【SS】冬はつとめて｜あにまん掲示板

1二次元好きの匿名さん23/12/04(月) 03:18:35

　日の出が徐々に遅くなってきた今日このごろ、自然と目が覚めて布団から這い出ると肌に刺さるような冷気が身に沁みます。本音を言えばもう少し布団の温もり―隣で寝る殿方の温もりと同義ではありますが―を手放したくないところですが、私の朝はほんの少し早いのです。
　窓の外はまだほんのり暗く、夜明けまでもう少し掛かりそうな様子です。前日のうちに用意しておいた炊飯釜からはグツグツといい音が聞こえてくる台所にて、今日もまた朝食と弁当を作り始めました。

　冷蔵庫を開け、いくつか冷凍しておいたものを電子レンジに入れていきます。コンロに塩を振った紅鮭を入れ、同時にお湯を沸かしながら豆腐の水を切っていると、背後からゴソゴソと物音が聞こえてきました。まだ出勤時間には早く、日頃の激務を考えればもう少し寝ていても良いでしょうに。とはいえ、止めたところであまり効果がないことはよく理解しているつもりです。

「おはよう、グラス」
「おはようございます」

　ちょうど良いタイミングで炊きあがりを告げるアラームが鳴り、二人分をよそっていきます。今日はたしか、彼がお中元でもらったからと持って帰ってきた明太がありましたね。いつもの食卓に少しの贅沢、こういう積み重ねが日々を彩ってくれます。

「先にご飯にしましょうか。弁当はもう少し待っていただければ」
「本当、無理して早起きさせてないか心配になるよ」
「いえいえ、私がやりたくてしてますので」

　奇妙なことですが、一度このことで私と彼は揉めたことがありました。優しい彼のことです、負担をかけていると思って声をかけたのでしょうが、私もそれなりに強情なものでして。結局、朝から何を目的にしているか分からない言い争いに。
　もっとも、その程度で彼と培ってきた信頼が崩れるわけもなかったのですが。現役時代も私の強情に付き合ってもらいましたので、もう少しだけ付き合ってもらうことにします。