【二次創作SS】金色の、優しい王様たち(Fate/stay night×金色のガッシュ!!)

  • 11/1821/09/02(木) 08:51:34

     ――ロンドンの、公園のベンチでかつての王は佇んでいる。

     衛宮士郎と遠坂凛と共に。現界したままに終えた聖杯戦争。あれから一年。
     士郎は凛の弟子として。セイバーは凛のサーヴァントとしてイギリスの地を踏んだ。かつての王の故郷。

     郷愁の感覚を楽しんでいられたのはせいぜい最初の一ヶ月程度だった。
     国を救うために身を投じた聖杯戦争。縋った聖杯の正体は望んだモノとはまったくかけ離れた災厄そのもので。
     それでも自らの誇りに従い、戦いを収めるために奔走する士郎と凛の一助にはなれたけれど。

     ――愚かな王が辿った愚かな結末はそのままで。


     だから、王は戻った故郷での日々を持て余していた。朝、時計塔に通う士郎と凛を送り出し、家での雑務を片付ければそれ以外の時間は自由だ。
     魔術の暴走や怪物の発生やらで、マスターである凛がセイバーの力を必要とすればその限りではないけれど。事件が起きなければ平和な日々。 

     購入したランチパックを膝に。お昼どきの公園から見えるひとびとの日々の営み。賑やかな笑顔。王は思う。

     ――最後まで、守りたかった。

  • 22/1821/09/02(木) 08:51:59

     魔術留学の権威の地とは言え、遠い過去の亡霊である自分が、ロンドンで何か新しい向上を目指す気になれるはずもなく。
     ただ、士郎と凛の未来を守る一助にだけなれれば良い。彼らの成長を見守りながら、日々を穏やかに過ごしていければと思っていた。
     だから、すでに強い心を持ち、いまを歩んでいるふたりが、愚かな王にとってはまぶしすぎて――

    「ウヌ、お主、どうしたのだ?」

     どこか、現代にはそぐわない堅い口調。けれど声音はやわらかな幼いいろで。
     視線を向けてその姿を捉えた王は軽く目を見開く。

     きんいろの髪。おおきな瞳のちいさな男の子。

     ――そのいろがまぶしすぎて、ときどき穏やかではいられなくなる――

     
    「……私、ですか」
    「苦しいところがあるのではないのか? お腹が痛いとか」

     少年から感じるのは奇妙な気配。きっと、ただの子供ではない、ふつうではない存在感。魔術と関わりがあるのかどうかまでは、わからないけれど。
     眉根を下げた、心配そうな気遣い。それだけで察せられる、打算の無いまっすぐな性根。
     
     ただの人間ではない彼は、この人知を越えたサーヴァントという存在のもとへ。
     ただただ優しい心で、近くに寄って来てくれただけに過ぎなかった。

  • 33/1821/09/02(木) 08:52:28

    「ありがとうございます。でも、お腹は、痛くはないですよ」
    「じゃあ、苦しいのか?」
    「……いえ、苦しくも、ないのです」

     笑顔の返答と、納得してくれない男の子。
     この郷愁と後悔を、苦しい、とひとことで表すのはきっと当てはまらなくって。

    「ウヌゥ……ならば難しい大人の悩みなのだ」

     難しい大人の悩み。その言葉はいまのセイバーにきっとぴったりで。


    「そうですね、難しいのは確かです」
     自分で出した結論に、自分で納得してくれてしまった男の子に笑いかける。
    「ウヌゥ……」
     そんな大人に、どのような言葉を続けようと思ったのか。呻いた男の子は唐突に、大きくお腹を鳴らした。
     お昼どき、空腹の音。
    「そういえば、まだお昼ご飯を食べていなかったのだ!」
     とんでもないことに気づいてしまったと言わんばかりの男の子。
     セイバーは膝の上のランチパックを示して。
    「いっしょにどうですか? 私もこれから食べるところでしたので」
    「よいのか?」
    「ええ、一息ついたら、貴方の話を聞きたいです」
    「ありがとう! お主、良い奴だの!」

  • 44/1821/09/02(木) 08:52:52

     屈託なく隣に腰を下ろすきんいろの男の子に、金色の王は微笑する。
    「私はセイバーと言います、あなたの名を、尋ねても良いでしょうか」
    「セイバー……そんなかっこいい名前もあるのだ……?」

     男の子は妙なところに関心を示したあとで。その名を王に告げた。

    「――私の名はガッシュ! ガッシュ・ベルと言うのだ!」
    「ガッシュ・ベル。貴方も、とても良い名ですね」

     昼下がりの日差しのもと、金色のふたりは笑い合う。

  • 55/1821/09/02(木) 08:53:11

     常人より大食漢の自覚はあるセイバーが購入したランチパックはその少女の身体には大きなもので。
     子供に分けるくらいならあまり変わらないと思っていたけれど。
     けれどたくさんあったサンドイッチはあっという間になくなってしまって。

    「ウヌ……とてもおいしかったのだ……」

     青空のすがすがしさ。日差しの柔らかさ。ほどよい満腹感の余韻。
     穏やかなひとときであることを認めて、セイバーもガッシュに頷いてみせる。

     その心地よさに浸りながらも、だから、王は思ってしまう。
     このようなしあわせな時間を、私が過ごしていてもいいのかと。
     幸福と悔恨の、二律背反。

     だから、ガッシュ・ベルは王へと問いかけた。

    「――セイバーは、どうしてさみしそうに笑うのだ?」

     王は直感する。
     この男の子に嘘をついても、ずっと食い下がられるのは目に見えていて。

    「私は、寂しそうに、見えるでしょうか?」
    「ウヌ、悩み事なら私が相談に乗ろう! お昼ご飯のお礼なのだ!」

  • 66/1821/09/02(木) 08:53:33

     明るく、まっすぐに断言するそのすがたかたちから感じられる強さ。それはこの子供の生来の素質なのだろうか。
     子供に相談したところで、どうにかなることでは、あるはずがないのだけれど。
     子供に寄りかかるなんて、かつての王として、あるまじきことだったけれど。

     どういうふうに話せば伝わるのか迷いつつ。セイバーは言う。

    「……そうですね、ではすこしだけ、聞いて頂けるでしょうか、ガッシュ・ベル」
    「ウヌ、聞かせてもらうのだ」

     胸を張って、ガッシュはセイバーを見上げた。

  • 77/1821/09/02(木) 08:53:49

    「――簡単に言えば、いつまでも消えない、大きな後悔があって。それをやり直したかったのです」
    「やり直す?」
    「はい、大勢の人に迷惑をかけてしまった私の過去を無かったことにできる。そんな手段があると飛びついて。
     懸命に戦って。けれど最後に、その手段は偽物だと知ってしまった」

     感情を押し殺すように、王は瞑目する。

    「仲間と共に、その偽物を破壊して。戦いは終わりました」

     仲間と共に戦った。その言葉にガッシュはぎゅっと腕を握って。けれど目をつむっている王は、その変化には気づくことはなく。

    「――仲間、いえ、いまでは友人と申しましょうか。彼らはこのロンドンで新しい学びの日々を送っているのですが。
     私はふたりとはちがって、やりたいことがなくて。なにをしていいのかもわからなくて。
     けれど、過ちを犯した私が、こうして日々を漫然と過ごしていることも、きっと許されることではなくて。
     ――だから、どうしようもなく、苦しい」

     苦しいとひとことで表せてしまえるのは。郷愁と悔恨ではなく。現状の自分。
     なるほど言葉にして整理すると、その納得で、すこし心が穏やかになる。
     そういう機会はきっと自分に必要だったのかも知れないとセイバーは思う。

     ――その相談先が、会ったばかりのちいさな子供でなければ。

     そんな無様な行為にハッと我に返って、セイバーはガッシュを見た。彼は腕を組み、真剣に考え込んでくれていて。

  • 88/1821/09/02(木) 08:54:07

    「ガッシュ・ベル、だいじょうぶです。忘れてください――いいえ、真摯に聞いてくれた貴方に、感謝を。
     無理に答えてくれなくとも、聞いてくれただけで、うれしい」
    「ウヌゥ、しかし……」
    「ほんとうに、聞いてくれる相手になってくれた、それだけで、十分なのです」

     だから、そんなことよりも。

    「貴方の話が聞きたい。ガッシュ。たとえば将来、どんな大人になりたいのですか」

     亡霊の過去のことなんかよりも、今を生きる子供の未来を話したい。
     そんな気持ちで尋ねた王に。

    「ウヌ、将来、というほど先の話は考えられぬのだ。
     いま、私は――」

     きんいろの男の子が返した言葉は。

    「私は、王様を目指している」

     ――亡霊の過去を揺り返すものだった。

  • 99/1821/09/02(木) 08:54:24

     王を決めるための戦いに、参戦している。
     ガッシュ・ベルは金色の王に、そんな夢物語のような内容を語った。

     魔物たちの世界で、千年に一度、王を決めるための戦いが開かれるという。
     参戦するのは、その子供たち100名。各々はこちらの世界の人間をパートナーに選び。
     この世界で最後の一組になるまで戦い続けるのだと。

    「信じてはもらえないかもしれぬが、本当の事なのだ」

     セイバーはすぐに首を振って、断言する。

    「いいえ、信じます、ガッシュ・ベル。貴方は嘘などついていない」

     望みを手に入れられる勝利者は一人だけ。そのために他者を全て排除する。そんな構図を、王は既に知っている。
     相手全てが怨敵であればそれはそれで戦いに没頭できるかもしれない。
     しかし参加者全員がそうであるわけでは無い。なんの恨みもない他人とも戦い、傷つけ、蹴落とさなければならない。
     ――それに必要な覚悟と、痛みを、戦いの才能がありすぎただけの、心優しい少女は既に知っていた。

  • 1010/1821/09/02(木) 08:54:42

    「……戦いは、貴方にとって辛いものでしょう」
    「ウヌ、辛いのだ。とても痛い思いを、何度もしている」
    「それに、戦うというのは、相手に向けて力を振るうこと。貴方が相手を傷つける行為を好むとは思えない」
    「……ウヌ、戦いは、好きではない。苦しい思いも、何度もしている」

     けれど、戦いを止めようとするつもりはない。逃げることはできない。
     そこまでして、何かを目指す。そんな人間は自分も含めて珍しいものではきっと無いのだろうけれど。
     背負う理由はみな、誰もが違うもので。
     ならば。この少年は、なぜ。

    「貴方はなぜ、そこまでして王を目指すのですか」
     
     この心優しい少年の在り方を案じながら、セイバーは尋ねた。
     少年は一片の迷いもなく、王を見上げて。

    「──私は優しい王様にならなくてはいけないのだ」

     それはかつての王が辿りようもなかった、思いもよらなかったまったくべつのこころざしで。
     セイバーは思わず尋ね返す。

    「優しい、王?」

     ウヌ、とガッシュは頷いて。

    「戦いたくないのに、無理矢理戦わされてた女の子がおった。
     その子が――消えるコルルが涙しながら残した言葉を、私は絶対に忘れることはできない」

     ――優しい王様がいれば、こんな辛い戦いをしなくてもよかったのかな――

  • 1111/1821/09/02(木) 08:55:08

     コルルを助けることができなくて、悔しくて、悲しくて。
     だから、自分が王になって、こんな戦いを終わらせたい。
     その望みを叶えるためには。どんなに痛くても、苦しくても、戦いを降りるわけにはいかないのだと。
     
     ――嗚呼、その決意は。その在り方は。
     きっと真に正しい、尊いものなのだろうけれど。

     けれど、けれど、けれど。
     そんな思いで歩んだ道の先が、もしも――

    「――王を目指す貴方の決意は、本当に、尊い。ガッシュ・ベル。しかし」

     かつて選定の剣を握ったその少女は、もう、その少年を肯定することはできなくて。

    「しかしそれは――間違って、いるかもしれないのです」

     ガッシュには、もう、セイバーが、コルルの涙を否定する種類の人間だと疑う気持ちはわかなかった。
     自分を否定するその表情が、あまりにも苦渋に満ちているから。
     だからガッシュは、セイバーの声の続きを、まっすぐに待つ。

    「その決意で、王になれたとしても。王になったその先で、またべつの困難があるかもしれない」

  • 1212/1821/09/02(木) 08:55:30

     ――ひとつの昔話を、セイバーは語る。
     自ら進んで王になって、国の平和のために、民の笑顔のために戦い続けた騎士王の話。
     けれど、戦うだけ戦った挙げ句に、国を滅ぼして死んだ王のお話。
     守るために戦ったのに、けっきょく守り切れずに死んだ。

    「ガッシュ・ベル。貴方が戦士としてどれだけ真っ直ぐであっても。
     いえ、貴方が優しく真っ直ぐであればあるほど、貴方の道の先は困難しかない。
     王になれたことを、後悔する日が来たとしたら、貴方は、どうするのですか」

     だから、自分などが王になるべきではなかったと、金色の王は今でもその罪に苦しんでいる。
     すべての期待を裏切り、国を滅ぼした。そんな存在が選定の剣をとった過去を無くすことさえできれば、
     きっと、誰もが幸せになれたはずだと、今でも信じている――

    「セイバー、すまぬ、私にはさっぱりわからぬ」

     男の子の、困惑の声に、セイバーは逆に、申し訳ない気持ちになって。

    「い、いえ私こそ、ほんとうにすみません。いらない大人の、押しつけでした。
     貴方を煙に巻くような、複雑なことを強要する言をしてしまって……」

     王を目指している、そんな言葉だけで、実態は遙か幼い少年になにを熱くなっているのだ。
     そんな自身を恥じる王に、ガッシュは告げた。

    「ちがう、セイバー。
     ――その王様のどこが間違っているのか、私にはわからないのだ。
     私はむしろ――そのような王様になりたいと、強く思うぞ」

  • 1313/1821/09/02(木) 08:55:47

    「――何故」

     ひたむきにまっすぐに、王を見上げる少年の心が、王にはわからない。

    「間違って、いるのです。国を滅ぼした。守れなかった。これを間違いと言わずに、何というのですか」
    「死んでしまうくらいに頑張ったのであろ? 国の平和のために。民の笑顔のために。これを間違いなどと、誰が言えるのだ?」

     王はベンチから立ち上がって、ガッシュに向き直る。激情を込めて、王の失態を強調する。

    「頑張ったのかもしれないけど、できなかったと言っているのです。
     すべてを懸けて。最善を尽くして。守りたかった。
     けれど、それでも力が足りなかった。何も守れずに終わった私は、王になるべきではなかった……!」

    「――でも、守ろうと、してくれたのであろ?」
    「――――」

     後悔にとらわれて、王の失態を訴える少女の心が、少年にはわからない。
     言葉を詰まらせるセイバーに、ガッシュは続ける。

    「命を懸けてまで、守ってくれたのであろ?」

     ベンチから立ち上がったセイバーに対して、ガッシュもまた、ベンチから立ち、王を見上げる。

  • 1414/1821/09/02(木) 08:56:02

    「セイバーは、ひとりっきりで戦ったのか? 王様は、独りだったのか?」
    「それ、は。部下は、当然居たと答えるしかありませんが――」
    「ちがう。私は馬鹿で、強くもない。
     私が今までの何度かの戦いで生きていられるのは、清麿の――私の本の持ち主のおかげだ。
     背が高くて頭が良くて勇気があって、私にはない強さをたくさん持っているすごい奴なのだ。

     ――そんなすごい男が、優しい王様になりたいという私を助けようとしてくれている。
     清麿だけではない。父上殿も母上殿も、スズメも、ティオや恵も。優しい王様を目指している私に力をくれる。

     その人たちに応えようと思うこの気もちが、どうして間違っていようか。
     セイバーにだって、そんな人たちが居たのではないか?
     一生懸命に戦ってくれる王に、力を貸してくれる騎士たちが、その部下たちが、慕ってくれる民が、いたのであろ?」

    「――そんな者たちが居るのに、居てもなお、その王は信頼を裏切ったという話をしているのです。
     多くの民が、王を責めていたはずなのです」
    「責めたりするわけがない」

     王の後悔を、王を目指す少年は、それだけは違うと、首を振って。

    「――もしも戦いを無事に終えることができたのなら――もしも私が途中で脱落するとしても
     そのときには、私がみんなに言う言葉は決まっている」
    「何、と」

    「ウヌ、『ありがとう』、これ以外には無いのだ!」

     だから、同じだと。民のために戦ってくれた王様に、なにか言葉をかけることができるとしたら。
     きっと。ありがとう、と。ぜったいに、そう言うに決まっているのだと言い張るガッシュに、セイバーは肩をふるわせることしかできなくて。

  • 1515/1821/09/02(木) 08:56:15

    「――誰かと誰かが戦ったら、かならずどっちかが負けるのだ。
     相手も全力で、一生懸命で、すごい力を私たちにぶつけてくる。
     私たちはまだ、それがひとりかふたりの個人の力でしかないが、
     大勢の、国が滅ぶくらいの戦争だったのであろ?
     それのぶつかり合いがどれだけ激しくて、過酷な光景だったのか私には本当に想像もつかぬ。
     けれどそんな大きすぎる困難すらも、たったひとりで想いを背負って戦いぬいた。
     最後の最後まで戦ったのは、民を守るためなのであろ? みんなの笑顔のためだったのであろ?

     ――ならば、そんな優しくて強い王様に、私もなりたい。

     そう思うことは、間違いなのであろうか」

     金色のガッシュ・ベルの言葉に、金色のかつての王は思い出す。
     
     『多くの人が笑っていました。それはきっと、間違いではないと思います』

    「そう、ですね」

     うつむいて、流れる涙を隠すことは容易かったけれど、セイバーは、それでもガッシュに視線を向けて。

    「王様は、間違ってなどいなかった」

  • 1616/1821/09/02(木) 08:57:46

    「みっともないところを見せてしまいましたね」
    「そんなことはない、セイバーはすごく良い話をしてくれたのだ」

     やがて日は傾きかけていて。ふたりは連れ立って公園を後にする。
     夕に染まる市内の光景の中で、ガッシュは尋ねた。

    「セイバーは、……いや、先ほど話してくれた王様は、どこの王様だったのだ?」
    「……ここですよ、ガッシュ。イギリス、ブリテンの王様でした。――ずいぶんと、昔々のお話です」
    「――じゃあ、やっぱり、滅びてなどおらぬ」
    「ガッシュ?」
     建物があって。人々の暮らしがあって。こうして、ふたりでこのブリテンの街を歩く光景がある。ならば。

    「王様が、ちゃんと守ったから、この国が続いているのだ」
     歴史と戦乱の記述だけを見れば、そんな単純な話で済むはずはないけれど。
     それでも。現在から過去を辿れば、ほんの一筋の流れが、かつてのアーサー王につながっている。
     ただそれだけで。生きた過去を誇るに十分であり、現在に過去の誇りを求める必要は、まったくない。

    「ありがとう、ガッシュ。今日は貴方に会えて良かった」
    「ウヌ、私もセイバーに会えて嬉しかったのだ!」

     それぞれの岐路で。お別れの時。

    「ガッシュ・ベル。貴方が王になれることを祈っています」
    「ウヌ! ありがとうなのだ!」

     そうしてふたり手を振って、別れて。お互いの姿が、小さく見える距離まで歩いたところで。

    「セイバー!」

     これから戦う少年は、かつて戦いを終えた少女のその背中に、もうひとつだけ――

  • 1717/1821/09/02(木) 08:58:36

    「遊びに来たよー、イギリスどうだったー!?」

     ガッシュの、もともとのイギリス滞在の理由は清麿が父に会うための一時的なもので。
     帰国後、ガッシュたちはしばらくぶりに顔を合わせるティオを迎える。

     イギリスの様子を尋ねるティオに、ガッシュは言う。

    「大変なこともあったけど、良かったこともあったのだ」
    「へえ、良かったこと? 海外はやっぱり刺激があるのね」
    「刺激……とは言えるのかわからぬが、王様に挨拶ができて誇らしかったのだ」

     清麿とティオには、それはわからないことだったけれど。
     ふたりをよそに、腕を組んで、ウム、とガッシュはひとり納得して。
     そこには、未来に思いを馳せる、あたらしくちいさな決意。

  • 1818/1821/09/02(木) 08:58:51

    『ガッシュ・ベル。貴方が王になれることを祈っています』
    『ウヌ! ありがとうなのだ!』

     そうしてふたり手を振って、別れて。お互いの姿が、小さく見える距離まで歩いたところで。

    『セイバー!』

     これから戦う少年は、かつて戦いを終えた少女のその背中に、もうひとつだけ――


    「――あとはまかせておけ――!」



     ――そうして金色の王たちは、生きた証をつないでいく――

    END.

  • 19二次元好きの匿名さん21/09/02(木) 13:31:44

    お昼あげ

    地雷と言われがちなクロスオーバーSSですが、
    バトルさえしなければ、クロスはまともに見えるよねというお話です。

  • 20二次元好きの匿名さん21/09/02(木) 13:38:41

    とても好き
    ガッシュもセイバーもこう言うだろうなというのがわかるし作品が好きであることも伝わってきた

  • 21二次元好きの匿名さん21/09/02(木) 13:39:52

    バトル物のクロスも好きだけどこういうのもいいよね

  • 22二次元好きの匿名さん21/09/02(木) 14:32:35

    >>20

    ありがとう! あたしキャラの脳内エミュレート大好き!

    複数の組み合わせがハマるとなお良い!


    >>21

    生き様のクロスオーバーというか、

    キャラの精神性のクロスオーバーいいよね!

  • 23二次元好きの匿名さん21/09/02(木) 15:01:06

    うわ!唐突に良作をあげるな!

  • 24二次元好きの匿名さん21/09/02(木) 15:31:37

    とても面白かったです。ガッシュは全然知らないけど読んでみたくなりました。

  • 25二次元好きの匿名さん21/09/02(木) 15:48:10

    両方読んでるけどとても良かった

  • 26二次元好きの匿名さん21/09/02(木) 17:20:38

    >>23

    あざます。

    さすがに平日の朝に投下するのは失敗でしたね…… ちょっとさびしい


    >>24

    あざますた。

    1~3巻あたり(だったかな)のティオと恵のピンチに駆けつける序盤でもう、

    清麿かっけぇ……さてはこれはまっとうで良質な熱血少年漫画じゃな? ってなること保証します!


    >>25

    ありがとう!

    クロスオーバーのいいところ!

  • 27二次元好きの匿名さん21/09/02(木) 18:09:38

    いいわね……(語彙不足)

  • 28二次元好きの匿名さん21/09/02(木) 18:50:47

    >>27

    ありがとうわね!

  • 29二次元好きの匿名さん21/09/02(木) 18:55:05

    キャッチマイハート…

  • 30二次元好きの匿名さん21/09/02(木) 19:51:20

    >>29

    さんくすまいはー!

  • 31二次元好きの匿名さん21/09/02(木) 20:51:17

    こんなお話好き

  • 32二次元好きの匿名さん21/09/02(木) 22:01:17

    >>31

    ありがとう

    他作品キャラが出会って別れるだけのこの幕間感がだいすきで書きました

  • 33二次元好きの匿名さん21/09/03(金) 03:56:56

    夜中あげ

  • 34二次元好きの匿名さん21/09/03(金) 07:12:43

    おはようございます

  • 35二次元好きの匿名さん21/09/03(金) 14:22:03

    ohil

  • 36二次元好きの匿名さん21/09/03(金) 20:34:09

    夜あげ

  • 37二次元好きの匿名さん21/09/04(土) 00:16:55

    仮眠

  • 38二次元好きの匿名さん21/09/04(土) 08:11:11

    カサブタが勝手に再生される……
    次はフォルゴレと遠坂姉妹+ライダーで……

  • 39二次元好きの匿名さん21/09/04(土) 08:34:24

    こういう話好き

  • 40二次元好きの匿名さん21/09/04(土) 08:54:32

    こういうクロスオーバー好き。
    優しくて一欠けらの夢が詰まってる。

  • 41二次元好きの匿名さん21/09/04(土) 09:09:44

    良いssを読んだ後は、最初からハートを押して行くという作業がとても楽しく思えて来るのだと思い至りました。ただただ、感謝を。

    本当に出会えて良かった。

  • 42二次元好きの匿名さん21/09/04(土) 09:26:48

    いい話を読ませていただきました。ありがとうございます

  • 43二次元好きの匿名さん21/09/04(土) 10:49:29

    おお……なぜこんな時間にコメントが増えたのだ。(うれしい)

  • 44二次元好きの匿名さん21/09/04(土) 16:35:06

    二人の間の柔らかな空気がめっちゃいい……

  • 45二次元好きの匿名さん21/09/04(土) 20:13:43

    >>38

    フォルゴレはちょっと難しいかな……

    乗り物の運転に目覚めたHF後ライダーなら

    ウマゴンあたりとちょっと可能性あるかもしれない……?


    >>39

    わたしもだいすき!


    >>40

    ありがとう

    共闘も良いけど、お互いに何かを残しつつも、

    結局は、それぞれの世界に返っていくひとときの夢的な!


    >>41

    ありがとう。私の自己肯定感に染み渡ります。


    >>42

    読んで頂いてありがとうございます。


    >>44

    優しい子と優しい子のクロスオーバーが染み渡るのだ……

  • 46二次元好きの匿名さん21/09/05(日) 00:58:14

    おやすみなさい

オススメ

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