黄金千界樹を背負い挑む聖杯戦争 第七局

  • 1二次元好きの匿名さん23/12/11(月) 23:32:00

    聖杯戦争はここに決着となった
    セイバー……シグルドでなければ勝ち残る事は叶わなかっただろう。セイバーには感謝している
    そして、まもなく聖杯を手にするわけだが……
    元々勝つ事が目的。大した願いは持ちわせていない身の上だったのだけれども……
    ふって沸いた様な願いが一つ、俺の中に生まれた
    イザークとの契約もあり、あまり大それた願いは出来ないが、人1人くらい探し当てる程度なら約定の範囲だろう
    最後の夜はすぐそこにーーー

  • 2二次元好きの匿名さん23/12/11(月) 23:32:37

    建て乙

  • 3二次元好きの匿名さん23/12/11(月) 23:33:07

    建て乙です

  • 4スレ主23/12/11(月) 23:34:44

    過去スレ一覧

    【悲報】どうして……|あにまん掲示板俺は幸運にも最優のセイバーを引き当てた。さらに幸運な事にとても強力なサーヴァントだ。けれど聖杯戦争で油断は出来ない。まずは他のサーヴァントと戦って各陣営の戦力を測った。真名迄は把握し切れていないけど戦…bbs.animanch.com
    千年樹を継いで挑む聖杯戦争代2局|あにまん掲示板俺はユグドミレニア再興を賭けて聖杯戦争に挑んだが、特に悪いことをして……して……ないのにいきなりアーチャー、ランサー、ライダー、キャスター、バーサーカーの5陣営に同盟を組まれてしまい、一気に四面楚歌に…bbs.animanch.com
    黄金千界樹の未来を背負い挑む聖杯戦争 大3局|あにまん掲示板ユグドミレニア復興を目指して10年の月日を費やし、この聖杯戦争に挑むセイバーのマスターだ。戦いは過酷で、アサシンを墜としたばかりに他の陣営全てからロックオンされてしまう。何度も死にかけるが、キャスター…bbs.animanch.com
    黄金千界樹の未来を背負い挑む聖杯戦争 第3.5局|あにまん掲示板ユグドミレニア復興を目指して10年の月日を費やし、この聖杯戦争に挑むセイバーのマスターだ戦いの中、突如各陣営を襲撃した正体不明の魔獣共俺達は辛くもそれを退き、その正体と黒幕の調査を行うこととなるーーーbbs.animanch.com
    黄金千界樹の未来を背負い挑む聖杯戦争第4局|あにまん掲示板キャスターのマスターが仕掛けたイレギュラー。屍神ゴルゴーンをアーチャー、ライダー陣営と手を結び何とか退けたセイバーのマスターだしかし、聖杯戦争なら訪れた脅威を排除したところで俺達なら置かれた状況は変わ…bbs.animanch.com
    黄金千界樹の未来を背負い挑む聖杯戦争第4.5局|あにまん掲示板あ、ありのまま起こったことを話すぜ突然スマホが異常を吐くわ仕事で変なところに飛ばされるわで更新が途絶えてしまいました突然の事で俺も何がなんだかわからなかったが申し訳ない漸く更新出来るようになった様なの…bbs.animanch.com
    黄金千界樹の未来を背負い挑む聖杯戦争第5局|あにまん掲示板ランサー陣営を斃し、残るはアーチャーとライダー。あの2人は恐らく協力して此方と戦うつもりだろうランサーとの戦いで受けたダメージは回復しきってはいないが、これ以上の猶予を与えてくれるほど向こうも甘くない…bbs.animanch.com
    黄金千界樹を背負い挑む聖杯戦争 第六局|あにまん掲示板あの女、容赦無く殺しに来やがった予めセイバーの用意した蘇生のルーンが無ければ死んでいたアイツはこの程度は織り込み済み何だろうがな!だが、終わるわけにはいかない。俺には一族の未来が掛かっている!半ば勝手…bbs.animanch.com
  • 5スレ主23/12/11(月) 23:39:04

    なんとか此処までやって来ました
    何度もスレを落としたりしましたけども、此処から完結までこの調子でやっていこうと思います
    ……勢いとライブ感に任せてでも中々やれるものですね

  • 6二次元好きの匿名さん23/12/11(月) 23:44:41

    結構長かった物語も終盤か

  • 7千界樹の記録23/12/11(月) 23:49:16

    此処まで手を返品を変えて、私に食い下がる魔術師はこれまで見た事はない
    一年経たずに力尽きる事が当たり前とされる代行者の世界で、私は此処まで8年戦い抜いて来た。その戦いの中、魔術師と敵対することだって少なくは無かったが、皆全て私の持つ、対魔力と戦鎚の一撃の前に斃れていった
    ほぼ初見殺しの面が強いが、それでも自分の能力に自信がある魔術師であるほど、当然の様に弾かれる魔術を前にすれば好きを晒し、物理的な破壊は当然、魔力すらも振動破壊する戦鎚の一撃の元に屠って来た
    その中には時計塔の中でもそれなりの地位にいるものだっていたが、最期は御名一様に無惨な肉塊へと形を変えていったのだ
    それがどうだ?
    私が動いて、これほどの時間生きながらえた魔術師は確実にいなかった。目の前の青年は私が見て来た魔術師の中では中の上と言ったレベルだが、その力や技巧は見た事がないほどに高い
    「ーーーでも、これなら如何かしら、ね!?」
    洗礼詠唱を唱える。主への祈りに呼応する様に紅く鳴動する
    青年の展開した魔術式は攻防一体の陣。吹き荒ぶ魔力を帯びたブリザードが相手の術を弾き、一歩中に踏み入れば風に舞う氷の花弁が標的を斬り刻む
    炎や熱で溶かすのが手っ取り早いと思うが、それもあの冷気と風の前にどれだけの火力が必要になるかーーー
    厄介な魔術の呪術の組み合わせだが、それでも私には通用しない
    「主の御心のままに、吹き飛ばしなさい!」
    庭を構成する砂利の場に戦鎚を叩きつける。鳴動する戦鎚は自身から発せられる破壊の波動は強力な魔力を乗った波動となって空気を伝う。戦鎚本体を中心に広がる破壊振動は瞬く間にブリザードへと到達し、氷の花弁諸共ブリザードそのものを粉砕した
    「ーーーごぷッ」
    そして、それ程の破壊圧だ。旋風の中央にいた青年はひとたまりもなくその振動の直撃を受ける
    先の時とは明らかに異なる吐血量。戦鎚を掠めた時よりも非常に重篤なダメージを受けた事であろう事は火を見るよりも明らかだろう
    「……終わりかしら」

  • 8二次元好きの匿名さん23/12/11(月) 23:53:52

    十まで保守

  • 9二次元好きの匿名さん23/12/11(月) 23:56:20

  • 10二次元好きの匿名さん23/12/11(月) 23:56:42

  • 11二次元好きの匿名さん23/12/12(火) 00:06:38

    インスタント感覚で死に掛ける凌我君
    と言うよりルーナちゃんが理不尽の塊すぎる!

  • 12二次元好きの匿名さん23/12/12(火) 08:02:19

    朝保守

  • 13二次元好きの匿名さん23/12/12(火) 08:26:58

    >>11

    設定見てわかる上澄み感がすごいからね…、多分代行者としてなら言峰より上なんじゃないかな、それこそスカウトされたと言ってるけどシエルの補佐役としてたっててもおかしくない逸材だし

  • 14千界樹の記録23/12/12(火) 08:43:09

    もう少し何かやってくれるだろうかと淡い期待を寄せていたが、流石に今の一撃を受けてはどうしようもないか
    「……まだ生きてるのね」
    魔術刻印の力なのか、両膝と左腕を地面についた姿勢のままかなりの量の血を吐き出してしまっている。恐らく、体内の内臓の大部分が撹拌された様な損害を受けた筈だ
    生物学的には死んでいても不思議ではないが、それでも強い眼光で殺気と共にこちらを睨みつけている
    まだ、何か反撃の手段を模索しいるのは明らかだ
    「ーーーアハ」
    思わず笑いが漏れた。気分が昂揚してしまう。まるで恋する乙女の様な気分だった。まだ何か仕掛けてくるのーーー?
    まだ何か、此方を仕留めるための算段を整えているのーーー?
    なら、見せてみてーーー
    敢えて、乗ってあげるから
    「苦しいでしょう、すぐに楽にしてあげる……」
    まだ何か仕掛けてくる?何を仕掛けてくる?
    初めての体験に、初めて目にする相手に期待に胸を躍らせて、このまま洗礼詠唱で仕留めれば良いところを敢えて近づいて行く
    狙ってるのは分かる。彼が狙っているのは私が無防備に近づいて、トドメを指す瞬間ーーー
    さあ、いつ来る?いつ仕掛けてくるーーー?
    彼のすぐ側まで近づき、ゆっくりと戦鎚を振り上げる。そしてーーー
    「『氷面鏡 天幕を引け』!!」
    驚愕に目を見開いた彼が唱えたのは、頭上を覆う様に展開された氷壁であった。しかも、その壁は彼だけでなく私も覆う様に広がってーーー
    「ーーーなっ!?」
    同時に膨れ上がる魔力に、驚きと共に振り返った。馬鹿みたいに巨大で異質な魔力。これ程の存在に何故?
    こんな魔力の持ち主に何故これまで気が付かなかった!?
    氷壁に突き刺さる2本の氷槍。それは先程青年が使ったものと同じ術だろう。しかし、その槍の大きさも内包する魔力も神秘も、青年のものとは桁が異なっていた
    彼が展開した氷壁も相当な魔力を用いて構築された魔術である事は見た瞬間に理解できたがーーーそれを鼻で笑うかの様に飛来した槍は氷壁を破砕し貫通する
    反射的に振り上げた戦鎚が氷の槍を迎撃する。真っ向から迎え撃った戦鎚が、氷槍を粉砕するがーーー恐ろしい程の速度と質量を持った槍は、腕が痺れる程に重い一撃であった
    「ーーー何者!?」
    「ーーー本命のお出ましか」

  • 15二次元好きの匿名さん23/12/12(火) 12:32:19

    妹さんかな?

  • 16二次元好きの匿名さん23/12/12(火) 18:45:45

    夜保守

  • 17二次元好きの匿名さん23/12/12(火) 23:00:48

    嘘だろ凌駕くんでも相当だったのにそれ以上かよ

  • 18二次元好きの匿名さん23/12/12(火) 23:37:51

    このレスは削除されています

  • 19千界樹の記録23/12/12(火) 23:39:48

    槍が飛翔して来た方向にゆらりと蠢く悍ましき魔力の持ち主
    ゆらりゆらりと宙を歩く様に舞い降りて、月を背後にふわりと日本家屋の壁に降り立つ
    その姿は少女の形をしているが、見た目通りの存在では無いのはその魔力を見れば一目でわかる
    余りにも膨大な魔力。死徒であることを鑑みても余りにも異常な程の魔力を、私とそう変わらない体躯に内包した生ける屍。これ程の魔力を私に勘付かせず、更に私の探知すらもすり抜けて見せた
    それだけでも元になった人物が余りにも卓越した魔術師であった事を想起させる
    黒いドレスを身に纏い、土気色の肌に濡れた様な黒い長髪を揺らす。その瞳は真紅に彩られ、三日月の様に口元が裂ける
    「ーーー死徒、それも……」
    「ーーー来たか……凪!」
    上級死徒。そして彼ーーー神水流凌我の妹さんの成れの果ての姿であった
    「ーーーようこそ、お客様」
    突如出現した死徒は、柔らかい微笑みを浮かべながら丁寧なお辞儀を見せる
    同時に、周囲の気温が一気に低下した。確かに今の季節は肌寒いが、それでも此処までの寒気にはならないはずだ。だと言うのにベーリング海を思い出す冷え込みだ
    これではまるでキプリングの言葉の通り、「北緯六十五度を超えたらそこにはもう神の加護も人間の掟も及ばない」その通りに目の前の使徒の領域には主の加護も及ばないかもしれない
    これは単に、押さえ込んでいた魔力を解放しただけだろう
    これまで討伐して来た死徒の中でも、最大級の獲物ーーー
    現在定められている死徒の階級は全VII段階。目の前の死徒は確実に最大位階のVIIに位置する事は明らかであった
    もしもVII階梯よりも上位の位階が存在していれば、そこに位置する程の相手かもしれない
    そう思えるほどに、凄まじい力を感じる
    これまでの魔術師との戦いで多少なりとも消耗した今、この死徒と魔術師を同時に相手取る事はおそらく無理だ
    最悪なのは、この魔術師と死徒がグルであると言う可能性
    だがその場合、彼があの死徒の先制攻撃の時、私を護るようにあのら氷壁を展開する理由がない
    同じ氷の槍ーーー威力は桁違いだが、同じ術を用いていた以上関係者である事は確実だろうけども
    「さて、代行者。提案があるんだが?」
    「分かっています。此処に至ってまで貴方と敵対するつもりはありません」
    ほんの少し前まで殺し合っていが、意識を切り替える
    今は、何よりも目の前の死徒に集中しなければ

  • 20千界樹の記録23/12/13(水) 08:36:56

    ーーー視界が、暗転する
    「んーーー」
    窓から差し込む明かりに照らされて、意識が浮上する。随分、と言うほどでもないが懐かしい夢を見ていた
    あれは私と凌我君が初めて会った時の出来事。あの後、凌我君の妹だった死徒と文字通り決死の攻防を繰り広げたのち、姿を消した死徒を追いかけようとして倒れた凌我君を介抱したのが、交流の切っ掛けであり、あれが初めての共闘になった
    死に物狂いだったのは、どちらかと言うと私との戦闘で死にかけてた凌我君だけだった様な気もするけれど……
    そして、彼の屋敷で目が覚めた彼からことのあらましを聴き、暫く彼と行動を共にした
    「結局、あの死徒は凌我君が1人で仕留めちゃったけれどーーー」
    私を出し抜いて1人決戦に赴き、戦力差は圧倒的だったにも関わらずあの死徒を単独で滅ぼしてみせた凌我君
    私があの場に駆けつけた時には、雪が降り頻る中、一面の雪景色を染める血溜まりの中に、突き立てられた剣を前にして独り天を仰ぐ凌我君
    『……ばかやろう』
    あの時に見せてくれた表情。あれが私を強く惹きつけた
    以降、私は彼にくびったけと言うわけだ
    「さて、勝負は今夜ね……」
    聖杯戦争は終結した。今夜、凌我君が聖杯を使って本人曰く「人探し」が終わり、聖杯がまたあの魔術師の手に戻った瞬間、聖杯を奪取するーーー
    聖杯戦争中は、ギアススクロールによって敗退した私は聖杯に手が出せない
    その為、聖杯戦争終結が確定し、ギアススクロールの契約を履行した瞬間を狙う
    本当は聖杯戦争に勝利して合法的に手に入れた方が角が立たないのだけれど、負けてしまった以上は仕方がない
    亜種聖杯戦争がそこら中で行われている影響で、強力なサーヴァントを召喚するための触媒を入手するにも大変な苦労を要するご時世だ
    ライダー。コンスタンティノスの触媒を入手するので時期的にも精一杯だった
    その中で、やはり凌我君は時間的な猶予は周りよりもあったとはいえ、あの大英雄を召喚するための触媒を手に入れたのは流石だろう。ユグドミレニアのネットワークは未だ強く張り巡らされていたという事だ
    「最悪、外側ぶっ壊して中核だけ手に入れればそれでいいし、ね」
    トランクから替えの私服を出して着替える。うーん……あの神父のプレゼントだけれど、なんでかしっくりくる白と青の上下セット
    あの人、娘さんでもいたのかしら?

  • 21二次元好きの匿名さん23/12/13(水) 08:40:10

    凛がセイバーにあげた服のセットか、なるほどなぁ

  • 22二次元好きの匿名さん23/12/13(水) 11:09:55

    >>21

    アポだと言峰出奔してるんだっけか

    snだと凛にプレゼントしてたやつが此処だとルーナに行ってるんだね

  • 23二次元好きの匿名さん23/12/13(水) 19:31:15

    夜保守

  • 24千界樹の記録23/12/13(水) 22:29:23

    ドアを開けてリビングへと向かう。泣いても笑っても最終日。私に与えられたチャンスは僅か。逃すつもりは無い
    それまでは、英気を養うとしましょうーーー
    3人で頂く最後の朝食は、凌我君が作ったサンドイッチにコンソメスープであった
    派手に死に掛けた割には凌我君も普段と変わらぬ様子で食事を作っている。流石にこれまで何度も殺されかけただけの事はある、と彼が死に掛けた原因であるルーナは自分のことを棚に上げてそんなことを考えていた
    朝食の席は変わらず凌我を中心にその向かいの席にマルグリット、凌我の隣にルーナが座る。美味しくいただいて、夜までの間どう過ごすのかという話題になった
    主催者側から迎えが来るのは今夜。つまり日中は自由時間となる
    「さて……工房の後始末は血族の魔術師たちに任せてあるし……特に予定という予定はないんだよな」
    セイバーは未だに霊体化したままの様だ
    霊核そのものへのダメージはそう簡単に修復する事はできない。万が一の事態に備えて力を温存しているのだろう。油断も緩みとも無縁の大英雄は、最後まで現在の様だ
    「じゃあ3人でデートでもしましょうか!」
    「ーーーは?」
    突然のルーナの提案に、素っ頓狂な声を出すマルグリット。凌我の方も声こそ出さなかったが、コーヒーを飲もうとマグカップを持ち上げていた手が止まった
    「正気ですか?私達魔術師ですよ?」
    マルグリットは普段よりも更にキツめのジト目でルーナを見ているが、彼女は気にした素振りもなく悪戯っぽく笑って見せた
    「そんなの今更じゃない。このご時世、そんな事ぐだぐだ言ってたらあっという間に神秘も何も失っちゃうわよ?」
    「む……」
    ルーナの一言に口をへの字に曲げて押し黙ってしまうマルグリット。いや、確かに彼女の言葉は情報化社会の波が迫る魔術世界においては痛いところをついているが、問題はそこじゃない
    「デートならお前ら2人でーーー」
    「は?」
    「んん??」
    ーーー楽しんでこいよ。そう言おうとした口を閉ざす。此処は沈黙こそ金であると悟った凌我
    ……ルーナは兎も角、マルグリットが割と乗り気なのが意外だった。穴が開くほどに強烈かつ冷たい視線を向けてくる
    ルーナも表情は笑っているものの、一才目が笑っていない
    この2人相手にデートとか……病み上がりの身体に何というか鞭を……
    (ま、それ位は良いけどな)
    「OK、降参だ。夜までとことん付き合ってやるよ」

  • 25二次元好きの匿名さん23/12/13(水) 23:43:56

    これは恋愛ヘタレですね間違いない

  • 26二次元好きの匿名さん23/12/14(木) 08:15:13

    凌我君一日中休みたいだろうに無茶振りするなぁ

  • 27千界樹の記録23/12/14(木) 09:21:41

    「よろしい」
    「初めからそう言ってよね先輩」
    「言ってろ」
    どちらにせよ、ゆっくり休んでる暇はないし、状況がそれを許さないだろう
    それを理解しているのか、ルーナは悪戯っぽく笑って、凌我の耳元に顔を寄せる
    「……拠点にいて刺客を差し向けられるよりはマシでしょ?」
    その通りだ。聖杯戦争が終結した以上、夜になればギアススクロールの縛りは効力を失う。と、同時にこの機を逃すまいと魔術教会、ひいては聖堂教会からも何かしら聖杯奪取のために動くことも考えられる
    これまではサーヴァントの戦力を考慮すれば現代魔術師が束になってかかろうとも返り討ちに会うのが席の山だったが、ただ1人、セイバーだけになった以上はあちらも動きようがある
    例えばーーー聖杯戦争ご終結し、気が抜けた勝者を暗殺して聖杯を奪いに掛かるとか
    向こうがどう考えているのかは知らないがあとは他にも聖杯戦争に参加できなかった魔術師が恨み辛みを拗らせて勝者を闇討ちしようとしたり、まあ亜種聖杯戦争ではままある事だ
    それを避けるためには、日中は多少辛くても人通りの多い場所にいる方が闇討ち暗殺のリスクは減る
    その辺りを熟知した上でルーナはそう提案したのだ
    ……当然、自分の実益も兼ねての提案だろうが
    「そこ、先輩から離れる!」
    「はーい」
    ーーー
    時刻は10:30
    平日だが、街が活発に動き出す時間帯で、中々に人通りも多い
    「それじゃ、まずは定番のショッピングモールにでも行きましょうか」
    「なんで貴女が仕切ってるんですか」
    「じゃ、行こうか」
    ショッピングモール迄は徒歩で30分。途中からバスで行く方がいいだろう
    「で、こうなるのか」
    俺の右にルーナ、左にマルグリットがピッタリと。腕を絡め取られて動かせなくなった
    2人とも近いし、柔らかい。ああ、なんかいい香りもするな
    風呂場にいつの間にかおいてあったシャンプーの匂いだろうか
    ……って違う違う
    「ふふん。折角のアピールチャンスだものね。逃がさないわよ?」
    「そこの代行者には、負けたくないので!」
    俺を挟んでバチバチするのはやめてくれないか?そろそろ周りの視線が奇異を見るものから段々と殺気が篭る様になって来たんだ

  • 28二次元好きの匿名さん23/12/14(木) 09:24:20

    ( ゚д゚)、ケッルーナとマルグリットの柔らかボディーを押し付けられるなんて、爆ぜてしまえ

  • 29二次元好きの匿名さん23/12/14(木) 12:26:03

    聖堂教会も時計塔も一枚岩じゃないもんね…
    世界中で亜種聖杯戦争が行われてる世界だし、その中で鯖7騎召喚できる聖杯なんて狙えるなら誰でも狙うよなあ
    それはそれとして凌駕は爆発しろ

  • 30二次元好きの匿名さん23/12/14(木) 21:52:26

    夜保守

  • 31千界樹の記録23/12/15(金) 00:12:27

    バスに乗って揺られる事10分、ショッピングモールに到着する。此処では皆、自分の思い思いの買い物に意識が向いているから先程までの怨みの籠った視線からある程度解放された気分になる
    とは言ってもそんなに買うものでもあるのだろうか……どうせ明日明後日にはお互い此処を発つ身だろう
    ーーー等と、思っていた俺がバカだった
    ショッピングモールに入っている店を隅から隅まで見て回るかのように練り歩きながら、紙袋に一つ、また一つと購入物が入っていく
    女子2人はこれ迄の険悪、とまでは行かないモノの、そこまで良くはなかった雰囲気がガラリと変わってなんとも仲睦まじくショッピングを楽しんでいる
    そんな折、古そうなーーーもとい歴史を感じる様相の雑貨屋に入ったとき、ふと目に留まった物があった
    「へぇ……」
    雑貨店と謳うだけあっていろんな物が置いてあるんだなと、その品々を手に取る。思ったよりも質も良い。雑貨と言うには少々値が張っているが、これくらいなら特に痛くはない
    あの2人が奥の棚へ行った隙を見計らって手早く会計を済ませる。その様子から店員も察しがついたようで、軽く微笑みながら
    「包装しておきますね」
    と慣れた手つきで包装紙に包んでくれた
    「ああ、有難う」
    紙袋を受け取り、振り返ると丁度何某かを持った2人が精算をしようと歩いてきていた。軽く手を振って先に店を出る
    少しして買い物袋が増えた2人がやってきた
    「いつの間に何か買ってるじゃない凌我君も」
    「あの雑貨屋でいいものありました?」
    「後で見せてやるよ」
    そして、丁度時刻はお昼時が近くなり、昼食を何処で取ろうかと言う話になる
    「じゃあ彼処とかーーー」
    「却下」
    ルーナが指差した中華料理店を即刻蹴るマルグリット
    どうやら彼女の中の中華料理が少々歪んだ認識になっているのかもしれない
    「それじゃ、普通にレストラン入ろうぜ?」
    「はーい」
    「……ま、先輩が言うなら」
    それじゃ、昼食をとりますか
    少しでもカロリーと栄養を摂って、治癒の質と早さも上げないとだしな

  • 32二次元好きの匿名さん23/12/15(金) 08:03:28

  • 33千界樹の記録23/12/15(金) 11:12:56

    レストランで食事をとって一息してから再びモールへと繰り出す3人。午前中の段階ではまだ下層部しか回れていなかったので、これから中層、上層階へと順繰りに上がっていく
    途中あの2人の下着を、選ばされかけたが丁寧に断った
    揶揄うような表情のルーナに対し何かと対抗意識を燃やしてるマルグリットが変に熱くなると大分変なことを言い始めるから大変だ
    そして、そろそろ日が傾きかけたり頃
    凌我は自身が買った紙袋から丁寧に包装された二つの品を取り出す
    「それって、先輩が雑貨屋さんで買ってた奴?」
    「私達に内緒で何を買ってたのかしら〜?」
    と、カフェのテーブルに肘を付いて笑っているルーナ
    マルグリットはカフェで奢ったココアを飲んでいる
    「丁度いい機会だと思ってな。こっちがマルグリット、でこっちがお前宛だ」
    包装された品を2人に手渡す
    「あら、プレゼントって事?」
    「先輩にしては気が効くじゃん」
    2人が其々渡された品物の包装を解いて行くと、ルーナが渡された品にはサークルと十字架のネックレス。マルグリットが渡された品は革張りの手帳であった
    「これって……」
    「凌我君にしてはいいチョイスじゃない?」
    「にしては、は余計だよ」
    ルーナは十字架を撫でたり色んな角度から眺めたりしている
    そしてマルグリットはと言うと
    「これ、カバーだけ着け外し出来るんだ……」
    「ああ。お前がいつも使ってる奴、表紙が傷んでただろ?」
    マジマジと手帳を見つめるマルグリットそれを楽しそうに見つめるルーナは視線をツイ、と凌我に向けた。早速その首にプレゼントした十字架のネックレスをかけていた。白磁の顔に、微かに朱が差し込んでいる
    「罪な男」
    「ほっとけ」
    やがて日が傾き、拠点に戻る3人。最後の夜を迎える前に、ちょっとした祝勝会のような雰囲気で気持ち体も心も軽くなったような気がした
    「そうだ、3人であのホテルにでも入りましょ」
    「ふざけないでください!」
    「教義はどうした聖職者」
    「私の教わった教えは「産めよ増やせよ地に満ちよ」だ、か、ら、ね♡」
    「勘弁してくれ」

  • 34二次元好きの匿名さん23/12/15(金) 19:28:49

    夜の保守

  • 35千界樹の記録23/12/15(金) 23:50:50

    拠点に帰った後、日が沈み後は形ばかりの聖杯の授与と願いを叶える儀式を行うだけだが、どうせならば形だけでも格好は整えたいともう一着用意していた黒いレザーコートを羽織り、使うこともないだろうが礼装の剣を帯びる
    ルーナも修道服着替えており、マルグリットもベルトに矢筒を付けてボウガンの入ったアタッシュケースを持っていた
    そして、時刻は21:00。拠点の前で待つ3人の元へ、此度の聖杯戦争の主催者である魔術師ーーーイザークが姿を現す
    「準備は宜しいかな?」
    「いつでもいいぞ」
    彼の問いに凌我は真っ直ぐ答える。イザークも3人の様子を見渡してから頷いた
    「では行こうか」
    イザーク・ゴットハルトを先頭に、少し離れた位置から着いていく凌我達3人。道中、互いに一言も発することはなかった
    聖杯戦争はさの勝者が定まり終幕を迎え、今夜戦争そのものの儀式が完結するのだ
    そして、勝者である凌我もまた、自身が召喚したサーヴァントとの別れが迫っている
    短い間だったが、サーヴァントとマスターとしてはある意味では理想的な関係性を保っていたと言える2人
    マスターはサーヴァントをリスペクトしその力を活かすべく立ち回り、サーヴァントはマスターを信頼しその采配を任せる
    そして互いに必要以上に踏み込まず、戦争間での信頼築いていた2人であったが、やはり別れというのは一抹の寂しさを覚える
    まだ人通りのある夜道を歩く。側から見れば明らかに武装集団と言う通報待ったなしの外見をしている3人だが、そこは認識阻害の魔術により衆人環境でも怪しまれることはない。そんなくだらないことで脱落とか勘弁だ
    そして、一行がたどり着いたのは屍神討伐の指令が降りた時に集まった教会であった
    「到着だ」
    イザークが扉を開ける。厳かな空気のある教会内は以前来た時とはまた違った夜ならではの空気感があった
    「ようこそ。聖杯戦争の勝者よ」
    そして、教会の祭壇の前に佇む神父の声が教会内に反響する。低く厳かな声は夜の教会の雰囲気もあって普段よりも重々しく感じた
    「この教会の地下に安置されている聖杯、この聖杯戦争の勝者たる君と、そのサーヴァントに、その使用権は与えられた。無事に聖杯戦争を終えられたことは、監督役として冥利に尽きると言う物だ。改めて、おめでとう」

  • 36二次元好きの匿名さん23/12/16(土) 09:12:19

    朝保守

  • 37千界樹の記録23/12/16(土) 19:10:02

    表情の崩れない鉄面皮の男。そんな印象を持っていた神父。言峰綺礼は初めて口元を微かに緩ませた
    「ああ。此処まで漸くだ……」
    凌我は感慨深そうに呟く。彼にとってはこの聖杯戦争の勝利こそが目的。本来彼はその聖杯の性能を知っている。故に聖杯そのものにかける願いは持ってはいなかったが、戦いの中で一つだけ彼の中に生じた願い。この程度の願いならば今の聖杯でも十分に叶えられるだろう
    「では、私は此処までだ」
    言峰神父は、ほんの一瞬だけ、あの鉄面皮を脱ぎ捨てたように愉しそうな笑顔を見せてその場を立ち去った
    「では、聖杯の元に案内しよう。着いてきてくれたまえ」
    「私たちも、着いて行っても良いのかしら?」
    「どうせなら、その聖杯。見てみたいんだけれど」
    「と、言っているが、良いのか?」
    凌我は祭壇の向こうへ歩き出したイザークへと声を掛ける。彼は特に気にした様子もなく
    「構わんさ。プロテクトは万全だからね」
    と告げると祭壇の裏、バックボーンである場所の地下室につながると思しき扉を開ける
    石造の古い階段が奥へ続いて行っている様だ。大きさは高さは2m、幅は1.8m程のものだ。人1人入るには丁度よく、古いなりに整備されていた
    「元々は防空壕として建造された物だそうだ」
    「この奥に、聖杯を……?」
    「組み上がった物ならいざ知らず、一度分割してしまえばなんとか運び入れることは可能だな」
    恐らく、この道で運んだ訳ではないだろうが
    「聖杯は此処とは別の出入り口から運んだのさ」
    先頭を蝋燭を持ったイザークが階段を下り、そこから凌我、マルグリット、ルーナの順番で石造の階段を降りて行く。イザークの言う通り此処は使われた形跡はなく、だいぶ埃っぽくて仕方がない
    イザークの持つ蝋燭と後ろから照らされるルーナのライダーの光があるお陰で足元を滑らせることはなさそうだ。勾配は急ではないが、階段そのものが対して深く作っておらず、せいぜいが25cm程度。気を付けて降りなければあっさり踏み外して転げ落ちてしまうだろう
    そうして階段を降りて木製の扉の前に立つ。扉には一際古く大きい錠前が取り付けられており、イザークが指を鳴らす事で解錠される音が聞こえる
    「到着だ。聖杯が君を待っている」
    イザークの言葉と共に扉がゆっくりと開いて行く。その奥から扉が開くに連れて眩しい光が暗い階段を照らして行き、開放されたその向こうにーーー聖杯がある

  • 38二次元好きの匿名さん23/12/16(土) 19:20:07

    ようやく聖杯が出るか

  • 39二次元好きの匿名さん23/12/16(土) 21:19:20

    さてさてどんな事態になるのか…イザークがやらかすのか果たして…

  • 40千界樹の記録23/12/16(土) 22:17:14

    開け放たれた扉ーーーそこには、荘厳、言うには些か不格好な機械仕掛けの聖遺物が在った
    「ーーー凄いな」
    聖杯を見た凌我の第一声はそれだった。彼は既に聖杯がどう言う物なのかは知っている。彼等ユグドミレニアが世界中から分割された聖杯の欠片を掻き集めて組み上げたのだ。知らないはずはない
    だが、なまじ元々の状態を知っているからこそ、此処まで真の大聖杯に迫る神秘を内包させた模造のアーティファクトを目の前にして、驚愕を隠さないでいる
    「驚いたろう?私も此処までの出来になるとは予想だにしていなかったよ」
    後ろの2人もまた、少なからず圧倒されていた様で声を出せないでいた
    資料に載っていた大聖杯。写真で見たことがあるその姿に寄せて造られたこの聖杯は機械仕掛けの見た目では有るが、内に秘められた魔力はこれ迄に感じたことの無い量に息を呑んだ
    「さあ、君には態々説明する必要もないだろう?中央の女神像からアクセスしたまえ」
    「ああ。アンタには世話になったな」
    凄まじい魔力を前にしたせいか、僅かに足が重く感じる
    「お互い様だ。君が聖杯を提供してくれなければ、私も望みを果たす事が出来なかっただろうからね」
    普段より3割り増しに重く感じる足で聖杯に向かう。互いに交わす言葉は不要だろう。互いに魔術師、俺達は互いを利用して目的を果たす。その為の契約だった
    「これが…….聖杯……」
    「実際に見るのが初めてだけれど……凄まじいわね」
    背後の2人の声を背後に聖杯の元に辿り着く。女神像の前に立つ。此処にきたのは聖杯を造り上げてその機能を確認した時以来だ
    こうして目の前について尚落ち着くどころかより強く凄まじい魔力の迸りを感じる。一瞬でも気を抜けば、全身が吹き飛ばされてしまいそうになる程、圧倒される
    そして、此処まで近寄れる事が聖杯戦争が終わり、勝者が決まった事を意味している
    その証拠に、あの2人は恐らくこれ以上は近づけないだろう。聖杯の放つ魔力障壁により行く手を阻まれている筈だ
    深呼吸し、女神像に手を触れる。魔術回路を励起させ聖杯にアクセスを試みる
    「接続、開始ーーー」

  • 41二次元好きの匿名さん23/12/17(日) 09:14:40

  • 42千界樹の記録23/12/17(日) 17:56:24

    聖杯の内部に存在する聖遺物、模造の聖杯を構成させる幾つもの遺物が共鳴し駆動を始める。魔術回路越しに聖杯の脈動を感じ、同時に意識が引っ張られる感覚ーーー
    これは、聖杯を初めて組み上げた時と同じ、意識が聖杯につながる時のものであった
    (いよいよか……)
    小さな願いといえど、今正にそれが実現しようとしている。それはやはり心臓が早鐘を打つ
    引っ張られる意識を流れるままに任せ目を閉じる
    ほんの数瞬の明滅の後に目を開くと、眼前に広がるのは真っ白に染まった広大な空間ーーー聖杯の内側に展開される仮想空間である
    「そしてーーーアレが」
    白い空間の中、凌我の前に現れた女神像。アレに願いを入力する事で、聖杯が接続者の願いを叶える
    その女神像の前に立ち、その額に触れるーーー
    『不正なアクセスを検知』
    「ーーーなに?」
    まだ、聖杯戦争は終わっていなかった

    意識が弾かれるように引き戻される。聖杯に触れていた手も魔力が電流の様に聖杯を伝いその力に弾かれてしまう
    「ーーーッ!」
    『不正なアクセスを検知』
    『不正なアクセスを検知』
    「一体何がーーー」
    凌我は弾かれた勢いにたたらを踏む。聖杯からは女性の声を加工した様な機械的なアナウンスが地下壕に響く
    「これってーーー」
    「何か仕掛けてあったみたいね」
    マルグリットとルーナも異常事態を認識して凌我に駆け寄る聖杯から放たれる魔力の壁は収束し聖杯そのものを覆う壁を構築する
    「長かった……実に長い旅だった……」
    そして、驚愕に狼狽える凌我達3人とは対照的に、聖杯を歓迎するかの様に赤く明滅する聖杯を見上げているイザークが感慨深そうに言葉を漏らす
    「ッーーーセイバー!!」
    イザークの呟きを聞いて、事態の全てを把握した訳ではないが、咄嗟に声を張り上げる
    そして、即座に霊体化を解いたセイバーがイザークへ斬りかかる。例えサーヴァントでも防ぐ事は困難を極めるセイバーの全霊の一撃。それを前にイザークは躱す素振りも見せなかった

  • 43千界樹の記録23/12/17(日) 22:29:30

    「ーーーぬぅッ!?」
    両手で振り下ろされた魔剣は、淡く光る魔力障壁に阻まれた
    魔術による障壁程度ならセイバーにとっては盾にすらならない。薄紙が如く魔術師諸共斬り裂いてしまうだろう
    その一撃を受けて切り裂かれるどころか逆に弾き返す程の強度の障壁ーーー最低でも簡易儀式クラスの魔術が必要になる。それ程の術式、英霊ならばいざ知らず現代魔術師にこれ程の速度で使えるはずは無い
    大英雄の全力の攻撃を防ぐ程の護りを容易く展開するーーー聖杯によるものか
    「その君の判断力。素晴らしい」
    斬撃を弾かれたセイバーがその反動でこちらへ戻る。幾ら聖杯による盾があったとは言え、英霊の殺気をその身に受けたイザーク・ゴットハルトも、冷や汗の一つはかかずにはいられなかった
    「此処を乗り越えられるかどうかが、私にとって1番の難関だったが、ギリギリ間に合った」
    イザークは心底安堵したかの様に息を吐く。俺が聖杯に弾かれた直後から、この僅かの時間で聖杯に接続したというのかーーー
    「そして、感謝しよう。若き魔術師よ」
    「一体、何をした!?」
    「これはこの聖杯の緊急防衛機能だよ。定められた人間以外が聖杯に触れるとこの様になる」
    聖杯が急速に駆動し、変わらず気味の悪いアナウンスが流れている中、イザークは凌我の問いに対してあくまで調子を崩さずに答えていく
    「馬鹿なーーーそんなもの」
    「確かに、君が入手した設計図には書かれていない仕様だったね」
    「どういう事……?」
    マルグリットが疑問を零す。聖杯が凌我が造った物である事は既に聞いた。でも、その為に使用した設計図に書かれていない仕様があった……
    「設計図に書かれてないその仕様を、なぜ貴方が知っているのかしら?」
    ルーナが戦鎚を構えなが、尋ねる
    「その疑問は尤もだ。その問いに対する答えは、言うよりも見てもらった方が早いだろう」
    そう言うと、イザークが懐から取り出した物を見やすい様に掲げる
    それはーーー
    「鉄十字章……!」
    黄金に縁取られた鉄の十字。教会の定める十字架と異なり、中央から先端に行くにつれて鋭角に膨らんだそれは、嘗て千年帝国を謳った愚者達が身につけていた物と同じ物であり、その上には柏葉と杖の様な意匠が施されている
    かつての大戦の爪痕、ナチスドイツに所属していた軍人に、その功績を讃えて授与されたと言う章の中でも、上位に当たる黄金の柏葉と杖が遇らえである勲章だった

  • 44二次元好きの匿名さん23/12/17(日) 22:32:48

    おいおいおいマジか…、ダーニックと同年代…!?

  • 45二次元好きの匿名さん23/12/17(日) 22:51:36

    まさかのナチスの生き残りかよ!いや、生き残りの子孫の可能性もあるか。

  • 46二次元好きの匿名さん23/12/17(日) 23:17:04

    多分、聖杯に弾かれずに接続するには銀十字章が必要なのかな?

  • 47二次元好きの匿名さん23/12/17(日) 23:31:34

    >>46

    …あ、そうか、ダーニックアポアニメの過去回想で軍服着ておったから持ってて当然なんだ

  • 48二次元好きの匿名さん23/12/18(月) 08:20:23

    保守する

  • 49千界樹の記録23/12/18(月) 09:07:51

    「それは……軍属の魔術師に与えられた勲章……そう言う事か!」
    「序でに、組み上げた時にはこの防衛機構は機能していなかったから、弾かれる事は無かっただろうけどね」
    君の悪いアナウンスが絶えず流れる中、聖杯の作り出した壁を隔てて対峙する凌我達とイザーク。イザークの目的は見えてこないが、魔術師の考える事だ。碌でも無いことだけは分かる
    「ーーーハァ!」
    ルーナが障壁に躍り出て戦鎚を叩きつける。魔術を魔力毎破砕する一撃を前にしても、聖杯の力は凄まじく彼女の戦鎚で尚ヒビの一つ入らない、途轍もない力を発揮している
    「当然、代行者である君も警戒しているとも」
    「で、何が目的ーーーなのかしら!?」
    「この聖杯は、模倣の劣化品だろうともーーー大3魔法に通じている」
    イザークは聖杯を見つめながら、遠くを見る様な表情で応える
    「私が彼に出会ったのは、70年も前になるかーーー」
    あの時、私は聖杯戦争に参加していたマスター達を補助する為に日本に訪れていた。要は神秘の隠匿と目撃者の処理が任務だった
    そして、大聖杯を奪取するべく聖杯戦争に参加した魔術師であるダーニックが動き、冬木の御三家の目を掻い潜り、見事大聖杯を奪取した。その後再びダーニックが我々を裏切るとは思わなかったが
    そして、大聖杯が冬木の地から失われた夜が明け、我々ドイツから派遣された魔術師達も帰国の準備を整えていた日の夜ーーー
    「こんばんは。異邦の魔術師殿」
    私と彼は一晩中語り明かした。本来ならば敵対していた陣営の者と語り明かすなどあり得ないことであったが、あの男には無視することのできない雰囲気があった
    そして、私は彼と聖杯や彼の過去、そしてその願いについてを共に語り合った。夜が明けるまで尽きる事なく続いた我々は、友誼を結ぶに至った
    私は、人種がどうのと言う話には興味がない。千年続く帝国もまた、彼が1人積み上げた想いの前には霞んでしまうだろう
    馬鹿な話に聞こえるかもしれないが、人が友誼を結ぶのには、一晩もあれは十分な時間であった
    そして、1人の人間の願いを共有するのにも、十分過ぎる時間であった
    ドイツに戻った後、大聖杯をモデルにした模造の聖杯を組み上げる中でも彼とやり取りを続けていた。軍の監視は厳しい者だったが魔術師である己にとっては難しい者ではなかった。そんな折、ダーニックが再び我々から大聖杯を盗み出した

  • 50二次元好きの匿名さん23/12/18(月) 13:35:10

    あー、天草に脳焼かれちゃったか

  • 51二次元好きの匿名さん23/12/18(月) 22:17:52

    しれっとナチスの魔術師と親交あるのまじで天草

  • 52千界樹の記録23/12/18(月) 22:19:46

    あの男は、恐らく初めからこうするつもりだったのだろう。当時のドイツが模造聖杯の建造に取り掛かり、間も無く完成すると言う段階になっての、絶妙なタイミングでのアクションであり、それを誰も止める事は出来なかったのだから
    再び持ち出される大聖杯。それを遠くで見ていた私は兼ねてより準備を進めていた計画を実行すべく中東に向かった
    大聖杯をまんまと持ち逃げされたドイツに、この大戦を勝ち抜く術は無い
    早々に見切りをつけて偵察だの儀式用の場所の視察だのと銘打って、帝国が予め用意していた身分を利用して中東に潜伏し、その身分を用いて中東での活動を開始する
    そして、来るべき日に備え待ち続けた半世紀。名を変え身分を変え、魔術師しての家系も誇りも失い、待ち続けていた
    そうして待ち疲れた頃、彼がやって来た
    「お待たせしました。ーーー」
    彼は、当時と何一つ変わらない姿で私の前に現れた。捨て去った私の名すらも、往時と変わらぬように投げかけてーーー
    「天草四郎時貞……聖杯大戦の仕掛け人か」
    「流石はユグドミレニアの魔術師。君は全て知っている様だね」
    「ああ。俺はあの大戦で起きた全ての出来事を知っている」
    この聖杯戦争を行うことを決めた時、当主であるカウレス・フォルウェッジ・ユグドミレニアから全てを聞いた
    「ならば分かるだろう。あの大戦の終わり、彼が悲願を果たせずして力尽きた時の私の絶望。そして、君が帝国の遺産を持って私の前に現れた時の私の決意を!」
    この亜種聖杯戦争を仕掛ける為、開催者を探していた。時計塔に属していない、野心ある魔術師を探していた。その折、俺の前に現れたのがイザークだった
    当然身辺調査は血族の情報網を使って行なったが、魔術師相手だそんな物に刺したる意味はない。バックボーンなど探るだけ無意味だと判断したが、それが仇になったか……。
    だが、同時に幾ら調査を重ねた所で帝国が用意した身分を見破ることなど出来はしなかっただろうがーーー
    「つまり、はじめの一歩を俺はしくじったのか」
    「私にとっても僥倖だった。嘗て、我が友の願いは否定された。だがそれは、彼が過去の英霊だったからだーーー」
    そう。幾ら受肉した存在だっとしても、天草四郎は過去に生きた英霊だ。どれだけの業を積み重ね、神算鬼謀を張り巡らせたとて、過去の人間が未来を変える事は許されなかった
    ならばーーー

  • 53二次元好きの匿名さん23/12/19(火) 08:03:00

    現在を生きる自分が達成しようというわけか

  • 54千界樹の記録23/12/19(火) 09:48:38

    「私がやろう。過去を生きた人に世界を変える事が許されないのなら今を生きる私が変えようーーー!」
    「何をーーー」
    「ーーーさせん!」
    セイバーが再びイザークへと斬りかかる。だが、やはり聖杯の壁に阻まれてしまう
    「だが、この模造の聖杯で何処までやれる?」
    「既に世界の裏側に消えた大聖杯との接続は完了している。この模造の聖杯は、最早模造に留まらない」
    故に、その機能性能は大聖杯のそれとほぼ変わらない。それこそ、大聖杯との繋がりがある限り第3魔法の行使すら可能とするだろう
    「そうだ。今一度、人類に天の杯をもたらそう!」
    『不正なアクセスを検知』
    『不正なアクセスを検知』
    『全操作をブロック。管理者権限代行により、機能を限定』
    『全操作をブロック。管理者権限代行により、機能を限定』
    気味の悪いアナウンス、その発せられる言葉が変わる。全操作をブロック……つまり今後いかなる操作も接続も意味をなさなくなると言う事だ
    「これは……不味いな」
    状況を逸早く理解し、その脅威を把握したのはセイバーだ。魔剣を構え即仕掛けられる様に準備している。凌我とセイバーは互いにアイコンタクトを取り互いにすべきことを判断した
    「魔術師、貴様!」
    「どうすんの先輩!?」
    「あの聖杯事叩き壊すしかないだろう!セイバー!令呪を以てーーー」
    セイバー単体の攻撃では弾かれる。ならば令呪で後押しするまでーーーこの時のために残しておいたのだから
    「させないさ!」
    しかし、読まれていた。イザークから飛来する魔術。黒い魔力弾丸は弾丸の様に見える呪い。北欧に伝わる古い呪詛の一つ、ガンドである。諸説あるが、一説によると「人差し指を向けるのは失礼」と言われる所以ともされている
    しかし、所詮はガンド。精々が体調不良を引き起こす程度の弱い呪いでしかないーーーなどと油断する気はない
    「チッーーー」
    剣を鞘から引き抜いてガンドの弾丸を弾く。その時に感じた衝撃は物理的な重みを伴っていた。やはり、聖杯に繋がれている今の奴から放たれるガンドは潤沢な魔力を込められた所謂「フィンの一撃」に匹敵する。拳銃程度の威力を備えた呪いは物理的な破壊力と込められた魔力に準じた呪いを秘めている
    「これ以上妨害されれば何が起きるかわかった物ではない。遺憾だが、君たちには一旦御退場願おう」

  • 55二次元好きの匿名さん23/12/19(火) 17:33:09

    英霊7騎揃ってないのに起動出来るの!?と思ったけど、これ英霊数騎分の魔力があるゴルゴーンの魂も聖杯に貯まっているな。第三魔法の起動は出来るだろうね。

  • 56二次元好きの匿名さん23/12/19(火) 18:01:42

    >>55

    あー成程

    そう言うことか

  • 57二次元好きの匿名さん23/12/19(火) 23:04:34

    保守

  • 58千界樹の記録23/12/19(火) 23:14:30

    イザークの宣言と共に、鳴動する機械仕掛けの聖杯。中央の女神像が光を帯びる
    何をする気かは不明だが、十中八九碌な事ではない。黙って見過ごすわけにはいか無いのは当然だろう。だが、各々がアクションを起こすより先にイザークの策が起動する
    女神像が帯びる光突如強烈な光芒となり皆を飲み込む様に広がって行く
    「ーーーくっ」
    「マスター!」
    光が、地下壕を包み込む
    とても目を開けることの出来ない光の中、凌我は懐かしく、そして悍ましい気配を感じ取っていた
    やがて、光が弱っていき、目が開けられる様になる
    「ーーーここは……」
    光の闇が鎮まり、新たな景色を目の当たりにする
    湖面の様に足元を、水平線の彼方まで延々と水が足元に広がり、同時に雪の様な白い花がそこら中に咲き誇り、まるで雪景色のように淡く、儚い景色を演出している
    暗い岩肌だった地下壕の天井は満点という言葉すら似合わないほどに無数の星が散りばめられた星々の夜が描かれ、その奥ーーー彼方から俺達を静かに照らすのは巨大な氷の月
    青白く、何処までも冷たく世界を睥睨する氷月を望む世界に投げ出されたのだ
    そして、世界を満たす途轍も無い冷気が舞い込んでくる
    反射的に魔術回路を励起させて体温を上げると同時に外気を遮断する。この冷気の中では、備えのない人間などあっという間に凍死してしまうだろう。それ程の冷たい空気と魔力がこの空間を支配していた
    「此処はーーー」
    「一体、何が起こって……」
    後ろを振り返ると、そこにルーナとマルグリットが目の前の状況を飲み込めない様にこの世界を見渡していた
    「すぐに魔術回路を励起して体温を保て、凍死する前にな」
    「なっ……」
    「これは……心象風景?」
    ルーナの質問は的確だ。彼女の疑問の通り、ここはある人物の心象風景である。だが、それだけでは無い
    「……『氷華水月』」
    「?」
    「この心象を具現化した固有結界の名前だ。これは、アイツの固有結界なんだよ」
    俺の言葉に、マルグリットは顔面蒼白となって後退った
    当然だろう。固有結界とは言わば魔術に於ける一つの到達点。魔法には及ばないものの、魔術を扱う物にとっては秘奥の中の秘奥、心象風景を文字通り世界に反映、具現化させる大禁呪
    「固有……結界……っ」
    「で、これは誰の心象風景なのかしら?」
    「心配しなくてもすぐに分かるさ……ほら、来るぞ」

  • 59二次元好きの匿名さん23/12/19(火) 23:30:40

    固有結界の展開だと!?
    いくら魔力を消費しても聖杯からの魔力で魔力が枯渇することは無いだろう。おそらく次で固有結界の本命の能力が来るな。成程、聖杯からの魔力供給による強化と固有結界があれば場合によっては確かにサーヴァントと戦えるだろう。

  • 60二次元好きの匿名さん23/12/20(水) 08:08:47

    保守

  • 61二次元好きの匿名さん23/12/20(水) 08:32:28

    ...これもしかして聖杯の部品に妹さんのナニカ使ってたりする...?

  • 62千界樹の記録23/12/20(水) 08:39:39

    凌我は冷たい月を見据える様にして剣を構える。その表情は硬く、零下何十度と言う獄寒の世界で冷や汗を流していた
    それをみたルーナはこれから現れるだろう敵の力の程を察して、凌我倣う様に戦鎚を構える。マルグリットもやや遅れてボウガンを構えてボルトを発射台に載せた
    凌我が睨みつける頭上の氷の月。その中心からゆっくりと、ここへ降りてくる小さな影。影は降りてくるに従って徐々に大きく、はっきりとした姿となって見えてくる
    その姿は、少女の様であって少女に非ず。その形をしただけの、決して人の手に余る正真の怪物である
    「どうやら、聖杯を使って俺の記憶から「最も忌々しい敵」を抽出して再現したらしいな」
    この固有結界も同じだろう。凌我がそう呟くと同時に、降りてきた影が宙に降り立つ様に静止する。黒いドレスに身を包んだ少女の形をした怪物。それは凌我だけでなく、ルーナもまた一度だけ見たことのある存在であった
    「もう一度、お前とやり合う事になるとはな……凪!」
    神水流凪。嘗て凌我が滅ぼした死徒
    この聖杯を守護せし番人として再び彼の前に立ち塞がると言うのだ
    「妹……?」
    マルグリットも話に聞いたことはあった。確かに、脳面のような無機質な表情をしているけれど、顔立ちは凌我によく似ている
    けれど、目の前の人型から感じられる魔力はもはや人間のそれでは無いーーー
    「一体、何がどうなって……」
    「聖杯が作った幻だ。3人がかりなら何とかなるだろうよ」
    「ーーー来るわよ!」
    凪ーーー聖杯が生み出した防衛装置は瞬く間に自身の頭上に多数の氷槍を展開。その槍の大きさは明らかに自身の背丈を超えた巨大質量の氷塊である
    「ーーー」
    防衛装置がゆらりとした動きで指先を凌我達へ向けた瞬間、3人は回避行動をとった
    撃ち放たれた槍は合計12本。其々4本ずつ個別に射出される
    「フゥーーーッ!」
    ルーナはその悉くを弾き飛ばした。戦鎚は起動している。にもかかわらず氷の槍は破損はすれど砕けはしなかった
    「ッーーーこのォ!」
    マルグリットは全ての槍を何とか躱す。身体強化を限界まで施して何とかギリギリであった追尾して飛んでくるもので無かったのが幸いだったろう
    「ーーーハッーーーシィッ!」
    凌我は剣で初弾を受け流す様に凌ぎ、続く2発3発を初撃の氷槍を盾にして躱す。最後の槍は剣で流す様にして矛先を僅かに逸らすことで防いだ

  • 63二次元好きの匿名さん23/12/20(水) 10:19:33

    あ、理解した
    聖堂教会に繋がりがあるのって天草が関わってたのか
    それにしても凪ちゃん化け物すぎない?

  • 64二次元好きの匿名さん23/12/20(水) 10:24:37

    >>63

    十分天才と言える凌駕君より天才と言われてたレベルだしね…

  • 65二次元好きの匿名さん23/12/20(水) 16:29:26

    夕方保守

  • 66千界樹の記録23/12/20(水) 22:34:11

    「っーーー!」
    だが、防いだのはあくまで初撃。こんなものは挨拶程度でしか無い
    その証拠に、槍の対処に気を取られた本の数瞬の隙に、奴は視界から消えている
    「何処にーーー」
    「後ろだ!」
    マルグリットの背後に立つ防衛装置。その手には、凌我の物に良く似た造形の、氷の剣が握られていた。それを無造作に振り抜こうとする防衛装置に、割って入る凌我
    甲高い金属音と共に剣と剣が激突する。無論、凌我の剣は厚い鉄板すら寸断できる切れ味を誇る礼装だが、防衛装置の握る氷剣はそれをものともせずに対等に切り結んでいる
    その答えは単純、込められた神秘の桁が違うのだ
    凌我と凪。その関係は兄妹であるが、魔術師として、その才能は歴然の差が存在する
    その才能は礼装の性能差程度は容易く塗り替えてしまうのだ
    「ぜぇい!」
    剣を弾く。そしてそのまま踏み込んで防衛装置に斬りかかるが、防衛装置はあらゆる斬撃を悉く受け止め、弾き、捌いてゆく
    何度目かの斬り合いの後、再び鍔迫り合いの形になる。両手で押し切ろうとする凌我に対して、防衛装置は依然片手のまま、自然体で互角の押し合いを演じていた
    「ーーー」
    「ーーーハッ」
    防衛装置の眼は何処までも無機質でその視線は凌我へ向けられていても、彼のことを見ていない
    記憶の中、あの雪の中の戦いとまるで違うソレは、最早姿形が同じなだけの異物でしか無い。余りの違和感に吐き気すら覚えてしまう
    「フゥゥゥッ!」
    鍔迫り合いの最中、横からルーナが戦鎚を振り下ろす。しかし、その直前に防衛装置は凌我の剣を容易く弾いて蹴り飛ばしてしまう
    「ぐぉあ!?」
    軽く5mは吹き飛ばされ、そして同時に後ろへ跳躍してルーナの戦鎚を避ける防衛装置。空振りに終わった戦鎚は雪の様な花を散らし、水面に叩きつけられて飛沫を撒く
    「このーーー『bounds=bolt』!」
    マルグリットも猟犬を宿らせたボルトを放ち防衛装置に攻撃を仕掛けるがーーー一瞬にしてボルトは凍りつき、粉々に砕かれてしまった
    「怪物……!」
    先輩も先輩だけど、コイツもとんだ化け物じゃん。と、思わず毒付くマルグリット。すぐ様次のボルトを仕掛ける為に矢筒から次のボルトを抜くが、それと同時に反射的に顔を逸らす

  • 67二次元好きの匿名さん23/12/20(水) 22:40:20

    そういえばセイバーはどうした? 
    妹さんの固有結界から弾かれた?
    セイバーは今どうしているんだ?

  • 68二次元好きの匿名さん23/12/20(水) 23:02:42

    >>67

    出てきてないね

    分断されたかな?

  • 69二次元好きの匿名さん23/12/20(水) 23:04:09

    固有結界の便利設定、中に入れる人物を選べるがここで猛威を奮っておる...

  • 70二次元好きの匿名さん23/12/21(木) 08:07:50

    このレスは削除されています

  • 71千界樹の記録23/12/21(木) 08:46:36

    「ーーーッッ!」
    一瞬でも反応が遅れていれば、砕けたボルトの影から撃たれた氷の矢に顔を貫かれていただろう。あんな正気のない操り人形みたいな動きをしている癖して、狙いは精密機械の様に鋭く、隙さえあれば最小の動きで此方に死を捩じ込もうとしてきている
    「マルグリット!まだだ!」
    「マリィちゃん!すぐに離れて!!」
    2人の声が聞こえるのと同時、足元に急な冷気を感じて即跳び退いた。そして自分のいた場所から、氷の花が咲き誇り自身の背丈と同じくらいの花束のタワーが出来上がるのを見て寒気がする。あのまま2人の声がなければ、自分はあの氷の花束の中心で、生きたまま氷漬けにされていた
    「なんて術式…」
    「驚いてる暇はないぞ!」
    凌我の声に前を向く。まさに今凌我とルーナが防衛装置と切り結んていた
    凌我の切り上げを防衛装置が上体を逸らして躱し、続く戦鎚の攻撃を氷の剣で弾いていく。氷の剣は戦鎚と激突する度に砕けた破片が飛び散るが、おそらく一瞬で再生させているのだろう。量的には粉々に試算している筈の量の氷片が散らばっているのに剣そのものの欠けるどころか何も変わっている様子はない
    「チッ、相変わらずの化け物が!」
    「凌我君!セイバーは何処に行ったの!?」
    「さあな!分断されたんだろうよ!」
    この固有結界、『氷華水月』が展開されてから、セイバーの姿は凌我たちの前から消えていた。あの場に取り残されたのか、はたまた別のシミュレート空間に隔離されたか。どちらにせよーーー
    「俺達で、この怪物を何とかしなけりゃなやらんって事だ!」
    「それはいい提案ね!」
    凌我は懐から霊筒を2本取り出し防衛装置へと投げる。霊筒はすぐに割れて霊薬が溢れ出、そのまま膨大な水の塊を形成した
    「『氷雨/海洋』『穿貫け/呑み荒れろ』!」
    二重詠唱で行使される二つの術。一つは氷の矢を雨の様に撃ち放つもの。そしてもう一つは、ごく小規模の津波を引き起こし、巻き込んだ対象を水流と水圧で物理的に潰す魔術
    当然呑み込まれれば魔術師は愚か、死徒でさえ身体の圧壊は防げない。再生能力を持つ死徒を斃す事はできないが再生までの時間稼ぎにはなる
    ただし、これ程の津波を引き起こす為には必要な水の量も相応に多く、霊筒2本を消費するある程度補充が利く礼装とはいえ、聖杯戦争で消耗した分、残り数も少ない。使う配分には細心を払わなければならなかった

  • 72二次元好きの匿名さん23/12/21(木) 19:16:11

    すげぇ

  • 73千界樹の記録23/12/21(木) 22:12:44

    だがーーー
    「ーーー」
    そこまでして使った術式も、防衛装置には届かない。荒れ狂う渦のような津波は対象を飲み込む直前で凍結し、雨の様に撃ち出された氷の矢は全て展開された氷の盾ーーー氷面鏡によって弾かれてしまった
    「ハァアアア!」
    しかし、足が止まった瞬間を狙ったルーナの側面からの攻撃。これを躱す事は出来ないだろう。氷の矢を防いだ時と同様に手を翳して盾を展開するが、ルーナの紅く鳴動する戦鎚は防ぎきれずに粉々に砕け散る。そして、その戦鎚は伸ばされた手と打つかる
    「ーーー」
    戦鎚の一撃は矢張り相当なもの。どれだけ怪物であろうと少女の形をしている以上、それなり以上の威力をぶつければ吹き飛ぶことに相違ない。しかしーーー
    「クゥ……」
    吹き飛ばした筈のルーナが左腕を抑える様に右腕で庇う。凌我とマルグリットが駆けつけると、ルーナの左腕が僅かに凍りついている。これは凍傷に近い。しかも徐々に広がり出していた
    「呪術か」
    「吹っ飛ばした時に手が触れたのよ。放っておいたら全身凍りつくでしょうね」
    本来ならばこの手の術式を解くのは凌我にとっては容易ではあるが、それでも込められた神秘の桁が違いすぎる。凍傷を完全に癒す事は、あの防衛装置を気にしながらでは難しい
    応急処置として痛みの鈍麻と凍傷の侵蝕を防ぐ様にだけして後はルーナの持つ治癒の秘蹟に任せる
    「ーーー」
    防衛装置は手にした剣の鋒を此方に向けると、その周囲に多数の氷槍が展開してゆく。その全てに驚くべき神秘が宿っており、一本一本が、凌我が同じ術式を使うその数倍の魔力を感じることができた
    「ーーーまだまだここからね」
    「本当に兄妹なの?アレ」
    「死徒になるまではな」
    3人はそれぞれ構えて攻撃に備える
    神水流凪ーーーその姿を取った聖杯の防衛装置による再現度がどれほどかは知らない
    だが、アレがもし本物と遜色無い力を持つのなら、こんなものはまだまだ序の口に過ぎない
    勝負はここからが本番となるーーー

    シグルドは1人、嘗ての北欧を想起させる雪原に1人佇んでいた
    「ーーーふむ。マスター達とは分断されたか」
    周囲にマスター達の気配はなく、聖杯によって仮想シミュレートされたこの空間に1人閉じ込められたらしい
    実に念の入った事だ。一網打尽にするよりも、マスターとは切り離してして各個撃破しようと言う魂胆だろう

  • 74二次元好きの匿名さん23/12/21(木) 23:03:35

    シグルドはファヴニールとかか?

  • 75二次元好きの匿名さん23/12/21(木) 23:04:36

    >>74

    座から記憶持ってきて疑似的サーヴァントブリュンヒルデとかもありそうじゃない?

  • 76二次元好きの匿名さん23/12/21(木) 23:43:06

    何気にルーナちゃんダメージ受けたの初めて?

  • 77二次元好きの匿名さん23/12/22(金) 09:09:35

    朝保守

  • 78千界樹の記録23/12/22(金) 09:44:41

    しかし、幾ら霊基霊核が軋んだ瀕死の身とは言え、サーヴァントの力は非常に高い。マスター達、魔術師とは文字通り天と地ほどの差が存在している
    彼等は兎も角、自身を排除できる程の戦力を一体如何にして整えるのだろうか
    「フーーー考える暇もない、か……」
    感じた気配に振り返る。そして、サーヴァントたる自分自身に抗するのは、矢張りサーヴァントーーー
    「当方を討つならば、相手は当然ーーー」
    白い雪の絨毯に沈む靴音。シグルドの前に現れたのは1人のサーヴァント
    「我が愛以外には居るまい」
    戦乙女。かつて大神が白い欠片より産んだ英雄の魂をヴァルハラへ導く灯。その中において最も最初に創られ、一度は炎の館に封じられた最強のワルキューレ
    大英雄シグルドが解き放ち、時には師として、時には愛する者として共に過ごした相手
    「ブリュンヒルデ……」
    生前において、一説には英雄シグルドを殺した相手。英霊にとって、生前の逸話程重要なファクターはない。成した逸話が昇華され宝具やスキルとして反映される事も多く、特にシグルドは竜種に対して絶大な特攻性能を発揮し、形成された魔力炉心に支えられる事で、本来ならば単純戦闘においても相当な魔力消費を伴う程の霊基。一流の魔術師がマスターであっても瞬く間に魔力供給が枯渇する程の力を行使しても、自身のマスターたる凌我に大した負担を掛けずに遺憾なく発揮したのだ
    逆に、逸話がそのままその英霊にとっての若年になる例も多数存在する
    例えば、シグルドと同一にして異なる竜殺し、先の聖杯大戦においても召喚された大英雄ジークフリートは、かつて成し遂げた逸話によって無敵とも言える防御力の肉体を獲得した
    凡ゆる攻撃を弾く強度の竜血の鎧はまさに不死身と言っても差し支えない性能を誇ったが、その逸話の通り菩提樹の葉が張り付いていた背中の一点のみ、その防御力は発揮されず、それどころか最期の逸話が示す通りにその箇所を攻撃されれば、例え小さなナイフによる刺し傷であっても致命的なダメージを被るだろう
    英霊にとって生前の功績や逸話は大きな力であると同時に致命的な弱点を創出するものなのだ
    ならばこそ、サーヴァント・シグルドにとって、最愛の戦乙女であるブリュンヒルデの一挙手一投足が致命打になる可能性があるのは言うまでもない
    性能面だけを見れば、セイバーを屠るには正にうってつけの人選である言えた

  • 79二次元好きの匿名さん23/12/22(金) 09:58:16

    シグルドは割り切って戦える側だと思うけどこれがすまないさんでクリームヒルト相手とか考えたらやってることは無法なのよね、相手の死因あるいは苦手な英霊の写し身をぶつけるって

  • 80二次元好きの匿名さん23/12/22(金) 15:24:16

    >>79

    古今東西こう言う戦いは苦悩やら葛藤やらで絵になるからね

    シグルドには通用しなさそうだけど…

  • 81二次元好きの匿名さん23/12/22(金) 17:11:35

    そういえば凌我は令呪でシグルドを呼べば良いじゃんと思った。
    理由付けするなら凪相手にそれをする隙が無いか、防衛機能が発動した聖杯をシグルドの宝具を持ってしても令呪一画分のブーストだけじゃ完全に破壊出来るか不安だから確実に破壊する為に令呪二画分のブーストを付けたいから温存しているとかかね?

  • 82千界樹の記録23/12/22(金) 22:22:00

    右手に持った槍を回転させる戦乙女。槍が回転する度に大気を引き裂くような重い音が雪原に響き、回転の風圧で足元の雪が散る
    その光景は、明らかに槍の大きさと回転の速度ではなし得ない風圧を伴っている
    だが、その答えはすぐに出た
    戦乙女が槍を構えると同時にシグルドへと突撃する。戦乙女が繰り出す槍の一突きを魔剣で受け流すシグルド。戦乙女の槍を剣を盾に躱す形となったが、受け止めなかったのは正しい判断だ
    その証拠に、戦乙女の槍はシグルドの背後、延々と広がる雪原が大きく抉られる様に吹き飛ばされる
    数10mに渡って雪原が消滅するほどの威力。もし、まともに受けると言う選択を取っていたら、如何にシグルドだろうと無事では済まなかっただろう。まして、霊核にダメージが残っている今のシグルドならば尚更
    「ーーー」
    「ーーーヌウ!?」
    突きを躱された戦乙女はシグルドを槍に交差する魔剣諸共薙ぎ払うように振り抜く。生前のブリュンヒルデとシグルドの力関係はシグルドが優っている。例え同じ状況だったとしてもシグルドはブリュンヒルデの槍を容易く押し留め、逆に押し返しただろう。だが結果はシグルドの筋力を上回る威力で振り回された槍はシグルドを吹き飛ばす。そればかりが先の突きと同じように薙ぎ払われた槍の軌道を中心に放射状に雪原の雪が吹き飛ばされる。矢張り、尋常の威力ではない途方もない重さの一閃だが、そのカラクリを二度の攻防を経たことで、叡智の結晶を持つシグルドは解き明かした
    「その槍……成程」
    シグルドは生前のブリュンヒルデの事と違って、サーヴァントとしてのブリュンヒルデについて全てを知っている訳ではない
    サーヴァントは生前とは異なる力を持つ場合がある。シグルドの持つ竜殺しの力もそれに該当する様に、サーヴァントとしての戦乙女達もまた生前とはまた異なる力を有するのだ
    その一つが、ブリュンヒルデの宝具でもある槍
    その手にした槍は、彼女の持つ愛情の大きさ、重さによってその威力、重さ、大きさが文字通り変化する。その変化は彼女自身の感情に大きく左右されるものの、最大限にまで肥大化すればこんな物ではすまないだろうーーー

  • 83二次元好きの匿名さん23/12/23(土) 09:21:52

    朝保守

  • 84千界樹の記録23/12/23(土) 20:11:18

    戦乙女はその超質量の槍を軽々と降り回すと、猛然と攻撃を開始した
    「ーーー」
    槍は突き出される度、振り回される度に空気を引き裂かれ、悲鳴を上げる
    そして、対峙するシグルドの魔剣と激突する度に引き裂かれた空気が弾け飛び、一瞬真空に近い空間が作られ、弾け飛んだ大気が元に戻ろうとし結果、剣戟が重なる程に大気が嵐の様に吹き荒れる。彼等の足元の雪は皆吹き飛ばされ肌地が露出している
    「ぬぅんっ!!」
    「ーーー」
    剣と槍がぶつかり、火花が散り嵐が巻き起こる。シグルドは、今自身が単騎でいるこ事に感謝した。マスター達がたらこの剣戟に巻き込まれてしまっていたかもしれない
    超重の槍から繰り出される破壊の連撃を真っ向から打ち返す
    しかし、それでも戦乙女の攻撃は極めて脅威である事に変わりはない。一撃でもまともに貰えばシグルドの霊基は砕け散るだろう。ただでさえ瀕死の重傷を負った身、更に目の前の戦乙女はシグルドの最愛の女性、ブリュンヒルデの霊基情報を保有している筈なのだ。シグルドにとってその攻撃は特攻になり得る
    だがーーー
    「当方、例え我が愛が相手であろうとも、この剣が鈍る事はない」
    だが、ブリュンヒルデではシグルドを打倒するのは困難を極める
    智慧の大神オーディンが、古において世界を滅ぼしたと言う巨人の欠片から生み出した戦乙女。その中でも最初に創られ、最強の力を有するブリュンヒルデの力は、シグルドには及ばない。その身にルーンを授け、共に狩りをし夜を共にした2人だからこそ、生前においてはお互いの力を知っいる
    万全のシグルドにとっては、例え特攻であったとしても、シグルドの霊基を砕くには戦士としての力の差が存在していた
    「しかし……良くもないか」
    だが、霊基が軋む今のシグルドにとっては、些かばかり苦しい相手であることも事実。更にもう一つシグルドにとって不利な条件があった
    (ーーー魔力供給のラインが途絶えている)

  • 85二次元好きの匿名さん23/12/23(土) 20:17:52

    お互いに魔力供給が断絶するほど隔絶した空間にいるから、凌我は令呪でセイバーを呼び出せないということかな?

  • 86二次元好きの匿名さん23/12/23(土) 22:49:55

    マスター無しと同じ状態なのにブリュンヒルデと戦えているのはひとえにシグルドの能力が高いのと竜の炉心があるからだろうな。

  • 87二次元好きの匿名さん23/12/23(土) 23:13:08

    >>86

    普通なら供給が途絶えたら戦うことすら怪しいからな

  • 88二次元好きの匿名さん23/12/24(日) 09:19:20

  • 89二次元好きの匿名さん23/12/24(日) 17:25:55

    夕方保守

  • 90千界樹の記録23/12/24(日) 21:55:14

    マスターとの魔力供給の経路、並びに念話のパスが途絶えていた。それによって完全にマスターからの魔力供給が途切れてしまっている
    幸い、マスターとの契約自体は切られていない。契約という楔によって現界そのものは維持できている
    魔力そのものは、竜の炉心がある以上供給パスが途切れたとしてもそう簡単にはこのシグルドは斃れる事はないが、現世に留まる為には楔であるマスターが居なければ流石に現界は出来ないだろう
    しかし、マスター契約が残っているならば問題はない。霊基そのものが崩れ掛かっているとしても、シグルドにとっては身体が動くならば戦闘は可能だ
    しかし、マスターとの念話が繋がらないのは不味い。マスター達も恐らく自身と同じように脅威と対峙している筈なのだ。北欧において最大最強の英雄と謂れたシグルドと違い、マスター達は現代に生きる人間だ。魔術師と言う特殊な人種ではあるが、それでも神代の英雄である自身とはその力も生命力も何もかもが異なる
    彼の記憶を見る機会があった上で、自身と同じ様な事態に見舞われている場合、窮地なのは霊基が損耗し瀕死状態の己よりもむしろマスター達だろう
    あの代行者や女魔術師も一緒に居るならまだなんとかなるかもしれないが、自身のマスターは中々波瀾万丈な人生を送っている。もしかしたらあの3人でも対応しきれないかもしれないが、連絡が途絶えている以上は信じるしかない
    恐らく、念話や魔力供給パスまで途絶えている以上は恐らく令呪によるサポートも届かないかもしれない
    (さて……ここからはどうすべき、か)
    戦乙女の猛攻を凌ぎながら思考を続けるシグルド
    彼は無意識下でも身体が半ば自動的に防御、迎撃を行える程の戦闘技巧を手に入れている。更に顔に掛けている叡智の結晶は、眼鏡に見えるがその実唯の眼鏡ではない。結晶のレンズを通して入る情報量は凄まじくシグルドやソレに相応する頭脳でなければ処理しきれないだろう
    しかし、シグルドは手にした情報を悉く処理し、目の前の戦乙女に対しても大体の正体を掴んでいた
    「ーーー」
    「ーーー甘い!」
    繰り出される突きを短剣で流しながら魔剣を返す。だが、魔剣は上体を逸らしたことで躱され、同時に跳ね上がる槍の軌跡が短剣を弾き飛ばされた
    後ろに下がりながら短剣を撃ち込む。放たれた2本の短剣はスピンさせた槍が弾き返す

  • 91二次元好きの匿名さん23/12/24(日) 23:04:19

    本来供給が途絶えたら高位のサーヴァントは戦闘しようとしたらあっという間に消滅するんだよね…

  • 92二次元好きの匿名さん23/12/25(月) 08:03:31

    朝保守

  • 93千界樹の記録23/12/25(月) 09:08:53

    その短剣は跳躍して回収し同時に魔剣上から切り込むが槍の威力は凄まじく体重、筋力で上回る筈のセイバーの攻撃を逆に吹き飛ばしてしまった
    (ーーーやはりな)
    セイバーは今の反応と攻撃で確信した
    目の前の敵はサーヴァントに近いが、厳密なサーヴァントでは無い。恐らく、聖杯の力で座に登録それた英霊ブリュンヒルデの情報を読み取って、聖杯の演算性能と魔力によって肉付けされた、所謂シャドウサーヴァントとして創り上げたのだろう
    姿形はブリュンヒルデのそれ、その性能も恐らくはサーヴァントとして召喚されるブリュンヒルデとそう変わる事はないだろう
    北欧最大の英雄シグルドには及ばずとも、その能力は極めて高レベル。更にシグルドである自分にとっては特攻とも言える攻撃能力を誇る
    「ーーー」
    「むぅっ!」
    槍の攻撃は何処までも鋭く、重い。シャドウサーヴァントであるが為、その魂は亡く本来の思考も当然喪失しただ目の前の敵を抹殺する為の殺戮マシーンと化している
    「ーーー」
    もはや幾度目かになる槍と剣の応酬を交えた後、戦乙女の槍を渾身の膂力で上に弾き上げると同時に突如戦乙女の人形は距離を取り出した
    「……ふぅぅ」
    仕切り直し、と言う事だろうか。瀕死の肉体では恐らく何処までも決着には至らず、逆に瀕死の霊基が保たずに崩壊していただろう。その点については仕切り直しによって多少なりとも余裕が生まれた
    (しかし……)
    幾ら原初のルーンを持ち、キャスターとしても現界出来うる実力を持つシグルドといえども、エーデルの肉体を修復出来たとしても、それを支える霊基そのものの修復は難しい。聖杯戦争終結後、霊体化して消耗を極力抑えた理由の一つがこれだ
    加えて、本来ならば幾ら特攻があるとは言え、ブリュンヒルデではシグルドには及ばない。英霊召喚において、その座から呼び出すのはその英霊の全てでは無い。その情報量は余りにも膨大であるが故、サーヴァントとして召喚される際は相応にスケールダウンされる事が多いのだ

  • 94二次元好きの匿名さん23/12/25(月) 19:13:14

    ほっしゅ

  • 95千界樹の記録23/12/25(月) 22:22:43

    本来拮抗し得ない者達が、多少なりともその差が埋まる。実力者であればある程、その僅かな差が勝敗を反転させる要因となり得る
    シグルドとブリュンヒルデの姿と力を持った戦乙女の影も、同じような状況へと移行している
    そして、剣と槍。互いの武器を重ね合わせるだけの戯れ合はこれにて終い。ここからが、戦いとなる
    「ーーー」
    槍を構えていた戦乙女はその構えを解く。離された距離はおよそ20m
    サーヴァントにとっては一歩で踏み込める間隔ではあるものの、相手にとっても余裕を持って迎撃が可能な距離でもある。下手な動きは例えよく知る相手でも禁物である
    しかし、ここに来て態々構えを解く理由は一つしかない。戦闘の停止?いいや否ーーー
    「ーーー」
    つい、と左手が持ち上がりその黒い影を纏う白い指先が虚空をなぞる。その動作を見た瞬間、やその動きを予測していたシグルドが短剣を宙へ放った
    「ーーーフンッ!」
    放たれた短剣はアーチャーの矢もかくやという速度と威力で戦乙女に迫る。だが、その短剣はアッサリと、戦乙女に届く直前で、光の壁に弾かれてしまった
    「ーーーチッ」
    四面四角の英雄たるシグルドも思わず舌打ちする。戦乙女の前に展開されたのは原初のルーンによる防壁。この聖杯戦争においてシグルドも使った事のある勝利のルーンの主軸とした鉄壁の盾だ
    「ーーー」
    「ーーー来るか」
    指先が空をなぞり、浮かび上がる文字はアンサズ、ウルズ、ハガル。この組み合わせで起動する魔術は極大の焔
    重なり合うルーンから生じた極小さな火種は、瞬く間にこの景色を飲み込もうとする程の大火へと成長する
    炎は巨大な火球となって集約され、シグルドを焼き尽くそうと放たれた
    この炎は唯の炎では無い。かくて、智慧の大神がその手ずから刻み込んだ原初のルーン。それを受け継いだ最強の戦乙女。ブリュンヒルデの操るルーン魔術であればもはや神域の魔術行使と言っても過言では無い
    その赫き炎は生前において、ブリュンヒルデを封じた館を覆うローゲを想起させた。並大抵のサーヴァントならば一瞬で消し炭。1流のサーヴァントですら霊基が焼き尽くされるだろう
    直撃を受けて仕舞えば、当然シグルドも唯では済まない。霊基其の物に深い損傷を負った今の彼ではあっという間に蒸発するだろう
    最早炎は躱せ無い距離にまで迫っている
    数瞬後、そこには積もった雪の名残り、焼け焦げた大地しか残るまいーーー

  • 96二次元好きの匿名さん23/12/25(月) 22:25:28

    原初のルーンで防御するしかない

  • 97二次元好きの匿名さん23/12/25(月) 23:16:45

    原初のルーンでとっさに防壁を張るしかない

  • 98千界樹の記録23/12/26(火) 09:38:37

    「ハァアアアッ!」
    振り下ろされる戦鎚を紙一重で躱し、お返しとばかりに無数の氷の矢が放たれる
    矢はルーナの前に展開された水流の盾が防ぐ。高圧に渦巻く水の壁が氷の矢を破砕していくが、それにも限界がある。数にして100を優に超える矢を前にしては許容量の問題があった
    やがて飽和し綻びが生まれ、次々と撃ち込まれる氷の矢が遂に壁を貫く。しかし、その頃にはルーナは既にそこにはおらず、凌我と共に防衛装置を挟むように距離を詰めていた
    「貰った!」
    「そこ!」
    振り下ろされる戦鎚と振り上げられる剣。其々の立ち位置は防衛装置の死角になり、どちらかに対処しようとすればどちらかが届く。更に、遠方からはマルグリットがボウガンで狙いを定める。三方向からの同時攻撃による必殺の殺戮領域が完成する。戦鎚と剣は防げても続く霊の宿したボウガンの矢は止められないだろう
    だが、凌我のいもうと、神水流凪が変貌した死徒は、この程度では小揺るぎもしないのだ
    「ーーー」
    防衛装置を覆う様に氷の棺が現れる。本来は
    敵を封じ込める為の術式であるが、故にその強度は高い。真っ当な人間ならば不可能な自殺行為に等しい行いだが、死徒である彼女に取っては何ら問題になることでは無いのだ
    一瞬にして構築される全方位防御。しかし、それだけならば、ルーナの戦鎚の破壊力の前には意味を持たない
    振り落とされる戦鎚が氷棺とぶつかり、あっさりと砕け散るーーー
    「ーーーっ避けろ!」
    「ッッ!?」
    気が付いたのは凌我。彼はこの死徒と一度は決着を付けた。更に防衛装置の扱う攻撃の多くは彼ら神水流、凌我の用いる魔術が元になったものが大部分を占める。その特性も彼は熟知していたからこそ、誰よりも速く反応できた
    人戦鎚の打撃でひび割れ、砕け散る氷棺。砕けた破片は其々が弾丸の様な勢いで周囲に四散する
    氷の破片は、どれも1kgは下らない。弾丸の重さは訳8gとされている。つまり単純に考えて拳銃弾の100倍に相当する威力の氷片が接触する程の至近距離で撃ち出された事になるのだ幾ら魔術師でも、代行者でも、食らえば大怪我どころの話では無いだろう
    しかし、凌我の声が幸いし、辛うじて直撃を免れたルーナと凌我の2人。しかし、直撃こそ無かったものの無傷とはいかず、掠めた破片が切り傷や痣を産み、特にルーナよりも身体的には弱い凌我は多くの傷を残す

  • 99二次元好きの匿名さん23/12/26(火) 17:35:36

    夕方保守

  • 100千界樹の記録23/12/26(火) 22:31:30

    「ところで凌我君。セイバーは何処にいるのかしら?」
    「さあな。さっきから念話も繋がらないし、何より魔力供給のラインが途絶えている」
    恐らく何かしら細工でもされたのだろうと、忌々しそうに吐き捨てる凌我
    「令呪でも使ってみるか?」
    と右手の甲をルーナへと見せる。しかし、ルーナは即座に首を振った
    「此処まで周到に私たちを隔離したんだから、恐らく対策されてるでしょう」
    「どうせ切っても意味ないなら、どうすんの?」
    マルグリットの言葉にさて、どうするかとーーー考える暇もない。防衛装置からの攻撃が止む事なく繰り出されていく
    「ーーーチッ、『氷面鏡 我を写せ』!」
    足下の湖面と雪の花から氷の壁が作り上げられていく。厚い氷壁が防衛装置から撃ち放たれる氷槍が突き刺さるモノの、貫徹はせず同じ氷と言う属性が重なり結合し、防御に成功する
    「流石!」
    凌我の行使した術式が防衛装置の攻撃を防ぎ、氷壁の影からルーナが躍り出る。そして、マルグリットもボウガンへと上へ向けて引き金を引く
    「『hawk's=bolt』‼︎」
    放たれるボルトは鷹の霊を宿したもの。ボルトは上に昇り、敵の頭上から襲い掛かる
    「『 激流 槍となれ』!」
    凌我もまた、術式を起動し氷の壁を内側から砕き、荒れる激流の槍を撃ち放つ
    「ーーー」
    防衛装置へ向かう三種の攻撃。真っ先に到達したのはルーナの戦鎚。カチ上げる一撃を正面から手を翳して受け止める防衛装置
    戦鎚を止めた腕は戦鎚の破壊力によって粉々に砕かれる。そして、砕かれるまま弾ける様に後ろに下がり、続いて襲い掛かる激流の槍を瞬間的に展開された5枚の氷の壁を砕いて尚防衛装置に牙を剥く
    だが、氷壁を砕いた事で勢いが落ちた槍は残った手に、新たに形成された氷剣が切り裂く
    そしてそのまま剣を振り上げて鷹の霊を宿したボルトを切り落とす
    「ーーー」
    そして、ルーナに砕かれた腕があっという間に再生し、更に防衛装置の背中から出現したのは、透き通るステンドグラスの様な氷の翼
    「!まずーーー」
    翼が羽ばたくと同時に一瞬にしてルーナと距離を詰める防衛装置。その速度はルーナの反応を上回るものだった
    「ーーーっアア!」
    戦鎚を咄嗟に振り上げて、振り抜かれる氷剣を防御しようとする。戦鎚に接触した剣は当然破砕されるが、それによって短くなった刀身はルーナの脇腹を切り裂いた

  • 101二次元好きの匿名さん23/12/26(火) 23:16:48

    ルーナちゃんがあっさりと…マジかよ

  • 102二次元好きの匿名さん23/12/27(水) 09:57:14

    保守

  • 103千界樹の記録23/12/27(水) 11:07:04

    「ーーー避けろ!」
    ドン、と背中に衝撃が走り突き飛ばされるマルグリットは辛うじて振り下ろされた剣を避ける事ができた
    マルグリット、ルーナの両名が反応し切れない疾さ。凌我だけはこの防衛装置ーーー死徒を曲がりなりにも斃したが故、反応が追いつかずとも予測さえ立てられれば対応が可能だった
    しかし、それにも限界がある。マルグリットを守る為に突き飛ばしたまでは良いものの、反応速度そのものは防衛装置の動きを捉えられる程のものでは無い
    結果ーーー
    「ぐぅぅ!」
    当然の如く、伸ばした左腕は氷剣に斬り飛ばされる
    「っーーー先輩!」
    「凌我君……!」
    悲痛な叫びを上げるマルグリットに脇腹を抑えながらその一部始終を見ていたルーナ
    如何に利き腕ではなくとも、片腕を喪うのは余りにも痛すぎるダメージだろうが、凌我の表情は痛みから来る苦悶の色は浮かべていても、悔恨の色は微塵も感じられなかった
    ーーー心配しなくとも、これくらいは想定内なんだよ
    腕を切り飛ばされた瞬間、防衛装置はこちらの至近距離、斬られた腕はその直上を舞う
    凌我は魔術師だ。この時点で何が有効打になり得るか、何をするべきかは考えるまでもなくーーー口角が吊り上がる
    「ーーー爆ぜろ!」
    切られた腕など、最早腕にあらず、ただの肉袋である。ならば使える時に有効活用させてもらうと、ほんの一瞬前までは確実に自分の一部であったものを即席の爆弾として使ったのだ
    内側から水風船の様に弾ける左腕。当然の様にバラバラになった皮膚片や肉片、腕に残った血が飛び散り、雨の様に防衛装置に降りかかるが、それだけでは無い。弾け飛んだ腕の中には、当然のながら骨格も含まれている
    細かく破砕された骨片が手榴弾で言うところの弾片の様に飛ぶ。至近距離で飛び散る骨片を躱す事は不可能だ。防衛装置はその全身で受ける事になる
    「ーーー」
    腕爆弾の破壊力そのものは大きくは無いが、骨片はちょっとした散弾銃並みの威力はある
    それを直上、至近距離で浴びれば顔の半分が醜く吹き飛ぶ事は必定。視界の半分が潰れた防衛装置は一瞬、動きを停止させた
    「貰ったぁ!」
    その好機を見逃す事はない。凌我の剣線は防衛装置をしっかりと捉えていた
    袈裟懸けに斬り込んだ斬撃は防衛装置の身体を深く斬り裂く。手応えはあったーーーだが、防衛装置を破壊するにはまだ足りない。完全に仕留めるには文字通り、片手落ちであったのだ

  • 104二次元好きの匿名さん23/12/27(水) 18:27:40

    保守

  • 105二次元好きの匿名さん23/12/27(水) 23:08:59

    さらっと片腕欠損してるぅ〜!
    生き残れ凌我!橙子さんの人形で片腕欠損はなんとかするのかね?

  • 106二次元好きの匿名さん23/12/27(水) 23:12:54

    >>105

    橙子さんの義手なら高性能だしね、ロードも使ってたお墨付きよ。問題があるとすれば橙子さんの居場所を見つける必要があるということで…

  • 107二次元好きの匿名さん23/12/27(水) 23:23:53

    >>106

    初代スレで等身大の義体を手に入れてるし、大丈夫でしょ。

  • 108千界樹の記録23/12/28(木) 00:07:23

    此処へ来て漸く防衛装置へ打撃を与える事が出来た。このまま勢いで押し切るーーーと行くには手が足りない
    凌我自身も追撃を仕掛けようと剣を振りかぶろうとしてーーー膝を突いた
    「ーーーっぐぅ!」
    凌我自身もこれまでの戦いのダメージが抜けきれていなかった。何しろ、全身の骨が軋み、内臓も潰れかけた程のダメージを受けて一夜明けたばかりなのだ。如何に治癒を施したとしても間に合うはずがないのだ
    体の表面は取り繕えても、内側に蓄積していた傷が今の戦いにより広がるのも無理は無いだろう
    凌我が崩れた隙に距離を取りつつ受けたダメージを修復する防衛装置。同時に凌我を斃そうと氷槍を展開しようとするがしかし、凌我への攻撃を咎める様に今度はマルグリットがボウガンを放つ
    「先輩!」
    「凌我君ーーー!」
    そして、その間に凌我へと駆け寄るルーナとマルグリット。ルーナは既に脇腹を切り裂かれた傷を癒したのか、深そうな切り傷は既に切り裂かれた修道服の隙間に見えた肌に傷痕は無くなっていた
    横目にそれを見ることが出来て安心した様に息を吐いた
    「……ハッ、問題ねえ、な」
    全身の激痛を無視して立ち上がる。魔術式で身体を吊り上げることも出来るが、傀儡操弄は魔術回路と神経への負荷がやはり無視できぶ何度も使用するものではない
    「なんで、私を庇って……」
    震える声で尋ねるマルグリット。そんな質問程くだらないものは無い
    「理由なんて、ねえよ……!」
    「先、輩……」
    「ーーーフフッ」
    凌我の言葉に言葉を失うマルグリットに、少しだけ嬉しそうに微笑むルーナ。凌我は口元に笑みを浮かべて見せる
    「俺の手が届くなら……お前もルーナも、助けるさ」
    「馬鹿なの……!」
    「馬鹿なのよ、凌我君は」
    「うるせえよ」
    凌我も、一度呼吸を整えて懐から青く煌く霊筒を取り出す。これはこれまでも使った魔術回路を活性化させる霊筒である
    「勝負掛けるぞ……!」
    斬り飛ばされた左腕は既に断面を凍結させて止血は済ませていた
    「勝負ってーーー勝機はあるのかしら?」
    「奴が浴びた俺の血だ。アレだけで特級の呪詛になる」
    元々は同じ血を引く兄妹。この手の呪詛は肉親には効き目が悪いものではあるが、目の前の奴は俺の妹でなければ同じ血を引く死徒でも無い。呪詛の構成は簡単には解析出来ないだろうし、させるつもりもない
    「あの呪いなら解呪する迄は動きも反応も鈍る筈だ」

  • 109千界樹の記録23/12/28(木) 09:48:00

    自己の血を媒介とした呪いは強力な物。幾ら聖杯が生み出した防衛装置といえども即時解呪というわけにはいかない筈
    そう言いながら一気に霊筒を飲み干す。一気に魔術回路が活性し、精製魔力量も跳ね上がり、体から青白い余剰魔力かスパークの様に奔る。青の霊筒ならば調律要らずに俺の魔術回路の性能は3割は引き上げられる
    その代償に霊筒の効果が切れれば引き上げられた能力の反動で酷い目に遭うことは確実。しかも、聖杯戦争から続けての使用。ここまで短いサイクルで使う事は無かった
    どう転んだとしても、此処で勝負をかけて勝ちに行かなければジリ貧で敗北は必至だろう
    「全く、凌我君はどうやって勝ったのかしら?」
    「あの時は相当手心を加えられてたんだなって、実感してるよ」
    此処まで派手な魔術戦は無かった筈だからなと、過去を振り返るが、やはり意識の有無の差なのだろう。今と違って、あの時の凪は俺を殺すつもりは無かった様だったからな
    その枷が無いただの防衛装置として稼働している今、1人ではとても太刀打ちできない能力の隔た人が存在している。それ自体は昔からだが
    「呪詛の影響下の今を逃せば勝ちはない。ここで決めるぞ」
    湖面に突き刺した剣を引き抜き、術式を起動。剣を再び水の幕が覆う
    此処では決戦術式は使えない。俺の魔術はそもそも出力差で奴には届かない。ならば以前と同じ様に、斬る他はないだろう
    「そう来なくっちゃ」
    ルーナもまた、湖面に戦鎚を付け、一気に自分を中心とした円を描く。周囲に広がる波紋と戦鎚に吹き飛ばされる雪の花。ルーナの足元から彼女を覆う白銀の鎧は、空間を超えて繋がる門より来る第八秘蹟会が所有する秘宝
    『守護』の概念武装。ルーナにとって必滅の意志の表出
    これを出すからには必殺でなければならない。彼女にとってはこの鎧を出し事は即ち、此処で斃すと言う決意、決着術式と同じ意味を持つのだ
    「先輩……はぁ、ボクも覚悟を決める!」
    マルグリットも若干ヤケになりながら、キレ気味になりながら立ち上がる。取り出した飴を強く噛み締めて切り札の術を行使した
    「『Possession = Werewolf』!」
    ガクンと肩と首が下がる。しかし、その直後彼女の体を覆う様に狼の霊が取り憑き、徐々にマルグリットと霊との境界線が曖昧になっていく

  • 110二次元好きの匿名さん23/12/28(木) 18:04:02

  • 111二次元好きの匿名さん23/12/28(木) 23:07:08

    凌我はどうやって勝ったんだろうと思ったんだけど、凪は兄も一緒に死徒になろうと勧誘しようとしてたのかな?

  • 112二次元好きの匿名さん23/12/28(木) 23:21:29

    >>111

    眷族にするために殺さないようにしてたのかもしれないね

  • 113二次元好きの匿名さん23/12/29(金) 08:29:09

    朝保守

  • 114千界樹の記録23/12/29(金) 14:57:17

    焔が猛る。その熱だけで雪どころかその下の大地さえも焼き焦がす威容を分つ、一筋の閃光が迸る
    火球を両断する様に奔った光。赫い炎を紺碧の筋が隔てる様に閃いたのだ
    両断する様に閃いた光に炎は文字通り両断された
    縦に割れた火球は左右に分かれ大気を、雪を焼き溶かしながら雪景色の向こうへと飛翔していった
    それはつまり目標に到達することはなかったと言う事で、それはその炎を向けた相手が健在だと言うこと
    シグルドは未だそこに立っている。その手には輝ける魔剣が握れている
    戦乙女の火に対して、シグルドの行った事は一つ。魔剣の力を解放して火球を切り裂いたのだ
    極大の火球は高ランクの対魔力をもってしても弾くことのできないだろう夥しいほどの神秘を纏っている
    B……否、例えAランクのスキルだったとしてもそれを貫通して焼き尽くすだろう
    それ程の炎を前にして防ぐ術は無い。余程のスキルか相応の宝具が無ければならないだろう
    しかし、その相手はシグルド。北欧においてその名を知らぬものはいない押しも押されぬ大英雄。その生前においてブリュンヒルデを救い出す為に訪れた氷の館
    そこには神々の盾を幾重にも重ね生み出された壁、叡智の神であるヴォータンの刻んだ正真正銘の原初のルーンによる炎が館を覆い尽くす
    北欧の神々が施した珠玉の館だったのだ
    それをシグルドは魔剣の一閃によって悉く破壊しまい、その先にいるブリュンヒルデを救い出した逸話ーーー
    その後、残された館は2人の住居とされてしまったと言う
    戦乙女の炎はヴォータンのそれには及ばない。如何に原初のルーンと言えども刻み手である戦乙女は大神ではない
    そしてシグルドもまた生前のままでは無い。サーヴァントとして召喚してされたシグルドでは問答無用の力は持たない
    しかし、それでもシグルドは大英雄である
    霊基にへの更なる負荷と引き換えに解放した魔剣を持って挑めば、原初のルーンによる業火さえ、切り裂く事など、容易い事である

  • 115二次元好きの匿名さん23/12/29(金) 20:15:33

    普通は大英雄レベルの英霊は戦おうとするだけでも一流のマスターがいても魔力消費が激しすぎてやばいのに、実質マスター無しの状態で霊基に負荷をかけるレベルの攻撃をするとは、やっぱり竜の炉心持ちの英霊はスゲェわ。

  • 116二次元好きの匿名さん23/12/29(金) 20:54:30

    ルーンで防御するのかと思いきや力押しで叩き斬りやがった!

  • 117二次元好きの匿名さん23/12/29(金) 20:58:42

    シグルドなんか最終的に力こそパワーな解決策多くない??

  • 118二次元好きの匿名さん23/12/29(金) 22:50:25

    >>117

    下手に知恵を巡らすより手っ取り早いからね。

  • 119二次元好きの匿名さん23/12/29(金) 23:19:49

    >>117

    シグルドは無闇に力押しで解決するんじゃなくて塾考した上での最善手として力押しを敢行するからな

  • 120二次元好きの匿名さん23/12/30(土) 10:54:00

    保守

  • 121二次元好きの匿名さん23/12/30(土) 18:53:38

    夜保守

  • 122二次元好きの匿名さん23/12/30(土) 23:19:58

    第三魔法の起動が完了するまでおそらく時間がない

  • 123二次元好きの匿名さん23/12/31(日) 10:33:08

    朝保守

  • 124千界樹の記録23/12/31(日) 12:10:54

    代償は霊核への更なるダメージ。霊基の表層への損傷、つまり外傷はいくらでも治癒が効くが、サーヴァントを構成する要素である骨子への傷はそうはいかない 
    如何に原初のルーンと言えどもサーヴァントの心臓とも言える霊核の修復は一朝一夕と言うわけにはいかないのだ
    あの夜、魔剣を解放したことによる負荷、アーチャーからの一矢は即死こそ無かったものの、確実にシグルドの命を削り取っている
    シグルドの霊核自体が、例外中の例外だったが、本来ならばあの時点でセイバーは敗北しているはずだった
    それを押して此処まで来たのだが、あの時からシグルドはずっと瀕死のまま。そこに加えて更なる過負荷を受ければシグルドは耐えられても、サーヴァントと言う器が耐えきれなくなりつつある
    (やはりーーー長期戦では勝ち目は無し)
    このまま戦闘を続ければ削り合いの果てに先に力尽きるのは己であると悟る。想定よりも、聖杯の防衛機構は手強いと悟った
    故に、シグルドの選択は一つしかない。彼の有する叡智の結晶。その力と彼自身の頭脳が導き出した答えはそう言うものである
    「ーーー我が愛の似姿。些かその力を前に不毛な事はしたくはなかったが……」
    不毛でも何でも、短期決着をつけるならばこうするのが一番確実だろう
    シグルドは魔剣を片手に空いた片手で、戦乙女と同じ様に虚空に指を素早くなぞる
    「ーーー是より、戦争を開始する!」
    シグルドの記したルーンは加速、風、雷のルーン。複数のルーン文字が重なり合い、力を行使する。シグルドは戦士としてのルーンを使用する。その技量は魔術師のクラス、キャスターとしても現界がが叶うほどの物。そして刻むルーンはかのブリュンヒルデより直接賜った原初のルーン其の物
    その力はほぼ最愛の戦乙女と同格であると言える。刻まれたルーンから解き放たれるのはまさに嵐。吹き荒れる風が加速によって渦を巻き、その内外には雷鳴が轟きわたる。神代の神秘が宿る嵐に巻き込まれればサーヴァントの肉体だろうとズタズタにされるのは言うまでもない
    「ーーー」
    そんな致死の竜巻を前に、戦乙女も再びルーンを行使する。描かれたのは力、風、水のルーン。形成されるはシグルドのものとは逆回転の大嵐。それを躊躇うことなくシグルドの嵐へとぶつける。嵐は互いが打ち消し合う様に対消滅していく。そしてーーー

  • 125二次元好きの匿名さん23/12/31(日) 16:47:12
  • 126スレ主23/12/31(日) 17:09:57

    >>125

    見てきました

    あれくらいなら面白そうなので専用の設定作ったのであれでやって貰ればおkです

  • 127二次元好きの匿名さん23/12/31(日) 17:23:25

    >>126

    フットワーク軽!

  • 128二次元好きの匿名さん23/12/31(日) 19:06:34

    いやー、まさか別スレでこっちのスレのキャラが出てくるなんてこのスレは人気ですな

  • 129千界樹の記録23/12/31(日) 22:50:54

    「ヌゥン!」
    二つのぶつかり合う嵐が弱まる瞬間を狙い澄ました魔剣がシグルドの拳で撃ち放たれた。その魔剣にもまたルーンが施されている
    力、加速、風、導きのルーンが刻まれた魔剣はシグルドの手によって内包する魔力を炎の様に吹き出しながら嵐を貫いて戦乙女に迫る。戦乙女もまたルーンを虚空に刻み、勝利のルーンを軸にした防壁を5枚展開した
    しかし、その程度で魔剣は止まらない。一枚
    、また一枚とガラスの様に盾を粉々に砕き割る魔剣。ついに最後の一枚が砕かれ戦乙女に肉薄する
    「ーーー」
    その魔剣を槍で受け止める戦乙女。その破壊力は凄まじく、ちょっとした宝具による一撃ならば受け止めるだろう勝利のルーンの盾を、容易く5枚貫通してなお、戦乙女が後ずさる威力を維持している
    そこへ更に嵐を突き破り突貫するシグルド。その手には肩のアーマーを変形させたナックルが装備されていた
    「甘いぞ!!」
    渾身の殴打で魔剣の柄頭へ一撃加えるシグルド。同時に刀身に刻まれたルーンが光り輝き、強大な魔力爆発を引き起し、辺りの雪や木々すらも根こそぎ吹き飛ばしてゆく
    そして爆発の中を駆け抜けてもう一度至近距離で魔剣と槍をぶつけ合う2人
    戦いは、此処からは最早戦闘と形容するよりも、戦争というべき様相へと変化した
    武器を数度交えると直ぐに距離を取りお互いにルーンによる大規模な魔術戦を繰り広げ、その中また白兵戦に移る
    火、風、水、雷、氷。様々な彩りと光、音がぶつかり合いその度に世界を揺るがす程の光と音が響いかせる
    マスターは愚か、並のサーヴァントでさえこの空間に居たら立ち所に戦闘の余波に呑まれ消滅してしまうかもしれない
    1秒1秒が過ぎるほどに徐々にシグルドは弱体化し出している。最早彼は自己の霊基を繋ぎ止める事で精一杯の状態であり、今にも崩れ去ろうとする身体を繋ぎ止めるのは彼自身の不撓不屈の闘志のみであった
    「ハアアア!!」
    「ーーー」
    血を吐き出さんという勢いで咆哮するシグルドに対して変わらず能面の様な表情で彼を迎え撃つ戦乙女。このままこの様な戦闘を続ければシグルドの肉体はそう長くは持たないだろう。現にこうして戦争とも呼べる規模の魔術戦と白兵戦を繰り返しているシグルドの肉体は徐々に崩れていく。消滅していないのは偏にシグルドが破格の英霊であるという点のみだ

  • 130二次元好きの匿名さん23/12/31(日) 22:51:53

    結局没になってしまいましたね。色々問題があったとはいえ、見たかった気がします。

  • 131スレ主23/12/31(日) 23:01:44

    >>130

    まあ仕方ないですね

    代わりに凌我と入れ替わりにボツったキャラ投げてみたので一つ

  • 132二次元好きの匿名さん24/01/01(月) 08:10:37

    スレ主、明けましておめでとう御座います🎍

  • 133スレ主24/01/01(月) 09:09:00

    あけましておめでとうございまーす
    今日はちょっと投稿お休みさせていただきたいのでご了承ください

  • 134二次元好きの匿名さん24/01/01(月) 17:10:30

    保守

  • 135二次元好きの匿名さん24/01/01(月) 17:16:46

    スレ主とスレ民、皆今はスレ保守せず落としてもいいから現実の自分達の安否を最優先でね。スレはいつでも建て直せるから
    安全でもどうなるか分からないから充電はしっかりしておこう
    スレ主も皆どうかご無事で

  • 136スレ主24/01/01(月) 23:06:27

    私は都内在住なので大丈夫ですが他の方々はどうかご自愛ください

  • 137二次元好きの匿名さん24/01/02(火) 10:16:10

    保守

  • 138千界樹の記録24/01/02(火) 12:41:20

    対する戦乙女には変化は見受けられない。霊基の損耗も魔力消費による弱体化も無い
    魔力は聖杯から直接許給されるだろうし、多少のダメージもすぐに治ってしまうだろう。このまま順当に戦闘が長引けばまず間違いなくシグルドが先に限界を迎えるだろう
    しかし、シグルドはその叡智により見抜いていた。この大規模な戦闘の中、極僅かではあるが、戦乙女の反応に僅かなブレがで始めた事に
    「オオオオッ!」
    シグルドは自身の炉心にあかせた魔力量で次々とルーン魔術を行使しし、更にルーンで強化した魔剣短剣を次々と戦乙女に叩き込んでいく
    「ーーー」
    それらを悉く防ぎ、躱し、弾き返す戦乙女だが徐々に、本当に気が付かない程の差ではあるが対応までの時間が徐々に開きが出始めていた
    恐らく、シグルドを倒すために特攻の乗る槍だけでなくルーン魔術の火力で制圧するつもりだったのだろうが、そこはシグルドも同じ様にルーンによる大火力戦を始めた為に想定外の、それこそ周辺への何の配慮も無い戦争と呼ぶに等しい大規模戦闘を開始したがゆえ、徐々にシャドウサーヴァントとしての処理限界が近づきつつあるのだ
    「甘い!」
    爆発に紛れて肉薄するシグルド。もう何度目かになるか分からない魔剣と槍の激突。ただルーン魔術による撃ち合いだけならば対応は楽だろうが、こうしてシグルドが積極的に接近戦を仕掛け、更に負荷を掛けていく。シグルドの膂力は例え瀕死のままであっても衰えず、驚異的な力と絶技と云われる技量で魔剣を振るう。それに対応するには如何に聖杯による産物だとしても片手間というわけには行かない
    さらに、シグルドは敢えて派手にルーンを使いこれまでのものよりも大きく光り音が轟く様に行使して単位時間あたりの情報量を莫大にした
    それぞれが互いを滅ぼせるほどの大規模な魔術戦に白兵戦の二重の負担に、いよいよ戦乙女の霊基が処理限界が近づいているのだ
    「ーーー、ーーー」
    「此処だ!」
    シグルドは今一度虚空にルーンを描く。イサ、ハガル、ウルズ、シゲル、テイワズ。
    計5つの原初のルーンが意味するところは氷、破壊、力、勝利、戦士。戦士の王たるシグルドがこの霊基で行使するこれまでに最大の魔術。極大の神秘を、宿すルーンはシグルドの頭上、暗天の、中へと消えていった。その意味するところはーーー

  • 139二次元好きの匿名さん24/01/02(火) 22:59:52

    保守

  • 140二次元好きの匿名さん24/01/03(水) 10:19:35

    朝保守

  • 141千界樹の記録24/01/03(水) 10:56:25

    「マスターと、少々ネタが被ってしまうがな」
    空から現れるは巨大な氷塊。中天より現れるは多さにしてちょっとした一戸建てはあろうかとも言う程の大きさの雹が、戦乙女へ向けて落下を開始した
    「ーーー」
    戦乙女は微かに反応が揺れ、シグルドと氷塊のどちらを優先的に対応するかの判断に時間を要しただろう
    無理もない。片や自身を斃しかねない大英雄。片や明らかに英霊が受けるにしてもやりすぎな極大破壊の巨大氷塊である。神代の神秘を纏う巨大質量をぶつけられれば例え同じ神代のサーヴァントでもタダでは済むまい
    シグルドもまた、あの魔剣の一撃を受けて無事で済むはずがない
    先の戦いでライダーは、あらゆるスキル、能力を駆使してそれでも即死とは行かずとも瀕死の重傷を負ったが、あれでも神秘の薄まった土地、時代の英雄が太陽の魔剣を受けて即死しなかっただけでも大健闘ものだった
    戦乙女はまず氷塊を破壊するべくルーン文字を描く。ただの氷ならば脆く、破壊そのものは難しくはない。だが、この氷はただの氷ではない
    神秘を多量に含んだ神代の永久凍土に匹敵するだろう。それを破壊するには当然神代のルーンで対処する他はないだろう
    しかし、それを見逃すシグルドでは無くーーー
    「甘いぞ!」
    短剣を次々と撃ち出す。短剣には風のルーンが刻まれ、射出と同時に荒れる竜巻の弾丸となって戦乙女へ牙を剥く
    当然、その攻撃も無視できる様な二間優しいものではなき。しっかりと霊核や急所を狙い澄ました投擲は防がねばならず槍で弾き飛ばす
    そして、セイバーの攻撃を防ぐために使ったその僅かなタイムラグが致命的な隙となる
    「ルーン、二次点火!」
    予め氷塊に仕込んでおいた原初のルーン。それをこのタイミングで起動させる。仕込んだルーンは一つ。「加速」のルーンのみ
    しかし、ここへきて落下する巨大氷塊が加速する
    最早防ぐ術も躱す術も戦乙女には残されておらずーーー
    「ーーー」
    大火力戦とそれに伴う視覚、聴覚情報の大幅な増大、そして捲し立てる様なシグルドとの白兵戦。そこは情報処理の負荷が掛かったところへのこの氷塊。シグルドの戦術は此処に完成した

  • 142二次元好きの匿名さん24/01/03(水) 22:21:07

    保守

  • 143千界樹の記録24/01/03(水) 23:55:54

    飛来した短剣を片手の槍で弾くと同時に開いている片手でルーンを描き氷塊を炎で迎撃するがまるで通じないーーー
    「ーーー」
    雪草原を薙ぎ払う巨大質量。氷塊は戦乙女の元へ落下し、同時に凄まじい衝撃が周囲を奔る
    残された雪も何もかも吹き飛ぶほどの風圧が燃え残った木々をへし折り、流れ弾とらなって燃えるルーンの炎さえもかき消されて行く
    氷塊も落下の衝撃に大きくひび割れ大きく二つにずれる
    「……」
    手応えは確かにあった
    明らかな直撃。今の攻撃を受ければ並のサーヴァントでは到底耐えられず、強力なサーヴァントでもただでは済まないだろう
    記憶にあるブリュンヒルデであればこの一撃を受けたとしても生き残るだろうが……目の前の戦乙女がそうかは分からない。だが、シグルドに油断はない
    だがーーー
    「ぬぅ……っ」
    片膝をつくシグルド
    これ迄の戦いで受けた傷やダメージに加えて魔剣の解放による霊基の損耗。さらに此処へきての無理な大火力戦の展開により、いよいよサーヴァントとしての身体が保たなくなり始めている一瞬でも気を抜けばその場で無酸素しまいそうになるのを気合いで耐えている様なものだが、如何にシグルドでも
    霊基が損耗して尚圧巻の戦闘性能を維持するのは難しいだろう。此処まで戦い抜くことができたのは一つのカラクリがあったのだがーーー
    「ーーーぬぅ!?」
    セイバーの眼前で巨大な亀裂の奔る氷塊。そして間も無く戦乙女の元へ着弾した氷塊が粉々に砕け散る。その一部が散弾のようにシグルドへ飛ぶが、その程度ではシグルドにも傷はつけられない
    周囲に四散する氷片の中央、そこに立っているのは当然戦乙女。だが、その身体の半分が潰れ消失している。だが、完全には消滅しておらず、さらに身体を覆う黒い霧のようなものも霧散し、その本来の身体が顕になっている
    「ーーー」
    そして、何よりも残った右半身、その手に握る槍が明らかに先程までと異なっている
    「ーーー」
    巨きい。これまでと比較しても明らかに大型化している
    戦乙女の背丈を越えて3mは優にあろうかと言う程の大きさの巨槍となり、更に驚くべきことにその槍は未だその身が巨きくなって行っている
    これこそが戦乙女ーーーブリュンヒルデの持つ宝具の特性。彼女が愛するもの、愛するべきものを前にした時、彼女の槍はより大きくその破壊力を増す

  • 144二次元好きの匿名さん24/01/04(木) 00:16:37

    シグルドのルーン刻む速度が異常すぎる...しかもそれが一番効果を発揮するようにしてるあたり叡智が振るわれまくっとる...

  • 145千界樹の記録24/01/04(木) 10:57:05

    さらに、その神話に曰くブリュンヒルデにとって今相対するシグルドは彼女の最も愛した存在。ならばこそその破壊力は当然考えうる最高のもへと跳ね上がることは必定
    「ーーーっぐ」
    シグルドは片膝を突いた体勢から立て直し、魔剣と短剣を構える。戦乙女はその背から、青白い炎を吹き出し、ゆるりと空へ飛翔する
    ブリュンヒルデの有するスキル「魔力放出(炎)」の力により、ブリュンヒルデは自身や武器に滾る炎を宿しその威力や能力を大幅に向上させる。やり方としては非効率的だが、それの応用でこうして空を翔ぶ事も可能なのだ
    そして、その全体図を顕にする槍。その大きさは、なんと5mを越え、ただそこにあるだけで空気が引き裂かれ、大気が震え悲鳴を上げる。戦乙女が右手で振り回す度にシグルドにまで届く程の烈風が吹き荒れる
    文字通り愛の重さが具現化した槍の様相にシグルドは微かに口角を上げた
    「我が愛……その宝具の力か」
    「ーーー」
    睥睨する戦乙女には見上るシグルド。両者の対峙は数秒。戦乙女は槍を構え、前のめり駆ける様にシグルドへ向け突撃を始める
    彼女の背と槍の至る所から青白い魔力の炎がジェット噴射の様に吹き出して戦乙女の突撃の速度と破壊力を跳ね上げる
    ただ槍を突き出すだけでもシグルドを吹き飛ばすことができるだろう。それを魔力放出を上乗せして突撃を仕掛けるとは、先程のシグルドと同じレベルの過剰火力を叩き込む
    そうしなければ斃せないと言う判断なのだろうがーーー果たして、自律稼動する人形にそんな判断が可能なのだろうか
    「魔剣駆動……!」
    迸る灼熱の魔力。迫る槍を迎え撃つは太陽の魔剣
    「ーーー是なるは破滅の黎明!」
    碧煌の刀身より引き摺り出されるは文字通り太陽の如き輝ける魔力
    この聖杯戦沿いにおいて幾度となくその力を見せつけ、悉く敵を薙ぎ払い続けた最高峰の魔剣にしてシグルドの宝具、その真名解放
    この場は隔離された空間。存在するのは己と戦乙女のみ。故に周辺被害を考慮する事なく宝具の発動ができる
    自身を中心に融解し沸騰を始める大地。槍の鋒が迫る中、シグルドは近づくだけでも焼け焦げそうな輻射熱を放つ魔剣を前に拳を握り込むーーー
    「我が愛に応えようーーー『壊劫の天輪』!!」
    「ーーー『死が二人を分つまで』」
    焔を放つ巨槍ーーーを超えるが如く異様の魔槍を迎え撃つは太陽の魔剣
    暗い夜の雪原に、碧い太陽が瞬いたーーー

  • 146二次元好きの匿名さん24/01/04(木) 22:23:43

    保守

  • 147二次元好きの匿名さん24/01/05(金) 09:07:27

    hosyu

  • 148二次元好きの匿名さん24/01/05(金) 09:08:40

    宝具どうしのぶつかり合いはロマン、古事記にも書かれている

  • 149二次元好きの匿名さん24/01/05(金) 18:11:38

    夕方保守

  • 150二次元好きの匿名さん24/01/05(金) 22:52:50

    おそらくこれでシグルドは決着か。

  • 151千界樹の記録24/01/06(土) 00:33:50

    碧く輝ける光。爆心地を中心に灼熱の暴風が吹き荒れ、残された僅かな木々や雪原の残滓も何もかも蒸発していく。超高温の魔力爆球は文字通り地形すらも歪め、シグルドを隔離した空間すらも揺るがす程の大規模な爆縮の中心部、やがて翳る太陽。爆縮が収まりその破壊力の爪痕が露わになった
    赤熱した地面が露出した巨大なクレーターだけが残され、未だに所々青い炎が揺らめいている。その中に佇む二人の影
    「ーーー」
    「……ッ、グゥ」
    クレーターの中心地に立つ戦乙女。シャドウサーヴァントの霊基が既に崩壊を始めており、既に半身は消えて黄金の粒子となって解れていっている
    そのすぐ前に立つシグルド。彼の胸には彼女の槍が貫いていた。しかし、槍自体も既に崩れ、さらに槍は胸板を貫いているが辛うじて霊核を外れていた。傷は大きく、最早これ以上戦うことはできないだろう。この傷では例え霊核が無事であっても消滅してもおかしくは無い
    それでも消滅していないのはシグルドの意志一で耐えているだけに過ぎないのだ
    「だが……これで当方の勝利だ」
    「ーーー」
    戦乙女は力無く俯きながらゆっくりと弱々しくシグルドへと歩き出す。多少の距離があるとは言え、2、3歩も歩けばすぐ側まで近づくことができる。しかし、それに対してシグルドは不動。彼の目から見ても既に戦乙女に戦う力は何一つ残っていない。左半身が完全に消滅し、徐々に足下までが粒子となって消えていっていた
    「ーーー、ーーー」
    戦乙女の全体像さえ徐々に金色の粒子に変化しかけていく。そんな中、触れれば崩れてしまいそうな程儚い身体でシグルドのすぐ側まで辿り着く戦乙女。ゆっくりと顔をあげる彼女の表情は、何処かこれ迄の虚な顔から変化しているようにも見えるがーーー
    「ーーー」
    何かを喋る様に口が開く。そして消滅しかかった腕を伸ばし、シグルドの顔へと伸びる。シグルドは無言のまま佇んでいる。戦乙女は消えつつある中、懸命に口を動かす
    「ーーー、ぁぁ……」
    消えゆくようなか細い、透き通るような声。その空気は、これ迄シグルドと戦っていた戦乙女のそれとはまるで雰囲気が変化していた
    「シグルド……愛しい貴方……」
    「ブリュンヒルデ、か……」

  • 152二次元好きの匿名さん24/01/06(土) 10:56:20

  • 153二次元好きの匿名さん24/01/06(土) 22:09:39

    保守

  • 154二次元好きの匿名さん24/01/06(土) 23:57:51

    夜保守

  • 155千界樹の記録24/01/07(日) 10:22:14

    戦乙女ーーー否、此処に居るのは最強の戦乙女、ブリュンヒルデであった。此処に顕現した存在は戦乙女の姿形を真似たシャドウサーヴァントであった筈だが、英霊の座から読み取られた情報を元に聖杯によって造られた存在であり、その完成度は非常に高い。意志なき影の身と言えど、性能だけで言えば本来召喚されるサーヴァント・ブリュンヒルデと遜色はないだろう
    さらに、シグルドと言う極めて強い繋がりを持った縁者。さらに生前の風景を思わせる、隔絶された戦場と言うフィールド
    これだけの要素が揃っている以上、何かの間違いで本来のブリュンヒルデの魂が召喚されると言う奇跡ももあるのかも知れない。元より過去の英霊が現世に現れる、と言う事自体が奇跡のようなもの。この程度のことは今更と言うものだろう
    現に、シグルドが宝具を使う時、彼女もまた宝具を発動させて見せた。意志なきシャドウに宝具を発動させる事はできない筈だが、彼女は宝具を発動させて見せた。それはつまりそう言うことなのだろう
    しかし、既に彼女は致命傷を負い消滅しつつあった
    「ああ……」
    彼女の伸ばした手がシグルドの頬に触れる。既に彼女の身体は半分以上が消えていた
    「愛しい……貴方……」
    そう呟いた彼女の顔は、これまでの戦乙女が見せた能面の様な色彩の無い無機質なものでは無く、正真正銘、英霊ブリュンヒルデのものだろう。その笑顔は、生前の記憶にあるあの頃と何一つ変わらないーーー
    「……フフーーー」
    それだけを告げて消滅する彼女。出会いは文字通り瞬きの刹那。魔力の残滓、黄金の粒子が天へ昇る光景を無言で見つめるシグルド
    シグルドが聖杯戦争に参戦した理由ーーーそれは決してあり得ないだろう邂逅を求めたが故。しかし、元来サーヴァントとして召喚されるブリュンヒルデは、「シグルドを殺すもの」として召喚される。英霊は信仰によってその力を規定される事がある。これもその一つであり、もしもこの聖杯戦争にブリュンヒルデが召喚されていたのなら、ブリュンヒルデはシグルドへ向けるその愛故に問答無用で殺し合いが始まることだろう
    故にこの邂逅は奇跡とも呼べる確率で起きた偶然の刹那
    それをシグルドは理解する。理解できてしまうが故にーーー
    「フッ……」
    嬉しそうに、寂しそうに目を閉じて口元を微かに緩めたのであった

  • 156二次元好きの匿名さん24/01/07(日) 21:15:20

    保守

  • 157二次元好きの匿名さん24/01/08(月) 08:20:02

    朝保守

  • 158千界樹の記録24/01/08(月) 19:25:20

    肉体の輪郭がブレ、徐々に人形からより原始的に、より獣の様にに変化してゆく。1人の人間を構築する細胞の一つ一つがうなりを挙げて変化する様は妖怪変化を彷彿とさせ、黄金の毛並みが棚びく人狼へと変生する身体
    マルグリットの切り札、肉体を変貌させる極限の憑依術式が現象する
    そして、その傍に霊薬を用いて魔術回路を強制的に向上させた凌我、白銀の鎧に身を包むルーナと続く
    3人が相対する防衛装置は冷たい月を背に無数の氷槍を展開する
    「短期決戦ーーーそれしか無い」
    「ええ、理解ってるわ」
    「コレを使った以上、一気に決めないと」
    各々の手札を切り、並び立つ3人。見据えるは冷たい月を背に水面に立つ過去の残影
    「で、作戦は?」
    「俺とマルグリットで奴の足を止める。その一瞬を突け」
    「わかったわ」
    「しょうがないな……」
    至極単純、作戦と言える様な作戦では無いが、断言した以上は何かしらの秘策を持っている。神水流凌我という人間はそう言う男であると彼女たちは知っている。だからこそ、2人は何も言わずにその言葉を信じた
    「ーーー行くぞ!」
    先陣を切って駆ける凌我。その背後を走る白銀の狼。そして風の様に駆け抜けて側面を取る金狼。狙いは一点、ただ一体の防衛装置
    「ーーー」
    独り佇む防衛装置は頭上に展開した無数の槍を撃ち下ろしてゆく。狙いはコレまでよりは雑になり、しかし同時に数が多い。二方向へと放たれる氷の槍は変わらず一撃でもまともに受ければ即死は免れないだろうが、それらを躱しながら駆け抜けて距離を詰めていくーーー
    「ーーー」
    「ハァッ!」
    一番先に間合いに捉えたのは凌我。距離を詰めたところで跳び、跳躍からの唐竹割りに斬り下ろす。それを後ろに小さく跳んで躱す防衛装置。しかしそこへ追撃に踏み込みながら剣を振り抜く。それもまた躱されるが、そこへ側面からの金狼の爪が閃く
    「ーーーソコッ!」
    疾駆する爪は防衛装置の翳した手から氷の盾を引き裂くものの、届かずに終わる。だが、その一瞬、確かに足が止まったその隙を逃さず凌我が斬り込む
    「貰った!」
    「ーーー」
    だが、装甲板を斬り裂く剣を防衛装置は素手で受け止める。魔力を集約させて受けたのだろう
    「チィーーーッ」
    だが、その背後から躍り出る白銀の狼。コレまでより大型化した戦鎚が紅く煌めきを放ち、一目見てわかるほどに唸り震える

  • 159二次元好きの匿名さん24/01/08(月) 22:55:35

  • 160二次元好きの匿名さん24/01/08(月) 22:57:25

    肉体を変貌させるレベルって相当危険やな、スヴィンの獣性魔術に近しい危うさをかかえてそう

  • 161二次元好きの匿名さん24/01/09(火) 08:03:10

    保守

  • 162千界樹の記録24/01/09(火) 08:48:13

    その魔力量、もし大地に叩きつければ大規模な振動崩壊を引き起こし一瞬にして広範囲を塵にする程の大破壊を引き起こすだろう
    「ーーー砕けちりなさい!」
    嘗て一撃で再生力に長けた死徒を滅ぼした破の一撃。それを前に、防衛装置は片腕を伸ばし、瞬く間に魔力と氷が形成される
    「ーーー」
    「ああ!!」
    白銀の甲冑を撃ち抜く巨大な氷の杭。一瞬で形成された氷の杭は守護の鎧を砕くことはしなかったが、衝撃だけでルーナを吹き飛ばした
    「だが、これでーーー」
    「こっちは貰った!」
    その凌我の剣を止め、ルーナを吹き飛ばす。その間隙にマルグリットの爪が頭上から襲い掛かる
    狙いはーーー凌我の剣を止める左腕
    「セェアッ!」
    「ーーー」
    風の様に奔る金狼の爪、防ぐか躱すか。ルーナを吹き飛ばした右腕を向けるも、紙一重の差で間に合わない
    ザシュッ、と言う切断音と共に切り裂かれる防衛装置の左腕。肘から先を喪い同時に凌我の剣を止める障壁も無くなる。止めていたものが無くなったことで剣は勢い良く振り抜かれる
    それを跳躍して躱す防衛装置。空中を舞いながら氷槍を更に展開し、ブリザードと共に発射。極寒の暴風は同時に膨大な神秘の塊。それだけでこの場にいる全員を凍結させかねない冷気を以て吹き荒ぶ。同時に風の後押しを受けた氷槍の威力と速度も上がり、凌我達に躱す暇を与えない様面制圧の様に放たれた
    しかしーーー
    「『主の御名においてーーー守り賜う遣いの加護を此処に』」
    ルーナの洗礼詠唱。吹き飛ばされながらも即座に体制を立て直し、2人の元へ戻っていた。そして展開されるは守護の光。彼女達を囲うようにドーム状の光が覆う
    「『我何処に居れども、聖なる火に護られる者故に』!!」
    展開された防護陣は氷槍とブリザードと槍をものともせずに弾き返す
    「助かる!」
    「長くは保たないわ。次で決めなさい!」
    「ああ!」
    「言われなくても……!」
    槍と風が弱まった瞬間を狙い再び駆ける3人。防衛装置の着地を狙って同時攻撃を仕掛ける。銀狼と銀狼が挟み込む様に爪と戦鎚を振い、しかしその両方が受け止められた
    右腕で戦鎚を、氷の盾で爪を容易く受ける。しかし、これで今一度隙が生まれる
    「はああああ!!」
    全身を砲弾に変えた様な突進で両手に握り締めた剣を叩き込む。その一撃もまた、防衛装置の眼前に展開された氷の壁に阻まれる。だがーーー
    「『激流 地を砕け』!!

  • 163二次元好きの匿名さん24/01/09(火) 18:26:42

    夜保守

  • 164二次元好きの匿名さん24/01/09(火) 18:28:11

    もうすぐで決着か。多分、イザーク戦は令呪一画でシグルドの霊基を快復させてから、最後の令呪一画でシグルドの宝具にバフ与えて聖杯の破壊かな?

  • 165千界樹の記録24/01/09(火) 22:57:43

    突進を阻む氷の剣を中心に、水が渦を巻き激しく畝る。渦は激しく荒れ狂い巨大な鑿岩機と化す
    彼が有する秘奥の一つ。剣から放たれる鮫、剣に集約された水の一刀とも異なる、破壊にのみ集中させた一撃
    神水流凌我は魔術師として、自身の扱う魔術はそれぞれ限界まで詠唱をそぎ落として徹底して行程を減らしている。背中全体と右腕を覆う魔術刻印の助けもあり、わずかニ工程で簡易儀式にも匹敵する術式を行使する
    この破壊渦も同じく、二工程で繰り出されるにしては破格の威力を誇る
    その威力たるや、城塞の如き防御力を誇る氷壁さえも削岩機械の様に砕き削りーーー
    「とったぞ!」
    「ーーー!」
    ついに氷壁を粉砕し、水の渦が片腕を失い、残った腕も防御に使っていた為に無防備になっていた身体へと叩き込み、その身体を傷付けながら吹き飛ばした
    「『氷門/氷輪』『閉ざせ/囲え』!」
    隙を与えない為に、即座に二重詠唱にて術式を発動させる。強引に性能を引き上げた魔術回路が悲鳴を上げる。秘奥の術式は二工程で発動できる代わりに、魔術回路と魔力消費は相応の負荷が掛かる。更にそれを使った直後に次の術式、特に二重詠唱での魔術発動は本来ならば凌我の魔術回路では無茶な芸当であり、霊筒による魔術回路の能力を強引に引き上げたからこその連続発動なのだが、その負担が魔術回路を超えて血管にまで響く。その結果はーーー
    「っっぐぅ……!」
    全身の内側から血が噴き出す。その様は身体中を切り刻まれたかの様な様相を顕す
    だが、その程度では決して止まらない。ここで痛みに負けて一瞬でも緩めれば勝ちの目が消えて失せる
    無茶な魔術の連続発動で作り出したものは氷の柱。そこへ吹き飛ばされた防衛装置が激突する。氷の柱は大きくへこみひび割れるものの、砕けることなく防衛装置を捉えている
    更に柱毎場合装置を覆う様に無数の細かい氷が連なり作り出された円環が、防衛装置の動きを封じた
    「ーーー、ーーー!」
    防衛装置は油の切れたブリキの人形の様にギギギ、と軋む様に身動きするが、それ以上の行動が起こせない。凌我の血を浴びた事による呪詛に加え、氷の輪による封印。二重の枷が此処に防衛装置を封じ込めた。どちらか一方では恐らく、此処までの効果は期待できなかっただろう

  • 166二次元好きの匿名さん24/01/10(水) 08:09:53

    保守

  • 167千界樹の記録24/01/10(水) 10:28:46

    しかし、この拘束も長くは保た無い事は簡単に予測できる
    凌我と凪の間の差は大き過ぎる隔たりが存在していた。この防衛装置も性能そのものは凪が死徒となった時のものに準拠しているのは間違いない。呪いと拘束の術式を解除される可能性も、単純にこの拘束の力を上回る魔力で吹き飛ばされる可能性は当然存在する
    凌我の血の呪いで多少の制限が掛かっているとはいえそう長く無いウチにこの氷輪を吹き飛ばす程の魔力を行使するのは目に見えている
    文字通り、この刹那。千載一遇のチャンスであり最初で最後の勝機ーーー
    「今だ!」
    「此処で!」
    「終わらせる!」
    水の破壊渦が消えて尚突貫する凌我それに続く金と銀の狼。剣、戦鎚、爪が三位一体となり防衛装置を貫くーーー
    「ーーー」
    事は無かった
    そう、凌我の危惧は的を得ていた。魔術師としての性能差を鑑みた場合、同系統の魔術を操る2人なのだから、当然そのリスクは付き纏っていた
    だが、この場合は魔術師云々の問題では無かった
    天空に浮かぶ冷たい月。『氷華水月』の中核である満月が脈打つ様に魔力の波を放つ。その脈動はこの固有結界全域に伝播する。当然それは結界内にいる全員にも伝わり、刃が届く寸前、防衛装置の瞳が怪しく輝いた
    「ーーー!!」
    防衛装置を中心に強烈な魔力の波動と無数の氷の礫が迸る。コレはコレまでの様な指向性を持たせた攻撃ではなく、魔力を暴走させた自爆に等しい荒技であった
    「ぐおおおおお!?」
    「きゃあああ!」
    「コレ、は……ッ」
    魔力と冷気、礫の暴走は固有結界に咲き誇る雪の花を悉く吹き飛ばし、何もかも凍てつかせる極大の冷気の爆弾となって固有結界を蹂躙する。どこまでも広がる湖面全てを凍てつかせ、一瞬にして景色が様変わりして行く。この威力の前には、人間程度一瞬で凍り付き砕け散るだろう
    確実に仕留める為、攻撃に全意識を割いていた3人に防ぐ術は無い。なす術もなく3人共が吹き飛ばされる。
    精々、守護の鎧を持つルーナがギリギリで2人を庇い、凌我とマルグリットがこの場で即死する事だけは防ぐ事が出来た程度だろう
    それでも2人は吹き飛ばされて凍てついた湖面を転がる。ルーナが庇ったお陰でこの場で凍結する事こそ免れたものの、莫大な魔力を含んだ氷獄の風を受けて無傷で済む筈がない

  • 168二次元好きの匿名さん24/01/10(水) 21:18:45

    夜保守

  • 169千界樹の記録24/01/10(水) 23:38:32

    湖面に叩きつけられ転がるマルグリットは憑依の術式が解け、人狼の姿から元に戻ってしまう。その上、うつ伏せに倒れたまま動かない。死んではいないだろうが意識を失ったのは確実だろう
    凌我もまた凍りついた湖面を転がる。意識こそ失わなかったものの、全身が凍てついた様に冷たくなっている。下手をすれば全身重度の凍傷になりかねないが、魔術回路と刻まれた魔術刻印が術式を発動しており治癒が始まっている
    しかし、それでも凍てついた身体が痺れた様に震え、思う様に力が入らず未だ立ち上がることが出来ずにいる
    「……っぐ、ハァッ」
    「凌我君……!」
    ルーナは守護の鎧に守られた事で大事には至らなかったが、それでも2人を庇ったお陰で少なくないダメージを受けてしまい、片膝を突いて戦鎚で身体を支え呼吸を整えなければなら無かった
    しかし、防衛装置は3人の中で最大の力を持つ白銀の狼には目もくれず、ある一点を見つめている。その視線の先には肘を立てて何とか立ちあがろうとしている凌我がーーー
    「ーーー」
    そして、湖面を滑る様に凌我の下へと向かう。狙いは明白、凌我を斃すつもりなのだろう。戦力で言えばルーナが3人の中で最大であるのは疑うべくも無いが、この戦いが始まってから、戦術を構築しこれ迄の展開を構築して来たのは凌我である
    血を媒介にした呪詛、束縛の術式も当然だが、同系統の術式を扱う魔術師。脅威度としてはルーナよりも高くなっても仕方が無いだろう
    「ーーーっくぅ!」
    銀狼の鎧を唸らせて立ち上がる。戦鎚を振り上げて全身の瞬発力を最大限に用い吶喊する。魔術回路を駆動させ、サーヴァントの持つスキル「魔力放出」の様に噴射させて莫大な推力を発揮して瞬く間に突撃する
    「ハァアアアアア!!」
    戦鎚の先端からも魔力をジェット噴射の様に推力を発揮させて振り下ろす
    「ーーー」
    「ぐぅ……!」
    防衛装置の行動は速かった。一瞬で氷破城槌が形成され、死角から叩き込まれる。3人で戦闘を構築している間は互いに死角を補い防衛装置の攻撃から躱す事が出来たが、単独では難しい。固有結界の中では凪ーーー防衛装置は魔術式を発動できる。つまり、相手の死角から魔術を使う事も容易いのだろう
    破城槌の破壊力で再び吹き飛ばされるルーナ。ダメージこそ無かったものの、防衛装置と凌我とも距離ができてしまった

  • 170千界樹の記録24/01/11(木) 08:53:43

    「ーーー」
    「ーーークソ、があ……!」
    凌我も既に対抗のために術式を起動し、傀儡の糸を体へと接続を始めているが、最早間に合わない
    万事急すーーー彼にはこの状況を打開する術は最早無かった
    氷の杭を振り上げる防衛装置。その一撃は絶対にさせてはならない。吹き飛ばされながらも湖面に着地したルーナ。このままでは間違いなく凌我は死ぬ。マルグリットは意識を失い、凌我もまだ立ち上なることさえできない重傷の身
    動けるのは自分だけ。しかしこの距離では最早どんなに速く動こうとも、転移でもしなければ間に合わず、その様な大掛かりな秘蹟はルーナは持ち得ない
    ならば、取るべき行動は一つのみ
    「届けえええ!!」
    ーーー戦鎚を投擲する。渾身の力と魔力を込め、投げ放たれた槌は弧を描く様に回転しながら防衛装置へと迫る。その位置関係は凌我を見下ろす奴からは死角に当たる
    起死回生を狙った一手。渾身の魔力を込めた戦鎚は紅い煌めきを帯び、ルーナと防衛装置との間にある距離を一瞬にして渡り、何もかもを粉砕する破壊の波を打つ戦鎚が、今正に氷杭を振り下ろさんとする防衛装置に届くーーー
    「ーーー!」
    その起死回生の一擲も防衛装置が伸ばした右手から形成がされた氷壁を粉砕し、凍てつかせる様なブリザードの壁を越え、魔力障壁をも砕いてしかし、氷の杭を粉砕したところで掌に受け止められてしまった
    幾つもの防御を破壊し、最後に受け止めた防衛装置の右腕さえ無数の傷と亀裂を生み出す程の破壊力を発揮した。防衛装置の創り出した氷の壁は、以前破壊しきれず弾き飛ばすに留まった氷槍を上回る強度を誇るが、それすらも粉々に粉砕する程の威力で放たれた、文字通り起死回生の一投だったがーーー止められた
    「……ッ!」
    防衛装置は、戦鎚が投擲された方向、つまりルーナへと顔を向ける。脳面の様な無表情、無機質な瞳が彼女を捉える

    そうーーーこの時、確かに防衛装置の視界から、意識から確実に外れた
    この刹那ーーーこの時を置いて他には無い!
    「……!」
    凌我の右腕を氷が覆う。そして、形成されるのは牙の様な、爪の様な鋭い五指
    「ーーーオオオオオオオオオオオ!!」
    跳ね上がる様に立ち上がり、鋭爪を振り上げる。振り上げた右腕の先にある物は、防衛装置の無防備な身体
    聖杯が形成した、エーテルの肉体を貫く右腕。その一撃は、間違いなく防衛装置を構成する心臓諸共に破壊した

  • 171二次元好きの匿名さん24/01/11(木) 19:36:59

    夜保守

  • 172二次元好きの匿名さん24/01/11(木) 23:23:17

    距離があって走っても間に合わないのだったら、武器を投げれば良いもんな。

  • 173二次元好きの匿名さん24/01/12(金) 08:49:40

    朝の保守

  • 174千界樹の記録24/01/12(金) 11:00:20

    防衛装置の身体を貫いた氷爪の先端から滴る血が、氷結した湖面に落ちる。ルーナの投げた戦鎚。その破壊力を考えれば、受け止めるには、一瞬でも意識をそちらに向けなければならない。その時、確かに意識は凌我から逸れる。ほんの一瞬の事とはいえ、魔術師にとってはそれは金にも勝る価値があった
    乾坤一擲。最後の最後に勝ちを拾う為の大勝負。結果は見ての通りーーー
    「……終わり、だ!」
    凌我の懐から落ちる霊筒の小瓶。この一瞬で防衛装置の身体を貫に、仕留めるだけの神秘を持った一撃。簡単に用意できる物ではない
    何しろ、これは狙った物ではないのだ。タイミング、位置、距離。この全てが偶然の産物。状況が生み出した刹那。その一瞬で、防衛装置を斃す一撃を作り出す。凌我の魔術回路では生み出せない
    しかし、神水流凌我は魔術師だ。自身で出来ないならば、出来るところから引っ張り出せば良い
    湖面に落ちる複数の霊筒。彼は残った霊筒を全て使い、二つの術式を発動させた
    一つは彼の腕を覆う氷の爪。もう一つは動かないはずの身体を動かす、傀儡の糸。
    本来、この二つの魔術を行使するにあたって、霊筒を複数使う必要は無い。しかし、今回だけは話が違う
    本来企図した必殺のタイミング、それを潰され本来なら敗北が決まった様な物。その上で訪れた偶然という配剤によって生まれた間隙。狙った物でないゆえに、誰もこの隙にねじ込む手段を持っていない。だからこそ、何よりも速度が求められた
    残った霊筒5本全てを用いて、極めて非効率的で頭の悪いやり方になるがなりふり構っていられる訳がなかった
    潤沢な魔力にあかせた強引な術式構築。負担も相応になるが勝てればもうどうでもいいと、このタイミングに賭けたのだ
    心臓を貫かれる形となった防衛装置は前のめりになった体勢で、凌我と互いに顔を見合わせる形となる
    「ーーー、ーーー」
    無機質な表情はそのままに、微かに口元が動く。何か言の葉を発しようとしているのか、しかし声に出ることは無い
    「……じゃあな」
    引き抜かれる氷の爪。風穴の空いた胸から、夥しい血が噴出し、仰向けに斃れた防衛装置。その身体を構成するエーテルが解れ、徐々に形を保てなくなってゆく
    「凌我……君」
    ルーナを護る銀狼の鎧が還る。戦闘服の状態に戻った彼女が凌我の元へ向かう中、凌我は聖杯が創り出した虚像とはいえ、妹であったものを貫いた掌を見つめていたーーー

  • 175二次元好きの匿名さん24/01/12(金) 20:44:06

  • 176二次元好きの匿名さん24/01/13(土) 07:42:04

    朝保守

  • 177千界樹の記録24/01/13(土) 13:03:20

    「……別れはとうに告げた。今更虚像に合わせる手はない」
    拳を握り締め消えていく残影に背を向ける。防衛装置が消えていくのと同様に、冷たい月を臨む凍てついた湖面も、世界ごと綻び始めていた
    この景色は元来凪の固有結界。聖杯の力で再現したものでも術者たる本人を失えば消えゆくのも道理だ。直ぐに元の地下壕へ戻るだろう
    「良かったの?」
    「言ったろ?とっくの昔に手は合わせたんだよ」
    たらばもう本人でもない、死徒ですらない幻を前にして感慨も何も無い。一敵として排除するのみだ
    「それより、マルグリットは?」
    「……起きてるよ、先輩」
    片腕を押さえながらゆっくりとした足取りで此方に近づくマルグリット。強がっているのか、表情は平静を装っているが、時折痛みに歪んでいるので、かなり無理をしているのは明らかだ
    「その右腕……折れたの?マリィちゃん」
    「罅が入ってるだけです。治癒の魔術を使えばどうとでもなります……ッ」
    と、言いながら魔術を使わないところを見ると、既に魔力が底をついたらしい
    無理もないだろう。凌我自身も魔力は底を突きかけている。平気なのはそれこそ桁違いの魔力精製量を持つルーナくらいだ
    「無理はするなよ」
    「先輩程の無理はできないから安心して」
    「2人ともボロボロなんだから無茶は厳禁よ?」
    結界が崩れていき、幻想と現実の境界が曖昧になっていく。このまま数分と経たずに現実へ戻れるだろう
    「……イザークを止めて聖杯を破壊する。異論はないな?」
    「ええ」
    「大三魔法には興味あるけど仕方ない」
    崩れるテクスチャが限界を迎え、景色が文字通り現実へと入れ替わる。白銀の湖から、暗い石の洞へ。幻想から現実へ帰還を果たした3人。そしてその傍には、いつの間にかシグルドの姿もあった
    「セイバー。戻って来たか」
    「無論。あの程度の策に落される当方ではない」
    そう言うセイバーだが、どうやら霊基が崩れかけている。本来なら消滅してもおかしくない身体を、謂わば根性のみで繋ぎ止めているのだろう。まだセイバーにはやってもらわなくてはならない仕事がある。此処で退場させるわけにはいかない
    「令呪を以て告げるーーー」
    最後の一画を残して令呪を使い、セイバーの霊基を補強する。これでもう暫くはセイバーを現世に止めることができるはずだ

  • 178二次元好きの匿名さん24/01/13(土) 22:53:21

    保守

  • 179二次元好きの匿名さん24/01/14(日) 09:03:23

    保守

  • 180二次元好きの匿名さん24/01/14(日) 18:51:40

    保衛

  • 181千界樹の記録24/01/14(日) 22:55:37

    「感謝するマスター」
    「気にするな。まだやってもらわなきゃならんこともある」
    そうして4人が此処に揃い、今一度聖杯と聖杯を手繰る男と対峙する。イザークは驚いた表情を見せていた
    「よもや、あの悪夢を打ち破るとはな」
    「あんな過去の幻にやられる様なら、魔術師なんてやってられるか」
    右手に拾い上げた剣の鋒を向ける。恐らく聖杯は今、奴の願いを叶えるべく必要なリソースと時間、方法の演算を行なっているはずだ。嘗ての聖杯大戦。天草四郎が願った「全人類に、天の杯を」と言う願いをこの男が叶えようとしているならば、時間は必要な筈
    それを叶えるために必要なリソースは膨大な物を必要としている。ちょっとやそっとの時では発動出来ない。恐らく、その時間を稼ぐ目的もあって俺たちを隔離したのだろう。確かに此処へ戻るまでに相当な時間を必要としたが、それでもまだ足りないはずだ
    ならば、こちらにもまだ捲り札はある
    「お前の旅路、此処で終わらせる」
    「させると思うかい?私の執念を甘く見ないで貰いたい」
    聖杯が唸りを上げて魔力が振るわれる。しかしやはりイザークの願いの成就にその機能の大半を割いているせいか、先ほどの様な魔力と異様な迫力は感じ取れなかった
    だが、それでも聖杯の力は破格だ。例え模造の聖杯であっても、その完成度は高く、今やこの模造の聖杯は世界の裏に喪われた大聖杯と同じ機能を持つ
    「『聖杯、接続』ーーー」
    聖杯の魔力が不可視のパスを通して多大な魔力が流れていく。そしてーーー
    「『Der Rosenkavalier』ーーー!」
    詠唱と共に魔力で構築された騎士がイザークの周りに計4体展開される。真紅の騎士は捧げ筒の様に剣を掲げる
    恐らく、その戦闘能力はサーヴァントには及ばないだろうがーーー
    「魔剣起動!」
    シグルドは迷う事なくイザークへと突撃する。サーヴァントですら一撃で討ち果たせるだろう威力を誇る太陽の魔剣。そんなものを受けてしまったら如何に魔術刻印により死ににくい魔術師といえども、確実な死が待っている
    だが、イザークが身動きどころか反応すらできない疾さで斬り込んできた魔剣の一撃を真紅の騎士が受け止めた
    「ーーームンッ!!」
    騎士が受け止めた魔剣の一撃。しかしシグルドは有り余る膂力が騎士の剣を弾き飛ばしてさらに迫ろうとするがーーー
    「『Lyngvi』ーーー!」

  • 182二次元好きの匿名さん24/01/15(月) 08:02:39

    朝保守

  • 183千界樹の記録24/01/15(月) 12:08:56

    聖杯から放たれた狼が魔剣を喰らい止めた。更に、剣を咥える魔獣の牙から魔剣の刀身が徐々に氷が覆い出す。魔剣の熱量と氷が拮抗し凄まじい蒸気を放つ
    「ーーークッ」
    セイバーは魔獣へ蹴りを放つ。強烈な蹴撃を喰らった魔獣は咥えていたグラムを離し蹌踉めき、その隙を突く様に距離を取る。本来のシグルドであれば、この程度の魔獣に梃子摺る様な戦士では無い
    しかし、令呪で補強されたと言えど消滅寸前になるまでの傷を負っていた身の上で、根性のみで消滅する身体を繋ぎ止めていた状態だったのだ。如何に令呪と言えどもシグルドを本調子に戻すまでにはいかないのが実情である
    後ろに跳んだシグルドと入れ替わる様にして、凌我とルーナが前に躍り出る
    2人からイザークを庇う様に真紅の騎士が前に出る
    「こっちは任せて!」
    「頼む!」
    ルーナが加速して凌我の前に。そして戦鎚が騎士の剣とぶつかり合う。そして、騎士の剣と火花を散らすルーナの戦鎚。戦鎚の破壊力は未だ変わらず、破壊の振動を震わせる戦鎚の威力の前に紅騎士の剣は砕け散る
    そして、砕かれる騎士の剣は2本。現れた残り2体の騎士はーーー
    「『Bolt』ーーー!」
    マルグリットの撃ったボウガンの矢を対処した事でほんの僅かだが隙が生まれた
    「貰ったーーー!」
    そして、その一瞬の隙があったのなら、本丸に辿り着くのは容易い事。障害をすり抜けイザークの元へ肉薄する凌我。右腕に握る剣に水の魔力が集約する
    「させん!」
    イザークの眼前で振るわれる剣。その威力ならば一瞬で魔術師の首を斬り裂くだろう威力だが、その剣が火花を放ち受け止められた
    イザークの手に握られた得物は拳銃
    当時のドイツで開発、量産された銃の一つ、ルガーP08で、更にグリップにルーン文字が刻まれていた
    「チッーーー!」
    「私とて嘗ては軍人なのでな」
    強化魔術を施した腕で凌我の剣を弾き上げる。更にそのまま銃口を向けて引き金を引く
    硝煙と共に9mm弾丸が凌我へと発射される
    心臓を狙って撃たれた銃撃は凌我の剣によって阻まれる
    「悪足掻きを……」
    「アンタの願いそのものは悪く無いけどな」
    そう。悪くは無い
    全人類への救済。天の杯と言う手段を取るのはアリなのだろう。だがーーー
    「拙速がすぎるだろうよ!」
    剣を振るって銃弾を再び弾く。別に大層な思いがあるわけじゃ無い。人類の救済と言う願いを否定できる様な崇高な思惑があるわけでも無い

  • 184二次元好きの匿名さん24/01/15(月) 21:33:08

    保守

  • 185千界樹の記録24/01/15(月) 23:25:04

    だが、全人類に及ぶ魂の物質化。それをいきなり享受するには人類が未だ未熟であること。その程度は俺でも分かる
    消費社会の波の中、急にふって湧いた様な奇跡に対し、多くの人間はそれを甘受するだけに止まるだろう
    そこから何かを発展させたり、新たに何かを生み出そうとする者は少数になる筈だ
    そうなれば待っているのは停滞と、緩やかな衰退だ
    不老不死の奇跡は、いつか人類が辿り着くだろう奇跡である。しかし、それを一足飛びで手に入れるには人の精神は受動的であると、そう思う
    それは俺を含めて、だ
    「救済の奇跡!それは人類の夢だろう」
    「……そうね、それは確かにそう言える」
    ルーナもまた、聖職者であるが故にその奇跡を否定しない。だが、やはり彼女また遠く歩いてきた魔術師の夢を打ち砕かんとする
    「終わりのない人生なんて、不老不死の奇跡なんて、私の魔術の否定でしか無い!」
    マルグリットは実にシンプル。降霊術を扱う彼女に取って不老不死は、死者との交信、交流を是とする魔術の否定である
    彼女に限らず、自身の誇るべきものを否定されて平気な者はいないだろう
    真紅の騎士達と踊りながらイザークへと迫る3人。騎士一体辺りの戦力はサーヴァントには及ばないものの魔術師を斃すには十分過ぎる力を持っている。凌我やマルグリットだけでは太刀打ちするのは非常に難しいだろうが、ルーナが2人を庇う様に前に出て囮役を買って出ているお陰で対等以上に渡り合え、更にイザーク本人へ攻撃を仕掛ける余裕も出来ていた
    シグルドもまた、魔獣と互角以上に斬り結び戦いを繰り広げている。本来のシグルドならば如何に聖杯が生み出した存在とはいえ、この様な魔獣、相手にならない程の戦力差があるが、度重なるダメージと負荷によって本来の能力は最早発揮出来ていない。とうの昔に消滅しているであろう損傷を押して現界を保っており、令呪で補強したとは言えそれにも限度がある
    さらに、シグルドがその力を発揮出来ない理由がもう一つ
    (聖杯との繋がりを絶たれているーーー)
    聖杯戦争におけるサーヴァントは召喚者を柱にしてその存在を保つが、それ以上に聖杯と言う寄る辺があってこその現界である
    聖杯無くしてサーヴァントはその存在を維持できない。その聖杯との繋がりが既に絶たれてしまっていたのだ
    「聖杯戦争は終結した。過去の英霊には退場願いたい所だな……!」

  • 186千界樹の記録24/01/16(火) 08:51:01

    「聖杯戦争は既に終結した。過去の英霊には退場願いたい所だな……!」
    イザークの言葉に、しかしシグルドは断固たる意志を持って返す
    「笑止。マスターが戦う意志を持つならば、当方が退がる道理など無いと知れ」
    シグルドはその揺るぎのない精神力と、令呪の後押しを受けた事でその身体を繋ぎ止めている
    イザークの思惑から外れてしまっているが、それでも此処に至った以上は止められない
    更に、如何に大英雄シグルドと言えども本来聖杯の力で顕現した身。例えどれほど粘ってこの世に存在を続けたとしてもその力は聖杯戦争時と比べて明らかに弱体化を喫している
    弱体化していても凌我やルーナを大きく上回る戦力であることに変わりはない
    しかし同時に、聖杯の力で押さえ込むことができる程度でもあった
    「ムンッ!」
    魔剣の一撃が魔獣を捉える。本来ならばこれで寸断されて然るべき一閃ではあるが、聖杯から直接魔力を注ぎ込まれる魔獣は即座に再生していく
    それは凌我達が戦っている真紅の騎士も同じく、戦況はどちらかと言えば凌我達が押して入るものの、ほぼ拮抗状態に留まっている
    「あーもう!キリがない!」
    「同感だーーーッ!」
    ルーナが騎士の頭を叩き潰し、凌我の剣が他の騎士の腕を斬り飛ばす。その一瞬にマルグリットのボウガンが騎士の剣はを掻い潜りイザークの元へと飛翔する
    「やらせんさ!」
    しかし、そのボルトもイザークが展開した防壁によって阻まれる。戦況は一進一退を反復し、時間だけが徒に過ぎていく。聖杯の機能の大半が使えない状況でこの有様では、いい加減時間が足りないーーー
    「良く粘るが……どの道私の勝ちさ!」
    イザークが翳した掌から魔法陣が出現し、無数の黒い魔力の弾丸が機関砲の様に発射される。その魔術はガンドーーー所謂北欧に伝わる呪いの一種。呪いと言っても本来は体調不良や頭痛を引き起こす程度の弱い部類のモノ。決して強力な魔術ではない
    しかし、何事にもやりようや例外もある。より多くの魔力を込めたガンドは物理的な破壊力を持つ、「フィンの一撃」と云われる魔術となる
    魔法陣から放たれるガンドは最早フィンの一撃の機関砲とも言える魔術攻撃になり得る。無論、コレだけでも強力な術式ではあるが、現代兵器に対して対応策をいくつも用意している凌我や、この程度の魔術では傷一つ負うことのないルーナに対しては効果は見込めないだろう
    狙いはーーー時間稼ぎ

  • 187二次元好きの匿名さん24/01/16(火) 19:13:15

    保守

  • 188二次元好きの匿名さん24/01/16(火) 23:10:41

    ほっしゅ

  • 189二次元好きの匿名さん24/01/17(水) 08:11:05

    ほしゅ

  • 190千界樹の記録24/01/17(水) 12:13:20

    「このまま時間が経てば聖杯が発動し、私の悲願が現実となる!最早止める術は無い!」
    「……っ」
    イザークの宣言と共に放たれるガンドの弾幕を凌ぎながら凌我は舌打ちをする。しかし、同時にこの状況下でイザークを討つ術がないと言うのも理解している
    あと一つ。何か一つ攻撃の手段があればーーーそう考えるが、万全の体制を整えてこの状況に臨んだイザークとこれまでの聖杯戦争に加え、隔離された空間での死闘によりこちらは満身創痍も良い所。手札の悉くを出し尽くしてしまっている
    現状、拮抗状態でかつ僅かながらでも押しているだけでも奇跡的な戦況であるのだ
    そして、死に体の身に鞭打っての戦いも当然限界がある。と言うよりは限界を超えて尚身体を戦闘に酷使しているのだから、それがいつまでも保つ筈はない
    当然、時が経てば経つほど天秤はイザークの方へ傾く。彼に取っては凌我達は必ずしも斃す必要はなく、天の杯が発動する迄の時間さえ稼いでいれば良いのだ
    リスクを冒してまで此方を潰しに来ることはないだろう
    そこが付け入る隙であるが同時にそこ以外に隙がない。このまま時間ばかりが徒に過ぎていくーーーそんな展開に持ち後れたら詰み
    しかし、それが分かっているものの、状況を打破する術が無いのだ
    「どう転ぼうと私の勝ちだ!例え今私を倒そうとも聖杯は最早止まることはない!」
    嘯くイザークの瞳に嘘の色は微塵もない。事実としてそうなる様に動いているのだろう
    残された手はただ一つ。聖杯を破壊する事のみーーー
    だが、その為にはイザークが立ちはだかる。恐らく自らが死しても此方を止める決意を持ってこの場に立っている
    イザークに油断はなく、同時に不退転の覚悟を持って立っている。サーヴァントたるシグルドは当然、この場に集った全ての存在に彼は最大限の警戒を持っている
    故にその護りは固く、凌我達4人係で仕留めきれない鉄壁を誇っていた

    「ーーー失敬」

    イザークは自身の身に起きたことが一瞬、理解できずにいた。何しろ、彼等以外の全員にとっても慮外の事だったのだから
    彼の胸元から生える緋色に染まった貫手。魔術師の心臓を正確に貫いたあまりにも鮮やかな不意打ちを目の前にして、沈黙が場を支配する
    「ーーーカハッ」
    熱い。最初の感想はそんなものであった。胸を伝い流れ溢れる血液が地面を濡らす。次いで感じたものは鈍く、鋭い痛み

  • 191二次元好きの匿名さん24/01/17(水) 12:14:30

    こ、言峰…やっぱお前言峰だわ…

  • 192二次元好きの匿名さん24/01/17(水) 18:04:03

    轟音を聞いて駆けつけたのかな?
    スレ主、そろそろ次スレを立てた方が良いと思うよ

  • 193二次元好きの匿名さん24/01/17(水) 22:00:40

  • 194二次元好きの匿名さん24/01/18(木) 08:10:36

    朝保守

  • 195スレ主24/01/18(木) 08:13:08

    いつの間にかもう埋まりそう……
    すいませんがスレ主は徹夜で仕事を敢行しており帰宅がかなり遅くなるので次スレは今夜になると思います……
    期待して待ってくださってる方には申し訳ありませんがお待ちくだされ……🙇‍♂️

  • 196スレ主24/01/18(木) 19:12:17
  • 197二次元好きの匿名さん24/01/18(木) 19:12:33

  • 198二次元好きの匿名さん24/01/18(木) 19:13:30

    スレ立ておつです

  • 199二次元好きの匿名さん24/01/18(木) 19:13:46

    埋め

  • 200二次元好きの匿名さん24/01/18(木) 19:14:07

    うめ

オススメ

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