- 1122/01/08(土) 21:05:03
初詣を済ませて部屋でまったりとしていると、ファル子が「いつかお正月番組に出られたら、隠し芸とかしてみた~い☆」と言ってきた。
隠し芸か……
ダート覇者として、ウマドルとして、ファル子は着々とその地位を築き上げている。
年始の特番に出演するのも、そう難しくないだろう。
……いや、むしろ出たいと言えばすぐにでも出れるのではないだろうかと内心で思った。それだけファル子は凄い。
しかし隠し芸といっても、何をするんだ?
ファイヤーダンス?
「あ、あの件はもう忘れてよー! 内容は……まだ決めてないんだけどね☆︎」
ファル子は指先をつんつーんしながら答える。うーん、隠し芸か……ファル子の隠し芸……
モノマネならいけるんじゃないか?
「ん~、モノマネ? 誰のかな?」
ファル○ンパンチ。
「ファル〇ンパンチ!?」
- 2122/01/08(土) 21:07:23
!! 注意 !!
スマートファルコンと、そのトレーナーのSSです。
キャラ付けなどに【解釈違いが発生する恐れがあります】、ご注意ください。
間違った部分があれば、優しめの言葉で指摘していただけると助かります。
投稿に不慣れで、少々時間がかかるかもしれません。
もしコメント、合いの手、ツッコミあったら1が喜びますので、お気軽にどうぞ - 3122/01/08(土) 21:10:26
- 4二次元好きの匿名さん22/01/08(土) 21:11:29
>名前がだいたい一緒
大分大きく出たなオイ
- 5122/01/08(土) 21:14:10
いや、いける!
落下は冗談だが、お茶の間を笑いに包みながらも、その完成度の高さに拍手喝采間違いなしだ。
というか、自分も普通に見たい!
「ダメ〜〜!! それってウマドルじゃないもん!!」
たしかにそうかもしれない。
けど、ファル子もたまにウマッターでやってるじゃないか。
ほら、『♯ファルコ・ランチ』
「うぐっ!? あ、あれはね? 悪ノリしちゃったら人気出ちゃったというか……ね☆」
醤油ムース、ウマいねの数凄かったよな。
「ファンからあれだけ期待されたらやるしかないよおおお〜〜!! うえ〜〜ん!!」 - 6122/01/08(土) 21:16:40
『待望の新作の発売日に例のサングラスを掛けてポージングしながら醤油ムースを食べるファルコ・ランチ』
何度見ても素晴らしい出来栄えのウマッター読み返していると、ファル子がお笑い芸人ばりのオーバーリアクションで膝から泣き崩れていた。
そういうとこだぞ、人気が出るのは。
しかし膝から崩れ落ちるのはトレーナーとしては心配になるから、加減してるとしてもやめましょう。
手を貸して立ち上がらせると、ようやくファル子は泣き止んだ。
「もうっ、もーー!」
それは去年、今年は虎。
「干支の話しじゃなーーい!?」 - 7122/01/08(土) 21:20:05
「もうっっ! 最近はトレーナーさんもファンのみんなもひどいよー!! 私がなりたいのはお笑い芸人さんじゃなくて、ウマドルなんだよ!?」
不満を示すように、貸した手をぎぃゆーっと握り返しながらブンブンと振り回すファル子。いたいいたい。
それだけ気安く身近な存在になった、ということだろう。
ファル子が正統派ウマドルを目指してるのは、ファン全員が知ってるし応援もしている。
しかしだ、ファル子がそれだけ愛らしい仕草するんだから多少は仕方がないだろう。
本当に嫌だったらその可愛らしいリアクションを抑えるしかない。
「つーん、つんつーん! そんな調子のいい言葉でファル子は騙されませーんよーだっ!」
ご機嫌取りじゃなくて事実を言ってるだけだって! - 8122/01/08(土) 21:22:33
それより、肝心の隠し芸の話を詰めよう。
何もない状態から始めるなら、早めに計画すべきだ。
内容はテレビ局との打ち合わせ次第になるだろうが、やりたい芸ぐらいはリストアップしておこう。
「……おぉー」
どうした?
「いや、うーん……えへへ☆︎」
本当にどうした……?
「ファル子なら正月特番に出られるって、トレーナーさんは信じて全く疑ってないんだな〜〜と思って☆︎」
そりゃ、ファル子だからな。当たり前だ。 - 9122/01/08(土) 21:25:09
- 10122/01/08(土) 21:28:33
- 11122/01/08(土) 21:31:15
それだけ強く、努力家で、けど可愛らしい。
そんな君が、出演できないはずがない。
なんなら今からでも飛び入り参加を打診をしてみてもいい。
意外といけるかもしれないな。
「……ふふふ〜♪ それはさすがに買い被りすぎだよ~、テレビ業界はそんなに甘くないはずだぞ☆︎」
ファル子は妙なところで自己評価が低い。
「ちがうー!? たしかにファル子はとっても可愛くて最強のウマドルだよ! でも時々トレーナーさんの評価が変に高いときがあるのっ! 芸能界はトゥインクル・シリーズが全てじゃないんだからねっ!? …………ふふっ」
どうした急に。
「ううん、ちょっと昔のこと思い出して……ねぇ、私たちが出会ったばかりの頃、私が『芝じゃないとトップになれない』って嘆いてたときがあったでしょ。その時あなたが言ったこと……覚えてる?」
……なんて言っただろうか?
「もーー! あなたはこう言ったの!
『なら、自分でトップに押し上げればいい』 ──って☆︎」 - 12122/01/08(土) 21:33:48
よく覚えてるな……そういえば、最初に提案したのはこちらからだったか……?
「そう! 最初に私を焚き付けたのは、トレーナーさんなんだよ? あの時は内心びっくりしたなぁ……だって私、まだデビュー前で……それどころかトレーナーも付いてなかったんだよ? そんな子にかける言葉としては、すっごーーく重くない?」
たしかに今思うと、ずいぶん無茶苦茶なことを言ったな……けどな
あの時は自然にそう思ったんだ。
君なら世界を変えられる、って。
「! ……ふふ〜♪ ほら、びっくりするほど高評価! やっぱりトレーナーさんの方が変わってるよー☆︎ そこまでファル子を信じてくれる人なんて、あなたしかいないんじゃないかな♪」
そうだろうか……
自分はいたって普通のトレーナーだと思うぞ……? - 13122/01/08(土) 21:36:41
けど君は証明してみせた。
しかも、こちらの想定以上に。
G1レース5連勝の宣言は、君の発案だった。
『 圧倒的に、徹底的に
芝もダートも飛び越えて
ファル子が一番になる! 』
あの啖呵を切った姿は、今でも鮮明に覚えている。
まだ芝とダートの壁はある。しかし着実に変わり始めてた。ダートの君を置いて今のトゥインクル・シリーズは語ることができない。
君に憧れてダートを目指すウマ娘も増えた。
芝をメインとする子が、君に『挑戦』するためにダートに来るようになった。
……少し前では考えられなかったことだ。『ダートの適正もあるから』、そんな軽めの感覚でダートG1を狙われてることもあったのに。
君には重い期待をかけたかもしれない。
けどあの時の評価は決して、過剰ではなかった。
一見不可能と思われることも乗り越えてしまう強さが、君にはあるんだ。
「……それは、あなたがいてくれたから……ずっと支えて、迷わないようにしてくれたから……」 - 14122/01/08(土) 21:38:46
- 15122/01/08(土) 21:42:12
しかし正月特番か……東京大賞典の後だから、来年は忙しくなりそうだな。
「あ、うん、そうだねー☆︎ ……こうして2人でゆっくり正月を過ごすのも、もしかしたら最後になっちゃうのかな? そう思うと、少し寂しいかも……トレーナーさんは、なにかしておきたいことある? 今なら特別大サービス! ファンサービスのリクエストがあれば、受け付けちゃうよ☆︎」
特にはないかな。
ああ、2月のフェブラリーステークスに備えて、太り気味にだけは注意してほしいってぐらいかな?
「あはは〜〜☆︎ はーー…………にぶにぶにーぶ」
最近それよく呟いてるけど、なにか流行ってるのかな?
3部が人気だけど2部も最高だよね。
「にーげるんだよぉー☆︎ ってちがーう!!」 - 16122/01/08(土) 21:44:35
で、そろそろ隠し芸の話に戻さないか?
ウマドル目指して虚無僧になりかけてた時のようにひどく脱線してきてるぞ……。
「だからあの話しは忘れてー!! んん〜〜、とりあえず……王道の手品とか! トランプでカッコよくかわいくキメるの☆︎」
いや、カードやコインはかなり器用さを求められるぞ……ちょうど道具あるし、やってみせようか?
――こうやってカードを違和感なく捌くのは当然として、視線誘導なんかも必要になる。トークで相手を引きつけたり、テレビなら演出もしなきゃいけないだろうな。物をこうして相手に握らすだけでもコツがある。ミスらないように地道で細かい訓練の繰り返しだ。まあミスってもそれはそれで美味しいけど、それこそ芸人ルートだからな……ファル子ができないって言ってるんじゃないぞ。けどあんまり合ってないと思うから結構頑張らないと思う。
……ファル子?
「あ、うん……トレーナーさんがいきなりマジシャンになってたことに驚いて☆︎ ……いつのまに覚えたの?」
機会があって、フジキセキに教えてもらったんだ。
「はぃい?」 - 17122/01/08(土) 21:45:53
トレーナーにも付き合いがある。飲み会や忘年会では一発芸を披露することもある。折角ならちゃんと覚えようと思っていろいろやってた時期があるんだよ。
「ふーーん、へーー」
……ファル子さん?
「つんつーん!!」
なぜ……どうして急に…… - 18122/01/08(土) 21:47:46
「知らない間にフジさんから、手取り足取り楽しく教えてもらってたんだーー、ふーんっ」
楽しいより『意外と大変だなこれ』って苦戦した記憶がほとんどなのだが……ファル子からすると楽しそうにしか見えないのも、仕方がないか……。
「もー! ほかにも教えてもらってたりするのー!」
えー……、うん、まぁ、あるけど……。
「教えなさーい!」
な、なんでそんな興味津々……その、オタ芸かな。
「え、オタ芸?」
去年の忘年会でノリでやったんだ、ファンがやってたのを見様見真似で。
そのウケが良くてな。今それを芸として披露できるレベルにしようと、アグネスデジタル師匠から教わってるところなんだ。
「デデデ、デジタルちゃん!?!?」
いや、持ちキャラはリンクらしいぞ。
「だからウマブラの話しはしてなーーい!!?」 - 19122/01/08(土) 21:51:52
=================
拝啓 淑気満つ初春の候、スマートファルコン様におかれましては──
(うんぬんかんぬん略)
──さて、この度わたくしアグネスデジタルは、僭越ながらも担当トレーナー様のオタ芸指導をさせていただいております。……それをスマートファルコン様が知った時、おそらく心には一陣の風が吹き荒れてしまったことでしょう。しかし、どうか、どうか信じていただきたいのです! わたくしは北風ボレアースでも西風ゼピュロスでもイスカリオテのユダでもございません!! ただの普通の敬虔な、あなた様の使徒でありファンなのでございます!!! ですので、どうか……どうか……一旦お怒りをお鎮めになられて、トレーナー様の芸を見てくいただきたいのです。……もしなにかあなた様がわたくしのせいで悲しい思いをしてしまうようなことがあれば、我が命と我が生涯をかけて、何でもいたします!!!
あなた様のもとに、暖かな春が訪れることを願って。
敬具
アグネスデジタル
================= - 20122/01/08(土) 21:54:39
師匠はなんだって?
「……よ、よくわかんない……信じて欲しいっぽいけど……」
困惑している。まぁ、彼女がハイテンションになると、だいたいみんなこうなる。
「とりあえず、トレーナーさんの芸見たい……それを見ればわかるって」
……えっ。
ちょっと待って、今からか?
いやそれは……その、あれはまだ未完成で、というか正確にはオタ芸とも呼べないもので、やるとしても準備が必要になるし、正直今やらなくても良いんじゃないかな?
「え、見たいみたーい☆︎」
こちらの焦りに気付いたのか、ノリノリで距離を詰めくるファル子。
……最近ついついからかい過ぎてしまっていることへの意趣返しなのかもしれない。 - 21二次元好きの匿名さん22/01/08(土) 21:57:30
このレスは削除されています
- 22122/01/08(土) 21:58:08
師匠はなんだって?
「……よ、よくわかんない……信じて欲しいっぽいけど……」
困惑している。まぁ、彼女がハイテンションになると、だいたいみんなこうなる。
「とりあえず、トレーナーさんの芸見たい……それを見ればわかるって」
……えっ。
ちょっと待って、今からか?
いやそれは……その、あれはまだ未完成で、というか正確にはオタ芸とも呼べないもので、やるとしても準備が必要になるし、正直今やらなくても良いんじゃないかな?
「え、見たいみたーい☆︎」
こちらの焦りに気付いたのか、ノリノリで距離を詰めくるファル子。
……最近ついついからかい過ぎてしまっていることへの意趣返しなのかもしれない。 - 23122/01/08(土) 21:58:33
- 24122/01/08(土) 22:00:01
「お正月が開けたら、また忙しくなっちゃうから、今がいいかなって」
うーん……冬休みが終われば、学業が始まる。ウマドル活動も始まる。レースに向けての調整も大詰めになる。
……たしかに、今が一番ちょうといい時期か。
それに師匠がいいと言ってるのなら……披露しても問題のないレベルにはなっている、ということなのだろう。
「…………ダメ?」
そしてなにより、ファル子が望んでいるのなら……やるしかないか……!
いや、でもどうしてこうなった!? - 25122/01/08(土) 22:01:46
――それから数十分後、自分たちはダンスレッスン室の一角にいた。
冬休みの正月。
ガラガラで人がほとんどいなくて、いつもの学園とは別世界のようだ。
そんな異様なほど静かな場所でファル子が曲の準備と衣装を整えてる間に、こちらも準備をすすめる。
ファル子色のペンライト複数。
ファル子の鉢巻、タオル、ハッピ、Tシャツ、シューズ、団扇。
身につけられるだけのグッズを付けた、フル装備だ。
「そ、そんなに気合を入れるの……?」
失礼な事をするかもしれないからな、形だけでもしっかりとしておきたい。
「んん? 普通のオタ芸じゃないの?」
普通のと、普通じゃないのとで二種ある。
どっちにするかはファル子に選んでほしい。 - 26122/01/08(土) 22:02:28
一つは一般的なオタ芸、ファンがよくやるやつだ。
もう一つは例の忘年会でやったのを、一応見れるレベルにしたものだ。
「どーゆーことー?」
オタ芸には、技に決まった掛け声や、曲に合わせたコールがあるだろう?
「アイドルコール? うんうん、MIXとか合いの手コールとか。エル・オー・ブイ・イー・Loveファル子〜ってね! ふふっ、トレーナーさんも積極的にやってくれるよね☆︎」
うん。
二つ目は、それがない。
「ないんだ!?」 - 27122/01/08(土) 22:03:46
決まりがないって意味で、ない。
全部好き勝手に自由にやる。ファル子の気が逸れるかもしれない大声も出す。
「あぁーうん、お酒の席でやったことだもんね? 好き勝手面白いおかしくやるぞぉー☆ って感じなのかな?」
そうだな。
元にしてるのが我儘で厄介な酔っ払いになった時の姿だ。
だからトレーナーとして普段あまりファル子に言わないことや、控えるべきと思っていたことも言う。
「! それって……」
芸というのも憚られるような内容だろう? - 28122/01/08(土) 22:04:54
「でも、それがトレーナーさんが練習してたやつ……なんだよね?」
うん、まぁ……
……経緯を説明するとだな。
まずトレーナーが集まる飲み会は、だいたい自分の担当ウマ娘の自慢話になる。
ヘタな親バカよりもおバカな連中しかいない。
「そうなんだ……」
そんな中にいたら、当然こちらもファル子の良さを喋らずにはいられない。
「そ、そうなんだ……え、なんだろう、割と恥ずかしい」
そんな中でオタ芸が始まって、自分もファル子のことを思いながら勢いのまま参加した。
それがウケた。それで終わるはずだったんだが……
『絶対にファル子にやってあげた方がいい』
『ああ、きっと喜ぶ!』
『というか、やれ!!!』
と口々に言われてな……とりあえずオタ芸自体はファル子の応援にも繋がるかもしれないと思って、練習を始めたんだ。
……つまるところ、オリジナルのコールが入ったオタ芸だ。 - 29122/01/08(土) 22:06:23
みんなには良い仕上がりと言われてる。
けど正直に言えば、自分では半信半疑なんだ。
君に喜んでもらえるという口車にのって練習してきて、師匠にも修正してもらったが……酔っぱらった姿が元だ。本当に君に喜んでもらえるか……自信がない。
だからやらなくてもいいんだ。
普通のオタ芸は、結構自信がある仕上がりだぞ?
「ううん、私、二つ目がいい」
間髪入れずファル子は後者を選んだ。 - 30122/01/08(土) 22:07:41
「トレーナーさんって、すっごーくファル子を褒めてくれる! 信じてくれてる♪ 助けてくれる☆ ──でも、あまり本心っていうか、ほかのファンの人たちのような感情のままの言葉……って感じのは、あんまり言わないよね? できるだけ冷静であろうとしている、っていうか」
そうかもしれない。
ファンではあるが、トレーナーだ。
不適切な言葉や態度は控えておくべきだと思っているのは、確かだ。
「……うん。私、トレーナーさんの本音……感情のままの言葉、聞いてみたい」
ファル子は期待と不安が入り混じった、けれど強い意志を感じる瞳でこちらを見つめた。
それを見て、自分の覚悟も決まった。 - 31122/01/08(土) 22:09:30
まずは不動の構えをとって、曲が始まるのを待つ。
……待ちながら、我ながらバカなことをしているなぁと自嘲する。
言うなら言えばいいだけ、わざわざオタ芸に合わせてやる必要などないと、何度思ったことか。
けど、そうじゃないんだ。
ただ普通に言うだけじゃ足りないと感じていたのも確かなんだ。怖いという感情も少しあった。
そんな想いを伝えるのに、オタ芸の力を借りるのがちょうど良かった。
彼女に向けて思い切り叫んで、全力で踊る。
これが……とてもしっくりきた。
なにより、ウマドルとファン。
自分たちがその関係性であるならば
こうやって気持ちや感謝を伝えることは、間違っていない気がしたんだ。 - 32122/01/08(土) 22:10:34
……さあ、そろそろだ
曲が始まる
不動の構えを解き、ペンライトに光を灯す
いこう。初めの言葉は……そう
ファンがよく言う
無難な叫びからいく - 33122/01/08(土) 22:11:12
ファル子おおおおおおーッ!!
大 ッ 好 き だ あ あ あ あ あ あ ー ッ !!!
「――っ!?」 - 34122/01/08(土) 22:12:10
- 35122/01/08(土) 22:13:08
- 36122/01/08(土) 22:14:07
- 37122/01/08(土) 22:15:10
- 38122/01/08(土) 22:15:49
『──君はファル子のことを凄いと、可愛いと言う。これは事実だってね。しかし、君自身の強い気持ちを、一般のファンみたく伝えたことは、少ないんじゃないかい?』
そうかもしれない。
自分はファンだがトレーナーでもある。
恋愛的な意味がなくとも、好きだ惚れたなんて言うべきではないだろう。
そもそもファンからしたら、ファル子の身近にそんなことを言う人がいたら嫌だと思う人もいるはずだ。
『気を使うのは素晴らしいけど、飾らない本音は伝えておくべきだと思うよ。君に惹かれてしょうがないと素直に伝えることは、彼女たちの自信にもつながる。なに、なんとかなるものさ』
フラッシュのトレーナーはキメ顔でそう言った。
いや思春期の女の子に好きだ惚れただなんて言うのはダメだろ……まるで口説いてるようじゃないか……と、正直に言えば思っていたし何度もツッコミを入れたこともある。
しかしそんな彼が言うのだ。フラッシュとも適切な関係でいるようだし、大丈夫なのかもしれない、と少し思うようになった。 - 39122/01/08(土) 22:17:46
『──たしかにそれは厳密にはオタ芸ではないのでしょう。しかし私はあなたのそれを否定しません』
ただの迷惑行為ではないか、本当にファル子が喜ぶのだろうかと、アグネスデジタルに相談もした。
『そもそも、オタ芸、コール芸の始まりは称賛より否定的意見が目立ったと聞いています。奇妙奇天烈な行為、または身勝手なオタクの迷惑な行為として有名になった過去があります。……そして今でも受け入れられているとは、残念ですが言い切れないと思います』
『始まりは身勝手な行為だったのかもしれません。何度も非難されてきました。しかし、それに価値を見出す人もいた。肯定する人がいた』
『私は、あなたが身勝手と言うファル子様を想って叫び踊る姿に……光を見ました』
『あなたのファンは、ここにいますよ』
そう言って師匠は、ペンライトを授けてくれた。 - 40122/01/08(土) 22:19:14
だから少々気恥ずかしくバカバカしいが、想いを素直に叫んでみることにした。
友人たちと師匠の言葉を信じ、ファル子が喜んでくれると願って。
自分はファル子が好きで惚れていている。
幸せになってほしい、夢を叶えてほしい。
好きになって欲しいとは思わない。
たぶんこれは俗に言う、恋だとかとは違う感情なのだろう。
感情が複雑で、こんな気持ちを抱いた子は君が初めてで、うまく言い表せない。
でもあえて名付けるのならば。
願うならば。 - 41122/01/08(土) 22:20:16
『 愛 し て る ぞ フ ァ ル 子 お お お お ー ッ !!! 』
この感情が愛だったらいいなと、そう思う。
- 42122/01/08(土) 22:22:03
──曲が終わった。
全力で、踊って、叫んで……呼吸が安定、しない。
汗がおさまらない。
視界もボヤける。
しかし……どこかやり遂げた達成感、言いたかった事を言えてスッキリとした感覚がある。オタ芸にハマるという感覚が、これなのだろうか。汗まみれの顔をぬぐって、静かに佇むファル子に視線を向ける。
「……えうっ……グスッ……」
涙目になっていた。
──えっ!?!!?
- 43122/01/08(土) 22:23:17
なんで!!?!?
大丈夫かッ!!!!
どっどどどとうしたんだ!!!?
「そりゃ……泣くよぉっ!! トレーナーさんはなんなのぉ! 笑っちゃうぐらいキレッキレの動きなのに! 怖い本音も出てくるのかなって覚悟してたのにっ! ほしかった言葉ばっかりぶつけてきてバカバカぁっ!! 思い出で胸が詰まって……苦しくて、幸せでっ、感情の、制御、むりだよぉ……っ!」
ついに耐えきれず「うわあーん!!」と泣きついてきた。マジ泣きだ。
自分はどうすることもできず、彼女を受け止めて背中をさすることしか出来なかった。
やめてくれ頼む……君が泣く姿は見たくないんだ……っ
本当に……頼むよ……
- 44122/01/08(土) 22:25:02
どうしてこんなことになった。
気持ち悪かっただろうか、でも幸せとも言っていた、感涙?
いやファル子は言われ慣れているはず、でも怒ってた、今泣いている、なにかトラウマを刺激したか。
わからない、考えてもわからない、思考が定まらずただただから回り続ける。
……そんな地獄のような時間を経て、やや落ち着ちついた様子のファル子は胸元から顔を上げて言った。
「……さっきのは、本当? 本当の気持ち?」
本当だ。ふざけるなら、もっとわかりやすい声色でやる。
……本当に、申し訳ない。謝っても許してはもらえないだろうが、ごめん。こんなこと、もう二度としない。
「……っしゃい」
ぐ っ ほ あ ッ !!?
- 45122/01/08(土) 22:26:49
「ううっ……にぶにぶトレーナーさん……これがみんなの言うくそぼけさん……」
見えな、かった……恐ろしく早いジャブ……たづなさんじゃないと見逃してしまう、ような……
「ぐすっ……もー! もーーーっ! 嫌とはいってないでしょー!!! あんまりにも急で、驚いちゃっただけで……」
「……ちょっと不安だった……あなたはにぶにぶで、ぼけぼけで、ウマドルとファンだから……魅力的な子はいっぱいいて、もしかしたら、ふらっと行っちゃうんじゃないかって」
ファル子が俯いて何かを呟いた後、涙を拭いてまた顔を上げた。
「でも、想像以上にファル子のことが好……す…………ア、アハハ、その……びっくりするぐらい大事なんだってことが知れて……まぁ、恋愛的じゃなくてファンとしてって意味だろうけど……」
当然だ。
ファン兼トレーナーが恋愛感情なんて持っちゃダメだろう。
「……しゃいしゃーい」
痛い! なんでほっぺた引っ張る!?
- 46122/01/08(土) 22:28:32
- 47122/01/08(土) 22:30:08
……もったいない。
まずそう思った。
その表情をステージで出せば、君のファンは果てしなく増えることだろう。
「……トレーナーさん、まだアンコールが残ってるよ?」
よし、忘れないうちに今の表情がステージで出来るようにトレーニングしよう!!!
そう言おうとした。
「もう一回、あなたの声が聞きたい……私も精一杯、あなただけに向けて、歌いたい」
けどできなかった。
- 48122/01/08(土) 22:31:32
……あの見惚れるようなファル子が世間に広まるのは、もう少し後でもいいだろう。
切り札はここぞという場面で出すべきだ。
ファル子なら焦らずとも大人気のウマドルになるのは確定している。
そもそも、今は自分のためのステージ。
だからこれは、ファン1号としての……特権。
珍しくそんな言い訳じみた考えが出てくることに、自分自身で驚く。
彼女の良いところを独占しておくだなんて、これは……ファン失格、ではないか……?
後ろめたいことをしているようで、気分が暗くなる。
だが、しかし……うん。
「じゃあ、いっくよー!! 私のことがだーい好きすぎるファン第1号さんに向けて、歌いまーす☆︎」
- 49122/01/08(土) 22:33:16
- 50二次元好きの匿名さん22/01/08(土) 22:33:36
しゅがはみを感じるけどすっっっっごくカワイイ
- 51二次元好きの匿名さん22/01/08(土) 22:35:17
エンダアアアアア!!!って言っていい?
- 52122/01/08(土) 22:36:43
以上です、何か問題があったら消しときます。ネタ被りしてないかが心配で……。
とりあえず投稿できてよかった……
少し長めのSSでしたが、お付き合いいただきありがとうございます! - 53122/01/08(土) 22:44:02
- 54二次元好きの匿名さん22/01/09(日) 01:13:30
スレタイと導入から予想できない良い話だった
もっと♡ついて良いと思う
お幸せにって感じや! - 55二次元好きの匿名さん22/01/09(日) 01:31:08
もどかしい距離感が!素敵!!ありがとう!!!
- 56二次元好きの匿名さん22/01/09(日) 10:20:58
- 57二次元好きの匿名さん22/01/09(日) 10:24:41
タイトルから予想できないくらいに長かった
ギャグやりつつシリアス持っていくのいいね - 58二次元好きの匿名さん22/01/09(日) 10:27:07
- 59二次元好きの匿名さん22/01/09(日) 10:37:11
- 60二次元好きの匿名さん22/01/09(日) 10:41:09
- 61二次元好きの匿名さん22/01/09(日) 10:49:46
なぁ…もしかしてファル子って可愛いのか?…
- 62二次元好きの匿名さん22/01/09(日) 10:55:31
- 63二次元好きの匿名さん22/01/09(日) 10:57:58
- 64二次元好きの匿名さん22/01/09(日) 17:49:38
- 65二次元好きの匿名さん22/01/09(日) 23:41:59
このレスは削除されています
- 66二次元好きの匿名さん22/01/09(日) 23:42:40