【SS】先生の行方は誰も知らない

  • 1二次元好きの匿名さん23/12/02(土) 16:02:52

     ある日の暮方の事である。一人の生徒が、シャーレ階下のコンビニでコーヒーのドリップを待っていた。
     広いエンジェル24の店内には、この生徒のほかに誰もいない。ただ、髪をややぼさぼさにして、目の下に大きなクマを浮かべた、金髪の幼女が一人接客している。この店が、シャーレと同じ建物にある以上は、この生徒のほかにも、先生との面談の予約待ちをする者が、もう二三人はありそうなものである。それが、この青い髪をした生徒のほかには誰もいない。

  • 2二次元好きの匿名さん23/12/02(土) 16:12:04

     何故かと云うと、この二三か月、キヴォトスには、銀行強盗とか調停式爆破テロとか横領した予算で建てた都市全域のハッキングとか代行解任デモとかお祭りで猫が大暴れするとか云う災いが続いて起った。そこでキヴォトスの治安は無事ではない。噂によると、一連の騒動を通じて先生と懇ろになったり、あるいは生徒と先生以上の関係を望む生徒が後を絶たず、玄関に死屍累々を築き上げて、正妻の座を巡り争っていたと云う事である。生徒たちがその始末であるから、半壊した店舗の修理などは、元より誰も捨てて顧る者がなかった。するとシャーレの規律が乱れ果てたのをよい事にして、狐が棲すむ。ストーカーが覗き、盗聴し、物陰で先生の安全を確認する。とうとうしまいには、行く先のない野兎が、この門へ通いつめ、シャワーを借りていくと云う習慣さえ出来た。そこで、シャーレの改革が始まると、皆が争わないようにと、当番以外の生徒は許可なく足を踏み入れない事になってしまったのである。

  • 3二次元好きの匿名さん23/12/02(土) 16:18:31

     スレ主はさっき、「生徒がコーヒーを待っていた」と書いた。しかし、生徒はコーヒーができても、格別どうしようと云う当てはない。普段なら、勿論先生の隣の椅子へ帰る可き筈である。所がその先生からは、数日前に暇を出された。前にも書いたように、当時シャーレの治安は並々ならず崩壊していた。今この生徒が、永年、その経費の管理に努めてきたにもかかわらず、先生から暇を出されたのも、実はこの乱世の小さな余波にほかならない。だから「生徒がコーヒーを待っていた」と云うよりも「居場所を失った生徒が、手持無沙汰となり、途方にくれていた」と云う方が、適当である。その上、今日の空模様も少からず、このセミナーの会計の感情に影響した。一時間前に淹れたドリップコーヒーは、いまだに飲み干される様子もない。生徒は、何をおいても差当り先生の隣を確保しようとして――云わばどうにもならない事を、どうにかしようとして、とりとめもない感情を因数分解しながら、さっきから上から聞こえる兎の鳴き声を、聞くともなく聞いていたのである。

  • 4二次元好きの匿名さん23/12/02(土) 16:26:30

     生徒は、怒りを無数の括弧に分けながら、ミレニアム制服に重ねた、白の外套の肩を高くしてその様子に聞き耳を立てた。暴徒や不良生徒の恐れのない、他の生徒の目につかない、一晩一緒に体を重ねられそうな所は確保している。そこへなんとかして、先生をお連れしようと思ったからである。すると、幸い上の階から降りてくる、白いポニーテールをはためかせた、一匹の兎が眼についた。今なら、背後を襲ったとしても、どうせシャワー帰りで油断している。生徒はそこで、腰から抜いた二丁のエンジニア部の静穏機付きサブマシンガンを引き抜くと、階段を下る兎の足を、矢継ぎ早に音もなく打ち抜いて、貸し出し用カードキーを奪い取った。

  • 5二次元好きの匿名さん23/12/02(土) 16:32:40

     それから、何分かの後である。シャーレの階へと続く、階段の踊り場に、一人の生徒が、猫のように身をちぢめて、息を殺しながら、上階の容子を窺っていた。室内から漏れる声が、かすかに、その生徒の感情を逆なでしている。生徒は、始めから、この上にいる者は、先生ばかりだと高を括くくっていた。それが、階段を上って見ると、誰かが先生と話して、しかも淹れたてのコーヒーカップを2つ持ってきて、先生の隣に座ってるらしい。これは、その濁った、嫉妬と独占欲に狂ったユウカの眼光が、入口のガラス越しに、はっきりととらえたので、すぐにそれと知れたのである。私が追い出された先生の隣に、このシャーレの中で、先生とともにしているからは、どうせただの者ではない。
     ユウカは、特殊部隊のように足音をぬすんで、動悸の走る心臓を抑えながら、一番上の段まで這うようにして上りつめた。そうして体を出来るだけ、平にしながら、頸を出来るだけ、前へ出して、恐る恐る、室内を覗のぞいて見た。

  • 6二次元好きの匿名さん23/12/02(土) 16:39:07

     見ると、室内には、いつも見ていた通り、先生の業務書類が、無造作においてあるが、視線の及ぶ範囲が、思ったより狭いので、全貌は知れない。ただ、おぼろげながら、知れるのは、その中に先生と、連邦生徒会の制服を着た生徒とがあるという事である。勿論、中には女と男の二人以外誰もいない。そうして、その生徒は、それが、かつて、いままでの自分が先生のお世話をしていたと云う事実さえ疑われるほど、十数年慣れ沿った夫婦のように、口元あたりに手を延ばして夕飯のミートパスタのソースを拭ったりして、二人で座って談笑していた。しかも、胸とか尻のパンパンに張っている部分に、先生の視線がチラチラと向いて、そうかと思えば後ろ暗そうな顔を浮かべながら、何か書類仕事を行っていた。

  • 7二次元好きの匿名さん23/12/02(土) 16:42:28

     ユウカは、そのやり取りの甘ったるい空気に思わず、口をおおった。しかし、その手は、次の瞬間には、もう口を掩う事を忘れていた。
     ユウカには、勿論、何故彼女が先生の隣の席を独占しているのかわからなかった。従って、合理的には、それを善悪の悪に片づけてよいことを確信していた。ユウカにとっては、このシャーレで、この先生の隣を、何者かが占有すると云う事が、それだけで既に許すべからざる悪であった。勿論、ユウカは、さっきまで自分が、先生を攫って独占する気でいた事なぞは、とうに忘れていたのである。

  • 8二次元好きの匿名さん23/12/02(土) 16:48:57

     そこで、ユウカは、先生がシャワールームへと立った隙に、両足に力を入れて、いきなり、強化ガラスのドアを蹴り破った。そうしてサブマシンのトリガーに手をかけながら、太股を揺らして不届きものの前に立ちはだかった。彼女が驚いたのは云うまでもない。
     泥棒猫は、一目ユウカを見ると、まるで子猫のいたずらでも見つけたように、ため息を吐いた。
    「なんであなたが、ここにいるのよ。悪魔が。」
     ユウカは、先生をNTRした女が椅子を回しながら、答えようとする口を塞いで、こう罵った。悪魔は、それでもユウカをつきのけて先生を呼ぼうとする。ユウカはまた、呼ばすまいとして、押しもどす。二人はシャーレの中で、しばらく、無言のまま、つかみ合った。しかし勝敗は、はじめからわかっている。ユウカはとうとう、浮気相手の尻をつかんで、無理にそこへねじ倒した。今にもスカートを破きそうな、ムチムチとした尻である。
    「何であなたが。云いなさい。云わなければ、これよ。」

  • 9二次元好きの匿名さん23/12/02(土) 17:00:41

    「私はヴァルキューレの役人なんかじゃない。ついこの間、シャーレを陰謀によって追い出された先生の会計よ。だからお前に縄なわをかけて、どうしようと云うようなことはしないわ。ただ、今この時分、先生と何をしているというの?話しなさい。」
    「ユウカさん、落ち着いてください。何の真似ですかこれは。この期に及んであの人の業務を妨害するおつもりですか?」
    「あの人って……ふざけてるの?
    ワケって何?もしかしてあれ?
    どうせ一学園の生徒一人如き泣き寝入りするだろうって?
    問題児ばかりでミレニアムでも忙しそうだからごまかせるとか…!
    先生の隣を奪うくらい許されるとでも思ったんでしょ…?」
    「なるほど、傍から見れば、先生を独占していたように見えるかもしれません。しかしこれも業務のうち。出禁をくらった生徒たちは皆仕方のない人ばかりよ。あなただって、先生に睡眠薬を飲ませてベットに連れ込んで、危うく貞操を奪う所だったじゃないの。どう考えたって悪いことだわ。現状だって、もとはと言えばあなた方生徒が先生を巡ってとんでもない事件の数々をD.Uに持ち込んだことが原因でしょう?」

  • 10二次元好きの匿名さん23/12/02(土) 17:07:45

    「言い訳なんて聞きたくないわ!
    どうせそれもこれも全部建前で…
    本心では先生を独占して自分に依存させて
    白昼堂々ゴールインする腹積もりなんでしょ!!悪魔が!!!
    総決算なんて名目使って、いい加減にしなさい!」
    "アオイ、どうしたの?"
    "………ユウカ!"
    身体から湯気を立ててシャワールームから出てきた先生を見て、ユウカは、サブマシンガンをおろした。勿論、右の手では、アオイの胸倉を掴みながら、である。しかし、このどうしようもない状況に、ユウカの心には、ある勇気が生まれて来た。それは、さっき下のコンビニで、彼女には欠けていた勇気である。そうして、またさっきシャーレの中へ突入して、このアオイを論破した時の勇気とは、全然、反対な方向に動こうとする勇気である。ユウカは、憤死をするか犯罪者になるかに、迷わなかったばかりではない。その時のユウカの心もちから云えば、先生を諦めて生きながらえるなどと云う事は、ほとんど、考える事さえ出来ないほど、意識の外に追い出されていた。

  • 11二次元好きの匿名さん23/12/02(土) 17:18:20

    「きっと、そうなのね。」
     先生の声が止むと、ユウカは掻き消えるような声で自分の背中を押した。そうして、一足前へ出ると、不意に右の手を財務室長の胸倉から離して、先生の肩ををつかみ────────

    ガァァァァァァァン、ズダダダダダダダダダダダダダ、バシュッ、バシュッ

    「ん、なら先生は私が貰っていく。
    先生は、私がいなきゃ死んじゃう。」

     乱入者は、すばやく、シャーレの防衛システムを無力化した。それから、立ち上がろうとする先生の身体を、手荒く片手で持ち上げた。崩れた外壁の穴までは、僅に五歩を数えるばかりである。覆面の狼は、略奪した先生をわきにかかえて、またたく間に夜のD.U.シラトリ区へと身を躍らせた。
     しばらく、呆然として様子を見ていたユウカが、天井の瓦礫の中から、その体を起したのは、それから間もなくの事である。ユウカはつぶやくような、うめくような声を立てながら、まだ点滅している蛍光灯の火花を頼りに、壁の穴まで、這って行った。そうして、そこから、極太のふとももを伸びきらせて、シャーレの外壁の下を覗きこんだ。外には、ただ、黒洞々たる夜があるばかりである。
     先生の行方ゆくえは、誰も知らない。

    おしまい

  • 12二次元好きの匿名さん23/12/02(土) 17:21:37

    羅生門のようで羅生門じゃないよくわからないなにかきたな…

  • 13二次元好きの匿名さん23/12/02(土) 17:22:44

    何この流れるような異物挿入
    説明しろモモイ!

  • 14二次元好きの匿名さん23/12/02(土) 17:25:31

    ────って感じのストーリーをチュートリアルの最後に仕込もうと思うんだけど、どうかな!

  • 15二次元好きの匿名さん23/12/03(日) 00:02:42

    異常シナリオライターやめろ
    いや本当になんだこれ……

  • 16二次元好きの匿名さん23/12/03(日) 00:06:07

    脳が理解を拒否するのは久しぶりの経験だぁ…どうすんのこれ、なあこれ何?

  • 17二次元好きの匿名さん23/12/03(日) 00:12:30

    先生の先生が危険になって規制したら生徒がヤンデレ化して
    ユウカがキチゲ解放してシャーレ行ったら先生が総決算してて、アオイに詰め寄ったら突然のスナオオカミに先生を横から取られた話ってかんじ?
    なんだこれ

  • 18二次元好きの匿名さん23/12/03(日) 00:15:05

    なるほど…太ももか!

  • 19二次元好きの匿名さん23/12/03(日) 11:03:06

    モモイ、話があるわ。今すぐ開けて………開けなさい!モモイ!

  • 20二次元好きの匿名さん23/12/03(日) 19:19:42

    サプライズシロコ理論やめろ

  • 21二次元好きの匿名さん23/12/03(日) 19:26:12

    長いのに読みやすい
    流石文豪

  • 22二次元好きの匿名さん23/12/03(日) 21:25:50

    なんか最近怪文書多いな、いや別にそれはいいことだけど
    小説家崩れでも流れてきてるんか?

オススメ

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