【SS注意】【トレウマ注意】エイシンフラッシュとおでん

  • 1二次元好きの匿名さん23/11/23(木) 13:29:05

    「――お待たせ」

    「5分21秒の遅刻です。トレーナーさん」

    土曜日の夜。
    担当で愛バのエイシンフラッシュと、何気なく昼間に話をしていたら、彼女も友人と都心に出てきているとのことで。
    夕方まで仕事のあった俺と、夕方以降の予定のなかった彼女の予定が、偶然にも合ったので。
    「一緒にどこかに食べに行こうか」という話になったのだが。

    「トレーナーさん」

    フラッシュが、コートを翻して胸の中へ飛び込んでくる。
    白い息が、2人から漏れる。
    合わせた唇は、2人とも少し冷たい。

    「フラッシュ」

    そのまま、抱き締めると。
    フラッシュも、こちらを強めに抱き締めてきた。

    「5分21秒も遅刻したんですから、16分3秒はここで私を温めてください」

    そう言って、懐に入り込んでくるフラッシュ。
    大きなSLで北風は遮られているものの、それでも身を切るような寒さ。
    そのSLに飾られたイルミネーションまで、寒々としているように感じる。

  • 2二次元好きの匿名さん23/11/23(木) 13:29:37

    ――どれほど、抱き合っていただろうか。
    「ボー」と汽笛が響く。
    時計を見れば、ちょうど18時。

    「少し、時間超過してしまいましたね」

    「……いや、俺の時計だとまだ16分は経っていないな」

    「う・そ・つ・き。女の子に嫌われますよ?」

    ツン、と露出した首元をつつかれる。
    手袋をしていない彼女の手は、冷たくなっている。
    だから。

    「手、冷たくなってるよ」

    彼女の白魚のような指に、自分の武骨な指を絡ませる。
    まだ、自分の手の方が温かかったので、少しはかじかんだ手を温めることもできるだろう。
    しなやかなシルクのような手触りの肌が、心地よい。

    「すみません」

    「良いの。それに、手が冷たい人は、心が温かいっていうからね。フラッシュはきっと心があったかいんだよ」

  • 3二次元好きの匿名さん23/11/23(木) 13:29:59

    すると、一瞬驚いた後。
    フラッシュはくすくすと笑って、否定してきた。

    「それは迷信ですね。私の手を温めてくれるやさしいトレーナーさんの、心が冷たいわけがありませんから」

    「下心があるかもしれないよ?」

    「それは、私もありますから。それに、私が嫌だと言ったら、トレーナーさんは下心を抑え込んでくれるでしょう? 嫌だなんて、口が裂けても言いませんが」

    茶目っ気たっぷりに、流し目をくれて。
    こちらを、しなを作って誘惑するフラッシュ。
    ――この娘には、本当にかなわない。

    「……行こうか」

    「ええ」

    手を繋いだまま、2人で夜の雑踏へ歩き出す。
    土曜日の新橋は、サラリーマンの姿もまばらで、少し寂しい雰囲気。
    そんな中を、ひとしきり歩くと。

  • 4二次元好きの匿名さん23/11/23(木) 13:30:29

    「ここ」

    「ここ、ですか?」

    盛り場の喧騒から少し離れた、路地裏の一軒。
    赤ちょうちんに、使い古された暖簾。
    そんな、およそ女子学生には縁のなさそうなところで立ち止まる。

    「あんまり、こういうところは来たことがないかもね。でも、今日のような寒い日には、こういうところのおでんが絶品でさ。さあ、入って入って」

    「あ、はい」

    彼女を促して中に入ると、記憶のままの佇まい。
    カウンターだけ、両手で数えられる程度の席に、変わらない大将の姿。
    短冊状の紙に、おでんの種類と値段が、壁の上の方に所狭しと並んでいる。

    「フラッシュ、奥に」

    「はい」

    フラッシュを、寒い入り口から一番遠いであろう席の椅子を引いて促す。
    すると、すでに自分のコートを脱いでハンガーにかけていた彼女が、こちらのコートに手をかけて、脱ぐのを手伝ってくれた。
    瞬間、触れる、指先。

    「……ありがとう」

    「……いえ」

  • 5二次元好きの匿名さん23/11/23(木) 13:30:54

    背もたれのない簡素な椅子に2人して座ると、カウンターに手を置いて。

    「大将、いつもので。彼女にも同じのを」

    「あいよー! 奥様の飲み物は、ホットの烏龍茶で良いかい?」

    「よろしく」

    するり。
    フラッシュの尻尾が、大将からは見えないように、巻き付けられる。

    「――うふふ。トレーナーさん。奥様ですって」

    「だね」

    御機嫌なフラッシュ。
    そこに、飲み物が先に出てくるが。
    俺の前に出てきたのは、猪口だけで。
    フラッシュの前に、温かい烏龍茶とともに、お銚子が置かれた。

    「奥様と来たんだから、お酌してもらいな。若旦那」

    揶揄うように、おでんをよそいながら声をかけてくる大将。
    目の奥の悪戯っぽい瞳が、キラリと光る。

    「どうぞ、トレーナーさん」

    ――しまった。
    いつもの調子でお酒を頼んでしまった。
    学生の前では、不味い。

  • 6二次元好きの匿名さん23/11/23(木) 13:31:30

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  • 7二次元好きの匿名さん23/11/23(木) 13:31:52

    ちらり、と横目でフラッシュを見る。
    ニコニコと笑顔を滲ませながら、こちらに向けて手に持った徳利を傾けている。
    口元は、今までに見たこともないくらいに緩んでいて。

    「ありがとう」

    結局、猪口についで貰ってしまった。
    そもそも、うっかり「いつもの」と言ってしまった時点でどうしようもなかったのだ。
    もはや、御機嫌絶好調のフラッシュ。

    「はいよ、お2人さん」

    そこに、大将から玉子が追加された。
    何の変哲もない、なんならもうすでに1個、いつものラインアップに入っているもの。
    確かに、玉子は大好きだが。

    「早めに子供作りな。子供が生まれると良いぞ。人生の先輩からの金言だ。玉子は験担ぎだな」

    ――そういうことか。

    「大将、セクハラですよ」

    「そうは言うけどよ。奥様のほうはまんざらでもないみたいだぜ?」

    顔を真っ赤にしながら、両手を頬に添えて、いやいやと首を振るフラッシュ。
    「トレーナーさんが望むなら……」とか、「もう、エッチなんですから。大好きです」とか聞こえてくる。
    ――彼女が妄想に耽溺するのは珍しいが、こうなったら止まらないだろう。
    もくもくと、おでんを食べることに集中することにする。

  • 8二次元好きの匿名さん23/11/23(木) 13:32:18

    2人で、満足するまでおでんを堪能した後。
    勘定を払って外に出れば、そろそろ深夜の入口くらいの時間。
    人通りもまばらで、ビル風だけが吹きすさんでいる。

    「美味しかった?」

    歩きながら、フラッシュに声を掛ける。
    腕を組んだ彼女は、こちらを見上げながら。

    「はい。特に、Wurstを蒲鉾で包んで揚げたものが」

    「ああ、ウインナー巻きか。確かにドイツにはないかもね」

    「ええ。Wurstは女性名詞なので、まるで私がトレーナーさんに包まれているみたいで」

    ――多分、フラッシュは雰囲気に酔っている。
    時折、街灯の光で翳ができる以外は、全体的に昏い寂しい道。
    風で転がる空き缶の音以外には、何も聞こえない静寂。

    「そっか」

    「その、今日はこれからどうするんですか?」

    「帰るよ? まだ電車はある時間だし」

    腕を取っているフラッシュが、不意に立ち止まる。
    つられて、動きを止めると。
    潤んだ瞳でこちらを見上げる、フラッシュがそこにいた。

  • 9二次元好きの匿名さん23/11/23(木) 13:32:23

    読んでるよ!
    期待
    ついでにスパム報告

  • 10二次元好きの匿名さん23/11/23(木) 13:32:51

    「……まだ、帰りたくないです」

    「でも」

    「外泊届は出してきました。――私を、奥様にしてください」

    溜息を、吐く
    こうなったフラッシュは、意外と頑固だ。
    ――彼女が我儘を見せるのが、自分だけだというのは少し嬉しいが。

    「そうだな。じゃあ、映画館のオールナイト上映にでも行こうか?」

    意外な言葉だったのか。
    鳩が豆鉄砲を食らったような顔のフラッシュ。
    きょとん、とした顔も、凄く可愛らしい。

    「映画館、ですか?」

    「そう。これから12時間ぶっ続けで、往年の名作恋愛映画連続視聴。カップルシートで」

    「――今日のところは、それで我慢しておきましょう。濡れ場シーンで、隣のカップルにトレーナーさんがつられるかもしれませんし」

    「そんなことしないよ。フラッシュのことは、世界で一番大事だから、流されて手なんて出さない」

    「……っ!」

    彼女の髪を一撫ですると、また一緒に歩きだす。
    宵闇の寒さも、今は気にはならなかった。

  • 11二次元好きの匿名さん23/11/23(木) 13:33:44

    これで終わりです。
    ありがとうございました。

    至らない点もあると思いますが、よろしくお願いいたします。

  • 12二次元好きの匿名さん23/11/23(木) 13:34:15

    >>9

    ありがとうございます。

    スパム報告も助かります。

  • 13二次元好きの匿名さん23/11/23(木) 13:34:59

    良いssありがとう…ありがとう…

  • 14二次元好きの匿名さん23/11/23(木) 13:36:00

    フラッシュのイチャラブSSはいくらあってもいい

  • 15二次元好きの匿名さん23/11/23(木) 14:07:33

    フラッシュ幸せになれ

  • 16二次元好きの匿名さん23/11/23(木) 15:45:59

    おでん屋の親父なんてのは下世話ぐらいで丁度いいんだよな…

  • 17二次元好きの匿名さん23/11/23(木) 21:24:22

    私服も新妻感あるし側から見れば夫婦と間違われても仕方ない

  • 18二次元好きの匿名さん23/11/23(木) 21:42:52

    いいもん見せてくれやがってよぉ

  • 19二次元好きの匿名さん23/11/24(金) 08:05:37

    ほしゅ

  • 20二次元好きの匿名さん23/11/24(金) 10:01:54

    ちょっと待ってSL広場で公然とハグ&キスしてらっしゃるの!?
    ずいぶん積極的ね!ヒューヒューだよ!

  • 21二次元好きの匿名さん23/11/24(金) 10:11:48

    この伊達男と伊達女がよぉ…幸せになれよ…(血涙)

  • 22二次元好きの匿名さん23/11/24(金) 10:18:11

    >Wurstは女性名詞なので、まるで私がトレーナーさんに包まれているみたいで


    トレーナーさんのWurstをフラッシュが包み込む日が待ち遠しいな(ボソッ

  • 23二次元好きの匿名さん23/11/24(金) 10:26:13

    若奥様みたいな風貌の私服であの落ち着きようだもんな奥様呼ばわりされるのも仕方ない本当に仕方ない

  • 24二次元好きの匿名さん23/11/24(金) 10:26:20

    色ボケフラッシュ正直好き

  • 25二次元好きの匿名さん23/11/24(金) 19:31:22

    >>13

    感想ありがとうございます。励みになります。

    >>14

    感想ありがとうございます。イチャラブSSはきっとそのうち癌にも効くと思います。

    >>15

    感想ありがとうございます。幸せになってほしいですよね。でもこの娘、幸せも堅苦しく定義してそうです。

    >>16

    感想ありがとうございます。下世話な飲み屋の親父は定番ですよね。

    >>17

    感想ありがとうございます。フラッシュが喜ぶのでもっと言ってあげてください。

    >>18

    感想ありがとうございます。今後も精進しますね。

    >>20

    感想ありがとうございます。新橋とお分かりになりましたか。固有名詞は出していなかったのですが。

    >>21

    感想ありがとうございます。似たもの夫婦になりそうですよね。

    >>22

    感想ありがとうございます。ドイツでもソーセージは下世話な意味で使われるそうですし、近いかもしれません。

    >>23

    感想ありがとうございます。時間の問題ですし仕方ないですよね。

    >>24

    感想ありがとうございます。私も大好きです。

  • 26二次元好きの匿名さん23/11/24(金) 19:58:34

    >>25

    おでんだけに煮たものフーフーってね


    でもやっぱりフラッシュは豆腐よ

    色は白いが四角四面で水臭い

    トレーナーの手でホロリと崩れるのがよく似合う

オススメ

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