- 1二次元好きの匿名さん21/09/01(水) 20:21:34
まるで傍に人がいないかのように、勝手気ままに由来すること。
古代中国で酒を飲むと大暴れした人物が由来。
※二人とも成人済
「あまり得意な味ではないが、大人の付き合いと酒は相即不離。慣れていかなければならないのだろうな」
ワインをちびり、と口に含んだルドルフが顔をしかめる。久しぶりに彼女が年相応の反応を見せたのがおかしくて、私は苦笑した。
成人のあかつきには公私ともに酒の席というものに直面するだろう、と、私は担当ウマ娘のシンボリルドルフと部屋で二人きり、向かい合わせに座りながら、食卓に並んだ酒の「試飲」に取り掛かっていた。
先に成人したウマ娘たちが一緒に飲みたがるのではないかと尋ねると、万が一酒乱の気があっては二度とその娘たちに顔向けできない、と丁重に断られた。それが「万が一」があってもいい場面に同席を許されているのはなんとも面映ゆい。
- 2二次元好きの匿名さん21/09/01(水) 20:22:18
「時に、トレーナー君。小耳に挟んだよ。チームトレーナーに選抜された、とね。大慶至極、私も担当ウマ娘として誇りに思うよ」
チームトレーナー。従来のトレーナーとウマ娘の一対一の関係ではなく、一人のトレーナーがバラバラの距離を走るウマ娘を複数担当する。故に幅広いレースへの理解が必要であり、一流トレーナーの中でも選抜されるのはごく一部、というトップ中のトップである。もっとも、この名誉は目の前の「皇帝」が八冠超えという未来永劫轟き続ける偉業を打ち立てたお陰に他ならない。
「受けるんだろう、この話は」
断るという選択肢など存在しない。「全てのウマ娘の幸福」という、ともすれば荒唐無稽と一笑に付される夢を二人で歩み始めた日から。私のトレーナーとしての力がチームを成長させうるなら、それを活用しない手はない。
それを告げると、彼女は即答か、と肩をすくめ、寂しげな微笑みを浮かべた。 - 3二次元好きの匿名さん21/09/01(水) 20:22:45
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- 4二次元好きの匿名さん21/09/01(水) 20:24:22
事実、私にも「子供じみた」寂寥感はある。チームの面倒を見るとなると、当然彼女とこうやって憩う時間は減っていく。全く無くなると覚悟したほうがいいだろう。
「まあいい。時間は減るが、その時間を大切にして行ければ──時にトレーナー君。酒の席では腹を割って話すものだという。私より少し長く生きている君に、私の悩みを聴いてほしい」
やけに勿体ぶった切り出しは彼女の緊張しているときのクセである。
「私の夢と私の……個人的な執着、願望が相いれないものとなったら、君はどっちを応援してくれる?」
その問いも即答である。全てのウマ娘の幸福を目指すのであれば、彼女もまた幸福でなければならない。
それを告げると、彼女はそうか、と呟き俯いた。
「すまないトレーナー君、酔いが回ったようだ……椅子だと転びそうで危ないから、そこのベッドまで肩を貸してくれないだろうか」
彼女がふらふらと立ち上がると、反射的に体が動いていた。彼女の肩に手を回すと──。
「本当に疑わないんだな。だから不安になるんだ」
耳元で囁かれたかと思うと、ベッドに押し倒され、照明の逆行越しに彼女を見上げていた。表情は窺えない。
「私の幸福とは君なんだ。情けない話だ、私は君に恋をした。共に道を歩む盟友としてあるべき君に、私の命を重ねてしまったんだ」
ぽつぽつと優しく頬を打つ、これは。
「突き放してくれて構わない。それでも、君が受け入れてくれるなら、私は」
これは完全な余談であるが、彼女の代名詞の一つである獅子。獅子の交尾は痛みを伴うものであるという。 - 5二次元好きの匿名さん21/09/01(水) 20:24:45
数日後、私は理事長室にて辞令の交付を受けた。私は少し居心地が悪そうに、しかし堂々と拝命の挨拶をした。我ながら、と付け足すべきか。
居心地の悪さの原因は、チームトレーナーを任命されるにあたり、婚約の会見をさせてほしい、と学園どころか世間を大きく騒がせたことである。物言わぬ証拠として、左手の薬指には銀色の輝きが鎮座していた。 - 6二次元好きの匿名さん21/09/01(水) 20:51:49
よかった
- 7二次元好きの匿名さん21/09/01(水) 20:56:05
獅子の交尾は!?