三女神像の前に行ったらウマ娘になった partFINAL

  • 1二次元好きの匿名さん23/11/30(木) 01:03:39

    https://bbs.animanch.com/board/2576612/?res=192


    前回までのあらすじ:

     ある日三女神像の前を通りがかった所、女神ゴドルフィンバルブの導きでウマ娘にされてしまった主人公ことトレーナー。しかし彼は家庭環境の歪みによって幼少期から「ウマ娘になりたい」と願い続けてきた狂人だった。

     『サンライクガベージ』と名を変え、担当であるサンフォールと共にウマ娘とトレーナーの二重生活を送るトレーナー。しかし彼はウマ娘として過ごしていく内に、自分の身体に隠された秘密を知る事になる……。


     3年目の初夏、安田記念で自らの恩師であるモチモチトッポギの命を救ったトレーナー。彼は両親との確執に決着を付ける為、「自分の走りを見てほしい」とマイルCSに出走を決める。

     しかし、彼は夏合宿の途中でなぜか自分を付け狙うウマ娘の怨霊と遭遇。一度は窮地を切り抜けるも、怨霊に取り憑かれて精神を追い込まれてしまう。

     果たして怨霊の正体とは? トレーナーはウマ娘と人間、どちらの人生を選ぶ事になるのか? 自身の行く末を決める、最後の冬が始まろうとしていた。

  • 2二次元好きの匿名さん23/11/30(木) 01:15:07

    10まで続けないと即落ちするぞ

  • 3二次元好きの匿名さん23/11/30(木) 01:16:00

    >>1

  • 4二次元好きの匿名さん23/11/30(木) 01:17:29
  • 5二次元好きの匿名さん23/11/30(木) 01:19:00

  • 6二次元好きの匿名さん23/11/30(木) 01:19:22

  • 7二次元好きの匿名さん23/11/30(木) 01:19:40

  • 8二次元好きの匿名さん23/11/30(木) 01:19:55

  • 9二次元好きの匿名さん23/11/30(木) 01:20:08

    回避

  • 10二次元好きの匿名さん23/11/30(木) 01:20:29

    とりあえず10まで行ったので大丈夫なはず…

  • 11123/11/30(木) 01:29:43

    人物紹介:
    ・サンライクガベージ(トレーナー)
     貧しい家庭環境のせいで「ウマ娘になりたい」と心の底から願い続けてきた狂人。自分の走りを担当にフィードバックする事で自身も担当も強くなるというトレーニング方法を行う。

    ・サンフォール(担当)
     トレーナーが担当するウマ娘。気怠そうな雰囲気でトレーナーをおちょくったりするが、自分の前を走り続けてくれるトレーナーを目標にしている。実はファッション番長で、色々な場面でトレーナーの服装にダメ出ししている。

    ・モチモチトッポギ(トレーナーのライバル)
     トレーナーと同じ元人間のウマ娘にして、トレーナーに数多くの事を授けてきた恩師。亡くなった妹の為に自らの肉体を破壊しながら走るも、トレーナー達の尽力で一命を取り留める。正体は実年齢34歳の人間女性。

    ・ムーンライクジュエル(担当のライバル)
     トッポギに師事するウマ娘。毒のある言動で相手を挑発し、走りを乱す盤外戦術を得意とする。しかしレースとトッポギに対してはとても誠実で、トッポギの教えを全て吸収するほどに彼女を敬愛している。実はフォールとは割と仲が良いらしい。

  • 12123/11/30(木) 01:31:23

    保守代わりに人物紹介書いてたら遅れた…
    保守してくれた人はありがとうございます

    ちなみに俺が一番好きなキャラはトッポギです

  • 13二次元好きの匿名さん23/11/30(木) 01:38:40
    三女神像の前に行ったらウマ娘になった part3|あにまん掲示板https://bbs.animanch.com/board/2501598/前回までのあらすじ 三女神像の前に行ったら突然ウマ娘になってしまったトレーナーことサンライクガベージ。しかし彼は幼少の頃か…bbs.animanch.com

    一応1でうまく貼れてないので勝手ながら貼り直し


    自分はトレーナーさんが好きですね

    TSしてるのに染まるとかそう言うのとは無縁な感性バランスが独特で好き

    やや男性的な感性の俺っ娘が男の体で生きてたみたいなそんな印象というか

  • 14二次元好きの匿名さん23/11/30(木) 01:42:48

    (前スレ200ですがやってもうた トッポギじゃなくてフォールだよ……)
    (どうもすみません)

  • 15二次元好きの匿名さん23/11/30(木) 08:35:54

    >>12

    差し出がましいかもしれませんが、とりあえず落ちないように保守しました

    今晩も楽しみにしてます

  • 16二次元好きの匿名さん23/11/30(木) 12:09:36

    ほしゅ

  • 17二次元好きの匿名さん23/11/30(木) 22:41:02

    保守

  • 18二次元好きの匿名さん23/12/01(金) 08:16:16

  • 19123/12/01(金) 12:24:03

    すみません、寝落ちしてしまいました
    今日は頑張って書きます…

  • 20二次元好きの匿名さん23/12/01(金) 18:39:47

    体に気を付けてね

  • 21123/12/02(土) 00:22:21

    『……そうか。あの子がお前の前に……』

     俺の話を黙って聞いた後、父さんは開口一番そう言った。

    「何か知ってるのか!? 頼むよ、何でもいいから教えてくれ!! このままだと命が危ないんだ!! 頼むから──」

     その時、不意に電話口から聞いた事のない父の声が聞こえた。

    『そうだよなぁ……俺達のこと恨んでるよなぁ……何もしてやれなくてごめんなぁ……』

     ……嗚咽だった。何かを懺悔するように、父は声を殺して泣いていた。
     俺は酷く頭が混乱していた。なぜ父さんがあんな奴の為に泣いてるんだ? あいつと父さん達は一体どういう関係なんだ? 俺は……何をしてしまったんだ?

    「父、さん?」
    『……あの子は俺達の子だ』

     父が不意にそう告げる。俺達の子……という事は、俺の姉妹になるはずだった子供という事だろうか。だが俺に姉妹が居たなんて話は聞いた事がないし、弟や妹を途中で堕したという事もなかったはずだ。
     という事は、まさか……。

    『多分その子は、お前が産まれる前に死んだ俺達の子だ。何年も前、腹の中にお前を入れた母さんを庇って……車に轢かれたんだ』

  • 22二次元好きの匿名さん23/12/02(土) 09:54:33

    この一件で色々と歪になっちゃったのかねぇ…

  • 23二次元好きの匿名さん23/12/02(土) 13:46:28

    保守

  • 24二次元好きの匿名さん23/12/03(日) 00:23:14

  • 25二次元好きの匿名さん23/12/03(日) 02:21:27

    『俺と母さんは元々トレーナーと担当ウマ娘の関係だった。俺は中央に受からなくて地方に逃げた新人トレーナー、母さんは未勝利から上がれないウマ娘で……傷を舐め合ってる内にそういう仲になっちまった』

     後悔混じりに自らの過去を語る父。どれもこれも聞いた事のない話ばかりで、俺は言葉も出せずに聴き入っていた。

    『けど、教え子に手ぇ出したトレーナーなんてトレセンが許すはずもねぇ。ましてや親や周りが認める訳もねぇ。俺達は逃げる様にトレセンを去って、2人で生活を始めた。母さんの腹に子供を抱えてな……』

     父がふっと昔を懐かしむような優しい声音になる。

    『その子が産まれてからは幸せだった……。俺も母さんもその子の顔を見れば苦しみなんて吹っ飛んだよ。この子の為に真人間として生きていこうって、明るくい気持ちになれた。なのに──』

     ……父の声が急に萎んでいき、それきり喋らなくなる。まるで父の中の時が止まったかのように。
     だが数秒の沈黙の後、父は苦しそうな声で話の続きを始めた。

    『……なのに、死んじまった。産まれる前のお前と母さんを庇って、トラックに撥ねられて。まだほんの7歳だったのに……』

     父が耐え切れなくなって嗚咽を漏らす。今まで全く俺に見せなかった、父の心の弱い部分を。

    『分かってる、分かってるんだよ……。お前は何も悪くない事くらい……。でもあの子は俺達にとって、本当に希望だったんだ……。他の誰にも、お前にさえ代わる事の出来ない、たった一人の存在だったんだ……』

     ……だから俺に「ウマ娘だったら良かったのに」と言い続けてきたのか。娘の代わりになれない俺を憎む事でしか逃避できなかったから。だからずっと俺を理不尽な目に遭わせてきたというのか。

    『……お前が憎かった。沢山の思い出が詰まったあの子が居なくなって、何の思い入れもないお前がずっと泣き喚いてる。それが堪らなく辛くて、許せなかった。だから──』
    「もういい」

     俺は父の言葉を遮った。もう聞きたい事は聞いた。これ以上話しても辛いだけだ。父にとっても、俺にとっても。

    「ここまで育ててくれてありがとう。……生きてて、ごめんなさい」
    『あ──』

     俺は父に何かを言われる前に通話を終了した。少し逡巡して、いつの間にか俯いていた顔を上げる。視界の端にはまだ『あの子』が佇んでいた。

  • 26123/12/03(日) 02:22:28

    トレーナーの精神的ダメージ

    dice1d100=13 (13)


    31までトレーナーの姉の名前を募集します

  • 27二次元好きの匿名さん23/12/03(日) 02:43:08

    意外とダメージは小さいな
    トッポギとのことがあったし、こういうこと言ったりはしても本気でそう思うようなことだけは断固しないのかもしれないな

    安価はサンライクガベージ
    (トレーナーさんやトッポギは後から生えた存在で後者の妹は名称不明なので同名パターンもありうると判断)

  • 28二次元好きの匿名さん23/12/03(日) 03:06:28

    ラディアンスワン

  • 29二次元好きの匿名さん23/12/03(日) 10:36:57

    ジェネオロジア

  • 30二次元好きの匿名さん23/12/03(日) 11:17:45

    サンライク

  • 31二次元好きの匿名さん23/12/03(日) 13:03:12

    ガベージフラワー

  • 32123/12/04(月) 00:05:31

    dice1d5=5 (5)

  • 33123/12/04(月) 01:09:10

    「……それで、その幽霊はガベージフラワーっていうトレーナーさんのお姉さんだった訳ですか」

     フォールの言葉に俺は頷く。フォールは「ふ〜ん」と声を漏らしながら、氷の入ったアイスコーヒーを啜った。

    「ところで、トレーナーさんは大丈夫なんですか? その……ご両親とお姉さんの過去を聞いて」
    「まぁ、ショックではあるけど……悲しいってほどじゃないかな。大丈夫、気にしないでくれ」

     俺はそう言ってフォールを安心させようとするが、フォールは俺に疑いの目を向けたままだった。
     ……仕方ない、本当の事を話すしかないか。

    「……本当はさ、薄々気付いてたんだよ。金にならないとか使えないとかじゃなく、二人が本当に俺を憎んでたこと。俺はそれを認めたくなくてずっと頑張ってきたけど……」
    「トレーナーさん……」
    「でも二人の話を聞いてようやく腑に落ちた。二人にとっては俺を憎むだけの理由があって、それは俺に覆せる物じゃなかった。だから──この話はこれで終わりなんだ」

     俺は別に二人が特別悪いとは思わない。同じ立場に立たされたら俺だって同じようなことをしたかもしれないからだ。愛する我が子を喪った二人が生きていく為には、誰かを憎む事も必要だったのだろう。
     しかし、それは俺の望む物ではなかった。これからどれだけ努力しても、二人が俺を認めてくれる事は永遠にない。だったらもう望まない方がお互いの為だろう。

     俺はふとフォールの方を見る。フォールは俺の言葉を理解した様子で黙っていたが……納得はできないといった顔で俺を見ていた。

  • 34123/12/04(月) 01:12:46

    フォールの次走

    dice1d2=1 (1)

    1.南部杯に出る 2.マイルCS直行


    トレーナーの力量

    dice1d30=21 (21) +171


    トレーナーの体質改善

    dice1d30=10 (10) +57

  • 35二次元好きの匿名さん23/12/04(月) 01:20:17

    ここで体質下振れるか
    おそらくは後2回だが、合計33はだいぶキツそうだなあ
    こういう積み重ねはオールオアナッシングではないだろうから、
    ちょっと足りないくらいなら何らかの作用はしそうではあるが

    しかしジュエルもそうだけどトレーナーと担当の関係が普段アプリで見てる育成シナリオとは反対なのやっぱり面白い

  • 36二次元好きの匿名さん23/12/04(月) 09:30:51

    確かにこういう問題は基本担当側が抱えてるものだからなあ

  • 37二次元好きの匿名さん23/12/04(月) 11:26:39

    保守

  • 38二次元好きの匿名さん23/12/04(月) 20:30:11

    保守

  • 39二次元好きの匿名さん23/12/05(火) 00:28:31

    フォールの体調

    dice1d100=86 (86)

    5までで絶不調、15までで不調、60までで普通、80までで好調、100までで絶好調


    ジュエルはdice1d2=2 (2)

    1.出た 2.出なかった


    ??? dice1d2=1 (1)

    1. 2.

  • 40二次元好きの匿名さん23/12/05(火) 00:47:57

    体調はバッチリだが、この判定は…?

  • 41二次元好きの匿名さん23/12/05(火) 00:50:44

    ジュエルに倣うなら、1ってことで何者かが出ているのか?

  • 42123/12/05(火) 01:30:02

    「フォール、久しぶりだけど大丈夫か?」
    「ええまぁ。調整も上手く行きましたし、良い調子です」

     心配そうなトレーナーさんを横目に、私は身体を伸ばしていく。手、脚、胴、胸、首。どこも問題なし。普通に走る分には十分すぎるくらい順調だ。

    「ま、そう不安がらないでくださいよ。トッポギさんのお陰でかなり実力も付きましたし、今日はトレーナーさんのお姉さんも視えてないんでしょう?」
    「それはそうだけど……胸騒ぎがするんだよ。今日に限って『あの子』が視えなくなるなんてそんな事あるか? あんまり考えたくないけど、何か企んでるんじゃないかって思うんだ」
    「ふ〜ん……まぁ、一応警戒はしておきますけど。とりあえず行ってきますね」

     私は未だ恐怖に囚われているトレーナーさんを置いてパドックへと出て行く。パドックには既に他の出走者が出ており、16人の姿が見えていた。
     ……16人? いや、それはおかしい。南部杯は16人でフルゲート。という事は私の視点から見て15人にならないと返せ返せ返せ返せ返せ返せ返せ返せ返せ返せ返せ返せ返せ返せ返せ返せ返せ返せ返せ返せ返せ返せ返せ返せ返せ返せ返せ返せ返せ返せ返せ返せ返せ返せ返せ返せ返せ返せ返せ返せ返せ返せ返せ返せ返せ返せ返せ返せ返せ返せ返せ返せ返せ返せ返せ返せ返せ返せ返せ返せ返せ返せ返せ返せ返せ返せ返せ返せ返せ返せ返せ返せ返せ返せ返せ返せ返せ返せ返せ返せ返せ返せ返せ返せ返せ返せ返せ返せ返せ返せ返せ返せ返せ返せ返せ返せ返せ返せ返せ返せ返せ返せ返せ返せ返せ返せ返せ返せ返せ返せ返せ返せ返せ返せ返せ返せ返せ返せ返せ返せ返せ返せ返せ返せ返せ返せ返せ返せ返せ返せ返せ返せ返せ返せ返せ返せ返せ返せ返せ返せ返せ返せ返せ返せ返せ返せ返せ返せ返せ返せ返せ返せ返せ返せ返せ返せ返せ返せ返せ返せ返せ返せ返せ返せ返せ返せ

  • 43123/12/05(火) 01:41:11

    「……ッ! これ、は……!!」


     思考が塗り潰される。

     『あの子』を見てはいけないと本能が叫んでいるのに、目を逸らす事が出来ない。

     頭に呪詛と憎悪を直接流し込まれて、脳が沸騰しそうになる。


     ……違う、そうじゃない!! 目を背けられないなら直接焦点を合わせるな!! 真正面から見るんじゃなく、視界の端で捉えるように──!!


    「……っ!! はぁっ、はぁっ、はぁっ……!! ……上等……ッ!!」


     私は恐怖と怒りと興奮で震えながら、全く柄でもない台詞を吐いてしまう。

     だってそうだろう。トレーナーさんを苦しめる悪霊が、ご丁寧に私とも殴り合ってくれるというのだ。だったらここであの世に叩き返してやろうじゃないか。


    『     』

    「ぶっ倒す……ッ!!」


     来るなら来い。

     生者にへばり付いて駄々をこねるしか能のないお子ちゃまには──私がキッチリお灸を据えてやる。


    dice1d100=86 (86) +(171+88)÷5+5

    dice1d100=60 (60) +300÷5

    60以上で勝利

  • 44二次元好きの匿名さん23/12/05(火) 01:57:15

    色んな意味で鳥肌立っちゃった…

  • 45二次元好きの匿名さん23/12/05(火) 02:47:56

    メチャクチャビビったけどこの強敵が上振れ気味な上で
    さらに上回った結果だとめちゃくちゃ熱いレースしてそうだなフォール
    ワンチャン領域入り見れるかしら

  • 46二次元好きの匿名さん23/12/05(火) 12:08:27

    保守

  • 47二次元好きの匿名さん23/12/05(火) 17:15:02

    南部杯は岩手開催だから、遠野も近い心霊現象はより起こりやすくなってるのかな?
    ユキノも霊見えてるっぽいし

  • 48二次元好きの匿名さん23/12/06(水) 00:40:18

    保守

  • 49二次元好きの匿名さん23/12/06(水) 01:48:47

    『さぁコーナーを曲がって直線へと入っていきます! 先頭はサンフォール! このまま逃げ切ってゴールなるか!?』
    「くっ……!!」

     後ろから恐ろしいプレッシャーを感じる。振り向くまでもない、『あいつ』が……ガベージフラワーが迫ってきている。
     それにしても何という速さだろうか。シニア級のGⅠ、その先頭を全力で走っているというのに嫌な感触が全く離れない。流石はトレーナーさんのお姉さんといった所か。

    『     』
    「クソッ、クソッ……!!」

     マズイ。全力で走っているのにどんどん気配が迫ってきている。このままじゃゴールを切って減速する前に彼女が視界に入る。もしこの猛スピードの中でさっきみたいに思考を塗り潰されたら──。

    「──ッ!!」

     ……身体を走る死の予感。それに対する肉体の反射的防衛反応は。

    「あっ……!!」
    『     』

     私の肉体を、一瞬硬直させた。

  • 50二次元好きの匿名さん23/12/06(水) 02:22:44

    「──フォーーールッ!!!!」

     刹那、耳をつんざくような猿叫。
     その声の主は──。

    「考えるなぁッ!!!! 走れぇぇぇッ!!!!」

     苦しそうにバーにもたれかかる、トレーナーさんだった。



    「ッ!! く、あああああああああっ!!!!」

     身体の奥から熱が噴き出してくる。
     凝り固まった思考がリセットされ、脳細胞が速く走る事だけを求めて回転を加速させる。
     やがて熱と回転が全てを飲み込んでいく。肉体も、感覚も、思考も、精神も、私の全てが一つになっていく。
     心で思った走りを体が叶える。体が感じた情報を心が受け止める。心が体を、体が心を支え、私の走りが完成していく。



     ああ、走っている。
     私の『全て』が走っている。
     ここまで来れたのは、導いてくれたのは──。

  • 51二次元好きの匿名さん23/12/06(水) 04:27:34

    『……サンフォール1着でゴールイン!! 後続を全く寄せ付けない、素晴らしいレースを見せてくれました!! 2着は──』
    「ハァッ、ハァッ、ハァッ……はぁーっ……」

     ……何とか勝つ事が出来た。トレーナーさんやトッポギさんの件で生命に関わる怪我や不調は見てきたが、まさか自分がそんな目に遭うとは……。

    「フ゛ォ゛ー゛ル゛……」
    「トレーナーさ……どうしたんですかその声」
    「大゛声゛出゛し゛す゛ぎ゛た゛……ん゛ん゛っ゛」

     トレーナーさんは水を飲みつつ、声を調整しようと何度か咳払いをする。私はその様子に躊躇いながら、トレーナーさんに質問した。

    「……トレーナーさん。私の後ろに居た子、視えてましたよね?」
    「ん゛んっ……うん、視えてたよ」

     ……やっぱり。あの時私に言った内容や苦しそうな様子からして、後ろのガベージフラワーも視えていたのではと思っていたが、もしかして直視してしまったのではないだろうか。また私のせいでトレーナーさんを……。

    「……すみません。私のせいで」
    「気にしなくていいよ。別に命に関わる事でもないし。それに元はと言えば『あの子』を連れてきた俺が悪いんだしね」

     怖い思いをさせてごめん、とトレーナーさんは頭を下げる。違う、私が求めているのは──。

    「……私は、あなたを大切にしてほしいんです」
    「え?」
    「私にとってトレーナーさんは恩人なんです。ここまで私が来れたのはトレーナーさんのお陰で、だから私はトレーナーさんが大切なんです」

     私は以前から何度も言ってきた言葉をトレーナーさんに向けて伝える。きっとまた彼が無茶をすると分かっていても。
     トレーナーさんは「自分を大切にする」という感覚がかなり薄い。例え肉体が限界を超えてしまっても、誰かや何かの為なら一線を超えてしまう危うさがある。それは恐らく、両親から大切にされてこなかった経験が関係しているのではないだろうか。
     ハッキリ言って、私はご両親と和解する必要はないと思う。自分を大切にしてくれない相手と付き合うのは苦しいだけだし、ご両親と付き合う事がトレーナーさんにとって幸せだとは思えないからだ。
     しかし、トレーナーさんが自分に優しくする為にはご両親と和解して「お前を大切に思っている」と言って貰わなければならないのだろう。私ではなく、ご両親に……。

  • 52二次元好きの匿名さん23/12/06(水) 04:45:05

    「……トレーナーさん、あまり無茶しないで下さいね。またトレーナーさんが倒れたり危険に晒されるのは嫌なので」

    「ああ、分かった」


     私の言葉を聞いてトレーナーさんは強く頷く。

     ……私は複雑な気持ちになりながら、トレーナーさんと一緒に控室へ歩いていった。




    トレーナーの力量dice1d20=20 (20) +171

    トレーナーの体質改善dice1d30=25 (25) +67


    ゴドルフィンバルブは夢の中にdice1d2=1 (1)

    1.出てきた 2.出てこなかった

  • 53二次元好きの匿名さん23/12/06(水) 07:01:29

    そうか…三女神像とはウマ娘とは

  • 54二次元好きの匿名さん23/12/06(水) 07:41:18

    ダイス神の釣り上げるところが妙にそれっぽいのちょっと怖い
    体質92ならあと1回?で足りなくても無駄にはならなそうね
    どう作用するかわからんが正月に引いた健康運も良い方だったし

  • 55二次元好きの匿名さん23/12/06(水) 15:33:42

    保守

  • 56123/12/07(木) 01:11:37

    三女神の領域はdice1d2=1 (1)

    1.いつも通り 2.???

  • 57二次元好きの匿名さん23/12/07(木) 01:15:22

    そういや誰かや何かのためなら一線を超えてしまう危うさがあるって、
    やっぱりトッポギ(や彼女が語る先例たち)とはこの辺が反対だな
    おそらく彼女らと似たようなものとしてフォールは見てるけど、
    一瞬にかけて前のめる暴走車両と休みなく奉仕しようとするロボットくらいには違う感じ
    体質の改善を進める理性がある分体の自壊とは別種の危険性があるよね
    自分に優しくできないままだと都合のいい神様みたいなやつになりかねないというか

  • 58123/12/07(木) 01:38:20

    ちょっと今日一文字も浮かんでこないのでお休みさせてもらっていいですか…

  • 59二次元好きの匿名さん23/12/07(木) 01:40:59

    お疲れ様です
    しっかり休んで明日また書きましょ

  • 60二次元好きの匿名さん23/12/07(木) 08:26:39

    寒いからしょうがないね

  • 61二次元好きの匿名さん23/12/07(木) 12:55:04

    保守

  • 62二次元好きの匿名さん23/12/08(金) 00:21:20

    ho

  • 63二次元好きの匿名さん23/12/08(金) 00:55:46

     ……ふと目覚めると、見慣れた草原に立っていた。どうやらまたも三女神の領域に入ったらしい。
     ここ最近悩まされてきたガベージフラワーも視界の端から居なくなっており、流石にここまでは来ないかとホッとする。

    「お久しぶり。また会ったわね」

     ふと気を抜いた瞬間、目の前にゴドルフィンバルブが現れる。トッポギの頃から多少雰囲気が明るくなったようで、見ただけで気分が和らぐような笑みを浮かべていた。
     だが、今の俺にそんな余裕はない。自分はともかく担当や周囲の人までガベージフラワーの影響を受け始めている。今ここに呼び出されたというのならせめてそれを解決する糸口くらいは見つけなければ。

    「お久しぶりです。あの、ガベージフラワーの件についてお話が──」
    「今悩まされているから何とかしてほしい、という事ね? 大丈夫。出来るだけの事はしてみるわ」

     ……話が早くて助かる。早すぎて少し戸惑う所はあるが。出来るだけの事、という言葉に引っ掛かる物を感じた俺はそこについて詳しく話を聞いてみる。

    「そうね……以前ここは『極度に疲労したウマ娘の魂が来る場所』と言ったわよね? ここは私が許したウマ娘の魂であればどんな子でも入れるようになっていて、呼び寄せさえすれば死者であろうとここに来る事ができる。つまり、ここは全てのウマ娘の魂と通じる事のできる空間なの」

     でもね、とゴドルフィンバルブは少し張り詰めた顔になる。

    「全ての魂を無制限に呼び寄せられる訳ではないの。あくまでもこの空間に入るかどうかはその子次第で、向こうが強い力で拒否すれば私の干渉を受けない事もできる。一応女神の力で無理やり従わせる事もできるけど……そこまでするにはかなりの時間が掛かるわ」
    「つまり、今の状態だとガベージフラワーを止める事は難しいと?」
    「そう。あなたの身体の中にガベージフラワーが居続ける限り、あなたはガベージフラワーに悩まされ続ける事になる。あなたの視界に現れる程度の霊障なら消してあげられるけれど、それ以上となると私からはどうにもし難いわね」

     そんな馬鹿な……。じゃあ一体どうすればいいと言うんだ? このままガベージフラワーに死ぬまで取り憑かれ続けるしかないのか?



    「いいえ。二つ方法があるわ」

  • 64二次元好きの匿名さん23/12/08(金) 01:05:07

    > あなたの身体の中にガベージフラワーが居続ける限り

    肝試しの時に現れたというより、

    トッポギの妹同様にトレーナーさんに入ってたのが霊地の力とかをきっかけに顕現したっぽい?


    トッポギ姉妹の場合はその成立や安田で自爆する動機まで姉妹関係が絡んでいたけど、

    こっちはそもそも面識がないんだもんな……

    フォールに一度とっちめられたことでちょっと対話できるようになってたりしないかなあ

  • 65二次元好きの匿名さん23/12/08(金) 01:18:42

    「二つ……それは一体?」

    「一つはあなたと彼女が話し合ってもう2度と出てこないように説得する道。もう一つは──ウマ娘の身体を捨てて彼女と縁を切る道」


     雷に打たれたような衝撃が俺の身体を駆け巡る。そうか、そういう決着の仕方もあるのか……。


    「もちろん、どちらも難しい道である事に変わりはないわ。ゴールの位置を決めるのも、ゴールしたと納得するのもあなたの心次第。どちらが正しいという問題ではないから」


     ゴドルフィンバルブは厳しく、感情を交えない声で俺にそう伝える。

     ……それはまるで、どちらを選ぶか今すぐには決められそうにない俺を激励するかのようだった。


    「さぁ、ここまで来たご褒美に加護を与えましょう。あなたはどちらを願うのかしら?」


    dice1d2=1 (1)

    1.フォールの健康 2.自分の健康

  • 66二次元好きの匿名さん23/12/08(金) 01:36:02

    どこまでも誰かのために生きている……
    しかも単なる自棄じゃなくてこれでも自分にできることは(他社に使うためとはいえ)きっちり自分でやってるからね
    フォールのメニューもだがトッポギをきっかけに始めた第3の道である体質改善も今やほとんど完全に近いし(92/100)
    親と縁を切れず和解を図るところもあるしこれもなんか第3の選択をとりそうだなあ
    例えば出てこないではなく危害を加えないように説得とか手を取り合うとか
    後者が実現するのなら領域入りのキーにもなりそうな気がする

    あと人間に戻ると縁を切れるってあたりやっぱりウマ娘の亡霊との憑依合体でウマ娘の身体になってんのねこれ
    こうなるとトッポギの妹似というのはガワというより下の子のオーラとかの話だったのかな

  • 67二次元好きの匿名さん23/12/08(金) 09:58:43

    フラワーサイドが正気を取り戻してくれればまだ対話の余地がありそうなものだけど…

  • 68二次元好きの匿名さん23/12/08(金) 14:35:45

    保守

  • 69二次元好きの匿名さん23/12/09(土) 00:49:59

    ーイ

  • 70123/12/09(土) 01:08:34

    「フォールを守ってあげて下さい。俺にはガベージフラワーに殺される理由がありますけど、フォールは関係ありませんから」
    「分かったわ。彼女にもしもの事がないよう、女神の加護で守ってあげるわね」

     そう言うと、ゴドルフィンバルブは少し寂しそうな微笑みを浮かべた。

    「……あまりガベージフラワーを嫌わないであげて。本当はあの子も不運に遭ってしまった側の人間なんだから……」
    「それは……いえ、分かりました。彼女が亡くなったのは彼女のせいではないですしね」

     そう言うとゴドルフィンバルブは少し複雑そうな顔をして口を開く。だが、間の悪い事に目覚める時間が来てしまったようで──。



    「………」

     気が付くと現実に戻っていた。
     ……ゴドルフィンバルブは、俺に何を伝えようとしたのだろう……?

  • 71二次元好きの匿名さん23/12/09(土) 01:14:26

    同じく憑依合体してたトッポギの妹は自害してたが、
    自分から選択して母親を助けたから
    ある意味本人のせいだとか言いたかったんだろうか?
    いやそんな揚げ足取りみたいな話でもなさそうだし気になるな

  • 72二次元好きの匿名さん23/12/09(土) 03:21:20

    交通事故に実は隠された原因があったとか?

  • 73二次元好きの匿名さん23/12/09(土) 05:55:40

    >>25

    だからと言って、なあ

  • 74二次元好きの匿名さん23/12/09(土) 13:46:21

    ショック度かなり低いから、だからと言って自分を消さなきゃ滅ぼさなきゃってわけではないんだろうとは思う
    体質改善も続けてるし
    自分の問題に対して助言はありがたくても介入はされたくないのかもしれないね

  • 75二次元好きの匿名さん23/12/09(土) 15:04:27

    保守

  • 76二次元好きの匿名さん23/12/10(日) 02:07:38

    ーイ

  • 77二次元好きの匿名さん23/12/10(日) 03:33:20

     南部杯が終わり、10月も後半へと進んでいく。9月になっても残っていた暑さはどこかへ消え、冬に向けて色んな物が少しずつ変わろうとしていた。

     俺はゴドルフィンバルブの夢を見た日、練習終わりのフォールを呼んで全てを話した。フォールは真剣な顔をして最後まで俺の話を聞き、静かに口を開いた。


    「……つまり、トレーナーさんはお姉さんと直接対峙するかウマ娘を辞めるかしないといけないと。トッポギさんやジュエルには言ったんですか?」

    「いや、まだだ。言うつもりではあるけど、その前にフォールの意見を聞きたくて」

    「ふ〜ん……」


     フォールは難しい顔をして黙る。考えているような、躊躇っているような、そんな雰囲気を醸し出していた。


    「私は……トレーナーさんが決める事だと思うので何とも言いがたいです。私が下手に望みを言ったらトレーナーさんはそれに従っちゃいそうですし。最後はトレーナーさんが決めなきゃダメですよ」

    「いやいや、俺だってそこまで芯のない人間じゃないさ。あくまでも参考にするだけで最後は自分で決断はするよ」

    「……まぁ、それでも私個人の意見を言うのであれば、私は人間に戻るべきだと思います。ウマ娘の身体で居続けて酷い目に遭うくらいなら、人間に戻って平穏に暮らす方が絶対に良いでしょう?」


     それでトレーナーさんはどっちを選ぶんですか、と机に自分の右手と左手を置くフォール。俺が選ぶのは……。


    dice1d2=2 (2)

    1.ガベージフラワーを説得

    2.ウマ娘の身体を捨てる

    (※ここはエンディングには関与しません)

  • 78二次元好きの匿名さん23/12/10(日) 11:34:57

    結局トレーナーさん一人だとあまり積極的にはなれないってところかな
    思い返せば親とはいろんな人に促された結果として色々進展したけど最初は気圧されるばかりだったしね

  • 79二次元好きの匿名さん23/12/10(日) 20:21:15

    保守

  • 80123/12/11(月) 02:14:53

    展開が全然思いつかない……
    どんな結末に繋げようかめちゃくちゃ悩んでます

  • 81二次元好きの匿名さん23/12/11(月) 02:25:49

    実のところその2択だけでトレーナーさんが考えるとはと思ったとこはある
    (ダイススレだから実際そうなった方が当たり前なんだけど)
    あとはウマ娘の身体を捨てると言っても元の人間に戻るのかは違う話だしね
    男にまで戻るのか女のままなのかは別として真理を対価にするような清々しい戻り方であったらいいなあ

    ……なんて一読者のこちらも予測がつかないから確かに主さんも悩むよなって

  • 82二次元好きの匿名さん23/12/11(月) 02:28:45

    と思ったけどエンディングに関与しないからまだガベージフラワーとなんかある可能性もあるし
    トッポギやジュエルにも聞くだろうし
    あーうん、これは確かに主さん大変なやつ……
    ともかく待ってるのでどうか焦らずに

  • 83二次元好きの匿名さん23/12/11(月) 10:34:39

    ダイス任せだから前もって筋書きを作れないもんなあ

  • 84二次元好きの匿名さん23/12/11(月) 13:25:34

    保守

  • 85二次元好きの匿名さん23/12/11(月) 23:07:14

    最後にこの4人が笑っていてくれるならどんな結末だろうと受け入れる

  • 86二次元好きの匿名さん23/12/12(火) 01:55:35

    「俺は……うーん……人間に戻った方が良い、のかな?」
    「完全に私に引っ張られてるじゃないですか」

     フォールは呆れた顔で溜息をついた。

    「とりあえず、トッポギさんに相談してみたらどうです? 最後はトレーナーさんが決めるべきとは言いましたけど、相談くらいはしてもいいんじゃないですか?」
    「うーん……」



    「──それで、私の所へ来たと」
    「何つーか、師弟揃ってウジウジするタイプだよね。アンタら」

     そんな訳で、俺はトッポギ(と付き添いのジュエル)に相談しに行った。

    「それで、どうですかね? やっぱり人間に戻った方がいいんでしょうか?」
    「私の意見は前と変わらないよ。ウマ娘で在り続ける事で君に危険が及ぶのなら、私は今すぐにでも人間に戻ってほしい」
    「あたしはどっちでもいいけどね。力を制御する訓練も上手く行ってるんでしょ? 後は悪霊さえどうにかなればウマ娘として生きてもいいんじゃない?」

     フォールは嫌がるだろうけど、とジュエルは付け加える。

  • 87二次元好きの匿名さん23/12/12(火) 02:29:28

    「逆にさ、人間に戻りたくない理由とかあんの? どうしてもウマ娘じゃなきゃヤダって思う事とか」

    「それは……」


     ……そう思う事はある。人間に戻りたくないとは言わずとも、ずっとウマ娘のままでいたいと思う事が。

     だが、それはあまりにも個人的すぎる理由だ。とても他人に話せるような物じゃない。


    「……なに、何でそこで黙るのさ。もしかして何かヤバい性癖でもあんの? 女の身体じゃないと満たせないような──」

    「ちがっ、そうじゃないって!!」

    「ジュエル。あまり他人のプライベートに首を突っ込む物ではないよ」


     分かっているのかいないのか、トッポギがジュエルを窘める。俺を見る目付きに少し警戒した物が入っている気がするのは考えすぎか。


    「……サンライク君、君にもウマ娘の身体に執着する気持ちがあるのは分かった。それがどういう理由かはともかく、君がどんな選択をしても私は応援しているよ。きっとフォール君やここに居るジュエルもね」

    「トッポギさん……」

    「思う存分悩みなさい。その代わり、後悔しない選択をきちんと選ぶんだよ」


     トッポギはそういうと、手元のコーヒーを一杯飲んで静かに窓の外を見つめる。

     窓の外はすっかり暗くなっていて──冷たい夜の闇が辺りを包んでいた。


    トレーナーの力量dice1d20=8 (8) +191

    トレーナーの体質改善dice1d20=16 (16) +92


    トレーナーの体調dice1d100=35 (35)

    フォールの体調dice1d100=56 (56) +20

    10以下で絶不調、20以下で不調、60以下で普通、80以下で好調、100までで絶好調

  • 88二次元好きの匿名さん23/12/12(火) 03:10:12

    このレスは削除されています

  • 89二次元好きの匿名さん23/12/12(火) 03:13:02

    マイルCSまでの日数分?テーブル減ったけど無事体質は改善しきれたか
    体調も悪くはないしあとはガベージフラワーや両親のことだけだな

    もちろん理由としては家族のことが一番大きいだろうけど、
    実際トレーナーさんってウマ娘あるいは女性のままのが性に合ってそうではあるのよな
    それはある日気がついた時から渇望があった育ち、
    ここまでトレーナーとして成長したり担当や同輩と競えたりした自己実現、
    あと女物を着ること自体よりもそれ系のオシャレを見られる方を恥ずかしがることとかもあるけど、
    何よりTSしても肉体に精神が染まる様子が全くないのが逆にそれっぽいのよね
    染まる以前にその規格に心が合っているから変わりようがないというかそんな印象

  • 90二次元好きの匿名さん23/12/12(火) 10:38:12

    それは思った
    「現状こそがありのままの姿」みたいな感情が根底にあるかもしれない

  • 91二次元好きの匿名さん23/12/12(火) 14:05:56

    保守

  • 92二次元好きの匿名さん23/12/13(水) 01:17:30

    保守

  • 93二次元好きの匿名さん23/12/13(水) 01:47:24

     11月下旬、京都レース場。地下バ道は秋の終わりに差し掛かり、緩やかな冷たさに包まれていた。
     俺は不安と緊張を胸に抱きながら、パドックの方を睨むようにして見つめる。もしかしたらこれで終わってしまうかもしれない。そう思うと中々一歩を踏み出せずにいた。

    「……いよいよだね。サンライク君」

     不意に声を掛けられて後ろを振り返ると、いつの間にかトッポギとジュエルが佇んでいた。

    「トッポギさん……」
    「サンライク君、君がこの後どんな選択をするか私には判らない。けれど──今だけは全てを忘れて、死なない程度に精一杯走りなさい。君の為にも、彼女の為にもね」
    「……はい!」

     トッポギの言葉が俺の胸に響く。その鼓動がやがて全身へと伝わり、身体の硬さが取れていくのを感じた。

    「ジュエルも応援しに来てくれてありがとな。俺、全力で走るから──」
    「いや、あたしはアンタじゃなくてフォールの応援に来たんだけど。このバカトレーナーと一緒にしないでくれる?」

     俺の言葉をにべもなく否定するジュエル。いやまぁ、確かに俺よりフォールの方が仲が良いけども……。

    「それから、忘れない内に言っとくけどさ」
    「ん?」
    「……ありがとう、トレーナーを止めるのに協力してくれて。トレーナーが居ない間、ずっと練習見てくれたし。言う機会無かったから今言っとく」

     そう言うと、ジュエルは優しく微笑んだ。
     ……いい人達だな。ジュエルも、トッポギも。

    「さ、もう行きなさい。彼女が待っているよ」
    「はい、行ってきます!」

     俺は2人に手を振りながらパドックの方へ歩いていく。いつの間にか俺の脚を止める物は無くなっていて、穏やかな気持ちでレース場へと向かう事が出来た。

  • 94二次元好きの匿名さん23/12/13(水) 02:09:35

    「ようやく、来てくれましたね」

     パドックの手前に立ち塞がる影が一つ。
     俺の担当にしてライバル──サンフォールだ。

    「長かったな。ここまで」
    「ええ。途中少し待ちくたびれました」

     フォールとの思い出が俺の脳裏を駆け巡っていく。
     出会っていきなり逆スカウトされた時の困惑。初めて制服姿を見せた時の塩対応。最初に併走した時の感触。一緒に服を選んだり、初詣をしたり、チョコを貰ったり。俺が倒れた時はずっと側に居てくれて。
     もう一緒に走れないかもと言った時は本当に可哀想だった。それからトッポギを助ける為にジュエルと脚質改造をして、俺も自分の体質を変えようと必死に努力して……。

     そして今──ここに立っている。
     フォールと共に走ってきた3年間。喜びながら、苦しみながら。その集大成が……ここにある。

    「そういえば、トレーナーさんのご両親は?」
    「……来てるとは聞いてない。もしかしたらここには居ないかもしれないな」
    「そうですか……。なら、ご両親の目に入るような最高に熱いレースをしなければなりませんね」

     それから、とフォールはレース場の隅を指差す。

    「今回も来てるみたいです。こうして直視しても何も起きないみたいですけど……」

     フォールが指差した方を見ると、そこにはガベージフラワーが静かに佇んでいた。しかしなぜか正面から姿を捉えても何も起きない。もしかしたらゴドルフィンバルブの加護が働いているのかもしれないな。

  • 95二次元好きの匿名さん23/12/13(水) 02:31:14

    いよいよだな
    固有合戦は果たして見れるのだろうか
    あとトレーナーの両親はまさか罪を告白しに現れたりとかしないだろうな

    後今更だけど姉妹でガベージの方が冠名ぽくなったからか
    サンライク君で固まった感のあるトッポギからの呼称がなんか面白い

  • 96二次元好きの匿名さん23/12/13(水) 03:16:16

    「──ああ、本当に長かった。トレーナーさんに負けたあの日から、もう三年も経つんですね」


     フォールが懐かしむような目になる。その目は楽しい記憶だけでなく、古傷をなぞるような悲しみも湛えていた。


    「トレーナーさんがウマ娘になってから、ずっと理不尽の連続でした。トレーナーさんに負けて、ジュエルに負けて、それでも必死に走ってたらトレーナーさんの身体に異常が見つかって、トッポギトレーナーが死にかけて……。ずっとずっと苦難の連続でした」


     フォールが険しい顔になり、拳を握りしめる。

     苦難の連続。フォールから見た3年間はきっとそんな印象だったのだろう。それは自分だけの軌跡ではなく俺の歩いてきた道も含めた、彼女だけの優しい懐古だった。


    「……でも、いつだって二人で乗り越えてきましたね。トレーナーさんと私で、ずっと一緒に戦ってきた。その経験がここまで私を連れてきてくれました。だから──」


     ……不意にフォールの目が俺を捉える。そこには強い決意と獰猛なほどの闘志が宿っていた。


    「今日も乗り越えてみせます。トレーナーさんと鍛え上げたこの脚で、あなたという理不尽を破ってみせる」


     ビリ、と一瞬で空気が張り詰める。このレースが俺とフォールにとって最高の物になると本能が告げていた。

     ……いいだろう。俺も君の壁として、最後まで全力で立ちはだかってやるさ。

     俺は胸に灯った闘志の炎を静かに燃え上がらせながら、ゲートへと歩いていった。


    トレーナー dice1d100=87 (87) +(199+85)÷5

    フォール dice1d100=6 (6) +(199+88)÷5

    フラワー dice1d100=27 (27) +300÷5

  • 97二次元好きの匿名さん23/12/13(水) 03:24:47

    トレーナーさんのダイス=フラワーの達成値なのがなんか面白いな
    フォールはダイス部分が壊滅してるが大丈夫だよな……?
    女神の面目にかけて守ってやってくれよゴッさん

  • 98二次元好きの匿名さん23/12/13(水) 08:48:07

    大分ダイスがあらぶってるな
    こりゃどうなるんだ

  • 99二次元好きの匿名さん23/12/13(水) 16:26:10

    保守

  • 100二次元好きの匿名さん23/12/14(木) 02:23:38

    保守

  • 101二次元好きの匿名さん23/12/14(木) 09:43:29

    『──コーナーを曲がってレースは最終直線へと入っていきます!先頭サンフォール! 2番手はサンライクガベージ!』
    「くそっ……!」

     何というペースだ。ここまでずっと先頭を走ってきたのにどれだけ速度を上げても全く追い付けない。彼女のデータは全て頭に入っているつもりだったが、実戦ではここまで差が出る物なのか……!
     ……いや違う。フォールもこのレースで自分の限界を破ろうとしているんだ。限界ギリギリで走っていても差が付かない事を解っているから、限界を超える走りで俺を突き放そうとしている。
     そして、今のフォールには『それ』が出来る。前走で見せたあの走りがあれば、恐らく今までの俺を倒す事が出来るだろう。だが──。

    「くっ……! うっ……!」

     ……そんな走りは都合よく出せる物じゃない。本来なら色々な条件を満たしてようやく入れる様な領域だ。
     もちろん彼女もこんな神頼みの戦法を望んでやった訳じゃないだろう。実力も戦術も全て見切られている俺に確実に勝つ為にはこうするしか無かったのだ。
     事実、今の俺は100%の実力を振り絞ったフォールを躱し切れていない。同じ戦術、同じ体格、同じ才能、同じ練習、同じ実力。ゆえに最初の位置取りがそのまま勝敗の差となる。フォールはそれを見越してこの状況を作り、限界を超える走りで俺を突き放そうとしたのだ。
     このまま行けば俺は負ける。何事もなくフォールに逃げ切られて終わりだ。なら、どうする──?

    「……決まってんだろ」

     120%の走り──『領域』で勝つしかない。
     思い出せ、トッポギとの特訓を……!!

  • 102二次元好きの匿名さん23/12/14(木) 12:42:18

    来るか……!?

  • 103二次元好きの匿名さん23/12/14(木) 22:34:19

    保守

  • 104123/12/15(金) 01:30:32

    すみません、明日の朝か昼に投稿させてもらいます
    一応ラストまでの道筋はある程度考えているので後は書くだけです
    その「書くだけ」が大変なんですけどね…

  • 105二次元好きの匿名さん23/12/15(金) 11:34:51

    お疲れ様です
    大変だと思いますが楽しみに待っています

  • 106123/12/15(金) 12:11:59

    『──サンライク君、少し試したい事があるのだが』

     それは安田記念の少し後、トッポギに教えを乞う様になってからの事だった。2週間ほど練習を見てくれたトッポギが突然『フォームを変えてみてはどうか』と提案してきたのだ。

    『フォームを変える……ですか? でも、俺はこのフォームでずっと安定させてきましたし、一応科学的にも理に適った物だと思うんですけど──』
    『いや、何も抜本的な改革をしようと言うんじゃないさ。ただもっと君が走りやすい形に出来るのではないかと思ってね』

     トッポギはそう言うと、俺にトラックを一周全力で走るように指示する。俺は何をする気かさっぱり分からないまま、指示通りに走ってみた。

    『それで、どうだった? 走りにくい部分は無かったかな?』

     走りにくい部分と曖昧に言われても答えようが無かったが、とりあえず走った時に感じた事を言語化してみる。トッポギは俺のしどろもどろな感想を静かに聞いた後、紙に何か書きながら喋り始めた。

    『では、今自分が指摘した部分を変えてもう一度走ってみよう。タイムは計らないから自分の感覚で好きな様にやってみなさい』
    『え、いいんですか? それじゃ悪癖が付いてしまうんじゃ……タイムだって落ちちゃいますよ』
    『……君は少し欲張りすぎだな』

     いいかねサンライク君、とトッポギは優しく微笑んで俺を見る。

    『君が今目指すべきは科学的に正しい走りでも速く走れる走りでもない。ウマ娘の本能に従った、感覚と肉体がきちんと噛み合った走りだ。精神に身体的制約を意識させるのではなく、身体を心の赴くままに走らせてみる。全てのウマ娘の原点はそこにあるのだからね』

     トッポギは筆を動かす手を止め、スマホのカメラを俺に向ける。

    『どの様なフォームなら自分が走りやすいか? どういった条件下なら肉体と感覚を合致させられるか? 今やるべきはそういった事を一つ一つ積み上げ、君の身体に合う最良の形を見つけ出していく事だ。とりあえず次はコーナーで少し利き手側に傾いてみて──』

  • 107二次元好きの匿名さん23/12/15(金) 15:39:08

    保守

  • 108二次元好きの匿名さん23/12/16(土) 01:21:55

    割と寸前でのフォーム変更、「本来なら」ご法度なんだろうなぁ

  • 109二次元好きの匿名さん23/12/16(土) 01:54:59

    選手兼トレーナーとしてあらゆる角度や在り方の走りを理解してる師弟だからこそできることだろうね
    トッポギが原点はそこにあると言う通り、
    トレーナーさんも言わば根本の基本がおそろかなまま応用の技術や知識だけで第一線を走ると言う絶技をやっていたわけだしな

  • 110二次元好きの匿名さん23/12/16(土) 04:46:58

     トッポギの提唱するトレーニングはまさしく"常識外れ"だった。
     理論的な走りから感覚に委ねた走りに回帰し、また理論的な走りに戻ってくる。走行フォームのスクラップアンドビルドをたった数ヶ月で行うという、普通のウマ娘では考えられない指導を提案してきたのだ。
     正直なところ、俺はかなり不安だった。こんな短期間でのフォーム改造なんて出来るはずがない。もしマイルCSに間に合わなかったら……いや、それ以前にフォーム改造自体が失敗したら……。

     ……だが、トッポギはそれを完璧に成し遂げた。わずかな試行回数で正解を見つけ出し、浮いた時間を全て俺の慣らしに費やすという離れ業を見せたのだ。そのお陰で俺は肉体に負担を掛けないフォームを体得し、以前と遜色ないほどの走りが出来るようになった。
     しかし、彼女の指導は俺にもう一つの効果を齎した。これからの走りを根底から変えてしまうような、とてつもなく大きな効果を──。

     『領域』に踏み入るには幾つかの条件がある。
     例えば一定以上の才能や練度、その日の体調、コースの形状、バ場のコンディション、果ては人気や天気の良し悪しなど、人によってありとあらゆる物が条件となりうる。
     だが、大概のウマ娘はそういった条件を自覚できない。無数にある条件を組み合わせて自分だけの最適解を見つけ出すというのは、砂漠に落ちた針を探すに等しいからだ。
     しかし俺とトッポギは自分の走りを確立していく中でその条件を見つけ出した。自分が最も集中できる状況。『領域』への鍵となる、俺だけの最適解を。



     ──そして、今。

    「う、おおおおおおおおおおおッ!!」

     俺は、全ての条件を整えた。
     『領域』の鍵が──開く。

  • 111二次元好きの匿名さん23/12/16(土) 13:14:12

    そう考えると自在に発動したり、入れるけど発動しないことを選択したりしてた
    シングレのタマやクリークってやっぱり凄まじいんだなあ……

  • 112二次元好きの匿名さん23/12/17(日) 00:26:23

    保守

  • 113二次元好きの匿名さん23/12/17(日) 02:28:53

     ──何も見えない。何も聞こえない。
     いや、感覚はちゃんと働いている。どこまでも続くような直線の景色。傍から聞こえてくる観衆の歓声。ターフの僅かな凹凸さえ感じられる。
     だが、どれもこれも思考の俎上に上がってこない。情報が脳を素通りして、直接手足に伝わっていくような感覚が俺を支配していた。

     ……俺、速いなぁ。
     眼前を流れていく情報に触れて、俺は他人事のように今の自分を分析する。横に並んでいたフォールはいつの間にか消え、俺はどこか一人旅をしているような気楽さを感じ始めていた。

    『もういいでしょ……!? 早く返してよ……っ!!』

     ……ふと、背後から声が聞こえた。少し涙声の、幼い少女の声だった。

    『あんただって分かってるはずなのに、何で……!!』

     誰だろう。フォールの声とは全然違うけど、どこか懐かしい声だ。最近聞いた声じゃない。もっとずっと昔、子供の頃よりも昔に──。



    『──優勝はサンライクガベージ!! 2着はサンフォール!! 3着は……』
    「あ……」

     声の主を思い出す前にゴールしてしまった。だが、あの感じは多分……。

    「完敗です、トレーナーさん。……トレーナーさん?」
    「行こう。決着はまだ付いてないらしい」

  • 114二次元好きの匿名さん23/12/17(日) 09:21:36

    領域という精神もある種高次のところに入る状態だからこそ声も聞こえたかな

    トッポギ姉妹の場合はすれ違いこそあれ双方向の感情があったし
    姉の問題を妹が裏で支えている前提もあったから今その延長で共存できてるが、
    ガベージ姉弟は面識がないからフラワーの立場だと
    泥棒と被害者の認識になるのも当然ではある
    それに憑依合体で姉が人生をやりたい肉体が実存してると思われる以上、
    単にウマ娘の体を捨てれば結局肉体は捨てられるだけで返されはしない
    そうなるとフラワーの返してを叶えるのは共存か明け渡しかになるわけだが
    トレーナーさんの性格上後者が普通にあり得るんだよな
    良い勝ち方もしたし原因である両親と和解すればまた変わるかもしれないが……

  • 115二次元好きの匿名さん23/12/17(日) 16:26:41

    領域に入ることでできなかった対話も可能になるのかな?

  • 116二次元好きの匿名さん23/12/18(月) 02:12:56

    保守

  • 117二次元好きの匿名さん23/12/18(月) 02:18:22

    「ちょっと、トレーナーさん! どこ行くつもりなんですか!? まだウィナーズサークルにも行ってないのに──」

     慌てた様子のフォールを尻目に地下バ道を進んでいく。なぜかはわからないが、誰かが俺を呼んでいるような気がした。恐らく……ガベージフラワーだろう。
     奥へ奥へと進む度、俺の心が騒ついていく。緊張で冷や汗が流れ、肚の中を黒い物が満たしていく。荒れ狂う思考を鎮めながらぐいぐいと前へ歩いていった。

    「いい加減にして下さいトレーナーさん!! そろそろ戻らないと……えっ?」
    「あ……」

     ……地下バ道を進んだ先。
     俺の控室の前に両親が立っていた。

    「……どうして、ここに?」
    「……あの子が連れて来たのよ。いきなり目の前に現れて、私達をここまで。そしたらあなたが……」

     母さんは俺と目を合わせないよう、俯きながら答えた。父さんも苦悶の表情を浮かべながら壁の方を向いている。そしてその肩越しに──ガベージフラワーが見えた。

    「……やっぱり、お前か」

     思わずそう呟いて歩き出そうとすると、強い力で腕を掴まれる。後ろを振り向くとフォールが目に涙を浮かべながら首を振っていた。

    「……だめ。駄目です。行っちゃダメ」
    「フォール……」
    「──行くのか、サンライク君」

     フォールの後方からさらに声が聞こえてくる。そちらに目を遣るとジュエルとトッポギが少し早足でこちらに向かってきた。

  • 118二次元好きの匿名さん23/12/18(月) 02:21:50

    ここでフォールが「押してダメなら引いてみろ」の精神でついていったらどうなるかな……
    なんてことを思ってしまう
    それに限らずとも南部杯でガベージフラワーに勝ったことがなんらかのフラグになってると良いのだが

  • 119二次元好きの匿名さん23/12/18(月) 02:49:28

     カラ、と車椅子を停めるトッポギ。その表情はどこか苦しそうな、悲しい顔だった。

    「……私は君を止めないよ。私も同じ状況で止まらなかったからね。だが──せめて死に急ぐな、サンライク君。君の友人の心からの願いだ」

     トッポギはそう言うと、俺に決断を委ねるように何も喋らなくなる。それに代わるようにジュエルが俺の方へ歩み寄り、俺の胸倉を掴んで射殺すように睨んだ。

    「……おいバカトレーナー2号。アンタの勝手な自殺願望でフォール泣かしてんじゃねえぞ。こっちはアンタらの帰りを待つ事しか出来ねえんだ。あのバカトレーナーがぶっ倒れた時の気持ちを思い出して、それでもフォールを置き去りにしたいなら行ってこい。それが嫌ならもっと考えて動けよ」

     そう言ってジュエルは突き放すように手を離した。

     俺はフォールと真正面から向き合う。
     ……フォールは泣いていた。声を必死に噛み殺しながら、それでも溢れる涙を抑えきれないような様子で。
     もう俺の腕を掴む力はほとんど感じられない。今なら簡単に振り解いてガベージフラワーの元へ行けるだろう。
     ……でも、そうじゃない。そうじゃないだろ。

    「一緒に行こう、フォール」
    「え……?」
    「この前、ゴドルフィンバルブに何があっても君だけは助けてもらえるよう頼んだんだ。もう君を置いて行ったりしない。最後は二人で一緒に行こう」

     フォールは少し唖然とした様子だったが、すぐに涙を拭って俺の手を握り直した。

    「分かりました。私も一緒に行きます」
    「よし」

     そして俺達はガベージフラワーの前に立つ。
     俺は禍々しいオーラの中にどこか悲しい雰囲気を感じながら、フォールと共にガベージフラワーの身体に手を触れた──。

  • 120二次元好きの匿名さん23/12/18(月) 02:55:49

    本当に一緒に行った!?
    さてどうなるかな

  • 121二次元好きの匿名さん23/12/18(月) 10:04:44

    続きがめちゃくちゃ気になるところで引きになっちゃった

  • 122二次元好きの匿名さん23/12/18(月) 19:13:03

    保守

  • 123二次元好きの匿名さん23/12/19(火) 02:18:22

  • 124123/12/19(火) 02:59:28

    本当に申し訳ないのですが、金曜までお休みさせてもらってもよろしいでしょうか……
    卒業論文の制作が忙しすぎて創作が手に付かないので……これ落とすとマジで留年なので……なにとぞ……

  • 125二次元好きの匿名さん23/12/19(火) 03:16:48

    本当お疲れ様です
    いやそれはマジでリアル優先してください
    というか卒論やりながらこんな一大シナリオ書いてたのすげえな……

  • 126二次元好きの匿名さん23/12/19(火) 11:16:58

    流石に人生に影響するタイプの問題だからね

  • 127二次元好きの匿名さん23/12/19(火) 14:22:38

    このレスは削除されています

  • 128二次元好きの匿名さん23/12/19(火) 22:10:00

    私は貴方が戻るまで保守を続ける

  • 129二次元好きの匿名さん23/12/20(水) 02:50:10

    保守ーイ

  • 130二次元好きの匿名さん23/12/20(水) 12:09:11

    ho

  • 131二次元好きの匿名さん23/12/20(水) 20:46:24

    捕手

  • 132二次元好きの匿名さん23/12/21(木) 08:14:27

    h

  • 133二次元好きの匿名さん23/12/21(木) 18:18:50

    保守

  • 134二次元好きの匿名さん23/12/22(金) 01:28:49

    金曜日になりました保守

  • 135二次元好きの匿名さん23/12/22(金) 09:46:11

    捕手

  • 136123/12/22(金) 12:42:19

    書き込もうとしたらWi-Fiにホスト規制掛かってるんですけど…なんか俺悪いことした…? したかも…

  • 137123/12/22(金) 12:43:43

    >>136

    今は4Gから書き込んでます

    まぁ書き込める内に最後まで書くしかないね…

  • 138二次元好きの匿名さん23/12/22(金) 20:18:46

    自分も11時ごろ急に携帯で書き込めなくなったな…
    PCはOKなんだけど、規制基準がよくわからん

  • 139二次元好きの匿名さん23/12/22(金) 23:59:32

    ホストなら広域規制だね
    特にしてなくても喰らうやつだから書けるうちに書こう

  • 140二次元好きの匿名さん23/12/23(土) 08:18:20

    こればっかりはいつ解除されるかわからないからな

  • 141二次元好きの匿名さん23/12/23(土) 15:59:45

    保守

  • 142二次元好きの匿名さん23/12/24(日) 01:15:52

    ーイ

  • 143二次元好きの匿名さん23/12/24(日) 11:48:13

    catcher

  • 144123/12/24(日) 12:13:57

    皆さまお疲れ様です、今日の夜には上げられそうです
    なぜ俺はクリスマスイブに一人でスマホの前でうんうん唸りながら1行2行書いては消す作業をしてるんだ…

  • 145二次元好きの匿名さん23/12/24(日) 12:19:39

    お疲れ様です
    とんでもねえ、それってつまり1がサンタってことじゃあねえか

  • 146二次元好きの匿名さん23/12/24(日) 22:42:44

    今夜はサンタさんがお話の続きをプレゼントしてくれるんだ
    だから僕はいい子にして保守するんだ

  • 147二次元好きの匿名さん23/12/24(日) 22:46:23

    保守

  • 148123/12/25(月) 03:08:03

     ……目を開けると、そこには見慣れた草原が広がっていた。

    「ここは……?」

     横を見ると困惑した表情で辺りを見回すフォールが立っている。どうやら一緒に入ることが出来たらしい。

    「大丈夫、ここは──」
    『ようやく来たわね』

     俺とフォールはハッとして正面を向く。ゴドルフィンバルブじゃない、聞き慣れない声。ガベージフラワーだ。

    『もう逃げ場は無いわよ……!! さぁ、早く返して!!』
    「ちょ、ちょっと待ってください! あなたはトレーナーさんに何を返してほしいんですか!?」
    『何をって……ああもう、一言では言いにくいの!! いいからさっさと人間に戻ってよ!!』

     全く要領を得ない説明にフォールは首を傾げる。すると突然横から強い光が溢れてきて、ゴドルフィンバルブが姿を現した。

    「──そこからは私が説明するわ」
    「あなたは……えっと、ゴドルフィンバルブさん? でいいんですよね? トレーナーさん?」
    「………」

     ゴドルフィンバルブは俺を見ると悲しそうな顔で口を開いた。

    「……人間をウマ娘にするにはね、ウマ娘の魂を肉体に入れる必要があるの。モチモチトッポギの時は妹さんを、あなたの場合はガベージフラワーを入れる事になった」
    「………」
    「でも、この子はそれを拒んだ。あなたの中に入りたくないって拒否したの。けれどあなたのウマ娘になりたいという思いがあまりにも強すぎて、無理やり一部を奪われてしまった……」
    「………」
    「今のガベージフラワーは半分しか魂が無いの。もう半分はあなた──サンライクガベージの中にある。あなたに返して欲しいのはその半分なのよ」

  • 149123/12/25(月) 03:09:00

     静かに、しかし滔々と説明するゴドルフィンバルブ。その姿はまるで、耐え難い物を耐えようとしているようだった。


    「その……もしこのままガベージフラワーさんの魂が戻らなければどうなってしまうんですか?」

    「ガベージフラワーの方が消えてしまうわ。彼の中に入っている方は既に肉体に固着しているけれど、この子の方は自分を保つのに十分な魂の量がないから」


     フォールは躊躇った様子で俺を見る。その時、ガベージフラワーが抑えきれないように口火を切った。


    『もういいでしょ!? 3年間ウマ娘になって、レースにも勝って、トレーナーとしても力が付いて……これ以上何が欲しいの!? もう返して!! わたしの半分返してよ!!』


     怒りと恐怖の入り混じった叫びが草原に響き渡る。それは切実な、悲鳴のような叫びだった。

     フォールは俺の出方を見るように視線をこちらに向けている。ゴドルフィンバルブは悲しげな眼差しを変えぬまま俺の顔を見ている。


     分かった、返そう。

     元々は俺も人間だ。フォールもそうしてほしいと望んでいたし、トッポギやジュエルもそうすべきだと言っていた。トレーナーとしての実力は比べ物にならないほど上がったし、ウマ娘としてGⅠも勝った。望まぬ結果ではあったが、両親とも決着を付けた。いい加減人間に戻る時間が来たんだ。

     ……俺は、自分の意思を絞り出すように口に出した。


    dice1d3=3 (3)

    1.嫌だ

    2.嫌だ

    3.嫌だ

  • 150123/12/25(月) 03:13:27

    「………………いやだ」

    「トレーナー、さん?」

    「嫌だ……返したくない……!!」


     自分の奥底に沈殿していたドス黒い感情が一気に吹き出す。胸が苦しくなり、思考が彼方へ追いやられていく。


    「20年だぞ……!? 生まれてからずっと苦しかった!! 誰にも愛されなくて、ずっと憎まれて!! 叶わないって思ってた願いが叶ったんだ!! それを返したいなんて、思う訳ないだろ……!!」


     以前、フォールは俺にこう聞いた。『女物の服や下着に抵抗感はないのか』と。

     ある訳がない。必死に努力して痩せた人間が以前よりサイズダウンした服を着たとして、喜び以外の何を感じるというんだ?

     毎日起きて鏡を見るたびに安堵する俺の気持ちがお前らに分かるか? 『今の俺はウマ娘なんだ』と心が晴れる気持ちが。嫌いな自分を捨てられた喜びが。

     ウマ娘になってから全部上手く行った。レースも、トレーナー業も、フォール達も。何もかもウマ娘になったから手に入った物ばかりじゃないか。


    「父さんの話を聞いて分かったよ……!! 俺は人間に産まれるべきじゃなかった!! ウマ娘に産まれていれば両親にも祝福された!! 今みたいに成功できた!! 誰も不幸にならずに済んだのに……!!」


     俺の人生は最初から間違っていた。間違っていたから不幸だったんだ。だったら……間違ってない今の状態を手放したくないと思うのは当たり前の事じゃないか。


    「……人間の俺なんてゴミだ。ゴミに戻ったらまた誰も俺を見なくなる。だから俺は……『サンライクガベージ』でなきゃダメなんだ……」


     サンライクガベージ。ゴミみたいな太陽。側から見れば紛い物の、滑稽なほど歪んだ太陽。

     それでも……俺にはその太陽が眩しすぎるくらい輝いて見えたんだ。


     ……空気が冷たく澱んでいく。

     フォールもゴドルフィンバルブも何か言おうとしている表情を浮かべているが、何も言葉が出て来ない様子で固まっている。

     その中でたった一人、ガベージフラワーだけが口を開き、言葉を発した──。


    dice1d2=2 (2)

    1.はあ〜〜〜???

    2.……分かったわよ

  • 151二次元好きの匿名さん23/12/25(月) 03:23:20

    このレスは削除されています

  • 152二次元好きの匿名さん23/12/25(月) 03:56:56

    各ダイス表で芝1600生える

    人間に産まれるべきでなかったのは一面の真実だがそれでも間違った人生があればこその今なんだよね
    ウマ娘に生まれていればここまでひたむきに3年間頑張ってきた原動力である
    苦しみや渇望が反転した強い活力がないから今みたいに成功できたとはとても思えない

    それに人間に産まれたから仕方なくトレーナーになった以上はこの動機自体もなくなる
    すると唯一人間時代に手に入れたものであるフォールとの出会いがなくなり、
    流石に年離れすぎで同期にもなりそうにないのでフォールは大成できない可能性が高い
    選手兼任トレーナーになることもないだろうから、
    縁がなくなったトッポギとジュエルは安田で不幸な結末になるだろう

    こうしてみるとトレーナーさんが最初からウマ娘に生まれていれば、むしろ不幸な人が増えたかもしれないんだな
    両親にしたって祝福はするかもしれないが人間だからと狂ってしまう親だから
    「ガベージフラワー2号」として歪な愛し方をしてた可能性は否定できないしね……

  • 153二次元好きの匿名さん23/12/25(月) 04:30:12

    そういえば今確認して気がついたが4人+故人2人の髪型や目の色とか耳飾りやアクセとかがどうなってるか不明だったんだな
    それでここまで読ませる話になってるの何気にすごい

  • 154二次元好きの匿名さん23/12/25(月) 11:44:56

    >>152

    確かに元々ウマ娘として産まれたとしても姉の代替品としてしか扱われ続けそうだから、プレッシャーも強くてこれはこれで潰れてそうだったかもなあ

  • 155二次元好きの匿名さん23/12/25(月) 20:48:18

    人間だったからこその今があって
    ウマ娘になったからこその今がある

    やるせねぇな…

  • 156二次元好きの匿名さん23/12/26(火) 00:31:50

    保守

  • 157二次元好きの匿名さん23/12/26(火) 08:41:58

  • 158二次元好きの匿名さん23/12/26(火) 09:18:15

    『……分かったわよ』

    「え?」


     ガベージフラワーは溜息混じりにそう言った。


    『アンタが自分の事を嫌いなのはよーく分かったって言ってんの! だからウマ娘のままでいたいってのも! ったく、いつまで経っても子供なんだから……』

    「ご、ごめんなさい……」


     ガベージフラワーは呆れた様子でこちらを見ると、また大きな溜息を吐いて口を開いた。


    『……そうね。わたしの言う事一つ聞いてくれたらアンタの中に入ってあげてもいいわ』

    「ほ、本当か!?」

    『ええ、本当よ』


     ガベージフラワーは真剣な表情で、正面から俺の目を捉えた。


    『アンタの身体、わたしに貸して』

    「それ、は……」


     ……トッポギから聞いた事がある。この世界ではお互いの合意があれば死者に自分の身体を渡す事ができると。

     だが、そうなれば俺の魂はガベージフラワーと入れ替わりで身体から出て行く事になる。もしそのまま身体が返って来なかったら、俺は……。

     ガベージフラワーは俺を恨んでいる。小さい頃に亡くなって未練もあるだろう。もしかしたら肚の中では俺に対する復讐や現世への復活を望んでいるかもしれない。

     さて、俺はどうするべきか……。


    >>163

  • 159二次元好きの匿名さん23/12/26(火) 09:21:15

    トッポギ姉妹の状況からえっ遊戯とかああ言う感じじゃなくて出ていくんだ?ってなったけど、
    そういや妹が表に出てきたことなかったな……
    さてどうしたものか

  • 160二次元好きの匿名さん23/12/26(火) 14:54:00

    信じて貸すのが一番安泰だと思うがどうか
    そもそもガベフラがこうなっちゃったのは魂の半分を強引に借りパクしたからで、元々は母親を庇って逝ってしまったいい子なのだから悪意とかは無い…と信じたい

  • 161二次元好きの匿名さん23/12/26(火) 16:16:17

    トッポギの方を見るに表に出なければ完全な形の魂でも二つ収められて知覚もできるみたいだし、
    ガベージフラワーの用事が済むまでフォールの体に匿ってもらえばもしもの時も彷徨わずには済むか……?
    ウマ娘化した二人がどっちも身内の魂だから難しい可能性もあるが

  • 162二次元好きの匿名さん23/12/26(火) 21:53:34

    でも実際自分の中に自分以外が入ってくるの怖くね?
    主導権渡してる時どこまで知覚できるか次第だけど

  • 163二次元好きの匿名さん23/12/26(火) 22:23:09

    信じてガベージフラワーに身体を貸し、その間自身はフォールにトッポギの妹みたいな感じで入れないか聞いてみる

    (160と162の複合)

  • 164二次元好きの匿名さん23/12/26(火) 22:23:35

    >>163

    (すみません160と161ですね 失礼)

  • 165二次元好きの匿名さん23/12/27(水) 04:16:10

    保守

  • 166二次元好きの匿名さん23/12/27(水) 09:20:54

    全姉妹ってことなら拒絶反応もあまりないのかな

  • 167二次元好きの匿名さん23/12/27(水) 13:08:12

    「……分かった、貸すよ」

     俺はガベージフラワーにそう告げる。ここで貸さなきゃウマ娘でいられないと言うのなら、信じて飛び込むしかない。

    「あの……俺の魂をフォールの身体に移すことって出来ますか?」
    「えっ!?」
    「……出来るわ。でも、あなたの魂が表に出ない限りずっと彼女の中に閉じ込められたままになってしまうわよ?」
    「構いません。身体が返ってくるまで待ってるだけですから」

     これなら万が一身体を奪られたとしても待ち続ける事ができる。フォールの身体を奪うつもりはないし、このままむざむざと身体を明け渡すよりは幾分かマシなはずだ。

    『ちょ……待ちなさいよアンタ! もしかしてわたしがアンタの身体を奪うとでも思ってんの!?』
    「えっ? えっと、まぁ……」
    『このバカッ!!』
    「うわっ!」

     パコッ、とガベージフラワーに頭を殴られる。あまり痛くはないが、俺はいきなりの事で戸惑ってしまった。

    『いきなり変なこと言ってあの子も困ってるでしょ!? ちゃんと身体は返すから大人しく待ってなさいよ!!』
    「信用できる訳ないだろそんなの! いきなり頭叩いてくるし……もし身体奪られたらどうすんだよ!?」
    『だから奪らないって言ってんでしょーが!? ああもう、10分で返ってくるからそのまま待ってなさい!! いいわね!?』

     俺は困惑しながらゴドルフィンバルブとフォールに目線を送る。二人も困った顔はしていたが、俺の目線に気付くとしぶしぶ頷いてくれた。

    『ほら、手ぇ出して!』
    「……はい」
    『不貞腐れてんじゃないわよ! 全くもう……』

     俺はガベージフラワーに手を差し出す。ガベージフラワーが俺の手を握ると、俺と彼女は光に包まれた──。

  • 168二次元好きの匿名さん23/12/27(水) 14:41:36

    ファイナルなのも珍しい

  • 169二次元好きの匿名さん23/12/27(水) 19:28:29

    >>167

    ここのやりとりだけ見るとただの仲のいい姉弟に見えてくる

  • 170二次元好きの匿名さん23/12/28(木) 01:33:49

    健在だったら良い姉弟関係だったんだろうなあ

  • 171二次元好きの匿名さん23/12/28(木) 04:31:38

    「あのさ、これ本当に大丈夫なんだよね?」

    「……分からない」


     私──モチモチトッポギは、突然倒れてしまったサンライク君とフォール君を近くにあった控室に運び込み様子を見ていた。

     二人が倒れてから10分ほど。一向に目覚める気配のない二人は、死んだように静かな寝息を立てて眠っていた。


    「………」


     後ろを見ると不安そうな顔をしたサンライク君のご両親が立っている。どういう心境で二人を見守っているのかは分からないが、サンライク君の行く末を見届けたいという気持ちは固いようだ。


     それはそれでいいのだが……果たしてこの状況はいつまで続くのだろうか?

     二人がどれだけガベージフラワーとの対話する時間を必要としているかは分からない。いや、そもそも二人が目覚めるかも怪しい。二人ともガベージフラワーにやられて身体を奪われる可能性も考えられる。そうなったら私はどうするべきだろうか……。


     などと考えていた矢先、不意にサンライク君の身体が眩い光に包まれた。


    「なんだ、これは……!?」

    『………』


     そこから現れたのは、どこか見覚えのある一人のウマ娘だった。


    「フ、フラワー……!? フラワーなの!?」

    「フ……フラワー! 俺だ! 父さんだ!」


     後ろに居たサンライク君のご両親が口々に叫び始める。私はそれを聞いて目の前のウマ娘が肝試しの時に遭遇した子だとようやく思い出した。そうか、彼女が……ガベージフラワーか。


    『………』


     一瞬の間が空き、ガベージフラワーがそっと口を開く。彼女の第一声は……。 dice1d2=1 (1)

    1.……今までありがとう

    2.……弟をいじめないで

  • 172二次元好きの匿名さん23/12/28(木) 10:24:24

    これは…浄化完了?

  • 173二次元好きの匿名さん23/12/28(木) 20:21:04

    そういやこれ逝った時の姿なのか弟の現肉体と同じ歳なのかどっちなんだろう
    肝試しの時からこの出立ちっぽいけど後者だったら両親もなかなか察しがいいな

  • 174二次元好きの匿名さん23/12/29(金) 02:26:05

    保守

  • 175二次元好きの匿名さん23/12/29(金) 12:36:23

  • 176123/12/30(土) 00:09:31

    執筆が!!終わらねェ!!
    マジで推敲もせず上げてるレベルなのに全然終わらないのヤバいですね
    何だこの亀みたいな執筆速度は

  • 177二次元好きの匿名さん23/12/30(土) 00:27:36

    >>176

    ゆっくり、自分のペースで良いですよ。

    私達は続きが『すぐにでも欲しい』んじゃあない、『続きを楽しみにしている』だけだ。

    少しづつでも筆を進めてくれるだけで感謝です。

  • 178二次元好きの匿名さん23/12/30(土) 10:09:17

    このレスは削除されています

  • 179二次元好きの匿名さん23/12/30(土) 19:51:52

    保守

  • 180二次元好きの匿名さん23/12/31(日) 03:19:10

    『……お父さん、お母さん。今までありがとう』

     ……思いがけない言葉だった。肝試しで遭遇した時の様子からは信じられないほど優しい口調に、私は少したじろぐ。
     だが、サンライク君のご両親は目の前で起きている非科学的な現象など意にも介さず、ガベージフラワーに近寄り優しく抱き締めた。

    「ごめんね……! 私があなたを守らなきゃいけなかったのに、私のせいで……!」
    『わたしの方こそごめん。お母さん達に負担掛けちゃったよね。あんなに愛してもらったのに何も返せなくてごめんなさい』
    「いいんだよそんなの! 俺達は……お前と一緒に居られただけで幸せなんだから……!」

     二人は涙ながらにガベージフラワーと笑い合う。ガベージフラワーが亡くなってから20年以上経つはずだが、それを感じさせないほど二人は親として生き生きとしていた。
     ……それほどまでに彼女を愛していたのか。私は彼らの胸中に同情を寄せると共に、その少しでもサンライク君に分けてやれなかったのかと苦い物を感じた。

    『そこの2人は……トッポギさんとジュエルさんよね? 初めまして。ガベージフラワーです』
    「ど、どうも。ムーンライクジュエルです。……じゃなくてさ、これどうなってんの? アンタの時もこうはなってなかったよね?」
    「私からも聞きたい。ガベージフラワーさん、サンライク君は今どうなっている? なぜ彼の代わりにあなたが出てくるんだ?」

  • 181二次元好きの匿名さん23/12/31(日) 03:21:42

     そう聞くとガベージフラワーは少し顔を強張らせた。

    『……あの子は今、人間に戻りたくないって言ってる』
    「は? 散々フォールとトレーナーが人間に戻れって言ってたじゃん? 何でそうなってんの?」
    『自分はウマ娘じゃなきゃダメだって思ってるらしいの。苦しかった頃の自分にまた戻ってしまうんじゃないかって。お父さんやお母さんから疎まれてた頃に……』

     サンライク君のご両親はハッとガベージフラワーを見ると、力なく俯いた。自分達のせいで息子が壊れかかっている。それを娘に糾される気持ちは如何ばかりだろう。

    『お父さん、お母さん。あの子を認めてあげて。もう自分を許して、あの子に向き合ってあげて』
    「それは……でも……」

     私は煮え切らない二人の態度に苛立ちつつも、どこか以前の自分を重ねる様な感覚を感じていた。
     ……そして気付いた。この二人は以前の私だ。妹の為に命を投げ捨てようとしていた頃の私と同じなのだ。

  • 182二次元好きの匿名さん23/12/31(日) 03:28:13

    「2人とも、私の話を聞いてくれませんか」
    「え……?」
    「私は自分のせいで妹を亡くしました。大切な妹だったのに、自分が犯した失敗のせいで彼女を失ってしまった。それから私は『妹は私を恨んでいる』と自分を責め続けました」

     彼らは怖いのだ。あれだけの仕打ちをしたサンライク君と向き合い、彼の憎しみを受けるのが。例え彼にそんな気が無くとも、肥大した怖れが認知を歪めてしまう。
     だから自分を責め続け、いつか来る裁きから逃げてしまう。罰を受け続ける事は苦しく──ある意味で彼らの救いになってしまうから。

    「けれど、妹は私を恨んでなどいなかった。それどころか彼女は死んでからも私を心配していたのです。私は自身の罪から逃れる為、都合の良い妄想を妹に押し付けてしまっていた……」
    「………」
    「2人とも、よく見て下さい。ガベージフラワーさんが貴方達を恨んでいるように見えますか? サンライク君が一度でも貴方達を憎んでいると言いましたか?」

     サンライク君のご両親は天を仰ぎ、静かに涙を流す。記憶の中にある子供達の姿を一つ一つ確認するように。

    「貴方達のやった事は決して許されない事でしょう。一生恨まれても仕方のない事です。しかし……もし本当に彼に償いたいというのなら、まず自分の罪にちゃんと向き合って下さい。その上で彼らを正面から見てあげて下さい」

     2人は何も言わず涙を拭い、ガベージフラワーに向き合うと、迷いのない顔で口を開いた。

    「ごめん。フラワーにもあの子にも、申し訳ない事をした」
    「私たち、あの子に謝るわ。あの子が何て言うかは分からないけど……どんな言葉でも聞いてあげたい。私達に出来る償いをしていきたいの」

  • 183二次元好きの匿名さん23/12/31(日) 03:33:35

     2人は私の方に向き直ると「ありがとう」と頭を下げた。私は彼らに向かって優しく頭を振ると、ガベージフラワーの方に向き直る。

    「ガベージフラワーさん、彼に伝えてくれないか。どんな姿でも君を大切に思っていると。君は胸を張って帰ってきていいんだと」
    「そんなん言うまでもない事なんだけどね。頭でっかちのバカトレーナーどもはすぐ極端な方に考えるけどさ」

     私はサンライク君のご両親に目線を送る。2人は頷くと、ガベージフラワーよりさらに遠くを見て口を開いた。

    「帰ってきてくれ。もう遅いかもしれないが、ちゃんと話し合いたいんだ。今度はちゃんと……親子として」
    「やり直せなくてもいい。もう私達の事なんか気にしなくていい。ただ、生きて帰ってきてほしい。死んでしまったら……それまでなんだから……」

     ガベージフラワーは私達の言葉を静かに聞くと、少し寂しそうに微笑んだ。

    『……伝えておくわ。今までの言葉、全部』

     そうしてガベージフラワーはまた光に包まれていく。別れの時が来たようだ。

    『お父さん、お母さん。私、生まれてからずっと幸せでした。何も返せなかったけど、こうして感謝を伝えられて本当に良かった。今まで本当にありがとう。あの子のこと、大切にしてよね』

     少し駆け足に言葉を残していくガベージフラワーに、ご両親が手を伸ばす。だが、徐々に強まっていく光に私達は目を閉じてしまう。

    『それじゃ……さよなら!』

     何も見えないまま、何も言えないまま。別れを告げる彼女の声だけが部屋に響き、瞼越しの光が一層強くなったかと思うと──。



    「……あ」

     ……ガベージフラワーも、眩い光も、何もかも消えてしまっていて。少し前と同じようにサンライク君が静かな寝息を立てていた。
     私は、どこかぼんやりとした気分の中で──ただ頬に伝わる熱い感覚だけを感じていた。

  • 184二次元好きの匿名さん23/12/31(日) 06:36:45

    これは大変だわ、お疲れ様

    さよならと言ったはいいがさてそれをトレーナーはよしとするだろうか
    フラワーもやることやったのと魂が完全になったので、
    実は人間に戻るとフラワーが消えるだけだが
    ウマ娘のままでいると表に出れないが迷惑かけない形で付き合い続くからお得なんだよな
    戻りたくない理由はなくなったがそのままでいると危険な理由もまたなくなったしね

  • 185二次元好きの匿名さん23/12/31(日) 15:57:48

    行ってしまったか…
    この後結局どうなるのか

  • 186二次元好きの匿名さん23/12/31(日) 17:43:21

     ……光が消え、また女神の領域へと戻ってくる。ガベージフラワーの中から全てを見ていた俺は、ただ茫然と立ち竦む事しか出来なかった。

    『……わたしの用事はこれでおしまい。アンタの中の半分も返してもらったし、お父さんとお母さんに感謝も伝えられた。アンタも少しは帰る気になれたんじゃない?』

     ガベージフラワーはそっぽを向いて努めて平静に話そうとする。けれどその声も肩も震えていて、壊れてしまいそうなほど儚かった。

    「……これで良かったのかよ」
    『なにが?』
    「俺の身体を奪うチャンスだったじゃないか。また父さんや母さんと一緒に居られるかもしれなかったんだぞ? なのに君は……!!」

     分からない。どうして俺は涙を流すんだ。身体も無事に帰ってきた。戻れる場所があると気付く事が出来た。全部俺の思い通りじゃないか。なのに……なのにどうして──。

    「どうして!? どうして俺なんかの為にここまでしてくれるんだ!? 俺は君の命を踏み台にしたのに!! なんで……っ!!」

     ガベージフラワーだって2人の下に帰りたかったはずなのに。どうしてまたとないチャンスを他人の為に使えるんだ? 俺にはとても出来ない選択を……どうしてそんな簡単にしてしまえるんだ……?

  • 187二次元好きの匿名さん23/12/31(日) 17:44:09

    『……最初はわたしも嫌だったわよ。アンタとお母さんの為に死んで、今度はアンタに魂の半分を奪われて。どれだけわたしから取り上げれば気が済むの、って恨んでた……』

     ガベージフラワーは震えた声で言葉を紡いでいく。何一つ嘘のない、優しい恨み言を。

    『でも、アンタの中の半分から視えた景色はわたしの想像よりもずっと酷かった。お父さんもお母さんも壊れちゃってて、アンタ自身も酷い有様で。アンタがウマ娘になってからの3年間、アンタはずっとボロボロだった』

     俺は拳を握りしめる。両親から拒絶され、もう走れないとさえ言われ、トッポギを失いかけて。この3年間はずっと苦難の連続だった。

    『……けど、アンタは諦めなかった。どんな時も誰かの為に走り続けて、色んな物を手にしてきた。それでわたし気付いたの。わたしの死は無駄じゃなかった、アンタこそがわたしの生きた証なんだ……って』

     そう言ってガベージフラワーは振り返る。そこにはもう、震えも涙も無くて──。



    『──だから、アンタに全部あげるわ。アンタの歩いてきた道とこれから歩んでいく道には、きっとそれだけの価値がある。わたしがそう認めてあげる』

     ……涙の跡を付けた、大輪のような笑顔が。そこにあった。

  • 188二次元好きの匿名さん23/12/31(日) 17:46:40

    「……何だよ、それ」

    『なに? 何か文句ある?』

    「文句っていうか……父さん達の前に出た時と全然態度違うじゃん。肝試しの頃からずっと俺とフォールの事追いかけてたし。そのせいで俺ら死にかけたんだぞ?」

    『はぁ〜〜〜? 当たり前でしょそんなの。お父さん達にこんなワガママな姿見せられる訳ないじゃない。アンタ達を追いかけたのはアンタの執着が強すぎてわたしの魂と融合しかけてたからだし。アンタが頼りないからわたしが苦労してんの!』


     全くもう、と腕を組んでむくれるガベージフラワー。そこにはもうさっきのような優しい姉の姿はどこにも無くて、俺はフッと笑ってしまった。


    「あの、ガベージフラワーさん。あなたが魂を取り戻したって事は……トレーナーさんはもうウマ娘で居られないんでしょうか?」

    『え? うーん、そうねぇ……本当はあんまり入りたくないんだけど……』


     そう言うとガベージフラワーはチラ、と俺を見て溜息を一つ吐くと、苦笑しながら口を開いた。


    『ま、今のコイツの中になら入ってやってもいいわ。魂を取り戻してもやる事ないし、コイツもそこそこ頑張ったからね』


     ガベージフラワーは仕方なさそうにそう言った。フォールは少し驚いたような目で俺を見る。


    「……トレーナーさん」

    「ああ、分かってる。ここで──全て決める」


     俺達の雰囲気を察してか、ガベージフラワーが静かに両手を差し出す。一方は人として生きる道。もう一方はウマ娘として生きる道。

     もう迷いも躊躇いもない。俺は一瞬の間もなく、その手を取った──。


    >>193

  • 189二次元好きの匿名さん23/12/31(日) 18:25:14

    大団円になる方はもう見えてはいる、気がするがとりあえず進めよう

  • 190二次元好きの匿名さん23/12/31(日) 23:39:30

    ksk

  • 191二次元好きの匿名さん24/01/01(月) 09:34:38

    加速

  • 192二次元好きの匿名さん24/01/01(月) 18:06:04

  • 193二次元好きの匿名さん24/01/01(月) 18:19:59

    ウマ娘として姉と共に生きていく

  • 194二次元好きの匿名さん24/01/01(月) 22:00:57

    「俺はウマ娘として生きていく。今度は人間に戻りたくないからじゃない。君と一緒に、俺が俺らしく生きていきたいから」

     俺はガベージフラワーが差し出した手の片方を強く握る。それを見たガベージフラワーは苦笑して口を開いた。

    『ウマ娘で居てもいいって言った途端それ? 入りたくないって言ったんだからもうちょっと遠慮しなさいよ』
    「良いって言われたから選んだだけだよ。それに……君だって父さんや母さんともっと一緒に居たいだろ? 暇な時は身体貸すよ」

     そう言うと、ガベージフラワーは虚を突かれたような表情になる。彼女には散々迷惑を掛けてきたんだ。少しくらい良い思いをさせてもいいだろう。

    『……バカね。こんな大切な時に他人の事なんか気にかけちゃって』
    「他人のこと言えないじゃないか。自分だってさっき同じような事したくせに」
    『わたしはお姉ちゃんだからいいの。……フォールさん!』

     突然フォールの名前を呼ぶガベージフラワー。フォールは少し驚いた顔をしたが、すぐに真剣な表情に戻り言葉を聞き逃すまいと神経を尖らせた。

    『このバカはたまにこういう事しちゃうから、無茶したりしないようちゃんと見てあげてね。たまに疲れる事もあるかもしれないけど、仲良くしてあげて。あなたも無茶しちゃダメよ』
    「……分かってます。トレーナーさんが誰かの為に頑張る姿は、私が誰よりも見てきましたから」

     フォールとガベージフラワーは目を合わせると、声を上げて笑い出す。心配しているのか馬鹿にしているのか分からないが……まぁ好意的に受け取っておこう。

  • 195二次元好きの匿名さん24/01/01(月) 22:01:35

    「結論は出たみたいね」

     ゴドルフィンバルブが優しく声を掛けてくる。

    『女神様、ありがとうございました。わたしのせいでこんな場まで整えさせてしまって』
    「俺からもありがとうございます。あなたが助けてくれなかったら……いえ、ウマ娘にしてくれなかったら今頃どうなっていたことか」
    「いいのよ。全てのウマ娘の幸福が私の望みなんだから。全員が納得できる結末を迎えられて良かったわ。私が予想していた方向とはちょっと違ったけれど……」

     ……そういえば、ゴドルフィンバルブに「なぜ人をウマ娘にするのか」と聞いた時ちょっと照れていたが、何であの時照れていたのだろう? まぁここまで来たらどうでもいい事か。

    「それじゃ、そろそろ起きる時間よ。向こうで他の子が待っているわ」

     ゴドルフィンバルブがそう言うと、急激に意識が遠のいてくる。俺は悔いを残さないよう、光に包まれる視界の中でガベージフラワーの方へどうにか言葉を絞り出した。

    「──ありがとう、姉さん」

     その言葉が届いたのか、ガベージフラワーは優しい笑顔で手を伸ばすと俺の頬を撫でた。俺はその柔らかい感触に包まれながら、光の彼方へ意識を手放していった──。



     ……目を覚ますと、優しい皆の顔が視界に入ってくる。トッポギ、ジュエル、父さん、母さん。どうやら現実に帰ってこれたみたいだ。
     ふと、父さんと母さんが俺に向かって手を差し伸べた。

    「……おかえり」
    「……ただいま」

  • 196124/01/01(月) 22:03:52

    お疲れ様です
    このスレでFINALと言ったな、アレは嘘だ
    エピローグは次スレに回します

  • 197124/01/01(月) 22:10:34
  • 198二次元好きの匿名さん24/01/01(月) 22:13:25

    ほな埋めるで〜

  • 199二次元好きの匿名さん24/01/01(月) 22:14:21

    無事ハッピーエンドになりそうで良かった

  • 200二次元好きの匿名さん24/01/01(月) 22:33:45

    200なら大団円

オススメ

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