- 1二次元好きの匿名さん22/01/07(金) 23:01:15
寒い風か吹きつつ、雪がちらちらと降る、夜のグラウンドで一つ結んだ髪がゆれ動きながら、走っているアドマイヤベガの姿があった。
本番のレースには、例えレース当日、気温が低くてても走る場合があり、今日は寒さのなか走るトレーニングも兼ねて夜トレーニングを行っている。
「ふうっ……、ふうっ……はぁぁぁーー」
息を吐くと白い煙が空へと消えていく。毎日走ったりしているものの、冬の夜空のグラウンドはやはり寒かった。だが、これもレースで勝つため、最後に私は気合いを入れて走りぬけた。
「お疲れ様、アヤベさん。今のタイムは良かったよ。」
そう言ってトレーナーはタオルを渡してきた。
「ありがとう。でもまだまだ……。もっと練習して速くならないと……」
「そうだね。今日はこれであがろう。」
この日のトレーニングを終えて、トレーナーと一緒に片付けをしたあと、
「はい、アヤベさん、これで暖まろう。」
トレーナーがバックから水筒を取り出し、紙コップに湯気をたてながらお茶を入れ、それを私に渡す。それを受け取って一口飲むと暖かい味が広がり冷えた体が温まる。
「ありがとう。あったかい……」少し微笑んで答える。するとトレーナーも嬉しそうな顔をした。 - 2二次元好きの匿名さん22/01/07(金) 23:02:06
「今日は雪が降って、星空が見えないのは残念……」
私は空を見上げながら呟いた。
「うん……。じゃあ、今度休みの日に天体観測でも行こうか?」
その言葉を聞いて、思わず顔を上げる。
「え?いいの……?トレーナーは大丈夫?」
トレーナーは笑って答えてくれた。
「ああ、もちろんさ!俺だってたまには休みたいんだぞ!」
冗談めいたことを言いながら、笑いかけてくれる。そんな彼の優しさが胸に染みる。
「約束よ。私楽しみにしてる……」
私は少し照れながら返事をし、持っていた紙コップのお茶を飲み干した。
約束の日、生徒会長と理事長に頼んで学校の屋上で天体観測をすることに。冬の夜空は寒く、トレーナーは、水筒にはちみつ湯を持ってきて、それを紙コップにそそぎ、アヤベさんに渡す。
「綺麗だな……」
トレーナーが呟き、それにつられて上を見ると満天の星空が広がっていた。 - 3二次元好きの匿名さん22/01/07(金) 23:04:13
「ほんとう……」
私は素直に感動していた。そしてしばらく二人で星を見ながらはちみつ湯を飲む。
こんな風にゆっくり過ごす時間なんてなかったからなんだか不思議な感じだった。
ふと横にいる彼を見てみると、目を閉じて何か考え事をしている様子だったので声をかけてみた。
「どうかしたの…?トレーナー」
彼はゆっくりと目を開きこちらを見たあと、笑顔で話し始めた。
「いやぁ、こうやって二人で過ごすのもいいなって思ってね」
確かにいつもトレーニングで一緒にいるけど、こうしてゆっくりする機会は久しぶりだった。
「そうですね……、なかなかこういう時間は作れないからね」
私が同意しながら返す。すると彼が急に立ち上がって、私の方を向いて言った。
「ねえ、アヤベさん、来年も絶対GI勝って、URAファイナルズ優勝しよう!!」
いきなり大声で言われたので驚いたが、私もその気持ちは同じなので力強く答えた。
「そうね。勝つわ。負けるのは悔しいもの………」
それからまた、二人で並んで座って空を見る。
いつの間にか寒さはなくなっており、体も心もあったまっていた。