- 1123/11/27(月) 22:55:50
な世界
前スレ
【閲覧注意】ここだけ玲王が物の怪|あにまん掲示板dice1d3=@1 (1)@1:である2:に取り憑かれてる3:と異様に仲良しな世界見切り発車スレでございますbbs.animanch.comSS中心に安価やダイスもする予定なのでその時はよろしくお願いします!
スレ主の性癖全開で行くので覚悟の程よろしくお願いします、オリキャラが出張りまくります
- 2123/11/27(月) 22:57:23
あやっべパート2付け忘れた
まぁいっかパート3の予定無いし - 3123/11/27(月) 23:00:50
〜〜深夜〜〜
「凪!こっち来てみろよ、夜景が綺麗だぞ」
「知ってる。俺の部屋なんだから毎日見てるに決まってるでしょ」
「ったくもぉ、俺らで見る事に意味があんだろ?」
凪は自身のとてつもなく高い年俸でホテル暮らしをしており、街で一番のホテルで十数階の部屋を取っていた。
スイートルームではないが一人で暮らすには十分の広さがあり、ホテルなので頼めば掃除をしてくれる上に朝と夜にはご飯まで出て来る。まさに夢の様な暮らしであった
「今いいトコなんだよね、っしゃ〇ね〜」
「ランキングの調子はどうですか凪選手」
「70位上がった。ヘッショじゃこのやろ」
ベランダの手すりに上半身を預けながら、ガラス扉越しに凪と会話をする。
凪の口からは時々野蛮な言葉が飛び出しており、ゲームに夢中になっていると推測できた
「まいっか、一人で眺めよっと」
「レオー頼めばワイン来るけどどうする?」
「丁度いいじゃん、せっかく机と椅子が外にあんだし景色見ながら洒落込もうぜ!」
「はいよーコレ終わるまで待ってて」
「………もう」
久しぶりの凪だ、出来るだけ一緒にいたいしゆっくり語り合いたい。でも凪はそうじゃなかったらしい。
少しふてくされながら、玲王は改めて夜の街へと視線を戻した。
本当に美しい所だ、空気も都会の割に澄んでいる。凪の住む場所がここで良かったと心底思える程、その街は治安が良く歴史も古く、住人の人柄も穏やかで、安心できる場所だった
───だからこそ、油断してしまったのだ - 4123/11/27(月) 23:04:12
コウモリが一羽、玲王の肩に止まった
「お?珍しいな」
死角から現れたそれに玲王が目を見開く。中々愛嬌のある顔をしてるが、どんな病気を持っているか分からないので撫でるのは控えた
「俺は止り木じゃねえぞ、森へお帰り」
「ナウシカかよ」
「定番だろ?」
スマホをポチポチと操作する凪も、現在触れ合っている玲王も、そのコウモリの持つ妖力に気が付かなかった。
それ程までに『彼』の力の扱いは卓越していたのだ
"迎えに来たぞ、愛しの君よ"
「んぁ、空耳?」
「どしたの」
「いやなんか変な声が」
"さぁ往こう。約束を果たす時だ"
瞬間、コウモリがぶわりと膨らみ、人の姿を形成する。
妖しげな黒い羽根を散らしながら現れたのは2メートルをゆうに超えるほどの大男。その割には細身であり、月光を反射する金色の長髪を夜風に靡かせていた
「な、何だよお前!??」
"遅くなってすまない、最近になってやっとあなたの力を追うことができたのだ"
「人の話を…うわっ!!」
赤い瞳を爛々と輝かせながら玲王を見据えるその男は、距離を取ろうとする玲王の腕を掴んでそのまま抱き上げた - 5123/11/27(月) 23:05:37
「レオ!!」
ベランダの異常を察し、凪がスマホを放り投げてガラス扉へと駆け寄った
(クッソ油断した、誰だよこのデカブツ!)
"アレはあなたの使い魔か?"
「はぁ!?何言って」
"違うのなら用は無い"
「ちょっ、オイ!!」
軽い身のこなしで手すりへと足をかける大男は、なんと玲王を抱きかかえたまま飛び降りた。その場所は十階を越えたビルの上層である、普通なら落ちてお陀仏だが
「ぎゃああああ!飛んでる!?なんで!?」
"あなたの為に身に着けた術です"
「ドヤ顔すんな降ろせバカ!凪!凪ー!!」
遠ざかる玲王の叫び声に、既のところで大男のマントを掴み損ねた手のひらを握り締めながら、凪は悔しげに手すりを叩く。
見事にしてやられた、今まで散々苦労して守っていたのにまさか目の前で攫われるなんて。
このままだと玲王が取って食われるかも知れない、そもそも自分の正体を知られたらアウトなのだ
「今すぐ追いかけないと」 - 6123/11/27(月) 23:06:29
吸血鬼くんはどこへ向かいましたか?
>>8さんお願いします!
- 7二次元好きの匿名さん23/11/27(月) 23:08:02
森の洋館的な所
- 8二次元好きの匿名さん23/11/27(月) 23:20:52
廃墟になった教会
- 9二次元好きの匿名さん23/11/27(月) 23:21:27
このレスは削除されています
- 10二次元好きの匿名さん23/11/27(月) 23:29:20
吸血鬼なのに十字架ありそうな教会に行くのか
- 11123/11/27(月) 23:32:18
ありがとうございます!
廃墟になった教会、雰囲気がありますね!吸血鬼のくせに何してんだ問題は十字架はデマだった事にしましょう、ところでニンニクは効くの?
dice1d2=2 (2)
1:効く
2:効かない
凪の行動dice1d3=2 (2)
1:玲王に付いてる式神を追う
2:気配を辿る
3:その辺の妖怪を脅して手伝わせる
30以上で成功
dice1d100=3 (3)
吸血鬼くんの目的を>>15までお願いします!
- 12二次元好きの匿名さん23/11/27(月) 23:43:10
このレスは削除されています
- 13二次元好きの匿名さん23/11/27(月) 23:49:45
このレスは削除されています
- 14123/11/27(月) 23:51:45
すみません下4レスまででお願いします
席外してた申し訳無い - 15二次元好きの匿名さん23/11/28(火) 00:00:22
教会に残っている不思議パワーを借りて九尾覚醒を促す
- 16二次元好きの匿名さん23/11/28(火) 00:17:52
教会に隠されていた道具で九尾の封印を解く
- 17二次元好きの匿名さん23/11/28(火) 00:34:37
より偉大な吸血鬼になる為に玲王の血が欲しい
- 18二次元好きの匿名さん23/11/28(火) 08:48:46
吸血鬼と九尾(前世の姿)が仲良しだったため
今世はどうかちょっかいをかけに来た - 19123/11/28(火) 10:25:57
アイデアありがとうございます!
サラッと凪が追跡失敗してて草なんだよ3て
dice1d4=1 (1)
1:教会の不思議パワー目当て
2:教会の道具が目的
3:血が欲しい
4:前世覚えてるー?俺ら仲良しだったぜ!
1・2だった場合、50以上で成功
dice1d100=54 (54)
- 20二次元好きの匿名さん23/11/28(火) 11:57:48
成功しちゃった
- 21123/11/28(火) 12:24:55
- 22123/11/28(火) 12:28:29
女神、吸血鬼くん推しだな??
18パーならまだ大丈夫そうだけど
九尾(前世)と吸血鬼くんの関係
dice1d3=1 (1)
1:出会ってすぐ九尾がタヒんだからそんな深くない
2:吸血鬼くんの片思いだけど仲は良い
3:相思相愛
1でも吸血鬼くんはホの字です
- 23二次元好きの匿名さん23/11/28(火) 12:31:09
- 24二次元好きの匿名さん23/11/28(火) 13:43:58
教会には不思議パワーがあるみたいだし
気配を遮断する効果が教会にあったから凪が玲王を探すのに失敗したとかあるのかな? - 25二次元好きの匿名さん23/11/28(火) 13:58:55
なるほど、説得力ある
- 26123/11/28(火) 22:11:26
全身を駆け巡る冷たい風に、今がこの国の暖かい季節で良かったと心底そう思った
"そんなに強く抱きしめられたら照れます"
「落ちない為に決まってんだろ!?今すぐ降ろせこの野郎!」
"この高さから落ちるのは危険だと思いますが"
「ゆっくり降ろせっつってんの!ここで離したらずっと恨んでやるからな!」
"そんな…ずっと思ってくれるだなんて"
「話が通じねぇなコイツ」
現在、玲王は謎の男に抱きかかえられたまま空を飛んでいた。
パラシュート一つ身に付けないスカイダイビングも真っ青な浮遊体験に、先程から足が竦んで堪らない。万が一にも落ちないように黒いマントに見を包んだ男に必死にしがみついているが、それも妙な捉え方をされるので気に食わなかった。
なんだこれ普通に誘拐だろ
"空を飛ぶのは苦手でしたか、もうすぐ着く。今しばらくの辛抱です"
「どこに向かってんの」
"然るべき場所へ"
「答えになってねぇ…」
こんな上空では抵抗一つままならない。相手を探ろうと思ってもまともな返事が返って来ない。そもそもなんで空飛べてるの?
「はぁ…凪、心配してるかな」 - 27123/11/28(火) 22:12:48
どれほど飛び続けただろうか、玲王はようやく地面へと足を着くことができ、大地の有難みを再認識した。もう二度と空は飛びたくない
「ここ、教会?」
"ええ、人の思念がいまだに蔓延る特別な場所でね。この場所の力を借りに来たんだ"
「ふーん、どうでもいいけど肩離して」
"さぁ行きましょう"
大男は玲王の望み通り地面に下ろしてはくれたが、玲王の肩を抱き寄せたまま片時も離れようとはしてくれなかった。
180を越え、トレーニングによりパワーも人並み以上にある玲王が振りほどけないと確信できる程の怪力。見た目は細いのにどれほどの筋力を秘めているのか
「お前サッカーに興味ある?」
"さっかぁ、とは"
「知らないならいいや」
鍛えたら強くなりそうだと思わず聞いてしまったが、よくよく考えたらこんなとんでもない事やらかす男が同業者などたまらない。
それに多分、いや絶対にコイツは『アッチ側』の生き物だ。玲王が忘れようと努め、凪が隠し続けている世界の住人。
半ば引きずられるように教会の入口へと歩きながら、そっと男の顔を伺う。
血のように赤い瞳、流れる金髪、ハッとするような整った顔立ち。そして、死人のような白い肌 - 28123/11/28(火) 22:14:10
不思議な魅力を持つ大男の容姿を観察していると、その間に教会の扉を潜ってしまった
(やべ、ボーッとしてた!早いとこ逃げ出さねぇと何されるか分かんねぇ)
この男の正体も目的も分からないまま、のこのことこんな所まで連れてこられてしまった。万が一の事があったら、夢を果たせず人生を終えてしまうのか、そんな事をぐるぐると考えてしまう。
ああ、凪に会いたい
ついさっきまで一緒に居たのに、玲王の頭にはその言葉が絶えず浮かんでいた
"なぜ怯えているのですか、私はあなたに危害を加えたりしませんよ"
「そりゃどーも、誘拐犯に何言われたって信じられっかよ」
"それに何故、あなたは力を封じているのです。ソレのせいであなたが還った時すぐに会いに行けなかった"
「あ?なんの事だよ」
"今すぐに解いて差し上げましょう、その為にこの場所を選んだのだから"
相変わらず会話が成立し辛い。言っていることも意味が分からない。それでも、この男に現状玲王が抵抗出来ないという事実だけは確かに在るのだ。
ジリジリと迫ってくる男から何とか距離を取ろうと後退るが、しっかりと肩を掴まれているため逃げ出せない
"少し痛いと思う、我慢して下さい" - 29二次元好きの匿名さん23/11/29(水) 00:33:02
この吸血鬼、人の話聞いてなさそうだ……
- 30二次元好きの匿名さん23/11/29(水) 08:14:55
凪凄い焦ってるだろうな
- 31123/11/29(水) 16:58:59
一応注意
次の投下で吸血表現があります、苦手な方はご注意ください。そして玲王が絆されますが決してモブ玲・玲モブにはなりませんのでご安心下さい - 32二次元好きの匿名さん23/11/29(水) 17:49:03
- 33123/11/29(水) 17:52:23
どぞどぞ!お願いします
- 34二次元好きの匿名さん23/11/29(水) 18:02:42
このレスは削除されています
- 353223/11/29(水) 18:04:07
- 36二次元好きの匿名さん23/11/29(水) 18:13:28
- 37123/11/29(水) 21:32:08
ガリッ
首筋に顔を埋められた次の瞬間、急所に歯を突き立てられた
「ゔっ…!?」
じくじくと痛み始める首筋と生暖かい吐息で、噛まれた事を自覚する。
辛うじて拾える感触から、二本の鋭い歯で貫かれた事が分かった
(いっってぇ!こいつ吸血鬼かよ!?そういや目が赤かったし格好もそれっぽかったな)
「何してんだこの変態!」
"もう少しです、我慢して"
「わ、そこで喋んなよ擽ってぇなぁ!」
男の胸板を割と強めに殴ってやるがビクともしない。ヒョロヒョロのくせにと悪態をついていると、不意に頭がズキリと痛み、そして
何百年にも渡る[狐]の記憶が流れ込んできた
そうだ、自分は九尾の狐で、あらゆる男を陥れ、最後は独りで───
「いや、一人じゃ無かったな。お前あれからずっと俺のこと待っててくれたのか?」
"………!!"
先程のキツい声色から一転、出来る限りの優しい口調で話し掛けると、吸血鬼の大男はパッと首筋から顔を離して玲王の顔を見た。その表情は期待と不安に満ちている
「随分待たせちゃったみたいで、ごめんな」
"…謝罪は要らない。待っている間もずっと、あなたへの愛で幸せだった" - 38123/11/29(水) 21:35:10
「お前案外いいヤツだな」
あまりにも真っ直ぐな言葉に、思わず苦笑が漏れる。あれから何百年と経っているはずなのに、この吸血鬼はあの一瞬の約束を律儀に守り続けてくれていたのだ
玲王の笑顔を見た途端に、男が顔を赤くしてもじもじとし始めた。本当に分かりやすい
"力を戻しても思い出してくれるかどうか分からないから、賭けでした。あなたとまた話が出来て嬉しい"
「それはそうと、いきなり人を攫うのはやめろよ。びっくりしただろ?報連相は大事だぜ」
"あなたを愛すと誓った日から誰との関わりも断ってきました、ので、どう接すれば良いのか分からなくて"
「はぁ!?なんで?」
"愛とはそういうものでしょう"
「ひゃー、ロマンチストだな。寂しかったろ」
あの妙な話の通じなさは人と関わって来なかった故、いわゆるコミュ障が原因だったのかと納得する。
得体のしれない変態かと思っていたが、ただの律儀で素直な奴だったなぁとしみじみ思った。
九尾を思いながら、ずっと一人で過ごしてきたのだろう。どれ程の孤独だったろうか
"あの頃と変わらず、私はあなたを愛しています。これからはずっとお側に居ましょう"
「あはは、ありがとな」
(……さて、どうやって俺を諦めて貰おう) - 39123/11/29(水) 21:36:30
長いこと想って貰えたようで悪いが、あの頃の九尾と今の玲王は違う。もう孤独で無ければ寂しくもないし、そもそも女ですらない。
散々人を誑かしてきた過去を思い出そうが、今の玲王は男であり、そしてノーマルである。正直な話、目の前の吸血鬼は守備範囲外であった
「うーんと、でもさぁ、俺はもう人間として生きてるし。ほら、お前が何かして封印解いてくれたけどちょこっとしか力使えないし。もう自由になって他の人探したら良いんじゃないかな」
"………"
「しかも男だぜ?俺。見ろよこの立派な筋肉を!あの頃のナイスバディじゃねえんだ」
"……………"
「お前顔はイケてるし、すぐに良い人見つかるって!何なら俺が探してやってもいいんだぜ?」
"……で、…………すか"
「え?」
"なんでそんな事を言うんですか…?"
あれこれと遠回しに振っていることを勘付かれたのか、吸血鬼が声を震わせて涙を零し始める。捨てられた子犬の様にしゅんとされてしまっては玲王もそれ以上何も言えなかった
「あー泣くなって!ごめん、悪かったから」
"せっかく逢えたのに、酷いです"
「いやほんとごめんな、これハンカチ。あげるから涙拭け、擦るなよ」
"はい…"
(めんどくせぇなオイ、なるほど凪はこういうのから俺を守ってくれてたんだ。一時期だけでも疑ってた事が恥ずかしいな) - 40123/11/29(水) 21:58:11
- 41二次元好きの匿名さん23/11/29(水) 22:06:39
おお僅差で負けた…
- 42二次元好きの匿名さん23/11/29(水) 22:39:41
凪と足せば勝てるのかな?
- 43二次元好きの匿名さん23/11/29(水) 23:15:17
- 44123/11/30(木) 06:59:02
吸血鬼くんアホ強えなロレンツォもめっちゃ強いしなんだこれ凄え
凪はdice1d3=2 (2)
1:一緒に戦う
2:今のうちだ逃げようレオ
3:えっ仲良くなってるじゃん、友達になれ?やだよ面倒くさい
最終的にdice1d2=2 (2)
1:勝てた
2:負けた
- 45二次元好きの匿名さん23/11/30(木) 10:18:07
このレスは削除されています
- 46123/11/30(木) 10:19:33
- 47123/11/30(木) 10:20:23
むりぽ
>>50まで対抗手段お願いします
- 48二次元好きの匿名さん23/11/30(木) 12:00:02
ロレンツォが吸血鬼を何かの拍子に転ばせたら、凪の送り犬の特性を発現させる。
- 49二次元好きの匿名さん23/11/30(木) 12:17:42
- 50二次元好きの匿名さん23/11/30(木) 12:27:21
ここに来て凪の妖怪特性が生きるのか!
- 51二次元好きの匿名さん23/11/30(木) 12:30:11
確か送り犬の前で転んだら必ず殺されるみたいな伝承があったはず…
- 52123/11/30(木) 12:35:44
一旦負けるけどロレさんのナイスアシストで凪の特性発現して競り勝つ感じかな?
アイデアありがとうございます! - 53二次元好きの匿名さん23/11/30(木) 12:38:03
- 54123/11/30(木) 15:31:17
テストで忙しいので先になるとは思いますが、九尾玲王とわんこ凪とついでに吸血鬼くんをアナログで描きたいのですが、そういうのって投下してもええんですかね?
- 55二次元好きの匿名さん23/11/30(木) 15:36:24
- 56123/11/30(木) 15:38:20
ありがとうございます!!
- 57123/11/30(木) 21:41:35
"嗚呼、それにしても。相変わらず美しい黄金色ですね、あなたの毛並みは"
「毛?俺の髪は紫だけど」
"そうですね、耳と髪の境目の階調も見惚れるほどの眩さだ。ですがやはりこの尻尾の輝きも捨てがたい"
「お前さっきから何言って…あっ」
吸血鬼が玲王の背後を見てうっとりと表情を綻ばせる。その視線を追って振り向くと、そこには薄く発光した、九本の妙々たる尻尾が揺れていた
「うおお懐かしい、あったあったこういうの!へぇーこんなデカかったか?」
"あなたの力の半分も戻せなかったが、かつての姿を取り戻す事は出来たようですね"
玲王一人なら余裕で包み込む事の出来そうな程大きな尻尾達。それらに手を伸ばすと、至高の毛並みがもふもふと掌を押し返した
「はぁ〜気持ちいい♪お前も触ってみろよ」
"はっ、えっ、あのその、いいんですか"
「ん?嫌なの?じゃ別に良いけど」
"謹んで触れさせて頂きます"
震える手で尻尾を撫でる吸血鬼を横目で見つつ、玲王は頭にも手を伸ばした。案の定そこには立派な耳が付いていて、逆に顔の横にあるはずの人間の耳は消えていた
(参ったな、これ引っ込まないぞ)
撫で心地は最高で言うことなしだが、このままだとサッカーに支障が出る。別に玲王自身は尻尾が付いていても動きに問題ないのだが、同じフィールドに居る選手はたまったもんじゃないだろう
「なぁ、これ消したいんだけど」
"何故?"
「普通の人がこれ見たらビックリするだろ」
"なんだ、そんな事。気にする必要はないですよ。だってこれからはあなたと私で、ずっと二人きりじゃないですか" - 58123/11/30(木) 21:45:23
「……は?何言ってんのお前」
"あの時契約したでしょう。寂しいと涙を零すあなたに、私が愛を差し上げると"
「あーそりゃ有り難いが、だからって二人きりとかおかしいだろ。もっとこう友達としてだな」
"? 愛し合う二人に部外者は必要ないでしょう。当たり前のことです"
「必要ないってお前っ…待て愛し合うってなんだよ!?」
いつ俺がそんなクサい台詞をお前に吐いた!?
"あなたを愛し、待っていると誓った日、あなたは私にありがとうと返しました。それで契約は成立したのですよ、思い出したのでしょう?…改めて言葉にすると恥ずかしいですね"
「えぇ、なにそのガバガバ理論。契約は書面で持ってきてくんない?」
"すみません、よく分かりません"
「Googleかよ」
頬を赤らめながら照れる吸血鬼に、血の気が引いていく。これはマズイ事になった。コイツの思考回路は意味不明だが、要するに俺達は愛し合っているのでこれから先ずっと二人きりで世の中と隔絶されたまま暮らしていこうという訳だ
「…ムリ。ごめん、ホント無理。友達から始めよう?な?そうしよう」
"あはは、面白い冗談ですね。さて新居に行きましょう、実は私の家はとある国の貴族の子孫でしてね"
「冗談とかじゃなくって!うわやめて腰抱き寄せないで!」 - 59二次元好きの匿名さん23/11/30(木) 21:48:28
ああ〜やばい!
凪・ロレンツォ急いで〜! - 60123/11/30(木) 22:07:28
"また少し飛びますよ、今度は国境を越えるので時間が掛かります"
「うぉおいバカ!それ俺不法入国者になる!やめろ離せ!」
"何故そんなに嫌がるんですか?流石に少し傷付きました。ああ、そういえば空を飛ぶの苦手でしたね。眠らせて差し上げましょう"
「そういう問題じゃないんだってば!眠らせるって何?怖いんだけど??」
"催眠術には自信があります。さぁこの指をじっと見つめて"
「お前怖い!能力のデパートじゃんか!」
嫌嫌と頭を振って抵抗するが、ジェットコースターの安全装置さながらの強度を誇る吸血鬼の抱き寄せに掛かれば、玲王の何年にも渡る努力の結晶である筋肉は無力であった
本当にマズい、人間相手ならこの状況もどうとでもなるはずだが、人外相手だとこうも自分は無力になるのか。せめてあの頃の力が完全に戻れば何かしら方法はあったのに
(このままじゃ、お前と二度とサッカーが出来なくなるかもしれない)
「そんなの嫌だ…凪、会いたい…!」
「───レオ!!」
派手な音を立てて、教会の扉が吹き飛ぶ
月光に照らされた二つの人影。その内の片方は今まさに玲王が思い浮かべていた、この世で最も大事なパートナー
「凪……!」
「助けに来たよ」 - 61二次元好きの匿名さん23/11/30(木) 22:42:42
感動の再会
- 62二次元好きの匿名さん23/12/01(金) 07:56:18
がんばれ凪
- 63二次元好きの匿名さん23/12/01(金) 18:35:44
確かに吸血鬼って能力のデパートだなって感心した
しっぽもふもふの玲王かわいいな - 64二次元好きの匿名さん23/12/01(金) 19:36:52
これは王子様だわ
- 65二次元好きの匿名さん23/12/01(金) 22:45:01
変態吸血鬼ははよ撃退されて
- 66123/12/01(金) 23:33:31
- 67123/12/01(金) 23:34:35
- 68二次元好きの匿名さん23/12/02(土) 00:22:18
いろっぽ
- 69二次元好きの匿名さん23/12/02(土) 08:58:16
九尾玲王も犬神凪も可愛いし
吸血鬼も可愛いな〜〜!! - 70二次元好きの匿名さん23/12/02(土) 18:25:11
保守
- 71二次元好きの匿名さん23/12/02(土) 22:41:48
尻尾もふもふ可愛い
- 72123/12/03(日) 07:45:34
少し前
どれ程意識を集中させても玲王の気配が見つからず、凪は途方に暮れていた。そんな中でふと頭に浮かんだのは、自分の知る限り最も強い力を持つロレンツォだった
『だぁー、そりゃ面倒な奴に目ぇ付けられたな。ご愁傷様』
「俺一人じゃどうにもならなそうなんだけど、どうすりゃ良いかな」
『ん~ちょっと待って。なーにスナッフィー、え、いいの?分かったー…もしもし?行ってこいって言われた。今どこにいる?』
「〇〇の〇〇ってトコ」
『マジ?丁度近くにいんだよ、そっち行くから待ってろ。OK?』
電話に出たロレンツォは凪の居場所を聞き、ものの数分でその場へと現れた。
そして凪の嗅覚とロレンツォの感知能力で玲王とマント男の居場所に目星をつけ、教会へと駆けつけたのだった
蹴り飛ばした扉の先に、背の高い男に抱き寄せられた玲王が居た。その頭と腰には耳と尻尾が現れており、間に合わなかったのだと理解する
「クソ…いや、今はアイツからレオを助けるのが先だ」
「だぁー、わんこちゃんは下がってな。あの吸血鬼はちょっと手に負えない」
「そんな強いのアレ」
「今のわんこちゃんじゃかすり傷一つ付けらんないだろうな、手分けしようぜOK?」
「りょーかい」 - 73123/12/03(日) 07:47:07
一瞬の出来事だった
凪との再会に気を取られていた玲王は、凪の隣に居たもう一つの人影が地面を蹴る瞬間を見逃してしまった。故に、玲王の目にはいきなり狼男が目の前に現れた様に見えた。そう錯覚してしまうほど、ロレンツォの身体能力は生物としての枠組みを遥かに超越していたのだった
普段より一回り大きくなった長い脚が玲王と吸血鬼の間を引き裂くように一閃し、吸血鬼が弾き飛ばされて壁へと吹き飛んでいく。
同じく風圧で後ろへと転びかけた玲王を受け止めてくれたのは凪だった
「逃げるよレオ、ゾンビ狼がアイツを引きつけているうちに」
「わ、分かった。来てくれてありがとう凪」
「うん、遅くなってごめんね」
「ランデヴーは後回しにしろOK?ヤベェよあの吸血鬼。今の攻撃で掠り傷一つ付いてねぇ」
灰色の尻尾を揺らしながらロレンツォが警告する。彼の視線を追うと、瓦礫の中から出てきた吸血鬼が何食わぬ顔で肩の塵を払う姿が目に映った
"そこそこ痛かったですよ、全く。あの人の血を飲んでいなかったら危なかった"
「だぁー、久々に骨のありそうな強敵だな。ホラ早く逃げろよお二人さん」
しっしっと追い払うジェスチャーをされ、凪と玲王は手を繋いで教会の扉へと走る。あの吸血鬼を一人で任せてしまうのに少し罪悪感を感じたが、今の自分達では足手まといになるだけだろう - 74123/12/03(日) 07:48:35
「レオ、その尻尾」
「全部思い出したよ凪。今まで苦労させたな」
走りながら玲王の耳と尻尾について聞くと、玲王は事もなげに記憶の復活を告げた
「あんな厄介な奴らから守って貰えてたなんて知らなかった。本当にありがとう」
「でも結局守り抜けなかった」
「無理ねーよあんな化け物。そんな事よりお前の気持ちが嬉しいんだ…でも、どうして今まで隠す必要があったんだ?」
「それは」
言いかけたとき、背後から爆発音が轟く。驚いて振り返るとロレンツォがこちらへと吹き飛ばされ落下してくる姿が目に入り、慌てて九本の尻尾で受け止めた
「だぁー、もふもふ。アリガト」
ぼふんと金色の毛並みに埋もれたロレンツォには身体中の至る所に痣や擦り傷が出来ており、明らかに無事では無かった。この短時間で凄まじい戦闘が繰り広げられたのだろう
「こんな…!足に怪我は!?ごめん、サッカーに支障が出たりしたら…俺のせいで…」
「落ち着けOK?俺は人より治るのが早いの。骨折も三日で完治だ気にすんな」
動揺する玲王に声を掛けながら、よっこらせと尻尾から降りてロレンツォが教会の奥へと進む。もくもくと土煙が上がっていた奥側からは、同じく負傷した吸血鬼がこちらへと歩いてきていた。どういう訳か、目が爛々と見開かれて玲王に向けられており、額には青筋が浮かんでいた
"その男は、一体、どこの誰なんですか" - 75123/12/03(日) 07:51:24
"私というものがありながら、そのように仲睦まじく手と手を絡ませるなどあってはならない裏切りです。今すぐに離れて下さい"
「ああ!?俺と凪はそんなんじゃねぇし、凪はお前みたいな変態じゃない!そうだろ凪?」
「あー……うん、ソウダヨ」
吸血鬼には何百年と待たせてしまった負い目があるし、根は素直な奴だと分かっている。が、大切なパートナーとの関係を邪推されたとあっては玲王も黙っていられなかった。ついつい語彙が荒くなる。同意を求められた凪は思う所があるのか目を逸らしてカタコトで返事をしたが、手だけは見せつけるようにしっかりと握って離さなかった
「だぁー、おいおい、余所見すんなよお前の相手は俺だろ」
"人狼…厄介な種だ。手を引きなさい、これは私と彼の問題です"
「お前の横恋慕でしかねぇよOK?」
"抉る"
煽るようなロレンツォの言葉に、吸血鬼の血管がプツリと切れる音が聴こえた様な気がした。両者共に地面を蹴り、再びぶつかり合う
「あっ、オイ!本当に大丈夫なのかよ!?」
「邪魔になんないよう離れなきゃ、レオ早く」
後ろ髪を引かれる思いで再び走り出す。教会を出て、広く荒れた草原を進んだ
「あの吸血鬼めちゃくちゃ強かったぞ、俺の力はまだ弱いけどサポート位なら」
「駄目だってば、アイツの目的はレオなんだから戻ったら逆効果になるでしょ」
逃げながらも、やはり自分を助けに来てくれたロレンツォの安否は気になり、足が止まりかける。その度に繋いだ手を引っ張って凪が前を向かせてくれた - 76二次元好きの匿名さん23/12/03(日) 10:39:17
SSのロレンツォ△!!
あと吸血鬼があの方の血を飲んでなければ
って言ってたから
身体の一部(髪の毛や血)とかでも
妖力上げれるのね - 77二次元好きの匿名さん23/12/03(日) 10:40:19
頼りになり過ぎるロレンツォ格好いい
- 78二次元好きの匿名さん23/12/03(日) 10:57:19
いやー吸血鬼くん重いねー
- 79二次元好きの匿名さん23/12/03(日) 20:14:24
凪も頑張れー
- 80二次元好きの匿名さん23/12/03(日) 21:03:38
頑張って
- 81123/12/04(月) 06:31:59
「それに、ゾンビ狼はちゃんと強いよ。俺、一度も勝てた事ないもん、きっと大丈夫」
「…お前がそう言うなら」
"残念、アテが外れましたね"
前方上空から、声が降ってきた
走っていた足を慌てて止め、二人は空を見上げる。そこにはあちこちに傷を負いながらもいまだ力の籠もった目でこちらを見据える吸血鬼が浮かんでいた
「な、何でここに」
"あの人狼なら向こうで伸びてますよ。稀に見る強者でしたが、生きた時間の差は大きい"
ストンと地面に着地した吸血鬼はまっすぐに玲王の下へ歩いて来る。思わず一歩後退ると、庇うように凪が前へ出た
「走って、俺がコイツを抑える」
「はぁ!?そんなの駄目だ、ロレンツォでも勝てなかったのに!」
「いいから早く行ってよ」
繋いでいた手を振りほどかれ、強く肩を押される。凪らしくない行動に、焦りが痛い程伝わって来た。だからこそ一人でなんて置いていけない
「ふざけんなよ、俺の居場所はお前の隣だ」
「──…レオ」 - 82123/12/04(月) 06:33:50
"ねぇ、何をそんなに難しく考える必要があるのですか?"
玲王へと近付きながら、吸血鬼は仄かに笑う。慈愛とも取れるその笑顔を見て、玲王はぞくりと怖気が立った
"この手を取って共に来てくだされば、あとは静かに暮らしてくれれば良いのです。私が求めるのはたったそれだけ、契約の遵守だけなのですよ"
「俺にはやりたい事が沢山あるんだ、お前の言う二人きりの生活は無理だよ」
再三差し伸べられる手を玲王が拒むと、吸血鬼の顔が今度こそ苛立ちと焦りに歪む。
ぎりぎりと歯を噛み、握り締めた拳からは爪が食い込んだのか血が滴っていた
「もういいでしょ、諦めてよ」
"嫌だ、その人をずっと待っていたんだ。共に生きる日々を理由に生きてきたんだ、今更手を引くなんて出来はしない"
凪の忠告にも耳を貸さず、吸血鬼はゆらりと上半身を傾けると、そのままこちらへと突っ込んできた。
ギリギリの所で凪が吸血鬼のマントを掴み、辛うじて伸ばされた手から玲王が逃れる
「うぁ、力強すぎ」
"離せ犬畜生!あの人は私の、俺の!唯一無二なんだ!"
「悪いけどそれ、俺もなんだよね。譲れない」 - 83123/12/04(月) 06:35:54
吸血鬼と凪が掴み合い、力勝負へと持ち込む。怪我を負っていることもあり、最初は吸血鬼が押されていたが、執念深さによるものか、だんだんと押し返し始めてきた
「凪…!クソ、何か俺にできることは」
耳と尻尾が生えたものの微々たる力しか使えない玲王は、二人の勝負に手を出せずにいる
(昔みたいな力は使えない、怪力も妖力も全然だし尻尾もデカいだけの飾りだ。俺の知ってる特別な技を真似すれば…封印?)
そうだ封印だ、これなら今の弱い力でも役立つ事が出来るだろうし、少しでも相手の戦力を削れば逃げる時間も稼げるかも知れない。見た事は無いが食らったことはあるので、何となく感覚でやり方は分かる
「やるっきゃねぇ。凪!屈め!」
「了解」
玲王の声に即座に反応し、凪が足を曲げてしゃがみ込む。いきなりの行動に吸血鬼は反応出来ず、そして
「封印!」
"!!????"
玲王の術をモロに食らった吸血鬼は、バチバチと電流を散らしながらその場へ拘束された - 84123/12/04(月) 06:40:55
「っしゃ!即興封印術成功!」
「すげーねレオ」
「だろ?無事か凪、怪我は」
「平気」
術を叩き込む事に成功しガッツポーズを決める玲王の横で、凪がよっこらせと立ち上がる。
一方で吸血鬼は、何が起こったのか分からない様子で自身に施された封印を見つめていた
"どうしてこんな…どうして"
「突貫工事だし、多分半日くらいで解けるよ。お前には悪いけど頭冷やしてから出直してくれ」
「えー、もう二度と来ないでほしい」
「それもそうだな、ロレンツォ迎えに行こうぜ。手当てしてやんなきゃ」
「うん、疲れたからおんぶして」
「はいはい」
吸血鬼に背を向け、遠ざかっていく二人の背中。目の前が真っ暗になっていく感覚を味わいながら、吸血鬼は黒々とした感情に包まれ始める
"嘘だ嘘だ、私よりそいつを選ぶのか、ならあの日の約束は、笑顔は何だったんだ。ずっとずっと、あなただけを信じて生きてきたのに、こんなのあんまりじゃないか"
"こんなに好きなのに、足りないの?"
"ならもう、いい。繋ぎ止めるためなら私はなんだってやってやる"
"逃さない" - 85二次元好きの匿名さん23/12/04(月) 11:59:23
ナイス玲王と思ったら
吸血鬼に暴走フラグが! - 86二次元好きの匿名さん23/12/04(月) 19:55:21
『あなたを愛し、待っていると誓った日、あなたは私にありがとうと返しました。それで契約は成立したのですよ。』
契約はきちんと書類確認しないといけないということを教えてくれてありがとうございます。 - 87二次元好きの匿名さん23/12/04(月) 22:49:31
思い込みの激しいstk思考の吸血鬼が危ない
- 88二次元好きの匿名さん23/12/04(月) 22:56:46
一気読みしたけど面白いし凪かっこいいしでサイコーだ続き楽しみ
- 89二次元好きの匿名さん23/12/05(火) 08:18:28
保守
- 90二次元好きの匿名さん23/12/05(火) 18:36:52
玲王は身辺に本当に気をつけなきゃ危ないな
- 91123/12/05(火) 21:50:57
パチン、と
弾けるような音がした
背後で己の妖力が霧散する感覚がして、玲王は思わず振り返る。
次の瞬間、目の前に広がる金色の髪
(そういえば、俺の尻尾と同じ色だな)
なんて呑気な感想が一瞬過り、次の瞬間、首筋の肉を引き裂かれた。
いや、本当は噛まれただけなのだが、教会での気遣うような吸血とは異なり、噛みちぎらんばかりの勢いで牙を突き立てられたものだから、肉が抉れていると錯覚してしまったのだ
「︎︎ あ゙ぅ、いた、ぃ」
"………"
離せ、と身を捻るが、逃れられない。コイツの怪力は一体何なんだ。
吸血鬼の強さは理解していたはずなのに油断してしまった。この慢心癖は治さなければならないな、いやもう遅いか
遠くで凪の呼ぶ声がした
けど、応えられない
ぐらりと視界が揺れ、立っていられなくなる。血を抜かれすぎたのだろう、貧血になってしまったらしい。
ようやく首筋から温い吐息が離れ、前方に倒れかけた時、誰かに抱き上げられた。ぐるぐると回る視界では判別できないが、相手が誰なのかは見なくても分かる
"全部、あなたが悪いんです" - 92123/12/05(火) 21:52:43
数秒前
横を歩いていた玲王が黒い物体に覆い被さられ、驚きながらも咄嗟に飛ばした凪の手が空を切る。
吸血鬼の一飛びで数十メートルも距離が開き、間髪入れずに追いかけたが、首を捉えられた玲王が徐々に抵抗できなくなる様を止められなかった
「レオ!」
名前を呼ぶが、返事をする力も無いようで、その視線はゆらゆらと揺れていた。
玲王の青白くなった顔色や、母音を断片的に発する唇で、相当に重症な貧血に陥ってしまっている事が分かる。
血を吸っていた吸血鬼が玲王の首から顔を離すと、その口元は真っ赤に染まっていた。
「好きな相手によくそんな事が出来るね」
"この人が悪い、お前は、もっと悪い"
脱力した玲王を掻き抱き、敵意に満ちた顔で凪を睨む吸血鬼の瞳は憎悪に塗れていて、狂気に片脚を突っ込んでいるように見える。
そんな危ない妖怪の手中に玲王を置いておく訳にはいかない
ぐっと拳を握り、吸血鬼に向けて突き出す。しかし、アッサリと避けられてしまった。
先程よりも反応が早い気がする。よくよく観察すると、吸血鬼の妖力がグッと上昇していた。おそらく玲王の血を大量に取り込んだからだろう
"お前はここで消す。二度とこの人の前に現れないように"
「あっそ、早くレオを離して」 - 93二次元好きの匿名さん23/12/05(火) 22:00:28
展開が気になる!
- 94二次元好きの匿名さん23/12/05(火) 22:01:27
勝てるのかな…
- 95123/12/05(火) 23:29:28
吸血鬼は玲王を抱きかかえており、下手に攻撃するのは玲王に当たってしまう可能性があってやり辛い。
だが、それは向こうも同じだろう。これまでの態度を考えれば玲王を盾にするなどあり得ない。むしろ、こちらの攻撃から守ろうと行動するはずだ
ごめんレオ、ちょっと派手に動くね
妖力を全身に発露させ、構える。凪の動きに警戒を強めた吸血鬼は一歩後ろに下がった。それを追って踏み出し、地面を蹴る。
瞬きの間に吸血鬼と肉薄した凪は、再び拳を突き出した。今度は手で受け止められる。
(よし、片腕がレオから離れた)
一時の間も置かずに、側頭部目がけて蹴りを放つ。強化された肉体の速度は音を置き去りにし、凪の手を受けた方の腕で蹴りも受け止めた吸血鬼は、衝撃の一瞬後に爆発音を耳に食らった。
思わぬ追撃に吸血鬼の動きが止まり、隙が出来る。その瞬間を凪は見逃さず、玲王に手を伸ばした。
肩を掴み、引き寄せ、早く逃げないと、と踵を返した時だった
"返せ"
地獄の底から響いて来たような声が耳を掠り、全身が総毛立つような悪寒に包まれる。
首を掴まれ、思いきり地面に叩き落された。抱えていた玲王も地面へと投げ出されて、ギリギリで手の届かない場所まで転がってしまった。組み敷かれた凪は、自分の上で殺意を滾らせる吸血鬼を見上げる
「俺の全霊の攻撃、もうちょい効いてよ」
"吸い尽くしてやる" - 96123/12/05(火) 23:31:18
マウントポジションを取られてはどうする事も出来ない
頭ではそう理解している。だが、このまま自分が事切れてしまっては残された玲王は悲しむだろうし、吸血鬼にどんな目にあわされるか分からない
(死にたくないなぁ)
どうにかならないかと、首筋に狙いを定めて迫ってくる無駄に整った吸血鬼の顔を眺めながら考える。このままだと失血死するだろう。
答えは見つからない
「……ま、て」
不意に、横からか細い声が聴こえた。
視線を向けると、ぐらつく身体を何とか支えて立ち上がる玲王の姿が見えた
「俺はお前に、ついてくから。だから凪に手は出さないでくれ」
「レオ、ダメだよ」
「うるせぇ、このままだとどうせ二人揃ってお終いだろ」
玲王の言葉を聞いた吸血鬼は凪の首から顔を離し、玲王の方を凝視する。
(コイツ、力は一丁前だけど変なとこで抜けてっからな。一旦折れたと見せかけて油断させて逃げ出してやる)
一方で玲王はそんな事を考えていた。この状況から抜け出すのが先決だが、だからといってこの先一生誰かの支配下に置かれるなど御免である。吸血鬼には悪いが一芝居打たせてもらおう。
玲王の表情を見て、彼が諦めていないと悟った凪は、それでも心配が先に立つ。吸血鬼の玲王への妄執は並外れたものでは無いのだから - 97二次元好きの匿名さん23/12/06(水) 08:25:48
さすが吸血鬼、強いな……
- 98二次元好きの匿名さん23/12/06(水) 08:28:01
このレスは削除されています
- 99二次元好きの匿名さん23/12/06(水) 08:30:05
このレスは削除されています
- 100二次元好きの匿名さん23/12/06(水) 08:32:57
このレスは削除されています
- 101二次元好きの匿名さん23/12/06(水) 08:34:59
このレスは削除されています
- 102123/12/06(水) 19:41:51
ロレンツォさん頼りっぱなしでゴメンね
吸血鬼を転ばせて凪を強化するって話だけど具体的にどう強化されるんですか
dice1d4=1 (1)
1:一定時間ダメージ無効化
2:パワーが二乗
3:妖力超アップ
4:安価
- 103二次元好きの匿名さん23/12/06(水) 19:48:01
- 104二次元好きの匿名さん23/12/06(水) 23:25:39
契約しちゃったけど大丈夫そ!?
- 105123/12/06(水) 23:37:04
思わぬ声に、その場にいた三人の視線が声の方角へと集まる。そこには、生きているのが不思議な程の重症を負ったロレンツォが立っていた。骨の二、三本はイッてるんじゃ無いだろうか
「だぁー、そんな見られたら照れるんだけど」
「お前その怪我でどうやって動いてんだ」
「言ったろ、俺は治りが早いの。見てくれはボロボロだけどもう痛くもないOK?」
"手こずっている間に追ってきたのですね。全く頑丈な種族だ"
「お前にボコボコにされたまんまじゃ終われねぇからなぁ?」
ぐいっと腕を伸ばしながら、ロレンツォが臨戦態勢に入る。腰をひねるたびゴキゴキと不審な音を立てる身体に、玲王は気が気じゃなかった
「おい無理すんなよ、てかもう戦う理由もねぇんだ。凪を連れて病院に行ってくれ」
「あぁ?何勘違いしてんの?俺がコイツと戦いたいの。別にお前の為じゃないOK?」
"ははは、今は気分がとてもいい。付き合ってあげましょう"
玲王の忠告をにべもなく払いのけたロレンツォの挑発を、吸血鬼が楽しそうに受ける。
玲王を閉じ込めていた腕が離れたことで、自由に動けるようになった。今、吸血鬼の視線と興味が一時的にロレンツォへと向けられている。凪と話す絶好のチャンスだ、逃す訳には行かなかった
そっと吸血鬼から距離を取り、凪のもとへと走る。意外にも吸血鬼は追ってこなかったが、その理由はすぐに分かった
(足が進まない!?)
あと数歩で凪へと辿り着くというところで、まるで見えない壁でもあるかのように足が前へと進まなくなってしまったのだ - 106123/12/06(水) 23:39:08
後ろを振り返ると、こちらを見てほくそ笑む吸血鬼の顔が目に入った。
確か、誓いの言葉には『離れず』という単語が入っていた、そのせいだ。距離にして半径10メートル程、極端に範囲が狭い。それを分かってて、玲王にもう拒否権は無いのだと理解させるためにわざと見逃したのだろう、そう思うと腸が煮えくり返る気分だった
「クソ…凪、ごめん俺」
「レオ、やめてって言ったよね」
足が動かないなら声で、と言葉を発したが、途中で凪に遮られる。
被せられたその声は震えていて、悔しさや悲しさ、怒りなど色々な感情が渦巻いている、凪の口から出るには珍しい声だった。
喉元を抑えながら咳き込み、凪は倒れていた身体を起こす。そして、近付こうにも近付けずにいる玲王を、そのままの距離で見据えた
「俺を守ったつもりなの?そんな事望んでない。俺は嫌だって何度も言った、それなのにお前はアイツの言いなりになって、あんな紙切れに縛られて」
饒舌な凪に、いつかの嫌な思い出が蘇る。もしかして、俺はまた自分勝手な判断で凪を傷つけたのだろうか
「酷いよ、俺達はこれからだったのに、それなのに…もう二度と、一緒にサッカー出来ないの?」
「…ごめんな、独り善がりでも、それでも俺はお前に生きて欲しかった」 - 107123/12/06(水) 23:40:52
あの時と今は違う
どちらにせよ、あのままだと例え奇跡的に助かったとしても、凪に何らかの後遺症が残っただろう。そしたら結局は俺達の夢は叶わなかったのだ。だとしたら、凪だけでも元気にフィールドを駆け回ってほしい
……なんて、強がりだけど
「本当にごめん、でも、どうしても…お前が死ぬのは嫌だった」
動かない足がもどかしい。凪に触れたい、頭を撫でたい。だってもうこれが最後なのかも知れないのだ
「もう、泣かないでよ、レオのアホちん」
こっちだって泣きたいのに、という声とため息が同時に降ってきて、直後に玲王は温かい腕に抱きしめられた。
今日は抱かれてばっかりだな、あぁやっぱり、これが一番好きな腕だ
「一人で突っ走っちゃったレオの尻ぬぐい、俺がしてあげるからそこで見てて」
「え…待てよ、お前じゃ勝てないって!」
「俺一人だったらね。ゾンビ狼がさっき、俺に合図を送ってきてた、あの吸血鬼相手じゃ無理だと思ってたけど、油断してる今ならイケるかも知れない」
凪が立ち上がって、玲王を通り過ぎる。離れていく体温に寂しさが燻り、その背中を追った。
凪の行く先には戦闘をしているロレンツォと吸血鬼が居て、吸血鬼はその場から一歩も動かずに相手をしている。完全に舐めきっているようだ。
凪の姿に気が付いたロレンツォがニヤリと笑い、悠々と攻撃を受けていた吸血鬼に地面の砂を投げつける。まさかそんな手を出されると思っていなかったのか、吸血鬼はほんの少し動揺し、目を覆った。その瞬間、ロレンツォがしなやかな動きで吸血鬼の足を払う。見事に転倒した吸血鬼は、屈辱に顔を歪めながら殺気を強めた。
その様子を静かに見ていた凪が呟く
「見せてあげる、俺の奥の手」 - 108二次元好きの匿名さん23/12/07(木) 07:19:11
凪がんばれー!
- 109二次元好きの匿名さん23/12/07(木) 17:10:24
吸血鬼今度こそ倒そう
- 110123/12/07(木) 19:51:20
IP被りでssの一部消されちゃった
その分のやつ乗せときます
スレ主の曇らせ性癖が爆発した場面ドンピシャでちょっと笑ったんだよね
SS"それなら、今この場で新たに誓って頂けますか"「何を?」
"復唱して下さればいいです"
ぐらぐらと揺れる身体を何とか叱咤し立たせながら、玲王は吸血鬼と会話を続ける。
気持ち悪い、動悸が激しい、倒れてしまいたい。だけど、そうすると凪が危ない
「分かった、から。凪からどいてくれ」
"誓いが先です"
マントの内側から古い紙を取り出し、吸血鬼はそれを掲げる
"本当なら私の屋敷で静かに愛を誓うための物だったのですが、仕方ありませんよね。この世に二つとないこの契約書、今ここで使いましょう"
「何だよ、その契約書って」
"お守りみたいなものです"
吸血鬼に抑えられながら、凪は契約書の持つ今までにない異様な雰囲気を感じ取っていた。
見抜く目に関して、凪は純粋な妖怪のそれを超える。そんな彼だからこそ分かるのだ、この契約書の恐ろしさが
"続けて。『九尾の狐は、永遠に吸血鬼を愛し、そして離れず、婚姻を結ぶ事をここに誓います』"
「き、九尾の…」
(駄目だ、レオ)
「止めて!!」
吸血鬼を欺くため、心にもない誓いを口にしようとした矢先、それを凪に止められた
「この契約書の前で誓ったら、一生それを破れなくなるよ。だからダメ」…telegra.ph - 111123/12/07(木) 19:52:10
98〜101レス目のやつです
- 112二次元好きの匿名さん23/12/07(木) 20:28:01
ありがとうございます!
- 113二次元好きの匿名さん23/12/07(木) 23:05:35
IP被りで消されちゃうこと本当にあるんだな
まとめて再掲載ありがとうございます - 114二次元好きの匿名さん23/12/08(金) 07:57:09
吸血鬼が油断してる今がチャンス!
- 115二次元好きの匿名さん23/12/08(金) 17:10:20
ただ吸血鬼を行動不能にしても
契約書の問題が残ってるのがな…
何とか破れないものか - 116123/12/08(金) 17:36:31
ぶわりと妖力が迸る
まるでその場一帯が支配されたような、そんな感覚が全身を包み、吸血鬼は目を見開いて凪の方へと視線を移した。
そこに居るのは、先程までの犬じゃない
「ぐちゃぐちゃにしてやる」
"…何なんだお前は"
お前を滅してやると、そう宣言され、その決定から逃れられないと確信してしまう。
そんなはずは無い、何が切っ掛けだ?私はこの場の誰よりも強い力を持っているんだ、なのに何故、この男に畏怖の感情を抱いている
「だぁー、あのわんこちゃんの前で転んじゃったね?終わりだよオマエ」
"特定の条件による一時的な強化、その存在は知っています。だが、これ程までに化けるなど聞いたことがない"
「わんこちゃんは天才なの。OK?」
奥の手、その存在を知っているのは監獄の中で玲王と凪の正体に気が付き関わらざるを得なくなった数名だけ。気まぐれに起こる彼らとの戦闘訓練で、偶然凪の得意性を目撃したものは皆、彼の前で転倒することは即ち敗北を意味する事を知っている。
勿論ロレンツォもその一人で、自分が転げさせたとはいえ、あの状態の凪に狙いを定められた吸血鬼に多少の同情心を抱いた
「じゃ、死なないように頑張ってね」
"何を───…っ!?"
ずどん
と、腹部を撃ち抜かれた
世界が暗転し、直後の追撃によって意識が戻る。何をされたか理解出来ぬまま、吸血鬼は2発も食らってしまった - 117123/12/08(金) 17:37:37
"こ、の!!"
体内から妖力で錬成した蝙蝠を喚び出し、吸血鬼は凪に向かってそれらを突撃させる。
それぞれに毒を持ち、鋭い歯により攻撃力も高い技だ。大抵の危機はこれで乗り越えてきた。目の前の白犬もこの毒でぐずぐずに溶けてしまうはず
「鬱陶しいねコレ」
"ふざけてるのか貴様"
全くもって、冗談じゃない
なんで傷一つ付かないんだ?それどころか、力も妖力も、何もかもが先刻とは比べ物にならない程上昇しているではないか
「ふーん、アンタの妖力の塊ってとこかな。じゃあこいつら全部潰したら力が半減するよね」
言いながら、凪は集る蝙蝠を一つ一つ握り潰していく。掠れた悲鳴を上げて蝙蝠が霧散する度、吸血鬼は自分の魂が削れていく事を感じ取っていた
"そんな…嘘だ、お前ごときに!"
急激な妖力の低下に思わず片膝をついてしまう。そんな吸血鬼を冷めた目で見下ろし、胸ぐらを掴みながら、凪は言い放った
「ほんと、嘘だよね。お前なんかに俺のパートナーを渡してたまるか」
そして、仕返しとばかりに首に手を伸ばす - 118123/12/08(金) 17:38:46
"……待て、命だけは奪うな"
「今更命乞いはダサいよ」
"違う!私が死んだら、あの人も危ないのです"
「はぁ?」
吸血鬼の言葉に眉をしかめる。コイツの命と玲王に何の関係があるというのだ
"今、あの人と私は契約で繋がっている。片方が死んだらもう片方がどうなるか、私にも分からないのですよ"
言いながら吸血鬼は契約書を取り出した。いまだ煌々と輝くそれには既に誓ってしまった文言が刻まれている。
凪が吸血鬼の手からそれを引ったくり、破こうとしたり燃やそうとしたり色々な手を尽くしたが、傷一つ付かない
「お前、なんつー契約を結ばせたんだよ」
その様子を見ていた玲王が、呆れ果ててため息を吐く。吸血鬼はバツが悪そうに目を伏せた
"あなたにこれ程の生き恥を晒してしまった。これ以上生きていても仕方ないですが、こればかりは私の力でもどうにもなりません"
その場がしんと静まり返る
打つ手なしかと、誰もがそう思った時
上空がきらりと光った - 119123/12/08(金) 17:40:02
まるで流れ星の様に、何かが空から落ちてきた
いきなり目の前に現れたそれに、玲王は目を見開く。落ちてきたものは、五芒星の描かれた人形の式神だった。
ふわふわと浮きながら風に揺れる人形からは、どこか懐かしい雰囲気を感じる。遠い昔にこの力を見たことがあった
「お前、もしかして晴明か」
恐る恐る声を掛けると、人形が呼応するようにひらりと揺れた。
そんな玲王の様子を見ても、何が起きているのか分かっていない凪や吸血鬼、そしてロレンツォは式神を警戒していた。だが
〈お久うございます、母上〉
「 " 母上!? " 」
凪と吸血鬼が同時に驚く
式神から発せられたその言葉に、警戒など何処かへ吹っ飛んでしまった
「あはは、やっぱりか!顔くらい見せろよ」
〈事情がありまして。母上の危機を察し、この人形を馳せ参じさせました〉
「待ってレオ、母上って何?その人形がレオの息子なの?え、晴明ってあの安倍晴明?生きてるの?母上って何???」
"ま、まさか子供が居たなんて…いや、これほどの美貌。相手が居ない方がおかしいですね"
「きつねちゃん子供いたんだ、面白そうだし今度紹介OK?」
「一気に話し掛けんなよ!コイツは晴明の式神で、晴明は俺の…ってよりかは九尾の息子だな。こら晴明、母上はやめてくれ」
〈どんなお姿になろうとも、母上は母上です〉
「もぉ、いいけど。助けに来てくれたのか?」
〈はい、この人形に触れて下さい〉 - 120123/12/08(金) 17:41:13
式神から響く晴明の言葉に従い、玲王は人形へと触れる。すると、身体から何か力のようなものがするりと抜けていき、顕現していた耳や尻尾が消えた。
それと同時に人形が真二つに破れ、割れ目から一人の人間が飛び出した
仕立ての良い着物に身を包んだ、美しい女性。長い紫の髪に、金色に輝く九本の尻尾
玲王をそのまま女性にしたような、輝くような美姫がそこに居た
「これ…俺の前世の姿だ」
空中を漂う女性──【九尾】に、その場の誰もが注目した。
そんな視線を気にする様子もなく、九尾は玲王を見つめたあと、視線を吸血鬼へと移した
ふわりと空を流れ、凪と吸血鬼に近付いた九尾は、二人をじっと見下ろす
《退け、白いの》
「……」
しぶしぶ、言われたとおりに吸血鬼から離れる。胸ぐらから手を離す時、強めに地面に押し付けるのは忘れなかった。
吸血鬼は玲王と九尾を交互に見ながら、疑問符を大量に浮かべて困惑していた
"な、なんで貴女が二人も"
《───違う》
吸血鬼の第一声を聞いた九尾は、気に入らないと言いたげに整った顔を歪め、ぐっと吸血鬼へ顔を近付けた
《愛するわらわが現れたのだぞ?何故他に目移りしている?何故恋の詩を囁かぬ》
"えっと、その…" - 121123/12/08(金) 17:42:48
非難するような声色で吸血鬼を問い詰める九尾と、頬を赤くしながら取り乱す吸血鬼。
そんな二人を見て、玲王は合点がいったとばかりに頷いた
「なるほど、そういうことか!」
「どういうこと?」
玲王の隣へ移動した凪は、一人納得する玲王に疑問をぶつける。凪の方を見て、玲王は説明をした
「俺と吸血鬼の契約を、あの九尾に押し付けちまおうって話だよ」
「え、そんな事できるの」
「おう、契約書には御影玲王じゃなくて九尾の狐って書いてあるからな。晴明の式神でもう一人の九尾が作られている今なら、契約対象をすげ替えることが出来るんだ」
「ふーん、あの人も九尾なんだ」
「俺の前世の記憶から作ったドッペルだからな。力も今は向こうに行ってるし、多分イケる」
《全く嘆かわしい、お前が言ったのだぞ?わらわを愛すと》
"勿論その言葉に嘘はありません、ですが私はもうあそこの青年と契約をしていて"
《くどい、お前が誓ったのはわらわだ!そしてわらわこそ全盛期を生きた九尾である。狐は嫉妬深いのだ、これ以上焦らすでない…お前がこの先愛すのはわらわ一人。良いな?》
"は、はい"
九尾に思いきり圧を掛けられながら、吸血鬼が頷く。その瞬間、玲王は自分を縛っていた契約がするりと前世の自分へ移っていくのが分かった
「よし!成功だ!」
「…本当?」
「ああ、これからもお前とサッカーできる!」
嬉しくて、満面の笑みで凪を振り返った瞬間、凪に強く抱きしめられた
「良かった…もう二度と勝手な事しないで」
「うん、ごめんな。約束する」 - 122123/12/08(金) 17:44:36
ひとしきり抱擁し合った後、改めて九尾と吸血鬼の方を見る。
九尾はまだ吸血鬼に迫っている最中だった
「あの女の人はなんで吸血鬼にグイグイ行ってんの?」
「あー…まぁ、死ぬ直前に吸血鬼に言ってもらった言葉、結構キュンと来たからな」
「アイツが好きってこと?」
「多分…あ、待て!俺は違うぞ!?前世の話だから!俺は男だし!」
「言い訳しなくて大丈夫、分かってるから」
若干拗ねた凪の機嫌をとっていると、話し終えたらしい九尾達がこちらへとやってきた
《迷惑を掛けたな、こやつの願い通り、わらわは二人きりで過ごす事にする》
「マジありがとう、助かる」
《それにしても…ふむ、随分と面白い犬を連れておるのだな、今世のわらわは》
「やんねーぞ」
《要らぬ。犬は射るものであって愛でるものではない》
前世と今世、同じ自分と会話をするのは奇妙な感覚だったが、面白い体験だった。
いまだ名残惜しそうに玲王を見つめる吸血鬼にデコピンを食らわせながら、九尾はそうそう、と玲王へ近付く
《コレは返しておこう、この先のわらわには無用の長物であるからの》
「は?」
トン、と長い指先で胸元を突かれる。すると、九尾の狐としての力が玲王へと返ってきた。
ポンッという音と共に耳と尻尾が生え、同時に全盛期の力が湧いてくる
「いや、俺もこんな力いらねーよ!」
《ははは、達者での》
慌てる玲王を面白そうにからかいながら、九尾と吸血鬼は遠い空へと消えていった - 123123/12/08(金) 17:45:48
「いやぁ、今日は変な一日だったな、せっかくのオフなのに損した気分」
一件落着だ、と身体と腕を伸ばしながら、玲王は凪を見た。きっと凪もホッとした顔をしているだろうと思ったのだ。だが
「どした、めっちゃ顔青いじゃん」
「いやほら、俺ずっとレオに九尾のこと隠してたじゃん?」
「ああ、そういえばなんでだ?」
「実はレオのその力、妖怪とか色んなモノを引き寄せちゃうみたいで」
「はぁ!?」
慌てて周囲を見渡す。すると、数え切れない程の魑魅魍魎にいつの間にか取り囲まれていた
「マジかよクソ、やっぱいらねぇこんな力!」
「もう一つ、奥の手使ったら暫く動けないんだ。だからこいつ等の相手はレオがやってね」
「ええ!?この量を?しゃーねぇ、ロレンツォ、手助け頼む!」
「だぁー、俺も限界。頼むわ狐ちゃん」
「やっぱやせ我慢してたんだな!?でもま、俺のせいだし頑張るわ」
その後、めちゃくちゃ苦労して集る妖怪を打ち負かし、二人を背負って病院まで行ったり。現代に生きる晴明からの訪問や妖怪ホイホイな九尾の力を封印する旅など色々あったが、なんやかんやで二人は平穏な生活を手に入れましたとさ - 124123/12/08(金) 17:47:18
- 125二次元好きの匿名さん23/12/08(金) 18:08:09
- 126二次元好きの匿名さん23/12/08(金) 18:11:51
- 127123/12/08(金) 18:20:31
- 128二次元好きの匿名さん23/12/08(金) 18:23:43
- 129123/12/08(金) 18:27:23
- 130二次元好きの匿名さん23/12/08(金) 18:30:51
- 131二次元好きの匿名さん23/12/08(金) 20:02:12
- 132二次元好きの匿名さん23/12/08(金) 20:55:17
白宝ラノベスレの方かな…?と思ってたらほんとにそうだった!
今回もとても楽しかったです!
ラノベ後日談スレも待ってます…! - 133123/12/08(金) 21:11:14
- 134二次元好きの匿名さん23/12/08(金) 21:13:59
個人的にはダークファンタジー大好物なので喰種パロが気になります
- 135二次元好きの匿名さん23/12/08(金) 21:14:32
全部気になるけど親友スレが特に読みたいです
- 136二次元好きの匿名さん23/12/08(金) 21:16:13
- 137二次元好きの匿名さん23/12/08(金) 21:17:05
- 138123/12/08(金) 21:20:39
- 139二次元好きの匿名さん23/12/08(金) 21:54:42
- 140二次元好きの匿名さん23/12/08(金) 22:05:02
- 141123/12/08(金) 22:16:04
順繰り順繰りで立ててこうと思ってたので、コメント数からグールパロ➝親友➝ヤンデレでいこうかと思います!ご意見ありがとうございました!
あとはなんか適当に消費して下さると助かります、たまに後日談の事で意見求めるかもしれませんがよろしければお付き合いください - 142二次元好きの匿名さん23/12/08(金) 22:21:31
- 143123/12/08(金) 22:24:17
- 144二次元好きの匿名さん23/12/09(土) 03:00:03
- 145123/12/09(土) 07:23:57
- 14614423/12/09(土) 07:59:14
丁寧な描写と読んでいて時折切なくなる感じが白宝SSを思い出して
もしかして…?という感じでした
半グール良いですね
特に(色的に)凪はめちゃくちゃ似合いますよね
人間でもグールでもない葛藤こそがあの曲とリンクする部分ですもんね…!
スレ主の手でどんなパロになるのか楽しみにしてます♪
- 147二次元好きの匿名さん23/12/09(土) 17:04:42
狐レオのグッズ見てすぐにこのスレが浮かびました
- 148123/12/09(土) 19:36:16
- 149二次元好きの匿名さん23/12/09(土) 22:25:33
スレ主様最高でした!
神絵師様も素晴らしい! - 150二次元好きの匿名さん23/12/10(日) 02:23:15
ネタ変わるしスレ立てしても良いんじゃないかな?
- 151二次元好きの匿名さん23/12/10(日) 12:45:12
最高でした
ありがとう - 152二次元好きの匿名さん23/12/10(日) 22:04:29
保守
- 153二次元好きの匿名さん23/12/10(日) 22:06:03
最高でした!
ありがとうございます! - 154二次元好きの匿名さん23/12/11(月) 09:39:11
保守
- 155123/12/11(月) 09:42:03
- 156二次元好きの匿名さん23/12/11(月) 21:22:09
落とす前にスレ主のSS大好きってことを告白させて!
次スレも楽しみにしてます!