- 1二次元好きの匿名さん23/12/10(日) 20:42:21
目が覚めると、目の前に担当で愛バのヴィブロスの顔があった。
――えっ? なんで?
声を上げようとするが、乾燥した口内と激痛の走る咽頭で、空気だけが出た。
「あっ! トレち、起きたんだね!?」
薄手の体操服1枚で。
ベッドサイドに手と顎を乗せて、こちらを覗き込んでいたヴィブロス。
こちらの目が開いたことに気付くと、すぐに姉を呼ぶ声。
「お姉ちゃーん! トレち、起きたよー!」
その言葉に、キッチンの方から。
バタバタバタ、と。
けたたましい足音が、聞こえてきた。
「トレーナーさん! 起きたの!?」
引き戸を全開にして、寝室に入ってきたのは、同じく担当で愛バのヴィルシーナ。
彼女の方は、薄い体操服姿の上にエプロンを身に着けている。
そして、手には菜箸を持ったまま。
「あ……、ゴホッ、ゴホッ」
声を出そうとするも、喉のいがらっぽさが、それを押しとどめる。
咳が止まらないのを見て、ヴィブロスが手元のペットボトルの水を差しだしてくれた。
一口飲むと、身体にすっと潤いが戻ってくる気がする。 - 2二次元好きの匿名さん23/12/10(日) 20:42:59
「ただいま。――良かった。トレーナーさん、起きたんだ」
その時。
買い物のビニール袋を持って、担当で愛バのシュヴァルグランも来た。
眉をひそめて、心配そうな顔でこちらを見ているもの、ほっとしている感情も見える。
「そう言えば、どうしてみんなはここにいるの?」
自分は、トレーナー室で仕事をしていたはずだ。
それなのに、いつの間にかベッドに寝ていて。
しかも、担当している3人が、トレーナー寮に来ているという状態。
――わけが、わからない。
「……トレち、覚えてないの?」
「トレーナーさん、トレーナー室で倒れていたんですよ。僕も姉さんもヴィブロスも、心臓が止まるかと思いました」
「本当よ。私たちの担当をするのだから、しっかりしてくださいな」
――記憶が、ない。
だが、そういうことなら、体操服で彼女たちがいることにも説明がつく。
「そうなの?」 - 3二次元好きの匿名さん23/12/10(日) 20:43:26
身体を起こすと、自分の服に目が向いた。
仕事をしていた時に着ていた服とは違う、Tシャツ。
下半身はパンツだけだが、それも違っている。
「着替えさせてくれたんだ、ありがとう」
すると、三者三様の反応。
顔を真っ赤にして、キッチンに駆け戻っていくシーナ。
同じく頬を染めて、恍惚の表情を浮かべるシュヴァル。
悪戯っぽい笑みを見せる、ヴィブロス
「わ、私は何も見ていないわー!」
「トレーナーさんの身体、素敵でした……」
「えへへ、見ちゃった。でも、結婚したらどうせ全部見せあうんだし、ちょっと早まっただけだよね」
考えてみると、年頃のお嬢さんたちに全裸を見られたわけだ。
羞恥で、体温が上がる。
それにしても、一番幼いヴィブロスが、一番冷静なのは意外だが。 - 4二次元好きの匿名さん23/12/10(日) 20:43:46
「シュヴァル、ヴィブロス、もう少しでお粥ができるから、トレーナーさんの身体を拭いておいて~」
キッチンから、シーナが声を掛ける。
言われれば、美味しそうな匂いが漂ってきていた。
……ぐぅ、と腹が鳴る。
「大丈夫、それくらいできるって」
起き上がろうとするが、ベッドから上半身を起こしたところが限界。
力が入らなくて。
クラリ、とよろけてしまう。
「ああ、もう。ダメだよ、トレち」
慌てて支えてくれる、ヴィブロス。
俺の世話をできるのが嬉しいらしく、耳がピコピコと揺れている。
その間に、固く絞ったタオルを、シュヴァルが持ってきた。 - 5二次元好きの匿名さん23/12/10(日) 20:44:17
「はい。じゃあトレーナーさん、拭いちゃうよ」
毛布の上に乗って、こちらのTシャツを捲り上げると、手際よく身体を拭いてくれるシュヴァル。
――本当に、力が入らないので、2人にされるがまま。
背中も、前から抱きつくように拭ってくれる。
シュヴァルの、少し荒い息がかかる。
――気が付いていなかったが、汗でびっしょり。
不快を感じると同時に、ヴィブロスが代わりのシャツを持ってきてくれた。
汗で濡れたものと交換して、新しいシャツを着直す。
「……トレーナーさんの身体って、本当に良いですよね。男の人って感じで、頼りがいがあって、甘えたくなっちゃうような、魔性の雰囲気がありますよね」
「うんうん、そうだよね~♪ 私も、思わずむしゃぶりつきたくなっちゃう。ねえ、トレち~、今度抱き締めて。ねちっこく」
「あ、ヴィブロス、ズルいよ。僕もやってほしい」 - 6二次元好きの匿名さん23/12/10(日) 20:44:43
――何を言っているのやら。
そもそも、「ねちっこく抱き締める」ってどうやるんだ。
そこに、同じことを考えていた人が、1人。
「はあ……。ねちっこく抱き締めて、って。トレーナーさんは病人なんだから、そういうのは治ってからにしなさい」
シーナが、手元のお盆に、玉子粥を乗せてやってくる。
そのまま枕元に腰掛けて、ブルマのみの生脚の上にお盆を置いた。
「はい、あーん」
それから、スプーンに手作りの玉子粥を掬って、こちらの鼻先に。
「いや、自分で食べられるって」
「よろけて起き上がれなかった人が、無理するべきではないわ。スプーンを落としてベッドを汚すのがオチよ。病人なんだから、治るまでは甘えておきなさい」
手元のスプーンを離すつもりは毛頭なさそうなので。
諦めて、彼女が手ずから作ってくれた粥を口に入れる。
「……美味しいよ」
「そう」
そっけない口調をしているものの。
顔がパアッと明るくなり、尻尾がブンブンと揺れる。
口調以外の全部が、「嬉しい」と主張していることに、思わず苦笑してしまった。 - 7二次元好きの匿名さん23/12/10(日) 20:45:06
しばらく、シーナに食べさせてもらっていたものの。
折角、彼女が作ってくれたのに、食欲がない。
行平の中には、まだ半分ほど残っている。
「ごめん」
「良いのよ。ゆっくり治していきましょう。リンゴも少し剥いたの。食べてくれる?」
賽子くらいの大きさにされたリンゴを、彼女の手から頬張る。
――甘い。
じんわりと、身体に生気が満ちてくる、ような気がする。
「はい、トレち。シュヴァちが貰ってきてくれたお薬だよ」
そこに、ヴィブロスからカプセル状の薬とペットボトルの水を差し出される。
「ありがとう」
受け取って、一息に飲み込む。
食事を摂って、薬を飲んだせいか、少し余裕もできた。
ぐるり、と心配そうにこちらを見ている3人を見回す。
「今日はごめん。ありがとう。治ったらなんでもしてあげるから」
いち早く反応したのは、ヴィブロス。
シュヴァル、シーナもそれに続く。 - 8二次元好きの匿名さん23/12/10(日) 20:45:29
「あ、それなら私、指輪が欲しい! 左手薬指の」
「僕もそれが良いな。左手薬指」
「私もできるなら、それが欲しいわね。もちろん、トレーナーさんも左手薬指に付けるのよ。4人でお揃い」
働かない頭で、考える。
――左手薬指は、不味いんじゃないだろうか。
いつか、みんなに恋人ができた時、あらぬ疑いをかけられるんじゃないかと。
「……それは、不味くない?」
「何を言っているのよ。チームなんだもの。お揃いのものを付けて、団結力を高めるのは当然でしょう?」
「姉さんの言うとおりだと思うな。制服みたいなものだよ」
「それに~。こうやって、トレちのお世話したんだし、もう私たち、トレちのお嫁さんみたいなものじゃない? ねえ、お姉ちゃんたち?」
ヴィブロスの問いかけに、シーナとシュヴァルが答える。
「そうね。トレーナーさんには責任を持って私たちを貰っていただかないと」
「そうだね。でも、もし他に好きな人がいるなら、僕はお妾さんでも良いから……」
「ダメだよ、シュヴァち! トレちに好きな人が居ても、私たちの身体に溺れさせれば良いんだって。ほら、こないだ貸した少女漫画にもそう描いてあったでしょ!」
「そうね。『1本の矢は容易に折れても、3本の矢ならやすやすとは折れない』と言うわ。いざとなったら、3人で行くのよ、シュヴァル」
「う、うん……」 - 9二次元好きの匿名さん23/12/10(日) 20:45:56
女3人寄れば姦しい、とはこのことか。
彼女たちのお喋りを聞いているうちに、薬が効いてきて、眠くなってきた。
つい、「ふわぁ」と欠伸が出てしまう。
「あら、眠くなった?」
「うん」
シーナの問いかけに、生返事で返す。
もう、意識が朦朧としてきているのを感じる。
「なら、おまじないをかけてあげるわ」
「おまじない?」
「そう、早く良くなるように、って」
シーナは、ベッドに立膝で乗ってくると、こちらの顔をその豊満な胸で抱き締める。
甘くゾクゾクするような、バラの香りが香ったところで。
ちゅ、と。
額に、キスをしてくれた。
そのあと、こちらの左手を取って。
「これは、治ってからの予約ね。楽しみにしているわ」
左手薬指に、自分の尻尾から引き抜いた毛を一筋、結わえてきた。 - 10二次元好きの匿名さん23/12/10(日) 20:46:18
「次は、僕だね」
入れ替わりで、シュヴァルが同じようにベッドに乗ってくる。
彼女の匂いは、フルーティーなバナナのような、甘くてすがすがしい香り。
姉と同じように、その柔らかい胸でこちらの顔を抱き締めると、やっぱり。
ちゅ、と。
額に、口付けをしてくれた。
「こっちも、同じようにね」
左手薬指に、尻尾の毛を結ばれる。
「ふふふ、私の番だね、トレち。早く良くなって」
今度は、ヴィブロスが抱き締めてきた。
姉たちよりも加減ができないのか、少し強め。
彼女の、蠱惑的な甘いハチミツのような香りに包まれる。
ちゅ、と。
こちらの、額を唇で吸ってきた。
「や・く・そ・く。忘れないでね」
左手薬指が、彼女の一筋の尻尾の毛で縛られる。
それから、ヴィブロスの手に支えられるようにして、ベッドへと潜り込む。
――少しだけ、心身ともに落ち着いてきた気がする。 - 11二次元好きの匿名さん23/12/10(日) 20:46:41
布団に入ると、3人から手を握られた。
「私のトレーナーさん。貴方のシーナはずっとお側にいます。安心して眠ってください」
「僕のトレーナーさん。大好きだよ。早く良くなって」
「私のトレち。愛してるよ。またデートに行こうね」
意識が、闇に沈む瞬間。
そんな声が、聞こえた気がした。 - 12二次元好きの匿名さん23/12/10(日) 20:47:44
これで終わりです。
ありがとうございました。
至らない点もあると思いますが、よろしくお願いいたします。
一部スレ立てでミスした部分がありましたので、消して立て直しました。申し訳ありません。 - 13二次元好きの匿名さん23/12/10(日) 20:48:08
おつ
よかったぞ - 14二次元好きの匿名さん23/12/10(日) 20:50:34
- 15二次元好きの匿名さん23/12/10(日) 20:52:52
うーんこの幸せ者
- 16二次元好きの匿名さん23/12/10(日) 20:54:09
- 17二次元好きの匿名さん23/12/10(日) 21:18:41
この三姉妹チームで抱えてるトレが羨ましい…
甘々で良いSSでした - 18二次元好きの匿名さん23/12/11(月) 07:55:30
ほしゅ
- 19二次元好きの匿名さん23/12/11(月) 13:57:24
天国はここにあった
- 20二次元好きの匿名さん23/12/11(月) 15:21:36
独占にして共有
パーフェクトコミュニケーションとホームラン叩き出した結果だよ - 21二次元好きの匿名さん23/12/11(月) 23:12:08