死の淵から史上最強の一頭になった馬

  • 1二次元好きの匿名さん23/11/25(土) 16:22:41

    平成初期に競馬界の関係者・著名人らを対象に行われた『昭和史上最強馬はどの馬か』というアンケート

    シンボリルドルフ・シンザン・タケシバオーに次ぐ4位にランキングされた馬が、タニノチカラ

    レースで偉大な実績を残し、現在は顕彰馬としてその功績が讃えられている上位3頭

    4位のタニノチカラは顕彰馬でもなければ、傑出した実績を挙げた訳でもない

    そんな彼が何故大きな評価を得ているのか、その経歴を調べてみた

  • 2二次元好きの匿名さん23/11/25(土) 16:27:40

    タニノチカラ 1972年世代の牡馬

    1972年世代は、通称『花の47年組』と呼ばれる世代

    この世代にはタニノチカラの他に、

    クラシック4強と言われ、全頭が別世代なら三冠を狙えたとされる
    ランドプリンス(皐月賞馬) ロングエース(ダービー馬) イシノヒカル(菊花賞・有馬記念) タイテエム(春天馬)

    彼らに加え、
    ハクホオショウ(安田記念) ハマノパレード(宝塚記念) ナオキ(宝塚記念)、ストロングエイト(有馬記念)
    などの強豪、

    脇役にも、
    スガノホマレ(中央タイ記録のレコード勝ち5回)、イナボレス(中央重賞史上最多出走)
    など

    おまけに障害には、
    グランドマーチス(障害馬で唯一の顕彰馬)までおり、

    現在でも史上最強世代の一つに数えられる世代

  • 3二次元好きの匿名さん23/11/25(土) 16:31:21

    タニノチカラは、兄に70年の二冠馬タニノムーティエがおり、その弟ということでデビュー前から大きな期待を集めていた。


    20世紀の名馬 56位 タニノムーティエ

    タニノチカラのデビューは2歳9月、2戦目で初勝利と順調なスタートを切る

    だが10月のレース中に骨折、長期休養を余儀なくされる


    徐々に快復し、3歳夏の復帰を目指して調教を再開


    ところが調教中、今度は種根骨骨折の重傷を負う

    予後不良と診断され安楽死もやむを得ない状況になった


    だがタニノチカラの素質を惜しむ関係者は、現役続行を目指し治療を決断する


    幸運にも状態が悪化することなく、タニノチカラは治療と療養期間を乗り越えた。


    そして4歳の7月、実に1年8ヶ月ぶりにレース復帰を果たした

    既に同期の4強が引退した後の復帰だった

  • 4二次元好きの匿名さん23/11/25(土) 16:36:21

    長い長い休養から復帰したタニノチカラ

    復帰緒戦の条件戦を先行策から4馬身差で圧勝


    続く2戦も5馬身差、4馬身差と続けて圧勝

    素質の高さを見せつける。


    4戦目こそ不良馬場の影響で敗れたが、続く9月には朝日チャレンジCに重賞初挑戦


    先行でレースを進めると、直線では一気に突き抜けて2馬身差で優勝

    同レースではかつてタニノムーティエが敗れており、見事兄の無念を晴らした。

    タニノチカラ朝日CC


  • 5二次元好きの匿名さん23/11/25(土) 16:40:17

    10月にはハリウッドターフクラブ賞(京都大賞典の前身)に出走

    メジロムサシ・ヤマニンウェーブと2頭の先輩天皇賞馬がいたが1番人気に推された


    スタートから逃げに出ると、直線では追い縋るメジロムサシ以下を逆に引き離して2馬身半差で完勝

    1973年ハリウッドターフCC(KBS京都実況中継)~タニノチカラ重賞2連覇

    続く目黒記念秋はスタート出遅れからの強引な競馬が祟って先輩天皇賞馬ベルワイドの3着に敗れたが、大目標の秋天は本命の一頭として参戦。

  • 6二次元好きの匿名さん23/11/25(土) 16:43:19

    秋天(当時3200m)では、同期のハクホオショウに次ぐ2番人気で出走


    スタート直後にハクホオショウが故障競走中止するアクシデントの中、タニノチカラは3、4番手でレースを進める

    残り1000mから一気に先頭に進出すると、直線に入っても全く脚色落ちず、そのまま後続に2馬身差をつけての逃げ切り勝ち


    正に横綱相撲といえる内容で天皇賞馬の栄光に輝く。

    死の淵から蘇った馬が復帰から僅か4ヶ月で頂点に立つという奇跡を起こした。


    第68回 天皇賞(秋) 1973(昭和48年) タニノチカラ

    年末の有馬記念では、1番人気ハイセイコーをマークし過ぎてストロングエイトの4着敗戦という不本意な結果に終わった


    それでもこの年の秋の活躍が評価され、最優秀古馬牡馬に選出

    古馬フリーハンデも、春天を制したタイテエムと並んでトップの62キロが与えられた

  • 7二次元好きの匿名さん23/11/25(土) 16:45:34

    明けて5歳
    天皇賞が当時勝ち抜け制ということもあり、タニノチカラは脚の状態に注意しながらぽつぽつとオープンや重賞に出走

    しかし初戦のオープンを勝った後、斤量の影響もあったのか京都記念春・サンケイ大阪杯2着など惜敗続き

    結局4戦1勝とイマイチな成績で春シーズンを終了
    惨敗がないとはいえ当時の天皇賞馬によくありがちな燃え尽き方に似ていた
    (とはいえ奇跡的なストーリーを残した馬なのでこれでも充分なのかもしれないが)


    夏を休養に当て、9月のオープン特別で復帰
    ここでも格下相手に3着に敗戦

    やっぱもう限界かなという声が多くなった
    年齢的にも5歳秋だし。


    しかし限界どころか、タニノチカラはここから全盛期を迎える
    奇跡の復活を遂げた感動馬から、全ての者を恐れさせる怪物馬に変貌する

  • 8二次元好きの匿名さん23/11/25(土) 16:54:38

    10月の京都大賞典(前年までハリウッドターフクラブ賞)


    ここには秋天を目指すハイセイコーが出走

    ただ斤量が62キロもあったので2番人気

    じゃあ1番人気は当然タニノチカラ、と思ったら、なんと1番人気はホウシュウエイト


    タニノチカラは3番人気

    タニノチカラはこれまで走った18戦は全て1番人気か2番人気で、ここにきて初めての3番人気

    しかも57キロで天皇勝馬で長距離実績も高い自分より、56キロで連勝中とはいえ大競走未勝利のホウシュウエイトと、62キロで2400m以上未勝利のハイセイコーが人気が上


    余程気に食わなかったのだろう

    タニノチカラはスタートからいつものように逃げに出ると、直線では2着争いを演じる上位人気2頭を尻目に独走

    ハイセイコーもホウシュウエイトも4馬身ぶっちぎって優勝した


    (ハイセイコー最後の関西遠征だったので、TV中継はゴール前では独走したタニノチカラを映さず2着争いするハイセイコーばかり映していたが)

  • 9二次元好きの匿名さん23/11/25(土) 16:59:55

    圧勝で復活優勝を果たしたタニノチカラ

    続くオープンもしっかり勝ち、暮れの有馬記念へ


    この有馬記念、ファンの注目は共にこのレースで引退するハイセイコーとタケホープ

    このライバルの最後の対決だけにファンの興味は集まっていた


    人気はタケホープが1番、ハイセイコーが3番で、タニノチカラは両馬に挟まれた2番人気

    タケホープは長距離実績高いからと2番人気も淡々と受け入れ、タニノチカラはいざレースへ


    前年はハイセイコーを気にしすぎて敗れた上、無気力な走りだと散々非難されたタニノチカラ

    今度は誰も気にせずスタートから逃げてやると決めていた。


    結果は映像の通り

    最後の直線で熾烈なラスト対決を演じるハイセイコーとタケホープに、それは2着争いだなと言わんばかりの、タニノチカラの独走逃走劇

    両馬に5馬身差つけて優勝した

    (ハイセイコーとタケホープも後続を7馬身引き離していてる)


    1974年有馬記念 - タニノチカラ

    ファンの注目も最後のライバル対決も関係ない

    レース後に「さらばハイセイコー」が流されようが構わない(鞍上は怒ったらしいが)

    1番強いのはこのタニノチカラだと見せつけた圧勝劇だった。


    この年、タニノチカラは文句なしで2年連続の最優秀古馬牡馬に選出(2年連続同賞受賞は史上初)

    評価も前年より高く、古馬フリーハンデでは春天優勝のタケホープを2キロ上回る64キロをつけられた

  • 10二次元好きの匿名さん23/11/25(土) 17:04:18

    名実と共に現役最強馬となったタニノチカラは、6歳になっても現役続行


    諸戦は前年敗れた京都記念春

    タニノチカラが出るということで回避馬が続出、僅か7頭立てのレースとなった。


    ただ、このレースでタニノチカラは63キロという過酷といえる斤量を背負っていた

    前年の春は不覚をとるレースが多かったし、それに6歳になってるし、ならもしかしたら…と思った者も結構いた


    そんな声が聞こえたかは知らないが、タニノチカラは世にも恐ろしいレースをした。


    スタートからやはり逃げに出ると、悠々とそのままレースを進める

    直線に入ると、63キロ背負ってるのにどんどん後続を引き離す

    なんか京都大賞典や有馬記念より差がついてきてる


    前年菊花賞2着馬や重賞連勝中馬を遥か置き去りにし、タニノチカラは大差をつけてゴール


    【ラジオ競馬実況】タニノチカラ脅威の強さ・63Kg背負い大差勝ち~1975年京都記念 実況:小崎アナ

    あまりの圧勝ぶりに、

    TV実況は『強い!』と連呼するよりなく、

    場内はその強さに歓声というよりどよめきばかりが聞こえ、

    もしかしたらと思っていた連中はもしかしたらとはなんだったんだろうと我に返り、

    敗れた他馬の陣営は「斤量ではなくリヤカー引かせろ」と白旗を上げた

  • 11二次元好きの匿名さん23/11/25(土) 17:09:39

    京都記念圧勝後、タニノチカラは現役最強馬から史上最強馬に評価が変わりつつあった
    もう彼を死の淵から復活した奇跡の馬と見るものはなく、ただその底知れぬ強さに恐れ入るしかなかった

    長距離ではもう敵がいなくなったタニノチカラ
    すると今度は中距離の制圧を目指すことにしたのか、1600mのオープン戦に出てきた

    ここでタニノチカラと相対したのが、名牝イットー
    相次ぐ故障や不運に苦しんでいたものの卓越したスピードを持つ同馬は、牝馬であるが中距離では最強の一角と評価されていた

    長距離最強のタニノチカラと中距離最強のイットー
    いくらタニノチカラが怪物でも、マイル戦で相手がイットー、しかも斤量差が大きく(タニノチカラ61キロ イットー53キロ)、ここではイットーが勝つのではという声も多かった
    (というかこの怪物を止めろという願望に近いかも)

    レースはこの両馬の一気うちに
    卓越したスピードで逃げ切りを図るイットーを、タニノチカラが追うという展開に
    不馴れなマイル戦からかこれまでのレースと違いタニノチカラも必死な走りを見せる
    イットーがもう少しで逃げ切るかと思われたゴール直前、タニノチカラが差し切り、半馬身差で勝利した。


    中距離最強牝馬を、斤量差がありながらマイル戦で下したタニノチカラ
    イットーまで敗れたことで、もうこのタニノチカラを止めれるであろう馬は残り1頭だけとなった

    その1頭とは、
    前年の皐月・菊花賞馬、年度代表馬にして、3歳のフリーハンデがシンザンを上回った「狂気の二冠馬」こと、キタノカチドキ
    彼が、タニノチカラの最後にして最強の相手となった。

  • 12二次元好きの匿名さん23/11/25(土) 17:19:01

    キタノカチドキは故障などもあり前年の有馬記念は回避した
    だがこの年の復帰緒戦のオープン戦では、敗れたものの63キロの斤量で2着と実力健在を見せていた

    そのキタノカチドキが出走するマイラーズCに、タニノチカラは参戦した
    更にオープン戦で敗れたとはいえ強さを見せたイットーも雪辱を期して参戦
    文字通り、この3強対決となった

    レース人気は殆ど差がないものの、
    1番人気タニノチカラ(61キロ)・2番人気イットー(52キロ)・3番人気キタノカチドキ(63キロ)
    となった
    距離適性ではキタノカチドキとイットーに利があるが、タニノチカラが両頭を捩じ伏せてもおかしくないとの見方も多く、激戦が予想された

    不良馬場での開催となったレース
    大逃げをうつ他馬をイットーが2番手で追い、3、4番手でタニノチカラとキタノカチドキが追走する展開に

    直線に入ると、キタノカチドキが内から狂気のスピードで一気に進出し、あっという間に先頭に立つ
    イットーが懸命に食い下がってキタノカチドキに迫り、タニノチカラは大外から両頭を猛追撃

    しかし最後は、キタノカチドキがそのまま逃げ切り勝利
    1馬身差の2着にタニノチカラの猛追撃をハナ差凌いだイットー
    タニノチカラは3着と遂に敗れた

    4着以下は3頭から引き離されており、勝ちタイムは不良馬場にも関わらずレコードと0.2秒差だった
    最強の中距離牡牝両馬に阻まれ、タニノチカラの中距離以下の制圧はならなかった

    マイラーズCの後、タニノチカラは繋靭帯炎を発症
    その後はレースに出ることなく引退した

    この年は僅か3戦2勝ながら京都記念春の勝ちなどが評価され、古馬フリーハンデではトップと1キロ差の61キロが与えられた

  • 13二次元好きの匿名さん23/11/25(土) 17:22:21

    通算24戦13勝2着5回3着4回4着2回 秋天、有馬など重賞6勝 2年連続最優秀古馬牡馬
    大競走2勝・1度も4着以下にならなかった安定感もあるが、やはり圧巻なのは重度の故障から秋天優勝までの奇跡の復活劇〜5歳秋以降の無敵の怪物ぶり

    優れたスピードはないものの、スタートから先行、あるいは逃げを武器にレースを支配し、直線で頭の低いフォームからスパートして後続を捩じ伏せるように引き離す姿は、まさに怪物だった

    観ている者を沸かせるような強さを越えて、震撼させるような強さをもっていた

  • 14二次元好きの匿名さん23/11/25(土) 17:23:41

    最初に記したように、競馬関係者達が選んだ昭和最強馬では4位
    実績だけではなく、全盛期に見せたその勝ち方の恐ろしさがこの評価になったと思う

    タニノチカラが残したものは強さだけではない

    一度は死の淵に立たされた程の怪我を負った
    長い間レースに立つことすらできなかった

    その苦しみを乗り越えて、遂には頂点に立ち、史上最強と恐れられる程の強さを見せた
    復活への希望、頂点への可能性、強さへの夢
    それら全てを、彼は確かに残した

    タニノチカラが去った後、ホウヨウボーイ・サクラローレルなど、重度の故障を乗り越えて頂点に立った馬も数多く現れた

    その不屈の歴史は、このタニノチカラから始まった

    以上

  • 15二次元好きの匿名さん23/11/25(土) 17:32:01

    >>12

    タニノチカラ61キロ、キタノカチドキ60キロのはず

  • 16二次元好きの匿名さん23/11/25(土) 17:33:06

    >>15

    書き間違えた

    指摘ありがと

  • 17二次元好きの匿名さん23/11/25(土) 17:41:50

    逃げ馬のステイヤーとしては史上最強
    マイルでもキタノカチドキやイットーと張り合えるとかよく分からん

  • 18二次元好きの匿名さん23/11/25(土) 17:47:55

    >>12

    63キロで勝つとかキタノカチドキやばすぎ、と思ったら60キロが正しいのね

  • 19二次元好きの匿名さん23/11/25(土) 17:53:29

    以前20勝馬を紹介してた人?
    この時期の強い馬って大レースの記録だけじゃなくて、重賞やオープンでどんな相手と戦ってどんなレースをしたかまで追わないと全貌が見えないことがあるから、こういう紹介助かる
    競馬の黄金期で70年代といえばアメリカなイメージもあるけど、日本も黄金期だったんじゃないかとはちょいちょい聞く

  • 20二次元好きの匿名さん23/11/25(土) 18:07:42

    72世代は大将格の四強が4歳春に全て引退、ハマノパレードとハクホオショウも悲劇で消えたのに、後からタニノチカラやストロングエイトやナオキが出てくるのがヤバい

  • 21二次元好きの匿名さん23/11/25(土) 18:45:20

    70年代って歴史に残る名馬が多い

  • 22二次元好きの匿名さん23/11/25(土) 18:50:38

    谷水さんとこの馬では実績的にはNo.2になるのかな?(1位はウオッカとして)

  • 23二次元好きの匿名さん23/11/25(土) 22:05:07

    イットーはハギノトップレディの母でダイイチルビーの祖母

  • 24二次元好きの匿名さん23/11/26(日) 08:59:50

    ホウヨウボーイが重い故障をした時、タニノチカラの前例があったから再起を目指したというのは事実

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