【SS】ドーベルとサンタ服

  • 1二次元好きの匿名さん23/12/21(木) 21:53:24

     「トレーナー、喜ぶかな……」
     
     暖房がかかったトレーナー室でアタシは不安で思わず独り言を呟く。
     いつもなら、アタシのトレーニングメニューを考えてるトレーナーの姿はそこには居ない。
     
     ブライトに協力してもらって、トレーナー室からトレーナーを連れ出してくれた。
     その間に、アタシは準備をし、出来たからってブライトに連絡した。直にトレーナーが戻ってくる。

    「喜んでくれるといいけど……」
     アタシは自分が着ているサンタ服を確かめながら、ドキドキと胸の緊張を高まらせる。
     
     いつもとは少し違うアタシの姿を見て、トレーナーはどんな反応をするだろうか?  そんな事を考えてしまい、アタシは思わず部屋の中をウロウロと歩き回ってしまう。

     本来なら、このサンタ服はクリスマスでメジロのパーティーでの企画で着る服装。
     試着の段階でそのイベントに出る、ブライトやパーマ達と一緒に着用した。
     その時にお互いに似合っているとか可愛いとか褒めて、本番当日まで着る予定はなかったのに…。 

  • 2二次元好きの匿名さん23/12/21(木) 21:54:39

     でも、ブライトが似合っているからトレーナーに見せましょう〜と提案してくれた。
     アタシは最初、反対だった。だって、アタシなんかが着ても、トレーナーは別に惹かれないだろうし…。
     それに、ほら、別に写真で送ればいいじゃないかって。
     
    そう思っていたんだけど、ブライトがアタシを説得する。

    「ドーベルのトレーナー様ならドーベルが可愛い服着てたら、きっと喜ぶはずですわ〜。」

    「それに、パーティーには男性の方がお越しに来られますよ〜。その方達には初めて披露して、トレーナー様には写真だけというのも、ちょっと可哀想だと思いませんか〜?」

    「べ、別に可哀想じゃないけど……」

    「トレーナー様もドーベルの可愛い姿を写真だけではなくて、ちゃんと目に焼き付けておきたいと思いますよ〜」

     そう言って、ブライトは優しく微笑みながら、アタシを鼓舞する。
     クリスマスの日は、アタシはそのパーティー、トレーナーは仕事で会うことはない。
     加えて、アタシのサンタ服はその日、初めて男の人の目に晒すことになる。
     その事に気づいて、モヤッと釈然としない気持ちが心をふさぐ。
     アタシは男の人が苦手。でも、トレーナーはそんなアタシをいつでも見守ってくれたというのに。
     それなら、トレーナーにも見せてもいいかな。
     パーティーの練習の一貫ということでトレーナーに付き合ってもらえばいいし……。
     
     アタシの頭の中でそんな自問自答が駆け巡った。

  • 3二次元好きの匿名さん23/12/21(木) 21:56:31

    そして、そんなブライトの言葉にアタシの心は揺り動かされてしまい、結局その服を着てトレーナーに見せようと決めたんだ。
     
     でも、いざ当日になると、気持ちが落ち着かない。
     
    「別に、トレーナーのために着てるんじゃないし……」

     そうこれはパーティーの予行練習。そう自分に言い聞かせて、アタシは今サンタ服を身に着けたのに。
     何で、こうサプライズっぽく見せようとしちゃったんだろう。
     そんな風に自分に言い聞かせていても、アタシの鼓動はより強くなる。

     あぁ、もうトレーナー遅いし、早く戻ってきてよ! そんな事を思っていると、小さなノックの後にドアが開く音がする。
     その音に反応して、ドアの方向を見ると、そこには待ちわびた人の姿がそこにはあった。

    「すまん、待たせたな。ド…ーベル…?」

     ドアをトレーナーは少し驚いた様子でアタシの方を見た後、すぐに言葉が出てこない。
     トレーナーの視線は、アタシの頭のてっぺんから、爪先まで何度も往復している。

     「あ、あまり……ジロジロ見ないで……」

     アタシはトレーナーの視線に耐えられなくて、身体を縮こませる。
     何で、こんな恥ずかしい格好をしてたのかな……。
     自分で決めたのに、何でかそんな疑問が頭に何度も過ぎた。
     けど、自虐的になったアタシでも

  • 4二次元好きの匿名さん23/12/21(木) 21:57:35

     
    「可愛い」

     
    トレーナーからポツリと漏れた言葉は聞き逃がさなった。
     その言葉に先程まで感じてた、心のモヤモヤが晴れていく。

    「……!?」

    「ドーベル可愛いよ。そのサンタ服凄く可愛い。赤い服も似合うね」
     
    「……もう、お世辞はいいから」

    「いや、お世辞じゃないよ。本当に可愛いよ」

     素直になれないアタシの態度とは裏腹に、トレーナーはアタシのことを褒め続ける。
     アタシが聞きたかった言葉。先程まであったモヤモヤがなくなり、胸から嬉しさと恥ずかしさが混ざりあったものがこみ上げてくる。
     
    「もう、わかった、わかったから!これ以上はいい。」

    「そう?…でも、どうしたの?急にこんな格好をして?」

    「そ、それは……」

     そうして、アタシはパーティーのことをトレーナーに話をした。
     でも、本当はトレーナーに喜んでもらおうかなと思って、着たことは、恥ずかしくて言えなかった。言えるわけないよ……。

  • 5二次元好きの匿名さん23/12/21(木) 21:58:23

    「……そういうことか。分かった、俺でよければ手伝うよ」

     そんなアタシの気持ちを知らずに、トレーナーはアタシの提案を受け入れてくれた。

     「じゃあ、今から練習付き合うって、ことでいいってことね」

    「ああ、いいけど。その前に…」

     そう言って、トレーナーはトレーナー室に掛かっていた、自分のコートを取って来て

     「いくら、暖房がかかった室内といえどもその格好は寒いでしょ。これ使いなよ」
     トレーナーはアタシに自分のコートを差し出す。
     その気遣いに、思わずアタシの心が嬉しく、胸が高まる。

    「……あ、ありがとう」

    「どういたしまして」

     それでトレーナーはコートを、アタシの肩にそっと掛けてくれた。

  • 6二次元好きの匿名さん23/12/21(木) 21:59:01

     ……ああ、ずるいよ。
     
     アタシはまだ恥ずかしくて、誤魔化して言葉にできないのに。アンタは直ぐにそんな言葉にできてさ…。
     これが子供と大人の違いなのかな。
     
     アタシの肩に掛かった、トレーナーのコートをギュッと掴む。
     コートから微かに匂うトレーナーの匂いにアタシをよりドキドキさせる。
     そんなアタシの様子を知らずにトレーナーは話し始める。

    「それじゃあ、パーティーの練習を始めようか」

    「う、うん……」

     そうして、アタシとトレーナーの二人だけの練習が始まる。

     まだ素直になれないアタシだけど、いつかアンタみたいに言えたらいいな…。

  • 7二次元好きの匿名さん23/12/21(木) 22:00:25

    ドーベルのサンタ服姿が可愛いので書きました。

  • 8二次元好きの匿名さん23/12/21(木) 22:01:49

    ああ〜かわいい〜べるちゃんかわいい〜
    にこにこにやにやしてしまうような素敵なSSありがとうございました…!

  • 9二次元好きの匿名さん23/12/21(木) 22:03:08

    心がベルベルしてきた

  • 10二次元好きの匿名さん23/12/21(木) 22:07:56

    ベルちゃんの可愛さで世界が救われる

  • 11二次元好きの匿名さん23/12/21(木) 22:26:00

    ブライトもGJやんね…

  • 12二次元好きの匿名さん23/12/22(金) 08:50:17

    良いぞ……

  • 13二次元好きの匿名さん23/12/22(金) 17:29:35

    すごく良い

  • 14123/12/22(金) 18:54:29

    感想ありがとうございます。
    かわいいって感想を多く頂いて、凄く嬉しいです。

  • 15二次元好きの匿名さん23/12/22(金) 19:08:45

    ベルちゃんとトレーナーはどれだけイチャイチャしてもよい

  • 16二次元好きの匿名さん23/12/22(金) 22:34:28

    乙女だ……

  • 17二次元好きの匿名さん23/12/23(土) 01:15:45

    >>16

    イラストありがとうございます。

    ちょっと恥じらいがちなドーベルが可愛いです。

オススメ

このスレッドは過去ログ倉庫に格納されています