元好きの匿名さん23/11/22(水) 07:27:51

    朝保守

  • 45千界樹の記録23/11/22(水) 08:51:52

    しかし、迸る雷光は地面伝いにセイバーの周囲が頼み込む様に来る面攻撃である。元より地上に逃げ場はない。上へ跳べば避けようもあったろうが、攻撃のために重心を落としていたセイバーにそれは叶わなかった
    自身の想定から外れたライダーの一撃に対して、既に既に攻撃姿勢を取っていたセイバーは一瞬、されど確実に対応が遅れてしまう
    ライダーの雷はセイバーの肉体を蝕み、それは短剣の発射を阻止するのには十分な力を発揮した
    「ぐぅ!」
    ーーーぬかった
    セイバーは己の失策を悟るが既に一手遅きに失したセイバーに、打開策はない
    「ーーー『訴状の矢文』!」
    二本の矢が、天空へと放たれた
    矢は薄い魔力の筋を描きながら夜空へと消えていく。そして、二大神へと捧げられた訴状はアーチャー、アタランタへの加護となり、すなわち転じてそれは敵対者への脅威となる
    天より齎されるは矢の暴風雨。文字通り無数の矢が地上へと降り注ぐのだ
    元来、アーチャーの宝具『訴状の矢文』はその性質上威力そのものを変化させることはない。セイバーの『壊劫の天輪』やランサーの『不毀の極槍』の様に力加減や魔力の調整で攻撃力を増減させることはできないのだが、以前泥の魔獣を一掃した時の様に広く敵を一掃するのではなく、一点に範囲を絞り込む事で、結果として破壊力の向上を図ることができるのだ
    範囲を限定しても、宝具発動に伴い放たれる矢の威力も量も変化はないーーー故に範囲が狭い程1m四方当たりの矢の密度と量は増大する……!
    「堕ちろ、セイバー!」
    アーチャーの宣告は、必殺の宣告だ
    セイバーの周囲にまで極限まで限定された発動範囲は、文字通り矢の滝となって光柱の様な景色を生み出す
    並のサーヴァントならば、影も形も残らず消滅するだろう。A級サーヴァントであろうとも致命傷は免れまい
    例え投擲や遠距離攻撃に対抗できるスキル『矢避けの加護』を持っていたとしてもこの矢の量の前には意味を成さない。セイバーが、あのもう1人の竜殺しが有する様な、あの韋駄天の小僧に類する様な無敵や不死の力を持つ宝具でも持っていれば話は変わるだろうが、シグルドは何処までも強靭な大英雄だが、その手の逸話は無い
    故に、詰みーーー2騎のサーヴァントが仕掛けた策は此処に最大の戦果を挙げたのだ

  • 46二次元好きの匿名さん23/11/22(水) 08:53:36

    …すっごい、ここから切り抜けて魔剣解放してきそうなのが目に見える

  • 47二次元好きの匿名さん23/11/22(水) 11:58:41

    相手が格上だからできる皇帝特権の乱れ打ちが凄いな

  • 48千界樹の記録23/11/22(水) 18:33:57

    本来なら敵軍を薙ぎ払う為の対軍宝具、それをただ1人の英雄を打倒するために行使される
    アーチャーの放った宝具は極限にまで範囲を狭められた事で隙間なく矢が降り注がれまるで光の滝の様な光景を生み出す
    無数の矢はその本質は魔力の塊だ。それが矢の形を伴って落ちてくる為、極一点に集約された今、その中央、着弾点の中に晒されている標的の状態は氾濫する魔力の影響で測ることは出来ない
    出来ないが、例えルーンによる防壁を展開しようとも防ぎ切ることは出来ないだろう。令呪のバックアップを受けたアーチャーの放つ宝具は今、多少なりとも「セイバーを倒せ」という命令による後押しを受けているからだ
    セイバーへ目掛けて降り注がれて行く魔力矢は、弾け続けるが徐々に着弾地点に溜まりとなって蓄積されてゆく。それはやがて臨海を迎え、一気に燃焼される。所謂魔力爆発が起きるのだ
    「ーーーっ!」
    「ーーー」
    セイバーに弾き出されたライダーはアーチャーの宝具の範囲圏外ではあったものの、至近距離で爆発の余波を浴びることとなった
    流石にこの程度で大きなダメージは受けないが、両腕で爆風から身を守る様にする
    アーチャーは離れた場所にいるため、爆風を受けて、髪が乱れる程度だが、彼女は弓を握る手に力を入れたまま、宝具の着弾地点、爆心地を睨んでいる
    手応えはあった。ライダーの妨害と令呪の後押しによる宝具の高速展開、如何にセイバーといえども十全な防御は敷けない筈。緊急用に仕込んだルーン防壁ならば使えたかもしれないが、その程度では宝具の真名解放は止められないだろう
    (ーーーだが)
    アタランテもライダーもその警戒を緩めない。これ迄の戦いと共闘を経て、彼奴がどれだけの化け物なのかは痛いほどに理解しているつもりだ
    『どう見る?ライダー』
    『見事な宝具だった。普通ならばこれで勝っただろう』
    離れた場所から念話で会話するアーチャーとライダー
    仕留めるつもりで撃った。しかし相手はシグルド、先の戦いではランサーの宝具を凌いで見せたサーヴァントだ。いつでも追撃ができる様に身構えておくのは当然。警戒しすぎるくらいで丁度いいくらいだろう
    爆発と爆風が収まりが収まり残されたのは魔力の残滓と砕け散り四散するアスファルトの残骸から立ち昇る砂煙。セイバーの姿は見えず、あたりに漂う宝具の余波による魔力残滓も相まってセイバーの安否はまだ判らない

  • 49二次元好きの匿名さん23/11/22(水) 18:55:02

    事前に仕込んでいたルーンでギリギリ生き延びてそうだな

  • 50二次元好きの匿名さん23/11/22(水) 22:16:13

    夜保守

  • 51千界樹の記録23/11/22(水) 23:22:51

    いつでも仕掛けられる様アーチャーは弓に矢を番え、ライダーは突き刺した剣を引き抜いて構え直す
    両者ともがこの攻撃で勝敗を決するつもりではあっだが、それでもセイバーならばと言う疑念が勝っていた
    故に、戦果を確認するまで油断はせず、かと言って勇足も無しで砂煙が収まるのを、僅かな変化も見逃さない姿勢で待っている
    ーーーだから2騎のサーヴァントは即座に反応できたのだ。もうもうと立ち上がる視界を阻む様な煙の奥から、わずかに閃いた煌めきに
    「ッーーー!」
    「チッ!」
    それは本当に一瞬、かつ微かな光であったがアーチャーとライダーは決して見逃すことはない
    煙の中から弾丸の様な疾さと鋭さで撃ち出された碧く煌めく短剣をアーチャーは跳躍して躱し、ライダーは構えていた剣で弾く
    ーーー重い
    まず感じたのはその威力。弾いた短剣はその大きさには見合わない程に重い衝撃を伴った。まるで攻城戦に用いる大砲の様な威力の短剣である
    そして、これは牽制自身への追撃を防ぐと同時に相手の機先を制するための布石……ならば次に来るものはーーー
    備えるライダーへ文字通り煙を切り裂きながら、砲弾と見紛う威力の短剣による攻撃を行なった張本人、セイバーは疾風の勢いで突貫する。しかし、ライダーの中に驚きの感情はない。かの大英雄ならばーーーそして、これ迄の戦いを魅せてきたセイバーならば生き残るだろう。それくらいは当然の予想であった
    セイバーが薙ぎ払う魔剣の一撃を受け流す。アーチャーの宝具から生還してみせたセイバーも、当然と言うべきか、無傷ではなかった
    まず、全身至る所に無数の矢創があったそればかりか魔剣を握る腕を庇った為か、左腕がだらんと垂れ下がっている
    精悍な表情は崩れてはいないが、可な竿の半分近くが緋色に染まっていると、最早傷付いていない箇所を見つけるのが困難な程の重症である。ただでさえ魔剣の限定解除の為に霊基に負荷をかけている状態でのこのダメージ
    これで消滅していない方がおかしいと言えるものである
    恐らくは宝具が命中する寸前に緊急展開用に仕込んでいたルーンを発動させて防波騎を展開したのだ。元々が緊急用の為に防御力は高くはなかっただろう。アーチャーの攻撃は、セイバーに向く限り令呪の命令を実行させるべく強制力が働く為に強制力が働き、その行動を後押しする

  • 52二次元好きの匿名さん23/11/22(水) 23:33:30

    総合スレから事実上の出禁喰らって草

  • 53二次元好きの匿名さん23/11/22(水) 23:34:16

    やっぱり仕込みのルーンがあったか、でもボロボロの状態なのは確かなんだよね。ルーンで治癒させる時間はライダーとアーチャーは与えないだろうしどうなることやら

  • 54二次元好きの匿名さん23/11/23(木) 06:56:52

    気が早いけど保守

  • 55千界樹の記録23/11/23(木) 13:34:33

    それもあって、セイバーはなんとか生き残ることには成功したものの、こうして満身創痍の損傷を受けたのだ
    しかし、やはりあの攻撃を受けて消滅していないと言うのは、やはり出鱈目にも程がある
    「ーーー!」
    セイバーは無言のまま、激しい息遣いのみを発して魔剣を振り被る。片手しか使えない為か、またはダメージのせいか、かなりの大振りでその攻撃の軌道もこれまでと比べてもかなり読みやすい
    「だがッ!」
    真っ直ぐに振り下ろされる斬撃に対して、ライダーは剣で真っ向から受け止める姿勢に入る。重心を落とし、剣を水平に構えてセイバーの攻撃を真っ直ぐに受け止めればそこから上に弾き返して、あわよくばトドメの攻撃に移ることもできるだろう。アーチャーの宝具から生き延びたのは大したもの。そしてそれ程のダメージを受けてなお勝利の為に剣を振るうのも大英雄と呼ばれるに相応しい闘志だが、ここで終わらせる
    ライダーはそう決断してセイバー魔剣を受けに行く
    セイバーは片腕が使えず、満身創痍の有様だ。ステータス上ではセイバーの能力はライダーのそれを圧倒的に上回っている。だが、互いの状態決定的に違っている
    アーチャーの宝具を受けたセイバーに対して、此方は大したダメージを受けず、さらに令呪のバックアップを受けている。加えて「終焉特権」によって獲得したスキルでさらにブーストを掛けることも可能なのだ
    ステータスの差を覆すには十分な条件が揃っている
    故に―――
    「魔剣完了」
    この流れは当然の帰結だろう。セイバーは宝具を発動させ、ライダーの剣を容易く溶断し、ライダーの鎧を斬り裂き、灼熱の刀身が身体へと抉りこまれた
    「―――カハッ」
    「見事な作戦だったが、ここまでだ」
    セイバーの一撃を受けたライダーは、灼熱の刀身が身体を灼く激痛に意識を失いそうになりながら片膝をつく
    セイバーの斬撃、それはライダーの霊格にさえ届きかねない程の深手となるのは明確だろう
    「っぐぅ……」
    「アーチャーの宝具……素晴らしかったが、当方は負けるわけはいかないのでな」
    セイバーはルーンを用いてアーチャーの宝具を防いだが、いくら原初のルーンであろうとも緊急展開した防壁では宝具による攻撃を防ぎ切れる訳ではない。しかし、セイバーは自身が保有するスキルとして「竜種改造」というものが存在している

  • 56二次元好きの匿名さん23/11/23(木) 20:30:30

    竜種改造によるガッツか

  • 57千界樹の記録23/11/23(木) 23:34:38

    それは「自己改造」というスキルの亜種に当たる超抜級のスキル。シグルドが竜殺しの英雄として知られる最大の要因、邪竜ファヴニールの討伐を成し遂げた時、彼はその心臓を喰らい、尽きる事の無い智慧を手にしたと言う
    それはある種究極の自己改造。このスキルによってシグルドは幻想種の頂点である竜種の力を獲得している。それは知識であり、膂力であり、生命力だ。シグルドのそれはもはや人間という生命規格の枠を遥かに超えているのだ
    その一つがサーヴァントの霊基の核に当たる心臓。シグルドのそれは完全な竜の炉心と変貌し、稼働している。竜種は呼吸するだけで膨大な魔力を精製するが、それは即ち生命力にも変換される事がある
    シグルドは僅かな魔力の切っ掛けがあればそれを種火に幾らでも魔力を増大させる事ができる
    その量は、聖杯戦争に於いて切っても切り離せないサーヴァントとしての消費魔力。強力な英雄、英霊であればある程その消費量は当然大きくなる。それが神話の大英雄とも成れば尚更に
    故に強力なサーヴァントを召喚する時に、その魔力供給を如何にして確保するのかも聖杯戦争に於いては重要な事である
    しかし、シグルドは完全稼働する竜の炉心によってほぼ独立した行動が可能となるのだ
    それほどの魔力と力が存在しているセイバー。生命力の規模として人間の枠を超えているセイバーは「戦闘続行」スキルに近しい能力を備えている。そもそもの生命力の桁が外れている肉体は、たとえ普通なら致死のダメージを負っていたとしても、決定的な死が訪れるその時まで、戦闘を可能にするだろう
    今、この瞬間のように―――
    故に、セイバーはアーチャーの宝具を凌いでみせ、ライダーに致命的なダメージを追わせるに至ったのだ
    「ぐぅぅ……っ」
    ライダーは顔を伏せたまま、弱々しく左腕が魔剣を掴む。凄まじい熱を発する魔剣は体の内側を灼かれる痛みによって意識までは失われていたわけではない。セイバーの魔剣を掴む手が焼ける音が聞こえ、ライダーの苦悶の声が漏れる
    だが、それもここまでだ。セイバーは深く切り込まれた魔剣をライダーから引き抜く―――
    「悪く思うな。これで―――」
    止めとさせてもらう―――そう言おうとしたとき、セイバーの手が止まる
    「―――これは」
    剣が、動かない

  • 58二次元好きの匿名さん23/11/23(木) 23:40:18

    終焉特権による何かのスキルの効果かな?

  • 59二次元好きの匿名さん23/11/23(木) 23:46:29

    >>58

    じゃないかな?やっぱチートだよあの特権スキル

  • 60二次元好きの匿名さん23/11/24(金) 00:01:31

    考えられるのは魔眼系統による束縛、あるいはヘクトールが持ってる友誼の証明かな?

  • 61二次元好きの匿名さん23/11/24(金) 08:09:34

    終焉特権による拘束系スキルか

  • 62二次元好きの匿名さん23/11/24(金) 08:18:13

    >>61

    おそらく、マイケルはそういった類のスキルを持ってないからその可能性が高い

  • 63千界樹の記録23/11/24(金) 08:49:45

    柄を握る手に力を込める。が、『破滅の黎明』の刀身はライダーの身体に食い込んだままビクともしない
    一体何がーーー理解が及ぶ前に回答は出された
    「見誤ったな、セイバー……!」
    「!」
    ライダーは苦しそうな表情をそのままに、どこきた誇るような笑みを見せる。半ばで折れた剣を手放して、魔剣を握るセイバーの腕を掴むその眼に浮かんでいるのは、爛々と燃える闘志のみ。遠からず訪れる消滅を恐れる色は一切無く、純粋に今こそ勝利する!と言う気迫に満ちていた
    これ程の傷を受け、何故ーーー?
    セイバーはライダーが此処までの気概を見せられる要因を考えるが、その答えは彼の持つ叡智の結晶がすぐに導いた
    「終焉特権……!」
    「滅びる国の皇帝にも……ッ……、一握の矜持があるものでね……!」
    多大な魔力消費と引き換えに、宣言したスキルを獲得できる特権スキル。これまでもライダーは様々なスキルを用いてセイバーと戦ってきた。ならば今回のライダーの「コレ」にもその力が最大限に活用されていることは言うまでもない
    この瞬間、ライダーは自らが獲得していたスキルを全て入れ替えていた
    獲得したスキル、一つは「神の加護」このスキルは神の使いとされたダビデ王が英霊として持つスキルであり、単純な膂力と敏捷性を大きく引き上げる
    一つは「頑健」コレは神代に生きた英雄が保有する事があるスキルであり、純粋な耐久を引き上げ、更に受けるダメージを減少させる。正にさあバーの攻撃を受けるには最適なスキルであった
    そして、「戦闘続行」
    如何に複数のスキルを獲得し、自信の持つ能力を引き上げたとしてもライダーは神代なら英雄にあらず、滅び行く帝国の最後の皇帝である。その力、とても神代の大英雄と比べて仕舞えば心許ない。獲得したスキルでセイバーの攻撃から耐えるとしても、瀕死に近いダメージを負うことになるのは確実。折角耐えたとしても、その後追撃なりを受けてしまえばあっさりトドメを刺されてしまうだろう。だからこそ、瀕死のダメージを受けても肉体を動かすために、このスキルは必須であったのだ
    以上の3つのスキルを獲得した事で、ライダーはセイバーの斬撃を正面から受けて、その上でセイバーを拘束した。この瞬間、例え目の前にある存在がヘラクレスだったとしてもこの肉の壁を、コンスタンティノスと言う鎖から抜け出すことはできない……!

  • 64二次元好きの匿名さん23/11/24(金) 10:57:26

    別マガのダビデを彷彿とさせる力技すぎる

  • 65二次元好きの匿名さん23/11/24(金) 11:05:56

    拘束系じゃなくて頑丈系と来たか!

  • 66二次元好きの匿名さん23/11/24(金) 16:36:12

    ほしゅ

  • 67二次元好きの匿名さん23/11/24(金) 20:59:09

    耐久と筋力ガン振りで耐えた
    元々耐久が高いライダーで何とか堪えてセイバーを固定したってところか

  • 68千界樹の記録23/11/24(金) 22:40:45

    ライダーはいくつものスキルを駆使してセイバーの魔剣を、彼ごと掴んで離さない。こうしている間も魔剣の灼熱がコンスタンティノスと言う存在を構成する肉を焼き、流れる血を沸騰させて、正に地獄の様な苦痛を体験している筈なのに、その腕は緩むどころか更に力を強めていく
    「まさかーーー」
    「そのまさか、だ……君が此処までやる事は、ッ……初めから分かっていた」
    ライダーとアーチャー、2騎の狙いは初めからこれだった
    セイバーの力を考えた場合、果たしてアーチャーの宝具で仕留め切れるだろうか?アーチャーは否だと思った。彼女自身は己の宝具に絶対の信頼を寄せているが、同時に宝具の特性を考えた場合、どうしてもサイバーを仕留め切れるビジョンが見えなかったのも事実
    アーチャーは英霊だが、英雄ではない
    アタランテは狩人だ。だから良い意味で英雄らしさとは無縁で、狩人として獲物を狩るために最適な思考をする
    セイバーを仕留めるために、例え英霊として最大のシンボルであるら宝具さえ捨て石にする事も、アーチャーは躊躇わない
    しかし、宝具を捨石にするとしても、それが勝利の為の布石にならなければ何の意味もない
    宝具を捨石にして勝利へ繋げる。その為には、ライダーの協力が不可欠であった
    あの時、ライダーへ向けて言い放った『汝には死んでもらう』その発言の真意がコレだったのだ
    「よもや、宝具を囮にーーー」
    「気づいたところで、もう遅いさ!」
    驚愕に目を見開いたセイバーへ、勝ち誇る様に獰猛な笑みを向けるライダー。言葉一つ放つたびに赤い血が唾に混じり、魔剣によって半ば炭とかした肺が激痛を生むが、そんなものは忘れたとばかりに言葉を紡ぐ
    ーーーそう、此処までがアーチャーとライダーの目論見の内、作戦だったのだ
    全ては、この瞬間、セイバーを完全に無防備にするためのーーー
    「ぬうッ!」
    セイバーは今度こそ窮地に立たされることとなった。アーチャーが宝具を捨石にして、ライダーが己を此処に固定したならば、2騎の最後の一手はすぐそこまで来ている
    魔剣を引き抜こうにもライダーの渾身の力はセイバーのそれを上回っており、魔剣は動かず、更にセイバーの腕を骨が砕けんほどの力で締め上げているため、剣を手放して逃げる事もできないーーー
    つまりーーー詰み。そんな単語がセイバーの脳裏をよぎった刹那
    「殺ったぞ、セイバー!!」
    ーーー背後から、死神の足音が聞こえた

  • 69二次元好きの匿名さん23/11/24(金) 22:54:02

    すごく面白いぜ

  • 70二次元好きの匿名さん23/11/24(金) 22:57:28

    英霊2騎が宝具をも捨て石にしてようやく隙が作れるとは…

  • 71二次元好きの匿名さん23/11/25(土) 07:57:42

    朝ほしゅ

  • 72千界樹の記録23/11/25(土) 08:34:44

    アタランテは疾駆した。自身の宝具を囮に、ライダーが作り出した刹那。セイバーを完全に無防備に抑え込んだ千載一遇の刹那の時
    これまでの攻防、そして自身の宝具によってとうとうセイバーも全ての手札を出し尽くした
    この瞬間は必ず手にしなければならない。狩人とは、時に一日千秋の心持ちで獲物を待つ事もある。1日の中、ほんの一瞬だけ巣穴から顔を覗く兎を仕留めるために、その瞬間を決して逃さず矢を射る為に、矢を引き絞ったまま、一秒たりとも気を緩めることの許されない「待ち」をする。それが狩人というものだ
    研ぎ澄まされた意識は、セイバーが漸く晒した明確な隙を逃す事はない。渾身の力で矢を引き絞る。音もなく他を蹴り、風の速度でセイバーへと接敵。その背後へ回る
    そこにはライダーの決死の行動で得たガラ空きの背中、アーチャーはこれまでそうしてきた様に狙いを定める。何時だってそうしてきた様に、これからも同じ様に標的の心の臓へと狙いを定め、この至近距離、自身がセイバーの背後を過ぎる瞬きの間に、終わらせるーーー!
    「殺ったぞ、セイバー!!」
    唯一無二、訪れたただ一つの勝機に勝ちを高らかに宣言し、矢を放つ
    放たれた矢は狙い過たず、セイバーの背中へ吸い込まれる様に翔びーーー
    その身体を貫いた
    「ーーーカハ」
    セイバーの口から微かに血が零れ落ちる。アーチャーの矢は間違いなくセイバーの心臓、その霊核を貫いた
    これまで、無敵に近い程の暴威を誇って来たセイバー。サーヴァント3騎による同時攻撃すらも凌ぎきり、あまつさえ一歩間違えれば返り討ちにしそうな程、北欧最強の名と力をこれでもかと言う程に見せつけて来た大英雄。その終幕の時が此処に来たのだーーー
    「これでーーー」
    「終わらせる!」
    ライダーも、セイバーの胸に生えた鏃を確認して勝利の訪れを確信する。だが、彼はそれでもまだ足りない、セイバーを確実に斃す必要があると、右手に落とした剣を拾い上げる。刃は半ばで太陽に溶断されたが、魔力放出をもい一度獲得すればセイバーの霊核を完全に壊す事も容易だろう
    身体を貫き苛む激痛に耐えながら、獲得した「頑健」を「魔力放出(光)」へ獲得し直し霊核を完全に破壊するべく、ダメ押しの追撃を加えんと剣を振るう
    この戦い、紙一重で勝利したのは紛れもなくアーチャーとライダーだろう
    誰にもそれを否定する事はできない。無論、心臓を貫かれたセイバーであってもだ

  • 73二次元好きの匿名さん23/11/25(土) 08:58:58

    勝ったな、風呂入ってくる

  • 74二次元好きの匿名さん23/11/25(土) 12:07:57

    シグルドのガッツが文字通りのガッツじゃなくて命の規格が人間じゃないってのは面白い解釈だ

  • 75二次元好きの匿名さん23/11/25(土) 17:19:04

    夕方保守

  • 76千界樹の記録23/11/25(土) 21:13:56

    そう、この戦いの勝者は彼等
    故に、これは唯のちゃぶ台返しに過ぎないーーー
    「ーーーな」
    ライダーはその意味を理解できずに惚けてしまった。それはそうだろう。何をどうすれば霊核を貫かれたサーヴァントが、同じサーヴァントである自身の反応を超える速度で動き出すと思う
    ライダーには僅かの隙も無かった。セイバーの脅威を正しく認識し、心臓が射抜かれたセイバーを前に、まだ何かしてくるかもしれない
    まだ、消滅する迄に何かを、何かは不明だが必ずや最期に何某かをしてくるに違いないと信じてその前に確実に斃す必要が有る
    その決断共に動いた
    それは戦士ならば、剣を握ったことのある者ならば誰もが備える本能に等しい直感。ライダーの動きは正しいものだった
    誰がそんな事を予測できた?
    ライダーが行った事は一つ。トドメを刺すために、落とした剣を拾い上げるためにセイバーの腕を掴んでいた右手を離した。それだけだ
    その瞬間を待っていたかの様にライダーの残った左腕ごと、魔剣を振り抜くことなど誰にも想像することすら及ばないだろうーーー
    「ーーー、は?」
    アーチャーもまた、起きた事象に対する理解が追いつかない。彼女はこれ迄の人生で培った勘と本能、令呪による補強によって身体が勝手に動いただけだ
    その魔剣事動きを封じられていたセイバーが、心臓を貫かれたままライダーから魔剣を引き抜いて、既に此方に振りかぶっていた
    「ーーー『壊劫の天輪』」
    碧い太陽が閃く

    「ーーーァ」
    気がついた時には、何もかもが終わっていた
    アーチャーが目を開くと、自身の身体を構成していたエーテル体が少しずつ解れていっているのが理解できた。
    痛みは無く、弓は何処かと探そうとしたが、そもそも右半身の感覚が完全に消滅していた
    視界の中央には、最後の記憶の通りに満身創痍、更に心臓を矢で射抜かれたままのセイバーが立っている。さらにその側には、同じ様に肉体が崩壊しつつあるライダーが両膝をついていた
    「ーーー本当に、怪物だったとはな」
    思わず悪態をつく。その声に気付いたセイバーが此方へと振り向いた
    恐らくは、自身の矢が貫いた衝撃でスーツの胸元が破れたのだろう。少しだけセイバーの素肌が顕になっていたがーーー
    「ーーーハ」
    思わず失笑してしまった
    何せ、その左胸に碧い炎の様な光が、爛々と輝いていたのだ

  • 77二次元好きの匿名さん23/11/25(土) 21:28:47

    未だ燃え尽きることなく滾る心臓…いや、嫁の炎か!?

  • 78二次元好きの匿名さん23/11/25(土) 21:44:33

    竜種改造による竜の炉心...!
    心臓射抜かれても大丈夫なのか!

  • 79二次元好きの匿名さん23/11/25(土) 22:00:33

    >>78

    むしろ最初から心臓は破壊されてるから追撃されても問題ないとかいうゴリ押し脳筋パワープレイじゃねぇかなコレ

  • 80二次元好きの匿名さん23/11/25(土) 22:31:06

    >>79

    だとしたら脳筋すぎると言うか

    そもそも倒すための前提条件が覆ると言う…

    だからちゃぶ台返しという表現になるのか

  • 81二次元好きの匿名さん23/11/25(土) 22:34:43

    >>80

    そう考えると上手いなぁって思う、それにアタランテの腕が良かったから何とかなったかもしれんな、狙いが心臓から離れてた場合は大ダメージ食らってただろうし運が良かった

  • 82二次元好きの匿名さん23/11/26(日) 08:00:06

    朝保守

  • 83二次元好きの匿名さん23/11/26(日) 12:22:50

    正午の保守

  • 84千界樹の記録23/11/26(日) 12:33:47

    北欧の大英雄、シグルドの最期には複数の逸話が存在している
    一つは、グンナルの末弟グットルムという男に暗殺されたというもの。もう一つは、最愛の戦乙女ブリュンヒルデに刺されたというもの。そのどちらが本来迎えた最期であるかは本筋ではない
    重要なのは、そういう最期を迎えた、という逸話―――伝承があるという事実だ
    サーヴァント、英霊というものは大なり小なり複数の逸話が混ざり合うものだ。それは人の信仰や解釈、イメージによって変質したり習合することもある
    それこそシグルドとジークフリートの関係が有名だろう。共に邪竜ファヴニールを討ち果たした竜殺し。その二人に纏わる物語、英雄譚は非常に似通っており、同一の存在として物語ることも少なくはない
    さて、ここで問題になるのは、シグルドの最期、ブリュンヒルデに刺されたと言う逸話が存在している、という点だ
    サーヴァントとして召喚される英霊は基本的に自身の考える全盛期の姿で召喚される
    中には全盛期が複数存在している英霊や、他にも例外もあるが基本はそのルールが適用される
    そして、英霊としてのシグルドが自身に規定した全盛期というものは、ブリュンヒルデに刺され、殺されたその瞬間というものである―――
    故にシグルドの霊核、その心臓は砕けたまま、戦乙女の炎に今も爛々と燃えているのだ
    サーヴァントとして召喚されるシグルドは、常に瀕死。その霊核がはじめから壊れているのだから―――!
    「―――ふざけているな、汝は……」
    あまりにも馬鹿げた、そして信じられない事実
    倒れないはずだ。死なないはずだ。自身の矢はシグルドの霊核を正確に貫いたが、そもそも壊れているところに矢の一本を射し込んだところで何も変わらない。本気で破壊するならば、矢ではなくより大きな一撃―――それこそもう一人の竜殺しがもつ剣の、黄昏の光。若しくはあの韋駄天小僧の戦車で木っ端微塵に粉砕する他はないだろう
    それに加えてもう一つ―――以前、シグルドの霊核は竜の炉心に変貌しているという話をしたが、この事実を知った今、そこには少しだけ語弊があることが理解できると思う
    正確には―――壊れた霊核のかわりに、形成された炉心がその役割を担っているのだ

  • 85二次元好きの匿名さん23/11/26(日) 12:45:13

    おぉスゲェ(語彙力喪失)

  • 86二次元好きの匿名さん23/11/26(日) 14:33:49

    確かにちゃぶ台返しだわコレは

  • 87千界樹の記録23/11/26(日) 18:45:59

    竜の炉心を持つサーヴァントはシグルド以外にもそれなりの数がいる。しかし、多くの場合霊核そのものが竜の心臓となっている。例えば、シグルドと同一視されることの多いジークフリートもまた、彼と同じ様に竜の心臓を獲得しているが、嘗ての聖杯大戦で召喚された彼は竜の心臓が完全稼働していたとは言い難い
    マスターからの魔力供給次第では、その炉心を十全に活かすことがでかったとされているが、シグルドは自己改造によって自身の心臓とは別に炉心を形成しており、スキルによってその稼働が保証されている
    霊核が初めから壊れ、召喚した時点で瀕死のシグルドだが、その事実を一切感じさせない実力を以てこの聖杯戦争を戦い抜いた
    瀕死のままでも、その力は何処までも絶大なままである
    「……これが、大英雄か……ッグゥ!」
    意識が戻ったか、ライダーも又、うつむいた顔を上げてセイバーを睨む。ライダーも仮面を抜いたことで傷口を大きく抉られてしまい、灼熱で灼かれたはずの断面から、多量の血が流れ出ていた
    「気を落とすな。本来ならば勝利は貴殿等のものであった」
    「―――気休めだな。汝の事を把握しきれていなかった私達の負けだ」
    セイバーの惜しみのない称賛にアーチャーは首を振る。弱肉強食の野生の世界に生きたアーチャーにとっては結果が全てであり、生き残ったほうが正義である
    正直なところ、最後の最後で止めを刺す直前にとんでもない騙し討を喰らった様な心持ちだが、アーチャーは自身の選択ミスであると考えている
    その理由は一つ。アタランテは、『訴状の矢文』の他にももう一つ宝具を持っている
    アタランテの持つ逸話の中に、多くの英雄たちと挑んだカリュドーンの猪退治というものがある。彼女はその毛皮をもう一つの宝具として獲得しているのだ
    銘を『神罰の野猪』この宝具を用いればアタランテは理性を大半と引き換えに彼女自身を魔性の存在へと変化させ、大幅にその力を強化する。この宝具を用いていれば、おそらくはシグルドの霊核を完全に破壊することも可能だったかもしれない
    しかし、宝具を使うときに大きな魔力の上昇や何かしらの変動が存在し、存在を変質させる隙を与えてしまってはセイバーの対応の手段を引き出してしまうかもしれない。その時間を与えないために弓での攻撃を選択した
    その選択は正しかった。しかし、シグルドを倒すには威力不足だったのだ

  • 88二次元好きの匿名さん23/11/26(日) 19:01:09

    シグルド何回も言うけどバケモンだよやっぱ、そんでそれを納得いく形に出力してるスレ主すげぇ

  • 89千界樹の記録23/11/26(日) 21:17:33

    「……全く、何処までも凄まじい英雄だ」
    ライダーも、セイバーの霊核の真実に驚愕しているようだった。2騎のサーヴァントを相手にして上回るどころかここに来てのとんだ真実に成すすべもなかったのは歯がゆく思うが、最早取れる手段は一つもなく、このまま消滅していくしかない
    だが―――
    「セイバー……!一つだけ忠告だ」
    ライダーは、「終焉特権」によりあるスキルを獲得していた。一体ライダーは何を知っているのか、消滅寸前の身で何かを語ろうとしている
    「……聞こう、ライダー」
    「この聖杯戦争―――」
    身体の消滅が進み、喀血しながら掠れる声で語るライダー。その言葉を聞いたものは、セイバーただ一人であった
    「……感謝する、ライダー」
    「……ゴフッ……なに、一度は共に戦った、よしみというものだ―――」
    ライダーは微かに、自重するように微笑む。最早時間は残されていない―――故に、最期に残すものがあるとすれば一つだろう
    「……マスター。貴方の未来に幸のあらんことを―――」
    ライダー、コンスタンティノスはマスターを想いながら消えていった
    そして、アーチャーもまた―――
    「私から言うことはなにもない。精々ライダーの忠告を忘れないことだな」
    何処か不貞腐れたような様な、負け惜しみのような言葉を残して消えった

    ――――

    凌我とルーナ、マルグリットの3人は最期の決着をつけるべく一撃に力を注ぎ込む。3人共がその時を見計らったように
    動き出す
    「―――はぁあああああああ!!」
    「―――フゥウウウ!」
    最初に動いたのは凌我。長さにして7mにも及ぶ水の刃は振り下ろすのではなく薙ぎ払うように振るわれて、その軌道上に存在したコンテナ群をまるでバターのように寸断されていく。鋼鉄性の塊が容易く切断されていく様はある種災害、物理的な威力だけで考えれば厚い特殊合金の装甲すら斬る暴威となって2人に迫る
    対するルーナとマルグリット。その内、ルーナが前に出る。水刃は灰錠の強度では恐らく耐えられないだろう。だが、その事実はルーナの足を止める理由にはならず、不敵に笑う表情を崩すこともない
    ボクシングスタイルのまま、突き出した拳が水の刃と激突する。銀色の聖火を灯す灰錠が鋼鉄さえも引き裂く激流を真っ向から迎え撃つ

  • 90二次元好きの匿名さん23/11/26(日) 21:34:39

    あれ?もう一波乱ある感じ?

  • 91二次元好きの匿名さん23/11/26(日) 21:36:05

    すごい戦いだった…コンスタンティノス推しだからしっかり最後まで戦い抜いてくれて嬉しい
    ありがとう

  • 92二次元好きの匿名さん23/11/26(日) 22:36:30

    >>91

    みんなに見せ場があるのは凄いと思う

    アサシンは……ナレ死してるから仕方ないね

  • 93二次元好きの匿名さん23/11/27(月) 08:14:09

    星湯

  • 94千界樹の記録23/11/27(月) 10:25:34

    激突する水の剣と炎の拳。魔力の単純な破壊力で言えば、凌我の水の大刃が圧倒的に上回る。だが、神秘の濃度で言えばルーナの聖火が遥かに勝る。個人の持つ魔術式と教会が秘匿してきた主の遺した奇跡の一つ。そのどちらが強い神秘を持つかなどは言うまでもない
    神秘はより強い神秘に塗りつぶされる―――その証明として、灰錠の聖火が激流に負け無いどころか逆に蒸発させていく
    このまま激突すれば、灰錠を斬り裂く前に聖火が凌我の刃を消し去ってしまうだろう
    いくら破壊力で勝っていても、神秘が違う。保有し、出力できる魔力の多寡が違う。凌我の魔力では、ルーナの魔力の足元に及ばない。正面からぶつかれば、どちらが勝つのかは明白であった
    「ーーーそんなことは初めから分かってるんだよ!」
    凌我は吼える。そうだ、初めから分かっている。こうした激突で分があるのは当然目の前の女性であると、此方が如何に手を打とうとも、前提として魔力の桁が異なるのだから
    「フフ、さあどうするの凌我君!?」
    楽しそうに、期待する様に目を輝かせて火と水の向こうにいる彼に尋ねる。このままでは恐らく自身の聖火が水の剣を突き破り、その身体へ灰錠の一撃が届く
    そうなれば最早なす術もなく、今度こそ彼は斃れるだろう
    そんな展開は望むところでは無いが、このままでは否応にでもそうなってしまう。己に手加減ができる様な器用さは無い
    更にもう一つ、凌我の相手はルーナだけではなく
    「blizzard,horn,setーーー」
    自身の背後で彼に狙いを定める彼女の矢をどう捌く?
    マルグリットは幻獣の骨を加工したボルトをボウガンにセットし、狙いを定める
    ボルトの先端には、小さな雪、渦巻く極小の吹雪が舞い、先端も変質しまるで動物の角の様な形状に変化した。より憑依させる霊との親和性を高めるためだ
    彼女が宿す霊は、事破壊力においては他の追随を許さない爆走戦車ーーー

  • 95二次元好きの匿名さん23/11/27(月) 13:50:21

  • 96千界樹の記録23/11/27(月) 22:15:16

    「Rhinoceros=bolt!」
    大気の塵が凍り付き、輝きながら舞う程の低音の渦を巻くシロサイの霊。その破壊力は彼女が使役できる霊の中でも屈指のもの。更に他の魔術の組み合わせで威力を更に引き上げている
    更に憑依した霊の生前の質量さえ、再現できるのがこのとっておきのボルトの力だ。サイという動物は優に100を超える体重を持つ
    この破壊力ならば人間程度は木端の如く薙ぎ払われるに違いない
    そのボルトの向かう先は当然、凌我1人
    ただでさえ大技を以って銀狼とぶつかっている最中、そんなものを撃ち込まれてはたまったものでは無い。しかし、どちらかに対処しようとすればどちらかの末路を迎える。同時に対処するにはどちらも致命打になる
    前門の虎、後門の狼とはまさにこの状況を言うのだろう
    そう、理解っている。このままいけば確実に彼は終わるだろう
    だけど同時に期待もしている。神水流凌我はこの程度で終わる人物ではないと
    「ーーー渦雲廻れ、荒れて集い大禍を捧げ」
    それを証明するかの如く、凌我の詠唱と共に水の刃が震え出す。刃を形成する水の表面が細かく波打ち、それを徐々に大きくなっていくのだ
    「流れ落つるは岩を割り、荒れ狂えば都市を覆うーーー」
    震えは大きくなり、水刃は形を保つことを辞めるほどに大きくうねり、膨れ上がる
    「ーーーアハ」
    「汝、不香の花と咲き誇り、紅蓮に列す彼岸を呼べ!」
    凌我が詠唱を結ぶと同時、弾け飛ぶ水刃。その勢いは周囲に転がる寸断された哀れなコンテナを動かす程だ当然、爆心地にいるルーナは大きく後退る事となる
    マルグリットは咄嗟に身体強化を自身に施してコンテナの上に退避する。流石に離れた所にあるコンテナ迄を動かす程の力は無かった様だ
    しかし、凌我のすぐ前にまで迫っていたボルトは弾ける水の勢いに負けて明後日の方向のコンテナを吹き飛ばして飛んで行ってしまった
    長大な水の刃を吹き飛ばしてまでこうして距離を取った以上は何か目的があるのは明白、ただでさえ限界を越えて強引に稼働させている肉体なのだ。これ以上の無理は確実に自身の死に繋がるマルグリットとルーナの前に見えた光景に、さしものルーナも顔を引き攣らせた
    「嘘ーーー」
    「コレは、流石にねーーー」
    無理もないだろう
    月光を反射して煌めく刃。無数の氷の剣が、視界を埋め尽くすほどに広がっているのだからーーー

  • 97二次元好きの匿名さん23/11/27(月) 22:40:37

    収束させた一撃でも押し切られるなら全方位囲んで滅多刺しにしますってか
    手札多すぎんよー

  • 98二次元好きの匿名さん23/11/27(月) 23:32:15

    圧縮した水を大解放してその水量で距離を取らせてから無数の氷の剣を作成か、本当に凄いな

  • 99二次元好きの匿名さん23/11/28(火) 08:02:08

    朝保守

  • 100千界樹の記録23/11/28(火) 08:48:00

    彼女達の周囲を覆い尽くすほどの氷の剣は、その鋒が悉く2人へと向けられている。もしも、この全てが同時に2人へ放たれれば、全身串刺しは免れないだろう。文字通り周囲を覆う様に展開されているのだから逃げ場は無い
    「悪いがな、決めさせてもらう……!」
    宣言する凌我は、右手に握る剣を2人に向けて宣言する
    「っ……先輩!」
    「流石、でも見積もりが甘いんじゃ無い?」
    歯噛みして凌我を睨みつけるマルグリットに表面上は余裕を崩さず涼しげなルーナ
    確かに、マルグリットにはこの状況で打てる手はほぼ無くなっただろう。ルーナも表情こそ涼しそうにしているがこの数の氷剣の前に無傷で済むはずがない
    更にこの状況下、時間は互いの味方であり敵である
    「いくらお前でもこの陣を無傷で突破はさせないさ。必ずどっかには風穴を開けてやる」
    「できるかしらね?」
    互いに相手を煽るものの、ルーナは動けずにいる。同時に凌我もまた、容易く氷剣を放てずに居た
    (万が一突破されたら、今度こそ後がないからな……)
    最早凌我自身も魔力そのものが限界に近い。肉体の限界は魔術で強引に操っているが、コレもそれも、魔力が尽きれば全ておしまい。既にここまでで相当数の術式を手繰り、最早肉体も魔力も底を突き、壊れていない事が奇跡の様なものである
    故にこれ以上の戦闘は凌我にとっては自滅への急転直下コースだ
    「さて、できるかはどうかは置いといて……」
    しかし、膠着した状況で少しでも時間を稼ぐ事ができれば、凌我にとってはそれで良かった
    何故ならばーーー
    3人が並ぶ通路の更に向こう、サーヴァント達が向かった戦場に、碧い閃光が迸り、その直後凄まじい爆音と爆風が此方にまで到達する
    「ッ!今のーーー」
    「アーチャー!?」
    途方もない魔力の爆縮。その余波が離れた位置でも明確に感じ取れるほどの極大の魔力を前に、ルーナはその異常を察し、マルグリットは突然途切れた己のサーヴァントとの繋がりに悲痛な声をあげる
    「……勝ったか。セイバー」
    ーーー時間さえ稼げば、セイバーが必ず勝利すると、信じていた

  • 101二次元好きの匿名さん23/11/28(火) 11:48:29

    発動したらやばかったけど、発動する前に決着がついたか

  • 102二次元好きの匿名さん23/11/28(火) 17:03:27

    夕方保守

  • 103千界樹の記録23/11/28(火) 21:08:38

    幕間

    街の中央近く、ひときわ古く大きな館。ここはこの聖杯戦争の主催者、イザーク・ゴットハルトの住む場所であり
    彼の魔術工房の本丸
    その館の一室、イザークの執務室で一人遠見の水晶からサーヴァントの戦い。イザークその人が戦いの一部始終を見つめていた
    「……決着か」
    サーヴァントの戦い、その終結を見届けた彼は、ゆったりとした動きで椅子の背もたれに寄り掛かり、天井を見つめる
    聖杯戦争―――聞きしに勝る凄まじさ出会った。緒戦のセイバーとアサシンの戦いから、街中にバラ撒いていた使い魔を通して可能な限りの戦いをこうして見てきたが、想像を遥かに超えるものであった
    「だが、勝者はやはりセイバーか……」
    亜種聖杯戦争が各地で執り行われている昨今。これまでの亜種聖杯を遥かに上回る性能を誇るあの聖杯を手土産に「聖杯戦争を開催してくれるならば、この聖杯をあんたに譲っても良い」と持ちかけてきたユグドミレニアの魔術師
    聖杯戦争に際し、細かいルールの策定からギアススクロールを用いてルールを守らせるようにするまでを共に協定として運んできた手際と準備の良さ
    此方にとっても彼が勝者となってくれるのが最上であったが、見事彼は勝利してみせた
    執務室に備えてある電話が鳴り響く。受話器に手を取り掛かってきた電話を取る。電話の相手は彼の想像していた通りの人物であった
    「ああ、わかっているよ。聖杯戦争の勝者が決まったようだね。―――分かった。そちらは聖杯の準備を―――ああ、では後で」
    受話器を置き、通話を終了する
    「―――では、勝者を迎えに行くか」
    イザークは立ち上がり、執務室を後にする
    後手に手を繋いだ姿勢のまま、ゆったりとした歩調で廊下を歩いて行く
    「聖杯はこの戦いの勝者に齎される……」
    館の外、ドアを開き月を見上げるイザークの表情は何処か晴れやかなものを感じさせる
    それもそうだ。彼はこの時を誰よりも待ち望んでいたのだから
    門を開き道を1人、決戦の場へと向かう。既にあの神父が聖杯の準用意を進めている事だろう
    己は勝者を讃え、その栄光に報いるのみだ
    「だが、ゆめ忘れる勿れ」
    今夜は雲も少なく、月がよく映える。誰もいない道を行く彼はふと表情を僅かに崩した
    「聖杯が微笑むのは、常にふさわしき者にという事をーーー」
    その言葉の真意は如何なるものか
    勝者にのみ当たらられるという事だろうか?
    知るものは、誰もいない

  • 104二次元好きの匿名さん23/11/28(火) 22:04:29

    …こりゃあもう一波乱ありそうだなぁ

  • 105二次元好きの匿名さん23/11/28(火) 22:43:10

    >>104

    聖杯の出自からして厄ネタの宝庫だし

    主催者も腹に一物抱えてそうだしね

  • 106二次元好きの匿名さん23/11/29(水) 07:40:53

  • 107千界樹の記録23/11/29(水) 08:44:37

    コンテナ置き場に落ちる碧い太陽。セイバーの宝具が発動した以上勝敗は決まっただろう
    更にあの2人の反応が、その予想の裏付けとなった
    特にマルグリットの狼狽具合を見れば一目瞭然だろう。この聖杯戦争に俺は勝ったのだ
    「フゥーーー」
    呼吸を整える。全身がボロボロな上、血も足りない。傷そのものは魔術でどうにか誤魔化せるが体力も身体も限界をとうの昔に迎えている
    「俺の、勝ちだ」
    セイバーとの霊的繋がりは未だ健在である以上、相打ちという線も消えた。勝利を宣言して展開した魔術を解除する
    指を鳴らすと同時、2人の周囲を覆い尽くすほどの氷の槍は全て砕け散る
    粉々になった氷の破片は、月光に照らされて光を反射する
    まるで一瞬だけ万華鏡の様な煌めきと共にボロボロになったアスファルトへと散らばる
    「凌我君……」
    「っーーー先輩!」
    我に帰った様に凌我の方へと振り向くルーナとマルグリット
    「俺を倒す事に拘りすぎたな」
    凌我は剣を納刀し、勝ち誇る様に柄を2人へと向けた
    「この聖杯戦争の主役はサーヴァント。俺達じゃない。サーヴァントが敗北すればマスターが無傷でも敗退になる」
    「あーあ、こんな決着になっちゃったか」
    ルーナは灰錠を解除し、唯の手袋と靴に戻る
    やや苦笑気味にルーナは戦闘状態を解く。戦意は霧散ている
    マルグリットは暫く俯いていたが、やがて腕で目元拭い顔を上げる。微かに赤くなっている瞳については言わぬが花だろう
    「納得はしません。このまま戦ってれば私達が勝ってたんだから……!」
    「負けず嫌いめ。まあ、それでいいさ」
    マルグリットの言葉に苦笑する凌我とルーナ
    聖杯大戦以来、大聖杯が失われてから初めて執り行われた英霊7騎による聖杯戦争。その決着はセイバーの勝利。最優の英霊にの名に恥じぬ結果となったのだ

  • 108二次元好きの匿名さん23/11/29(水) 08:50:05

    冬木式じゃなくて良かったなぁ、事前にサーヴァントが敗退したら参加出来ないってルールを敷いておくことで耐久戦に持ち込むルートができてるのは強かった

  • 109二次元好きの匿名さん23/11/29(水) 12:05:58

    ほしゆ

  • 110二次元好きの匿名さん23/11/29(水) 18:02:45

    夕方保守
    勝ったとは言え相当ボロボロになったな

  • 111千界樹の記録23/11/29(水) 22:31:52

    ライダーとアーチャー、2騎のサーヴァントの消滅を以てセイバーの勝利が確定した
    これ「よって聖杯戦争は終結し、事前に参加者全員が交わしたギアススクロールの強制力が働き、敗退したマスター達は勝者となったセイバーのマスターへの妨害行動が不能になる。聖杯を渡す際に事前に協議して定めたルールであったが、コレに救われたとつくづく凌我は安堵のため息を漏らした
    「よく生きてるな、俺……っ」
    全身から血を垂れ流しながら、無理やりに身体を魔術で動かし続けたツケが回ってきた様で急な眩暈に襲われる
    足元が覚束ず、歩くのも儘ならない。そもそも、魔力の限界で魔術を解除せざるを得ず、このまま倒れるかもしれないーーー
    「ーーーっと」
    倒れる直前に、フワリと目の前を過ぎる銀色の髪
    気がつくと、ルーナに支えられていた
    自分の体が血で綺麗な髪や白磁の肌が汚れるのも構わずに、しっかりと肩を貸す様にして俺を支えてくれている
    「フフ……あの時と同じね」
    「ーーーハ」
    言われて思い出す。そう言えば、ロンドンの時もこんな感じだったか。最も、あの時より身体へのダメージは大きいかもしれないが
    「お疲れ様、凌我君」
    「ざまあないな、俺も」
    狙ってか、あの時と同じ言葉を掛けてくるルーナに応じて、俺も同じ言葉で返す。咽せ返る様な自分の血の匂いに混じって、ふわりとした甘い匂いが微かに鼻をくすぐった
    ーーー全く、俺には勿体無い奴だよ。お前は
    思わず口にしそうになったが、辞めておく。下手に言葉にしたら後が怖い
    「ーーーああもう!」
    何か壕を煮やしたような、ヤケになった様な声色と共に、背後からルーナと反対の肩を支えるマルグリット
    正直支えそのものはルーナがいるし、2人いても大して変わらないが、どちらにせよまともに動けない身の上なので、為されるがままだ
    「勝ったんなら、勝ったらしくしゃんとして!」
    どこか理不尽な叱責を浴びせてくるマルグリット。負けず嫌いの生意気な後輩だ。どうせルーナに対抗心バチバチでいるのだろう
    「どいつもこいつも……」
    思わふ自嘲する様な失笑を浮かべてしまう。全く以って、俺には勿体無い女だよ、2人とも
    「何?先輩」
    「いや、なんでもない」
    「それにしても、いつもボロボロになるわね?凌我君は」
    「今回の原因は9割型お前にあると思うんだが?」

  • 112二次元好きの匿名さん23/11/30(木) 07:16:55

    ボロボロの凌駕くんに言うべきでは無いが…爆ぜろ

  • 113千界樹の記録23/11/30(木) 08:44:31

    戯れ合いながら歩き出す3人。港を出たところで彼等の前に、この聖杯戦争の主催者が姿を現す
    「仲睦まじい様だね。若き魔術師君」
    恰幅の良いその男は、柔和な笑みを浮かべて立っていた
    「ゴットハルト」
    「聖杯戦争、見事な勝利だったね」
    イザーク・ゴットハルトは穏やかな笑顔を絶やさずに凌我の勝利を祝う
    「さて、本来ならこのまま聖杯の元へ案内する手筈だがーーー」
    その傷では難しいだろう?ゴットハルトは血塗れの凌我を見てそう告げる
    「ま、一晩は休息が欲しい所だ」
    「では、また明日の夜に君の拠点を訪ねよう。今宵はゆっくり休んでくれ給え」
    そう告げるとゴットハルトは踵を返し、港を後にする。それを見送り、3人はまた歩き出す。目的地は当然凌我の拠点だ。自身の用意した拠点が最も回復が速く、安全な場所だろう
    聖杯戦争の勝者が決定した以上、他者からの妨害はほぼないと思って良いが、万が一のこともあるし、そもそも明らかに生命に関わる重傷を負っている身だ。逸早く治療しなければ良い加減危険だろう
    「それじゃ、行きますか」
    「なんで貴女が仕切ってるんですか?」
    「口喧嘩はよしてくれ。傷に響くから」
    気を回してくれたルーナとマルグリットに治癒の秘蹟や魔術を施されてはいるが、それでも身体の外側も内側もボロボロになっている身体の治すにはそれこそ一晩以上は掛かるだろう
    ゴットハルトが立ち去った後、霊体化していたのか、凌我達の前にセイバーが姿を見せた
    「マスター、無事で何よりだ」
    セイバーの見た目は大した傷を負っていない様に見えるが、それは表面上だけ取り繕ったものだ
    内側はボロボロも良い所。更に魔剣の限定解除の影響で霊基、霊核そのものにガタが来ている。このダメージでは治癒のルーンを用いても焼け石に水だろう。一晩は問題無いだろうがこれ以上の戦闘は厳しい筈だ
    まあ、戦いが終わった以上その心配もないのではあるが
    「なんとか、まだ生きてるよ……」
    「フッ……話は聞いていた。当方も今宵は霊体化し休息に徹する。マスター達も、十分に休んで欲しい」
    そう言うと再び霊体化して姿を消すセイバー。それを見送った3人は、そのまま拠点へと歩を進めて行く。3人以外誰もいない、眠った無音の街を歩いて行く
    そして、やがて拠点へと戻った凌我達。一日しか経っていないはずなのに、随分と久し振りに此処へ戻ってきた様な感覚を覚えた

  • 114二次元好きの匿名さん23/11/30(木) 12:07:51

    もっといちゃついて爆ぜろ凌我

  • 115千界樹の記録23/11/30(木) 17:03:54

    「取り敢えずシャワーでも浴びて、血とか諸々流してきなさいな」
    と、言われ到着するなりシャワー室へと叩き込まれた凌我。いつの間にブービートラップを解除していたのか俺がロックを開ける前に普通にドアを開けたことに驚いてる暇もなかった
    『服は適当に脱衣所に出しておいてねー』
    と、あまりにも普通にドア越しに声をかけてきたのもビックリだよ。普通にしすぎだろ曲がりなりにも魔術師の工房だぞここ
    最も、現代魔術師の用いる魔術でこいつに傷をつけられるかと言えばそれはNOだろう
    元々魔術に対して高い耐性を持っているらしいが、それをあの概念武装の力で極限にまた高められており、サーヴァントのステータスで言うところの「対魔力」スキルのAランク相当に該当するだろう
    「ま、今更か……」
    シスターとして、主に仕える者としている間は清廉にして敬虔な信徒として通っているが、その衣を脱げばどこまでも自由で気ままに使命を全うする銀狼がそこにいるのだ
    あの奔放さと清廉さを両立する銀の女神はここでもその在り方は変わらない様だ
    『先輩!キッチン使わせてもらいますよー』
    「ご自由に」
    アイツ料理できたっけ?と疑問に思いながら了承する。まあ、少なくともルーナは料理出来るはずだからなんとかなるだろう。多分…
    マルグリットも気が強く負けず嫌い。ああして常に気を張っているのは舐められたくないと言う思いが強いせいだろう。あんな調子だがアドバイスはしっかり聞くし負けず嫌いが功じてか、人一倍努力する。その成果の一つがあの憑依術式だ。正直、肉体の変質までしておきながらそのリスクを排して力だけを得る、あんな等価交換の原則を無視したかの様な術式を作り上げるとは驚愕した
    ああ…分かってるんだよ
    鈍感だのなんだの言われることが多いけどな。こうもハッキリ向けられて気が付かない程アホじゃない
    物好きな事に、あの2人は俺に好意を向けてくれている。人の感情なんてわかったものではないし、切っ掛けも分からないが両者とも割りかしストレートに想いをぶつけてくるから流石にわかる
    俺だって男だ。飛び切りの美人にああして好意を向けられて嬉しくない訳はない。何かと物騒な所はあるが魔術師に代行者だ。あのくらいの棘が無いとむしろ張り合いもない
    「……いずれは、答えを出さないといけないな」

  • 116二次元好きの匿名さん23/11/30(木) 22:52:58

    マジでモテてんじゃん

  • 117二次元好きの匿名さん23/11/30(木) 23:00:31

    >>116

    マルグリットから見たら凄え優しくて頼れる先輩だしな

    ルーナから見たら何度か共闘してるみたいだしその辺で何かあったんだろうなと予想できる

  • 118二次元好きの匿名さん23/12/01(金) 08:00:34

    朝保守

  • 119千界樹の記録23/12/01(金) 08:29:11

    これまで、ユグドミレニアを立て直すためにと、走り続けてきた。それ故に目を逸らして方が、この戦いが終結を迎えれば取り敢えずひと段落つく事になる。後は私情が待っているだけだ
    「……?」
    何か脱衣所の方からゴソゴソと動く音が聞こえる。大方ルーナが俺のボロボロの服を片付けているのだろうーーー
    『じゃ、背中流してあげーーー』
    「『氷棺、閉ざせ』」
    即断即決。ドアの鍵を凍結させる
    『って、冷たっ!?』
    「いきなり入ってこようとすんじゃねー!」
    『代行者!何してるんですか!』
    バタバタと外で慌ただしい音が聞こえる。冷たっ、じゃねーよ普通に入ってこようとするな教義はどうした教義は
    「全く……」
    聖杯戦争がほぼ終わったとは言え、さっきまで敵同士だった人間に対して距離感が近すぎるだろう。そうでなくても聖堂教会と魔術師。本来は相入れない関係の人間に、こうも近い距離で居るのは図太いと言うかなんと言うか
    『あら、じゃあマリィちゃんが代わりに凌我くんと一緒にシャワー浴びる?』
    『ふ、ふざけないでください!襲われたらどう責任とってくれるんですか!』
    『その時は腰砕けになるまで楽しめば良いじゃない?』
    『それが聖職者の言葉ですか!?』
    「お前らは人をなんだと思ってる」
    ーーーー
    交代でシャワーを浴びてだいぶ遅くなったが夕食、と言うより夜食かーーーを、取ることになった3人。どうやら今朝、俺が居ない時に此処に来て色々やってたらしく、着替えやら何やらを置いており2人は持ち込んだ服に着替えていた
    そして、食事の内容と言うとーーー
    「カレーか」
    「初心者でも割と簡単に作れて美味しい。更にマリィちゃんと凌我君の2人にとっても馴染み深い、良いチョイスでしょ?」
    拠点内の材料から考えたら妥当な判断だろう
    「コレ、作ったのがマルグリットか?」
    「……なに?先輩」
    「いや、お前料理できたっけ?と思ってな」
    「……やった事がないだけ。レシピ通りにやるだけなんだからコレくらいはできる」
    世の中にはレシピ通りにしても何故かできない奴が割といるんだけどな
    「マリィちゃん悪戦苦闘してたんだからもっと褒めてあげて」
    「余計な事は言わなくて良いです!」

  • 120二次元好きの匿名さん23/12/01(金) 12:46:28

    凌駕くんいっその事2人と結婚しちゃえよ、教会とパイプは協会から敵対視される可能性あるけど内縁の妻とかにしてさ

  • 121千界樹の記録23/12/01(金) 16:27:34

    こうして戯れあいながら撮る食事も良いものだ
    と、聖杯戦争なら参加してから二度目の2人との食事。あの時と同じ様にルーナが俺の隣に、マルグリットが俺の正面に座っている。あの時の違いは時刻が深夜であることと、サーヴァントがいない事だ
    カレーの良いところは余程変なことをしない限りは誰が作ってもそれなりの物になる事だろう。現に料理の経験がほとんど無いであろう目の前の少女でもこうしてそれなりの味に出来ているのだから
    「そう言えば、先輩は聖杯をどうするの?」
    「聖杯か?」
    食事の中、話題は聖杯に移る。当然と言えば当然か。聖杯戦争に勝利した以上、本来ならば聖杯を使う権利は俺に与えられるのだ
    しかし、俺はこの聖杯について、恐らく参加者の中で詳細を知る唯一の人間だ
    「俺が聖杯戦争に参加したのはあくまでユグドミレニアの名を知らしめる為だ。聖杯そのものに興味は対して無いが……」
    「そうね。この聖杯についてってあまり情報無いのよね」
    嘗て冬木で執り行われたと言う聖杯戦争。既に失われた大聖杯はそれこそ万能の願望器足り得た、根元への到達すら可能とされる程の物であったが、今現在世界で行われている亜種聖杯戦争は、召喚できるサーヴァントの数も、聖杯其の物の性能も大聖杯には遠く及ばない欠陥品と言えるものばかりだ
    しかし、この聖杯戦争に用いられた聖杯の性能は、冬木の聖杯戦争同様に7騎のサーヴァントを召喚し争うと大きく喧伝されていた
    しかし、聖杯戦争の規模やサーヴァントを喚べる数については派手に触れ回っていたが、聖杯で叶えられる願いについては一切と言って良いほどに情報が無かった
    それ故にリスクに見合わないと多くの魔術師が参加を躊躇い、願いではなく聖杯戦争そのものに意味を見出した者たちが参加を表明したのだ
    本来この様な大きな舞台に参加する事が叶わないであろう小さい家の魔術師であるマルグリットが参加できたのもこの点による部分が大きかった
    「あの聖杯はまだ未完全なのさ」
    「不完全?」
    そう、あの聖杯は未完成。本来求められた性能を発揮するためには、一度聖杯戦争を執り行わ無ければならなかった
    冬木から持ち出したあの大聖杯。あれを模して製造されたあの聖杯は、一度大聖杯に接続してその機能、情報を取り込まなければ、本来の機能を発揮できない

  • 122二次元好きの匿名さん23/12/01(金) 16:36:34

    ジークが邪竜になって大聖杯を世界の裏側に持って行ってるから今回の聖杯が本来の機能は発揮することは叶わない。だからこそ聖杯戦争を行ったのか。

  • 123二次元好きの匿名さん23/12/01(金) 16:59:56

    ん?繋ぐべき大聖杯裏にあるから接続出来なくないか…?
    いや溜まった英霊の魂使って世界に穴開けて繋げるのか???

  • 124千界樹の記録23/12/01(金) 19:46:06

    「それって、矛盾してない?」
    マルグリットがそう指摘するが、その通りだ
    聖杯として必要な能力を得るために聖杯戦争をすると言うのは本末転倒だろう。しかも、本来接続する為の大聖杯は永遠に失われてしまった
    で、あればそもそも聖杯戦争を執り行う意味自体が消失してしまっている
    「風の噂で聞いたけど、大聖杯って、10年前の聖杯大戦で消失したって」
    「ああ。世界の裏、テクスチャの向こうに消えたそうだ」
    あの戦いを生き残った本人から聞いた話だ。そこに間違いは無いだろう
    今現在この地球を覆う「物理法則」と言うテクスチャを超える事は普通に考えれば不可能に近い
    元々大聖杯に繋げて初めて本来求められた性能に到達するあの聖杯は、器として完成する前にドイツを裏切ったユグドミレニア前当主、ダーニックによってルーマニアに持ち出され、秘匿されたのだから
    「世界の裏側に行っちゃえば、少なくとも魔法級かそれに近い神秘を使わなければいけないわね」
    だが、魔術師に通常のロジックは通用しない。一見ロジックエラーに見える事象すらも通すのが俺達だ
    「だから、聖杯戦争が必要だったのさ」
    あの聖杯は模造といえど、その模倣元はあの大聖杯。かつては大3魔法に手が届いたと言うかのアインツベルンの作り上げた代物だ
    この聖杯は不完全なデッドコピーに近いがそれでもその機能の一部を有するそれこそ、魔力次第では大3魔法に近しい事は極小規模でなら可能だろう
    「此処までは良いな?」
    「それは分かるけど……」
    「聖杯戦争が必要な理由は、見えてこないわね」
    ニヤニヤしながら言外に「勿体ぶらずに話せ」とルーナが催促する。勿体ぶっているつもりはないが……
    「あの聖杯の今の主な機能は「接続」だ。そして、模造とは言えあの聖杯は大聖杯の力を持っている」
    持っているだけで機能はしていないが、こうして聖杯戦争を行なった事で、魔術的には「この聖杯は大聖杯である」と言う照応が可能となった。魔術を扱う中で、照応の概念は非常に重要な意味を持つ。それこそ、その応用次第では全く異なる人間に、影武者としての役割を被せる事が可能な程に
    「あの聖杯を使いサーヴァントを召喚し、冬木式の聖杯戦争を行う。すると概念的に模造品でも「大聖杯」としての照応が成立する」

  • 125二次元好きの匿名さん23/12/01(金) 20:56:47

    大聖杯化か

  • 126二次元好きの匿名さん23/12/01(金) 22:22:18

    ああ、なるほど
    だから参加者の大部分が聖杯そのものより聖杯戦争に勝つ事が目的の人が多かったのか

  • 127二次元好きの匿名さん23/12/02(土) 08:14:54

    朝保守

  • 128二次元好きの匿名さん23/12/02(土) 15:43:06

    夕方保守

  • 129千界樹の記録23/12/02(土) 18:37:01

    接続が叶う。とは一言に言ったがコレがまた普通の手段では不可能。例え聖杯を本来のものと照応させ、魔力を溜め込んだとしてもテクスチャの向こう側だ。観測することすら困難を極め、そこに魔術的な繋がりを持たせるなどそれこそ魔法に近い偉業が必要となるだろう
    サーヴァントとの魔力パスを繋げるのとは訳が違う。理論を何重にも飛躍させ、そしてそれを破綻なく神秘として構築しなければならない
    非常に高度かつ複雑な応用になる。少なくとも現代魔術師で可能な人間は一握り中の一握り。
    当然俺には不可能な芸当だ
    しかし、それを可能にするのが聖杯。過程を無視して結果だけを得る聖杯の有する演算機能が解決する
    神秘の度合いで言えば、あのをを聖杯も大聖杯に劣ってはいない。当時ドイツが収集し貯蔵していた聖遺物、その殆どを費やして建造されただけの事はある
    「とまあ、こんな感じだな。俺でも未知の部分が多いから半分は憶測になるが」
    「なるほどね」
    「つまり、初めから先輩は知ってたんだ?」
    すごいジト目で睨んでくるマルグリット。
    「あの聖杯をゴットハルトに持ち込んだのはユグドミレニアだからな」
    突然のカミングアウトに一時硬直するマルグリット。ルーナは知っている為かいつのまにかおかわりしたカレーに何か赤いソースをかけている。恐らく愛用の激辛ソース「アフターバーナー」だろう
    「……え?先輩が、聖杯を持ってきた、て……え?」
    ジト目だったコバルトブルーの瞳が大きく見開かれる。流石にスプーンを落とす事はしなかったが、中々に面白い顔をしている
    「何‥…八百長?」
    「んなわけあるか」
    言うに事欠いてそれか。俺はそんな真似はしないって知ってるだろうが
    「聖杯を持ちかけて聖杯戦争をするように仕向けただけだ。その分情報面で一歩先んじてたけどな」
    亜種聖杯戦争に於いて、セイバークラスのサーヴァントはやはり競争率が高い。安定したステータスと伝承における強力な英雄の多くが剣を武器に持っている事が多いからだ
    円卓の騎士、シャルルマーニュ十二勇士は当然、ジークフリートやカルト神話はフェルグス等が該当する
    そして、俺の召喚したシグルドら並み居るセイバークラスの中でも間違いなく最上級の英雄
    彼をセイバーとして召喚できたのも俺が他者より先んじて召喚儀式に及ぶ事ができたからだろう

  • 130二次元好きの匿名さん23/12/02(土) 21:33:56

    最上位のセイバーの中でもシグルドじゃねぇと詰んでた場面が結構多いな。

  • 131二次元好きの匿名さん23/12/02(土) 22:06:39

    他のセイバーが強い弱い関係なしにシグルドじゃないと詰みポイントが多すぎる……!

  • 132二次元好きの匿名さん23/12/03(日) 08:04:41

    シグルド先手で呼べるのはバクアドだよね、問題はそれやっても尚薄氷の勝利ってことなんじゃが

  • 133二次元好きの匿名さん23/12/03(日) 15:49:05

    >>132

    本来ならアタランテが霊核抜いた時点で勝ちなんだけどなぁ

  • 134二次元好きの匿名さん23/12/03(日) 16:11:52

    すまないさんだと先の最終戦で背中を撃ち抜かれて敗退、ローランを呼んだとしても似たような形で敗退、シグルドでやっと薄氷の勝利かぁ…ヤバくね?

  • 135二次元好きの匿名さん23/12/03(日) 21:09:49

    >>134

    ヤバいぞ、というかまじで誰でも勝てる可能性あるレベルの超良環境()な聖杯戦争だった

  • 136千界樹の記録23/12/03(日) 22:06:25

    「ま、俺も魔術教会から誰かしら来るのは想像していたし、聖堂教会からも代行者の1人は来るだろうと思っていたが……」
    隣へ目をやると、俺とマルグリットの皿とは違って、赤く染め上げられたカレーをそれはそれは大変美味しそうに頬張っているルーナがいる
    「第八秘蹟会、それも私が来るとは思わなかった?」
    「当然だろう。精々何年モノの弟子持ちが来るくらいだと思ってたわ」
    それでも普通に考えるとめんどくさいのにな。一年以上生き延びる事ができる存在でも相当の上澄みに当たる。その中から来るだけでも相当なのに、よりにもよって来たのが第八秘蹟会、その鬼札ときた
    「は?第八秘蹟会?」
    寝耳に水、と言った様子でポカンとしてるマルグリット。そう言えば、俺は大分前からコイツの事を知っていたが、マルグリットは知らなかったのか。代行者と言ってもピンキリだし上澄みという事は想像していたのだろうが、まさか特級にヤバい連中の更にやばい奴が目の前にいるとは思わないだろう
    まあ、ヤバさで言えば埋葬期間と言う超抜級にヤバい組織があるが、通常出てくるメンツの中ではトップクラスに危険な存在である事には変わりない
    「え、この人……第八なの?」
    「そうだよ。第八秘蹟会の中でもトップランクな危険人物」
    魔術教会でも手配されている聖堂教会の危険リストにも常に載ってる様な化け物中の化け物。時計塔のロードですら恐らく正面から対抗する術は無いだろう
    その事実を知った瞬間、僅かに椅子をずらしてルーナから離れたマルグリット。その表情も少なからず凍り付いてる様に見える
    「そんなに露骨に引かなくても良いじゃない。お姉さん傷つくなぁ〜」
    「埋葬機関にすら入れそうな人材がほざいてやがる」
    て言うかコイツ、一度スカウトされたんじゃなかったか?第八秘蹟会の鬼札だからと入ることは無かったらしいが
    「埋葬機関に入るならもっと天変地異級の攻撃方法が無ければ入れませーん」
    「……魔術師にとっては対して変わらないじゃない」
    確かに。て言うかあの戦鎚一つで魔術師どころか死徒すらもあっという間にミンチにできる。更に洗礼詠唱も普通に使えるし、俺たちにとっては変わらないどころかむしろ素で魔術がほとんど効かないコイツの方が遥かに脅威だしな
    「なんでそんな人がこんな聖杯戦争なんかに出て来てるのよ」

  • 137二次元好きの匿名さん23/12/03(日) 22:15:28

    >>135

    シグルド

    アタランテ

    ヘクトール

    コンスタンティノス

    キルケー

    静謐のハサン

    土方歳三

    シグルドがぶっ飛んでるけど十分戦術次第で勝ち切れそうだな確かに

    でもコレ見てると静謐とキルケーを早々に潰したのが英断過ぎる

  • 138二次元好きの匿名さん23/12/03(日) 22:17:18

    >>137

    なんならキルケーは時間たったら屍神も一緒に出てくるクソ ゲーになるとこだったという

  • 139二次元好きの匿名さん23/12/03(日) 22:22:22

    今考えても、シグルド相手に傷を負わせた土方さん本当にスゲェよ。

  • 140二次元好きの匿名さん23/12/03(日) 22:38:05

    >>139

    肉体へのダメージによる劣化を無視できるってのがミソよね

    初見殺し性能が思ったより高いし、仕切り直しである程度は回復できる

  • 141二次元好きの匿名さん23/12/03(日) 22:40:16

    >>140

    そんでマスターが武闘派の魔術使いだからマスターを補足できりゃ土方がダメージ無視でサーヴァント抑えてマスターを呪殺するみたいな戦法も取れるから相性は良かったのよね

  • 142二次元好きの匿名さん23/12/03(日) 22:55:26

    改めて見直したけどここのヒッジも最後の最後まで戦いながら消えて行ってるのな…

  • 143二次元好きの匿名さん23/12/04(月) 07:04:29

    朝保守

  • 144千界樹の記録23/12/04(月) 08:48:09

    マルグリットの疑問は当然だが、コレばかりは魔術師の俺たちには理解できない信仰云々も介在している。第八秘蹟会は異端と深く関わる組織。特に聖杯に関する事に対しては相当深く踏み込む事がその本分
    「この聖杯を奪りに、仕事でね」 
    「模倣品の聖杯にご苦労な事だ」
    「あら、その本体に用いられてる聖遺物は十分聖杯と認定できるモノじゃない?」
    同時のドイツが必死になって蒐集した聖遺物の大部分を用いて造られた大聖杯の模倣品
    当然、聖堂教会としては確保しておきたいだろう。それこそ、実力行使も辞さないだろうが、流石に外部から介入してもサーヴァントを相手にする事を考えれば正式に参加して勝ち獲った方が周囲からの茶々入れもしづらく、堂々と持ち帰れる
    「聖杯戦争に参加して合法的に奪えればそれに越した事はないからねー」
    そして、例え敗北したとしても聖杯戦争終結後に力尽くで奪い取れば良い。聖堂教会にとっては正義は彼らにあるのだから
    「その為に第八秘蹟会の構成員の一部は代行者が勤めているからな」
    「うわ……」
    結局実力行使なんだ…と呟くマルグリット
    「別に今すぐってわけじゃないわよ?凌我君に叶えたい願いがあるならそれまで待ってるつもり」
    「じゃなきゃギアススクロールに縛られて手が出せないからな」
    流石に幾ら魔術が効かないとは言え、同意の元で結んだ契約は有効だ。ギアススクロールの強制力は魂に作用する
    「それで?凌我君は、聖杯に何を願うのかなー?」
    お姉さん知りたいなー?と、隣から擦り寄ってくる代行者
    「代行者。こう見えて私、対魔力を貫通する術式も持っています」
    「いやん、マリィちゃんこわ〜い」
    懐から見覚えのある書式の札を取り出すマルグリットに、態とらしくおどけて見せるルーナ。仲が良いのは良い事だ。うん
    「ま、あの聖杯も全く願いを叶えられない訳じゃあない。今の状態でも願望機としての機能は備えている。そこまで大それた願いは叶えられないがーーー」
    「凌我君の願いは、叶えられる範囲の事なのでしょう?」
    「元々聖杯戦争に勝つことが目的なんだから、ふと沸いた程度の願いなんでしょ」
    言いたい放題言ってくれよってからに……ま、間違いではない。俺が聖杯に賭ける望みは、ほんのささやかな、それこそマルグリットの言う通りふって沸いたモノだ
    「ーーーちょっとした、人探しをな」

  • 145二次元好きの匿名さん23/12/04(月) 16:31:26

    保守

  • 146二次元好きの匿名さん23/12/04(月) 22:32:14

    夜保守

    ルーナちゃん埋葬機関に…いやでも流石に天変地異じみた攻撃方法は持ってないのか

  • 147千界樹の記録23/12/05(火) 07:26:22

    食事を終えて凌我は2階の自室、ルーナとマルグリットは1階の部屋で寝ることとなった。凌我は極度の消耗もあってか部屋へ戻るとベッドに倒れ込んでそのまま死んだ様に眠りに着く
    最早聖杯戦争も終わった事で必要ない方も思ったが、万が一に備えてセイバーがルーンで結界を施す
    1階でもルーナが秘蹟による結界を張り、マルグリットとともに眠りについた。その前に一度どちらが凌我と一緒に寝るかどうか議論をしようとしたが、マルグリットの方が体力の限界でベッドに沈んでしまったから、仕方なくルーナも目を閉じた
    ならば、今ルーナの目の前に広がる景色は夢なのだろう。何しろ見覚えのある、懐かしい景色だった
    ルーナの生まれ故郷はイタリアの北部。彼女は其処で酪農家の娘として生まれた。突然変異と言って良いだろう。彼女の両親は神秘に何一つと関わららのない人であり、両親の家系もまた神秘に触れる事は殆どない、そんな家庭に生まれた彼女はそれでいながら圧倒的な神秘を携えていた。魔術も秘蹟も知らない彼女は、自分から溢れている魔力の正体に気がつく事なく、故に悲劇を呼び込むこととなる
    ーーー不運としか言えないだろう。彼女の生まれ故郷のすぐ近くには、聖堂教会と対立する悪魔信仰の隠れ家が存在し、彼らが真っ先にルーナのもつ才能を見つけ出したのだから
    手始めに彼らは彼女の故郷に呪いを振り撒き、その呪いは疫病となって小さい村を覆った。現代社会とは言えイタリアの小さな酪農をや農業を主とした小さな村だ。あっという間に呪いに飲み込まれてしまう事だろう
    疫病が蔓延した小さな村の住民は次々と倒れ、彼女の両親もまた彼女を遺して行くこととなる
    幼い彼女は、自身だけが生き残ったと言う事実を捻じ曲げて受け止めてしまう
    自身の脅威的な神秘への素質が呪いを容易く弾き、その為に生き残ったのではなく、自身から漏れ出る魔力が故郷の皆を、大好きだった両親を奪って行ったのだとーーー
    神秘への知識など何一つとしてない幼子にとっては、目の前の事象をそう捉えるのはなにも不思議なことではない
    目の前の現実に絶望し独り啜り泣く幼子の前に、邪教の者達がやってきた
    「君は悪くない。生き残った君は特別な人間なのだから」
    そう嘯いて、彼らは幼い彼女を自分達の神殿へと連れ出した。自分達は神の使いであると囁く彼らを幼い彼女は無条件で信じ込んだことだろう

  • 148二次元好きの匿名さん23/12/05(火) 08:43:30

    のっけから重!

  • 149二次元好きの匿名さん23/12/05(火) 11:49:25

    昼保守

  • 150二次元好きの匿名さん23/12/05(火) 21:28:08

    保守

  • 151二次元好きの匿名さん23/12/05(火) 22:55:40

    お、この流れだとルーナとマルグリットの過去編かな?

  • 152千界樹の記録23/12/05(火) 23:42:24

    今更ながらに笑ってしまう。全ては彼らが仕組んだ自作自演であったのに
    神殿で幼い彼女は、運命の子と呼ばれ保護という名の隔離を受ける。彼女に対して邪教の者達は彼女を讃える
    「君は神に選ばれた子だ」
    「神の巫女として、我らを導くのだ」
    そう言われ、幼い彼女はそのもの達の言葉のさに従い、その時を迎える
    彼らの目的は彼女の肉体を依代に、彼らの信じる神ーーー魔の類いを呼び寄せる事
    隠れ家の奥で行われた冒涜の儀式。彼女は何も知らぬまま、彼らの言葉の通りに描かれた魔法陣の中央に立つ
    男達が呪文を唱えると、彼女の周囲を悍ましい魔力が囲んでいく。しかし、魔術も神秘も知識など何も持たない少女には、それが恐ろしいものであると言う認識は無く、男達の言うがまま、役に立ちたいと言う純粋な心でその場に立っていた
    魔力は悪魔を呼ぶ為の呪文に呼応して少女の体へと纏わりつく。ここにきて初めて、少女は自身を囲む魔力が、怖いものなのではないかと感じた
    元来、唯の人間には見えもしない、感じることのないものではあるが、彼女の素質は余りにも凄まじいものである故に、逸早くその存在を感知できたのだ
    しかし、少女にとって、それがどれ程怖いものであったしても彼女にとって周囲にいる彼らは自分を助けてくれた恩人なのだ。他ならぬ彼らが自信を必要としてくれるなら、それに応えたい。彼女はその一心で恐怖に向き合っていた
    やがて彼女に纏わりつく魔力が彼女の体を蝕み始める。その魔力は文字通り、魔の存在が生み出した物で、この世ならざる「悪魔」と呼ばれる存在の、ものである。この魔力が少女の肉体を取り込み、侵食することで、少女を「悪魔憑き」として新生させ、彼らの信仰の対象がこの世に肉体を得る。これはその為の儀式であるのだ
    「うああああ!!」
    悍ましい魔力に身体を蝕まれると言うのは、想像を超える苦しみがある。少女は立つこともままならず倒れ込んで悲痛な叫びをあげる。自身の身体に入り込んでくる何かに怯えながら、その苦しみに耐えることしか出来ない
    もう間も無く、少女を蝕む魔力はその肉体だけで無く魂をも冒し食らうだろう。幼子の魂程、悪魔の降臨に相応しい供物は無いのだからーーー
    「ーーーどうした?」
    呪文を唱える彼らの中の1人が、隠れ家が騒がしくなっていることに気がついた。またぞろいつもの様に生贄でも持ってきたのかと思ったが、どうやら違う

  • 153二次元好きの匿名さん23/12/05(火) 23:50:00

    >>151

    初っ端から凄まじく悲惨な事になってますね…

  • 154二次元好きの匿名さん23/12/05(火) 23:51:53

    さて誰が助けに来るのか、第八所属の既出代行者っていたっけ?

  • 155二次元好きの匿名さん23/12/06(水) 08:20:14

    保守

  • 156千界樹の記録23/12/06(水) 08:51:33

    微かに流れる風が運んできたこの匂いはーーー聖水!
    「敵だ!!」
    男が叫ぶと同時に、隠れ家の入り口付近で見張りをしていた筈の仲間が煉瓦造りの壁が割れるほどの勢いで叩きつけられた
    力無く砕けた煉瓦の破片と共に崩れ落ちる大男。覆面の下は既に見る影もなく歪んでおり既に事切れていた
    吹き飛ばされた男が飛んできた方向からコツコツと、乾いた靴の音が響く。蝋燭の灯りに照らされて徐々にその姿が暗闇から浮き出てきた
    「天に在します我らが父よーーー」
    十字架を片手に聖句を唱える低い男の声。揺らぐ蝋燭の灯りに浮かび上がる輪郭はブレることなくカソックも揺れることなく真っ直ぐなまま歩いてくる
    「ーーー願わくば、御名の尊ばれん事を」
    現れたのは聖堂教会、その代行者である
    「代行者か!」
    儀式を行っていた4人の男はすぐさま臨戦体制に入る。その中の1人が現れた代行者へ牽制を仕掛けた
    「ガンド!」
    指先から放たれる呪いの弾丸。北欧に古くから伝わる呪詛の一つで本質としては体調不良を齎す程度の地味な魔術であるが、邪教に染まった男が放つガンドは魔の力を帯び、当たればそのまま心臓を止めかねない強力な呪いへ変貌している
    「フンッ!」
    だが、そんなものは代行者には通じない
    現れた代行者は、カソックの懐から柄をを3本、其々指で挟む様に取り出す。代行者が魔力をその柄に流すと、細長い刃が瞬きの間に展開される。これは聖堂教会、その代行者が用いる概念武装の一つ「黒鍵」
    魔力で形成された細身の刃は、見た目通りに脆く、そのまま刀剣として用いるには心許く、マトモな武具と数度撃ち合えば欠け、拳銃弾程度を弾けば折れるだろう
    主な使用法は投擲による攻撃だがそれだけならば拳銃を使った方が当然早いし威力も安定している
    その為余程自身の技量に自信のある者でなければ代行者とてやすやした手を伸ばす代物ではなく、逆説的にこの黒鍵を好んで用いるものは、代行者としても高い実力者である事の証明にも繋がるものだ
    代行者の男から矢の様な疾さで打ち出された黒鍵の銀の刃は、魔法陣を囲む邪教の男達の胸を容易く貫く。当然男達も客観を見た瞬間に防御の術式を張ろうとしたものの、代行者の投擲はそれよりも速かった
    最後に残された邪教衆の頭目らしき男だけは防御の術式が間に合い、自信を貫かんとした黒鍵を防いだが、それも束の間。代行者は凄まじい速さと勢いで既に男に肉薄していた

  • 157二次元好きの匿名さん23/12/06(水) 09:04:31

    男性で黒鍵を使う人…言峰かカラボーさんかな?

  • 158二次元好きの匿名さん23/12/06(水) 09:25:21

    八極拳したら言峰だな

  • 159二次元好きの匿名さん23/12/06(水) 20:37:28

    さて、この聖杯戦争に言峰が出ているから多分言峰が救出したのかな?

  • 160二次元好きの匿名さん23/12/07(木) 04:41:54

    保守

  • 161千界樹の記録23/12/07(木) 07:29:29

    「ーーー馬鹿な」
    魔術による移動ではない。それならば容易く感知するし自動迎撃の魔術もある。しかし、代行者と己は5m以上の距離があった。それを一切知覚させぬまま一息に近付くなど、神秘も無しにいったいどの様な手段がーーー
    「一足ーーー」
    代行者は男の疑問に答える事なく、粛々と己の使命を果たす。腰溜めに構えた右腕の拳は縦に構え、真っ直ぐに男の胸板を捉えていた
    「ーーー一倒!」
    独特の構えから繰り出された拳は男の胸を抉る様に突き込まれ、先程の黒鍵も斯くやと言う勢いで吹き飛ばされた
    今の一撃で完全に心臓を破壊した。例え魔術刻印があったとしても、邪教の男を生かすことは不可能だろうーーー
    「ーーーぁ」
    その光景を最後に、少女の意識は薄れていく
    足元から全身に回る激痛と悍ましい魔力に当てられた彼女は、最早限界をとうに超えていたのだ

    見当識を失ってどれくらいの時間が経ったのだろうか、彼女から目を覚ましたのは、村に立っていたボロボロの教会である
    建物自体が古く、手入れもされていなかった建物の中には、明らかに不釣り合いな真新しいベッドが置かれており、自分がそこに泣かされている事に気がついた
    「ーーー目は覚めたかな?少女よ」
    何処かで書いた様な、低い男の声。その声の聞こえた方向へ顔を向けると、そこには意識を失う間際に見た男が何か、両手に皿の様なものを持って立っていた。どうやら食事を持ってきたらしい。まだ少し離れているものの、少し鼻に付く香辛料の香りが鼻を刺す
    「やはり、あの程度の事では多少意識を失う程度で済むか……」
    男は近くに置いてあったらしき、これまたボロボロの教会には不似合いな新しい椅子に腰掛けて両手に持った皿の片方を少女へと差し出す
    「食べたまえ」
    少女は状況を何もわからぬまま差し出された皿を受け取る。その皿に盛られている料理の様なものは、初めて目にするものであった
    料理の様なものーーー少なくとも少女の知識には、これ程の刺激臭を発する真っ赤な物は料理として存在しないのは確かである。多少なら距離が空いていたにも関わらず鼻を刺す様な臭いが、こうして手元に来ると一層強く鼻腔を抉る様に薫ってくる

  • 162二次元好きの匿名さん23/12/07(木) 07:38:44

    お〜言峰か、って待て待て待てぃ!何食わせようとしてんじゃい!!

  • 163二次元好きの匿名さん23/12/07(木) 08:25:03

    こんな片田舎でって…持参してきたのかお前

  • 164二次元好きの匿名さん23/12/07(木) 08:30:02

    これ代行者が辛いもの好きなんじゃなくて辛いもの好きが布教して行った結果代行者=辛党になったパターン?

  • 165千界樹の記録23/12/07(木) 08:54:25

    「ーーーっ、ーーー。ふぅーーーっーーー、ふぅ」
    男は少女が手にしているのと同じ料理が盛られた皿を片手に、一心不乱にスプーンの様な道具でその赤いドロっとしたスープの様なそれを口に運んでいる。額に滲む汗は料理の熱さだけが原因ではないだろう
    これは、絶対にーーー辛い
    立ち上る湯気と一緒に感じる匂いからして辛いのが理解できる
    しかし、あの時よりどれほどの時間が経っているのかは分からないけど、お腹が減っているのも事実
    何より、お出しされた物を食べないのは失礼だと両親に教えられた少女は、恐る恐るスプーンの様な道具を手に、その料理を掬う
    チラ、と神父らしき格好の男は変わらず自信が持ち込んだ料理を食べすすめている
    「……いただきます」
    意を決して、その料理を口にした
    「ーーーッ!!」
    辛い。余りにも辛い。もはや辛いを通り越して辛(つら)い
    少女自身、田舎で暮らしてきたとは言えそれなりに街へ繰り出す事もあったし辛いものを食べる機会も当然あった
    だが、今口にした料理はこれまで食べてきたどんな辛い料理とも、段違いに辛かったし、異質な辛さであった
    (舌が…‥ピリピリするぅ)
    後に彼女が知る事になるが、西洋の唐辛子などを用いた辛い料理と違い、東洋での辛味は山椒の様に一味違う辛味をもたらすのだが、初体験の少女が口にするには、この料理ーーー泰山の麻婆豆腐は余りにも刺激が強いだろう
    後々知る事になる中だが、この男は完全に善意でこの料理を少女に食べさせたのだと言う
    それはそうとあまりの辛さに一瞬意識が飛び掛かる程の衝撃を受ける。それ程に辛い
    あっという間に額に汗が滲み、鏡があれば、顔も舌も真っ赤になった自分が見れた事だろう
    これまでに体験したことのない辛さで、思わず皿ごと落としそうになったが、亡き両親の教えが寸での所で留まらせた
    なんとか、なんとか必死の思いで、食べすすめていく。どうやら男の方は既に完食したらしく空のお皿をどこから持ってきたのか、金属製の入れ物に仕舞っていた

  • 166二次元好きの匿名さん23/12/07(木) 09:00:37

    ウッソだろお前完食できたんか!?…元々素質あったのかな

  • 167二次元好きの匿名さん23/12/07(木) 10:03:06

    >>166

    なーにイリヤだって完食したんだしヘーキヘーキ(目逸らし)

  • 168二次元好きの匿名さん23/12/07(木) 10:04:11

    >>167

    あの〜別世界とはいえアイリさんと遠坂ルヴィアが撃沈してるんだけど…

  • 169二次元好きの匿名さん23/12/07(木) 14:56:55

    紅洲宴歳館・泰山イタリア店でもあんのかよ!

  • 170二次元好きの匿名さん23/12/07(木) 20:12:47

    夜保守

  • 171千界樹の記録23/12/07(木) 23:02:11

    「……っ……っっ!」
    涙目になりながら食べ終わった頃には、多分唇は腫れ上がっていたことだろう
    「さて、腹拵えも済んだ所で、君に伝えなければならない事が沢山あるがーーー」
    お腹が、お腹がピリピリするぅ……
    「まずは君自身のことを知るのが先決だな。現実とは自身にとって悪夢である事も多いが……」
    と、男が手鏡を渡してきた。男の言葉の真意を理解できないままにその手鏡を受け取る
    「ーーーえ」
    鏡に映る自分の姿は、とても自分の顔というふうには見ることができなかった。自分の顔のソレは、余りにも違っていた
    酪農を営んでいた村娘の、微かに日焼けした肌は、生気の抜けた人形の様な白い肌へ
    母親譲りの焦茶色の髪は、何もかも無くなったかの様な白銀へ
    父親譲りの、自慢だった青み掛かった灰色の瞳は、薄気味悪い程に透き通る様な金色にーーー
    この顔をいきなり自分のものだと言われたら、絶対に信じられる様なものでも、出来事でもない
    「あの儀式の影響だろう。君の身体は少なからず魔に憑かれた影響を受けている」
    男の言葉は、半分も理解する事はできなかったが、少なくともこの顔が元に戻る事はないと言う事は理解できた
    「わた、しーーー」
    「さて、この上で、君には二つの選択肢がある」
    男は震える声で呟く少女へ向け、その傷を開くかの如く鋭利な言葉を投げかける
    「一つは、全てを忘れ姿勢に戻る事。今ならまだ君は神秘の入り口にいるに過ぎない。このまま後へ、元の世界に戻る事も叶うだろう」
    「……」
    「もう一つは、私と共に来る事だ。この様な悲劇は私達にとっては珍しい事ではないが、悲劇であることには変わりはない。悲劇を知った者は、のちに続くだろう悲劇を食い止める事もできるだろう」
    男の言葉は、悲劇によって切り裂かれた少女の心を開く様に入り込んでゆく。どの道、少女の住んでいた村、両親を含む住民は全て命を落とした。全てを忘れ市勢に戻ったとて少女を受け入れる場所も人も既に亡い
    彼女の行く道は選択肢がある様で事実上一つの道しか残されてはいなかった。悲劇を知った者は後に起こるだろう悲劇を止めるーーー正に男の言葉の通りの道を選ぶほか、少女には道はないのだから
    「……決まってる」
    この日、イタリアの片田舎で生まれた少女はこの世から消えてしまったーーー
    残されたのは、魔の儀式で作り替えられた嘗ての少女の形をした別の生き物
    それが、私の始まりだった

  • 172二次元好きの匿名さん23/12/08(金) 08:55:14

    朝保守

  • 173千界樹の記録23/12/08(金) 09:45:53

    あの日から、私の世界は反転した
    あの男ーーー言峰綺礼と言う神父に拾われた私は彼と同じ代行者としての道を歩む
    並の者なら修行の段階で命を落とす事もそう珍しい事ではない様だが、私にとっては特段語る様な事はない
    元々私は神秘に対して異常な程に高い素質があったらしく、元々はそれを狙った異端者共に村を潰されたのだからさもありなん。と言ったところかな
    「君は世が世なら時計塔のロードにすら容易くなれるだろう」
    とは言峰神父の言葉だったけど、別に魔術に興味はない。言峰神父からは多少なりとも魔術の手解きは受けたけど、あの人魔術師の師が居たらしい
    ……異端?
    とまあ、冗談は置いておいて、普通なら1年も経つ頃には凡そ命を落とすと言われている代行者の寿命だが、私は気が付けば既に7年の月日が経過していた
    私の仕事は主に世界各地に散らばっている聖遺物や神の遺物と呼ばれる品々の回収。偶に死徒等の討伐だ
    最近滅ぼした上級死徒が抱えていた「天使」に纏わるとされる異物を改修した事で、この度秘蹟会のトップから「守護」の概念武装を授与された事もあって、今の私はノリに乗っていたと言える
    魔術師を相手に立ち回る事もそれなりにあったけれど、私がこうなったのも魔術師崩れの邪教連中のお陰なこともあって割と恨みは骨髄に戦鎚でぶん殴ることに決めている。特に「守護」の概念武装『銀狼』を得た私に対して魔術で傷つける術は最早殆どないに等しく、現代魔術師が私に勝つ等不可能に近い事もあり、代行者のーーーいや、聖堂教会の中でも「第八秘蹟会の鬼札」と呼ばれる様になって言ったのも当然と言えば当然だ
    そんな折、私に舞い込んだ指令が一つ
    『「聖血」を奪ったと思しき死徒が極東で目撃された』
    つまりその極東に行って死徒から「聖血」を奪い返せ、後ついでに死徒も潰してねと言う事
    いつも通りと言えばいつも通りの任務
    飛行機でイタリアから極東に飛んだ私は、軽い観光気分もあって多少ウキウキしながら極東ーーー日本へと向かった
    何せ日本には、あの泰山があると言う。現地で食べる麻婆豆腐はさぞ美味しいだろうと、心が躍っていた
    ーーーそして、私に一つの出会いが待っていた

  • 174二次元好きの匿名さん23/12/08(金) 10:43:52

    キャー///奥さん!これは凌駕くんとのFateですよ!間違いない!!!

  • 175二次元好きの匿名さん23/12/08(金) 12:33:37

    >>174

    お、そうだな!

    (凌我側のモノローグから目を逸らす)

  • 176二次元好きの匿名さん23/12/08(金) 19:43:55

    夜保守

  • 177千界樹の記録23/12/08(金) 23:30:07

    日本に到着した日の夜、早速情報のあった場所へと向かう。修道服は流石に目立つ為に私服の白い長袖の服シャツの青いスカート姿だが、これも少々浮いているかもしれないと思いながら目撃情報を頼りに探知の網を広げていく
    「さて……どんなものかね」
    「聖血」を奪った死徒は力そのものは大したことはないらしいが、妙な力で逃げ回るらしい。だが、私の持つ術式というより特技があれば索敵も容易い。靴の底にある金属の部品が地面を叩く度に魔力を載せた振動の波が広がり、超音波のように反射させることで周囲の情報を取り込む
    魔術的な欺瞞も視覚的な偽装も通じることはない。物理的に其処に存在しているのなら逃げられはしない
    どれだけの高精度の結界を張っていようと姿を隠そうとも空気があり、音が伝わる以上はあらゆる情報がリアルタイムで感知できる
    「……!」
    魔力波の反射がわずかに乱れた。探知したのは周囲とは明らかに異質な魔力
    魔術師のものでもない。さらに言えば人間の魔力ですら無い。魔力の波は当然地形情報や動体の形状等も把握することができる
    拾うことができた情報からして、答えは一つだろう
    「みーつけた☆」
    異質な魔力の持ち主は影に隠れるように動く。この動き方からして、なにかから逃げているようにも感じ取れる。
    自分の存在が気づかれた訳ではないだろうが、人通りの多いところから一気徐々に人通りの少ないところへ向かい、そしてやがてたどり着いた場所は―――
    「古い日本家屋……」
    かなり大きい日本家屋の中へと入っていく。しかし、そこで波が途切れてしまった。どうやら相当強力な結界を張ってあるらしい。音が伝わるなら届く魔力の波さえも遮断してしまうほどの結界とは、明らかに怪しい。というよりそれなり以上の魔術師の屋敷なのだろう
    下手をすればこのまま逃げられる恐れもあるし……このまま手をこまねいている訳にも行かない。最悪魔術師と死徒を同時に相手取らなければならないだろうが、仕方がない
    「おじゃま〜」
    正面から堂々と侵入する。結界を通ったことでこの屋敷の魔術師には自分の存在が気取られただろうが、死徒だけとっとと始末して撤収すればいいだろうと思い―――その光景に目を疑った

  • 178二次元好きの匿名さん23/12/09(土) 08:39:39

    これが出会いか

  • 179二次元好きの匿名さん23/12/09(土) 09:03:21

    あ、白い服と青いスカートってアルトリアが着てたやつか

  • 180二次元好きの匿名さん23/12/09(土) 12:12:51

    昼保守

  • 181二次元好きの匿名さん23/12/09(土) 21:24:13

    夜保守

  • 182千界樹の記録23/12/09(土) 23:06:23

    うそーーー」
    死徒が結界の中に入ってから私が突入するまで、ほんの十数秒しか経っていない
    死徒とは、所謂吸血鬼をイメージすると大体間違ってはいない
    人間が後天的に吸血鬼化した者。吸血種の頂点たる真祖、若しくは他の死徒によって血を吸われ、人より変質した存在をそう呼ぶ
    その力は文字通りピンキリだが、どう転んでも言えることは人の力からは外れた存在だと言うことだ
    それが、ほんの十数秒視界から離れている間に、この様なーーー
    たった一人の若い魔術師に倒される様な存在では決して無い
    眼前に立つ魔術師らしき男の足元に、先程まで追跡していた死徒がバラバラに解体されて絶命していた。体の一部は完全に凍結されている様だ
    幾ら力のない部類の死徒と言えども死徒であることには変わらない。しかもほんの十数秒も経たない内に滅ぼされているなどと、想像のしようもなかった
    「ーーー全く、餌に食いついた奴がとんだハズレだったとはな」
    男が振り返る。丁度年代的には私とそう変わらないくらいの青年の様だった
    濡れた様な質感を持った黒い髪。同じ様に黒いコートを羽織った姿は日本家屋には似つかわしくは無いものの、その顔つきはやはり東洋の人の様だ
    その藍色の瞳は強い決意と哀しみを湛えた光を放ち、私の姿を映す。身に纏う雰囲気は静謐だが、強い気迫を感じる
    「あら、お目当ての相手じゃなかったかしら?」
    「とんだハズレを引かされたよ。折角の撒き餌だったのに、な」
    魔術師は魔術回路を励起させる。魔力そのものはこれまで出会った魔術師の中でもそこ迄高い訳では無い
    しかし、操作は緻密な工芸の様でもあった
    「へぇーーーやる気なんだ?」
    私服から修道服に切り替える。秘蹟で軽量化を解除して修道服の隙間から戦鎚を取り出し、魔力振動を発振させる
    「……このまま回れ右をすれば、見逃してやったんだがな」
    溜め息を吐きながら、服の襟を直す魔術師の男。魔術回路から迸る魔力の質が変わる
    「今の俺は機嫌が悪いんだ。うっかり死んでも化けて出るなよ?」
    「へぇ……」
    戦鎚を担ぐ様にして姿勢を低くとる。魔術師の方も懐から小さい小瓶の様な礼装を取り出した
    「じや、行くわよーーー」
    砂利を蹴り込んで、魔術師へと突撃する

  • 183二次元好きの匿名さん23/12/09(土) 23:14:38

    凌我くん余裕そうにしているけど、この後ボコボコにされるんだよね。

  • 184二次元好きの匿名さん23/12/09(土) 23:23:40

    >>183

    死徒は瞬殺出来てもルーナちゃんにはそもそも魔術効かないからね…

  • 185二次元好きの匿名さん23/12/10(日) 08:59:52

    朝保守

  • 186千界樹の記録23/12/10(日) 18:08:38

    「ふぅーっ!」
    奇手奇策は打たない。真っ向から突貫する私の様子に、男は呆れた様子で嗤う
    「ーーー馬鹿が」
    「ーーーっ」
    恐らく、先の死徒を滅ぼしたものと同じ仕掛けだろう四方から僅かに振動のブレが伝わる。恐らくそれなりに大掛かりな魔術だろうが関係ない
    「その前に、仕留めればね!」
    戦鎚を振り上げる。魔力振動を放つ戦鎚の一撃は直撃させればそのまま爆散、たとえ掠っても伝播する振動が相手を内側から臓腑を破壊する
    そして、魔術的な要素を無くしても単純に1.8tという超質量の塊を振り回す一撃を前に耐えられる生物はそうは居ない
    そして、後一歩というところまで肉薄したところでーーー
    「じゃあな。代行者」
    一歩もその場を動かない魔術師が指を鳴らした瞬間、この場に仕掛けられた術式が起動、四方からまるでレーザービームの如き水鉄砲が飛んできた
    「!?」
    放たれた水は凄まじい威力と勢いで発射され、まるでダイアモンドカッターの様な威力で私に牙を剥く。その速度は速く、気がついた時には回避は困難であった。これはもう、直撃を受けるしか無いだろう
    (成程、これで死徒をバラバラに解体して仕留めたのね)
    感心してる間も無く、四方から放たれた水流はルーナの元へ殺到する。例え魔力防壁を貼ったとしても四方からの同時攻撃に対処する様なやり方では悉く貫通してしまうだろう。水流自体も銃弾の様な速さの為、思考そのものは追い付けても肉体の動作が間に合わない
    そして4本の激流は先の哀れな使徒と同じ様に、ルーナの肉体を容易く解体ーーー
    「なんてね♡」
    するはずも無く、いとも容易く自身の対魔力によって弾き返される
    「ーーーな」
    魔術師の青年も、こうしてまるで意に介さないレベルで無効化されるとは思っても居なかったのだろう
    魔術師と言う人種はいつもこう。自分のやることなすことが必ずうまく行くと言う幻想に縋りつき、その幻想が破られたら、破られたと言う現実を受け入れられずにこうして致命的な隙を晒す
    たかだか相手が魔術に強い対抗力を持っていた程度、想定して当然だと言うのに、どうしてこうも馬鹿ばかりなんだろうかと常思う
    目の前の彼もそう。すでに自分の間合いに踏み込まれていると言う現実を理解していないのか、惚けたまま固まってるし
    全くーーーちょっとだけでも期待した自分が馬鹿らしい
    「じゃあね。魔術師さん」

  • 187千界樹の記録23/12/10(日) 23:20:17

    せめて皮肉に同じ言葉を返してやって、後はいつも通りに戦鎚を振り落とすだけ。この時点で我に帰ってももう遅い。例え障壁を緊急展開したところで、この戦鎚の放つ振動は物理的なものだけで無く、魔術的なものにも効果を持つ。例え厚さ1mを超える鉄塊も、幾つもの小節を結んだ魔術防壁も同じ様に振動の強振増幅により粉々に砕け散るのだから
    そう、思っていた
    「ーーー『氷棺 閉ざせ』!」
    「!!」
    今更魔術詠唱の一つ、何の意味がと思った刹那、振り上げた腕を下ろせない。目の前にいる標的は、冷や汗を流した顔を上げて不敵に笑う
    「悪いな。俺をその辺の魔術師と一緒にするなよ」
    至近距離はまずい、そう思い後ろへ飛び退こうとして、気づく
    「氷……!」
    肩口から腕全体を覆う様に、氷が覆っている。しかも、これはただの氷では無い。修道服越しのはずなのに骨まで凍りついたかの様な冷気だ
    通常の魔術ではない。身体を見渡せばさっきの魔術を弾いた時に、魔術そのものは弾き飛ばしたものの、飛沫となった水は身体に掛かってしまったのを無視したが、それをこの氷の触媒にしただろう。私の対魔力を貫通する魔術など、そんなものは教会の秘蹟くらいしか無い筈なのにーーーいや
    「呪術ーーー!」
    「正解だ」
    東洋の呪術は西洋の魔術とは違い魔力で神秘を成すのでは無く、魔力を燃料に自身の身体を触媒として物理現象を引き起こすものだ
    用いられるものは魔力と神秘でも、出力される形はあくまでも物理現象。そして、故に魔術に対する対魔力を貫通する神秘となる
    だが、ここ迄の規模の呪術を使えるなど、想定していなかった
    「ーーーハッ」
    気がつけば腕だけで無く足元も凍りついていた。そればかりか、瞬く間に腕や足元から全身へと氷が侵食し始めていた。更にーーー
    「氷天霜封。悪いが魔術回路ごと封じさせて貰った」

  • 188二次元好きの匿名さん23/12/11(月) 08:01:35

    朝保守

  • 189千界樹の記録23/12/11(月) 08:56:37

    理屈は不明だが、自身の魔術回路が機能不全に陥っている。戦鎚の機能も停止し、唯の1t越えの鋼の塊になっている
    氷だけなら秘蹟で破砕するなり溶かしれば良いのだが、このままではそれすらも出来ず動きを封じられてしまえば身動きもままならない
    「バケモンを潰すには、動きを封じて心臓を一刺しが、定番だな」
    そういう時、青年は頭上に氷の槍を形成する。その槍で此方の心臓を串刺しにする腹積りだろう
    確かに、完全に身動きを封じられた上であの槍で刺されたら流石に絶命は免れない
    一転して、万事急すーーーといったところか
    「アハ」
    私が対象でなければーーー
    「まさか、これで私を封じた気なら、甘すぎるんじゃ無いかしら!?」
    全身を覆う氷を砕き吹き飛ばす。魔術回路が機能不全な状態でも、私自身の膂力でなんとかしてやればいいだけのことなのだから
    「はあ!?バケモンかよお前!」
    「人間、その気になれば何でもできるものよ!」
    氷を砕いた勢いで戦鎚を魔術師へと振り落とす。流石にこの一撃は回避されるものの、そんなことは問題にならない。動けるのなら、こうやって追いかければいいんだから
    「さーて、狩の時間。何処まで足掻けるかしら、ね!」
    冷え切った身体を駆動させる。魔術回路も完全では無いが復活し、戦鎚に魔力を通し機能を回復させる
    「チッ!」
    「じゃ、第二ラウンドと行きましょう!」

    魔術師との戦いは、一方的な攻防の展開となった
    私が突撃して、男は躱す。此方は相手の放つ凡ゆる魔術を無視して動ける以上は当然だが、それと同時にあの男もよく此方の攻撃を躱している
    「アッハハ!よく避けるね、ねぇ!!」
    「クソがっ!『五月雨 降りて穿て』」
    青年の詠唱に応える様に魔力が彼のの頭上に集まり、強い雨となって降り掛かる
    雨の一粒の威力もまた高く、丁寧に敷かれた砂利の庭に突き刺さり、小さな石は弾け、砕けるものも少なく無い
    まともに食らえば、あっという間にハリネズミになることは請け合いだろうがーーー
    「ざんねーん!」
    その程度の魔術は、私には届かない。石を砕く雨は私の体に届く前に全て弾き返されていく。西洋の魔術では幾ら仕掛けてこようとも無視して吶喊できる
    低い姿勢で振り上げた戦鎚が青年の衣服を掠める。掠めただけと侮るなかれ、振動はそれだけでも伝播し、衣服から皮膚へそしてその内側へと浸透し、身体を痛めつける

  • 190二次元好きの匿名さん23/12/11(月) 09:47:06

    おかしい、身体が氷で覆われて動けなくなるはずなのにその状態で1tの戦鎚持って氷ぶち破るって化け物かよ

  • 191二次元好きの匿名さん23/12/11(月) 11:53:50

    そろそろ次スレを立てるべきだと思いますよ

  • 192二次元好きの匿名さん23/12/11(月) 12:25:52

    >>190

    元々1トン超えのハンマー振り回す子だ

    馬力が違いますよ


    >>191

    スレ主日中仕事らしいし戻ったら新スレ立ててくれるよ多分きっとメイビー

  • 193二次元好きの匿名さん23/12/11(月) 20:13:46

    夜保守

  • 194二次元好きの匿名さん23/12/11(月) 23:19:55

    念の為保守

  • 195スレ主23/12/11(月) 23:32:45
  • 196二次元好きの匿名さん23/12/11(月) 23:33:27

    建て乙
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  • 197二次元好きの匿名さん23/12/11(月) 23:33:45

    建て乙ッス

  • 198二次元好きの匿名さん23/12/11(月) 23:35:15

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  • 199二次元好きの匿名さん23/12/11(月) 23:35:59

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  • 200千界樹の記録23/12/11(月) 23:36:44

    「ーーーっ!」
    青年は伝播する振動を受けると、途端に血相を変えてその場から飛び退き、呪術だろうか、氷の弾丸をショットガンの様にばら撒く。魔術と異なり物理現象の氷は対魔力の守備範囲外、戦鎚を振り回して盾にする事で全て叩き落とす
    「っ……ゴホッ、コホッ」
    青年は片膝をつき口元を手で押さえて咳き込む。振動の力は想像よりも大きい。人間を構成する大部分は水であり、水は空気よりも早く、強く振動を伝播させる。掠っただけでも相当なダメージとなって襲ってくるだろう
    下手をしたらそのまま頭蓋の内側で反響を繰り返し脳の毛細血管が全て破裂、目や耳鼻から夥しい血を流して死ぬだろうがーーー
    「やって、くれたなーーーっ」
    口の端と目の端から多少血を流す程度で済んだらしい。どうやったから判らないが反響する波を抑えたか逃したか……
    尤も、それだけでも脳を掻き回された様なダメージを喰らっただろう。意識を保つことも難しい、というより普通は出来ないが、流石は魔術師。その辺はしっかり生き汚いらしい
    「やっるぅー!」
    けれども、そうやって片膝を突いている間は恰好の隙となる。砂利を蹴ってもう一度肉薄する。さあ、今度はどんな方法を執る?一体どんな手段で私を止めて見せるのか?
    どんな手段で己に抗するのかと言う期待と、存外にしぶとい事実に苛立つ二律背反の感情が膨らんでいく。果たして、青年は期待通りに策を講じていた
    「『雪花 狂い舞え』」
    彼の頭上から、無数の花びらの様な物が舞って落ちる。更に強烈な旋風が彼を中心に吹き荒れ、さながら強烈なブリザードとなって花びらを舞い散らす
    だが、この程度の風は彼女の動きを阻むには能わない。白い花びらも目眩しにもならないが、さて一体何を考えているのかな?
    と、白い花が舞う風のなさ領域に踏み込んだ瞬間ーーー
    「ーーー!」
    腕に走る痛みに思わず飛び退いた。腕をみやると、修道服の袖が切り裂かれ肌が露出していた。そして、小さいものの確かな切り傷ーーー
    「成程、薄い氷の刃って所ね」
    白い花びらは薄い氷で構成された鋭い剃刀であり、強烈な旋風に乗って凄まじい勢いで宙を舞っている
    このままもう一歩、深く踏み込んでいたら全身を膾斬りにされていただろう。中々にいやらしい。近接戦闘を主とする者にとっては、近付き辛いと言うだけでも嫌なものだ
    「フフーーーイイわね」

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