- 1二次元好きの匿名さん23/12/16(土) 20:00:08
この季節の空はいつも凍えている。
晴天の青、曇天の灰、雨天の黒。そのどれもが寒色で、そこから吹く風はその色のように寒さを与えてくる。はあ、と吐いた溜息は白く、空気と混ざって空の一部になる。
駅のホームに降りて、しばらく歩く。階段の近くは人が多い。つまり、席に座れないかもしれない。片道約二時間を立ったままは、後々のことを考えると避けておきたい。突風と共に電車がやってきて、私のコートの裾を揺らす。吸い込まれるように、空いている席へと座る。人は少なかった。
イヤホンをつけて、配信されたばかりのサウンドトラックを流す。トラック2──バッグワームを翻し踊る彼らにぴったりの曲だ。いつかあの子たちや彼らにも専用の曲が与えられて、明るく激しく鮮烈に踊るのだろうか。生きる理由に働く理由、未来への希望がまた一つ増えていく。
車内にはだんだんと人が増えてくる。座っていると視点が低いせいか、各々の鞄がよく見えた。ベルトと鞄を繋ぐ金具に取り付けられたアクリルキーホルダー、リュックサックの表面をマーブルに彩る缶バッジ、ビニール越しに外を眺めるぬいぐるみ。十人十色の異なる在り方は、しかし一木一草ジャンプ作品のキャラクターという点で同じだった。推しをカタチにする仕事の偉大さを感じて、足元の暖房も相まってか身も心も温かくなる。それらを享受する私たちは、カタチとなった推しを手にすることこそが、仕事だ。
ブックカバーをかけてきてよかった、と思う。鞄から取り出した本はその表紙さながらに美しく、気が狂いそうなくらいに淫靡だからだ。映画化もされていたけれど、私は文字の方が好きだった。地の文をなぞる声、その世界の住人、描写される光景。目で咀嚼した文章をすべて、脳内で思うままに消化できる。想像できる。主人公の秘事を暴くように頁をめくった。めくり続けた。やがて目的の駅まで二駅、というところまで来て、私はしおりを挟む。少女──香取葉子が、軽やかに文字の間を舞う。
香取葉子。香取葉子。ご飯を食べるとき、ショーウィンドウを眺めるとき、いつだって頭の中には香取葉子がいて、だからこの本の主人公が動いている様を思い浮かべたとき、その姿は香取葉子のものになっていた。そんな見目麗しい香取葉子の主役みたいな顔が、あの告知画像で花のようにほころんでいた。
手に入れたい。手中に収めたい。コートのポケットに忍ばせたもちのように。 - 2二次元好きの匿名さん23/12/16(土) 20:04:26
でたわね
- 3二次元好きの匿名さん23/12/16(土) 20:05:28
- 4二次元好きの匿名さん23/12/16(土) 20:12:58
東京は降りるたびに圧倒される。限りなく広がる構内と、所狭しとひしめく人の群れ。どう歩けばいいのかと不安になりながらも歩を進める。右も左も同じような光景ばかりだ。
目指すは京葉線、香取葉子と同じ色を帯びた路線。構内図を頼りにふらふらと歩いていると、足元に「京葉線」と書かれたパネルと矢印が現れた。それは方向音痴の私にとって、地獄に垂らされた一本の銀糸のようだった。 - 5二次元好きの匿名さん23/12/16(土) 20:17:58
おお、ジャンフェス乙
- 6二次元好きの匿名さん23/12/16(土) 20:26:06
京葉線は地下にある。長い通路を歩き、そこへ、底へと降りていく。こんなに広大な空間が地面の下にあったのか、まるでメトロポリスのようだと感嘆していると、横に極彩色が現れた。七色のステンドグラス。気分屋な香取葉子の心のようだ。
スマホの乗り換えアプリに気を取られて下ばかり向いていた。顔を上げて周りに目を向けると、人混みの中にちらほらと強者の気配がした。
フリルの付いた可愛らしいカバン。童話のお姫様さながらにメルヘンなそれは、持ち主が身じろぎして揺れるたび、推しによる一糸乱れぬファランクスを見せる。堅牢かつ強固なその様は、持ち主の方が抱く推しへの愛も同じくらい固く強いものなのだと知らしめるには十分だった。
スマホをしまい、後ろをついていく。ここまできて途中の夢の国で降りるはずがない。ビニールの向こうで陣を組む三輪くん達の鋭い瞳が、そう物語っている。 - 7二次元好きの匿名さん23/12/16(土) 20:33:25
じゅうぶん本人証明はできてるよ！
- 8二次元好きの匿名さん23/12/16(土) 20:37:22
帰ってきたもち！
- 9二次元好きの匿名さん23/12/16(土) 20:53:31
烏丸「京」介、香取「葉」子で「京葉線」になるじゃないか、という発想が今になって出てきました。
最寄駅に海浜幕張とあるように、京葉線の雰囲気は地下を蠢く虫やビルの間を縫う糸のようではない。東京湾をなぞるように進む車窓からは、海と倉庫がよく見えた。
眼前に広がる澄んだ青色。雲の白と晴天の青が混ざったような淡い空と、太陽の光が涙さながらに点々ときらめく水面、その境界線が溶けて一つの色が生まれている。いつか飛行機の窓から眺めたような、遠く遠く広がる景色。レールの上を流れているだけなのに空を泳いでいるようだった。
一駅一駅近づくたびに、車内の空気が変わる。身に纏う服、手に持ったスマートフォンのケース、それに触れる爪、果ては髪型や髪色まで、「推し」と共にある人々が乗り込み、集ったそれらが一つの駅で放たれた。背中に浴びた電車の発車メロディが開戦を告げる。
- 10二次元好きの匿名さん23/12/16(土) 21:09:16
午前入場のチケットに敗れただけではなく、日曜日に予定が入ったため、土曜の午後──ステージもなければ物販も買えるか分からないことを承知で、この戦場にやって来たのだった。
13時。昨日までの寒さが嘘のような暖かさを帯びた日差しが蛇行して並ぶ私たちを舐めていき、唾液のように額から汗が伝う。入口までは遠い、あまりにも遠い。あと何回角を曲がって折り返すのだろう？湧き出した負を振り払うように、一直線に前だけ向いて、逃げる選択肢を捨てる。
少し前には赤い二本のツノがひょこりと顔を出していて、隣にはサーモンピンクの三つ編みが人混みの隙間から見える。こんな暑いのにスーツ姿とは、感服するほかない。すれ違った前の列の人は、来年のアニメの話をしていた。漂白されたように真っ白なその上着の下は、死を思わせる黒色だ。黄色、赤色、青に白。列の中に散見されるカラフルなジャージだけ見れば、これから先の建物で行われていることを勘違いしそうだと変な考えが浮かんで、笑みが溢れる。
列の様子を眺めながら約一時間、荷物検査を終えた先に待っていたのは、よく見慣れた笑顔だった。 - 11二次元好きの匿名さん23/12/16(土) 21:16:11
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- 12二次元好きの匿名さん23/12/16(土) 21:24:03
香取葉子、香取葉子が欲しい。その気持ちに火がついて、どんどんと足が進む。展示ゾーン1の奥かつ角、つまり入口から直線距離で最長の場所にあるエンスカイさんのブースに並んだ。
壁の上部に配置されたモニターには番号が記載されており、その横には対応する商品画像が「完売情報」のセンセーショナルな四文字と共に表示され、時折アナウンスが入り、番号が追加される。こんなに推しが表示されていてほしくないモニターも珍しい。受験番号の逆を行っている。列から抜けてまた列。午前入場であれば、またさらに列に並ぶはずだ。オタクは参勤交代も難なくこなしそうである。
商品のリストを受け取り、「アクリルスタンド 香取葉子」の横に迷わず縦線を書く。
壁にずらりと並んだブロマイドや新商品、森を模した展示に潜むマスコットを眺めながらレジまで待つ。ついでに3月発売のブロマイドコレクションの横にいた烏丸くんと写真を撮ってあげた。心なしか満足そうだ。 - 13二次元好きの匿名さん23/12/16(土) 21:26:18
- 14二次元好きの匿名さん23/12/16(土) 21:29:55
他に欲しかった物販は整理券の配布が終了していたため、行きの電車でワーステのサウンドトラックを聴いた熱のままにマーベラスさんのブースに向かった。出迎えてくれた嵐山さんとの写真を撮る。華ちゃんへのお土産になるだろう。
- 15二次元好きの匿名さん23/12/16(土) 21:40:22
思っただろう、「香取葉子とワーステ関係なくね？」と。だから来たんだ、オレが。早く出るといいな、香取も。出るのはガトリンだけどな、カトリンより早く。
ブースでは展示されているぞ、荒船の衣装が。じっくり眺めたりしてくれ、写真に収めたり。他にもあるぞ、衣装は。オレが思うにイーグレットだな、オススメの見どころは。見比べてみてくれ、東さんのアイビスと。ちなみに撮り損ねたらしい、こう言っている1は。失念していたんだ、興奮して。こうなるなよ、みんなは。 - 16二次元好きの匿名さん23/12/16(土) 21:43:05
- 17二次元好きの匿名さん23/12/16(土) 21:50:55
今度は合ってるな、ピントが。𝕋𝕖𝕥𝕤𝕦𝕛𝕚 𝔸𝕣𝕒𝕗𝕦𝕟𝕖に。眩しいぞ、笑顔が。
他にもたくさんいる、ブースには。撮っていってくれ、写真を。いいんじゃないか、ツーショットも。 - 18二次元好きの匿名さん23/12/16(土) 22:10:20
- 19二次元好きの匿名さん23/12/16(土) 22:12:53
- 20二次元好きの匿名さん23/12/17(日) 01:22:36
久しぶりに浴びる怪文書のなんと心地よいことか
- 21二次元好きの匿名さん23/12/17(日) 08:04:37
師走の風を浴びて凍えた肌に染み渡る温かさの怪文書、ちと熱いくらいが心地よい
- 22二次元好きの匿名さん23/12/17(日) 10:18:18
かわいい
- 23二次元好きの匿名さん23/12/17(日) 12:40:45
もちたち、お土産だよ
- 24二次元好きの匿名さん23/12/17(日) 20:55:07
師弟だ
- 25二次元好きの匿名さん23/12/17(日) 22:03:45
香取葉子が三つ。カトリニティだ。私のくじは無事に終わった。財布の被弾も軽傷で済んだ。
- 26二次元好きの匿名さん23/12/18(月) 08:07:02
かわいいね香取葉子
今のところご機嫌かしら - 27二次元好きの匿名さん23/12/18(月) 12:36:09
香取葉子にポスターを見せた。しばらく興奮したあと、ごろりと転がり動かなくなった。
- 28二次元好きの匿名さん23/12/18(月) 20:58:35
カトリニティは草
かわいいな - 29二次元好きの匿名さん23/12/18(月) 21:12:42
スレ主のおかげでもちマス欲しくなったけど、どこにも居なくて泣いた
- 30二次元好きの匿名さん23/12/19(火) 06:03:13
文章怖いのに写真が良い
- 31二次元好きの匿名さん23/12/19(火) 07:44:39
- 32二次元好きの匿名さん23/12/19(火) 15:35:55
情報ありがとうございます！めちゃくちゃ助かります……是非立ち寄ってみようかなと思います！
- 33二次元好きの匿名さん23/12/19(火) 21:20:58
人混みの中では冬の寒さが嘘のようだった。大通りには屋台が立ち並び、やや音の割れたJ-POPや発電機の唸り声が人々の喧騒に加わって、異様な響きを生み出している。私はそこを冷やかすように漠然と歩いていた。
祭りがあると知っていれば外で夕飯を食べてくることも無かったし、もちをもう一人連れてきただろう。しまったな──腹が満ち足りたことによる身体の暖かさが、少しばかりの後悔と共に巡る。
ふと足を止める。目の前のものは、あかくてまるい。香取葉子の頭のようだ。夕飯は食べても食後のデザートはまだ食べていなかった。ちょうどいい。一つ手に取り、店主に代金を支払う。鞄に入れられるよう、上に袋をつけてくれた。
あかくてまるいものが二つ、鞄を開けばころんとそこにある。取り違えて噛まないように気をつけて食べなければ。 - 34二次元好きの匿名さん23/12/20(水) 05:54:52
りんご飴…
- 35二次元好きの匿名さん23/12/20(水) 14:10:56
香取葉子に遅めのお昼ご飯をあげた。ほのかなチーズの風味が気に入ったようで、もぐもぐと食べている。とりまるの肉は美味いかと聞くと、暫し固まって、それからふるふると震え出した。ただ商品名を言っただけだというのに、香取葉子はなにを考えたのだろうか。
- 36二次元好きの匿名さん23/12/20(水) 22:03:27
と、とり丸ー！
- 37二次元好きの匿名さん23/12/21(木) 05:57:54
とりまる（チーズ）
- 38二次元好きの匿名さん23/12/21(木) 08:39:51
シンプルに美味そう
- 39二次元好きの匿名さん23/12/21(木) 16:29:35
＞ただ商品名を言っただけだというのに
嘘だ！ 絶対わざとだ！
- 40二次元好きの匿名さん23/12/21(木) 22:33:33
こんな商品あるの初めて知った
- 41二次元好きの匿名さん23/12/21(木) 22:54:31
来訪者
- 42二次元好きの匿名さん23/12/22(金) 01:25:54
写真が怖いんよ
- 43二次元好きの匿名さん23/12/22(金) 06:02:55
なんか来てる
- 44二次元好きの匿名さん23/12/22(金) 15:20:43
もちが4つとパンが3つ。
- 45二次元好きの匿名さん23/12/22(金) 21:14:14
- 46二次元好きの匿名さん23/12/23(土) 00:08:10
PC見てる
- 47二次元好きの匿名さん23/12/23(土) 00:55:12
かぶりつきかわいいね
- 48二次元好きの匿名さん23/12/23(土) 10:20:03
- 49二次元好きの匿名さん23/12/23(土) 19:19:42
この「欲しいものに手が届かない感じ」に胸がギュッとなる
- 50二次元好きの匿名さん23/12/24(日) 00:52:43
ああ、一人じゃ食べられないのか…
- 51二次元好きの匿名さん23/12/24(日) 09:51:01
ジタバタ、ジタバタ…
- 52二次元好きの匿名さん23/12/24(日) 18:19:23
この日のために仕込んだ肉を唐揚げにした。もちが食べても余りある量だ。たくさん食べてもっとまるいもちになるんだよ。
- 53二次元好きの匿名さん23/12/24(日) 18:21:08
えーーーーー！！！！すげえーーー！！！！
すげえけど、発言が捕食者なんよ。 - 54二次元好きの匿名さん23/12/24(日) 23:01:23
友人が部屋の掃除をしていたらイコさんがニコも出てきたらしく、クリスマスプレゼントにイコさんをいっこ添えてくれた。赤い服も着ているし、イコさんはサンタさんなのかもしれない。イコサンタ。
走れもちよ、風のように。香取葉子、もぎゃるもぎゃる。雪玉のように丸いもちをソリにして、イコサンタが三門の空を駆ける。イコサンタよ、疾く征きたまえ。プレゼントを配り終えたとき、見返りを求めない精神とは何か、ひいてはモテることとは何かに気付くだろう。 - 55二次元好きの匿名さん23/12/25(月) 06:05:11
イコさん！？
- 56二次元好きの匿名さん23/12/25(月) 10:13:09
舞台裏。ぶかぶか。
- 57二次元好きの匿名さん23/12/25(月) 19:26:14
ここんとこジャクソンと仲良しだね（って言うともぎゃりそうだけど）
- 58二次元好きの匿名さん23/12/25(月) 19:30:18
昨日の残りの唐揚げを再び食べた。正直なところ揚げ過ぎた感が否めない。聖夜にチキンを喰らう家庭は無数にあれども、自分で作っておいて自分を苦しめているのは私くらいのものだろう。ここは若い子に食べてもらおう。育ち盛りなんだからもっと食え、山のように食えと、正面と隣から視線を浴びながら帯島ちゃんが肉を眺めている。
香取葉子もじっと視線を投げかけているが、香取葉子は昨日たくさん食べたのでお預けとする。 - 59二次元好きの匿名さん23/12/26(火) 03:19:55
他の人も食べないと帯島ちゃんが遠慮してしまう
- 60二次元好きの匿名さん23/12/26(火) 13:34:14
香取葉子にいっぱいの愛を
- 61二次元好きの匿名さん23/12/26(火) 22:46:11
かわいい
- 62二次元好きの匿名さん23/12/27(水) 05:08:17
深夜の飯テロを敢行しようとしたが、香取葉子と肉を写そうとしても香取葉子がすぐに肉を食べてしまうため飯テロらしい写真が撮れていないことに気がついた。香取葉子はもちなので、食べ物といえば食べ物かもしれない。
網で焼く点において、焼肉ともちは同義である。つまり焼肉を食べているとき、私はもちを食べている。そして香取葉子はもちである。私は香取葉子を食べている。 - 63二次元好きの匿名さん23/12/27(水) 08:48:30
うーん猟奇猟奇
- 64二次元好きの匿名さん23/12/27(水) 17:27:20
焼き餅か…
- 65二次元好きの匿名さん23/12/27(水) 22:39:57
- 66二次元好きの匿名さん23/12/28(木) 05:57:35
太刀川！！