- 1二次元好きの匿名さん22/01/05(水) 23:31:07
「今日はショウカンなんだって!」
―――カレンダーを眺めていた彼女が、ふとそんな事を言った。
ショウカン?何だ?何か妖精でも召喚するのか?と怪訝な表情になったが……
……ああ、小寒のことか、とピンと来るのに数秒を要した。
そうだね、小寒だね。と、実に飾りっ気のない言葉を返す。
小寒に何があるか、なんて気にした事も無かったせいで、それ以上言う事が見つからない。
困った顔をしていると、彼女は続けて言葉を投げかけてくる。
「小寒。一年で、一番寒くなる時期のはじまり……
……ふふっ。日本は、そんな抽象的な概念さえ、一つの言葉にしてるんだー……。」
心底、嬉しそうな表情。何がそんなに嬉しいの?と聞いてみると、彼女はやっぱり嬉しそうな表情のままで言葉を返してくる。
「こうして日々を生きていると、毎日、ちょっとずついろんなものが変わってることに気付くの。
昨日はちょっと寒くなってた。この日はちょっとだけ雪が積もってた。あの日は水溜まりに氷が張ってた……って。」
「そんな毎日の些細な変化を、この国の人はちゃんと一つの言葉にして、大切にしてるんだな、って。」
「キミと過ごす、貴方と走る、一日一日は……ちょっとずつ違っていて、一つだって同じものは無くって。
―――そのちょっとした違いを、『何となく違う』なんかじゃなくて。
ちゃんと言葉に出来るのが嬉しい……なんて言ったら。キミは、どんな風に思う?」
―――参った。二十四節気を、ここまで感受性豊かに受け取っている人がいるとは。
素敵な考え方だと思う、と言葉を返す。……いや、違う。もっと他に言う事があるだろうに。
少し考えて、もう一言だけ返した。……君と過ごす一日一日を、大切にしないといけないと思った。と。
「―――よろしい!そこまで汲み取って頂ければ十分ですっ!
ふふっ……その言葉、忘れないからね?」
エメラルド色の瞳が、朗らかに、しかし真っ直ぐに自分を射抜いた。
……あれ。何だか、色んな意味で言質を取られたような気がする……?