私はオジュウチョウサンファン

いつもよりも大きく、お客さんの声が聞こえる。きっと入場者数が増えたんだろう。
障害レースだってのに、さっきまでいたパドックの混みようがハンパじゃなかった。
日付を２４時間くらい間違えてここに来ちまったんじゃねえの、ってちょっと思った。
ここ数年で障害レースを見に来るファンの数が急増してる、ってのは風のうわさで聞いてたが、本当だったみたいだ。
きっとオレ様のおかげだろうな、とほくそ笑む。
次第に、ファンファーレ。ゲートから遠いところで響くこの音を聞くのは、もう３回目だ。
平地のほうの威風堂々とした音も好きだけど、この、跳ねる音が多いファンファーレのほうが、オレは好きだ。
係員が合図を出し、オレたちを誘導する。
不思議と、緊張はしていない。
ゲートに入る前、ヤツにチラっと目を向ける。
葦毛の王者サマ、アップドゥデイト。
脚に爆弾を抱えちまってるらしいが、それはそれ。
ヤツからは視線を感じないが、凄まじいプレッシャーを放ってきている。
『絶対に勝つ』とでも思ってるんだろうか。何を考えているかはよくわからん。しかし。
勝つのは去年同様、このオレ様だ。

>>44

44二次元好きの匿名さん22/01/06(木) 22:48:14

>>43

質のいい怪文書たすかる...

45二次元好きの匿名さん22/01/06(木) 22:48:21

『各ウマ娘、入りました。』
実況の声が響く。それを合図に、フッと息を抜いて集中する。
必ず勝つ、という意識に身体を預ける。
石神のオヤジさんからは『お前は強いが、きちんと無事に走り切って来い』といつも言われる。
多分、ヤツもそうなんだろう。障害付きのトレーナーは皆、ちょっと不安そうな顔にしながらそう言うんだ。
だけど、トレ連中は大事なことを忘れてやがる。
俺たちは「ウマ娘」って生き物なんだ。
勝ちたいに決まってる。ここにいる１５人は全員、命を懸けて戦いに来てる。
絶対に、勝つ。
早く。早く、開け！

46二次元好きの匿名さん22/01/06(木) 22:52:18

『きちんと無事に走り切って来い』
これをきっちり入れてくれるの最高。障害の騎手の人たちもこれをかなり大事にしてるらしいし

47二次元好きの匿名さん22/01/06(木) 22:52:42

#オジュウチョウサン(ウマ娘) 絶対王者の王朝へお帰りなさい - ガッサン　アヤのイラスト - pixivこの作品「絶対王者の王朝へお帰りなさい」は「オジュウチョウサン(ウマ娘)」「オリジナルウマ娘」等のタグがつけられた「ガッサン　アヤ」さんのイラストです。www.pixiv.net

>>48

48二次元好きの匿名さん22/01/06(木) 22:54:33

>>47

えっ....え..............かわいい..............................

49二次元好きの匿名さん22/01/06(木) 22:57:37

ガコン、という音がして視界が一気に広がる。
その瞬間、勝手に脚が宙に浮いた。いいスタートだ。
横に３人並んでいるのを見て、上手いことハナ集団になれたことを確認する。
ヤツの位置も見ておく。ピッタリ後ろにつけてくる。
全部見えたらまずは加速だ。一発目の障害でコケちまったら笑いもんになっちまう。
踏み切るためのちょっと盛り上がったところまで加速して、踏み切って、ジャンプ！
速度を殺しすぎないよう、グッと低い姿勢で跳んで、同じく低く着地するようにする。オレ様だけの必殺技だ。
脚は痛えし服はボロボロになるが、オレはこれで勝ってきてる。
誰にも文句は言わせねえ。

50二次元好きの匿名さん22/01/06(木) 22:59:17

>>15

まじ？！オジュウいるんですか？！

51二次元好きの匿名さん22/01/06(木) 23:06:04

>>31

最高のSSがある...

これに追加で

・褒められると嬉しそうにする

もあります！

52二次元好きの匿名さん22/01/06(木) 23:06:44

第一障害を越えてコーナーを曲がる。
すると、すぐ右側にヤツの姿が見えた。
数秒前まで後ろにつけていたのに、ジャンプ後にスルっと抜けてきやがった。
今回は先行策かよ、と思っていた矢先。アイツの背中がどんどん小さくなっていくのが見えた。
そのまま水濠障害を跳び越していく。後ろからでもわかるキレイな飛越姿勢。やるじゃねーの。
その勢いを維持して、二つ目の生垣も越えていった。
強い違和感を感じた。

53二次元好きの匿名さん22/01/06(木) 23:13:40

ワイはこのシリーズすきやで

#1 【第1夜　出逢い】 | Jump a past ～どん底からの軌跡～ - ジョン・ヴォヴィの小説シ - pixiv―――皆、誰もが一度夢を見る時期がある。『東京レース場、メイクデビュー 2番はオジュウチョウサン』 ―――少なくともデビュー当時の自分は夢や希望に溢れていた。『11着オジュウチョウサンがゴールしました』 ―――しかし、その夢や希望はすぐに打ち砕かれた…。 Jump a past ...www.pixiv.net

54二次元好きの匿名さん22/01/06(木) 23:14:54

１・２コーナーの中間点で、ヤツはまだ加速していた。
大きい歩幅で滑るように走るアイツの蹴った土は、いつも以上に高く跳ね上がっていった。
それを見て、ハッと気づかされた。完全に「逃げ」の作戦を取った走りだ。
逃げることで障害についてほかの連中との折り合いはつけなくてよくなるし、速度を飛び越えにも利用できる。
体力を犠牲にするが、ここにいるのは体力自慢の集まり。ヤツはその中でもぶっちぎりだ。
俺との、ほかの全員との競争を放棄して、ただ力技で押しつぶし、勝負を勝ち切るという作戦。
ヤツは完全に、俺に「勝ち」に来ていた。
その証拠に、見る見るうちにアイツの背中は遠くへ消えていき、もう坂路を下り終わっていた。
このヤロー、いくら同じ葦毛だからって、メジロ様とおんなじことやろうとしてんじゃねーぞ。
オマエは「名優」じゃなくて、王者だろうが！

>>55

55二次元好きの匿名さん22/01/06(木) 23:16:50

>>54

アップにクソデカ感情抱くオジュウ概念大好き

56二次元好きの匿名さん22/01/06(木) 23:21:44

ヤツの背中が消えてから、２コーナーの坂路に差し掛かる。
どこのレース場――障害じゃないレース場でも、「坂」は勝負の重要な駆け引きの場になっている。
「淀の坂」ってのが割と名の知れたものの一つだろう。
そんな連中に、俺たちがこれから下り、そして上ることになるこの坂を見てほしいね。
高さ約３．５ｍ、長さ約８０ｍの「谷」だ。
速すぎれば遠くに飛びすぎて着地し損ねて脚を折る。遅すぎればもう勝負についていけなくなる。
あっちがジェットコースターなら、こっちは飛行機から飛び降りるパラシュート降下だ。
外側からグンッと降りる。腹の奥がヒュンと沈むのを感じる。
重力を感じて加速する。この加速のままコーナーを回れってんだから、マジで危険だ。
グッと遠心力を使いながら、体力の消耗を防ぎつつコーナーを回る。
回りきって前方にヤツが見える。
ヤツはもう遠くにいて、このレースの主導権を握ってやがる。
前二人はその作戦に飲まれちまってるのか、加速するかどうか迷っているようだった。

57二次元好きの匿名さん22/01/06(木) 23:29:12

坂を下った後にすることと言えばなんだろうな。
そりゃ、坂を上るに決まってる。
角度は緩いが、その分距離が長い。というかそもそも、どんなに緩くても上り坂ってのは歩きたくもないもんだ。
しかも、コーナーの出口に用意してやがる。URAの連中、よっぽど速く走らせたくないらしい。
ここでちょっとはやつも減速するだろう――と思いながら前方を見る。
ヤツの速度は確かに落ちているように見えた。しかし、２番手との差は絶対に縮めまいと、強く上っていっている。
オレの頭にも血が上る。フザけんな！
お前ひとりでこの時間を終わらせようだなんて許さねえ。
完全に理解した。アイツは、マジでこの４１００ｍという長丁場を、ブチ壊しにきやがった。
オレも自分の作戦を切り替える。
加速し、早く走って、ヤツを追撃する。
そのために、まずは前の二人からだ。
脚に血を入れ、腕を大きく振る。
二人を直線でごぼう抜きにして、２番手を確保する。
待ちやがれ！俺と勝負しろ。
舐めんじゃねェ！

58二次元好きの匿名さん22/01/06(木) 23:29:30

オジュウチョウサン

と言えばこの方

「それでも、ライバル」

オジュウチョウサンとアップトゥデイト — 高草木こぶ（旧こぶじめ） (kobujime_55) 2018年12月09日

オジュウチョウサンとアップトゥデイト

平地、障害の垣根も飛び越えた走りに、改めて「強い」と感じました。 — 高草木こぶ（旧こぶじめ） (kobujime_55) 2018年12月27日

来たる３月９日、
第２１回阪神スプリングジャンプ

オジュウチョウサンとルペールノエル — 高草木こぶ（旧こぶじめ） (kobujime_55) 2019年03月07日

第２２回
阪神スプリングジャンプ

歓声は無くとも、熱い熱い春の蹄音が聞こえる — 高草木こぶ（旧こぶじめ） (kobujime_55) 2020年03月12日

59二次元好きの匿名さん22/01/06(木) 23:34:40

目の前に大障害が見えてくる。
高くて、ブ厚くて、硬くて、痛ぇ障害。
向こう側が全く見えねえのも恐怖心を煽ってくる。
これをビビったり、飛び越えに失敗して、見てられない状態になるヤツもいる。即刻病院送りだ。
ぶっちゃけ病院じゃ間に合わねえから、救急車がスタンバイしているようになった理由だ。
オレも、可能な限りギリギリを攻めて低く飛ぶようにしているから、正直なところ怖ぇ。
ヤツは持ち前の飛び越えセンスで、お手本のようにきれいに飛んでいきやがった。
あの感じだと、着地をミスってよろけてるってこともないだろう。
何度も飛び越えてきて、練習もしてきた大障害。
それでもキモは冷えて、背中には違う汗が流れてくる。
本当に？このスピードで行くのか？
遅くして高く飛ぶか？アイツとの勝負は？
考えているうちに目の前まで障害が迫っていた。
覚悟を決めて、踏み切って、ジャンプする。
振り上げた脚が、大障害の上を超えた。
踏み切った脚に、鈍い衝撃と痛みを感じる。
迷っていたせいか、踏み切り脚の振り上げが足りず、開脚が間に合っていなかった。
痛ぇ。クソ、走らせやがって。
痛みと焦りで頭がいっぱいになるが、重力が思考を置いてきぼりにしたまま、体を地に落とす。
身体を沈めて、せめて速度だけは殺さねぇようにしないと――
全てを取り繕おうとした結果、前に出した脚の場所が定まらず、体重と慣性が脚を直撃する。
身体と視界が揺れる。本能で転倒だけはこらえる。
コーナーを回って少したってから、レース場に響く拍手の音。
走っていたそのときの俺は、何も聞こえていなかった。

60二次元好きの匿名さん22/01/06(木) 23:42:34

ここからは器用さが試される部分だ。
オレたちは左回りか右回りか、どっちかが得意であればそれで良いってわけじゃない。
コースの途中で回る方向が変わっちまう。どっちの方向でも、重心をぶらさずに意識を向けていかなきゃいけない。
右足の鈍い痛みを、左足の切ったような痛みを感じながら、前を見る。
ヤツはさっきよりも遠くに行っていた。信じられねえ。
ヤツが次の障害を飛び越える。頭の中でカウントする。
１……２……３……クソ、遠い！
４を数えたころ、自分もその障害にたどり着く。
どんなにテキトーに考えても、２０バ身は離されている。
痛む足をこらえて、目の前の障害を越える。
低く、速く。痛みと恐怖に駆られても、ここだけは絶対に変えない。
待ちやがれ。全力で体力オバケの後ろを追う。

61二次元好きの匿名さん22/01/06(木) 23:50:09

着地の後にはまた「谷」だ。
上り「ながら」左回りに曲がらなきゃいけない。心臓破りの坂だ。
何がヤバいかって、ここは下り上りを２回繰り返さなくちゃいけない。
どんなにこらえても、どうやっても胸が痛み、呼吸が激しくなる。
呼吸が激しくなれば、身体の運動量がその分増えて、また苦しくなる。
ヤツに追いつかなきゃいけないのに、下ったときの速度が使えない。
走りなれているコースだと思ったが、これまで消耗した分も合わせて、全力で駆け上がる。
本当はセーブしていきたいが、そうもいかない。
向こうだって相当に消耗しているはずなのに、逃げている分オレよりもダルいはずなのに、スイスイ上っていきやがる。
ヤツが通り過ぎたラチの柱を基準に、頭の中でカウントをし続ける。
４秒。ギアは上げているはずだ。
いったいどこで、いつの間にそんな体力をつけやがった！？

62二次元好きの匿名さん22/01/06(木) 23:52:26

（>>1にオジュウチョウサン（ウマ娘）の印象を聞いてからその場で書き溜めた分がとうの昔に弾切れしてるので、遅くてゴメンなさい……もう少しだけ……）

>>63

63二次元好きの匿名さん22/01/06(木) 23:54:57

>>62

え？！そうだったんですか？！？！

まじか...このSS一生大事にします！！

64二次元好きの匿名さん22/01/06(木) 23:59:32

オジュウチョウサン物語とかオススメやな。

オジュウだけじゃなく親父や馬主、調教師、騎手、障害競走についても書かれていておもしろかったわ。

中山GJ3連覇した所で一旦休止しているから、続きが書かれるのを楽しみにしてる。

オジュウチョウサン物語　目次 - 銀河孤児亭プロト版の短いバージョンはこちら。「長くて読んでらんねえ」という人はそちらを読むと良いよ。＊注意事項＊最初に言っておかなくてはなりませんが、筆者は競馬関係者でもなんでもない単なる１ファンです。参考にした資料はあくまで一般人が手に入る物のみに限ります。ノンフィクションを謳ってはおりますが、描写の中には周辺情報から筆者の想像で補填したり、わずかな騎手コメントから膨らませて脚色した描写などが少なからず含まれます。一般人が現状で入手可能、参照可能な資料はほとんど目を通しているつもりではありますが、上記理由により事実と異なる描写が存在する可能性も否めません。そういった点について、読者の皆様には了承…adenoi-today.hatenablog.com

65二次元好きの匿名さん22/01/07(金) 00:03:02

追いつくことで頭がいっぱいだったせいか、２度目からの障害はほぼ無意識で跳んでいた。
前しか見ていなかったせいか、後ろの娘たちも全然気にしていなかった。かろうじて足音だけは聞こえていたかもしれない。
右回りのコーナーを回りながら、大掲示板の前の障害まで加速する。
前にも走ったことがあるコースで、障害レースのウマ娘になって３年目。積み重ねてきたものが、俺を思考の外でも走らせてくれていた。
他のウマ娘との距離をカウント数で推測するのは、石神のオヤジさんや、黒服の先輩ウマ娘から学んだ。
この先輩にはめちゃくちゃ面倒を見てもらってる。
その先輩も超ベテランで、障害には出てないが、平地で何度もヤバい連中と重賞レースを走ってきていたからこそ、培われてきたレースセンスだった。
マジで頭が良くて、尊敬せずにはいられない先輩だ。まあ、なんか勝ち切れてねえんだけど。
あの人のためにも負けられねえ。絶対に勝つ！
ヤツとの差はまだ１０身以上。２周目に入っているのに、差が全く縮まらない。
どこかで、追いつかねえと。

66二次元好きの匿名さん22/01/07(金) 00:11:01

コーナーを曲がって、下って、また曲がる。
向こう正面でヤツを追う。
後ろからの音も遠くなってきた。後ろのほうで動揺が広がっている。そりゃそうだ。
逃げを決められて、潰れるだろうと抑えていたら全く潰れず離されて、ついていけるヤツのほうが少ない。
遅くなっちゃったから巻き返す、ってのは基本的には難しい戦法だ。それこそ、超ロングスパートを決めるとか、間をブチ抜くとか、型破りなことをしなきゃいけない。
大逃げを打つ、っていう力にモノを言わせる作戦は、もっとヤバい力か、相当な技術がないと対抗できないもんだ。
いったいどんなタイムで逃げているんだ。疑問を持たずにはいられないスピードだった。
場内のお客さんやトレーナーたちの間でも、どよめきが広がっていたらしい。本当に大丈夫なのか、と。

67二次元好きの匿名さん22/01/07(金) 00:23:00

ヤツが障害を飛び越える。
ちょっとペースを調整して、踏み切り足を決めて、脚を振り上げる。
これだけぶっちぎりで走ってきたっていうのに、まだキレーに飛び越えていきやがる。
まるで、「もう追いつけないんじゃないの」って言っているようだ。
「私にはこんなに体力が残っているんだぞ」「そんなもんなの？」
言ってるかどうかは知らねえが、ブチ切れた。
上等だ。もう少し気持ちよく走ってやがれ。
オレはヤツに勝たなきゃいけねえんだ、そこをどきやがれ！
目の前に迫った障害に向かって、力任せに跳ぶ。
高さが足りず、腰下まで障害に飛び込んだようなジャンプだった。
それでも、上ではなく前に向かって力いっぱい振りまわした身体は、障害をブチ抜いて超えていった。
跳躍とは言えないその姿勢は、当然、着地までうまくいくことはなく、身体がよろける。
ド根性で痛みを抑えて、強引に身体の向きを元に戻して、身体を沈める。
他のすべてを犠牲にして、速度だけは維持する。
残りの障害はあと２つ。追いつかなくてはいけない。
待て、待て、待ちやがれ！

68二次元好きの匿名さん22/01/07(金) 00:35:16

トレーナ―達の間で「最も厄介な坂」と言われている下り坂。
脚の感覚がなくなり、腕が痺れて、肺がブッ壊れそうなほど酸素を求めている。
ここまでの障害で頭だって真っ白になった。
俺が王者だってことを、ここでヤツに証明してやる。
絶対に、絶対に勝つ！

その時、フッと何かが見えた。
ゴール板まで続く、金色の旅路が、頭の中におりてきた。
どこでヤツを捲れるかのチャンス。
スパートをかけるタイミング。
この下り坂を利用する方法。
どう考えても、ここしかない。
この坂で速度を得て、次を飛び越えて、最後の直線でヤツをブッちぎる。
脚が、誰かに支えられているかのように、軽くなった。
本当のところは、下り坂を下りているからそう誤解しているだけなのかもしれない。
でも、上るときの体の軽さは、嘘ではなかった。

69二次元好きの匿名さん22/01/07(金) 00:43:22

怪文書の合間に挟まるがオジュウだと多分この人

https://twitter.com/numa2020211?s=21

70二次元好きの匿名さん22/01/07(金) 00:44:10

最後の障害までの、土が混じった直線コース。
アイツが潰れて遅くなったのか、オレが加速して追いついたのか、その両方なのか、わからない。
でもその背中は、さっきよりも近く、大きく映るようになっていた。
ヤツが、最後の障害を飛び越える。
自分がそこにたどり着くまで、またカウントする。
１、２秒。
約５バ身。コースの反対側にいたころの半分になった。
その最後の障害を、低く、全力で、光る旅路の示す通りに、跳び越す。
落ちてくるときの重力を感じながら、身体に力を乗せる。
もう、オレとヤツしか、この世にはいないんじゃないかって思った。

71二次元好きの匿名さん22/01/07(金) 00:58:03

コーナー途中の砂のコースにオレたちが入る。
眼前に広がる金色の光が、より強く輝いていた。
ここだ。ここでヤツを捉えられる。
二人で、最後の直線に入る。
夕日に照らされる葦毛を追いかけて、身体の中に残ったものをすべて吐き出す。
３バ身。
内ラチ側にも入れそうな空間があったが、黒い影が差す旅路は、大外に向いていた。
その道に導かれるまま、芝を蹴る。
残り２００。
オレの影が、ヤツの足元まで届く。
残り１５０。
オレの頭が、ヤツの尻尾まで届く。
残り１００。
オレの身体が、ヤツの身体と重なる。
残り５０。
アイツの姿が、オレの視界から下がっていく。
その顔は見たこともないほど、ぐちゃぐちゃで、すべてを出し切ったようだった。

72二次元好きの匿名さん22/01/07(金) 01:10:14

勝った。
ターフの上に座り込んだオレの視界に色が戻ってくるまで、時間が必要だった。
突然現れた道は、いったい何だったんだろうか。
勝ちたくて必死になったとき、翼が生えたように体が軽くなったのは、何の力だったんだろうか。
疑問符が頭の中に生まれては、解決できずに消えていく。
すぐ後ろで、ヤツが涙目になりながら、息を整えている。
なんで逃げたんだ。どんな覚悟でその作戦を取ったんだ。お前の飛び越えキレイだよな。
いろんなことを聞きたかったが、疲れが許してくれなかった。
「よう、前・王者様。」
話しかけると、キッとこちらを見つめてくる。
「何よ、現・王者様。また、あんたの後ろで踊らなきゃいけないのね。」
「おう、よろしく頼むわ。」
それだけの軽口をたたくだけで、もう精いっぱい。
青空を見上げて、最後の力を振り絞って、叫ぶ。
「勝ったー！」

越えていった王者を、黄金色に光る夕日が、温かく照らし続けていた。

了

73二次元好きの匿名さん22/01/07(金) 01:14:32

長くてすみません。途中でちょっと大きくやりすぎたと反省してます……

>>1のお眼鏡に適ったらうれしいです。

74二次元好きの匿名さん22/01/07(金) 01:16:52

>>1でないオジュウファンだけど良かった…掛け値なしに…

お疲れ様です

75二次元好きの匿名さん22/01/07(金) 01:31:26

もうバレてると思うんですけど、原作は第１４０回中山大障害（２０１７年）です。
自分が障害競走を見るきっかけになったのもこのレースだったし、いつかウマ娘ネタで障害レースを一本やってみたい、と思っていたので、スレ主に心から感謝します。機会をくださってありがとうございます～～～

76二次元好きの匿名さん22/01/07(金) 01:50:00

このレスは削除されています

77二次元好きの匿名さん22/01/07(金) 01:51:59

オジュウがもし欧州に遠征していたらステープルチェイスはともかくハードルだとどこまで通用していたかな？
個人的にはチャンピオンハードルとか挑戦してほしかった