【SS】ファインディング・イイトコ

1二次元好きの匿名さん23/11/30(木) 21:01:13

　ヒシミラクルのやや不格好なフォームから、疲労が色濃く見て取れる。――それにしても大仰なアクションでプールサイドに上がって来た。

「よし！一息入れたら次でラストだ！」
「えートレーナーさん、もう限界で……今日は終わりにしたくてェ……」
「何言ってんだ、やれるやれる！強い子だって俺は知ってるからな！あともう一本、熱くなれよ！」
「じゃあ熱くなれるようにノセて下さい……そうだ、わたしの良い所好きな所を、10個述べよ！そしたらやります～」
「10個？今か？」
「世の中には50個だって挙げるトレーナーさんもいるんですよ、10個くらい何ですかぁ～」
「よし。……からかった時の反応が可愛い。困難に立ち向かう姿が好きだ。歓びの声を漏らすのが可愛い。前途洋々なミラ子が好きだ。
　俺のメニューを果たして偉い。壁を打ち破るミラ子が好きだ。腹を括る姿が格好いい。音を上げる姿も可愛いとは思う」
「え……え～？ちょっと褒め過ぎぃ……」
「まだ八つか。……おどけた仕草も可愛い。自分を救うのは自分と信じてるのが偉い。ゴボウ抜きに順位を上げて行くのは格好いい。大空に勝利を叫ぶ姿も……」
「あ～ストップ！分かった分かりました、入りますからもう止めて下さい～！」

　ヒシミラクルは耐えかねてプールに入って行った。

2二次元好きの匿名さん23/11/30(木) 21:02:08

「……と、いう事があったんです」
「よく憶えてますね」
「何だか圧倒されたと言うか、よく咄嗟にあれだけ出てくるなと……私も、うちの子達の良い所を挙げていこうと思ったんですが、そんなに数が出て来なくって」
「理子さんの所は人数が多いですからね。同じようには行かないでしょう」
「でも私だってあの子達を見てる自負がありますから。10個ずつとは言わなくても、個別に挙げていきたいなと」

　――本当に真面目で、生徒思いの人だ。その理子さんの表情に言外の含みを感じ、僕もやってみた。

「……偽りなく生徒に向き合う所が好きです。不調を見てとった時の真摯な顔も好きです。生徒のために祈るような思いを、いや全てを捧げんばかりの姿勢が好きです」
「え、えっ？貴方もですか？」
「絶えず努力してる所が好きです。辛い過去がある学園に戻って来た事も……」
「ちょっ、待……嬉しいですけど、心の準備がですね？」

　顔を赤らめて飛び込んで来る理子さんを受け止める。緩く握った拳が僕の胸を弱々しく叩いた。

「……僕を押さえつけます？でもこうして入れ替えてしまいましょうか」
「あっ……」