【再稿】ここだけダンジョンがある世界の掲示板 妹の帰郷編

  • 1妹◆V0W4n7M5yw23/11/28(火) 22:36:23

    鯖落ちでスレ落ちからの、SSデータ消失食らってたので再投稿

    セントラリアに突如沸いた敵対存在!
    それに関係するは妹!

    ここだけダンジョンがある世界の掲示板のSS形式スレです


    人と人とのめぐり合わせや結びつき。

  • 2妹◆V0W4n7M5yw23/11/28(火) 22:36:50

    【前提知識】
    妹:よくわからない怪異的な存在、自己増殖したりする
    よくわからないがよく分からないなりに無害なのでひとまず受け入れられた
    この度、変な敵対生物が近くにスポーンする難儀な体質になった

    他のゴーレムじみた姉冒険者のサポートにより炙りだした「山小屋」が怪しいと睨み
    妹はそこへ向かうことにしたらしい。

  • 3妹◆V0W4n7M5yw23/11/28(火) 22:37:55

    【出発後、早速肉塊の出所を探す妹】
    反吐が出るほど気味が悪く
    そしてその癖に自分の面影を感じる肉塊が定期的に襲ってくる身体になったとすれば
    貴方ならどうするだろうか?それはもちろん…

    さて、妹は現在『元リリアンの家』と言われる山小屋へと向かっていた
    妹は前日、再び増殖する肉塊に襲われたことで後処理に追われていた
    自分の周りに沸いて出てくる敵性の存在、これがなんであれ解決しない事には始まらない

    (何はともあれ私がケツを拭くしかない…)
    (皆は受け入れてくれるって言ってたけど、世間体的にもね…)
    (「敵の誘導ビーコンみたいなのになりましたけど周囲が何とかしてくれました」と「自分で何とかしました」では
    信用だとかの度合いが変わってくるし…ね!)

    特に、今回の件は妹が解決することに意味がある
    ようするに信用問題、されどその信用が死活問題

    『よく分からないけど多分安全』という言わば周囲の感覚に裏打ちされた存在は逆を言えば
    悪例一つで『よくわからないけど危険』という流れに転びかねないのだ

  • 4妹◆V0W4n7M5yw23/11/28(火) 22:38:37

    【道中にて】
    「おっ、あらよっと」
    茂みから飛び出してきた狼をほぼノールックで撃ってその脳漿をぶちまけながら
    妹は地図を開いて己の位置を確認する

    「山小屋はもうすぐなんだけどねえ」

    ここまで極めて簡単な旅路だった、遭遇する魔物と言えば、たった今片手間に撃ち殺した狼くらいのもので
    他にも出会う事には出会ったがそれこそ戦闘にすらならずに逃げられる有様だった
    まぁ、それくらいでもなければ道が舗装されるようなことはないだろう
    そもそも妹がここに来たのは初めてではない、前回は今より軽いノリで行って危なげなく帰れたのだ。

    「あ、あったあった山小屋」

    そして山小屋に到着する

    「しかしこの山小屋、マジなら400年前からあるわけでしょ?その割には木材とか味が出てないよねぇ…」

    味がない、というのは中々ざっくりとした言い方だが実際に山小屋は妙に小奇麗すぎる
    雑草は相応に伸びているが古民家にも関わらず割れた窓一つない
    10年放置された廃墟ですら悲惨なことになるのだから、400年と言えば原型すら留めていなさそうである

    (ま、他の奇特な私が熱心に手入れしてるんでしょ)

    とはいえ深くは考えなかった、ここは一応妹のルーツ
    奇特な奴【じぶん】が代わりに維持でもしてるのだろう

  • 5妹◆V0W4n7M5yw23/11/28(火) 22:38:53

    【山小屋を更に散策する妹】
    「これが絵本で?これが朽ちた何かしら。まあ判別つかないけど」
    調査の程は芳しくなく、前調査から変わったものというのはそれこそ間違い探し問題よりも差がないのである。
    しかし調査の途中、ぴたりとその気だるげだった手が止まる。
    ちょうど山小屋の窓から覗いた時に何か遠くの茂みの方に気配を感じた

    「獣…いや、あれは…人!?いや人じゃない、私(別の妹)だ!あれは!」

    ツインテール。小さめの体躯、本当に親の顔より見た顔、そしてその背中。

    この山小屋を手入れする熱心な妹が居たのかもしれない
    話を聞けば調査を大きく前進させるかもしれないが、その姿は森へと消える

    「待って!待て…!」

    妹は反射的に追った

    「くっそ!なんか試すような背中に腹立ったよ…!」

    どうにもその逃げる背中が「追ってみろ」とでも言いたげで。

  • 6妹◆V0W4n7M5yw23/11/28(火) 22:39:16

    【訳アリな妹を追いかける妹】

    森は徐々に深く険しくなっていく
    当然、道らしいものも途絶え、おおよそ快適とは言えない起伏だらけになる

    「はあ…はあ…オーケー上等だよ、知ってたけど三回呼んで振り向かないって事はわざとだね…ハァ…」
    「誘ってるなら捕まえて要件聞くから、いたずらだったらボコボコにするわ…ゲホッ」

    冒険者の体力に加えて山地慣れした冒険者妹【アレクビア】の方がすぐに追いつけそうなものだが
    目下の所、その距離は縮まりそうもなかった

    「…」
    「ねえ、どこに誘導してんのさ」
    「…」
    「…←って展開に困ると黙りだすの悪癖だよ、ほらなんか喋って!ほら早く!」
    「…」
    「わーった!わーっかったから!んじゃ追うのやめたらどうする?そろそろ説明されなきゃ帰るからね!?」

    しびれを切らした妹はその場に立ち止まって地団太を踏んだ
    そろそろプッツリ寸断された堪忍袋の緒も千切りにされそうな頃合いである。

  • 7妹◆V0W4n7M5yw23/11/28(火) 22:39:42

    【妹…キレた!】

    「ついてこい、お前に見せたいものがある。」
    「だからさ、ドッキリならそういうの良いから…端的に言ってよ」

    ついに口を開いた謎の妹
    特にヘリウム声だとか、しわがれているだとかもなく
    これまた聞き飽きた自分のそれだった。
    妹はそれに驚く程の余裕も感動もなく…

    「託すべきかどうか、未だ決めかねているのだ。」
    「そりゃどうも…」
    「そして丁度着いたぞ。ここで立ち止まるとは…気づいていたのか?それとも何かの運命か?」
    「へ?」

    謎の妹の指す先には、妙な岩が鎮座していた

  • 8妹◆V0W4n7M5yw23/11/28(火) 22:40:41

    【何か変な岩まで誘導された妹】

    「これは?」

    妙な岩、とはいえ見た目そのものは岩としか言いようがない
    問題はその場所だ、作為的といえば言い過ぎかもしれないが
    どうも位置も形も都合が良すぎるような気がするのである

    「なんというか、誰かがここに置いた?」
    「そうだ、私がここを封印するためにな」
    「急に話が動いてきたね、でも肝心なところが見えてこないな…何を?」
    「それを見せてもらうのだ…して、お前は強いか?」
    「強いよ、それで?」
    「ならば良い」

    そういうと、謎の妹の案内人は岩をすり抜けて消えてしまった

    「着いてこい、お前にもリリアンの残り香があるのならば入ってこれるだろう」
    「左程入り組んでもいないゆえ、道は迷うまい…しかし貴様は怪異の香もある。襲われるだろうが…」

    「死ぬなよ?」

    言い切ると、案内人の残っていた気配も消え失せ。
    後には冒険者妹だけが残された。

    「ふうー随分もったい付けてくれるよね、行くよ。覚悟は伝わった」
    「死ぬなよ?ふふん、修羅場なんざ数えない程くぐったよ!」

    妹は胸を叩くと案内者である謎妹に倣い、不思議な岩をすり抜けた

  • 9妹◆V0W4n7M5yw23/11/28(火) 22:41:02

    【謎の岩を潜り抜けた妹】

    「ここは?」

    岩を通り抜けた先は十メートルばかしのトンネルが続き
    それも通り抜けると、より木々の生い茂る森が広がっていた
    妹は鼻を鳴らしつつ周囲を見回す

    通った先はより鬱蒼とした森だった

    (雰囲気がガラッと変わった…転移はしてない)
    (ってなると…封印された御大層な何かが関係してるわけね)

    ピクニック気分で歩けていた場所が突然にピリついた雰囲気をまとうのは
    他でもない、再三言われていた封印されている存在の影響だろう

    「なるほど…これは確かに気を引き締めなきゃいけないような気がす…るっ!」

    言いかけたその鼻先を堅いものが掠めて飛んでくる
    それは地面にクレーターを作ってようやく止まる
    ギリギリで引いて躱したものの、当たっていたら首がもげていたろう

    「なるほど、とりあえず真相に近づいてるのは間違いないよねぇ…でしょ?」
    クレーターを作るほどの威力で降ってきたそれは
    「キィィィィィィ!!!!!!!!!!!!!!!!!」
    「忌まわしいクソ肉塊さんさぁ!」

    自分を悩ませてくれた、増殖する肉塊そのものだった

  • 10妹◆V0W4n7M5yw23/11/28(火) 22:41:40

    【戦闘開始!】

    増殖する肉塊は妹へ向け、飛びかかるように圧倒的な破壊力の拳を放つ
    しかしそれを妹は容易く見切った
    「直線的なんだよぉ!」
    妹は剣を引き抜く勢いを利用し、居合斬りの容量で増殖する肉塊を斬り付けた。
    「手応えあり!これで死んでくれる、ってほど物分りのいいヤツじゃないよねぇ…やっぱ」

    呟く妹の目線の先では真っ二つにされながらその各々が再生し今度は二体に分裂した肉塊が蠢いていた

    「っらぁ!」
    すかさず妹は回復後の動きが鈍った個体に蹴りを入れる

    「二体に分裂したね…いや、限界はあるはず」
    「無尽蔵に増えるなら出会った側からガンガン増殖してるだろうからね!」
    そして妹は蹴りを入れた個体を再び斬りつける、今度は傷がより深く広くなるように…

    「ギイイイイイイイイイイイイイイイイイイイイ」

    複数回斬りつけられた個体はもがいた後、ついに動かなくなった
    「ビンゴ!ダメージのキャパを超えれば死ぬのは実装済みだよね…あ」

    死体から正面へと視線を戻した時、妹の横面を肉塊の太い腕がクリーンに捉える
    妹は弾き飛ばされ、岩にぶち当たって墜落する
    しかし、妹は微笑みを浮かべて立ち上がった。
    「うん、中々…楽しめそうじゃん」
    「プッ」
    砕けた奥歯を鬱陶しそうに吐き出すと、手の平を肉塊へ向ける
    「楽しめそうだよ…五分くらいはね」

  • 11妹◆V0W4n7M5yw23/11/28(火) 22:42:05

    【戦闘中…?】
    「カアアアアア!?」
    空中戦の最中、空気を蹴って加速した妹は、空中で軌道を変える術を持たない肉塊を縦横無尽に蹂躙した
    「とどめぇ」
    そして、振りぬいた右ストレートにより肉塊は地面に叩き落とされる

    「うーん、見積もりが甘かった…10秒余らせた」

    しばらく藻掻いていた肉塊に銃弾を撃ち込んで完全に息の根を止める
    妹のへし折られた歯は既に、完治していた。

    「見事だ」
    「で、これ試練系?試練ってのは目的を先に提示するもんだよね、これやったら何が出るのさ」
    「真実」
    「ふぇ…?」

    妹は思わず鼻から抜けていくような声を出す

    「もうお前を試したりもしない、すぐに見えるさ」
    「…」

    そうして案内人についていくと、直ぐに古びた家のようなものが見えた
    廃墟…それ以外に言いようがない、特定の建造方式で建てられているか、とかそういうのに拘らなければ腐るほど見てきた物
    しかし、その見た目は、妹の記憶をあまりにも痛烈にノックした

    「これは…?」

    妹の眼前にある家は、先ほど自分が訪れた「小奇麗な我が家」と瓜二つだった

  • 12妹◆V0W4n7M5yw23/11/28(火) 22:42:42

    【我が家じゃん】
    「これは…もしかして」
    「そう、おそらくお前の想像通りだ、念のため聞いておこうか?何だと思う」
    「私の家だよね、それもこっちが本物か或いはそれにより近い…」

    妹は絞り出すような声で、案内人の質問に答えた
    考えてみればこっちの方がしっくりくる
    家具も壁も内装も、相応の時を感じるしこれに比べれば
    最初に見た小奇麗な家の方は、あまりにも美化されているような気がしていた

    「まさしくお前の想像通りだな、これはお前の…いや私たちの素体が暮らしていた正真正銘の家だ」
    「なるほどね…いや信じるよ、でもどうして…?」

    なぜこんなことをしているのか
    回りくどい、本物があるにも関わらずレプリカでお茶を濁す理由、それが不明瞭だった
    「一応聞いておくけど文化財として保護したいとか?」
    「ふむ、そういうのは見当違いなことから尋ねるのが「フリか」と思うがな、その聞き方ならそれも合っているぞ」
    「ただし、本分ではない」

    家具をいじりながら、顔の向きだけ妹の方へと向けて案内人は切り出す

    「極一部の妹(わたし)以外には決して会わせてはいけない人物がいるのだ」
    「というと?というか貴方も妹なんだよね?」

    えらくあっさりと本質に触れる案内人、妹の目の前にいる人物はどうやら特別な妹のようで…

    「まずそちらから聞くか?いいだろう、私は妹として完成した最序盤の個体だ。怪異の入り込む前のな」

    真相の一つは突然に語られた

  • 13代理妹◆V0W4n7M5yw23/11/28(火) 22:45:55

    【試作型の完成品?】
    「そんな!?いや考えてみれば居た方が当然なのかも」
    「柔軟だな、怪異妹とはリリアン蘇生の過程で作られたホムンクルスやクローン生成機を依り代に、怪異が宿って生まれたものだ」
    「しかしながら怪異が割り込むまでは当然、純然たる科学により作られた「妹」がいると思わないかね?」
    「分かる…分かるよ?つまり科学の妹がいて、そいつらだけが知ってるって事だよね」

    妹は混乱しそうになりながら、頭をフル回転させてついていく

    「厳密には本当に信頼できる何人かの怪異妹には知らせているがな」
    「それで科学妹さんが極一部にしか語らない秘密って?」

    妹は我慢できなくなって、会話をほぼ遮るような形で二の句を求める
    とにかく説明してほしかった、たとえどんな爆弾発言が投下されようとも。

    「単刀直入に言おう、ここが本家でありレプリカを作った理由、それはある人物と接触させないためにある」
    「それはさっきも聞いたよ!」
    「最後まで言わないといけないか?正直口に出したくはないが…うむ」
    「いや、まさか…」

    意を決して口を開く案内人、しかし妹はもう勘づいていた

    「お前たちが決して会ってはならない、執着するのは「兄だ」それも世にいる、お前たちの言う「お兄ちゃん」とやらではない!!!」
    「『モーガン!!!』お前や私の素体のリリアンの実の兄だ!その人物とお前たちを接触させないためにある!」

  • 14妹◆V0W4n7M5yw23/11/28(火) 23:36:23

    【兄】
    「それって本当なんだよね…嘘じゃない?」
    「嘘なものか」
    「その名が私たちにとってどういう意味合いを持つか!どれほど執着しているか!」

    相手を害するつもりはない、しかし妹の腕は気が付けば案内役の妹の胸倉へと伸びていた
    何度も何度も肩を揺する

    「だって…だって…お兄ちゃんだよ?私が生まれるきっかけになった…」
    「ああ、私にとってもそうだモーガンは兄である」

    案内役妹の肩を掴みながら項垂れる妹、いつか解決しなくてはいけないと思っていた問題の根幹が目の前にある
    しかし、今すぐに解決するほど妹の肝は据わってなかった。
    あるいは、このままやる気「だけ」は残したまま何もせずに何年も手つかずにする気だったのかもしれない

    「そして、お前の身体から生まれるようになった肉塊、あれもお前と兄と距離が近くなったので呼ばれたのだろう」
    「失敗作もつまるところ、出来損ないとはいえ妹(リリアン)に近いからな、私には襲い掛かってはこないが、怪異妹は仲間とみなされないらしい…」
    妹は黙りこくっていた

    「今、妹たちとリリアンの、ひいてはモーガンの距離はかつてないほど近づいている」
    「そう、それこそリリアンが存命だった時ほどな…」
    「つまりさ、リリアン繋がりで私のもとにも肉塊がデリバリーされてたわけね?なんで私なの?」

    誰でもいいわけでと、言いかけた
    しかし、それを待ち構えていたかのように案内役は答えた

    「それが運命だ、ここへ呼ばれたのもそう。縁というべきか」

  • 15二次元好きの匿名さん23/11/29(水) 00:19:37

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  • 16全身パンパン代理妹◆V0W4n7M5yw23/11/29(水) 00:20:56

    【繋がり即ち縁】
    「さて、来るぞ…」
    「お前が会いたがっていた男が…兄が…モーガンが!」

    ふと、何の予兆もなく気配が一つ増える
    黒いコートに身を包み、負のオーラに満ちたその輪郭は長閑な山中において余りにも異様に映った。
    其れは宛ら幽鬼のようで……。

    「リリアン…今日も来たとも」
    「お…お兄ちゃ…」

    妹が恐る恐る声を掛ける

    「リリア…なんだ、お前等か」
    「お兄ちゃんだ…モーガン……お兄ちゃん」

    リリアンにでも声掛けられたと思ったのか、一瞬ハッとした顔で振り返るモーガン
    その顔は、疲れ果て目は落ち窪み、少し瘦せていたが妹の記憶にあったモーガン兄その人だった

  • 17代理妹◆V0W4n7M5yw23/11/29(水) 00:44:20

    【妹のオリジナルの少女、リリアンの兄:モーガンに出会ってしまった妹】
    「お兄ちゃん、ねえ……お兄ちゃんはどうだったの?」

    どうだったの?とはあまりにも抽象的過ぎる
    しかし直接的にはどうしても聞けなかった…聞くつもりのことが事なのだから
    だが、モーガンはそんな妹の煮え切らない態度に対して挑発的な薄ら笑いを浮かべた。

    「どう…?ああ、そういうことね、俺は大方の想像通りリリアンを生き返らせようとしたさ」
    「ねえ、お兄ちゃん?何もなかったよね?」
    「そして何度も試したが無駄だった、通常の蘇生は無駄だと悟ったよ」
    「お兄ちゃん!お兄ちゃん!何もなかったよね!!!」
    「だから!俺は下法に手を出した!生きた人間の肉体という問題がクリアできれば希望が持てたからな!」
    「お兄ちゃん!黙って!お兄ちゃん!お願い!!!」

    妹は泣き叫ぶように声を遮った

    「黙れ!『お兄ちゃん』と二度と口にするな、よりにもよってその声で!その声でぇ!」
    「続きを聞かせてやろう。リリアンの顔をしたクソ虫が…私は下法による蘇生を試みるうえで健康な児童の何人も捌いてきた!どうだ!」
    「お兄ちゃあああああああああああああああああああん!!!!」

    言わせてしまった、これを聞くまでは妹と兄でいられた
    これを言われてしまえば、もはや関係性は冒険者と討伐対象者へと変わり果てる。

    「うおおおおおおお!お兄ちゃん!」

    そして妹は懐から銃を取り出すと、兄へと向けた。首の動きに合わせて妹の涙が弾ける。

    「遅い」
    しかし、それよりも遥かに早く兄モーガンは妹へと手を翳し、強力な魔力エネルギーを叩きつけていた。

  • 18妹◆V0W4n7M5yw23/11/29(水) 01:05:16

    【いきなりバチコン】
    「がはぁ!?」
    妹の身体は軽く吹き飛ばされ、木を何本もへし折り、岩場に叩きつけられてなお余剰エネルギーは周囲の地形をすべて粉砕した

    「…が…うう…」
    不意に食らったという事もある、というかそれが主要因なのは間違いない

    しかし、立ち技最強怪異メリーさんの右フックや、山を薙ぎ払う古龍の尾だとか、幻獣麒麟の蹴り
    そういった攻撃よりもなお、一度のダメージで言えば多くのダメージを妹の身体に深く刻み込んでいた

    「まだ息があるのか?」
    遠くから煽るような声で訊ねるモーガン、一切息が上がっていないことから渾身の一撃というわけでもないらしい
    「息があるのか、ならもう一撃だ」
    「ぐわぁぁぁ!?」

    今度はモーガンは右腕を翳し、そのまま横方向に腕を振るった
    するとエネルギーは妹の身体を横なぎに吹き飛ばした、事前に受けた一撃を今度は側頭部にモロに食らい吹き飛ぶ。

    「が…は…はぁ…効くよ…」
    「ゴキブリのようにしぶとい」

    しかし、妹は対応が間に合ったのか、あるいは単なる根性か、二度目は足に来ながらもすぐに立ち上がる
    モーガンは頭を二度かいた、すぐに潰すつもりだった蟻が思いのほかしぶとければ、こんな反応にもなるだろうか?

    「お兄ちゃんを止めるためなら…何度でもねぇ…」
    「なるほど、お前がしぶといのは兄への愛ゆえか…ならばそれを断ち切ってやろう」

    モーガンはくっくっと笑うと、一拍貯めて口を開く。

    『お前のようなものは俺の妹ではない。「絶縁」だ』

  • 19妹◆V0W4n7M5yw23/11/29(水) 01:28:02

    【効果はバツグンだ!】
    「あ…あ…あ…あああああああああああああああああああああああああああああああああ!!!!」
    絶叫と共に妹の身体が末端からひび割れ、砕け、小さくなっていく
    「アーッハッハッハッハッハッハ!!!!効くか、そうだろうな貴様ら怪異にとっては存在の否定が効くだろう。
    中でも俺の妹という幻想に追いすがり生きているような寄生虫どもには覿面になぁ…」

    もはや妹の身体は三分の一が塵と化し、立っていられなくなっていた

    妹が普段付きまとっているような普通の「兄」に存在を否定されるだけなら血を吐く程度で済んだかもしれない
    しかし、目の前にいるのは前世における実兄である、いわば存在の根底となっていた。
    そんな人間に存在を否定された結果、妹の身体はもはや種族単位で肉体を維持できなくなっていた。

    「お兄ちゃ…」
    「もう一度言おう、お前等怪異を一度たりとも妹だとは考えたこともない、リリアンと重ねたこともない」
    「絶縁…というよりは最初からお前たちとの縁など感じたこともない、去ね」

    妹は最後の一言に目を見開いた。
    そしてその目にも亀裂が入り…

    妹は完全に砕け散った

    「フン」
    モーガンは鬱陶しげに鼻を鳴らした、そして視線に気が付いてそちらへと目を向ける
    今まで口を挟んでいなかった案内役の妹が何か言いたげな顔でモーガンの方を眺めていた

    「……なんだね、お前も死にたいか?」
    「いや、別に。」
    「ならばいい、たった今塵と消えたのも詮索しなければ消さないでおいたものを。」
    コートを翻すとモーガンの身体はただでさえ黒いコートより更に真っ黒な闇に溶け込んで消えた
    後には案内役の妹だけが佇んでいた。

  • 20妹◆V0W4n7M5yw23/11/29(水) 01:28:14

    ※今日はここまで

  • 21二次元好きの匿名さん23/11/29(水) 12:35:28

    ひび割れとるー!

  • 22妹◆V0W4n7M5yw23/11/29(水) 16:34:52

    妹が虚空へ消えた後、案内役の妹はつぶやいた

    「消えたか…しかし完全に消えてはないだろうお前は既にモーガンの妹に留まってはいるまい」

    そういうと雲一つない、黄昏時の空を見上げる

    「繋がりを…『縁を』思い出せ」

  • 23妹◆V0W4n7M5yw23/11/29(水) 17:17:40

    「やあ、ただいま」
    「想定内だが思ったよりも早かったな」

    妹は再び案内役に顔を見せる

    「お兄ちゃんもう行った?」
    「行ったとも、むしろ好都合だろう?会えばとどめを刺されていた」
    「まあそうね、あれ勝てないわ」

    ため息をつく妹
    マッドサイエンティストと化した兄に引導を渡すといえば単純ではある
    しかし、精神的な覚悟云々以前に、根本的に兄が強い
    このままでは勝てないことを妹は悟っていた。

  • 24妹◆V0W4n7M5yw23/11/29(水) 20:42:53

    「まあ、方針も決まったしこれから強くなるよー!」
    「…タフだな」

    何にせよ、妹はもはや挫けていなかった
    兄の凶行を止める、そのために強くなる
    ひとまず方向性さえ決まればノンストップだ

    「くう」

    妹は、まず鳴ったお腹を鎮めるべく
    夕飯を食べにギルドに帰還することにした




    【クエスト?失敗】

  • 25妹◆V0W4n7M5yw23/11/29(水) 20:45:13

    ※帰郷編 完

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