【SS】エアグルーヴとはんぶんこ

  • 1二次元好きの匿名さん23/12/15(金) 20:35:42

    「なぁ、エアグルーヴ。今夜の鍋は豆乳とキムチならどっちがいい?」

    「私なら別にどちらでも構わないが、貴様が食べたい方を選べ」

    「…そっか。じゃあ、豆乳で。いや〜、1人暮らしだと、鍋のスープの元を全部使うのが難しくてな。助かるよ」

    「……別に貴様の家で鍋をするのは、今回だけというわけじゃないだろう。次回のことも考えて、キムチスープも買えばいいだろう」

    「......! それじゃ、次、やるときはキムチ鍋にしようか。楽しみのが増えたよ、ありがとう、エアグルーヴ」

    「……ふっ、礼など不要だ。だいだい、貴様が私に鍋を誘っているのに、私に礼を言ってどうする。たわけ」

  • 2二次元好きの匿名さん23/12/15(金) 20:36:18

    北風が吹くようになって、昼間も寒くなってきた冬。
     私は午前中は、生徒会の仕事や花壇の手入れをした後、午後にはトレーナーの部屋に訪れていた。
     
     トレーナーの部屋に来た理由、それは私のストレス発散方法の掃除の為。
     この時期は寒いから、静電気の発生と布団などの布製品の使用頻度が高くなることから、ホコリが溜まりやすい。
     案の定、この部屋もホコリが溜まっており、実に掃除のしがいがあった。
     
     後は、冬は気温が低いこともあって、食材がいたみにくい。
     そのため、冷蔵庫の掃除をするのも最適な季節だと言っていい。
     だから、冷蔵庫の掃除をした。掃除は難なく終わったが、肝心の冷蔵庫の中身はほとんど空っぽ。
     
     冬場は体調を崩しやすいのだから、しっかりとした栄養管理が必要だというのに、このたわけは……。
     掃除をした後に、冷蔵庫の有り様を説教してから、二人で買い物をする運びになった。

  • 3二次元好きの匿名さん23/12/15(金) 20:37:30

    トレーナーは何をもってか、私の労いも兼ねて、一緒に鍋したいと言い出した。
     確かに鍋なら、野菜も取れるから、栄養の面でも理にかなっているだろう。
     私はその提案を受けて、食材を買いに行ってるところだ。
     
    「肉は何しようか、豚肉、鶏肉?」

    「今日は豚肉だ。豚肉は疲労回復に良いと言われている」

    「あー、そうだったな。うん、豚肉で」

     そんな、鍋の具材を決めながら、歩いていると、目の前にコンビニが。

     「あっ、エアグルーヴ。ちょっと、コンビニに寄っていいか」
     
    「コンビニ?ああ、別に構わないが」

    「すぐ、終わるから待ってて」

     そのままトレーナーは、コンビニに入っていった。何か買い忘れでもあったのか?  そんな疑問を持ちながら、私はコンビニの前で待つことに。
     そして、トレーナーはビニール袋を持って、直ぐに出てきたのだが、

     「エアグルーヴ、少し小腹が空かないか」

     そう言われて見れば、掃除をして、身体を動かしていたからか少し腹が空いている気がする。

  • 4二次元好きの匿名さん23/12/15(金) 20:38:41

    「確かに、少し小腹が空いたな」

    「そうか、俺も。それで、肉まんを買ったのだげどはんぶんこしないか」

     トレーナーはそう言って、コンビニ袋から肉まんを取り出す。

    「はんぶんこ?」

    「ほら、こうして、半分にしたら」
     
     そう言いながら、トレーナーは肉まんを真ん中で割った。
     そして、ふーふーと、息を吹きかけて、冷ましながら、そのひとつを渡してきた。
     
    「貴様はそういう気遣いはできるのだな。ありがとう」

     お礼を言って、私は渡された半分になった肉まんを受け取った。
     
     晩御飯のことを考えて、半分なのだろうか、それとも、美味しいから分け合いたいのだろうか。まぁ、どちらでもよい。まったく、こういった所は気が利くな。

  • 5二次元好きの匿名さん23/12/15(金) 20:39:55

    肉まんの断面からは、湯気と美味しそうな肉の塊が見え、豚肉の香りが漂ってくる。

    「では、早速いただくとしようか」
     
     そう言って、私は一口囓る。齧った瞬間、ジューシーな豚肉から肉汁があふれ、豚肉の旨味が口いっぱいに広がる。
     
    「うまいな、トレーナー」

    「ああ、美味いな」
     
     私たちはそう言いながら、あっという間に肉まんを平らげた。
     美味しいものを分け合って、食べて、感想の共有。貴様としても、案外、悪いものではないことに私は気付く。
     
    「ご馳走さまでした。さて、買い物の続きに行くか」

     そう言って私たちはまた歩き出した。今度は他愛のない会話をしながら。

     ああ、今夜の鍋は私にとっても、少し楽しみになってきた。
     そんな、小さな幸福を胸に抱きながら、私たちは、今夜の鍋の具材を買いに向かった。

  • 6二次元好きの匿名さん23/12/15(金) 20:45:43

     エアグルーヴの冬ボイスから、冬のちょっとした日常を書いてみました。

  • 7二次元好きの匿名さん23/12/15(金) 20:48:55

    はんぶんこって素敵な言葉
    ご馳走様でしゅ…
     🎀
    J( ˘ω˘)し

  • 8二次元好きの匿名さん23/12/15(金) 21:00:54

    何気ない日常から味わえる幸せって良いよね…
    素晴らしい作品ありがとう…

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