【SS】エビ・イカ・ホタテ・ズワイガニ

  • 1二次元好きの匿名さん23/12/05(火) 03:20:44

     レース場の熱気はどこへやら、星が見えないほどに明るい町並みからは陽気な音楽が鳴り響いていました。街を行く人達の関心事は明日に迫ったクリスマスか、あるいはジュニア期の総決算であるホープフルステークスか。先程までのレースを走り抜けたわたしの姿は、どうやら背景の一つに溶け込んでいるようでした。

    「変に目立つと今度は過ごしづらいよ」
    「そうは言いますけど、わたしだってあのハイレベルなレースで一着ですよ、一着。もっとこう、キラキラした服を着てパレードとか」

     まぁ、たしかにトレーナーさんの言うことにも一理あります。目立ちすぎると、こうやってクリスマスイブの町並みを楽しめませんから。イブということもあるのでしょうか、小脇に小さな箱を抱えた人たちが足早に帰路につく様子が見られました。
     かくいうわたしはと言うと、今年はついに誘われすらしませんでした。後でこっそり聞いたら、レースの後だし疲れているだろうから、なんて。一理ありますが、それはそれとしてやっぱり誘われないのはちょっと傷ついちゃいます。

    「むぅ……こんなことなら、クリパに参加したほうが良かったかな」
    「年末の総決算で一着は本当にすごいことだよ。他の誰も褒めてくれなくたって、俺はしっかり褒めてあげたいぐらいだ」

     そう言って、頭の上から乱暴な手がワシワシと私の芦毛をかき混ぜていきます。せっかくのセットが崩れちゃいますよ、なんて言ってみるけれど、手のひらから伝わる温もりや感触、そして声色に絆されて自然と顔が崩れてしまいました。

    「それより、本当に俺とパーティなんかで良かったのか」

     この人は知っている、わたしが友人たちのパーティに誘われなかったことを。数日前のトレーニング前にちょっと拗ねていたわたしに、二人だけど豪華なパーティをしよう、なんて声をかけてきたぐらいなんだから。そこまで言われたらわたしだって、応えないわけにはいきませんからね。強がりなんかじゃないですよ。

    「またまた、そう言ってトレーナーさんこそわたしを喜ばせるために準備してたんですよね? 少々のことじゃ驚きませんよ」
    「……まぁ、もうすぐわかるよ」

  • 2二次元好きの匿名さん23/12/05(火) 03:20:56

     独り言のような声量で、ボソリと口にした後に止まったのは学園でもちょっと話題になったようなお高いレストラン。いろんな偉い人がやってくるこのトレセン学園の周りだと、こういうお店も需要があるよね、なんて噂話程度には聞いてましたが、まさか本当にここに来る機会が来るとは。今日はいっぱい食べて、クリパに誘ってくれなかった友達に自慢しないと。

    「えっと、もしかして」
    「今日は元々祝勝会のつもりだったから、遠慮せずに好きなものを食べていいよ。コースもあったけど、好みもあるだろうし」
    「……階、間違えてないですよね」

     眼の前にはアツアツに熱せられた鉄板とトレーナーさん。年季の入った店内に貼られたお品書きからも、ここで長い間営業していることが伺えます。先程までのドキドキはどこへやら、クリスマスイブの夜には似つかないお店に入っていました。

    「変に気を遣わせるのも悪いし、それでいていつもとちょっと違うお店を選んでみたくて」
    「てっきり、隣の高級フレンチでも予約してたのかと思ってました」
    「いくらなんでも、俺にはちょっと縁がないかな」

     頭をポリポリかきながら苦笑いするトレーナーさんを見てたら、なんだか自然と笑ってしまいます。そうそう、わたしにはこのぐらいのふつーがちょうどいいんです。トレーナーさんと、できたて熱々のお好み焼きを分け合って、お互いお腹いっぱいになるまで焼いては食べ続けるような。むしろ堅苦しすぎたら味もわからなくなっちゃいそうですし。

    「でもでも、今日は折角の祝勝会ですから」
    「やっぱり、コレだよね」

    「「全部盛りミックス玉、一つください!」」

     やっぱり、ふつーなわたしたちが一番。

  • 3二次元好きの匿名さん23/12/05(火) 03:22:33
    【SS】冬はつとめて|あにまん掲示板 日の出が徐々に遅くなってきた今日このごろ、自然と目が覚めて布団から這い出ると肌に刺さるような冷気が身に沁みます。本音を言えばもう少し布団の温もり―隣で寝る殿方の温もりと同義ではありますが―を手放した…bbs.animanch.com

    昨日はグラスで、今日はミラ子で。

    今年の有馬はクリスマスイブ決戦というのを見かけて、思いついた一コマでした。

    肩肘張らない、どんなときでもいつも通りな二人が好きなのでそんなワンシーンを書いてみました

  • 4二次元好きの匿名さん23/12/05(火) 03:28:49

    お互いがお互いのちょうどいい加減をわかってるのいいよね…

  • 5二次元好きの匿名さん23/12/05(火) 03:30:52

    >>4

    せっかくのイヴに誘わない友人たちは明らかに狙ってるのに、その狙いを外していつものお好み焼きでパーティしちゃう二人の理解度の高さ、信頼できますね

  • 6二次元好きの匿名さん23/12/05(火) 03:57:44

    深夜にミラ子SS上がってるの嬉しい…助かる…
    高級フレンチレストランで洒落た料理食べるんじゃなくて、いつものお好み焼き屋さんで食べるちょっとした贅沢って言うのがミラ子達らしくていいよね

オススメ

このスレッドは過去ログ倉庫に格納されています